カッコいいしかない親友の王子様系女子、俺に可愛い義妹ができてから様子がおかしい   作:枩葉松

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第13話 眼球が幸せ

 

「お兄さん、誰か待ってるんですか?」

「もし暇してるなら、あたしたちとどっか行きません?」

 

 念には念を入れて、待ち合わせ場所には一時間前に到着。

 

 ただぼーっと来栖の到着を待っているだけなのだが、今日はやけにひとの視線を感じる。

 オマケに、まったく知らないひとにも話し掛けられる始末。

 

 着いてからもうこれで三組目だぞ。どうなってるんだよ。

 どうせ怪しい宗教かセミナーの勧誘だろ? そんなに俺、騙しやすそうに見えるか?

 

 ……普段は何ともないのに。

 慣れないオシャレして、都会に憧れた田舎者みたいな雰囲気出てるのかな。

 

「すみません。間に合ってるので大丈夫です」

「あっ、じゃあ連絡先だけでも――」

「そういうのはちょっと。他を当たってください」

 

 何考えてるんだ。個人情報なんか渡せるわけないだろ。

 

 ……にしても遅いな、来栖。

 もう待ち合わせの時間、過ぎてるのに。

 

「……ん?」

 

 遠くからこちらを覗く、見慣れた灰色の双眸。

 

 ネイビーのロングスカートに白のブラウス。

 愛らしい編み込みが目立つ銀のショートヘア。

 

 いつもの中性的な雰囲気がまるで感じられないファッションとメイクだが……しかしあれは、間違いなく来栖だ。

 

「あんなとこで何やってるんだ……?」

 

 

 

 ◆

 

 

 

「なに……あれ……?」

 

 午前十一時。

 待ち合わせ場所の駅前へ向かった私は、信じられないものを目にし硬直した。

 

「新……だよね……?」

 

 明るいグレーのセットアップに黒のシャツ。

 カジュアルな革靴、キラリと光を反射する金色のイヤリング。 

 洗練された雰囲気を醸すヘアセット。

 

「わぁっ……あっ……!」

 

 頭を抱え、悶絶する。

 

 ……はい?

 は、はいぃいいいい!?

 

 ななっ! なななっ、何がどうしてそうなった!?

 

 普段は真面目な好青年といった感じだが、今日はそこに程よいチャラさが加わってイケメンハリケーンが巻き起こり、私の心臓を直撃していた。

 

 だ、ダメだ……!! 死ぬ!! これ死ぬ!!!!

 

 早く意識を逸らさないと……!!

 見ないようにしないと……!!

 

 うぅ、でも無理ぃ!!

 

 新、尊すぎるぅ~~~~~!!

 眼球が幸せって言ってるぅ~~~~~!!

 

「……ん?」

 

 ひょこひょこと、新に近づく陰が二つ。

 小綺麗な女性二人組。

 

 ……え? ぎゃ、逆ナンされてる!?

 

 すげー……逆ナンとか、本当にあるんだ。

 まあでも、あのレベルだと声もかけたくなるよなぁ……。

 

 って、私も早く行かないと!

 

「お姉さん、今ヒマ? オレとどっか行かない?」

 

 走りかけた、その瞬間。

 見知らぬ男が、私の手首を掴んだ。

 

「…………」

 

 この手の男には慣れっこだ。

 いつもみたいにひと睨みすれば……って、あれ?

 

「お姉さん、マジ可愛いね。名前何ていうの? 何て呼べばいい?」

「あっ……いや……」

 

 可愛い服、可愛いメイク。

 そのせいで中性的な要素が削がれ、今の私は王子とは呼べない状態になっていた。か弱い女子がいくら目力を強めたところで、たいした意味などない。

 

 ……このひと、力強いっ。

 こ、怖い……。

 

 こんなの早く振り払って、新のとこ行かなきゃなのに。

 じゃないと、誰かに持って行かれちゃうよぉ……!

 

「――――おいっ。誰だよお前」

 

 新の声だった。

 怒りを帯びた顔で男の腕を掴み、私から引き剥がす。男はバツの悪そうな表情を浮かべ、すごすごと去ってゆく。

 

「大丈夫か、来栖。怪我とかしてないか?」

「……」

「来栖?」

「……」

「お前、本当に大丈夫か……?」

「……あ、うん。平気だよ、ありがと」

 

 あっっっっっぶねぇえ!!

 新がイケメン過ぎて、喉をどう使ったら呼吸できるのか忘れちゃってた……!!

 

 ……落ち着け。

 私の仕事を忘れるな。

 

 今日は何のためのデートだ。新から意識してもらうためのデートだろ。

 そのために、精一杯可愛くしてきたんだろ!!

 

「これ、今日のために買った服なんだ。ど、どうかな……?」

 

 スカートの裾を軽く摘まみ広げて、必死に練習したあざとい目をばちこりと食らわせていくぅ!!

 

 いつもと違って女の子っぽい私にギャップ感じて、間違いなくドキドキしちゃってるでしょ!? さっさとその顔真っ赤にして、目のやり場に困れよ鈍感野郎!!

 

「よく似合ってると思うぞ。来栖は何でも着こなせてすごいな」

「…………うん、ありがと」

 

 そ、それだけ……?

 たった、それだけ……?

 

 ……もしかして、本心ではいつもの感じの方がよかったとか思ってるのかな。

 

 制服以外ではほとんどスカートを穿かず、モデルの仕事でもパンツ系ばかり。

 メイクだって強い女、クールな女を意識してきたため、こういう可愛い系は初めて。

 

 ぼたんやメイクさんは褒めてくれたけど……だからといって、新が同じ感想を抱くとは限らない。そもそもあの二人が、私に気を遣って嘘を言っていた可能性もある。

 

「……っ」

 

 嫌なことばかり考えてしまう。

 こんな思いするなら、普段通りの格好してくればよかった。

 

 ……そもそも、デート自体やらなきゃよかったかも。

 ははっ。頑張って損しちゃったな。

 

「じゃあ行くか、来栖」

 

 と言って、なぜか私の手を握る。

 

 そーっと、綿を扱うように優しく。

 それでいて、どこへもやらないように強く。

 

「どうしたの、この手……?」

「また変な男に見つかって、どっか連れてかれたら大変だろ」

「……」

「俺が捕まえとくから、ずっとそばにいろよ」

「…………は、はいっ」

 

 うっひょぉ~~~~~~!!!!

 デート最高かよぉ~~~~~~~~~!!!!

 

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