人間を謳歌せよ   作:雲間

28 / 49
※前話を16日午前にアップしています


二十八話

 

「WRYYYYYYYYYYY!! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

「オラオラオラオラオラオラァ!!」

 

 承太郎とDIOの生死を賭けた拳のぶつけ合いが始まった。

 

「実にッ! 実に素晴らしい! フフフハハハハハハ!! ザ・ワールド!」

 

 DIOは完成した自身の身体を見せつけるように、長く時を止めながら承太郎を痛ぶっていく。5秒、6秒、7秒、8秒。3秒も秒数を伸ばしたことを、殴りながら笑みで歪んだ口で告げてくる。稼動可能な2秒の中で飛んでくる拳に相殺するように反撃をするも、たった2秒ではたいした反撃にならない。最後に渾身の力を込めた拳は空振り、振り返ったところでDIOからの痛恨の一撃が承太郎の肩に突き当たった。承太郎はリヴィンを押し潰していたブルドーザーにぶち打ち当たり、衝撃でブルドーザーごと吹っ飛んでいく。

 そうしてブルドーザーがどかされた結果、リヴィンが潰れていた場所が視界に入ってしまった。正直なところグロテスクな光景があるのは分かっており、見たくなかった場所であったのだが、どうしても物理的に目の引くモノがあったのだ。『それ』が何であるかは判別もできず、リヴィンが何をしたのかも理解できなかった。

 

 だが、もしかしたら。

 

 DIOは上空におり、足元にある『それ』にまだ気がついていない。痛む体をおしてスタープラチナを動かし、ブルドーザーから機体の一部をもぎ取ってDIOへと投げる。

 

「オラァ!」

「随分と手ぬるい攻撃だなァ!? 承太郎ォ!」

 

 ザ・ワールドが払うように攻撃をいなしたが、注目を依然承太郎から逸させないことには成功した。

 あちらこちらが痛みを訴えてやまない。血も垂れ流しっぱなしだ。どこが骨折しているのかすら分からないほどだった。しかし止まってはならないとスタープラチナを出現させ、再度DIOへと攻撃を仕掛けにいく。

 

「オラオラオラァ!」

「無駄無駄無駄無駄ァ! ザ・ワールド!」

 

 時が止まる。DIOのザ・ワールドが迫ってくる。1秒経過。やれると思った瞬間にやり返すしかない。2秒経過。ザ・ワールドの拳が迫る。3秒経過。幾多ものパンチがスタープラチナに降り注ぐ。4秒経過。ここで同じく時止めを発動させて反撃を開始する。5秒経過。拳のぶつかり合いが続く。6秒経過。承太郎の時止めが終了し、ザ・ワールドがスタープラチナを一方的に殴り始める。7秒経過。スタープラチナが吹っ飛ばされ、承太郎も吹っ飛ばされる。8秒経過。DIOが追い討ちをかけようと、承太郎に近寄ってくる。時止めが終了し、動けない承太郎にDIOが止めを刺そうとザ・ワールドの拳を振り上げた……はずだった。

 

「うがあッ! なんだ……、なんだこれはッ!? 体が、しびれ、ぐ、ぐう!」

 

 突如DIOは体をガタガタと震わせ始め地面へと崩れ落ちていき、ザ・ワールドを出現させることすら困難な状態に陥ったようだった。まるで内側で何かが暴れ回って止められないように見える。承太郎はDIOに殴る衝撃は与えど、中身をどうこうすることまではできていない。ひとつ似たような方法はあるが、それはまだ使用してすらいなかった。

 

「う、うぐおああああ!! 承太郎ッ! 貴様何をした!!」

「何かしたのはお前の方じゃないか」

 

 遠くの地面の方から、はっきりと通る声が聞こえる。2度と聞くことがないと思っていた声。

 それは、先程まで死んだと思われていたリヴィンの声に間違いなかった。

 

「リヴィン……!?」

「やあ承太郎。こんな状態でごめんね。DIO、お前は私の血を勝手に吸っただろう? 美味しかったかい? ああ、今は毒になっている訳だけど」

 

 頭だけの状態でコロコロ進み、こちらへとやってくる。もう見ることができないと思っていたその顔は微笑んでいるが、地面を直接の転がっているせいで土や埃で汚れまくって余計に頭だけ状態の怖さが増していた。

 

