人間を謳歌せよ   作:雲間

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没った小説などはチラ裏として上げています。


十二話

 

 完全に夜になったらいつもの調子に戻ったリヴィンに笑いながらも、無事砂漠を超えてヤプリーンに到着。ジョセフが村人に交渉をし、セスナ機を譲ってもらうことになった。飛ぶには時間が時間だった為、一泊をしていざ出発……とする予定だったのだが。

 

「今更飛行機を売れんとはどーいうことだ──!?」

 

 病気になった赤ん坊を医者のいる町まで連れて行かねばならない為、お金は返却するから飛行機を使うということらしい。医者へ行って帰るのは明日の夕方。それまで待てる訳もなく、日程短縮でヤプリーンまで来た意味も無くなってしまう。もう一台あるにはあるが、それは故障していて使うことができなかった。あまり取りたくない手ではあったが、単独の飛行機であれば襲われることもないだろうと赤ん坊を連れて次の町まで行くことに決定となる。

 

「ぜってーリヴィンが運転しろ、分かったなジジイ」

「そんな念押しせんでもいいじゃろう……」

 

 リヴィンに一通り本で学ばせたとはいえ、飛行については流石に心配になったらしく、最初はジョセフが操縦すると言い出した。しかしこのように孫からの猛反対をくらい、しょげながらも大人しくリヴィンへ操縦を譲ることとなる。とはいえ助手席には補助としてジョセフが座り、承太郎・アヴドゥル、ポルナレフ・赤ちゃんを持った花京院の順で座っていく。

 

「よし、出発じゃあ!」

 

 ジョセフの掛け声と共にセスナ機のプロペラが徐々に大きな音をたてながら回転、ドンドン加速をしていき陸地から飛び立った。今回試運転していないとはいえ、船の時と変わらずリヴィンは安定した操縦をこなし、通信についてはジョセフが担当をすることに。最初は乗っているリヴィン以外の全員が気を張っていたが、数分して任せて大丈夫だと安心することができた。

 

「リヴィンはなんでもできちまうなー。けど車の運転は俺かジョースターさんがするからよ!」

「そこも任せてくれても問題ないんだよ?」

「いいや、ポルナレフの言う通りだ。私達でできることは私達でやるのがいい。全てをリヴィンに任せる訳にはいかないからな」

「私がやろうとすればできるのに……?」

「できるからこそ、ですよ」

 

 リヴィンの全身から、ちんぷんかんぷんだという雰囲気が伝わってくる。ジョセフはニヤニヤしながらその光景を眺め、アヴドゥルがリヴィンにその理由を説明を始めていく。

 

「長い間、一緒に旅をするからだ。それぞれができることはなるべく分担した方がいい。誰かだけに負担が偏ると、疲れや不和に繋がる」

「私は問題ないよ」

「リヴィンは問題ないかもしれない。だが我々が気になるんだ。心配をするというのも疲労になっていくからな」

「心配は疲労になりうるのか……。私はそんなことなかったから分からなかった。アヴドゥル、ありがとう。ひとつ学びを得たよ」

 

 大真面目に頷くリヴィンが微笑ましく、指導した先生はほんのりと口角を上げた。その近くでポルナレフが大きく口を開けて大あくびをする。緊張が解け、少ししたらやることがなくなり眠くなってきたようだ。

 

「飛行機に乗ると眠くなってくるな〜。すまねーが30分くらい眠らしてもらうぜ」

 

 特に眠りを妨げる理由もない。誰も反対することなく、前にいる2人以外はうとうとし始めていた。さあもう眠りの世界へというところで、怪訝なジョセフの声が機内に響く。

 

「なんじゃあ、この機体は」

「どうしたんですかジョースターさん」

「後ろから何か追ってきている。おかしいのう、特に通信も何もなかったはずだが……」

 

 その言葉に、眠気に襲われていた者の意識が現実へと引き戻されていった。予告のない訪れは得てして襲撃ばかりだ。とはいえここはセスナ機という空の上の小さな箱にすぎず、自由に動ける場所はないのですぐに何かできるわけではない。だが警戒しないよりかはマシだった。

 

「船があって車もあったんだぜ、飛行機があっても不思議じゃねえな」

 

 承太郎がそう言いながら、スタープラチナを出現させて窓から後ろを覗かせる。結構な距離はあったが、確かに一機の小型飛行機がこちらへと飛んできているのが見えた。その間にジョセフが通信機でレーダーに映った相手にコンタクトをとろうとしていたが、何も応答はない。十中八九、敵ではないかという認識が深まったところで『それ』は起こった。

 

「撃ってきやがったッ!」

「何ィ!?」

 

 ずっと監視をしていた承太郎が大きく叫ぶ。かつてのホウィール・オブ・フォーチュンのように、機体を変形させて銃口を創り出し、ミサイルを発射してきたのだ。

 

「ハーミットパープル!」

 

 ジョセフがレーダーにスタンドを接続し、ミサイルがどう飛んできているかを映し出す。小さなドット点が2つ、こちらへと向かってきている。

 

「おいリヴィン、花京院ッ!」

「ハイエロファントグリーン!」

 

