キヴォトスの配達屋 作:無所属の転生生徒
「「___♪〜〜♪♪〜」」
風を切る音。
心地よい風。
バイクから伝わる振動。
エンジンから出る匂い。
それらを身に受けながら、俺とアルは今、ご機嫌で歌を歌いながら、草原を突っ走っていた。
「ふふっ♪前に起業祝いで一緒にツーリングした時、この歌を教えてもらったけれど、やっぱり中々にイかしてて、いい曲ね!すっかり気に入っちゃって、バイクに乗る時ついつい歌ってしまったわ!」
「それは良かった、教えてあげた甲斐があるってもんだよ」
そう言いながらアルと二人して歌っているのは俺が前世でよく聞いて歌っていた歌だ。*1
この曲は何気に自分を構成するものの一つだから、転生して一年たった今でも記憶に
「にしても…。今回、クライアントの貨物…金塊を運ぶに当たって、襲撃者が来る可能性があるって聞いたけれども…この状況でもまだ、金塊を狙うつもりがあるのかしら?」
そういうアルの顔を見ると、疑念が浮かんでいた。
ある程度、巻き込む際に今回の話を伝えてたが。
ただその話に疑念を持ったらしく、やや独り言のように聞いてくる。
「…確かに普通に考えれば、『運び屋を襲って金目のものを得る』なんて、このキヴォトスではよくある手段ではあるわ。…けど、ドーラ師匠が相手なら話は別。『キヴォトスの配達屋は?』と問われれば、大抵が師匠の名前が挙げられるくらいには有名で、それに伴い、並大抵の相手では敵わないことも知られてる筈。明らかにリスクとリターンが合っていない。それなのに、襲撃者が来るなんてこと…あるのかしら?」
「…それは俺も気になってたことだ。実はアルと会う前にも何人か、俺のことを知らないチンピラロボが襲ってきた。そこまではいい。そう言う奴らはいるだろうからな。だが……それに混じって、あきらかにその筋のものと思われる奴がいた。しかも、同じピンバッチを付けて。お金が欲しいなら銀行を襲うなり、私以外から狙うなりすればいい筈。なのに奴らはこの金塊に固執し続けた」
「となると…」
「あぁ」
「「何かどうしても狙わなければならない理由を発生させるような何かが依頼者/クライアントの金塊に含まれている」わね」
やはりアルもその結論に至ったらしい。
俺たちの間に緊張が入り始める。
「…ドーラ師匠のことだから全部調べてる筈だと思うから、聞くけれど。クライアントの経歴などに後ろ暗いこととかは?」
「なし。強いて言えば、最近友達のお菓子をいくつか食べちゃってそれをずっと隠してることくらいだな」
「なら金塊の集め方は?少なくとも、これだけの金塊、並大抵の方法じゃ手に入らない筈よね?」
「確かカジノって言っていたな。偶々その日絶好調で、試しに行ったら、1000倍になって帰ってきたとか。その後、お金を金塊に変えた後からは、その幸運を打ち消すかのように、お気に入りのキャラのグッズがしばらく手に入らなくなってたとも言っていたが」
「…因みに。そのカジノ。何か裏稼業とかと関係はしてたりするのかしら?」
「…するな。しかも聞いた話、今そのカジノは火の車状態だそうだ」
「……じゃあそれじゃないの。大方、経営困難になるほど、思った以上に大量の活動資金を取られたから、それを取り返す為に、別の団体を装って襲撃してるってところかしら…?」
「だろうな。ほぼ確実にそれだろうな」
「…ドーラ師匠。あまり驚いてるようには見えないけれど…まさか」
「あぁ、予測してたし、裏付けとなりそうな証拠も入手済みだ。まぁ、うん。がんばれ、アル。捕まったら地獄だぞ☆」
「……なななな…なんですってぇーー!?」
アルが白目を剥いて叫ぶと同時に後ろから『ブーンブーン』『チャラチャラ♪×2』と昔の暴走族かってツッコミたくなるような音が聞こえ始める。
どうやら、早速きたらしい。
「っと!噂をすればなんとやら!か弱い私達を虐める
「…ッ!こうなったらヤケクソよ!」
そうして、互いにアクセルを一段階上げる。
それと同時に、俺は『アーカイブ』から特注スモークグレネード、バナナの皮、
「ド、ドーラ師匠…?な、何を…」
「妨害工作。っと早速…」
「くそ、煙で殆ど前が見えn…うわあああああ」
「なんでバナナの皮があるんだよ!?しかもめちゃくちゃスリップするううううう!?」
