【まえがき】
このお話はシン・エヴァの二次創作漫画の台詞脚本でした。
その為に部分的に台詞が主な会話劇の様になっています。
お目に留まりましたのも何かの縁。
お楽しみ戴ければ幸いです。
それでは最後まで御付き合いの程、宜しくお願いします。
[ご注意]
お話の幾つかは性的表現を含みます。
ただ、お話毎でのR-18制限が出来ませんので別シリーズの「第3村讃歌 第一部(R-18制限)にて投稿させて頂きます。
苦手な方や耐性の無い方はご遠慮下さいませ。
ー それでは始まり始まり天地マリ ー
第 1 部
<第1話>
エヴァの呪縛 アヤナミ・レイ 存在の維持
それは彼等が再び訪れた村の日常に慣れ親しみ行く中のとある一日のことでした。
【第3村外れ】(午前中)
炎天の季節が終わりを告げるかの如く朝晩の気候は少々肌寒く感じては来ましたが、日中は未だ汗ばむ程に気温が上がる…
そんな日が続く晴れ渡った爽やかな朝に、一人村外れの踏み切りを渡り山道に入って行く人影がありました。
それはレイでした。
彼女は農作業の休みの日にケンスケの駅舎ハウスに向かっていました。
レイはトウジとヒカリの家に住込み、そこで家事や診療所の手伝いの他、村人と共に農作業に従事していました。
それは以前の暮らし振りと同じでした。
ただ唯一違うのは、彼女はトウジの家の並びの離れにある四畳半程の小さな部屋を与えられ其処で寝起きをする様になった事です。
彼女は今日も黒いプラグスーツ姿でした。
村からは配給分の衣料品は貰ってはいますが、野良仕事や診療所の手伝い以外、ヒカリの家事手伝いや休日など普段は殆どこの姿です。
それは彼女が他の服を着慣れない事と服装やお洒落に全く興味が無いからでした。
また、それとは別に理由があるのですが、それは追々お話しします。
【駅舎ハウス 舎前】(続き)
レイは荒れた山道の急な坂を登り切ると森の中に小さく開けた場所に漸く辿り着きました。
以前来た時には横倒しになったまま放置されていた鉄道車両は引き起こされ今は宿舎と倉庫になっています。
その横を通り過ぎると目前に田舎の小さな廃駅のプラットフォームが見え、その上に建てられた待合所を住居兼作業場に改装したものが彼女が目指すケンスケの駅舎ハウスです。
レイはプラットフォームに上がり駅舎の入り口のドアを軽くノックしました。
コンコン!
「誰?」
中から返事をしたのはアスカでした。
彼女は再び戻った後も村には住まわずこのケンスケの駅舎ハウスに居候していました。
とは言っても以前の様にビジター扱いでケンスケのベッドを何時迄も占領すると言う訳にも行かないので母屋のあるプラットフォーム横のガレージの中にケンスケやシンジに手伝って貰い、板やトタン、カーテンで囲った小さな部屋を設けていました。
部屋の中にはビールケースやクレーディトの物品輸送用のコンテナボックスで作った土台に板を敷き、その上にマットレスや寝具を置いただけの簡単な一人用ベッドと、同じくビールケースを重ねて作ったサイドテーブルと腰掛け、壁面には鏡の付いたシンプルな飾り棚が一つ、それと引き出し付きのスツールが配置されただけの簡素なものでした。
ベッドの枕元にはあの"マペット"がお行儀良く御座りして彼女の帰りを待っています。
まぁ、寝るだけなら充分なので彼女は結構気に入っていました。
彼女はヴィレの結界監視やクレーディトの補佐等の役割は有りましたが、エヴァや使徒の無いこの世界では戦闘に従事する様な役目は無くなり、専ら平穏な日々の中でケンスケの仕事の手伝いをして過ごしていました。
【駅舎ハウス 母屋内】(続き)
レイはアスカの問い掛けに返事をします。
「ワタシ…」
「食いしん坊初期ロットか。鍵、開いてるわよ!それとバカシンジなら居ないわよ!いつもの所!」
そう言うとアスカは振り向きもせず炊事場にある流しで洗い物をしていました。
彼女もヴィレやクレーディトの任務ではプラグスーツを着用しますが、今日の出立ちは OG-107カラーのジャングルファティーグファーストモデルのカーゴパンツに杢グレーの
あの以前の闘いの中で荒ぶり、正気を逸していた彼女とは違い、幾ら室内と
【駅舎ハウス 母屋内】(続き)
レイは「そう…」と呟く様に言うとドアを開けハウスの中に入って来ました。
