フリーレン界の『五条悟』、真っ二つになんてなりたくない 作:狐大総統
ありがとうございます。
感想来たら、テンション上がってもっと書くタイプの作者なので、来てたのも嬉しかったです。
今回は、前回よりちょっと長めです。
『次』
sideブルグ
ブルグになったと理解したのは、つい最近のことだ。
なんか別の世界で生き返ったと思えば、魔法使いのいるファンタジーな世界だったので、とりあえず死なないために防御魔法をひたすら覚えた。
前世では漫画も結構見ていたので、自分も魔法が使えるようになるってのは結構楽しかったし、死なないためでもあったから超頑張った。
そんなこんなしていると、大陸魔法協会で一級魔法使いになったら、『特権』によってなんでも欲しい魔法が手に入れられると知った。
なので、更に生き残る可能性を上げられる防御魔法を手に入れるため、試験を受けて見事受かったわけである。
問題はここからだった。
なんか見覚えのある幼児体型金髪エルフいるなとは思っていたのだが、そいつから譲渡された魔法、最強防御が組み込まれている外套を作れる魔法だった。
なんか見覚えのある魔法だなと思いつつも、外套を被って鏡の前に立ってみた。
すると、なんか見覚えのある目隠しローブ野郎が映っていたのだ。
俺が気付いたのはこのときだった。
あ!こいつ、フリーレン界の『両面宿儺』の手で、真っ二つにされたフリーレン界の『五条悟』やんけ!と。
このときの俺は焦りに焦った。
当然といえば当然である。誰が好き好んで雑な死亡予定のあるキャラクターになりたがるというのか。
まあ、人によってはなんで分かんなかったんだよとか、気付けよとなるかもしれないが、よく考えてほしい。
漫画でも数ページしか出ておらず、大した活躍もしていない、なんなら素顔も出ていない、ほぼモブキャラみたいなやつの名前とか、そんなの覚えているはずがないだろうと。
呪術廻戦でいえば、1話に出てきた陸上部顧問の名前と同じくらいの忘れやすさだぞ。
無理無理、普通に忘れますって。
しかも、アニメで出てきたセリフ、『次』だけですよ?
陸上顧問のがセリフ多いわ。
まったく、五条悟の『次』ってセリフとは大違いすぎる。
ただただ、ブルグが可哀想…。
話を戻すとしよう。
それなら、ヒンメルの名前は世界中に広まっているはずだという言い分については…うん、まあ、ちょっとは思ってたよ。コレ、もしかしてフリーレンの世界かなとか。
けど、自分の顔は知らない顔だし覚えのない名前だったから、似た世界か、もしくはモブキャラとして生まれ変わったもんだと思ってたわけだ。だから、あんま自分に関係無いなって思って調べなかったんだよ。
それに、魔法習得に勤しみ過ぎて、他のことに関心を向けてなかったってこともあるけど…。
まあ、その話はいいとして。
とにかく、それからの俺は更に死に物狂いで修練に励んだ。
具体的にいえば、五条悟と同程度の能力を身につけることを目標としていた。
理由としては、『切断』に加えて『共感』とかいうチートスキル持ちという、完成度高めの両面宿儺に対し、こちとら『防御』しかできない超劣化版五条悟ときた。さすがにスペックの差が大きすぎて、同じ土俵にすら立てていない気がする。
ならば!あっち側へ行くため、五条悟みたいな攻撃手段とかを手に入れるべきだろ!
ということで、始めに習得し極めたのは、南側諸国の山岳民族に伝わる民間魔法『高速で移動する魔法』だ。
コレを真っ先に習得した理由は、攻撃する相手を絶対に逃がさないためってのと、救助対象のもとにすぐ駆けつけられるからという漢らしい理由だ。
決して、マジで切られそうになったら即逃亡するためといった理由ではない。
ないったらない。
◇◇
sideモブ兵士
襲われている村人の悲鳴が、村中のいたるところで聞こえる。
目に見える範囲では、幾つもの亡骸が横たわっている。
「くっそ、なんでいきなり魔族がこんなところに…!」
つい先刻までは、村の空気は穏やかで、そこらで子供が走り回ったりして遊んでいたのだ。
だが、魔族が3体現れたことで、その空気は一変。
一瞬にして惨劇が起こり始めた。
この村には、護衛として雇っている冒険者が3名と、俺のようなこの村出身の兵士が数名いる程度で、野盗やちょっとした魔物への対処する力しか持っていない。
そもそも、この村はそんな危険地域でもなく、野盗が狙ってくるような村でもないから、過剰な戦力を持つ必要が無いのだ。
(…仕方ねぇ、ここまでだな。)
俺は覚悟を決めると、冒険者パーティにいる魔法使いに向けて、指示を出した。
「おい、逃がせる連中だけでも逃がすぞ!そこの魔法使い、奴らを牽制できる魔法を撃ってくれ!その後、俺が突っ込む!」
「馬鹿か!お前が突っ込んだところで犬死にするだけだ!」
「なーに、一体くらいは相討ちに持っていってやるさ!」
三体の魔族に対応するより、二体へ対処する方がよっぽど生存率も上がるし、逃げられる数も増えるハズだ。
なら、魔法が使えるわけでもなく、特別このなかで強いわけでもない駒、つまり俺をやつらの削りとして使ったほうが断然良い。
俺の覚悟を感じとったのか、さっき反対していた魔法使いも唇を噛み締めながらも、俺に目を合わせる。
「…本気なんだな?」
「ああ、やってくれ」
「ちっ!5秒後、魔法を放つ!準備しとけ!」
「了解!」
魔法使いが杖を構え、土塊の弾幕が魔族へ向けて放っていく。
土塊は当たると弾け、それによって土煙が起こった。
これに乗じ、俺は魔族の背後を取ると、魔族の首に目掛けて剣を振り抜く。
(いける…!)