「たかがバナナだろ!?こんなの避ければ!…ん?なんだ目の前になんか丸いnぎゃあああああ!?」
「お、おい、この丸い奴ら、爆弾だ!しかも俺たちを狙ってやってきtあああああああ!?」
「と、とりあえず全部避けろおおお!」
煙の中から悲鳴に似た叫び声が聞こえる。
やはり、某レースゲーの妨害アイテムなだけあって乗り物相手にはとことん強いな。作っておいて正解だわ。
「うし、ちゃんと効いてんな」
「…あの煙の中で。一体何が起こってるのかしら……」
「さぁな?でもきっと、連中は俺が撒いた"
「!わ、わかったわ!」
そうして急いで引き離せるだけ引き離そうとする。
だが、それでもやっぱり運がいい奴らはいるようで。
「くそ!?さっきので半数以上がやられたか!?」
「しかも距離が離されてやがるぞ!」
「だが、それでもこっちの方がまだ有利だ!いけるぞ!」
「ひゃっはー!!大人しくその金塊を渡しやがれぇい!!」
こうして妨害アイテムが仕掛けられた煙の中を突破して、来る奴らがいた。
「全てを動けなくすることはできないとは思ってはいたが。思ったより残ったな」
「ど、どうするのよ!?」
「んー…よし、それならいい案がある。アル、とりあえずバイクに乗りながら、いくつか狙撃してパンクさせろ。そしたら更に追っ手も少なくなるし、警戒して向こうの移動速度も遅くなる。いい提案だろう?」
「な、なるほど…確かにそれなら…!わかったわ!それなら私に任せなさい!全部撃ち抜いt………って、へっ?…少し待ってくれる?…えっと…今…!あれを、バイクに乗ったまま撃ち抜けと…!?言ったの!?」
そうして、ノリノリで提案を受諾する…が、少ししてとんでもないことを言われたことに気がつき、青い顔してこちらを見て叫ぶ。
うーん、ナイスリアクション!
「あぁ、確かにそう言ったけど?何か問題でもある?」
「問題大有りよ!?私、まだ片手打ちの精度はそこまで高く無いのだけど!?その上で、後ろからくる追っ手を狙撃しながらの運転をしろって言うの!?いやいやいや!?私、まだできないわよ!?それでもやれと!?」
なんてことないように言う俺に対し、嫌々と言うアル。
だけど、俺は知ってる。
アルの強さを。
アルが認識していないポテンシャルを。
「いや…それってさ、アルの基準での話じゃん。片手打ちに関しては10回に1回程、狙ってるところとはほんの少しズレて当たるだけで済んでるし。バイクでの狙撃も真正面ならまぁまぁの精度で出来てるし。それなら、後ろへの狙撃もなんとかいけるって」
「っ…!けれど、私…」
「それにさ、これ出来たら絶対ものすごいカッコいいと思うぞ?なんせ、バイクに乗ったままで後方の敵を蹴散らすんだからな。アクション映画さながらの行為だ」
「…うぅっ…!」
「…それにさ。少なくとも、そんな前提が全て無くとも、俺はアルにならできると信じてるんだ。どんな難題でも応えられるってさ。それでも出来ないって…言うのか?」
「……ッ〜〜!あぁもう!わかったわよ!やるわ…やってやるわ!そこまで言われてしまったらやるしか無いじゃない!」
そう叫び、不安による冷や汗を掻きながらも、緊張で引き攣りつつも、武者震いのような笑顔を見せた。
覚悟を決めた目を灯して。
「…けど!それでも!安定して狙い撃つのはまだ出来ない!私の力だけじゃ無理よ!だから…師匠!手伝って!!」
「…OK…!内容は!?」
「確か、この先にトンネルがあったわよね!?なら、そこへ入ったら20秒後弾丸を空中に投げてばら撒いてくれる!?成功率は2割以下だけれど…上手くやれば進行を更に遅らせられるし、運も良ければ一撃で半数以上を落とせるわ!」
「…ッ!なるほどな、あれか…理解した!」
そういうと、俺はアーカイブから弾丸を取り出し、アルの乗るバイクの後方へと移動、アルはというと片手で愛銃のスナイパーライフルを持ち、後ろを向いて射撃体制にはいる
やることは至ってシンプル。
しかし、現実ではかなり難しい超超高難易度の神技。
「…後10秒!…5!4!3!2!1!今!」
「…ッ!…ここよ!」
整備されたトンネル内の道路へと入り、やや暗くなって少しした瞬間、上空へと多数の弾丸を投げ飛ばす。
