一般通過自己犠牲全体回復魔法持ち魔法少女 作:Mckee ItoIto
資格無き者から『剥奪』する。
資格有る者がそれを奪われないように。
革命による選別を。
選ばれしものの楽園を。
立場無き強者の為の救済を。
望みはそれだけ。どうか邪魔をしないでくれ。
・・・
世界に魔獣が降り注いだあの日、人類はこれまでになく滅びに近づいた。
それはたった四半世紀前の出来事。あの時、終末時計の針は確かに終わりを指したのだ。
それをほんの少しだけ巻き戻したのが、人類の救世主たる始まりの魔法少女たち。
そしてそれをサポートし、指揮した一人の人格者たる大人。
多くの、本当に多くの人が犠牲となった。
その屍を礎に、人類の平和は辛うじて保たれている。
あの時の始まりの魔獣と人類との戦いは、いつしかのちに最終戦争と呼ばれ始めた。
争い合っていた人々が手を取り合い、助け合って、文字通り人類の存亡をかけた戦い。
そう……最後の戦い、そうなるはずだった。
始まりの魔獣を倒したというのに、戦いは終わらなかった。
魔獣の発生は未だ続いている。始まりを振り返る必要もない程、もはや有り触れている。
人類と魔獣の争いはどちらも決め手に欠け、決定的な線を越えることはできていない。
そんな時間が十年二十年と過ぎ、いつしか希望も熱狂も、人々の手を離れはじめた。
結果として、共通の敵ができたというのに生まれたのは協調ではなく、腹の探り合い。
最初は誰もがまっすぐで、必死で、そんなことしている余裕なんかなかったというのに。
状況が変わったのは、戦況が膠着状態の様相を呈してきたころから。
少なくともこの国では、人が大勢死んだのは最初だけ。外国の情勢なんか所詮は画面越しの世界。
そして日常に、仮初の平和のようなものが見え始め、社会は表向き元通りになった。
身の危険が減り、食糧危機も乗り越え、安心して眠れる夜が増えた。
お偉いさんたちの緊張感も薄れて、欲が出てきたということだろう。
特に、そういう方々は真っ先に安全になったのだから。
命の保証。生活の保障。その先にあるのは、維持と発展の希求。
停滞と余白を糧にして混ざる、悪意と腐敗の萌芽。見えない恐れが作る自己防衛の欲望。
それは権力者だけに限らない。普通の人の中にだって安全と不安の狭間で鬱屈としている者はいる。
そうしたものをもたらしているのが、私たちの戦いなのだとしたら。
畢竟、真の平和など泡沫の夢。そういうことなのだろう。
果たして、これが指揮官が望んだ世界なのか。
仲間たちが作りたかった世界なのか。
命を賭したみんなは、もういない。
なんで私はこんな世界のために生きているのだろうか。
……そんなもの、意味など無い。
実にくだらない。本当に馬鹿らしい。
単純に、生き残っているから、というだけにすぎない。
もっと直截的に言えば、私は死なないからだ。
死なないし、死ねない。生かされているから、生きている。
生きるべきか死ぬべきかを問われれば、みんなのようにさっさと死ぬべきだったのだろう。
しかし不可能であることを考慮すれば、そんな問題も成立し得ない。
対魔獣組織、第二部隊隊長。
『再生』の魔法を持つ、不死にして、不滅の兵器。
かつて人類の希望と呼ばれた始まりの魔法少女。
その最後の生き残りであり、単なる死にぞこない。
こんな世界で戦い続ける、実にくだらない存在だ。
・・・
「……いただきます」
早朝の隊舎の食堂。誰よりも早い時間に朝食を取る。
私は本来、食事を必要としない。正確に言うと、補給を必要としていない。
使ったエネルギーは『再生』するのだから。
肉体的疲労も無いから睡眠すら要らない。
そもそも、今の私は全てが停滞している。魔法覚醒に伴い、肉体の成長も止まった。
見た目はもうずっと、高校生か大学生、といったまま。
それからは決して衰えず、決して育たず、決して変わらない。
少し進んでは巻き戻って再生される、そんな壊れたレコードのように。
破綻した形で安定してしまっている、完成された不良品。
私は戦場以外では、意味もなくかつての生活をなぞっている。
毎回こうして食事を取るし、夜になると眠るふりをする。
理由なんか何もない。ただの時間と資源の無駄遣い。
だらだらと、灰色の世界を生き続ける。
いつかのあの日を真似て、無為に。緩慢に。
ああ、実にくだらないな。
こんなもの、本当に生ける屍だ。
ゾンビと言われても納得ではないか。
「ご馳走様」
隊舎の食堂で食料を浪費する。実に勿体無い、贅沢な時間潰し。
本当は不要なのに、私の食事は毎回用意されているので受け取ってゆっくりと食べ始め。
そうしてほとんど味がしない料理を、作業のように食べ終えた。
