人間を謳歌せよ   作:雲間

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十一話

 

 無事に処理が完了したらしい仲間達が戻ってきた後、ダンには承太郎による徹底的な指導が施された。その後色々な『処置』を施されてからSPW財団に引き渡されたので、おそらく一生犯罪という犯罪はできないであろう。

 兎にも角にも撃退をした一行は、先を急ぐべく小型船を買い上げ、ガラチから船でペルシャ湾へと移動をすることになった。いつ襲撃に遭うかも分からない為、一般人を巻き込むのはよろしくないと船で行くのは当然ではあるが、購入手続きをしているジョセフ以外には疑問点が生じている。誰が船を運転するのか問題だ。ジョセフが購入を進めている以上、おそらくジョセフが運転できるのではと思っているが、飛行機とはいえ三度も墜落した男の操る船に誰が乗りたいと思うだろうか。しかしそれしか手がないのは分かっているので、不安になりながらも船着場でジョセフが戻るのを待っていた。

 

「おーい、そこの船を買ったぞ!」

 

 4冊の本を持ったジョセフが近づいてきて、ある船を指差す。その船はいわゆるエクスプレスクルーザーといい、居住スペースを持ちながらも十分な速度を出すことができるものだ。数日間しか乗らないのになかなか豪勢なものを買ったなとポルナレフが口笛を吹く。とはいえ快適な旅の方がいいのは当たり前なので、無駄な買い物であるとは誰も言わない。ぞろぞろと乗り込んでいく中で、ジョセフがリヴィンに持っていた本を渡していた。

 

「では頼んだぞ、リヴィン!」

「うん? ……ああ、うん分かった」

 

 リヴィンは受け取った本を一度見てから頷き、船に乗ると甲板の適当なところに座り読み始める。ジョセフも同じように乗り込み、船内を確認していく。各々の整理がつくと、これからに備えて買い物へ行こうという話になった。ジョセフとアヴドゥル、ポルナレフが向かうこととなり、残りの3人は船でお留守番となる。

 買い物組を見送ると、承太郎はさっさと船内へと入って行き備え付けのソファでくつろぎ始めた。花京院も同じように船内で待とうかと考えたのだが、ふとリヴィンが黙々と何を読んでいるのか気になり近づいていく。4冊あった本は二冊組らしく、同じ題名の本でⅠとⅡと分かれているものだった。よくよく題名を見てみると、片方は英語で小型船舶操縦士Ⅰと書かれている。ちなみにリヴィンが読んでいるのはⅡの方だ。花京院は己の目を疑い2、3度瞬きをした。今度は手で目を擦った後、もう一度タイトルを見る。タイトルは変わりもしない。いよいよ自分がおかしくなってしまったのかと、船内へと入っていって承太郎を呼びに行った。

 

「すまない承太郎、少し確認をしてくれないか」

「どうした花京院」

「リヴィンの読んでいる本がおかしく見える」

 

 承太郎は怪訝な顔をしながらついて行き、リヴィンの横に置いてある本を手に取って確認をする。一瞬「あ?」という表情をしたものの、パラパラと捲って中身を確かめ始めた。

 

「船舶操縦士……、悪くねえな」

「承太郎?」

 

 何故か少し嬉しそうに読み始めた承太郎に花京院は少し戸惑ったが、そういえば船が好きだったなと思いつく。しかしこれで本が船舶操縦士で間違いないことは確かになってしまった。もう片方の本を手に取ると、こちらは小型飛行機操縦士と書かれている。何故こんな本を読むのだろうと思考停止できれば良かったかもしれない。だが花京院は分かってしまった。ジョセフはリヴィンにこの船を運転させ、この先で小型飛行機を運転させるつもりなのだ。

 

「そんな本を読ませただけで……。免許とか色々どうするつもりなんだジョースターさん……!」

「今更だぜ花京院。それにジジイが運転するよりマシだろ」

 

 苦悩する花京院へ、本を読み進めていた承太郎からツッコミが入る。そう言われてしまうとそうなのだが、不安は拭えない。だからといって今から違う方法をとれるのかと言われたらノーだ。これが本当に最善なのかと悩む花京院をよそに、2人は本に没入して読み進めていた。

 

