日本召喚2021   作:秋津とんぼ

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自分の頭脳の限界を感じるこの頃
世界文学全集全部読破すれば何とかなるんだろうか……


28 列強の落日?②

 デリア放送公社エルフィリア中央放送局。

 

 「止まれ!何者だ!止ま————ぅがっ!」

 

 「クリア、突入せよ」

 

 エルフィリアン新聞社。

 

 「んん?来客ですか?こんな時間になんの————ヒィッ!?」

 

 「手を上げろ、抵抗しなければ撃つ事はない」

 

 王都造兵局。

 

 「……持ってけドロボー」

 

 「かたじけない」

 

 シャナル邸。

 

 「こんなっ、こんな事が、許されると————かはっ」

 

 「……目標の死亡を確認、撤収する」

 

 第二連隊は破竹の勢いで市街東部を占拠した。

 そもそも夜明け前でろくに人員がいない上に、警備員や守衛といった数少ない人員も警報で叩き起こされて困惑しており、咄嗟に持てる拳銃や小銃程度では軽機関銃すら有する歩兵の進撃を止める事は不可能であった。

 第二連隊が有力な抵抗を受けるのは、中央部に突入してからとなる。

 

 「うわっ!」

 

 先頭を進んでいた兵士が蜂の巣になったのを見て、後続が思わず声を上げる。

 

 「くそっ、近衛め、もう来やがったのか!?」

 

 「煙幕張れぇ!」

 

 一人が壁から頭だけ出して確認すると、闇の中に黒々とした塊が即席のバリケードと共に陣取っているのが見えた。直後射撃が彼の方に集中し、慌てて頭を引っ込めた。

 

 

 

 「流石に25分は時間をかけすぎたか」

 

 リディアルトが呟いた。

 

 「近衛騎士団め……このまま突き進んでも待つのは破滅だとわからないのか」

 

 近衛騎士団は連合王国結成以前からエダンヤに存在する軍組織であり、その性質上大軍衞の管轄下にはない。ラファ川西岸にある新宮殿(ファラス・ヌーエ)と連絡橋で連結された旧城(ケスル・オーロ)を拠点とし、宮殿に敵が迫った際の迅速な兵力展開を可能にさせている。

 第二連隊の基地のある東側から強襲している現在、ラファ川を掘として、ちょうど旧城(ケスル・オーロ)が馬出のようになっていた。

 

 「とりあえず南側に進出して逃走路を断ち切りましょう。第一空挺連隊の方はまだ十数分はかかるそうですから」

 

 「第一連隊も引き込めればよかったのだが。……第三連隊はどうした」

 

 「数分前接敵の報告を後に音沙汰ありませんが……」

 

 「何?」

 

 その時、外から爆音がした。

 

 「なんだ!?」

 

 「敵だ!」

 

 誰かが叫んだ。

 

 「魔導師だ!」

 

 「第23師団だ!!」

 

 天秤は、早くもクーデター側の劣勢へと傾きつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、エルフィリア南方数十km。

 

 「見逃してくれないかな?」

 

 「深夜に敵もいないのに出撃しようとする機甲部隊をか?」

 

 ハインリヒは路上にて、第23魔術師団々長タディエス・"タディエセス(タディエスの子)"・ベアロと向き合っていた。

 第23魔術師団はハルマの王都十三騎士団やアリテトスの"矛"部隊、リルセイドの二十七キタイといった各国の魔導騎士団の生き残りをまとめて創設された諸国連合騎士団を前身とする魔導師部隊で、師団と号しているがその実数は2000人程度だ。ほんの連隊規模、しかしそれは、現代の魔導師部隊として見ると破格の数である。魔導師が戦場での役割を銃火器に取って代わられた理由は、一番下っ端の者でさえ銃一丁の方が安く上がること、そして才能の有無で戦力が大きく左右され、その才能のあるものが大きく限られるということによるが、それは即ち、その限られた天才であれば費用対効果が釣り合いむしろ安くなるということに他ならない。

 最盛期にデリアに溢れていた戦闘魔導師の数は一万五千を超える*1というから、どれだけ切り捨てられたかわかるだろう。

 その上澄みのおよそ二割が彼らの前に立ち塞がっていた。

 ハインリヒ率いる第二戦車連隊が運用しているのは旧型のゼキ1型および重戦車グランゼカルファである。デリア戦役にて試験戦車大隊としてエダンヤ王国が投入したのと同じものだ。その運用思想は移動できる極大火力、現在のデリア機動砲兵に等しい。遠距離から敵を一方的に攻撃する設計から近接戦闘は考慮されておらず、武装は主砲のみ。数年前の改修で車長用機銃が追加されたが、車外に露出して戦う必要がある為有力な抵抗は難しい。加えて技術の未熟さから魔導機関が大型化せざるを得なかったため、ゼキ1型は9m、グランゼカルファに至っては21mの巨大さを誇る。

