カッコいいしかない親友の王子様系女子、俺に可愛い義妹ができてから様子がおかしい   作:枩葉松

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第14話 デート最高かよぉ!!

 

 昼食。

 

「ここのハンバーグ、美味いな。来栖も一口いるか?」

「ん、貰おうかな」

「じゃあほら、口開けろ。あーんって」

「……あ、あーん……」

 

 デート最高かよぉ!!

 

 

 ◆

 

 

 買い物。

 

「この帽子、来栖に似合うんじゃないか?」

「そう? じゃあ買おうかな」

「ちょっと待って。俺が買うからプレゼントさせてくれ」

「な、何で……?」

「この前の旅館のお返し……ってわけじゃないけど、俺も来栖に何か贈りたいと思っててさ。お前が毎日すごく頑張ってること、ずっと見てるし」

 

 デート最高かよぉ~~!!

 

 

 ◆

 

 

 映画。

 

「へえ、カップルシートってこんな感じなのか。狭いけど寝転がれていいな」

「……ちょっと、緊張するね」

「緊張? あぁ、お前暗いの苦手だもんな」

「いや、そうじゃなくて――」

「せっかく並んで寝転べるんだし、映画終わるまでくっついとけよ」

 

 デート最高かよぉ~~~~~~!!!!

 

 

 ◆

 

 

「……ダメだ。何しに来たんだ、私……?」

 

 映画が終わり、いち早く化粧室へ避難。

 リップを塗り直し、今日一番のため息をつく。

 

 本当なら今日は、私が新を照れさせるはずだった。

 可愛い私を見せつけて、徹底的に意識させるつもりだった。

 

 なのに、何だこれ!?

 新のイケメンさに見惚れて、イケメンさを見せつけられてばっかじゃん!!

 

 くそー!! 新のアホー!!

 おたんこなすのクソボケー!!

 

「な、何とかしないと……!」

 

 ぼたんやメイクさんの力まで借りて……。

 このままじゃ、何のために準備してきたのかまったくわからない。

 

 もういっそのこと、半ば強引にラブホテルにでも連れ込んでやろうか。

 

 ……へ、へへっ。げへへへっ!

 そいつぁ名案だ! これだ、これしかない!

 

 新が悪いんだからね?

 私の計画を狂わせた、新のせいなんだよ?

 

「ねえ、新。私……ちょっとどっかで休憩したいなって……」

 

 化粧室を出て、スマホをいじっていた新に話し掛けた。

 

 極力、艶っぽい表情を意識して。

 あざとく、彼の服の袖を引く。

 

「そうか。だったら、ちょうどよかった」

「えっ?」

「お前、だいぶ前に猫カフェに行きたいって言ってただろ? 今この近くの猫カフェに電話したら、空いてるからすぐに入れるってさ。一緒に行くか?」

「…………ぁぅう」

 

 片や、デートが思い通りにいかなくてラブホテルに連れ込もうとしていたクズ。

 片や、私の過去の発言を記憶していて段取りを組んでくれていたイケメン。

 

 ……もう、泣きたい。情けない。

 殺して……お願い、殺して……。

 

 

 

 ◆

 

 

 

『機会があったら、あーん、してあげてよ! 王子、絶対喜ぶから!』

 

 と、クラスの女子に言われたのでやった。

 

『プレゼントも渡した方がいいって!』

 

 ちょうど俺も渡すつもりだったので渡した。

 

『映画中とか、さりげなく手とか握られたら王子喜ぶかも!』

 

 握りはしなかったが、あいつは暗いところが苦手なのでそれっぽくフォローしておいた。

 

 ……とまあ、来栖が喜ぶならともらった助言は全て試した。

 確かに喜ばれはしたが、ずっと何かを気にしているような雰囲気を感じる。もしかしたら、慣れない格好をして疲れたのかもしれない。

 

 そういうわけで、休憩がてら前に行きたいと言っていた猫カフェへ向かった。

 

「アイスコーヒーとホットミルクティーです。ごゆっくりどうぞ」

「ありがとうございます」

 

 店の中を歩き回り、そこら中で惰眠をむさぼる猫たち。

 だが、映画館からずっと来栖の表情は暗いまま。猫には見向きもせず、チビチビとミルクティーで唇を濡らす。

 

「猫のおやつ、買っといたぞ。これで遊ばせてもらってこいよ」

「……い、いや、私は……」

 

 そう言っている間に、目ざとくもおやつを見つけた黒猫がてちてちとやって来た。

 

「に゛ゃーぅ」

 

 早く寄越せと、低めの鳴き声が語る。

 俺が口元へ持って行くと、パクリとひと口。ほら触れとばかりにその場に座り、俺は背中や頭の毛並みを堪能する。

 

「来栖も、ほら、手貸して」

 

 彼女の手を取って、半ば強引に触らせた。

 

 ふわふわしていて、温かくて、ゴロゴロ鳴って。

 独特の安心感が手のひらから伝わり、強張っていた彼女の顔が少しだけ和らぐ。

 

「うぉっ、めっちゃ来た」

「えっ。ど、どうしよっ、どうしたらいい……!?」

「せっかくだし、来栖が構ってやれよ」

 

 俺たちを包囲する、おやつ目当ての猫たち。

 おやつが入ったカップを来栖に押し付けて、俺はコーヒーをすする。

 

「うなぁー」

「にゃー」

「み、皆の分、あるからね……! 喧嘩しないで……!」

 

 他の客と猫に配慮した声量で言いつつおやつを配り、その報酬としてなでなでを堪能する。

 膝の上に乗られ、胸までよじ登られ、もみくちゃにされて。

 小さな毛玉たちは来栖に群がる。

 

「なーぅ」

「わぁ……! い、痛っ、えへへっ、ちょっとぉー……!」

「みゃー」

 

 年相応のあどけない笑顔。

 クールでダウナーな王子様――という普段のイメージが嘘のような、甘いリアクション。

 

 ……ふと、中学の頃のことを思い出す。

 

 一時期、うちには親戚から預かった猫がいた。

 猫好きだが母親のアレルギーの問題で飼うことが許されなかった来栖は、猫目当てで毎日欠かさずうちに来ていた。

 

 俺そっちのけで猫と遊び、遊ばれ、戯れて。

 その表情を眺めながら、当時の俺は妙なざわめきを感じていた。

 

 あの頃は、その気持ちにどう名前を付けたらいいのかわからなかったが――。

 

「ちょ、ちょっとー、舐めたら痛い……! うわぁっ……も、もぉー……っ」

 

 今一度彼女を見て、中学生の頃の自分を思い出す。

 当時の俺が何を思っていたのか、今なら言語化できる。

 

「俺、ずっと前から……」

 

 小さく呟いて、来栖と目が合う。

 彼女は恥ずかしそうに視線を伏せるも、すぐ猫に手の甲を舐められ、唇が緩みとけたアイスのような笑みを描く。

 

 

「――来栖のこと、可愛いって思ってたのか」

 

 

 一度言葉にしてしまうと、もうそう思わずにはいられない。

 可愛い生き物にしか見えない。

 

 異性として意識しちゃいけないのに、どうしたってその笑顔に惹かれてしまう。

 

「新、今何か言った?」

「……ううん、何でもないよ」

 

 のそのそと、一匹の白猫が俺のそばにやってきた。

 俺はその猫をひと撫でして、ふっと息をついた。

 

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