架空艦になったワイ、貞操逆転世界に漂着する   作:八雲ネム

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第3話 確認と了承

 金剛との悶着があった施設巡りの後、夕食時に改めて食堂で俺が来た事についての説明が行われるとの事で、提督からそれまで空き部屋だった部屋を寝室に改装したからそこで休んで良いとのお達しがあったので受け入れる事にした。

 何しろ、天龍達を救出してから気を張り詰めていたからどこかで休みたいなぁと思っていた為、その部屋に入ってからラフな格好になってグータラする事にした。

 艦息に転生してからの格好は、如何にも海軍軍人ですと言う服装だったので部屋に入ってからそれらの服を脱いだ後、ハンガーにかけて皺ができない様にしながら部屋に置いてあった体操着を着て背もたれ付きの椅子に座って背中を預けながら今後の事について考えた。

 

 今の俺に取れる道筋は以下の2つ。

 1つ目は艦息を辞めるか、或いは上層部に媚びて安全な後方で普通の人間に近い形で安穏と生活する道筋。

 2つ目は艦息を続け、戦闘艦として轟沈のリスクをも厭わない海戦に赴いて己の能力を極める道筋。

 

 前者を取る場合、人間だった前世を重視する事になるので場合によっては艦娘のハーレムを築く事も可能だろうが、後者を取る場合は戦闘艦だった前世を重視する事になるので場合によっては艦娘のハーレムを築く余裕がない可能性がある。

 道筋に関しては、細分化すればもっとあるだろうが大枠で言うならこの2つしか考えられないので、どうするかなぁと思いながらボンヤリとしていると人の気配を感じ取った。

 

(人間だった頃はここまでハッキリ分からなかったが、戦闘艦だった前世ではかなりの激戦を潜り抜けたせいか、ハッキリと分かる。要は天井裏に隠れて私生活を覗き見ようっつー魂胆だな)

 

 そう思いながら、室内にある物で天井裏にいる人物を驚かせる様なものを探していると、ペンとメモ用紙を見つけたのでペンを持って人物が潜んでいそうな箇所に勢いよく投げつけた。

 

「そこ!」

「ぎゃふん!?」

 

 すると、攻撃されるとは思っていなかった様で天井を貫いたペンに驚いた様子で大きな音を立てると、天井の一区画が抜け落ちて潜んでいた人物が落ちてきた。

 

「全く、人のプライベートを覗き見るなんざ、良い趣味してるなぁ? えぇ?」

「イタタタタ………すみません、どうしても気になったので」

「信賞必罰。提督に報告するから言い訳はそこでしてどうぞー」

「そんな殺生な!!」

 

 落ちてきた人物は、艦娘の中でも夜戦バカな川内であり、初回できっちり絞めないとプライバシーもへったくれもねぇやと思ったので、天井裏の埃っぽさで咳き込む彼女を引き摺り始めた。

 全く、この世界における警戒心が薄い俺でも他人に私生活まで知られるのには抵抗があるので、見せしめも兼ねて川内には犠牲になってもらおう。何度もされると困るし。

 こりゃ、隠しカメラや盗聴器なんかの確認もしねぇとなぁと思いながら提督がいる執務室へ向かった。

 

 

 

 

 

「全く、余計な事をしてくれたな」

「ですが提督! 男なんですよ、男! しかも提督よりも優しそうな男となれば一生のうちに何回会える事やら!」

「だからと言って他国の軍艦である艦息を不快にさせる様な事をするのはよろしくない! よって、1週間のトイレ掃除と50ページの反省文を3日以内に提出する事を命じる!」

「そ、そんなぁ!」

 

 執務室に行き、提督に事情を説明すると川内を引き摺ると言う騒動を知った彼から直に罰則を受けたので、罰則の内容が適切かどうかは脇に置くにしてもとやかくは言わなかった。

 俺が欲しいのは、あくまでやらかしたらちゃんと罰則を受けると言う事実であり、それがなかったらすぐに荷造りして他国に移動していただろうな。

 理由は国に限らず、どんな組織であろうと大小様々な不正はあるもののそれが発覚した際の罰則を与える枠組みがちゃんと機能しているかが重要だと個人的に思っている。

 