 その分主砲だけはそれぞれ155fn、300fnと目を疑うほどに大きいが、彼我の距離がゼロに等しい現況では、普段戦力として恃んでいるこの兵器は単なる巨大な的に過ぎない。

 一対一や多対一ならともかく、多対多では全く抗しようがない敵をどうやり過ごそうかと、彼の頭は必死に廻転していた。

 

 「敵?いるじゃないか、王都に」

 

 「ほざけ。警報が鳴る前から動いていただろう」

 

 「実は内密に指令が下っていたのだ。こんなこと言うとあれだが、ほら、私の母は総司令だ」

 

 「市街戦に戦車は不向きだ。ましてや貴官の部隊は旧式、適さないにも程があるぞ」

 

 ベアロの眼光に、ハインリヒは僅かに右足を後退った。王国最強と名高い彼にしてみれば、親譲りの強大な力をほんの少し込めた程度なのだろうが、残念ながら肉体的には凡人であるハインリヒには強かった。

 

 「命令だからしょうがない」

 

 「その命令は誰からのだ」

 

 ハインリヒは目を泳がせた。

 

 「そういえば、貴官らは一体何でこちらへ来たのか?」

 

 「宰相閣下だ、話を逸らすな」

 

 「そんなに気になるなら、同道されてはどうだろうか」

 

 「同道だと?」

 

 「ええ、このまま言い合っても平行線で、叛徒がのさばるだけ……。ならば、相互に監視もできるこの方がいいだろう?」

 

 「……そうだな」

 

 「では」

 

 ハインリヒはほっと胸を撫で下ろし、背を向けて自機に戻ろうとするが、肩を掴まれてビクッとした。

 

 「何か怪しい動きをしたら、すぐに撃つと思え」

 

 「……ああ、わかった」

 

 ゾッとした。

 声は震えていなかっただろうか。

 胸を押さえながら戦車に乗り込むその姿に、部下に心配の声をかけられた。

 

 「……隊長」

 

 「大丈夫だ。今すぐ最高速で発進しろ。速度差で逃げ切れる」

 

 ゼキ1型とグランぜカルファは本来それぞれ48km/h、36km/hしか発揮できなかったが、数年前に外付けブースターという形で増速され、グランぜカルファで60km/h、ゼキは72km/hに至っている。

 第23師団は本来機動力を補うための兵員輸送トラックなどを所有しているのだが、おそらくはトラック全てをここにいない半分に渡してどこぞを急襲させているのだろう。徒歩移動しかない今の彼らではとても追いつけない筈であった。

 十数秒後、連隊各車は一斉に60km/hで飛び出した。

 

 「アッ、貴様!待て!」

 

 これで何とか王都にはたどり着けそうだ……そう思った矢先、耳を疑うような報告が飛び込んだ。

 

 「た、隊長!ベアロ中将が!は、走って追いついてきます!」

 

 「何だって!?」

 

 キューポラから、後方を振り向いた。

 居た。

 土煙を上げ追いかけながら、憤怒の形相でさまざまな魔法をこちらに向けて放っていた。

 

 「オラオラオラオラオラオラオラオラ」

 

 「うわぁっ!?」

 

 礫魔法(エスピンガルダ)火炎弾射出魔法、七倍(セプティナ・ビギャノン)土槍魔法(ゼルヴァピルム)……。

 真後ろから撃たれているため、菱形で軸線上の攻撃に対する避弾経始に優れている装甲に弾かれ有効打たり得ていないが、ハラスメントとしてはこの上ないものである。

 

 「うっ、撃てっ!近寄らせるなァ!」

 

 指示を受け各車が車載機銃で反撃をするが、迎撃の魔法で溶かされるなり華麗に避けられるなりで実害を与えられない。

 その内、ベアロの放った礫魔法(エスピンガルダ)が、一両のゼキの右ブースターを壊した。

 車列中央にいたそのゼキはたちまちバランスを崩して右へ急旋回、隣のゼキに衝突しその装甲を破壊して中へとめり込む。二両はそのまま隊から逸れていき、やがて地面に激突して擱座した。

