DMC対トゲナシトゲアリ   作:ヘッズ

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第7話 kill the virgin

 仁菜の言葉を合図に演奏を始める。4人はセッション対決で体力を大きく消費した。今すぐにでも休みたいが体に活を入れ、まだまだ余裕ですよと笑みを浮かべながら演奏する。

 DMCの演奏は止まり、ファン達も大きく動揺している。ここが勝負どころだ、渾身の演奏と歌で会場全員の心に爪痕を残し、DMCの心を折って勝負をきめる。

 ファン達がざわついている。パフォーマンスに勝ったことでトゲナシトゲアリの存在を強く印象付けられ、どんな曲を歌うのだろうと耳を傾け、その音に少なからず心が揺れ動かされ、無意識に体を揺すっている者もいる。会場の空気は少しずつトゲアリトゲナシに傾いている。

 クラウザーは流れの変化を感じたのかファック連呼対決とセッション対決で疲れ切った体を無理やり動かし立ち上がると仁菜を見つめ、唾を吐き出す。

 対バンにおいては相手の演奏を止める方法は自らの演奏だけではない、パフォーマンスという名目で直接な妨害行為も認められる。

 

「でたー!クラウザーさんのスピト・パートだ!いった、いった、クラウザーさんがいったーっ!」

 

 クラウザーの口から2発目、3発目とマシンガンのように唾が吐き出され仁菜に全て着弾する。唾を顔に吐きかけられるというのは最大の侮辱行為である。怒りあるいは生理的嫌悪で歌や演奏を止めてしまう。それが狙いだった。

 

「だめだ、全然止まらねえ」

「あのボーカルどれだけ顔射慣れしてるんだ」

 

 仁菜は顔に付着した唾をふき取らず歌い続ける。クラウザーが直接的な妨害行為をするとは調査などで知っていた。

 知っていながらも唾を吐きかけられた瞬間に怒りと嫌悪感で歌うのを止めそうになってしまった。だが過去に歌うのを止めてしまった屈辱を怒りに変え、クラウザーを倒すために歌い続ける。

 

「耳をすませ、この汚い音は汚ねえ音は!」

 

 ファン達はファンの鑑の言葉にファン達は耳をすますといつの間に立ち上がっていたクラウザーからクガアと汚らしい音が聞こえてくる。その音にファン達は嬉しそうに手のひらを上に向ける。

 

「オラたちの邪気を少しずつ分けるんだー、出るぞ!悪魔玉!」

 

 その瞬間クラウザーの口から黄色い物体が吐き出され仁菜の顔に付着する。それは痰である。仁菜は痰を吐きかけられ。一瞬止まるが即座に袖で脱ぐい、平然と歌い続ける。

 

「そんな……悪魔玉を喰らって平然としてやがる」

「何者だ、あのボーカル」

「いや、まだだ!」

 

 クラウザーは仁菜の正面に立つと腰を落としタックルのように身を沈める。その手は腿裏ではなくスカートの中に向かう、下着を脱がし足の間にスマホを差し込む。

 

「クラウザーさんの邪眼だ!」

「これで経済を見通しパンツの中を見通しているんだ!」

 

 ファン達は歓声をあげる。サライバ・パートも悪魔玉も通じなかった。汚れ耐性があるようで、ならば別系統の技で邪魔すればいい。

 クラウザーはそう判断し邪眼を発動した。公然の面々で秘所を見られるという女性にとって最大の恥辱、流石に歌を止めるだろう。

 

「ダメだ、止まらねえ!」

「本当に何者だ!?恥を知らねえのか!?ヤリマンでももう少し恥の概念があるぞ」

 

 クラウザーは思わず膝をつきファン達から悲鳴をあげる。サライバ・パート、悪魔玉、邪眼を駆使しても止められない。

 かつて対バンでもっとも苦戦した相手の1人であるゴッドに対し、クラウザーは悪魔玉とベルリンの黄金の風とゴムゴムの鼻くそで演奏を止めようとしたが止められなかった。

 ファン達はファック連呼対決で引き分けた仁菜への評価を上げていたが今はゴッドレベルの強敵だと認識を改める。

 

「ジャギ様が松明に火を灯したぞ!」

 

