フリーレン界の『五条悟』、真っ二つになんてなりたくない 作:狐大総統
前作というか、連載中の『問題児3人、ただし最強』って作品でも思ったんですけど、戦闘描写って凄く難しいです。
あと、感想ありがとうございます。
やる気が急上昇しました!
sideブルグ
「…護衛任務、ですか」
ある日、幼児体型金髪エルフの上司から呼び出されたかと思えば、任務の指令が通達された。
「ああ、依頼人はとある貴族でな。片田舎の村への往復で、護衛をつけたいらしい。」
なるほど、それで鉄壁の防御魔法(笑)を使う俺が抜擢されたと。
……人選ミスでは?
こちとら、真っ二つにされることに定評のあるブノ/レグさんやぞ?
ま、冗談はさておき、俺は腐っても一級魔法使いだ。
いち貴族が、一級魔法使いを護衛に雇うってのには、それなりの理由があるはずだ。
そう思っていると、やはり理由はあるらしく、ゼーリエから追加の説明がされた。
「私もはじめは断ってやろうと思っていたんだがな。話を聞いてみると、なにやらきな臭い。場合によっては、『影なる戦士』が動いている可能性すらある。」
「…なるほど。」
げ、まじかよ。
『影なる戦士』ってあれだろ?
原作だと、あのフリーレンを殺しかけた相手だろ?
むりむりむり、死んじゃうって。
対魔法使い専門とか、俺じゃ相手にならないって。
せめて、『五条』っぽい強さをもうちょい手に入れた後にしてくんないかな。
「つまり、今回の任務は『護衛』兼『調査』といったところだな。補佐としてゼンゼも付ける予定だ。まあ、無理に引き受ける必要もないが、どうする?」
どうするもこうするもねぇだろ。
答えは決まってる。
「承知しました。お受けします。」
結局、社畜は上司に逆らえんのですわ。
しゃーない、死なないために色々準備するとするか…。
◇◇
No side
ブルグが任務を受けることを決めた一ヶ月後、ブルグとゼンゼ含む一行は、貴族の本邸を出立した。
村までは馬車で1週間ほどかかり、途中野盗が襲ってくるなどのトラブルこそあったものの、結果として彼らが以前から貴族を狙っていた存在だったことが判明した。
復路では、貴族の不安が取り除かれたことで、往路よりも張り詰めたものは無くなっていた。
とはいえ、魔物の襲撃はいつあるか分からないため、そこそこの緊張感は持ったうえではあるが。
「いやぁ、あなた方に来て頂けて本当に良かった。私も安心して今後を過ごすことができますよ。」
「それは良かったです。」
ことが起こったのは、貴族とゼンゼが談笑をしているそんなときだった。
トスッ
異音がしたため、貴族とゼンゼが振り返ると、そこには後方で警戒をしていたブルグの胸から、刃が突き出している光景が広がっていた。
そのブルグの背後には黒いローブを身につけた男が立っており、その男が襲撃者であることは明白だった。
「ひ、ひぃぃい!!」
(馬鹿な…!ブルグが身につけているのは『不動の外套』だ。刃が刺さるはずが…。…まさか!)
