本編からフェードアウトした人々のその後を追っかける目的で始めたようですが、二人目の分がおわった話にちょうどよくフェードアウトした人物がいなかったようです。
関係ないけどパリ五輪開会式すごかったですね
まえがき連載:ラケルの冒険
「5 事態の終焉」掲載分
ラケルはあかげの女の子です。としはわかりません。おやもだれだかわかりません。一年ほどまえはたけの近くで血まみれでたおれているところを、ラバンおじさんがひろってきたのです。ラケルという名前もラバンおじさんがつけてくれました。
ラケルには四にんのかぞくがいます。ラバンおじさんとミルカおばさん、レアねえさんにベトエルおじいちゃんです。
3月のあるはれた日、ラケルは遠くから来たラバンおじさんの甥の、ヤコブという人に一目惚れされました。ヤコブは、あなたのもとで七年はたらくので、ラケルとけっこんさせてくださいとラバンおじさんにたのみこみ、ラバンおじさんはそれをゆるし、二日後には二人はしきをあげていました。
ところが、ヤコブはその日のよる、ラケルの口をふさぎ、にもつを全部まとめてラバンおじさんのもとから出て行ってしまいました。
——あんな酷い所なんて七年も居られるか、なあラケル。俺の故郷は彼処より豊かで、麦はよく取れるし、馬も牛も肥えていて、森が一杯あるんだ。
おうまさんをあやつりながら、そんなことを言っていたヤコブは、三日目にとうげでおそってきた盗賊に右肺をいぬかれ、ふらふらとどこかへ消えていきました。どうせどこかで行き倒れるでしょう。
そして、ラケルはそのまま盗賊のすあなへつれていかれました。
To be continued……
「6 二つの帝国」掲載分
かわいそうなラケルはあかげの女の子、いまは盗賊のすあなにはこびこまれたところです。みたかぎり、盗賊たちはこの前のたたかいで負けたナクリアの兵隊さん達がなりさがったみたいでした。
——男の方は逃がしたが、荷物と女は
——へへっ、上物だな。
——お、蜂蜜酒発見。今回はかなり良いじゃないか。
——(うちのお嬢様に似てるな)
——そう恐がんなって、俺達で可愛がってやるから。
盗賊の男たちがはなしています。あわれなラケルはなにも言わず、ただだまって見ていました。
盗賊たちはいつのまにかうでずもうをはじめ、勝ちのこったらしい男の人がラケルに近づいてきました。
男の人がラケルのふくのすそをつかんだ時、入り口のほうからばくはつおんが聞こえてきました。
盗賊たちは一回かおを見合わせたあと、すぐに手に手に得物をもって、入り口のほうへさっとうしていきます。ですが、赤い線がらいげきのように走り、盗賊たちがふきとばされていきました。
赤い線はラケルのもとにもきて、ラケルのあごをゆらしました。
ラケルがさいごにみたのは、自分とおなじようにきれいな赤いかみをした、女の人でした。
ラケルは騎士みたい、とおもいました。
To be continued……
「7 新世界外交」掲載分
ラケルはあかげの女の子、いまはおふねにゆられてどこかへ連れられています。
目がさめたらふねの中でした。まわりにはラケルとおなじように木のおりに入れられた人がたくさんいて、中にはさきほどラケルをつかまえた盗賊の人達もいました。
あの赤い線の女の人は、盗賊や海賊、謀反人の親族などを捕縛し、報酬として彼らの身柄を貰い、彼らを商品として売り捌く
船は何回かにわか嵐に遭いながら、進んでいきます。
すうじつごには、新しい人達がつれられてきました。そのうちの一人の女の子がラケルと同じおりに入れられました。
——わたしはラケル、あなたの名前は?
女の子はこたえました。
——……エステル。
エステルは、いまはよごれてしまっていたけれど、蜜の色をしたきれいなかみをもつ女の子でした。
To be continued……
「8 波乱の星祭り①」掲載分
ラケルはあかげの女の子、いまは蜜いろのかみのエステルといっしょにお船でゆられています。
このまえ泊まったところはクラッセルブリアという国のカデシュという港町だそうで、エステルはそこでくらしていたしょうにんの娘だったそうです。どうやらかぞくがいけないことをしていたらしく、もろとも連れていかれたのです。
ラケルがエステルからカデシュのにぎわいの話を聞いていると、外から交渉共用語で停船命令が聞こえてきました。ふねの中にまで聞こえてくるのですから、そうとう大きいこえです。
しばらくすると、とんと小さなしょうげきがあって、新たなあしおとがしました。臨検のようです。
——此方が書類です。
——此で全てだな?