 クラウザーが膝をつくなか、棒立ちしていたジャギが突如口から火を吐き、その火で手に持っていた松明に火をつける。

 

「見ていろDMCの信者共、今からこの炎でメス豚の焼豚を作ってくれる」

 

 ジャギはそう高らかに宣言すると近くに居たルパの頭上に松明を放り投げる。この対バンライブが始まりジャギは驚きっぱなしだった。

 クラウザーがファック対決で引き分け、セッションでは負け、パフォーマンスで相手のボーカルを止められない。まさに異常事態だ。このままでは対バンに負けてしまう。

 ではどうするべきか?ジャギにはデスメタル的な才能は全くなく、パフォーマンス一つすら碌にできない、唯ベースが上手いイケメンに過ぎない。それでもデスメタル的なパフォーマンスをしなければトゲナシトゲアリの流れを食い止めらないのは分かっていた。

 そんなデスメタル的才能が無いジャギは頭を振り絞り思いついたのがこのマイクパフォーマンスと松明を放り投げることだった。

 このまま行けばルパに松明が当たり火だるまになってしまうが、クラウザーならともかくジャギにはそのつもりは全く無い。

 ルパに当る前に松明をジャンピングキャッチする。相手も火だるまになりたくないから避けるだろう。それを見て臆したかと罵倒し、そのままジャグリングしながらキーボードやドラムにも同じことをする。

 これなら流れを食い止めクラウザーが立ち直るまでの時間稼ぎになるだろう。今の状況を打破できるのはクラウザーしかいない。

 ジャギは慎重にタイミングを見極める。松明のジャンピングキャッチはやったことはない、失敗すれば炎がついているほうを手に取ってしまい火傷、そして松明を落としてしまい床が燃え延焼しライブハウスが燃える。その可能性は充分にある。これはジャギにとって初めての危険なデスメタル的行為だった。

 

「どうぞ」

 

 ルパはベースの手を止めると足元にあったペットボトルをジャギに投げる。完全に虚を突かれたが反射で受け取る。その瞬間失態に気付く。

 ペットボトルを手に取ったせいでジャンピングキャッチするタイミングが分からなくなってしまった。このままでは床が燃えそこから延焼してライブハウスが全焼してしまう。

 ジャギの脳内ではかつてライブハウスを燃やしてしまった光景が鮮明に浮かぶ。その小心性から数日悪夢にうなされていた。

 

「あのベース、ジャギさんの悪魔の炎を受け取りやがった」

「しかもお手玉してやがる。ジャギ様並みに普通にウメー!」

 

 ジャギが想像している光景にはなっていなかった。ルパは松明を手に取りジャグリングを披露する。ジャギがジャグリングするのはライブなどを見て知っていた。対バンでは同じベースとして、松明を奪い取り逆に利用できるのではないかとジャグリングの練習をし、その成果がこうして発揮されていた

 

「返しますね」

 

 ルパは笑みを浮かべながら炎が付いた松明を投げ返す。

 

「あのベース、松明を投げ返しやがった!」

「ジャギ様を焼き殺す気だ、なんてやつだ!」

 

 ルパの行為に驚きの声があがる。ファンも予想外に驚いているがジャギはその倍は驚いていた。火がついた松明を投げるなんて殺す気か?笑みを浮かべるその姿は悪魔以外の何物でもなかった。

 だが松明の回転を見て気づく。このままいけば火がついてない方が手元に届く。この女は決して悪魔ではない。相手を燃やせない普通の人間だ。

 

「ジャギ様がしっかりキャッチした。やっぱりウメー!」

「そして投げ返した。自らに炎を向けられてお怒りになってるぞ!火あぶりで処刑するつもりだ!」

 

 ジャギもルパにアイコンタクトを送り投げる。パフォーマンスとしてジャグリングの練習をしており、短い距離なら回転をコントロールし火がついてない方が手元に届くように投げられる。

 自分も相手も回転数をコントロール出来て安全性は高い。そして安全を確保しながら投げても相手を焼き殺そうとするデスメタル的行為と見られるのではないかと瞬時に判断した。

 

「ジャギ様とベースで炎の投げ合いだ!」

「ジャギ様に炎対決を挑むとは何て命知らずなんだ」

 