ここで働くお婆さんはある意味私と同期なのに、味が落ちていく一方だ。
記憶の中のこの人の料理はもっと美味しかった。みんなで絶賛したものだった。
あの味には、遠く及ばない。
「お粗末様。今日は隊舎詰めかい?」
「警報が鳴らない限りは、しばらく事務作業の予定」
「そうかい、鳴らないといいねぇ」
「最近少ない。凪の時期だろうから、恐らく鳴らない可能性の方が高い」
「もうあんたが戦わなくて済むと、いいんだけどねぇ……」
「必要なら行く。それだけ」
「そうかい……気を付けておくれよ」
気を付ける、か。
何を、気を付けるというのだろうか。
何ものも私には、
何も残らない、すぐに消えてしまう傷。そんなの最初から無かったも同然。
何も気を付ける必要など、無いのではないか。
「あ、ダブルババアだ。相変わらず隊長は朝早いなぁ」
凄まじく失礼な娘が食堂に入ってきた。
あれでも私たちの部隊の副隊長だから、隊の風紀が乱れて困るのだが。
「だーれがババアだクソガキ」
「いや隊長はともかく、おばあちゃんは見た目からしてババアじゃん。早く後任決めて引退しなよ」
「はっ、あたしゃまだまだ若いんだよ。定年なんかクソくらえさ」
「料理する人が飯どころでクソクソいうなよって。そんで今日のメニューは?」
「炊き込みご飯、魚の煮付け、海苔、味噌汁。お残しはするんじゃないよ」
「魚かぁ、綺麗に食べるのめんどいんだよなぁ……あ、卵焼き追加で」
「しょうがないやつだねぇ。焼くから少し待ってな」
お互い、口は悪いけど戯れているだけだ。
別に険悪な雰囲気はないので放って置いて問題はない。
そんな傍若無人で礼儀がなっていない少女が、近くに座る。
『障壁』の魔法少女。この第二部隊の副隊長。
一見ふざけているように見えるけど、隊で一番の努力家。
最初本人は『反射』の劣化だと自嘲していたが、自己研鑽を重ねて一気に成長を果たした。
不可視にして不可侵の障壁を作り出す。防御に使うだけならただそれだけの、十分強力な魔法。
その魔法を必死に鍛えて、自由な形で、自在に動かせるようになった。
攻撃にも応用できるそれは、さながら不可視の矛であり、不可侵の盾。
第三等級といわれた新人時代から今や第六等級とまでいわれている。
はっきり言って、
実際、『障壁』の檻に捕まってしまえば私に打開できる手はあまりない。
完成された制御力と判断力、その裏で、どれほど血の滲むような鍛錬があったのだろうか。
そんな思いが、そんな心が、少しだけ羨ましくて眩しい。
「いっただっきまーす。うまい!」
「私はもう行く」
「いっへらっはーい」
口に食べ物入れながら喋るんじゃない。
本当に行儀が悪い娘だ。言っても聞かないから諦めたが。
他の部隊であれば罰を考えることもあるのだろうが、あいにくここは私の部隊。
別に気にしないので、問題に取り上げるつもりもない。
もしも指揮官なら、こういう時どう対応しただろうか。
……どうもしなさそうだな。こういう元気な子は好きだったから。
食堂を離れ、隊長室へ向かう。かつての、指揮官の部屋。
昔はみんなで作戦会議にも使っていた、一人でいるには少し広い部屋。
今の部隊は人数も多いから、ミーティングをするには狭すぎる部屋。
対魔獣組織の建物では二番隊の隊舎が一番古い。
前身たる魔法少女隊だった時から使われているから、あちこち老朽化している。
傷が付いたデスクに書類を並べ、古びた椅子に座り、目を閉じてそっと深呼吸をする。
さあ、今日もくだらない仕事を片付けていこう。
・・・
どれくらいの時間が経ったのだろうか。気づいたら仕事は片付いていた。
私には疲労感というものが無いので、どうにも時間感覚が薄い。
その気になれば何日だって問題なく続けて作業できてしまう。
なので大抵の場合、仕事が終わるのは仕事が無くなった時だ。
……たまに様子を見にきた他の隊員に無理やり休憩を取らされることもあるのだが。
不要だと言っているのに、ただの時間と資源の無駄遣いではないか。
でも断ると居座られるのでいつも困ってしまう。
そもそも休憩という意味で言えば、私にとっては食事と睡眠の真似事がそれにあたるだろう。
これこそ時間と資源の無駄遣いだし仕事していたら度々忘れてしまう程度のものだが、日常のルーティーンとして欠かすことは出来ればしたくない。
隊長室に窓はないので廊下に出て窓から外を見てみると、ぼんやりと薄暗かった。
かなり手間取った気がしたが、時間をそこまで使ってなかったようだ。誰も邪魔しに来なかったわけだな。
少し早めの夕食としようと考えて、妙に静かな廊下を歩き、食堂に向かう。
「おはよう、まだ仕込み中だよ。流石に早起きが過ぎるねぇ」
