咲いた花に止まれぬ蝶々   作:DAISAKU

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「咲季......」

 

「◯◯......こっちを向いて......ありのままのわたしを見て」

 

咲季は俺に自分の気持ちをぶつけた。

咲季は俺の事が好き。

それは、俺だってそうだった。

俺だって咲季とこれからも一緒にいたい。

だけど、俺には・・・

 

「咲季」

 

俺は咲季の方に身体を向けた。

俺の目に映る一糸纏わぬ咲季は、カーテンから漏れた月の光に照らされて、まるで天女の様に美しい姿だった。

俺は、そんな咲季の目を見て話した。

 

「ありがとう、咲季。こんな情けない俺の事を好きになってくれて。俺も、咲季の事が好きだ。咲季とずっと一緒にいたいって思ってる」

 

「◯◯......」

 

「だけど、俺はお前とは一緒にはいられない」

 

「......どうして?」

 

「怖いんだ。俺は一度、身勝手に咲季の前から姿を消した。それでお前が傷付くという事にも気付かずに......俺は咲季が好きだ。だからこそ、もうお前の事を傷付けたくない......咲季、お前にはきっと、俺なんかよりも相応しい人がいる......だから......俺みたいな奴とは一緒にいない方がいい......ごめん!!」

 

「◯◯!!」

 

俺は咲季を置いて、自分の部屋から飛び出してしまった。

でも、これで良かったんだ。

俺みたいな奴は、咲季には相応しくない。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「これで良かったんだ。これで......」

 

俺は夜の公演のベンチで一人座っていた。

咲季はもう帰ったのだろうか。

いや、きっと帰っているだろう。

俺にも失望したに違いない。

でも、それで咲季が他に良い人を見つけて幸せになってくれるならいい。

 

そう考えていると、

 

「◯◯さん?」

 

誰かが俺に話しかけてきた。

佑芽ちゃんだ。

 

「どうしたんですか?こんな所で」

 

「佑芽ちゃんこそ、何で此処に?」

 

「私はお姉ちゃんの所に行ってたんですけど、お姉ちゃんがいなかったんです。その帰り道に◯◯さんを見かけたので。何かあったんですか?」

 

「......ああ。咲季は俺のアパートの部屋にいたんだ。今は帰ってると思うけど」

 

「お姉ちゃん、◯◯さんの所にいたんですか!?だからマンションにいなかったのか。◯◯さん、お姉ちゃんと何かあったんですか?」

 

「咲季に......想いを告げられたよ」

 

「お姉ちゃんが、◯◯さんに?」

 

「ああ......だけど、俺は咲季の気持ちに応えてはあげられなかった......俺は一度、彼女を身勝手に傷付けた身だ......そんな俺に、彼女を幸せにする権利はない......これで良かったんだよ......咲季はきっと、俺なんかよりも良い人が出来る......あいつが好きだから......俺はあいつの幸せを願ってる......佑芽ちゃん、咲季に会ったら伝えてくれるか?......俺を愛してくれてありがとうって」

 

そう言ってベンチから立ち上がり、その場から立ち去ろうとする俺。

そんな俺を佑芽ちゃんが呼び止めた。

 

「◯◯さん!!」

 

「ん?」

 

パシンッ!!(平手打ちする音)

 

俺は佑芽ちゃんから強い平手打ちをくらい、その場に転倒した。

そんな俺に馬乗りになった佑芽ちゃんは、俺の胸ぐらを掴みながら言った。

 

「いい加減にしてくださいよ!!」

 

「えっ?」

 

「いい加減にしてくださいって言ったんですよ!!!このいくじなし!!!!あなたはどれだけ、お姉ちゃんの事を悲しませたら気が済むんですか!?」

 

「佑芽ちゃん?」

 

「お姉ちゃんを幸せにする権利はない?お姉ちゃんにはもっと良い人がいる?そんなの、あなたが勝手にお姉ちゃんから逃げてるだけじゃないですか!?お姉ちゃんを幸せに出来るのは、他の誰でもない、そう、あなただけだって事に何で気付かないんですか!?お姉ちゃんがアイドルを辞めた理由、それはあなたがいなくなったから。だけど、他にも理由があるんです!!お姉ちゃんは、初星学園在学中に、暴力事件を起こしているんです。そう、あなたの事を馬鹿にしていた☆☆を殴ったんです!!それは全て、あなたの為に!!!」

 

「咲季が、俺の為に?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜10年以上前〜

 

「やぁ、咲季さん。聞いたよ、◯◯がプロデューサーを辞めて初星学園を去ったって。随分と無責任な奴だね、あいつも。やっぱりあんな奴は咲季さんには相応しくない」

 

「それは、あなたが理不尽な事をしたから!!」

 