 ジャギは会場の盛り上がりを感じ安堵する。これで多少は相手の流れを食い止められるだろう。それに今はベースの動きを制限している。ベースは地味だが演奏の土台で必要不可欠、DMCはクラウザーの動きが止まっているので演奏できない、だが相手は演奏真っ最中、得をするのはDMCだ。

 だがその判断が間違っていることに気付く。相手の演奏はベースが無くともベストではないがベターに仕上がっている。これぐらいのクオリティの差であればパフォーマンスで勝ったトゲナシトゲアリの勢いを止められない。

 咄嗟にクラウザーのようにもっと直接的に演奏を止めようとするが考えを改める。

 もしジャグリングを止めればこちらが負けたとファンは認めるだろう。そうなれば勢いはさらにトゲナシトゲアリに傾く、止めるのは相手側でなければならない。

 ジャギの心に絶望が満たされるなか、カミュがドラムに近づくのが見えた。

 

「カミュさんが動いた、何をするつもりだ?」

 

 ファン達の注目はジャギからカミュに移る。今まで1人でドラムを打ち続けたが止めてすばるの後ろに立つ。すばるもそれに気づいているようだったがドラムに集中していた。そしてカミュはドラムスティックですばるの背中をつく、

 

「あ♡」

 

 その瞬間にすばるの口からなまめかしい声が発せられる。

 

「出たー!カミュさんの絶対性感だ!」

「これであのパイパニックのレイをメスにしたんだ!あのドラムじゃあひとたまりもねえ!」

 

 DMCが対バンした相手にパイパニックというデスメタルバンドがいた。ボーカルのレイは女性ながらそのデスボイスで業界から注目されていた。だが対バンではデスボイスが発揮できず、生娘のような可愛らしい声と喘ぎ声を出させられた。

 それはカミュが原因だった。カミュは一目で相手のCスポットを見分けられ、そこを突けばどんなデスボイス持ちの女性でも喘がし唯のメスに堕とせる。

 すばるはデスボイスの持ち主でもないしボーカルでもない、だがCスポットを突き続ければ絶頂し行動不能になる。それをあと4回続ければ対バンには勝てる。

 DMCを心配しての行動なのか、ただ性的欲求を満たしたいのかは分からないが、トゲナシトゲアリにとって間違いなく脅威だった。

 

「あ♡ん♡」

 

 すばるはカミュに突かれる度に喘ぎ声のようなものをあげドラムのリズムが乱れる。女である限りカミュの魔技からは逃れられない。これが逆転の狼煙になると誰もが思っていた。

 

「おい、なんか変じゃねえか?」

「カミュさんの絶対性感が通用しないだと!?」

「なんてマグロなんだ!?こいつの出身地は青森だろ!」

 

 ファン達は異変に気付く。乱れていたドラムが正常に戻り始め、すばるの口から喘ぎ声のようなものが聞こえない。

 カミュが手を休めているかと思ったがそうではない、カミュは突いている。寧ろ手数は増し顔は僅かに訝しんでいるように見える。

 

「誰がクロマグロだ!アクターズスクール出身をなめるな~!」

 

 すばるは絶叫しながらドラムを叩く、そのドラミングはカミュにCスポットを突かれているとは思えない程激しく、カミュのドラミングを彷彿とさせる。

 すばるは確かにCスポットを突かれていた。普通であればレイのように絶頂し行動不能になる筈だが耐えていた。

 演技とは自分を偽り演じることである。すばるの祖母は大女優安和天童である、そして役者を養成する専門学校にも通っている。流れている大女優の血と今まで学習した全てを駆使すれば耐えられると自らに念じ続ける。

 そして目の前で仁菜の姿が励みになる。クラウザーとのファック連呼対決で五分に渡り合い、唾や痰を吐きかけられ公衆の面前で下着を下ろされクラウザーに秘所を見られても歌い続けている。

 友達が根性見せているのに自分が止めるわけにはいかない。DMCを倒すという決意はそんな柔ではない。

 

 ファン達の心に絶望が広がり始める。クラウザーのパフォーマンス、ジャギの炎、カミュの絶対性感もトゲナシトゲアリの演奏を止められない。こんな異常事態は初めてだ。

 何か、何か突破口になる切っ掛けになるものはないか、何か起こらないか、ファン達祈るように探す。すると今までじっとしていた資本主義の豚が動き始めた。

 