……日の入りではなく日の出の時間だったらしい。
どうやら知らない間に一夜を明かしていたみたいだ。
「……目が覚めたから。早く来すぎた。出直す」
また徹夜したと思われると小言を言われて面倒なので、適当な言い訳をして退散する。
私よりもずっとずっと弱い癖に、心配性なのだ。このお婆さんは。
第一、私に健康不良という概念は存在しない。傷も病も、私を蝕めない。
たとえ、どんなことがあったって私は死なないというのに。
睡眠、栄養、空気が無くても問題ない。
毒、病原菌、負傷、魔法、どんなものも私を殺せない。
殴られても、潰されても、千切れても、焼かれても、溺れても、死にはしない。
すべては巻き戻るように『再生』する。無事に、無傷で復帰できる。
損耗の無い人的資源。消耗の無い戦術兵器。他の人とは何もかも違う。
私に心配など意味が無い。人の心配をするより自分の心配をするべきだ。
大体、健康に気を遣うべきはお婆さんの方だろう。
私と違って、失われてしまうのだから。
「無事でよかったよ。昨日顔を見せなかったから気になっていたんだ」
「?」
そもそも顔なら前日の朝見せたはずだが……ボケたのか?
……いや流石に失礼か。単に勘違いだろう。
全員が全員ではないが、食堂は他の魔法少女の隊員や一般事務員なども利用する。
それなりの人数が出入りするから、いちいち覚えていられないだろうしな。
「1時間したらまたおいで。美味い飯を用意しとく」
「……また来る」
隊の事務室に向かい仕事をいくつか引き取って時間を潰すことにしよう。
流石に日が出てきたばかりの時間では誰もいないだろうが。
そして案の定、事務室には書類が溜まっていた。
一部だけは綺麗に片付けられているが、大多数は散らかっている。
私が定期的に引き取りに来ているが、前回よりも増えた気がするな。
本来、隊長の仕事にそこまで事務系の仕事はないのだが、この隊の最高責任者は私だ。
ここに私が見ていけない書類など存在しないのだから、こうして勝手に回収しても問題は無い。
適当な事務机に座り、雑然と並んでいる未処理書類を順番に眺めていく。
魔獣情報、魔法情報、備品情報、隊員情報、日報週報その他諸々。
決裁待ちのものの中から隊長決裁で処理が終わるものを順番に消化する。
保管期限付きで書庫に保管するもの、複写して本部に送るものを振り分けて処理箱に突っ込む。
地味な書類仕事はとにかく人気が無く、ちょっとした報告書を書くことすら嫌がる隊員もいる。
だがこうした裏方の仕事量を知ればそんな苦労、瑣末なことだ。
縁の下で働く人たちのおかげで部隊は戦いに集中できるのだから、それを忘れてはならない。
「え、隊長さん? どうして……?」
適当に作業を続けて、小一時間が経ったころ。
まだかなり早い時間ながら事務員が出勤してきた。
私と同年代の、アラフォー女。事務歴が20年近いベテランだ。
当然、顔見知りであり顔を合わせれば雑談くらい交わす関係ではある。
のだが。
「早起きして暇だった。もう出ていく」
「あぁ……そうなの。私も昨日やり残したことあって早起きしたんだけど……」
……気のせいかも知れないが、なにやら挙動が不審な気がする。
あからさまに見ているわけではないものの、先ほどから奥に片付けられている書類の方を気にしている。
この部隊で、最高責任者たる私の管轄下に無いものは無い。
とはいえ全てを管理するつもりなど毛頭無く、軽い誤魔化しやサボりぐらいは黙認してもいいと考えている。
組織は成果至上主義だ。結果さえ完全にフォローされれば問題ないのだから。
それに、人間誰しも少しくらい楽をしたいという気持ちはあって然るべきだろう。
だが、
長く働いている割に誤魔化し方が下手だ。
黙って立ち上がり、書類を覗きに行く。
「え……、あ」
私に見られて困るもの、ともなれば選択肢は限られる。
査問による戒告程度に留まる範囲で、済む問題だったら良いのだが……。
……。
……。
あったのは、何の変哲も無い魔獣情報。
それに関連する討伐記録。
記述は正常であり、嘘も誤魔化しも感じ取れない綺麗な書類。
不正などどこにも無い、決裁待ちの正式な書類。
「……急ぎ確認することができた。後ほど話を聞く」
「あ……」
事務室を出て、書庫へと向かう。
記録には保管期限があるので、少なくとも五年分は遡れるはずだ。
今までは興味も関心もなかったので見返すことは無かったし、事務員たちが優秀なので監査的な意味でも監督する必要は無かった。
だが、もしかしたら、私はとんでもない愚鈍だったのかもしれない。
新しいものから一つ一つ見ていく。すぐわかる範囲だけでも数件。
いつからだ。一年くらい前からか?
