カッコいいしかない親友の王子様系女子、俺に可愛い義妹ができてから様子がおかしい   作:枩葉松

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第28話 毎秒可愛い

 

 七月中旬。

 時刻は午前十時過ぎ。

 

「おーっし、できた。完璧だっ!」

 

 犬飼の実家であるヘアサロンBLINKで、俺は今回も髪をセットしてもらっていた。

 

「何か悪いな、またお世話になって。やっぱりお金――」

「だから、それはいいって。王子と出かけて来いって言ったのオレだし、ここまで面倒見るのが筋だろ」

「いや、でも……」

「大体、友達を家に呼んで髪弄るだけで金取るとかやばいだろ。オレがちゃんと免許取ってハサミ握れるようになったら、毎月金落としに来てくれよ。一番高いトリートメント、無駄につけとくから」

「……わかった。そうする」

 

 人懐っこい笑みを浮かべる犬飼。

 そう言われては引き下がるほかなく、返事をして立ち上がろうとした時、「ちょっと待って」と犬飼の制止が入る。

 

「写真撮らせてくれ。上手くできたから残しておきたい」

 

 言いながら、前、横、後ろからパシャ。

 三枚の写真を満足そうに眺め、ふんふんと頷く。

 

「やっぱりお前、カッコいいよ。王子の隣を歩くなら、これくらいじゃないと」

「犬飼の腕がいいからだよ。それより、これだったら来栖もちょっとは俺を意識してくれるかな……?」

「えっ? あー……まあ、心配いらねぇんじゃね? どーんと構えていけよ! 男だろ!」

 

 俺を肩をバンと叩き、豪快に笑う。

 それを見て少し勇気をもらい、俺は待ち合わせ場所へと向かった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「お姉さん、今からどこに――」

「失せろ」

「ア、ハイ……」

 

 待ち合わせ場所の駅前。

 勢い余って一時間ほど早く到着してしまい、私は静かに新の到着を待っていた。

 

 暑い。凄まじく暑いしナンパもうざいが……でも、全てヨシ!!

 なぜなら今日の私は、今世紀最大級に可愛いから!!

 

 ホルターネックのニットソーにハイウエストのショートパンツ。

 白に黒とシンプルな色合いだが、腕や足が目一杯出ており超絶エロい。私が男でこんなの見たら、ヨダレ垂れ流しながら虚空に向かって腰振ってると思う。

 

 こいつぁ新も、鼻の下伸ばしちゃいますよ!!

 私を見て、ドキドキすること間違いなしよ!!

 

 いやー……顔が良くてスタイルも完璧ってのも罪だなぁ。

 

「おっ、新――」

 

 手を振りかけて、硬直した。

 

 あっ……あっ……あわぁああああああああああああ!!??

 覚悟はしてた……!! してたけど……く、くそぉ、何だって今日はここまで桁外れにキラキラしてるんだ!?

 

 ……あ、やばい。

 

 今、無意識に虚空に向かって腰振るところだった。私の中の仮想バナナがエレクトリカルパレードしてた。

 

「お待たせ、来栖。もしかして、結構待った?」

「へぇ? じぇ、じぇんじぇん待ってにゃいよ!?」

「な、何だって……?」

 

 イケメンオーラに負けて噛みに噛みまくってしまった。

 だ、ダメだ。変な子だって思われちゃう……!

 

 てか、何だってこいつは、私がこんなに可愛くしてるのに平然としてるんだよ!!

 うごぉおおおお!! 興奮しろぉおおおお!! 腰振れぇええええ!!!!

 

「よくわかんないけど……じゃあ、電車乗るか」

 

 駅に向かって歩き出した新。

 私は咄嗟に、彼の腕に抱き着く。

 

「お、おい。暑いだろ。せめて手を繋ぐとか、それくらいにしてくれよ」

「デートに誘ったの、新でしょ? ほら、彼女みたいで嬉しくない?」

 

 ふ、ふふふっ! ほれほれ、おっぱいだぞ!

 テメェも照れ顔の一つくらい見せてくれなきゃフェアじゃねえよなぁ!?

 

「う、嬉しいとかそういうのいいから、一旦離れて――」

「やだ。この状態以外じゃ歩けない」

 

 オラ照れろ!! ニヤつけアホ新!!

 

 ――と、その時だった。

 新は私の足をさらい、流れるような手捌きでお姫様抱っこ。周囲からの視線が突き刺さる中、スタスタと駅へと向かう。

 

「ちょ、新待って!? 恥ずかしいって!」

「今のままと普通に手繋ぐの、どっちがいい?」

「普通に手繋ぐ! 繋ぐからーっ!」

 

 そう叫ぶと、ようやく足が地に着いた。

 

 ……前に一緒に露天風呂入った時もそうだったけど、私のおっぱい、そんなに興味ないのかな。別に小さいわけじゃないと思うけど……。

 

 もしかして、おっぱいってか私自体に興味皆無?

 

 やっぱり、どれだけ努力したってダメなんだ。

 新と付き合うとか、無理なのかも。

 

 今日のデートのためにたくさん頑張ったのに、全部無駄だったな……。

 

「ほら、来栖」

 

 と、私の前に手を差し出した。

 

 見上げたその顔は、リンゴのような赤に染まっていて。

 握ったその手は、やけに汗ばんでいる。

 

「……あんまりくっ付くなよ。俺だって男なんだから……その……じ、自重してくれ……っ」

「…………」

「わかったら、ほら、返事」

「……は、はいっ」

「ん。じゃあ行くか」

 

 うっひょぉ~~~~~~!!!!

 照れ顔最高かよぉ~~~~~~~~~!!!!

 

 

 

 ◆

 

 

 

 電車に乗り込み、並んで席に座って。

 スマホでこれから行く遊園地について調べる来栖を、そっと横から盗み見る。

 

 ……可愛い。可愛くて、辛い。

 

 これ、言ってもいいのか?

 いやでも、ここで言ったら次に口に出せるのは結構あとだよな。あんまり無駄遣いしない方がいい気がするし……うーん、難しい。毎秒可愛くて、タイミングがわからない。

 

「ここのお化け屋敷、最近リニューアルして超怖くなったって。行ってみる?」

「いいけどお前、そういうの苦手じゃなかったっけ?」

「新を盾にするから平気。いざとなったら倒してくれるから」

「お化け屋敷の従業員さんを倒しちゃまずいだろ……」

「とにかく、ずっと抱き着いてるからゴールまで連れて行ってよ」

「……それ、わざわざお化け屋敷行く意味あるか?」

「少なくとも、私に抱き着かれて新は嬉しいだろうし、行く意味あるんじゃない?」

「別に嬉しくない」

 

 嘘です。

 超嬉しいです。

 

 だからこそ、勘弁してください。

 最悪、心臓が爆発して死ぬので。

 

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