——はい。
——ふむ、サ帝の指定有
会話の後、人が下に降りて、船にいる皆を見ていきます。
——サ帝のような先進国でも実質的な奴隷売買を認めてるなんてな。
——地球でも変わったのは19世紀中頃だろ。地域によって近代から古代迄文明の差があるんだ、残っていておかしくはないだろう。
交渉共用語でも、サッカラール語でも、ましてや東カラキア語でもない言葉で呟かれたそれを、ラケルは理解できました……理解できてしまいました。
To be continued……
「9 波乱の星祭り②」掲載分
まえがきれんさいは、つづきもののかいのときはおやすみです。
「12 〔ネタバレ防止〕」掲載分
ラケルはあかげの女の子、いまはエステルといっしょにお船にゆられています。
ぜんぜんちがう言葉をはなす〝ひらたいかおぞく〟の臨検から三日、今度はまたべつの船から臨検が掛かりました。
——足らん!我々を馬鹿にしているのか!
——昨秋は此で良かったではないか。なんなら秘蔵のポルノックスの98年モノを……
——貴様っ!我々を侮辱することはロヒリアム公陛下を、ひいては東方連盟全体を侮辱することと同義だぞ!例えメヌエティオグループの一員である貴様等オイテウネム指定有
——あっ()……な、なにを言っておられますか。
——もうよい。
——バカメ……やれ。
短艇がはなれていったそのとき、ふねの前のほうかられんぞくしたごうおんが聞こえ、それにつづいて木がわれたはさい音がしました。
——自分から虎に飛び掛かる兎が居るとは思わなかったぞ。
しばらくすると、船はふたたびうごきだしました。
To be continued……
「13 〔ネタバレ防止〕」掲載分
ラケルはあかげの女の子、いまはエステルといっしょにお船にゆられています。
きょうはラケルがミルカおばさんにおそわったおはなしをはなしてくれます。
むかしむかし、このあたり(ラケルが最初に居た村)にヨシヤという、心やさしく正しいせいかつをする男の人がいました。
春のある日、ヨシヤがモア河へつりにいくと、川ぎしに女の子がたおれていました。見ると、川の中にひっくりがえったこぶねがあります。しかし、ゆきどけ水で川の水がふえたせいでこぶねへはたどりつけません。とりあえず、ヨシヤはその女の子をせおい、家にもどりました。
ところが、一日たっても二日たってもかの女は目をさましません。このままのまずくわずだと死んでしまうかもしれないので、ヨシヤは水を口にふくみ、ちょくせつ口うつしでのませることにしました。すると、のませようとくちびるを重ねたしゅんかん、かの女の目がひらいたのです。
かの女はシャルロッテと名乗りました。名前いがいのきおくはなく、ただ、なんとなく東へむかうというもくてきをおぼえているだけでした。しかし、のってきた小舟はすでにぜんじつ水にながされ、にもつは全てネクサリア湾の底に行ってしまいました。み一つで年ごろの女の子をほうりだす訳にはいきません。しばらく、かの女はそこでヨシヤと共にくらす事になりました。
To be continued……
「14 〔ネタバレ防止〕」
ラケルはあかげの女の子、いまはエステルといっしょにお船にゆられています。
いまはラケルがミルカおばさんにおそわったおはなしをはなしています。
かの女は、とんでもなくかじが下手でした。料理をすればなべをひっくりがえしプムプキンをほうちょうで切ろうとしてほうちょうをおり、せんたくをすればせんたくいたにこすりすぎて服を破き、畑をたがやそうとすればたちまち手にまめを作ったと言います。ヨシヤはそんなかの女を支え、尽くし、やがて好いていったといいます。 そんなある日、二人はアリエという流れの魔導師がシャルロッテによくにた同名の女の子をさがしているといううわさを耳にしました。これを聞いて、シャルロッテは東にいきたいとだだをこね、ヨシヤはそれにしたがいました。
二人はあらたに小舟をつくり、それにのってモア河を下ることにしました。ヨシヤが木をきり、二人でそれを曲げ、綴じ合わせ、五日かけて小舟をつくりあげました。
小舟はほどよい速さでくだりつづけ、少しすると、もうモア河を下りきって、かこうにある名もないぎょ村に辿り着きました。
シャルロッテは浜に来ると、ぱしゃぱしゃと水とたわむれはじめました。そのむじゃきななまめかしさと言ったら、言い表しようがないほどでした。
To be continued……
「15 (ネタバレ防止)」