 蔓延する恐怖。

 ハインリヒは、右の手が震えていることに気づいた。

 

 第二戦車連隊がスタミナの切れたベアロを振り切り恐怖から解放されたのはそれからおよそ10分も後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新宮殿(ファラス・ヌーエ)

 その一室で、数人の男女がエルフィリアの地図を眺めていた。地図には戦力を示す駒が置かれていて、すでにラファ川より東には旧城(ケスル・オーロ)を除いて白い駒————エㇽラダン側の兵は存在しなかった。

 

 「展開を急がせ過ぎました……まさかこんなに簡単に打ち破られるとは」

 

 苦々しげに近衛騎士団長イクシオンが言った。

 早期の展開に成功し第二連隊の足を一時的に止めた近衛騎士団だったが、深夜ということで出撃できた団員が少なかったことと、道路上の陣地とも言えないような封鎖線しか築けなかったことによる防御不足で、ほんの15分程度で通りごとに各個撃破され、ラファ川東岸を失陥してしまったのだ。

 幸いその間に第八師団第一連隊の出撃が間に合ったことで戦線を保たせられたが、報告が正しければ先程第23師団の一部に急襲を受けたというのに敵に翳りは一切見られなかった。

 

 「まあこうなってしまったからには仕方ないでしょう。それでなんですが、せっかくの数的優位を活かす手はない、第一連隊の一部を突出させて造兵局を奪還しませんか?」

 

 「いや、無理だ」

 

 近衛騎士団参謀ラガエの意見を、第一連隊長シャドレは否定した。

 

 「受け取り予定の装備が造兵局に保管されたままだから主に小銃が充足されていない。彼らを拳銃と手榴弾で突っ込ませる訳にはいかんのだ」

 

 「旧いものならあるでしょう?」

 

 「無理だ。廃棄してしまった」

 

 「……どうして受領前に廃棄してしまったんですか!非常識ではないですか!」

 

 「確かに非常識だが、大軍衞命令で……あ」

 

 「『あ』?」

 

 「思い出したぞ。指令に捺されてあった印が大軍衞次官のものだった」

 

 「全てはエルローイア殿下の陰謀だったということね……」

 

 「そのような呼び方をするでない。ただ"奴"と呼ぶのが相応しいわ」

 

 「はっ」

 

 エㇽラダンに言われ、ミネグモは頭を下げた。

 

 「にしても度し難いものよ。奴はなぜ余に楯突いたのか……」

 

 若き王は、これ見よがしにため息をついた。

 

 「にしても、スコルズランドはまだ見つからんのか?」

 

 「残念ながら」

 

 「残念そうには思えない声色だが……」

 

 ミネグモは苦笑する。

 続いて現在判明している各部隊の位置を確認していると、どこからともなくリンリンチリンと鈴の音が聞こえてきた。

 

 「おや、我が殿下が私をご所望のようです」

 

 「行くが良い」

 

 「では」

 

 そう言ってミネグモは退室した。ふわりと漂う花らしき香りがあとに残り、エㇽラダンはこんな呟きを漏らした。

 

 「……もったいないものよな。アルウェンの元でなければ、誰ぞが味わえたものを」

 

 うっかり聞いてしまったシャドレはこれからのことを思って不安になるのだった。

 

 

 

 彼らが確認していた午前4時50分現在のデリア軍の状況はこうだ。

 

本土軍

 第一師団(駐ディジャグ):友軍

 第二師団(駐ヒッスペリエラ):一部が決起との情報があるが詳細不明

 第三師団(駐ランカーシャ):第一、第三連隊が決起、第二連隊は友軍

 第四師団(駐ストレヴィオン):不明。静観と仮定

 第五師団(駐デストラルナ):不明。静観と仮定

 第六師団(駐ビルフェッツ):不明。静観と仮定

 第七機甲師団(駐ディジャグ):友軍

 第八師団(駐、在エルフィリア):第一連隊は友軍、第二、第三連隊は決起

 第九師団(駐グロルフィンディア):第一連隊が決起した模様、他は詳細不明

 第十一機甲師団第二連隊(駐アミダ、在エダンヤ平野南部のどこか):決起、第十一師団の他連隊は詳細不明

 第十四師団(駐リ・サルシアン):不明。静観と仮定

 第二十空挺師団(駐ディジャグ):一部が決起との情報があるが詳細不明

 第二十三魔術師団第一梯団(駐ディジャグ、在エダンヤ平原南部):友軍

         第二梯団(駐ストレヴィオン):友軍

         第三梯団(駐デストラルナ、在エア):友軍

         第四梯団(駐リ・サルシアン、在バルクス):友軍

         第五梯団(駐グロルフィンディア、在エルフィリア):友軍

 