これは、意図されたものであったとしても査問にかけるのは難しい。
証明できないからいくらでも言い逃れできるし、そもそもやる利点がない。
単に私が間抜けだったというだけの話に終わる。
……全部を見る必要は無いだろう。
食堂へと向かう。そろそろ来るか、すでに来ているはずだ。
「あれ、隊長珍しい。二度寝でもした?」
「話がある」
決裁は隊長代理で行われていた。
副隊長たる彼女が始めたことと見て、まず間違いない。
「何故、私が知らない出撃記録がある」
ほんの一瞬、虚を衝かれたような表情をする。
やはり主犯か。いったい何故。
「……何の話?」
「事務室に書類があった」
「ああもう……凡ミスじゃん。おばちゃんたち何やってんの」
「何故、こんなことを。何の意味が」
「いや……あのさぁ、前々から思ってたけど隊長って結構バカだよね」
「……何の話」
呆れ果てたような顔。
なんだ。私はまた何か見逃しているのか。
「考え無し。度が過ぎてる。どっちの意味でも全力でバカだよ。私たちの気持ちも考えないで」
「だから、何の話だ」
「いつもやりすぎなんだよってこと。大体さ」
……曰く。
私の戦い方が気に食わない。
模擬戦の時はともかく、実戦だと目も当てられない。
毎回毎回、真っ先に突っ込んで、真っ先に傷ついて。
何度も何度も他の人の代わりに死ぬ思いをしている。
そんな戦い方をさせたくない。
でも言っても聞かない。改善されない。
だから隊長の負担にならないようにみんな鍛え始めた。
少しでも早く魔獣を倒すために。少しでも傷を減らせるように。
そんな時、たまたま隊長室の警報器の故障を事務側で検知した。
故意か偶然か、わからない。しかしともかくとして、その故障を放置することに決めた。
せめて、隊長が思い出の隊長室に篭っている間くらいは、戦いから遠ざけようと、全会一致で。
今の部隊は強い。隊長がいなくても戦うことはできるのだから。
いつバレてもおかしくはないけど、それまでは。
……。
「わけがわからない」
「何で、わからないんだよバカ」
「利点が無い」
「そういう問題じゃ」
「意味が無い」
「みんな心配を」
「必要が無い」
「……だからッ!!」
突然の激昂。胸ぐらを掴まれ、触れ合いそうな程に顔を近づけられる。
何が起こっているのか、よくわからない。
「見てられないんだよ痛々しいッ……!! 命を、もっと自分を大事にしろッ!!!」
一瞬、彼女に別の顔が重なった。
ああ、なんだ……そういうことか。
「そうか」
「そうだよ! わかったか!!」
「──ああ、実に、くだらない」
「……!」
「私の命は無くならないのだから、大事なんかじゃない。無くなる命の方を優先すべき」
「っ……、……」
「作戦に関わる本部への報告は滞りなく行われているのだから、やはり査問は必要無い、ね。それだけは良かった。ただし、今後は見逃さない」
「……」
「警報器は速やかに修理する。それまで事務仕事は事務室の方で行うことにする」
結局のところ、彼女たちは子供なだけ。私のような大人とは違う。
物事の分別もつかない、感情的な生き物。別にそれを悪いとは言わない。
しかしそれを率いる立場としては、大人の私がもっと合理的にならなければならないのかもしれないな。
「わかった、ね。今後は、私が警報を聞き逃したとしても報告を怠らないこと」
「……うっせぇババア!! 若いもんに全部任せてさっさと引退しろよバーカ!!!」
椅子を引っ掛け倒しながら、食堂を走り去って行った。
本当に、無闇に元気は有り余ってる娘だ。私にも、あんな時代があったのだろうか。
あったの、だろうな。
無鉄砲で、恐れを知らなくて、当たり前のようにみんなと明日を迎えられると信じていた。
