日本召喚2021   作:秋津とんぼ

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前話を投稿してから作品を読み返し、私はその文章の拙さと展開のぶっ飛び具合に戦き、自らの行動が実に愚かだったことを知りました。
なのでやけくそながら一章を連続更新します。


2 惨劇

 クローヴェルとデ・ロイテル両王国が、日本と接触してから二ヶ月が経とうとしていた。

 「ネクサリアもずいぶん変わりましたね」

 「ああ」

 「…彼らが穏やかで良かったですね」

 そう言っているのはネクサリア魔導騎士団長のノエルと宰相のフェルミンである。二人は郊外の丘のアリエの木の梢の下から夕暮れのネクサリアを見下ろしていた。眼下には、広い船渠に泊まる金属製の大船、忙しく動き回る造船所のものたちに舗装されている大通り、その上を自転車が走っていく。

 まだ、ここは長閑だ。

 

 3月9日、ナクリア王国王都フィール・バンブュラス、アクハ宮大広間。

 「兵50万、飛竜(ワイバーン)500騎、全て揃いましてございます」

 「うむ」

 王は鷹揚に頷いた。

 「して、此度の戦、どれ程かかる?」

 「一年もかかりますまい。確かに我々は二国同時に相手取りますが、一つは農民の国、もう一つは不毛の地に住まう者ども、我らには敵いましょうか」

 「ああ、そうだ。前に遣いを送ってきた、ニホンとか言う国については、大丈夫か?」

 「はっ、遣いのものたちは飛竜(ワイバーン)を見て、初めて見たと驚いておりましたのは陛下も聞き及んでおりましょう。竜騎士のいない(いやし)き国なれば、なおさら我らに敵う事はないでしょう」

 それを聞いて、安心したかのように王は笑う。

 「ふっふっふ……では、ここに、東カラキア遠征の開始を宣言する!」

 玉座から立ち上がり、王ラスル・バンブュラス13世は高らかに叫んだ。

 

 翌日明朝、国境から約13km東の都市エーヒ。ここでは、防衛指揮官ジェスタが、焦燥に駆られていた。

 エーヒ駐屯戦力は歩兵2千5百、重装歩兵5百、騎兵8百、軽騎兵4百、弓兵60、飛竜(ワイバーン)20騎、魔導騎士団51人だ。

 王国軍の実に1割が詰めているが、然し前方に位置するナクリア軍はその20倍はくだらないようだった。

 「クソ、王都からの返答はまだか!」

 「あ、き、きました!”現在ソチラニ急行デキル余剰戦力ナシ、援軍ノ整ウマデえーひヲ死守セヨ”とのことです!」

 「があっ!何をチンタラと…」

 時は無常に過ぎていく…

 午前9時、突如として、前衛の軽騎兵が居る西4km地点から赤い煙が上がり、同時に切迫した様子の魔信が入った。

 「ナクリアの飛竜(ワイバーン)多数が離陸し、エーヒ方面へ進行、同時に敵軍主力……数万がモア河(国境)を渡り、侵攻を開始した!此より我が部隊は右前方の渡河中敵歩兵部隊へ突貫、敵軍を削ぐ!…………トゥーフェン・クローヴェルゥウウゥゥゥゥゥ

 遠ざかっていく(とき)の声を最後に、魔信は途切れた。

 ジェスタは吠えた。

 「第1、第4飛竜隊は全騎直ちに上がり、敵飛竜(ワイバーン)にあたれ!騎兵は側面より、歩兵は正面から敵に当たって、エーヒに奴らを寄せ付けるな!重装歩兵を最前列におけ!魔導騎士団は敵の魔導師にあたりつつ他の敵戦力も迎撃を頼む!」

 飛竜(ワイバーン)が舞い上がる。全力出撃の20騎、隊は二つに分かれ、一つを水平飛行、一つを上昇限度まであがらせる。

 やがて、西の空に、黒い点が大量に現れる。その量に竜騎士たちは驚愕する。

 ナクリア王国東征軍先遣隊第1次飛竜(ワイバーン)攻撃隊、七十騎。

 一度発てば七つの森を飛び越え、一度羽ばたけば七つの軍を滅ぼすと言われた飛竜(ワイバーン)が、七十。その衝撃を覚悟に変え、第4飛竜隊はその中へ進路を取る。

 然し、第1次攻撃隊はすでにクローヴェルの飛竜(ワイバーン)を射程内に捉えていた。

 「空間制圧射撃だ、火炎弾、撃て」

 数秒後、壁の如き七十発の火炎弾を浴びた第4飛竜隊は、一騎も空にとどまっていなかった。

 その数十秒後。

 「しまった!上田!」

 誰かが叫び、5秒もしないうちに太陽を背に上から突っ込んできた第1飛竜隊がすれ違いざまに火炎弾を放ち、なんと全弾が命中し十騎が落ちる。

 だが、奇跡はこれで終わりだった。

 すぐ乱戦になり、ナクリア側は数の暴力で位置の不利を圧倒する。

 そのうち、一人のクローヴェル竜騎士が気付き、叫んだ。

 「背が黒いぞ!奴ら、セグロワイバーンをならしやがった!」

 一般的に騎乗用とされるのは、最も数が多く、人になれやすいミドリワイバーンと呼ばれる種だが、今回ナクリアが投入してきたのは、気性が荒く、人になれにくいとされるセグロワイバーンだった。ミドリワイバーンより火炎弾の形成にかかる時間が短く、威力も少し大きいと言われ、調教は難しいはずだった。