そして何処と無くモジモジとしながらアスカに上目遣いで少し気恥ずかしい気持ちを滲ませながら言いました。
「あの何か…その…」
その様子を見たアスカは
このレーションは国連軍の殆どの艦船や航空機、車両等に非常用糧食として搭載されていた物でした。
保存期限は長いのですが今となっては保存期限は切れてしまっています。
しかし、程度の良い状態で発見された物は十分に喫食でき、糧食としては比較的入手し易いものでした。
1ブロックは65㎜×45㎜程の大きさで厚みは約10㎜程でした。
この一つで200キロカロリーあまりのエネルギーを獲る事が出来ました。
味は仄かに甘く人工的な香りや癖は無く素朴な焼き菓子といった様なものでした。
口の中ではややパサつきますが飲み物が無くても唾液で充分に解れ飲み込めると言う特徴があります。
以前にアスカがシンジに無理矢理口に押し込んで食べさせたり、レイにシンジの所に持って行かせたのもこのレーションでした。
【駅舎ハウス 母屋内】(続き)
「ありがとう…」
レイはお礼を言うとテーブルの前の椅子に座りムシャムシャと食べ始めました。
アスカは洗い物を終えると前掛けの裾で手を拭いながら椅子を引きレイの向かい側に座りました。
そしてテーブルに頬杖を付き向かい側で無心にレーションを頬張るレイを黙って見詰めていました。
見詰めながら彼女は独り言の様にレイに語りかけます。
「アンタはネルフの調整無しで形態維持するには薬と大量のエネルギーが必要なんだから…」
その眼差しは少し愁いを含んでいました。
アスカは続けて「また行くんでしょ?アイツのトコ!」と今度は確認する様にレイに訊ねます。
「うん」
レイは唇周りに着いたレーションの
その仕草のあまりの可愛さにアスカはまたしても切ない気持ちが心に
アスカは気を取り直してレイに頼み事をしました。
「ならコレ持ってって!アイツ自分で作っておいて忘れて行くんだから…」
アスカはレーションを食べ終えたレイにテーブルに置かれたままの青いバンダナに包まれた弁当箱を顎先と目線で示しました。
「それと、コレ。アタシの分だけど…」
アスカはそう言いながら先程の水屋箪笥から今度は赤いバンダナに包まれた小振りの弁当箱を取り出しシンジの忘れた弁当箱の横に並べて置きました。
それはシンジがケンスケやアスカのお昼ご飯の為に自分の分と一緒に拵えた物でした。
「はい!アンタにあげるから。向うで一緒にお昼にでもすれば?」
「ありがとう…」
レイはそう言うと、じ〜と弁当の包みを見つめていました。
その熱い視線を察したアスカはレイを軽く嗜める様に諭します。
「あっ!途中で食べちゃダメよ!」
「う、うん…」
レイは直ぐに返答しましたがそこには少し戸惑った感じが見られたのをアスカは見逃しませんでした。
『怪しいわね』
その様子を見たアスカは赤いバンダナを解き弁当箱の上に蒸かし芋を2本と先のレーションを五つ程追加して再びバンダナを結びレイの胸元に押し付ける様にして渡しました。
「じゃ、頼んだわよ!お使い!」
「うん!」
レイは嬉しそうに勢いの良い返事をすると2つの包みを両の手に提げ駅舎の母屋から出発して行きました。
アスカはその彼女の後ろ姿を微笑ましさと切なさが混じり合った複雑な心持ちで見送るのでした。
【第3村 村外れ】(続き)
ケンスケの駅舎ハウスを出発したレイは山道を降ります。
そしてブナの林を抜けて湖岸沿いの旧国道を進みます。
湖岸には工場の巨大プラントの廃墟が延々と続きます。
その聳え立つ廃墟群を横目に旧国道を進みます。
工場跡の突き当たりまで進むと貨物の引き込み線が見えて来ます。
その鉄道土手に登り、線路の上を暫く歩くとトンネルに差し掛かります。
トンネルの中は照明は有るものの薄暗く足元には水溜りがあるので彼女は注意しながらトンネル内を進んで行きます。
軈て出口に到達した彼女は此処で暫し休憩します。
これは以前に何度も通い詰めた時からの習慣でした。
そこは少し小高くなっており先程通って来た湖畔の大きくて長い工場廃墟の全景が見渡せます。
湖面の光を反射して影になった廃墟はその輪郭のみをキラキラと輝かせています。
また雨の日にはその全姿は朧気に霞み幻想的な巨大オブジェと化します。