「おっと、佑芽さんだったね?人聞きの悪い事は言わないでくれるかい?そんな証拠は何処にも無い。そうだと言うなら、証拠を見せてもらおうかな?」

 

「そ、それは・・・」

 

「ハッハッハ!!僕に逆らわない方がいいよ、花海姉妹。世の中には選ばれた人間というのがいるものなんだよ!それが僕さ!!◯◯は実力はあれど、そんな選ばれた人間じゃない。だから簡単に潰されるのさ!!君達も僕に潰されたくなければ、下手な真似はしない事さ。◯◯の様になりたくなければ・・・ね。さぁ、咲季さん、マヌケで愚かな◯◯はもういない訳だし、これからは僕が君をプロデュースしてあげるよ」

 

「あなた、いい加減にッ!!!」

 

すると、咲季が佑芽を止めた。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「☆☆だっけ?あなた今、わたしのプロデューサーの事を何て言った?」

 

「えっ?マヌケで愚かな奴さ!それがどうかしたのかい?」

 

「・・・なる程。なら、あんたの目は節穴って事かしら?」

 

「何だって?」

 

「だって、あんたがスカウトしようとしてるこの花海咲季も、マヌケで愚かな奴だからよ!!」

 

バキッ!!(殴る音)

 

「ぐわっ!!」

 

咲季は、◯◯を馬鹿にした☆☆を力いっぱいぶん殴った。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「何するんだ!?僕が誰だか分かってるのか!?僕の父は、ぐわっ!!!」

 

「あんたの父親がどこの父親なんて関係無いわよ!!!よくも!!よくもプロデューサーをッ!!!」

 

咲季は馬乗りになって何度も☆☆を殴り続ける。

 

「お姉ちゃん、これ以上はやめて!!」

 

「あんたのせいで!!あんたのせいでプロデューサーはわたしの前からいなくなった!!!わたしは、彼と一緒にトップアイドルになる夢を叶えたかった!!彼とならきっと叶えられる、そう信じていたから!!でも、そんな二人の夢をあんたは平気で壊した!!!あんたにそんな権利は無いのに!!!!」

 

「ぐっ、ならあいつが全て悪いんだ!!僕より成績が良いからって優遇されやがって!!生意気にも程があるんだよ!!!俺はあんな奴が大嫌いだ!!何が優秀だ!?何がルール違反だ!?僕にはそんなものは関係ない!!!選ばれた人間は何やったって許されるんだよ!!!◯◯みたいなマヌケな馬鹿とは違うんだ!!!!」

 

「あんた、まだ殴られ足りないようね!!わたしのプロデューサーを馬鹿にする奴は許さない!!!あんたをぶん殴って退学になるなら上等よ!!!プロデューサーがいない・・・◯◯がいないなら、わたしがアイドルになる意味はない!!!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お姉ちゃんは、その後学園を去る事が決まりました。でも、お姉ちゃんにとって悔いはなかったんだと思います。だってお姉ちゃんは、大好きなあなたの為に☆☆を殴ったんですから!!それに、この前お姉ちゃんが言ってました。覚えていますか?◯◯さんと私があの飲み屋で再会した日、わたしはお姉ちゃんと◯◯さんが再会した事をお姉ちゃんから聞いていないと言った事、あれは嘘なんです。お姉ちゃんはあなたと再会したその日、自宅で過呼吸になったんです。その時、お姉ちゃんが私に言ったんですよ、あなたに対する想いを!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜数日前〜

 

「はぁ......はぁ......佑芽......わたしね......◯◯と会ったの」

 

「◯◯さんと!?」

 

「うん......行きつけの飲み屋さんで」

 

「良かったじゃん、お姉ちゃん!◯◯さんとはその後色々話したんだよね?」

 

「うん......だけど、上手く話せなかった」

 

「えっ?何で?」

 

「はぁ......はぁ......怖かったのよ......◯◯とは10年以上会っていない......何を話せばいいのか分からなかった......わたしね、彼がいなくなってから少しだけ願っていた事があったの......彼がまた、プロデューサーになって戻ってくるんじゃないかって......その時はまた......わたしもアイドルとして復帰したいなって......だけど......彼はもう夢を諦めていた......わたしの願いは......やっぱり叶わなかったんだって......はぁ......はぁ......はぁ......」

 

「お姉ちゃん、無理しないで」

 

「◯◯の事は忘れようって何度も思ったわ......だけど......忘れられる訳ないじゃない......だって......彼と一緒にいた頃が......一番楽しかったんだから......ねぇ、佑芽?......わたし......◯◯に想いを伝えてもいいのかな?......◯◯と一緒にいてもいいのかな?」

 

「お姉ちゃん......」

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