 承太郎の声と同時にセスナ機が一気に下へと傾く。シートベルトも何もない機体であったが、重力に従って皆が落ちることはなかった。今の機内はハイエロファントによる触脚で緑に染まっており、全員をシートから離れないように縛り付けている。その花京院の腕には赤ん坊の入っている籠があり、しっかりと握られた上で更に触脚によって護られていた。

 機体は下降を続けていたが、レーダー上で飛んできたミサイルが追尾型ではなく垂直に発射するものだと分かると、下がるのをやめて真っ直ぐ飛ぶ形へと戻していく。それぞれにかかったGで体に負担がかかり、ポルナレフやアヴドゥルが若干気分を悪くしていた。赤ちゃんなどもっての他だろう。熱で朦朧としているとはいえ辛いはずだ。だが敵にそんなことは関係ない。承太郎とレーダーから再びミサイルが発射されたと無慈悲な宣告が入る。

 

「どーすんだよぉ! こっちからじゃ何もできねえぜ!?」

「しかしあまり長引くとこちらの身が持たん!」

「ならやるのはひとつだぜ」

 

 ポルナレフとアヴドゥルの言い合いに、承太郎がはっきりとした声で意見を通す。

 

「こっちから行くしかねえよなッ!」

「分かった、行くよ承太郎」

 

 リヴィンなりにできるだけ皆に負荷がかからないように気をつけながらハンドルを操り、承太郎とジョセフの指示を受けながら機体を最小限に左へ傾け、飛んできたミサイルをギリギリで交わしていく。その勢いのまま旋回をしつつ、絶え間ない追撃も同じようにかわしていった。

 ここまでミサイルしか撃ってこないのは、『それしかない』のか『それ以外』の手段を隠しているのか。機関銃などが創り上げられても何ら不思議ではない。むしろ近づく上でそれが一番の脅威とも言える。だからといって近づかないという選択肢はもう存在していない。

 近づくにつれてはっきりと見えてきた敵機は、あの村に故障していると言われて乗るのを断念したはずのセスナ機であった。これまでの例からして、スタンドの能力で故障などなかったことにして動かしているのだろう。操縦席にいるであろうスタンド使いはガラスの反射で全く見れない。

 

「やれるか花京院」

「勿論ですよ、承太郎」

 

 花京院はふた返事をすると、触脚自体はそのままにハイエロファント本体を機体の外へと出して敵機へ体を向けた。そして密かにとある別作業を同時進行させながら、胸元にエネルギーを凝集させ、放つ。

 

「エメラルドスプラッシュッ!!」

 

 案の定というべきだろうか、敵は機関銃を創り出して対抗をしてきた。しかしながら読んでいた花京院はエメラルドスプラッシュをまばらにではなく集中的に放ち、同じような弾幕状にすることによって防御をしたのだ。とはいえ永遠にこの膠着状態が続くわけでもない。敵が新たな何かを創り出し攻撃してくる可能性は全然ありうる。

 だからこそ、花京院は隙を与えぬよう別作業を行なっていた。敵からは機体に隠れて見えない箇所で作り上げた、大きなエメラルドの宝石である。

 

「オラァ!!」

 

 それをスタープラチナが持ち上げ、弾幕同士の戦い合いになり始めてすぐにそのエメラルドを投擲してやった。このような反撃は想定していなかったのか、煌めく緑の直撃をモロに受けた敵機はクルクルと回転をしながら空から地獄へと堕ちていく。だが最後っ屁といわんばかりに機関銃をぶっ放したままだったせいで、ある被害が発生してしまった。

 

「oh my god! 最後の最後でやりおったな!」

 

 機体のどこか不味いところを弾丸が貫いたらしく、ビービーッと機器から警告音が鳴り始める。このまま町まで行くの危険と判断、砂漠で不時着をし救難信号を出すことにした。再びの砂漠とはいえ一応セスナという屋根があるおかげか、リヴィンはそこまで気を悪くしていないようだ。

 

「リヴィンが操縦せんでもこうなったと思わんか、承太郎」

「俺はジジイよりマシな結果だったと思うぜ」

「孫が厳しいッ! おじいちゃんは悲しいぞ〜ッ!!」

 

 そう言いながらライターをカチャリとしてタバコを吸おうとする承太郎に縋ろうとするジョセフを、アヴドゥルがまあまあととりなしている。その横で救難信号を出している以上移動できないため、他の者は野営の準備を始めていた。花京院はずっと機内で赤ん坊を持っていたので、そのままの流れで世話を続けている。

 花京院は今朝、夢を見ていた。内容は覚えていないが、恐ろしい夢であったのだけ覚えている。赤ん坊の泣き声、宿を出た瞬間に見かけた犬の死体。既視感が重なり、赤ん坊に対して何故かあまり良い感情を抱くことができなかった。しかしそれでも幼き命を誰よりも護らねばならないということは理解している。だから、負荷についてもあるが一番厳重にしたのは赤ん坊だった。

 その当の赤ん坊のおしめをそろそろ変えるべきだと分かってはいるが、割となんでも卒なくこなす花京院でも知らないことはできない。恐らくやろうと思えばできなくはないだろうが、赤ん坊というものはデリケートだ。何かがあってはいけないとジョセフに指示を貰おうかとしたところ、リヴィンが近寄ってきた。

