カッコいいしかない親友の王子様系女子、俺に可愛い義妹ができてから様子がおかしい   作:枩葉松

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第25話 超絶怒涛のアンポンタン

 

 

 午後六時頃にひと段落し、新は帰宅。

 私は抱き枕をかかえつつ、ベッドの上でゴロゴロと休憩中。

 

 抱き枕を彼に見立て、ぼふっと顔を押し当てる。

 

 あぅう~~!!

 めっちゃよかったよぉ~~~~!!

 

 新、身体かたっ! 腕ごつっ! 匂いすこっ!

 

 ハグ&なでなで最高かよぉ~~~~~~!!!!

 

 もうあれ、何かこう適当に理由をごちょごちょっとでっちあげて、今後の業務内容に入れちゃおう。

 新が断らないってわかったし、うん、いけるっしょ。

 

 ってか、こりゃ流石の新も照れちゃったかなぁ?

 世界一だとか何だとか、熱いこと言っちゃってくれてたからねー!!

 

 ……まあ実際のところ、私と同じくこの匂いにあてられて変な気分になってただけだと思うけど。そうじゃなくても、嘘でもいいから可愛いって言えって頼んだの私だし……。

 

 でもでも! これで新も、小指の先くらいは私のこと意識しちゃったんじゃない?

 私の身体がどれだけやわらかいか、忘れられなくなっちゃったんじゃない?

 

「……あっ」

 

 ふと、リビングにあのクッキーを放置していたのを思い出す。

 

 あんな劇物は、早々に処理しておかないと。

 帰って来たぼたんが食べたら大変なことになってしまう。

 

「ん? ……え、あれ!?」

 

 部屋を出てリビングへ。

 クッキーを載せていた皿を確認すると、明らかに数が減っていた。

 

 私は食べていないし、だとしたら可能性は一つしかない。

 

「新っ!! 新、いま大丈夫!? 平気!?」

『こ、声でかっ。何だよいきなり、ビックリするだろ』

 

 すぐさま彼に電話を掛けると、呆れたような声が返ってきた。

 

「リビングにあったクッキー、勝手に食べたでしょ! いつ、何枚食べたの!?」

『あっ……ご、ごめん。失敗作で美味しくないって言われてたけど、来栖の手作りがどうしても食べたくて……』

「謝らなくていいから、いつ、何枚食べたの!!」

『いつって……勉強再開する前に三枚と、途中トイレに立った時に一枚、帰る前にも二枚食べたけど……』

 

 勉強再開前ということは、もう五時間以上前だ。

 それなら流石に勉強中に効果が出ていないとおかしいのだが、新の様子にどこも妙なところはなかった。電話口からも、それは感じられない。

 

『そ、そんなにあのクッキー食べちゃまずかったのか? だったら……ごめん、謝るよ。せめてちゃんと、食べたよって言うべきだった』

「あぁ……う、ううん。それはいいんだけど……新、平気なの?」

『平気? いや、来栖は美味しくないって言ってたけど、俺にとってはめちゃくちゃ美味しかったぞ。仕事も頑張れて勉強もやってあんなお菓子まで作れて、来栖は本当にすごいな。尊敬するよ』

「……あぅう……」

 

 何で今!! 褒める!!

 心配してるのに嬉しくなるだろ!!

 

 聞きたいこと、それじゃないし!!!!

 

「……と、とにかく、具合が悪くなったら即病院に行くこと。わかった?」

『わかった。今日はありがとな。今度は俺が、来栖の好きなシュークリーム作って持って行くから』

「あぁー、うん……あ、ありがとう……」

 

 ピッと電話を切り、テーブルの上のクッキーを見下ろした。

 

 …………まさかお前、何の効果もないのか?

 

 震える指先でクッキーを摘まみ、恐る恐るひと口。

 うん……ただ美味しいだけの、普通のクッキーだ。

 全部食べてしっかりと飲み込み、しばらく待つが何も起こらない。

 

「あの薬……全部インチキだったりする……?」

 

 当然の疑問が脳裏を過ぎった。

 

 スマホを開いて、販売サイトをチェック。

 サイト内のレビューは絶賛の嵐だが……商品名で検索をかけてみると、サジェストには「インチキ」「効果なし」「ビタミン剤」といった文字が並んでいた。

 

 …………待って。

 待って待って待って!!

 

 じゃあ私、前に媚薬呑み干した時、全部思い込みでドキドキしちゃってたわけ!?

 超絶怒涛のアンポンタンじゃん!!

 

 今回も匂いがどういう言って発情してたけど、あれも全部思い込みってこと!?

 私ってば、バカのオリンピック目指してんの!?

 

「……ん? あれ、でもそうなると……」

 

 私が度し難いバカで、あのクッキーに何の心配も必要なかったのは、まあそれでいいとして。

 

 だったら……クッキーの匂いに効果がなかったのだとしたら、何で新は会ってすぐに私に可愛いって言ったんだ? 撫でてくれてた時のは私が頼んだことだけど、来て早々のは新の意思だよね?

 

「もしかして新って、本当に私のこと好き……?」

 

 今すぐもう一度電話して、ことの真相を確かめたい。

 だが、万に一つでも好きじゃないとハッキリ言われてしまったら立ち直れないかもしれない。というか……たぶん、その場で泡吹いて死ぬ気がする。

 

「どうしよう……」

 

 呟いて、その場でしゃがみ込む。

 

 今までは、彼の気を引きたい一心で何でもやってきた。

 しかし、実際に好かれてからどうするかはまるで考えてこなかった。

 

 その視線や声に好きという気持ちが編まれている可能性を考えると、まともに目を合わせられる気がしない。もし下手なことをして嫌われたらと思うと、隣でまともに呼吸できる気がしない。

 

「明日から私、ちゃんと新の顔見れるかなぁ……?」

 

 まだ好きなのかどうかもわかっていないのに。

 私の胸の中は期待と不安でいっぱいで、今にも破裂しそうだった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 来栖からの突然の電話。

 最初はよくわからないことを言っていたが、何やら問題は解決したらしい。

 

「……にしても、今日のは心臓に悪かったな」

 

 彼女を褒めて、撫でて、抱き締めて。

 ストレス解消のためだったわけだが、好きな子に触るっていうのは……何というかこう、やばい。やばい以外の表現方法が見つからない。

 

 そして今回でわかったことは、ちゃんと思ったことは言った方がいいということだ。可愛いと言っただけであれほど喜ぶなら、これからはちゃんと言おう。

 

 いつでも、思った時に、ちゃんと。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 休み明けの月曜日。

 登校した私は、自分の席に着き新のことを考えていた。

 

 ――新は私のことが好き、かもしれない。

 

 情報が確定していない今、大切なのはボロを出さないこと。

 彼の一挙手一投足に妙なリアクションをして、変な子だと思われないようにしないと。

 

「王子、今日もカッコよすぎ……!」

「尊いわぁ……」

「こっち向いてーっ!」

 

 教室の外から、どこかのクラスの女の子たちが声をかけてきた。

 彼女たちに手を振ると、その三人の隙間を割って新が入って来る。

 

「あっ……お、おはよう、新」

 

 平常心、平常心。

 静かな心と、僅かな笑顔。

 普段通り、何でもないようにしていないと。

 

「おはよう、来栖。今日も可愛いな」

「びゃ――っ!?」

 

 平常心なんか保てるかボケェ!!!!

 

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