「ふぅ………」
夕方になり、歓迎会が開かれたものの男が致命的に少ない事から女所帯となる軍隊に所属する艦娘で、今回の歓迎会に参加したメンバーの殆どから大量の質問が来て大変だったので、隙間を見つけて抜け出したのだった。
歓迎会自体、嫌いではないものの参加しても隅っこで静かに飲み食いしながら楽しんでいるメンバーを眺めている方が好きなので、その中心にいるのはどうも気疲れして仕方なかった。
その為、抜け出した後は夜になると閑静になる埠頭に来て波の音を聞きながら、この世界に来た当初から持っていた携帯端末を介して色んな情報にアクセスしたものの俺の様に、既存の艦娘とは違った艦娘は未だに現れてはいなかった。
「渡せんよなぁ。そうだろう? 土佐よう、帝国海軍はたった“1人”になっちまったなぁ。」
それに、話して分かったんだが妙に俺の持っている武器に関して興味を持っている様でしょっちゅう、その話になったのにうんざりしたのもある。
そんな訳で、俺以外にあの世界の日本海軍がいない事に対する郷愁を口に出してから、持っていたタバコに火を付けて煙を燻らせながら波の音を聞いていると足音が聞こえてきた。
「あぁ、君か」
「ん? あぁ、日向か。どうしたん?」
「いや何。私も手洗いに行ったんだがその帰りに埠頭で立っている人を見かけてね」
「んで、来てみたら俺だったと?」
「そう言う事」
歓迎会を抜け出して、近付いてきたのはゲームの方で最初にケッコンカッコカリをした日向であり、ここに来たのも俺の姿を見掛けたからで特に理由はないのだろう。
その為、特に話す事もないままに時間が過ぎるかと思ったら彼女の方から話しかけてきた。
「珍しいな、男性がタバコを吸うなんて」
「あぁ、健康被害がデカいんだったか? まー珍しいだろうが癖みたいなもんさ」
「そうか。でもあまり吸ってほしくはないかな」
「………善処しよう」
まぁ、その内容はタバコの話なので喫煙による健康被害が広く認知された時代において、あまり良い顔をされないのは当然なので人前では吸わない様にしよう。
「そう言えば君らの実力っでどんな感じ?」
「戦闘艦としてのか?」
「あぁ。こう言うのって予め知っとかないといざって時に問題になるじゃん?」
「そうだな。んー、個人的な意見になるがそこそこ高いぞ?」
「上の中とかか?」
「そこまでは………いや、下手な謙遜は不要だな。君の実力がどの程度かは分からないが、相対した時にそこそこ食らい付けるぐらいには強いと思ってる」
「そいつは楽しみだ。是非、演習で戦ってみたい」
「程々にな」
戦闘艦に限らず、全ての乗り物は
その乗り物に乗った人が、その乗り物の性能に精通して自分の手足の様に動かせる様になって初めて最高の性能になる訳で、それが戦闘艦の場合だと練度と言う形で表現される事が多いと思う。
技術的な違いはあるだろうが、練度が低ければ戦闘艦として被害が出ても適切に対処できず、すぐに戦えなくなるが練度が高ければ被害を最小限にして戦闘が継続できる様にする。
そう言った意味も含めて、聞いてみると悪くはない反応が返ってきたので演習が楽しみだと思いながら駄弁っていると、新たな人物がやってきた。
「あぁ、ここに居たの」
「その声は伊勢か」
「どーもねー」
まさか、伊勢まで来るとは思ってもいなかったので短くなったタバコを地面に落として踏み付けながら火を消すと彼女が話し始めた。
「いや〜、主役が中々帰ってこないって話になっちゃったから何人かで探し始めちゃったんだよ?」
「そいつはすまねぇ事をしたな」
「土佐と長話になってな」
「へぇ〜、どんな話?」
「君らの実力を知りたいって話さね」
「土佐からすればイマイチかもしれないけど私達、そこそこ強いよ?」
「どんな戦い方をするんだい?」
「それはな 」