「豚が動いたー!」

「頼むから流れを変えてくれー!」

 

 ファン達の声には悲痛さが帯びていた。今やDMC側の人間は資本主義の豚しかいない。彼はパフォーマンス用の豚だが、その献身性や貢献度は4人目のDMCメンバーと言っても過言ではない。その献身性でこの流れを止めてくれと祈るように見つめる。

 

「ひっ」

 

 智は近づいてくる資本主義の豚を見て思わず悲鳴をあげる。小太りで頭が禿げ上がっているだけで気持ち悪いのに、それが口にギャグボールを加えパンツと網タイツをつけている。気持ち悪さは累乗となり、人生において最も気持ち悪い生物である。

 その中年男性がオゥオゥと声を出しながら足もとにすり寄る。今すぐにでも演奏を止めて逃げ出したい。そんな衝動に駆られるが仁菜や他のメンバーの頑張り、音楽でDMCに負けたくないという対抗心で必死に抗い演奏を続ける。

 

 気持ち悪い、負けたくない、気持ち悪い、あんな暴力みたいな音に屈しない、気持ち悪い、仁菜はつばを吐きかけられても止めなかった、こんな男が近くに居る程度でやめられない。

 

 智の心で逃げ出したいという生物としての欲求とこの対バンに勝ってミュージシャンとしての誇りを取り戻すという人間的な心がせめぎ合う。その葛藤は着実にストレスを溜め人生において最もストレスを蓄積していた。

 

 そしてキーボードのパートに入った瞬間だった。

 

「気持ち悪いのよ!この豚!」

 

 智の中で蓄積していたストレスが爆発しキレる。葛藤はストレスになっていたが爆発したのはそれだけではなかった。

 かつて母親が家の中で浮気相手との不貞行為をしていたのを目撃したという過去があり、性的な事象に対して強烈な忌避感を覚えていた。

 クラウザーが路上ライブ乱入を切っ掛けにDMCと対バンすることになり、勝つ為にとライブを見に行く。レイプやファックなど連呼し性的な事象を取り扱うDMCは智にとっては汚らわしく憎きものだった。

 そして対バンでは観客に自分やルパなどに卑猥な言葉を浴びせられ、仁菜は下着を下ろされ秘所を見られるなど、ライブ会場の外であれば警察沙汰になるような性的な事象が起こり続けた。極めつきにはこの変態のような中年男性だ。完全に我慢の限界だ。

 

「豚!豚!なんのその恰好は!?変態なの!?気持ち悪い!死ね!そんな恰好で恥ずかしくないの!?仕事しろ!社会に貢献しろ!」

 

 智は考えられる限りの罵倒を資本主義の豚に浴びせる。完全にキレていたが演奏の手は止めていなかった。

 人は怒りで我を忘れてもドアを開けて部屋に入るように、智にとって演奏するという行為はそれほど沁みついていた。そして罵倒に合わせてメロディを奏で一種の音楽になっていた。すると豚は興奮した瞳を向けた直後に決を向けながら呟いた。

 

──もっと、ください

 

 その言葉で智はさらにキレた。

 

「豚!豚!豚!会社でリストラでもされたの!?それで豚の真似事!?もしかして結婚でして子供が居たりしてね!だとしたらお子さんが可哀そうすぎるわ!私だったら間違いなく自殺する!」

「オゥオゥオゥオゥオゥ」

 

 智は罵倒を交えながら資本主義の豚を蹴り、資本主義の豚は嬉しそうに喘ぎ声をあげる。それでも演奏の手は止まらない、それどころか無意識に自身の罵倒と資本主義の豚の喘ぎ声を取り組み音楽として成立させていた。

 本来であればキーボードのパートは終わっている。これは智の完全な暴走であった。

 

「あのチビすげえぞ!豚の喘ぎ声と罵声を歌にして演奏してやがる!なんて豚使いだ!」

「それに豚の奴も喜んでるぞ!10代の女でしか摂取できない何かがあるのか!?」

「こんなのNTRじゃねえか!」

 

 ファン達は悲鳴と驚嘆の声をあげる。演者がブチ切れて進行を無視して他者を罵倒しながら演奏する。普通の演奏では間違いなく最低の行為である。だがデスメタルバンドとの対バンにおいては最高のパフォーマンスだった。