ゼンゼは髪を動かそうとするが、一本たりとも動くことはなかった。
「気づいたか。魔法頼りの守りにまわってるやつなんざ、たかがしれてるな。」
襲撃者はそう言うと、胸元から拳大の石を取り出した。
「…『封魔鉱』か。」
「ああ、一級魔法使いがいると聞いたからな。急いで用意したんだぜ。」
『封魔鉱』とは、魔法を無効化する力を持った鉱石である。
襲撃者の持つ『封魔鉱』の純度であれば、おそらく半径5メートルほどは無効化できるだろう。
このことを理解したゼンゼは、内心苛立ちを感じつつも、襲撃者へと目的を問う。
「君はいったい何者だ?なぜ、彼を襲撃した?」
「幾つもある影の一つさ。名前なんざねぇ。襲撃の理由は、そこの貴族を消すのに邪魔そうだったんでな。」
ゼンゼは、ゼーリエの読みが当たっていたことを理解した。
であれば、彼には貴族を消す目的も伝えられていないであろうことも。
交渉の余地が無いことが分かり、ゼンゼが次の策を練ろうとしていると、彼女がよく知る声が会話へと入ってくる。
「…『影なる戦士』か。まさか、本当に関わっていたとは。」
「ブルグ、、」
先ほど、背後から刺されたはずのブルグが、ゆっくりと立ち上がる。
ゼンゼがブルグの傷の状態を把握すべく、近寄ろうとするも、ブルグの手によって制止される。
「問題無い、護衛対象を優先しろ。コイツの相手は俺がする。」
ブルグは背後のゼンゼへと手を突き出したまま、襲撃者から目を離さず指示を伝える。
「お前は先に護衛対象をこの森を抜けた先まで連れて行け。」
ブルグの指示に歯痒い思いをするゼンゼではあるが、事実この場で彼女にできることはない。
いくら、『対戦士に特化した戦い方』を可能とする魔法使いであっても、魔法を封じられてしまえば、戦士に勝てるはずもないのだ。
唯一、ブルグという魔法使いを除いて。
だからこそ、こういった有事に備え、今回の護衛に彼は選ばれたのだ。
そのことを理解している彼女は、歯痒い思いをぐっと飲み込み、彼女は彼女にできることをする。
「…油断するんじゃないぞ。」
「誰に言っている。」
◇◇◇
side ブルグ
ブルグと襲撃者の戦闘は、かなりの激戦となっていた。
(くっそ。『影なる戦士』、マジで伏黒甚爾もどきじゃねぇか。
しかも、天逆鉾もどきまで用意してきやがって…!)
はじめこそ、負傷ありであってもブルグ優勢で進んでいた。
だが、襲撃者は『封魔鉱』に魔力を込めることで目眩しにすると、木々を隠れ蓑に奇襲をかけるといった戦闘スタイルへとシフトした。
これにより、ブルグは劣勢に立たされ始め、徐々に負傷が増えていく。
(くっそ、ウザすぎる!この木が邪魔だ!常に半径5メートルにいんだから、コレさえ無けりゃどうとでもなるっつーのに…!)
ブルグは戦闘と同時に周囲にある木を薙ぎ倒していくが、それでもやはり状況を一変するほどの効果としては薄い。
とはいえ、徐々に襲撃者の動きを控えめにできるという効果はあるため、薙ぎ倒すことを止めるという選択肢はブルグには無い。
そうこうしていると、突如ブルグの斜め前にあった木の裏で爆発が起こり、周囲に煙幕が広がり始めた。
(煙幕かよ。これじゃ、今まで以上にあいつの位置が分かんねぇ。死角が更に増えちまった。)
木を削られ始めたことで、対策として襲撃者が仕掛けたのだろう。
これにより、これまでの木以上に襲撃者を見つけることが困難となったブルグは、更に警戒を引き上げた。
だが、いくら待っても襲撃者はブルグへ奇襲を仕掛けてくることは無かった。
隙を窺っているのかと判断したブルグだったが、ブルグはあることに気付く。
(…いや、待てよ。相手は魔力の隠匿に特化してんだぞ?『封魔鉱』をそのへんに置いとけば…。もともと、あいつの狙いは…!)
ブルグ当人には『封魔鉱』を付近に置いておくことで自身と戦闘をしていると勘違いを起こさせ、ゼンゼ相手には魔力を隠匿することで、ブルグと戦闘中と勘違いを起こさせ奇襲を仕掛けるつもりだと予測した彼は、襲撃者の狙いへ思考を切り替えた。
(護衛対象…!)