 その驚愕も冷めやらぬうちに、第一飛竜隊も全て撃墜され、その亡骸で敵味方を問わず、兵を押し潰した。

 「地上部隊を援護する。各自支援射撃を実施せよ」

 何事もなかったかのような指示に従い、やや数の減った飛竜(ワイバーン)が火炎弾を地上に向けて撃ち出す。

 「くそ、対空支援を行う!」

 「あたれあたれあたれえええぇぇぇぇぇーーーー!!」

 だが、悲しいほどに当たらない。

 「くそ、俺の自慢の新雷撃魔法(ネオ・ボルティア)が…」

 その間にどんどん味方がやられていく。

 「…仕方ない、全団員に告ぐ。友軍上空へ氷生成魔法(アイシャーディ)をかけろ」

 「団長!?防壁魔法(ウォーリア)の間違いでは——」

 「間違いではない、このような時まで俺をイラつかせるつもりか、ファナ」

 彼女は黙った。

 数秒後、クローヴェル側の上空に氷の壁が現れる。

 「防がれたか…全騎、攻撃を一点に集中して氷を溶かせ!」

 それはなかなか溶けない。然しナクリア軍は確実にクローヴェル軍を押していた。

 「ふむ、前線はどうだ?」

 「はっ、確実にクローヴェルの亜人どもを押していますが奴らが氷の防壁を張ったので飛竜(ワイバーン)が使い物にならず…」

 「氷生成魔法(アイシャーディ)か」

 彼、ナクリア東征軍先遣隊指揮官左将軍ナデンは天幕を出て近くの地面に魔法陣を描き始める。見るものが見ればそれは魔法効果増幅の魔法陣だと分かっただろう。

 「…魔法発動阻害魔法(キンガイア)

 発動の瞬間、魔法陣により通常の100倍程度の効果が増幅され、圧倒された魔導騎士団の氷生成魔法(アイシャーディ)は崩れ去った。同時に魔法発動阻害魔法(キンガイア)の通常効果で術者のナデン以外は魔法を使えなくなり、さらに崩れた氷の断片がクローヴェル兵に被害を出させていた。

 「魔獣兵団を出すまでもなかったようだ」

 「今だ!たたみかけろ!」

 数の暴力に押され、エーヒは、午前10時半ごろ、陥落した。エーヒはその後略奪と虐殺が行われ、生き残った魔導師ファナと10人の市民によりこのことは瞬く間に全土に広まった。

 

 同日夕方、クローヴェル城玉座の間。

 「エーヒが落ちたか…」

 国王ケイラ・クローヴェル13世が言う。

 「エーヒ騎士団の生き残りによると攻撃してきた部隊は約十万だったそうだ。奴らの規模からしておそらく総軍勢はその数倍あるだろう。どうだ」

 そう入って軍務卿を見る王。

 「確実に防げません。よくて一年です」

 その返事にしばらく沈黙が場を支配する。

 と、そこに外交部の若手幹部が飛び込んでくる。「いずも」の来訪を告げたあの人である。

 「何事だ!」

 「はい、日本国が参戦の意を表明しました!」

 その言葉に会場が沸き立った。

 

 3月13日、ネクサリア北西270km、そこにいたのはナクリア王国が12年かけて準備した二段櫂帆船「クーリア」6百隻、輸送船3千4百隻、計4千3百隻の、往時の古代ローマ帝国海軍を余裕で殲滅できる大艦隊が、6ノットでネクサリアに向かっていた。




小ネタ解説
・バンブュラス
 とにかく変わった名前にしようとして捻り出した記憶がある。綴り字は無理矢理だがBanbwuras

・飛竜隊のナンバリング
 軍全体で通し番号。旧作の文中ではエーヒに第1、第4飛竜隊、ネクサリアに第3飛竜隊、第4話の舞台である都市に第2飛竜隊がいると記述されているが、その他の部隊はどこにいるか不明

魔法発動阻害魔法(キンガイア)
 出鱈目な効果だが作中最強の魔法ではないと設定集の一番古い部分に記述されている。特に強い十の魔法”禁法”とやらにも入っていない。なんでさ。

・クーリア
 モデルは東ローマ帝国の運用した二段櫂帆船「デュロモイ」(ドロモーンとも)。

 ー各国の反応ー
 日本「虐殺許すまじ!」海外資産約1018兆円と各企業の工場は失われ、原油の国内備蓄と国内生産量は圧倒的に足りなくて全国の自動車は公共交通機関と必要最低限の自衛隊車両しか動かせず、国内の原発を無茶を承知で徐々に再稼働させ再生可能エネルギー系統を合わせて電車だけはフル稼働しているものの、第三次産業も大打撃を受け失業者が増え、転移に巻き込まれた難民や在日米軍に中国の哨戒艦一隻やロシアの北方領土駐留部隊とすでに核を一発発射——無人の海上に着弾——してしまった原潜等への対応に追われ外務省は残業三昧、インターネットはサーバー系の理由で動画投稿サイト最大手がようつでからニカ動に移り、食卓からは輸入に頼っていた食料や小麦粉のパンが消えた接触直前の生活に逆戻りしたくないから食糧庫は奪わせないぞナクリアァ!
 クローヴェル王国「ほっ」
 ナクリア王国「出だしは上々」

 ー次回予告ー
————「…ここまでか」
 突如としてクローヴェルに侵攻したナクリアに対し、日本はクローヴェルを支援することを決意、だが然し、すでにネクサリアにナクリアの魔の手は伸びていた——
 次回、「反撃」
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