「3番艦信濃に対艦ミサイル2発命中! 艦が傾斜します!」
「信濃に総員退艦命令を出せ! 残りはこちらで引き継ぐと伝えろ!」
「向こうの状況はどうなってる!?」
「分からん! 兎に角、撃ち続けるしかない! 主砲、
鎮守府を案内されている時、ふと最後の戦闘を思い出した。
あの時、主力部隊が戦略的な勝利を収める時までこちらからの無線は封鎖していた為、こちらから知る術はなかったものの主力部隊から勝利の吉報を受け取った時には敵艦隊の殲滅と引き換えにこちらの艦隊もそこそこのダメージを受けていた。
洋上における航空戦力の要である大型空母を守る為に俺達、戦艦組は積極的に盾になったので兄妹艦である妹達は全員が沈んだ挙句、俺も沈没一歩手前な程のダメージを受けた。
その代わり、敵の攻撃が俺達に集中した事で空母は艦載機の損耗はあっても船体は無傷な上、随伴の小型〜中型艦艇のダメージは少なかった為にトータルで見てもこちらの圧勝だった。
しかも、敵対していた国家が抱えていた主力部隊をこちらの主力部隊が撃破した事で講和を選んでこれ以上の被害を小さくするか、或いは核戦争によって他地域も含めた盛大な自殺をするかの2択に絞る事ができたから彼女達の犠牲は無駄ではなかった。
結局、機関部の原子炉にもダメージが入っていた事から大西洋から日本本土まで帰還する事は不可能だと判断され、自沈処分の決定が下されたのであの戦争の決着は見れなかった事が心残りではある。
とは言え、ヨーロッパ大陸を支配していたナ○スドイツに核攻撃をさせなかった日本の手腕を見込んで、勝ったと思っても文句は言われないだろうし、そもそもあの戦争の事を知っている奴なんて今の世界には誰もいないから言わぬが吉と言う物だ。
その為、戦闘艦だった頃の記憶がフラッシュバックしているのを表に出さず、何食わぬ顔で説明を受けていると周囲からの視線が痛い程に感じるので妙に居心地が悪い。
いくら御召艦を歴任したり、何度も観艦式の際に中心的な立ち位置を経験したとは言ってもここまで注目されるとは思ってもいなかったので案内してくれている艦娘、大和に聞いてみた。
「男女比についての話は伺っていますが、鎮守府では男が来る事は珍しいんですか?」
「えぇ、来るとしても慰安目的で来る場合が殆どでそれも殿方から接触してくる事はありません。なので、こうしてお話しできる機会はまずないと言って過言はありませんね」
「それは中々に難儀ですね。あそこまで男に飢える訳だ」
「全く。後でちゃんと言っておきます」
すると、思っていた様に数の少なさも相まって女所帯な軍隊に来る男が少ない事が分かったし、推測だが貞操概念も元の世界と比べて逆転していると考えられる。
人間の方の前世において、昔の価値観として男が働きに外へ出かけて女性は家で家事などをして家庭を支える、と言うのが常識だったらしいのだがこの世界では女性が外で働いて男が家事をするのが当たり前、と言う風潮がある程度は残っているんじゃないかと思う。
なので、男女比がおかしくなっている事を聞いた時以上にこれからも戸惑い続けるんだろうなぁ、と思いながら説明を受ける為に鎮守府内を歩き回っていた俺達をつけ回した艦娘や憲兵達に下手に手を出さない様に、と説教をする大和を眺めながら壁にもたれ掛かっていると修理が終わったであろう艦娘に声を掛けられた。
「さっきは助けてくれてありがとうございます」
「ん? あぁ、どう致しまして」
その艦娘とは
海防艦は、船体の小ささから駆逐艦以上と比べて戦闘力は決して高くないものの生産性や整備性に優れる為、俺の様な大型の戦艦と比べて修復に必要な資源や時間が少なくて済む。