だが、現実は無情だった。
「ん?ギリギリで急所は避けたか」
結果として魔族の首に刃は届いておらず、寧ろ俺の身体に細い槍のようなものが貫通していた。
よく見ると、刺さっているのは植物の根のようだった。
先程まで、この魔族は全く魔法を使わず人を殺していたため、戦士系統と勘違いしてしまっていた。
(…ちっ、やらかした。)
「まあ、いい。トドメはすぐに刺せそうだ」
魔族はゆったりとした動きで、こちらへと足を進めてくる。
「こっち見ろテメェ!」
向こうで魔法使いが魔族の足を止めるべく、攻撃魔法を撃ってくれているが、魔族は片手間に植物の根を操り、防壁を魔族の周囲に構築している。
目の前では、根がゆっくりと太い束となって、俺を貫く準備が整っていく。
本来ならば、やろうと思えば即座に太い槍など作れるだろうに、俺の恐怖心を煽るためにわざわざ見せつけているのだろう。
(…マジで趣味悪いな。流石は魔族だぜ。)
槍も完成したようで、魔族は俺に狙いを定める。
「さて、トドメだ。じゃあな。」
(俺の命もここまでか。)
俺は目を瞑り、槍が身体を貫く衝撃に備えた。
だが、一向に衝撃は来ず、刺さるような痛みどころか、チクリとした感覚すら来ない。
即死でもして、目を開ければ天国にでもいるのかと思い、俺はゆっくり目を開けた。
すると、目の前には1人の男が立っており、黒いローブがバサバサとはためいていた。
俺が男に気づいたことを察したのか、彼は低く落ち着いた声で、こちらへと問いかけてくる。
「おい、今どういう状況だ?」
(だ、誰だ?)
正体は不明だが、目の前の人物が味方であることは認識できたので、現状を説明しようとする。
「ッ…ハッ…」
だが、内臓を貫かれていることが影響しているのか、声を出せない。
「…声を出せないのか」
「…おい、なんだ貴様は」
魔族は訝しげに男へと声をかけるが、男はそちらへ見向きもしない。
幾つもの『根の槍』が直撃し続けているというのにだ。
そんななかで、驚きの声を挙げたものがいた。
「せ、先生!?」
それは、先ほどから共に戦っている魔法使いだった。
男は魔法使いの方をチラリと見ると、1人呟いた。
「…向こうにいる魔法使いは見覚えがあるな。少し前に立ち寄った村で、魔法について指導した記憶がある。」
男は少し考えたような仕草を見せると、俺を抱え、一瞬にして魔法使いのもとへ移動した。
「先生!まさか、先生が救援に来て下さるなんて!」
「…おい、雑談は後だ。早急に現状を伝えろ。」
ローブの男は魔法使いに向けて、情報を寄越すよう伝えると、魔法使いは簡潔に現状を伝えていく。
「…なるほど、分かった。お前らは全員下がれ。あとは俺が受け持つ。」
「そんな!さすがに先生1人でなんて!」
魔法使いは援護を申し出るも、男は首を横に振った。
「大丈夫、俺は最強だから」*1
そう言い、男は魔族へと向かい合う。
「お喋りはもういいのか?」
「ああ、まあな。待ってくれるなんて、随分と優しいんだな」
「俺は人間と仲良くしたいと思ってるからな」
「へぇ…」
魔族はそう言いながら、男の後ろの地中から根の槍を突き出し、男目掛けて突き刺そうとする。
「先生!」
「おいアンタ!後ろだ!」
俺達も声をかけるが、男は防御魔法を展開しようともしない。
魔族は軽薄な笑みを浮かべるが、すぐにその顔は困惑した顔へと変化する。
なぜなら、さきほどと同じく全く効いた様子が無いからだ。
「元生徒の前なんでな、カッコつけさせてもらうぞ」
男はそう言うと魔族の目の前からかき消え、背後へと現れる。
魔族はすぐに背後にまわった男へ対処しようとするも、更に近づいた男の拳により、顔面を殴られている。
(…おいおい、あの男なにもんだよ。高名な武道僧かなんかかってくらい近接強すぎじゃねぇか。魔法使いの先生なんじゃなかったのかよ。)
殴られたことで村でも1番の大きさを誇る建物まで吹っ飛ばされた魔族は、立ち上がり、逃亡を企てようとする。
だが、高速移動が可能な男からは逃げられず、何をしたのかは分からないが、魔族は真正面から超威力の重力でもかかったかのように潰れ始め、『ボチュン!』という音とともに破裂していた。
その後、男はゆっくりと動きだすと、他のところで暴れている魔族達に顔を向け、たった一言だけ発した。
「次」
この話の後は、普通にブルグが残りの魔族を鏖殺して終わりです。
ちなみに、このブルグは色々あって、この時点で近接もバカ強いです。
あと、ラオフェンと違ってブルグはジルヴェーアを極めたため、魔法の痕跡は残りません。