カッコいいしかない親友の王子様系女子、俺に可愛い義妹ができてから様子がおかしい   作:枩葉松

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第38話 後日談 1/2

 

「……」

 

 帰宅後。

 新にピザの注文を任せ、私はトイレにこもっていた。

 

「……」

 

 用を足すわけでもなく便座に座り、公園での出来事を反芻する。

 指先で唇をなぞり、まだそこに残る体温を感じて胸が熱くなる。

 

「ふ、ふへ、ふへへへ……っ!」

 

 やっべぇ……やべぇよ私! キスしちゃった!

 

 熱中症でダウンしたことを慰められて、新に惚れ直して。

 公園で何かいい雰囲気になって、私からの好きに過剰反応する新が愛おし過ぎて、彼からの好きも心臓が爆発しそうなくらい嬉しくて……。

 

 もう自分でも訳がわからないくらい舞い上がって、ついやってしまった。

 

 ファーストキスは新からして欲しかったけど……まぁ、幸せだからヨシッ!!

 あーっ、早く顔もとに戻ってー! 今はちょっとだらしな過ぎて、こんなの新に見せられないよー!

 

「にしても……そっか、もう自分から動いてもいいのか……」

 

 媚薬を盛ったり可愛い服を着たりと、これまで私は散々新に手を出してもらうことを期待してきた。

 それもこれも、向こうが私をどう思っているのかわからなかったから。下手にこちらが動いて、嫌われたくなかったから。

 

 でも、もう両想いだとわかった。

 キスをしても問題のない関係になった。

 

 だったら、私から襲ってもいいのでは……?

 

「……っ」

 

 ゴクリと唾を飲む。

 黒い欲求に自然と口角が上がり、私の身体は考えるよりも先にアレを取りに動く。

 

 トイレを出て、そっと新の部屋へ。

 そして机の引き出しを開けて、彼が用意していたコンドームを――。

 

「ん……?」

 

 ない。

 そこにあったはずの避妊具がどこにもない。

 

 軽く漁ってみるがやはり見当たらず、他の引き出しを開けるが結果は同じ。

 新がどこかに移動させた? どうして……?

 

 首を傾げながら部屋を見回して、ふとゴミ箱に視線が行き。

 

 ――あった。

 私が見たコンドームが捨てられていた。

 

「私、捨ててないよね? じゃあ、新が……」

 

 未使用の避妊具をなぜ捨てたのか。

 ピーガガガと来栖コンピュータが動き、一つの仮説を叩き出す。

 

 捨てた。つまり、必要がなくなった。

 避妊の必要がない。

 

 ということは――。

 

 あ、新は、私と子供をつくりたがっているって……ことぉ……!?

 

 い、いやいやいや!!

 確かに私も新との子どもは欲しいけど、今は無理だよ!!

 学校も仕事もあるし、まだ結婚だってしてないわけだし!! ってかそんなことになったら、流石のお父様も新を太平洋に沈めると思うし!!

 

「俺の部屋で何やってるんだ?」

「びゃっ!?」

 

 開きっぱなしの扉から、新が顔を出した。

 私がゴミ箱を見ていたことに気づき、彼は気まずそうに眉を寄せる。そして何かを誤魔化すように後頭部を掻いて、「いやぁ……」と苦々しい笑みを浮かべる。

 

「変なもの見せちゃってごめんな。大丈夫、()()()使()()()()()()

「っ!?」

 

 まさかの本人からの少子化対策宣言。

 

 私に好きって言われてあれだけ照れてた男が、もうそんな覚悟決めちゃってるわけ!?

 こいつの情緒どうなってるのさ!! 頭おかしいんじゃないの!?

 

 この脳内真っピンク野郎!!!!

 

 お、落ち着け私……!

 流石にこれはダメだ。ちゃんと言わなきゃ……子どもはまだ早いって、ちゃんと……!

 

 ……いやでも、新がどうしてもって言うなら……。

 

 うがぁああああああ!!

 どっちが私の本音かわかんないよぉおおおおおお!!

 

「おっ、ピザ来たみたいだな」

 

 私が拳を握り震えていると、新は玄関へ行ってしまった。

 

 ……ま、まあいいか。

 まさか、食事の最中に手を出されるなんてことはないだろう。

 

 今はひとまず、腹を満たさなければ。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 荷解き中の話。

 

「やっぱりこれ、捨てとくか……」

 

 俺は改めて引き出しを開け、犬飼からもらったコンドームを取り出した。

 

 来栖とはもう、恋人同士。であれば、そういうことをする日もいつかは来るだろう。

 だが、それは今日ではないし、一週間後とか一ヵ月後とか、そんな近い話でもない。

 ご丁寧に避妊具をしまっていては、やる気満々だと思われてしまう。貰い物だからとかそういうことは気にせず、ここは処分してしまおう。

 

「……捨ててあるの来栖が見つけたら、安心してくれるかもだしな。うん、それがいい」

 

 ポイとゴミ箱に放って、小さく息をつく。

 

 ……こういうのも、そのうち自分で買うようになるのかな。

 全然想像できないな、そんな俺の姿……。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ピザ美味かったなー」

「そ、そうだね……」

 

 嘘です。

 緊張でまったく味がわかりませんでした。

 

「んじゃ、そろそろ――」

「っ!!」

「映画でも観るか」

「……あ、うん」

 

 何で残念がってるんだ私ぃ!?

 言わなきゃいけない……言わなきゃなのに、本能がそれに抗っている。理性ではダメだってわかってるのに、身体は満更でもないって言ってる!!

 

 ……今更だけど、私、マジでこいつのこと好きなんだな。

 何かこう、遺伝子レベルで抗いがたいものがある……。

 

 い、いやでも、ダメなものはダメだ!!

 

「お菓子、甘い系としょっぱい系、どっちがいい?」

「……甘い系、かな?」

「だと思った」

 

 キッチンの戸棚からお菓子を取ってきて、パチンとリビングの照明を落としてからDVDのセッティング。準備終わったところで、私の隣に腰を下ろした。

 

 左半身に伝わる、彼の体温。

 映画が始まって、退屈な冒頭が流れて、しばらくして。

 

「……っ!」

 

 不意に、新が私の手を握った。

 

 これ、えっちな本で見たやつだ……!!

 退屈な映画をBGMにおっぱじめるシチュエーションだ……!!

 

 は、始まる……っ!!

 始まっちゃうぅうううううう!!

 

 




 ※始まりません。

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