 DMCを倒すためにデスメタルを学んだ4人はアイコンタクトを取って意思疎通してあえて通常進行を無視して続けさせた。

 そして怒りは長くは持続せず罵倒の言葉が終わると演奏を途切れる。その間を見計らって何事もなかったように演奏を再開し歌いきる。

 演奏が終わると会場は異様な空気に包まれる。DMCメンバーと資本主義豚のパフォーマンスをトゲナシトゲアリのメンバーが完全に上回った。その光景はDMCファンにとって悪夢そのものだ。会場の空気は完全にトゲナシトゲアリに支配された。

 

 クラウザーは未だに項垂れている。ジャギも呆然としている。カミュは自分の位置に戻っている。資本主義の豚は智に寄り添っている。トゲナシトゲアリは確信する。これで完全に心を折った。

 あとは演奏を続けDMCのファンの心に爪痕を残しまくってファンにする。これで過去の敗北を払拭し前を向ける。トゲナシトゲアリは追い打ちをかける様に次の曲を演奏する。

 

「なんて演奏だ、気を抜くと熱狂しちまいそうだ」

「ロックも実はいいのかもな」

「俺達もデスメタルだけじゃなくてもっと視野を広げるべきなんじゃねえか」

 

 ファン達の動揺した心にトゲナシトゲアリの音が響き渡る。DMCは絶対的な信仰対象であるDMCが敗北した。

 DMCも無敵ではない、ライブでクラウザーⅠ世に乱入され客を持っていかれたこともあった。それでも最終的にはリベンジを果たしている。

 しかしデスメタルではなくガールズロックにパフォーマンスで負けるというのは余りにもショッキングでファン達にかかっていたフィルターが薄れ始めていた。

 

「しっかりしろ!DMCはここからだ」

 

 ファンの鑑が周りのファンを励ますように声をかける。徐々にトゲアリトゲナシに興味を持ち始めている。この流れはマズい。DMCの信者としてファンの心を引き留めDMCが逆襲するまでの時間を稼ぐのだ。

 

「ゴートゥーDMC!ゴートゥーDMC!」

 

 ファンの鑑を中心にDMCへのエールとトゲアリトゲナシへの反抗としてコールするが大勢には影響がない。

 すると智の近くに寄っていた資本主義の豚がクラウザーの元に駆け寄る。豚の励ましによってDMCの反撃が始まる。そんな期待を抱いていたがその期待は最悪な形で壊される。

 資本主義の豚は膝をつき項垂れるクラウザーの後ろに覆いかぶさる。その光景にこの世で最もグロテスクな光景が浮かび上がり悲鳴があがる。

 

「オゥオゥオゥオゥ」

 

 資本主義の豚はクラウザーの尻に一心不乱に腰を振る。これは豚の種付けと呼ばれるDMCファンにとって最悪の失態であり、されたら恥辱の余りにファンを止めてしまう程である。それをDMCのトップであるクラウザーがされていた。

 

「やめろ!やめてくれ豚!クラウザーさんはお前の主人だろ!」

「正気に戻れ!戻ってくれ豚!」

「なんでこの場所でするんだよ!」

 

 先程とは比較にならないほどの悲鳴があがり、所々で嗚咽が聞こえてくる。その光景を見てファンの鑑は膝から崩れ落ちる。

 クラウザーが一度死んだ時に資本主義の豚はその現実を受け入れられず、豚にとって思い出深い場所でひたすら帰りを待ち、雨の日も風の日も待ち続け最後はステージで死にかけた。

 その健気な姿に心打たれライブハウス前に忠豚ブタ公の像が立ち、ファンの鑑ですらそのクラウザーに対する愛に心打たれていた。

 その場所がこのライブハウスであり、そこで豚が反旗を翻しクラウザーに種付けをしている。智の主人ぶりに鞍替えしたのかもしれない、だがどんなことがあっても豚はクラウザーやDMCを裏切らないと思っただけに衝撃は計り知れない。

 ライブハウスではトゲナシトゲアリの演奏と歌、豚の喘ぎ声、DMCファンの悲鳴と嗚咽が響き渡る。DMCファンにとってまさにこの世の地獄であった。

 

 

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