ラケルはあかげの女の子、いまはエステルといっしょにお船にゆられています。
今はラケルがミルカおばさんにおそわったおはなしをはなしています。
そのぎょ村にたどりついてからしばらくして、シャルロッテは小舟ごとすがたをけしました。ひがたには、北東へのびる小舟のキールのあととかの女のあしあとがのこっていました。
ヨシヤが諦めも付かずそのぎょ村に残っていると、モア河から件の魔導師がやってきました。
かの女にシャルロッテの居場所を聞かれたので、正直に答えると、かの女はヨシヤの左頬が赤くなるほど強いビンタをくわえると、宿に戻りました。ヨシヤが覗くと、彼女は泣いていました。
その後、かの女はぎょ村にとどまり、3ヶ月村でくらしたあと、眠りにつきました。 村の人々は、かの女は死んだものと思い、ぎょ村を見下ろす丘の上にほうむりました。すると、かの女をうめた場所からぎんのみきをした木が生えてきて、みごとにこずえをしげらせたので、人々はおどろきました。
ヨシヤは、このぎょ村の名をネクサリアにしたらどうかと言い出しました。ネクサルは古語でぎんの木を意味します。村の人々はこれをうけいれました。
ヨシヤはその後、もとの村にもどり、よい娘とむすばれ、子をたくさんもうけました。
——おわり。
——これだけ?
——これだけ。きりがわるいでしょ。
To be continued……
「16 〔ネタバレ防止〕」
ラケルはあかげの女の子、いまはエステルといっしょにお船にゆられています。
と思っていると、いつのまにかふなあしはおそくなって、ついにかんぜんに止まりました。ていはくしたようです。
その日のゆうしょくどき、となりの檻に新しいおとなりさんがほうりこまれました。ちょうどさくのすき間から入れられた白パンとコンソメスープを食べているさいちゅうにです。
新しいおとなりさんは、くろい髪をした、ととのった顔をしたじゅんじんでした。しばらく見ていると、せをラケルがわの柵にあずけたまま、とつぜんフクロウのように首をラケルたちの方へ向けました。
――うぉっ!?リベカ大公代理殿!?
――だ、だれですか?たぶん人ちがいだと思います。
――いや、私の覚えている顔と一致している。貴女は……
――その前に名前をおしえてください、わたしはラケルです。
――……ナデンだ。
――で、ナデンさんはどうしたのですか。
――ああ、私は……
・元ナクリア軍左将軍
・危険を感じて東征軍本営を離脱、生き残った
・レミジャンティアに仕官しようとしたが、相手にされなかった
・彷徨っていたら油断した所を奴隷商と連んでいる酒場で眠らされ、市場に
・現在船が泊まっているチェーピンの取引所でオイテウネム指定有
――なるほど……………………あっ
思い出した。私は――――
――そうか、そうだったのか!世界とは、ゲッターとは!
――いやゲッターって何?
The End
小ネタ解説
・ラケルの冒険
本来なら5話の前書きにあったので、4話を読み終えた読者が最初に目にするのがこの話だった。
その場合ラケルが誰に相当するか、もっとわかりやすかったのではないだろうか。
ちなみにラケルのいた村はワルシェからそう遠くない
・旧約聖書家族
聖書ではミルカはベトエルの母で、ラバンはベトエルの息子、その娘がレアとラケル、リベカはイサクの妻で、その息子がラケルを嫁に取るヤコブ
・
犯罪奴隷という呼称を使いたくなくて作り出した。科も
・第一級人型物品販売免許
軍事用の機動ゴーレム以外の全ての人型物品を販売できる
・メヌエティオグループ Menuetio
聖サッカラール帝国の企業といえばこいつら。領内であるネクシミルアを本拠にしていたため、サ帝建国以前から当時は南部辺境伯だったサッカラール家と懇意になり、サ帝の建国・伸長と共に躍進を遂げた。
ちなみにオイテウネムOiteunemはMenuetioの右書き
・ヨシヤの話
魔帝編への早すぎる伏線。伏線が回収できるところまで執筆する前に改稿を決意して断念したため、リメイク版を待つしかない
・フクロウのように振り向くナデン
ナデンの人外ポイント+1
ー次回予告ー
————「このっ……魔帝原理主義者めぇっ!」
次回予告にはインパクトのあるセリフを使うといいってばっちゃが言ってました
次回もまえがき連載です。次々回は(文の読みやすさが)地獄の2章突入ですなHAHAHA——
次回、「閑 まえがき連載② ナデンの冒険」