レイは此処から見える景色が何故かお気に入りでした。
休憩を終えた彼女は其処から鉄道土手の斜面を下り、開けた草っ原をまた暫く進みます。
草っ原のその先は緩やかな下り坂になっておりその先の湖の
【N109 棟跡】(続き)
湖畔に佇むN109 棟跡に到達した彼女は廃墟の中に入って行きました。
その廃墟の中で湖に面した先端で釣り糸を垂れているシンジの後ろ姿を見留めた彼女は嬉しくなりますが逸る気持を抑えて彼に歩み寄って行きます。
そして「碇クンこれ、お弁当…」と、シンジの後ろ姿に声を掛け、携えて来た弁当の包みをシンジに向けて突き出す様に見せたのでした。
「あっ、綾波。ハハ・・忘れてた!休みの日なのにお使いありがとう」
シンジは湖面に崩れ落ちた瓦礫の縁に放り込んだ擬似餌が付いたラインを巻き取りながレイの方を振り返りました。
彼はロッドやリール等のタックル一式をケンスケから借りっぱなしで使っていました。
ケンスケも返せとは言わず容認していましたので都合の良い借りパクです。
シンジはケンスケの仕事の手伝いや自分の仕事がひと段落した時などは食料調達の為に此処で釣りをするのが日課となっていました。
ただ、通い詰めた割には日々の釣果は芳しく無い様で、今日も
彼もアスカと同じくケンスケの所に居候していました。
ただ母屋はケンスケのベッド以外は備品や工具類の保管ロッカーやキャビネットが所狭しと置かれ、奥の炊事場付近の作業用兼食卓の机もその周りの棚や壁面、引き出しは工具や備品類で埋まっていました。
これでは流石に母屋で男女3人の寝具を置く余裕は有りませんでした。
暫くは以前寝転がっていたガレージの角にケンスケがアスカにベッドを占領されていた時に使っていたのと同じ払い下げ官給品の折り畳みG.I.コットでケンスケと共に此処で就寝していました。
しかしガレージにアスカの部屋?が新設されたので、ケンスケは母屋の自分のベッドに戻る事になりました。
残されたシンジはアスカの部屋傍らで寝起きするのは流石に気不味いので、表の鉄道車両改造の宿舎兼倉庫に移動する事になったのでした。
シンジは車両の入り口付近を改装整備して自身の部屋を
車両の奥は食料等の貯蔵庫となっていました。
床には麻袋や木箱、大きな樽や一斗缶に詰められた穀類等の糧食が所狭しと置かれ、据え付けられた棚には保存用に日干しや塩干、燻製類、酢や食用油漬けに加工された魚や獣肉、野菜類が瓶や缶に詰められ並んでいました。
糧食の保存加工と管理はもう一つのシンジの仕事でした。
彼はケンスケからサバイバルで用いる食品保存の知識や技術のレクチャーを一通り受けていました。
また呑み込みが早い上に元から料理は得意なので調理や調味は御手の物でした。
保存糧食の調理や加工は駅舎母屋横のガレージの表に張り出した屋根の軒下を改装して加工場として運用していました。
コツを掴んだシンジは独自の加工やアレンジを加えて様々な保存食を生み出していました。
これらの保存食は時には配給所に卸され配られました。
シンジの加工糧食は保存や栄養バランスに優れており、オマケに美味とあって村の中のみならず交易先でも大変好評でした。
農産物の収穫期や豊漁の時期にはケンスケやアスカも加工作業を手伝いますが、それでも人手が足りない時には村の中から手伝いを呼ぶ事もありました。
また、これはその後の話になりますが、シンジとケンスケは村人の中から優秀な人を数人選出して書き溜めたレシピを基にして【保存糧食加工法】を教えて行く準備も始めていました。
それはゆくゆく設備を拡張し村の新しい基幹産業の礎とする為でした。
選抜された人の中にはアスカも含まれていました。
閑話休題。
【N109 棟跡内】(続き)
N109棟跡の廃墟はシンジが何処からとも無く集めた物でちょっとした公園の休憩所並には設備を拡充していました。
壊れたテーブルや椅子を修理した物が置かれた様は昔の田舎の屋根付きバス停の様でした。また簡易の焚き口も設置され湯沸かしの他に簡単な調理も出来る様になっていました。
中でも特に目を惹くのは真っ赤な塗装も鮮やかに残ったコカ・コーラの金属製ベンチでした。
アスカはこの赤いベンチに一目惚れして自分の部屋に置きたがりましたが部屋のサイズには合わなかった為、泣く泣く諦めたのでした。