 結論から言うと、リヴィンの運転に何も問題はなかった。免許やらなんやらはSPW財団の方でなんとかしたらしい。2冊の本を読み終えた後に試運転でぐるっと一周してからは、まるで熟練の操縦士かのごとく安定した運航をしている。時折する通信も流暢な応対をしており、どんな天才であろうと本を読んだだけでこうはならないだろうと、闇の種族に対して一種の畏怖を覚えた花京院だった。

 

「前に誕生日が分からないと言ったのを覚えているかい?」

「ええ、覚えていますよ」

 

 それぞれが船内の好きな場所で寛ぐ中、結果的に心配する必要はなかったが心配で花京院は操縦しているリヴィンのそばにいた。

 リヴィンから声をかけられた内容について、まずいことを聞いたのでは、と肝を冷やしたのを覚えている。今、リヴィンの種族を考えるとそういう答えになるのも当然と言える。そもそも日付という概念がなかったであろう時代に生まれたのだから。

 

「あれから少し考えていたんだ。誕生日というものがあるとすれば、今日という日が私にとっての誕生日なのかもしれない……と、思ったんだ」

「今日?」

「私はこの日、あの人に救ってもらった。名前をつけてもらった。それがなかったらきっと、私はただ闇の中で生きていくしかなかった。だから、誕生日にするならこの日なんだ」

 

 あの人、というのはリヴィンが度々口にしている『大切な人』のことだろう。名前をつけてもらったというのならば、尚更誕生日としてふさわしいと思える。花京院は名付けた本人ではないので合っているかどうかは分からないが、リヴィンという名前は『live』の現在進行形のように考えられた。『生きている』。数え切れないほどの日数を経ても尚、ここに存在している人物としてふさわしい名前ではないかと花京院は感じる。

 

「なら、お誕生日おめでとうございます。リヴィン」

「……ありがとう」

 

 照れくさそうに返事をしたリヴィンの表情は布の下に隠れて見えないが、きっと微笑んでいるはずだと花京院は思った。

 

 ★

 

 船で無事アブダビまで辿り着いたのだが、これから向かうヤプリーンという村まで行くのに砂漠を横断しなければならないという。ここまで来るに使用した購入済みの車を代価に、ラクダを購入。乗るまでにジョセフがラクダに悪戦苦闘したりアヴドゥル豆知識(今の時期ラクダは発情期で、ちょっと気性が荒いらしいのでそれもあるかもなど)がありながらもヤプリーンへ向かおうとしたのだが。

 

「砂漠……ああ……」

 

 ポルナレフの前に抱えられる形でラクダに乗るリヴィンが、この世の絶望みたいな声で嘆いている。太陽で死ぬ種族として、影のある場所がないに等しい場所に行くのは不安なのだろう。

 

「おおーよちよち、俺が慰めてやるからなァ」

「その慰め方はやめてやれポルナレフ」

 

 リヴィンの頭を乱雑に撫でるポルナレフにアヴドゥルが言葉をさす。砂漠を経由すると言っていた時点で大分リヴィンの雰囲気は固いものになっていたのだが、実際に砂漠に来てからの落ち込みようが半端なかった。布で太陽の光を遮ってさえいれば問題ないのだが、どうにも気分が悪くなっているようで1人乗りが憚られ2人乗りをすることになったのだ。そして選ばれたのは盛り上げ役のポルナレフだった。

 

「私は……駄目だ……」

「そー落ち込むなって! いざとなったら俺が陰になってやるからよ〜」

 

 今度は肩をトントントンとして慰めてくる。ポルナレフからの言葉を受けてか、リヴィンは普通は怖いことを言ってのけた。

 

「頭が残れば後は再生できるから、頭だけ助けてくれないかい……」

「おいおい、それはそれでどうかと思うぜ……」

 

 体も大切にしろよ〜と説教されながら、リヴィンにとって地獄の道を着々と進んでいく。暑さのせいで普段はあるたわいもない会話も少なくなり、皆じわじわと汗を流しながら目的地に進むことだけを考えていた。

 時間が経ち、ラクダが砂を蹴る音と物が擦れる音だけになっていたその場に、うろんげな様子のリヴィンが声を上げた。

 