 

「どうしたんだい」

「おしめを変えてあげようと思ったんですけど、正しいやり方を知らなくて」

「それならやったことがある、私がやろう」

 

 変えたことがあるのかと驚いていると、テキパキと熟練の戦士が対応したかのようにおしめを綺麗に変えていった。あまりにも早すぎる対応に目を瞬かせていると、リヴィンが昔話をし始める。

 

「大切な人のところには子供達が集まりやすかったんだ。それに私はホリィのも変えたことがある」

「ホリィさんの……!?」

 

 なんだか想像できないが、今の手つきを見て否定する要素はない。リヴィンの種族を鑑みるとやっていても不思議なことではないのだが、あまりにも『リヴィン』という人物から離れている行為だと花京院は思ってしまった。

 

 ★

 

 夜の帳が下り、それぞれが寝袋の中に入り込み静けさが場を包み込んだ。

 

 花京院は気がつけば『また』遊園地の観覧車内に何故か寝袋に入ったまま横たわっていた。そうして思い出したのだ、今朝見ていた夢の中で敵スタンドである『死神』のカードをもつデスサーティーンに襲われていたことを。その夢の中で赤ん坊の声を聞き、花京院を殺そうとしたデスサーティーンの鎌で犬が死んでいたのだ。既視感を覚えるのも当然だった。

 対処をしなければならないと思考を切り替えてスタンドを出そうとしたが、何故か出てこない。生まれてこの方ずっと一緒だったスタンドが出てこないなどなかったが故に、花京院の脳を酷く混乱させる。

 一度大きく深呼吸をして自身を落ち着かせ考える。ここと現実では違うことは何か。夢の中である。夢の中だからスタンドを出すことができないのではないか。最初の夢と違い何故か寝た時と同じ学生服でなおかつ寝袋があった。そこが重要なポイントなのではないだろうか。

 

「ラリホー」

 

 そこまで考えたところで、今にも簡単に命を奪えそうな鎌を持つピエロじみた死神が、観覧車の窓からこちらを覗き見ている。デスサーティーンだ。窓など元から存在していなかったかのようにすり抜け、箱の中へと入ってくる。スタンドが出せない以上、どう対抗をすればいいのか分からない。スタンドにはスタンドによる攻撃しか通用しない以上、今ここで懐にあるナイフを使って戦っても勝ち目はないのだ。どうすれば良いのか頭を巡らせている中、デスサーティーンが声を上げる。

 

「おれはイレブンマンス! あとちょっとで記念すべき一歳の誕生日を迎えるッ!」

「え?」

 

 急に告げられた言葉。11ヶ月。一歳。その言葉は、デスサーティーンのスタンド使いが1番近くにいた赤ん坊であると言っているようなものだ。あまりにも信じ難い話であるが、これほど強力なスタンドならば距離が近くないとおかしい。最初に夢を見た村の中でならともかく、飛行機で移動した場所に先回りなんてものは不可能だろう。だから、デスサーティーンが言っていることは真実だ。

 

「おれのスタンドは最強だ! 無抵抗なおまえらをいくらでも嬲り殺しにできるッ!」

「く……っ!」

 

 花京院にギリギリあたらないスレスレのところで鎌がブン回される。風圧を感じながら、狭いわずかな空間で後ずさった。しかし不思議なことに、デスサーティーンは花京院を追いかけることなく、挙げ句の果てには振り回していた鎌をそっと降ろした。

 

「けど花京院、おれは死にたくねーんだ」

「それは誰だってそうだろう」

「そうだ。そしておれは赤ん坊だ。そんなおれをおまえらと一緒に殺してやろーとするなんて思ってなかった」

 

 飛行機での件を言っているのだろう。あの襲撃が成功していたら、赤ん坊は今こうやって夢の中にすらいなかったはずだ。とはいえ襲撃してきた敵スタンド使いも、よもや赤ん坊が「死神」を持つスタンド使いであるだと思っていなかっただろうが。

 

「だから今回だけだ。今回だけ見逃してやる。次会ったときがおまえらの最後だ。まあ今のことは起きたら忘れちまうんだけどな」

 

 指差しながら花京院にしつこく今回限りだと言うデスサーティーンは、花京院の制服の色を少し違うなと眺めてから『夢』を消し去った。

 

 朝が来て、救難信号を受けた救助隊がヘリコプターで砂漠へ降り立った。赤ん坊は無事に病院へ引き取られていったのだった。

 




スタンド名:1984
【破壊力 - B / スピード - A / 持続力 - D / 射程距離 - B / 精密動作性 - C / 成長性 - E 】
空に飛び立てるものを使えるようにし、飛行機に装備されているものを創造し使うことができるスタンド
ただし本人の飛行機や搭載されている装備の知識がある程度必要であり、スタンド使い本人の知識があまりなかった為、ホーミング性能のあるものを創造することができなかった。本人が勉強していればもっと凶悪なスタンドになりえただろうが、そうはならなかったのである。
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