しかし未だ未練が有るのか彼女は屡々此処に訪れてはこの赤いベンチを独り占めしているのでした。
【N109 棟跡内】(続き)
レイは持って来た弁当の包みをテーブルの上に置き傍らの椅子にちょこんと座りました。
そして椅子をテーブルに引き付けるとシンジに語りかけました。
「碇クン、食べないの…?」
「えっ?うん。まだ昼前だし・・食べたいの?」
「うん。食べてもイイ…?」
「いいよ。良かったらボクのも…」
そう言いながらシンジはレイに振り返りました。
しかしシンジが振り返った先にはテーブルに着いた彼女が青いバンダナの方を解いて食べ始めている姿でした。
『…って⁉︎…イヤ、そっちはボクのだし…』
シンジは心の中でツッコミました。
そして「綾波、それはボクのだよ?」と、レイに告げますが彼女は、「うん。美味しい!」と、返答しながら食べ続けています。
「いや、そっちの…赤いのは…?」
シンジはテーブルに置かれたもう一つのアスカの為に用意した赤いバンダナに包まれた弁当箱を指差して言いました。
彼女は嬉しそうにシンジの弁当をモグモグと食べながら「もらった…」と、和かに応えました。
「じゃ、じゃあ…?」
シンジはテーブルに近付き赤いバンダナの包みを摘み上げますが、その包みは軽く直ぐに空なのが判りました。
「これ…どうしたの?」シンジは彼女に尋ねます。
すると彼女はシンジの弁当の大きな塩オニギリを両手で持ったままシンジを見上げました。
そして少し恥ずかしそうに頬を染めながら「トンネルの出口で食べた…」と、言うと俯いてしまいました。
シンジは『アレ?気にしちゃったかな…?』と心配になり俯いた彼女を覗き込む様に窺います。
しかし、彼女は手に持ったオニギリに齧り付いているだけでした。
シンジはその彼女の食べっぷりを見ながら思います。
『仕方無いかぁ〜』
そして夢中で食べているレイを笑顔で見詰めていました。
ただ、彼のその笑顔は何処か愁いを含んでいました。
それは彼も先程のアスカが見せた複雑な思いと同じものを抱いたからでした。
<つづく>
【 次回予告 】
<第 2 話>
エヴァの呪縛 式波・アスカ 偽りの肉体
乞うご期待!
【あとがき】
ご覧戴き誠に有難うございます。
前書きにも申し上げましたが、この物語りは当初、テレビ放映や劇場版の一コマをスクリーンキャプチャして作った4コマ漫画の台本でした。
尚、スクリーンキャプチャ4コマ漫画は以前にこのpixivにも UPしていました。
pixivにUPした途端に凄い数の閲覧を戴き一日でランキングに上がった程でした。
ただ、当時規約をしっかり認識していませんでしたので運営側より規約違反の警告を戴き取り下げた次第です。
(当たり前の話しですが自前のイラストでは無く公式の画像でしたので…)
スクリーンキャプチャで4コマを作り始めたのは右手に不具合が出て漫画が描けなくなったからでした。
話しは4コマ用にある程度区切りを付け書き溜めていましたが、何話かが4コマに納まり切れず、放置するには忍び無いのでキャラ任せにして続行させてみました。
それで出来上がったのが今回のお話しです。
プロットは台詞が主でしたが気付けば第一部の文字数は2.5万強になっていました。
それを話し毎に区切ると14話程になりました。
一話は大体1500〜3000文字でしたので「なんとか出来るかな?」と思い始めた次第です。
第1話は台詞プロットだけなら2500字程でしたが、出来上がれば3倍近くになってしまいました…
こんなペースで書き切れるのか?と、正直思っています。
第二部で一応完結しますが、プロットの文字数は第一部を上回っています。
果して…どうなるコトやら…
ご覧戴いた皆さまにご期待とご声援を賜れば励みになりますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
*下記に4コマ漫画の各URLを置いてあります。ご覧戴ければ幸いです*
スクリーンキャプチャ4コマ漫画 各URL
https://pin.it/5MbxDWc
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