どうやら、心配を掛けた様なので歓迎会が開かれている食堂に向かうと伊勢達も一緒に歩き出したので、喋りながら向かったのだが特に問題になるような事もなく、無事に終わったとだけは言っておく。
「それで、大本営に報告する為に演習を行うと」
「あぁ。君から教えてもらった性能だけでは上は納得しなくてね。実演して欲しいんだ」
「分かりました。いつやるかと参加する人数が分かればやりやすいのですが」
「明日の
「分かりました。準備しますね」
歓迎会があった日の翌朝、提督に呼び出されて執務室に入ると演習で俺の実力を上層部である大本営に報告したい、との事だったのでそれで話がうまく進むのならと言う事で素直に参加する事にした。
俺自身、一度は深海棲艦と戦ったもののあれは奇襲に近い形で一方的に攻撃しただけなので、どうしても経験値的に怪しい部分がある為に正面切って戦って自分の限界を知っておきたかった。
そういった思惑を含みながら、頷くと提督から意外な提案をされた。
「それと、今回の演習だと君が単独で行動する事になるからな。こちら側で何回か、建造しようと思うのだが」
「よろしいので? こう言うのはもっぱら兵器としての限界を見定めるものだと思っていましたが」
「それもあるが今回の演習では余りにも数の差があり過ぎる。なのでその差を埋める為の措置だと思ってくれると助かる」
「分かりました。参加しましょう」
現実における艦隊編成は、戦艦だった前世では8隻で1つの艦隊だったし、人間だった前世の海自では4隻で1つの艦隊を編成するなど、国やその時の時代によって変わるのだが、艦これの世界では最大で6隻までで1つの艦隊だと設定されていた。
この世界でもそれは変わらないらしく、日本では6隻で1つの艦隊だと規定されているので、それに則って3〜5隻を建造すると言われた際は可能であれば巡洋艦か駆逐艦が来てくれないかなぁと思った。
水上艦である以上、潜水艦は脅威なのは2つの前世でも変わらないのだが根本的な問題として、戦艦だった前世における艦隊運用と言う点で八八艦隊構想が関わってくる。
第二次世界大戦前の旧海軍であれば、戦艦8隻に巡洋戦艦8隻を整備する一方で海上自衛隊であれば護衛艦8隻にヘリコプター8機を整備する構想なのだが、戦艦だった前世では戦艦8隻に大型空母8隻の他に低強度紛争などでそこまで費用を掛けたくない場合に対処する為、巡洋艦8隻*1に強襲揚陸艦8隻も整備すると言うものだった。*2
これは、第二次世界大戦 日本では大東亜戦争と言われていたが に勝った結果として満州から東南アジアの大半を手中に収める事に成功した為、歪ながら戦前よりも国内総生産が上昇した結果として整備が可能になったからだ。
その結果、日米冷戦と言う時代背景も相待って戦後30年が経過してもダラダラと戦時経済が続く結果になり、陸軍や陸軍航空隊から独立した空軍に必要な予算を引っくるめた軍事費が国家予算の半分以上を占有する羽目になり、戦後すぐに民主政権へ戻ったものの軍事政権の色も強く残っていた状態だった。
まぁ、それもナチスドイツとの戦争が終わって日米冷戦が解消されたらある程度の軍縮が行われるだろうな、と思いながら提督と工廠に向かうと3人の艦娘が待っていた。
「いらっしゃーい」
「昨日ぶりですね」
「どーもねー」
その3人とは、工作艦の明石と朝日*3に夕張なので軽く挨拶を交わしてから、建造に移ったのだが問題なのは建造にどれだけの資源が必要なのかが全く分からないと言う事だ。
これが既存の戦闘艦であれば、今までの経験からある程度の目星が付くのだが、俺の場合はドロップ艦に近い状態でこの世界に現れたので全くわからなかった。
その為、俺の装備を見て仕様を確認してから俺と同等の装備を持った艦娘を新規建造するには戦艦レベルの資材を使って巡洋艦が、巡洋艦が複数建造できる資材を使って駆逐艦が建造できるかどうかと言われた為、提督にデカい借りを作って建造する事になった。