大陸方面軍

 第十師団(駐マラガ):不明

 第十二師団(駐マイアクレント):不明

 第十三師団(駐ザーラ):不明

 第十五砲兵師団(駐マラガ、在ベルク戦線):不明*2

 第十六師団(駐ハリウクン、在ベルク戦線):不明

 第十七師団(駐ザルタル、在ベルク戦線):不明

 第十八師団(駐ツォンダルバケット):不明

 第十九師団(駐デュローネ、在ベルク戦線):不明

 第二十一師団(駐カルコネ、在ベルク戦線):不明

 第二十二師団(駐ロゴル、在デュローネ):不明

 第二十四師団(駐エルロンディア):不明

 第二十五魔術師団(駐所略、在ベルク戦線):不明

 第二十六師団(駐パールネオス、在ベルク戦線):不明

 第二十七師団(駐フェガリア、在パールネオス):不明

 第二十八師団(駐ディルンカドル):不明

 第二十九師団(駐ラタ):不明

 

その他

 第三十離島旅団(駐ヌビオ):不明

 近衛騎士団(駐、在エルフィリア):友軍

 社会保障局:決起

 情報局:一部が決起

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あまりにも、何も変わらない。

  兄たちは殺し合い、ラファが赤く染まる。

  嗚呼、悲しいほどに何もできない。

  思い出すのが早ければ、やれるのか、成し遂げられるのか。

  何をすればいい、どうやって」

 

 「殿下、今参りました」

 

 「ああ、私のマエリータ!」

 

 飛びついて、精一杯抱きつく。幼い頃から変わらない、暖かい抱擁が優しく包み込んでくれる。

 ずっと浸っていたい。でもだめ。

 この後彼女は死に、もう会うことはないのだから。()までは/殿下を、これから敵の手に引き渡すのだから

 

 涙が一雫、筋となって流れ落ちた。

*1
多いように思えるが、そもそも当時のデリアの総人口は2千万を超えていたから、割合で見るとそう多くない

*2
流石に戦場にあっては反乱は起こせなかったため、シクロは従軍中




前話をノリと勢いで書いたせいで話の展開がよくわからず失速

小ネタ解説
旧城(ケスル・オーロ)
 その名の通り、新宮殿(ファラス・ヌーエ)以前に王城として使われていた城。近代化改修した際に内城と外城の二重の城壁の内内城を取り壊して用地を確保した

・王都十三騎士団
 ハルマ王直轄の軍組織で、王都の守護を王命の次の優先目標としていた。各騎士団はおよそ500から600の騎士からなり、部隊名は”位が低い”(≒弱い)方から順に、青毛、赤龍、緑玉、黒剣、茶猪、黄槍、白虎、紫狼、紺鷹、旭光、銀翼、金冠、近衛となる。デリア戦役にて友軍数千と共に王都ストレヴィオンに籠城、制空権を取られた上で三十万を超す軍勢に全方位から圧し潰されて全滅した

・グランゼカルファ
 総制作数は四両。うち二両が第二戦車連隊に配備されていた

・マイアクレント
 スピリダテス神王国、及びパパールディア連合王国、ぱパールディア共和国の首都だった都市。かつては東方の女王と言われる程の栄華を誇ったがデリア=スピリダテス戦争で破壊され、そのまま凋落

・エルロンディア
 旧称はアケルナロポリ。スピリダテス二代目の王アケルナル1世を記念して建てられた町であり、神王国時代の名残を消し去りたいデリア政府の介入によって改名された

・ヌビオ
 デリア亜大陸南方数百キロに位置する諸島群。デリアの持つ唯一の南半球領土であり、アサグ&ズビンのソデゾグ兄弟の出身地

 ー次回予告ー
————「やっと追い詰めましたよ、兄上」
 戦力の僅かな差でコロコロと優位劣位が入れ替わるエルフィリア市街戦、そこに新たなる闖入者が現れ、天秤はまた大きく傾く————
 次回、「列強の落日?③」

人物・用語まとめでいらないものに入れて下さい

  • 加筆その他で出番消えたキャラまとめ
  • モデル・由来・元ネタ
  • キャラの初出(どの段階で構想されたか)
  • どれもいる
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