「……陽は落ちるべきだ」

「太陽への恨み言かァ? まー分からなくはないけどよ」

「恨み言じゃない……。私は夜がくるのを待っていたんだ。しかし13分前には陰るはずの陽が落ちない」

「……どゆこと?」

「この状況がおかしいってコトだぜ」

「やはり、つけられていたのか」

 

 ジョセフが時計を確認すると、リヴィンの言っている通り本来ならば陽が落ち始めている時間帯であることが分かり、一気に皆が警戒態勢に入る。承太郎が双眼鏡を取り出して辺りを見まわし始めるが、特に変わったものは見当たらない。いつものリヴィンなら何かしら見つけてくれそうだが、今は陽が落ちないことがショックなのか一層気分を悪くしている。ジョセフはそんなリヴィンに鞭打つようで悪いとは思いながらも、見てもらうと考えていた矢先、ジリジリと暑さが強くなるのを感じ、温度計を見ると段々と上がっていっているのに気がついた。そして、西から太陽が『登ってきている』。

 

「あれが敵のスタンドかッ!」

 

 登ってきた太陽が不穏な動きを見せた為、全員がラクダから降りて構えると、その太陽から陽を纏った隕石のようなものを発射してきたのだ。その上集中的に落ちてきたのはポルナレフとリヴィンがいる場所だった。

 

「シルバーチャリオッツッ!」

 

 反撃できる他の面々もスタンドを繰り出し、落ちてきた隕石をいなしていく。だが隕石は変わらず集中して2人に降り続けてくる。その事象から何かに気がついたリヴィンは、気分が悪いながらも集団の中から抜け出して走り始めた。

 

「どうしたんじゃ!?」

「おおおおおおおあああああうううううう!!」

 

 若干涙声っぽく聞こえる情けない叫び声を出しながら、そこら中を走って回っている。そして隕石はあからさまにリヴィンを集中的に追って落ちていっているではないか。ここでリヴィンを潰しておきたいという、あからさまな狙いが透けて見えた。とはいえリヴィンだけに隕石が落ちているわけではないので、対応しながら敵を探さなければならない。

 

「うううううううあああああああうううっ!」

 

 可哀想な泣き声をバックミュージックにそれぞれ散って敵を探しに行く。全員暑さでどうにかなりそうだったが、それよりもリヴィンが可哀想すぎて早めに見つけてあげなければという使命感が意識を保たせた。そうして数分後、承太郎がおかしな光景を発見する。一瞬ではあるが走り回っているリヴィンが分身して、今逃げている方向とは逆の方向へと走っていくのを見たのだ。

 

「オラァ!」

 

 近くにあった石を拾い上げ、本人でない方が現れた場所へ全力投球する。するとその空間に『穴』が空き、かんかん照りだった砂漠は瞬時に温度が下がっていく。投げた場所へ近寄って見てみると、穴の空いた空間の裏にいたのは小太りの男性で、承太郎が投げた石が当たって気絶をしていた。鏡を使ってこちらについてきていたのだ。

 

「太陽のカードのスタンドか……?」

 

 あまりにも呆気ない敵スタンド使いの対処に戸惑っていたものの、夕暮れの訪れに安心したらしいリヴィンがパタリと砂漠にひれ伏したのを見て、慌てて全員で近寄っていく。

 

「リヴィン、大丈夫か?」

「私は……全てに……感謝を……」

「駄目そうだなこれ」

 

 明らかに壊れているリヴィンにポルナレフがあちゃーとなり、もう大丈夫だから安心しようと、アヴドゥルと花京院が優しく慰めてあげるのであった。

 




原作風ステータス
リヴィン
★国籍…???
★誕生日…12月後半 ★血液型…不明 ★身長…165cm(可変可能)
★家族…いない
★種族…闇の種族 ★好きな色…青色
★好きなミュージシャン…なし(音楽を楽しむ行為を理解していない)
★好きな芸能人…なし(テレビを見ていない)
★性格…一見理知的に見えるが中身はポンコツ。常識というものを知ってはいても実際に理解しているわけではないので、本人と世間一般との齟齬が生まれている。そのせいで図太いと思われがちだが、中身は割と繊細。地雷を踏まない限りは怒らないが、性別について詳しく探られると不機嫌になる。
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