そんな幻想を意識することもなく抱いていた、そんな無邪気な子供のような時代が。
願わくば、彼女のような子供たちが、くだらない現実に幻滅しないように。
そのために戦う。私の諦観の日々に残されているのは、それくらいしか、もう。
「なるほど、ねぇ……ホントあんたは……」
いつの間にか、厨房からお婆さんが顔を覗かせていた。
どこから聞いていたのだろうか。秘密保持義務があるとはいえ、あまり聞かせたい話ではなかったのだが。
「一言だけ、言わせておくれ。あたしにとっちゃあんたも子供だよ」
「そうか」
絶対わかってない、みたいな顔をされたがそもそもの問題はそこではない。
命の価値の話だ。
命を大事にされた結果が、この
私の命など、大事にされるべきじゃなかった。そうだろう。
なのに何故生きるのか。
それは、みんなに大事にされて、みんなの代わりに生き残ったから。
だから、みんなの代わりになる。それだけでしかない。
あの戦いの時、私にはまだ『再生』の魔法は無かった。
治癒力という面で兆候のような物はあったが、覚醒までにはかなりの時間が掛かっている。きっと才能が無かったということだろう。
もしもあの時点で固有魔法に覚醒していたならと、無意味なことを後から何度も考えた。
ちっぽけな私の命とほんのちょっとの平和の引き換えとして、私の世界は失われた。
全部が終わったずっと後に覚醒したのが、『再生』の魔法。酷い皮肉だ。
壊れたレコードのように、何度も過去を再生している。決して戻りたい始まりには戻れないのに。
過去をなぞり、いつかのみんなのように、誰かの命を大事にしていく。
ただ、それだけしかない。私自身に意味なんか、何も無いのだから。
「……朝食、用意できてるよ。食べるかい」
「食べる」
緩慢に食事をし、自己無く戦い、無為に眠る。ただ作業のように繰り返していく。
終わりはあるのだろうか。果たして、
「いただ────
……タイミングが悪い。
でも、今回は聞き逃さなかった。
魔獣警報、の……通常警報の方。
特別警報でないなら、大したことはない。
「鳴った」
「鳴ってしまった、ねぇ……」
「行ってくる」
「……気を付けるんだよ」
気を付ける必要など、一切無い。
どんなものも、私に傷一つ残すことはできない。
私は不死にして、不滅の兵器。
第七等級魔法少女、『再生』なのだから。
さぁ、今日も戦おう。
くだらない世界を生きる、みんなのために。
・・・
※第二部隊の非魔法少女職員は年齢層やや高め。昔からの隠れファンが結構多い。
『始まりの魔法少女隊』
対魔獣組織の前身となる魔獣討伐集団。なので対魔獣組織を未だに魔法少女隊と呼ぶ人も結構いるし、現在も普通に通称として通じる。
元々は国家権力なんか全く関わらない自警団的存在だった。活動期間はおよそ2年。
リアルタイムでその活躍を見ていた人に、多大な熱狂と僅かな失望を与えて活動を終える。
メンバーは指揮官と、勇気ある7人の魔法少女。ぶっちゃけここだけ切り取ればソシャゲっぽい。
『再生』さんは最後に加入した末っ子。マセたクソガキだったので割と可愛がられていた。
最初期は固有魔法なんか無いも同然だったため、戦闘方法はほとんど魔力弾などの基本魔法頼り。
とはいえ使う基本魔法にもある程度の個性はあり、魔力弾が得意なタイプや身体強化が得意なタイプ、魔力察知が得意なタイプなどキャラ被りは意外と少ない。
ロリ『再生』さんは身体強化タイプで、脳筋ステゴロバトルジャンキーなバーサーカーだった。
強化により防御力も治癒力も高かったのでガンガン前線に出て傷だらけになり「命を大事に!」としょっちゅう怒られていた模様。
そうやって怒ってた人の方が先に命を捨ててるんだからほんと世話無いよねっていう話。