 それがちゃんと機能していなければ、不正が蔓延って組織として先行きは長くないだろうなと言うのが個人的な考えなので、そう言った組織とは速攻でこちらから縁を切るつもりでいたのだが当面は大丈夫そうである。

 その為、罰則を課されて落ち込む川内を先に退室させてから今後、起こり得る可能性を提督と話し合う事にした。

 

「正直に言って、艦娘ですらああも暴走するんです。軍の上層部も似た様な事になりませんか?」

「その可能性は否定できない。私も似た様な状況に陥ればいつまで自制心を維持できるか分からないからな」

「自分が危惧しているのはその点です。権力を持った人物は、その力を行使して自分の意見を通そうとする。それが相手の考えと相反するとしてもね」

「何が言いたい」

「もしも、貴国の軍上層部がこちらの意に反する様な命令をしてきた場合、自衛権を行使して実弾による抵抗も辞さないと言う事を了解して欲しいんですよ。同じ軍人として」

 

 人間だった前世は日本人だし、戦闘艦だった前世も日本で建造されたものの、それは艦息として俺がいる今の日本とは全く違う日本だ。

 前者は太平洋戦争で負けた日本であり、後者は太平洋戦争で勝った日本であって男女比が歪で深海棲艦の脅威がある日本とは全く違う世界線と言っても過言ではない。

 例えるなら、戦前に移民として日本からアメリカに渡った人達の子孫である日系アメリカ人の方々の様なものであり、見た目は日本人だが彼らの精神性はアメリカ人と言っても良いぐらいに違っていると以前、どこかで聞いた事がある。

 

 つまり、この世界に存在する日本の軍隊の指揮系統から外れた日本軍の艦艇である事を認めてほしい、と伝えると彼は暫く考え込んでからある事を聞いてきた。

 

「実弾、と言っても多種多様あると思うがどの程度まで考えている?」

「場合によっては人体に向けて主砲をぶっ放す事もあり得ますが、まぁ、その前段階として拳銃による脅しをしようかと考えています」

「………了解した。事が起こったら拳銃程度に収まる様に努力する」

「ありがとうございます。それでは夕食の時間まで部屋で待機していますね?」

「あぁ」

 

 深いため息の後、彼からの了解を得られたので笑み浮かべながら軽い口調で感謝を伝えてから俺も退室した。

 初対面時、そこそこの堅物を演じて相手に悪くはない印象は与えたと思っているのだが、ダラけられる時は隠さずにダラけるのをモットーにする陰キャな性格が根っこにある。

 その為、体育会系な組織の軍隊に所属する彼からすれば初対面以降の俺を見たら特異に見えるかもしれないが、それが俺で艦息としての能力を得てしまったのだから受け入れてもらうしかない。

 

 そんな訳で、退室すると大和が待ってくれてた様で心配そうに俺に声を掛けてきた。

 

「あの、大丈夫でしたか?」

「勿論、軽い雑談をした程度でしたよ」

「そうですか。あぁ、因みに川内さんは神通さん達に連れていかれましたので暫くは会う事はないと思います」

「あぁ、彼女がやらかした行為についてかな? でしたら大丈夫ですよ。そこまで気にしちゃいませんので」

「そうですか」

 

 軽い調子で応えると、妙に歯切れの悪い反応だったのでどうしたのかを聞こうと思ったのだが、下手に聞き出してもなぁとも思ったので特に気にしないで部屋で待機しよう。

 それに、今は人間だった頃の意識が強いもののその内側は地殻によって知覚できない様にされているマントルの如く、戦闘艦だった頃の意識が確かに存在しているので下手に刺激したくはない。

 下手に刺激した結果、火山の大規模な噴火の様に現れたらどうやって止めれば良いのか、今の俺には分からないからな。

 

 その為、事が起きるまでは剥き出しの闘争心が表面に現れない事を祈りながら夕食まで待つ事にした。

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