咲いた花に止まれぬ蝶々   作:DAISAKU

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「な、なぁ、何か手伝う事あるか?」

 

「あなたはそこで待ってて」

 

「あ、ああ、分かった」

 

台所に立つ咲季に何か手伝う事があるか尋ねても、そこで待っててと説き伏せられる俺。

正直、何が出て来るのか怖い自分がいた。

 

「(今からでも胃薬買って来た方がいいかな?)」

 

「はーい、お待たせ」

 

「(来た!く、食えるやつだよな!?って、あれ?)」

 

咲季が運んで来た料理を見て俺は驚いた。

料理は綺麗に盛り付けられ、ペースト状にされた物は一切無い。

普通に美味しそうな料理だった。

 

「どうしたの?何か不思議そうな顔してるわね」

 

「いや、普通に美味そうな料理が出て来たから」

 

「失礼ね!わたしだって、普通の料理ぐらい作れるわよ。ほら、冷めないうちに食べなさい」

「あ、ああ」

 

俺は正直まだ疑ってはいたが、いざ口にして見ると、

 

「あれ?普通に美味しい」

 

「本当!?良かった!」

 

「ああ、とても美味しいぞ。料理、習ったのか?」

 

「多少料理は出来ないと駄目だし、それに、好きな人が出来てもし結婚する事になったら、自分の手料理食べて欲しかったから」

 

「咲季・・・ああ、お前は良い嫁さんになれるよ」

 

「えっ?////」

 

「咲季なら良い旦那さんと一緒になれる。きっと・・・」

 

「・・・そう。まっ、当然よ!わたしは未来のトップアイドルになれる素質があったんだから!」

 

「そうだな」

 

少し咲季が残念そうな表情をしていたが、俺はその事を追求する事はなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

夕飯も食べ終わり、俺と咲季はくつろいでいた。

俺は、今日根緒先生に言われた事を咲季に言ってみた。

 

「なぁ、咲季?」

 

「なに?」

 

「今日、久しぶりに根緒先生に会ったんだ」

 

「根緒先生に?元気だった?」

 

「ああ。初星学園の生徒達と一緒に活動していたよ。アイドルやプロデューサーの道を奪われる子達を無くす活動を。佑芽ちゃんが俺達の為に考えてくれたそうだ。その時、根緒先生が言ってくれたんだ。戻って来ないかって」

 

「戻るって、◯◯がプロデューサーに戻るって事?」

 

「ああ。学園長が経営する100プロ(じゅうおうぷろ)に、誰か新しいプロデューサーが必要なんだとさ。それで、根緒先生や学園長が俺を推薦してくれているらしい。不思議だよな、プロデューサーとしての道を諦めた俺に、そんな話が来るなんてな」

 

「で、あなたはどうしたいの?」

 

「うーん、もう一度やりたいという気持ちはある。だけど、俺にはもうその権利は無い。形はどうであれ、プロデューサーの道を諦めた事は事実だしな」

 

すると、咲季が俺の目を見て話し始めた。

 

「それ、本気で言ってる?」

 

「えっ?」

 

「あなた、プロデューサーをもう一度やりたいって気持ちはあるって言ったわよね?だったら、その気持ちに素直になったらいいじゃない」

 

「咲季・・・」

 

「あなたなら大丈夫よ。だって未来のトップアイドルになる筈だったこの花海咲季のプロデューサーだったんだから!根緒先生や学園長が推薦してくれているんだから、その話受けちゃいなさい。それに、佑芽もあなたがプロデューサーに復帰する事を望んでいたわ」

 

「分かった。咲季がそう言うなら、頑張ってみるよ」

 

咲季に背中を押された俺。

昔から咲季には敵わない事が多かった。

俺は咲季に気になっていた事を聞いてみた。

 

「なぁ、咲季?」

 

「どうしたの?」

 

「もう、過呼吸になったりするのは大丈夫なのか?」

 

「あ、ああ、あれね。もう大丈夫だと思う。偶になるのよ、悪い夢を見た時とかにね」

 

「そうか、ならいいが。あー、それと気になっていたんだが、お前、アイドルを辞めたのは俺がいなくなったからって言ってたよな?」

 

「ええ、そうよ」

 

「根緒先生達がやってる活動は、お前の為でもあるって言ってた。俺は☆☆の理不尽な主張で辞める事になったが、お前は俺の知る限りでは咎められていない筈だ。咲季、俺が去った後、何かあったのか?」

 

「・・・うん、あったわ。だけど、今更あなたにそれを言っても意味はないわ」

 

「・・・そうか」

 

「それより、先にお風呂入って来なさいよ」

 

「えっ?ま、まぁ、お前が帰ってから入るよ」

 

「何言ってんのよ。言っておくけど、今日は泊まっていくから」

 

「はぁ?何勝手に決めてんだよ!?」

 

「別にいいでしょ。あなたとわたしは元プロデューサーと元アイドル。今は別に一緒にいても誰も何も言わないわ」

 

「いや、そうかもしれねぇけど・・・」

 

「それとも何?あなたわたしといたら間違いを起こす自信があるのかしら?」

 

「いや、起こさねぇよ!!」

 

「・・・なんだ、起こさないんだ」

 

「ん?どうした?」

 

「別に。ほら、早くお風呂に入って来なさい!わたしはあなたが入った後に入るから」

 

「分かったよ」

 

俺は咲季に言われるがままに風呂へと向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「(何で俺はそわそわしてるんだ?あいつが風呂入ってるだけなのに)」

 

俺はそわそわしていた。

普段自分は一人だ。

だけど今は風呂場に咲季がいる。

 

「(確かに意識はしていたけど、今はそういう関係じゃないし、あの頃もまだ・・・)」

 

咲季を意識して勝手にそわそわしていたその時、

 

「あれ?停電か?」

 

部屋の電気が突然消えた。

俺は風呂に入っている咲季に呼び掛けた。

 

「咲季、大丈夫か?」

 

咲季からの返事が無い。

俺は仕方なく風呂場まで向かう為立ち上がった時扉が開いた。

 

「咲季!」

 

俺が咲季の方へ振り向こうとした時、俺の背中に妙な感触が伝わった。

 

「咲季?」

 

「ごめんね、◯◯。少しの間だけでいいの。こうさせて」

 

背中越しでも分かる感触、咲季は今何も身に付けていない。

一糸纏わぬ姿で、俺に抱き着いている。

部屋の電気を消したのも咲季だろう。

よく見ると、俺の部屋のベランダから見える建物の電気は消えていなかった。

 

「咲季、お前・・・」

 

「分かってるわ、こんな事してもはしたないだけだって......だけど、伝えられないままじゃ辛いのよ......だって、折角またあなたと再会出来たんだから......◯◯、あのね。あなたにとって、わたしはただの担当アイドルだったかもしれない。だけど、わたしは違っていたわ......当時のあなたはわたしの担当プロデューサー......だけど、わたしはあなたにそれ以上の感情を抱いていた......こんなやり方、わたしらしくないのは分かってる......だけどどうしようもないのよ......だって......わたしは......あなたとこうやって離れたくない程......あなたの温もりを感じていたい程......あなたの事が......好きなんだから」

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