切り替えてしまったのだ。
その瞬間、ブルグはゼンゼ達を追いかけるべく視線を向けてしまう。
そのとき、ブルグに大きな隙が生まれる。
グサッ
背後に気配を感じ、後ろを振り向いたブルグの首へ、刃が無慈悲に突き刺さった。
◇◇◇
side 襲撃者
刃を引かせないよう、ブルグは男の短刀を押さえる。
だが、抵抗虚しく男はブルグの腹までひと息に裂き切り、そのままブルグの右足をザクザクザク!と滅多刺しにした。
最後に、とどめとして男はブルグの心臓をひと刺しし、彼の死を確信する。
その後、男は貴族の暗殺を優先するため、ブルグの遺体を放置し、その場を立ち去った。
男はゼンゼ達の足跡を追い、暫く進んでいると、ある違和感を感じた。
(木が全て伐採されている…?)
本来、木々が生い茂っているはずの場所は見渡しが良くなっており、伐採されたであろう木の根本は鋭い刃物かなにかで斬られたような切り口になっている。
男ははじめこそ困惑したものの、すぐにもう1人いた魔法使いが奇襲を防ぐべく、伐採したのだろうと結論づける。
先に進むべく、男が足を踏み出そうとしたとき、彼はひとつの気配を後ろから感じとった。
「…さっきぶりだな。」
「マジかよ。」
男はゆっくりと背後を振り向き、声を発したものへと視線を送る。
「ああ。体調も絶好調だ。」
男は予想外のことに、目を見開いた。
振り向いたことで目に入った、目の前の人物─ブルグ─は、先ほど男によって加えられたはずの傷が、全て治癒しきれていたからだ。
このような芸当が可能なのは、ただ唯一の魔法しかあり得ない。
「お前、魔法使いのくせして女神様の魔法も使えんのかよ。」
「ああ。切り札ということもあって、誰にも言ってはいないがな。」
「それにしたって、全身滅多刺しにしたはずだぜ?心臓だって刺した。その状態で魔法は使えねーだろ。」
男はあり得ないものを見るような目でブルグを見るが、当の本人はなんてことないように男へと回答する。
「戦士には腹に大穴があいた状態で戦闘を続けられるものもいる。であれば、心臓を刺されようが、魔法程度使えて当たり前だろう。」
「はあ?そこは死んどけよ。人として。」
男は焦りを感じていた。理解できない存在に対してというものもあるが、それ以上に問題なのが、『距離』だった。
「ところで、お前から俺までの距離は10メートル以上離れているわけだが……」
目の前にいるブルグは男へと話しかけながら、手のひらに小型のブラックホールのようなもの*1を発動し、襲撃者の上空へと放つ。
「これだけ離れてしまえば、魔法は発動できるわけだ。」
上空へと放たれたブラックホールは、襲撃者の半径5メートル外の岩や地表を削り取っていき、それらすべてをひとつの大岩へと纏めていく。
この間、男は逃亡するにしても、大岩から逃げられるほどの距離を稼ぐことは不可能だった。発動者のブルグへ近寄るにも、飛行魔法によって上空へと逃げられてしまうだろう。
男は、ただブルグの準備が終わるのを待つ以外、できることは無かった。
数秒後、大岩が完成する。
「ふむ。劣化版ではあるが、極の番『隕』といったところだな。彼が使う術では無いが、まあ良い。」
ブルグは独り言のようになにやら呟くと、男に目を合わせ、口を開く。
このとき、男は死刑宣告を受ける受刑者のような気分だった。
「さて、この質量を持つ落石に対処できるほどの耐久力、お前にはあるのか?」
大岩は、見る限り小さめの隕石といってもおかしくは無いほどの大きさだ。
男に耐えられるはずもなく、諦めるほかなかった*2。
「…あったら化け物だろ。」
「そうか、最後に言い残す事はあるか?」
「…ねぇよ。」
その日、ひとつの影が散った。
今回は、大岩が襲撃者をプチッと潰して終わりです。
ヒンメル達も崖が落ちてきそうなとき、全滅してもおかしくないみたいな描写があったので、いくら耐久力あっても無理なものもあるんやろなって。
とはいえ、今回はその描写にあった崖の、半分以下の質量ではありますが。ブルグはまだ最強ではないので。
あと、ブルグについては『高速で移動する魔法』があるので大岩を落とすと同時に、落石範囲外まで移動し、落石後は襲撃者の遺体を確認しました。