その為、戦闘艦だった前世における日本では海外輸出向けの海防艦の様な小型艦艇が造られ、運用に必要な最低限のシステムを中心にニーズに合わせてオプションを付け足していく方法が取られ、輸出されていった。
そんな訳で、会談と施設巡りをしている間と言う短時間で修理を終えたであろう択捉がお礼に言いに来たので普通に応対する事にした。
「それにしてもあの装備、大きかったですねぇ」
「51センチ砲を載せる為に造られた様なもんだしな。計画倒れになった戦艦とは比べ物にならんさ」
「じゃあ、貴方がいた世界は別だったんですねぇ」
「あぁ、別モンさ。計画倒れになった世界線とはな」
択捉と会話をしたのだが、太平洋戦争突入による時代の流れで建造に時間が掛かる大和型と同等以上の戦艦を造る余裕は、工業力が低かった当時の日本にはなかったので建造途中の改大和型は工事が打ち切られ、図面の着手すら怪しい超大和型は計画倒れになった。
その為、艦これ世界で最初から51センチ砲を搭載した戦艦なんてそう簡単に遭遇する事はできないので、択捉と会話が弾んだのだがそんな光景を見ていた大和を含めた艦娘がブーイングが飛んできた。
「土佐さん! 折角、私が止めてるのに択捉と話さないでください!」
「そうだ! そうだ! 私達とも話してほしいです!」
「択捉だけ、独占してずるーい!」
「あれー、大和もそっちに行っちゃいますー?」
まさかの大ブーイングに思わず、ビビってしまったのだが下手にキョドって付け込まれるよりも平然を装った方が良いな、と思いながら受け答えしたのだが最初はなんで彼女達がブーイングしたのかが分からなかった。
何しろ、俺の感覚では艦娘と艦息と言う違いはあれど普通の男女が話しているだけじゃん、とも思ったのだが“そういやあべこべ世界だったわ”と気付いたらのでどうしようかと悩んでいると、ある艦娘が俺と接触したくてある行動に移した。
それは
「隣は貰ったデー………!?」
「別に行動に移すな、とは言わないが時と場合を考えようなー?」
「分かったから離すデース!」
「ほい」
金剛が俺の左腕に抱きつくと言う行為であり、それを見た艦娘達は驚きすぎて固まってしまったので、仕方なくではあるが彼女の右腕を俺の右手で引っ張るのと同時に自由になった左腕を彼女の顎下に通し、左足は彼女の後ろに移動する事で動きを封じる事にした。
こうする事で、彼女の重心は右側に寄っているにも関わらず、俺の体が邪魔してそれ以上に進めなくなった為、体格差も相まって金剛は動くに動けなくなってしまった。
その為、動けなくなった彼女にそう言うと慌てふためいて離れようとしたので普通に手を離すと、金剛から距離を取ってくれた。
「全く、男だからって好き勝手にできると思わない事だな」
「………一本取られたデース」
「金剛お姉様ズルいですーっ!」
「あんなに密着されるなんていいなー」
「寧ろ、土佐さんみたいな人なら組み伏せられたいかも」
俺と密着した事で、男に耐性がないであろう金剛が赤面しながらモジモジし始めたので比叡が金剛に詰め寄る一方、他の艦娘も思い思いの言葉を発していたので本来の目的である施設の説明の為、この場は解散させて詳しい話はまた後でと言う事になった。
「全く、土佐さんは女性に対しての警戒心が低いんですよ」
「まー、それに関しては否定はしませんが今の環境に慣れていませんからね。追々、馴染んで行こうとは思ってますよ」
「なら良いんですけどね」
施設の説明に戻る際、大和からそんな事を言われたもののあべこべ世界の価値観やら常識に慣れていないのは事実なので、今回は金剛の接近を許したもののこれが悪意ある人物だったら刺されてもおかしくはなかった。
その為、次回から気を付けようと発言した俺の態度に呆れる大和に返してから残った施設の説明に移った。