「な、ぜ、生きて……!?」

「頭部の外側だけを変化させて脳を守ったんだよ。まあ、衝撃からまでは守れなくて少し気絶してしまった。私のスタンドは自分の血や骨肉を他の物質に変化させる能力なんだ。変質させた元の部分を再生させるのに、1分間のインターバルが発生するのが難点だね」

 

 リヴィンの説明を聞き、リヴィンが潰れていた場所にあったものに納得がいった。頭部の部分にあった『それ』、もとい『黒い鉱石みたいな箱』は、リヴィンが脳を守る為に作り出した物だったのだ。あまりにも出鱈目すぎる荒業と、リヴィンがスタンドに目覚めていたことに承太郎は目を見張って驚くしかできなかった。

 

「もう動けないだろう、DIO。私から血を奪ったからだ。奪ったから動けないんだ」

 

 リヴィンの冷めた目線がDIOへと注がれる。当のDIOは体の中で暴れ回るリヴィンの毒に耐えるので精一杯で、その声も目線すらも気づいていない。

 

「奪うだけでは得られないんだよ。生むのは悲しみと怒りと憎しみだけだ。与えることができなかった、お前の敗北だ」

 

 瞼を閉じてリヴィンは、奪われたものを──ジョナサンのことを思い出しているようだった。

 

「何が君をそうさせたんだい。ジョナサンはずっと、ずっと……」

 

 リヴィンは何かを言おうとして口を開いたが、言葉にならなかったのか、あえて言うのをやめたのか、ゆっくりと口を閉じて少しの間沈黙をした。そこから、目を見開いて承太郎へと目線を飛ばしていく。

 

「承太郎。後はお願いだ」

「……ああ」

 

 か細いリヴィンの頼みに返事をし、DIOの前に足を歩めて拳を構える。ほぼ直感と見様見真似になるが、感覚は直に教わった。コオオオオと呼吸をして全身の血液が巡っていくのを意識し、腕に力を集中して注ぐ。バチバチと力が漲っている拳を、DIOへと解き放つように放った。

 

波紋疾走(オーバードライブ)!!」

「バカな、何故それを貴様が……ッ!!」

 

 承太郎の腕から波紋が伝わっていき指先まで到達すると、殴られたDIOの顔に伝達されていく。

 

「この、DIOが、っこの、DIOがァ……!」

 

 急に目覚めさせられた波紋であった為に決してそこまで強くはなかったが、それでもDIOの頭部を消滅させるには十分な量であった。殴られた場所を中心に、DIOの頭部はサラサラと崩れ落ちていったのである。そうして操る信号塔を失ったDIOの──ジョナサンの体は、バランスを失ってパタリと地面へ倒れ伏していった。

 ようやく。ようやくDIOを倒したのだと承太郎が張っていた肩を落としていると、リヴィンが再び回転して近づいてくる。そうして止まった場所はジョナサンの体の前だった。リヴィンの瞳はまっすぐとジョナサンの体を見つめており、動くのは瞼だけ。思うところがあるのは分かっていたが、承太郎はそんなリヴィンの頭を拾い、至る所についている汚れを軽く払ってやった。

 

「おめー、体再生できねえのか?」

「流石にもうエネルギーがないよ。補給させてから再生させてくれ。それに服がない。アヴドゥルに怒られてしまう。作ればいいんだろうけど、その前に元となる体がないからね……」

 

 口を尖らせ眉尻を下げるリヴィンは、いかにも疲れましたという表情だ。リヴィンの表情を見れるのが珍しくつい見てしまったが、それよりもと頭の中に引っかかっている疑問を解消してしまおうと質問をする。

 

「防御用に変化させてたアレはなんだ?」

「あれかい? ウルツァイト窒化ホウ素といって、ダイヤモンドよりも硬いとされているものなんだよ。それに顔を変化させてクッションになるものも挟んで脳を守ったんだけど、脳に加わった衝撃まではどうにもできなくてね……。聞いてくれ、初めて私は気絶というものを体験したんだ! そのせいで承太郎を守るのが遅れてしまったのはすまないと思っているが……、経験できるとは思っていなかったんだ」

 

 頭部だけのままでやけに嬉しそうに語るリヴィンに承太郎は深いため息をつきつつも、これ以上立っていられないと訴える体を休める為に地べたへと腰を下す。この調子のリヴィンが再び見れたことに口角を軽く上げ、痛みをあげる腕を使って頭を撫でてやったのだった。

 




※DIOの時止めが9秒ではなく8秒なのは、吸った血の力が(柱の男>=)ジョースターの血>闇の種族と独自解釈している為です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。