それとともに硝煙の匂いと激しい銃声と共に、一つの弾が、投げ飛ばされた弾へと向かい始め、吸い込まれる。
偶然…などでは無い。意図的に狙ったものである。
そして当たった弾は薬莢の火薬に発火し、ぶつかってきた弾と共に、弾かれるようにしてさらに別の弾へと向かう。
そうして、またその弾は今度は壁などにも向かい始め、ぶつかり、跳ね返ってまた別の弾や俺たちに追いつこうとしていた標的、壁へと向かい始める。
ビリヤードショット。
それがこの様子から付けられた、この射撃技術の名前である。
銃弾に銃弾にぶつける。
撃った弾丸を撃つことで軌道を変えることも可能。
正に銃弾を『ビリヤード』のように扱う技術。
ただし、今回のは、それの難易度の訳が違う。
なんせ、アルがやったのは。
「…
「…すごいな」
「まぁ…たまたま、運が良かっただけよ。さてと少し動きが鈍くなっている今のうちに、狙撃しちゃいましょ!」
俺でも『アーカイブ』能力使わなければほぼ不可能に近い、神業や絶技と呼べるような技___空に飛び散った数十の弾丸を全て跳弾で撃ち、弾丸の嵐を発生させるというものだから。
そんな芸当をやってみせたアルはもはやキヴォトスにおいてトップレベルの射撃の腕を持っていると言えよう。
(……あのアルがなぁ)
すぐそばで運転しながらの狙撃に苦戦しつつも次々と追跡者を狙い撃つ、金色とワイン色の狙撃銃を持った紅髪の悪魔の少女を眺める。
寂しさと誇らしさを感じた。
多分親離れする時のような、自分を後輩が超えていった時のような、好敵手が遠く高みへと行った時のような。
そんな寂しさと誇らしさを。
最初は面白そうだからという理由と至近距離でも対応できるようにという理由で、凸スナのコツだけを教えてただけだった。
けれど、だんだんやっていくうちにスポンジのように吸い込んでいくのが面白くて、ついつい、他の技術を教えてしまい、結果的に
ついには、『アーカイブ』を使わなければ自分が負けそうになる強さへとアルはなった。
恐らく、程度の違いはあれど、教え子の成長を見るというのはこんな気持ちになるのだろう。
感慨深いと言う気持ちに。
「___師匠?ドーラ師匠…?ドーラ師匠!ちょっと!話聞いているのかしら!」
「んあ?ああすまない、ぼーっとしてた…。どうした?」
「もう、大丈夫なの…?きついなら私に頼りなさいよね?」
「心配してくれてありがとう。だが大丈夫だ」
「そう。ならいいのだけれど……。それでなんだけれども…。とりあえず一瞬躊躇ったり、急ブレーキかけたりした車両から順に、後続を巻き込んでトンネルの通路を塞ぐように撃って、動けなくしていったからしばらくは来ないとは思うから、さっきの襲撃で減った分をどこかで補給したいのだけれど…大丈夫かしら」
「…そうだな」
トライクのミラーを見ると、確かにアルのいう通り、前面部隊と思わしき車両がトンネル内の道を塞いで、無事だった後続の行く先を塞いでいた。
この様子なら最低でも数十分は動けないだろう。
「丁度、ミレニアムがこの先にある。私も用事として会わなきゃならない奴らがいるし…そこによるか。軽く休憩ついでに。奴らもミレニアムの管轄では表立って暴れないだろうしな」
「それはいいけれど…誰なのかしら?気になるわね…」
「あー…そうだな。まぁ、言ってもいいか。一人は私と同等に渡り合えるチェス仲間。もう一人は最近拾ったばかりのうちの新人だ。前者はとある特注の機械を頼んでてそれの受け取りで、後者は少しばかり色々あって、様子を見る為に会いに行く」
そう言って、頭に二人の姿を思い浮かべた。
「へぇー…じゃあ、私もその二人にあっても良いかしら!」
「遊び仲間の方は色々あって二人っきりで会う予定だから無理だが…うちの新人の方なら問題ないだろうさ。この先アルとも会うことは増えるだろうしな」
「…!ありがとう!…ふふっ♪どんな子なのか楽しみね…!」
そうして、二つのエンジンはトンネルを抜けて先へと進む。
目指す先は、科学と研究者、最新技術の学園都市。
キヴォトス三大学園の一つ。
ミレニアムサイエンススクールだ。
次回!ミレニアムサイエンススクールに到着!原作キャラとオリキャラが登場するぞ!お楽しみに!