新年度が始まりわずかに経った頃。
トリニティ総合学園、アリウス分派用別校舎、その一角。
一般生徒は立入禁止のその場所で、二人の異端者が向かい合っていた。
「貴方が協力者...いえ、"マダム"ですか。」
「ええ、貴方は新しいティーパーティーですね?先代から聞いているでしょうが、私は貴方がたのクーデターを手伝います。」
「はっきりと言うのですね。」
「貴方も彼女らには一矢報いたいでしょう?」
「ええ、まあ。それに、エデン条約...あんなもの締結させてはなりません。」
少女は冷静な口調の中に怨恨を滲ませる。
「しかし、まさかタダで協力してくださるわけでもないでしょう?私達は何を提供すれば?」
「貴方がたは私の提供する技術を使ってさえくれればいいのです。研究者として、実験を行っているだけですから。」
「...成程。ではありがたく利用させてもらうとしましょう。」
「何はともあれ、ひとまず今は『お友達ごっこ』を続けていればいいですね、マダム?」
「ええ...どうかその恨みを忘れることなきよう。」
「当然です。それでは。」
二人は妖しげな笑みを浮かべながら愉しげに話し合いを終える。
そして赤い肌の女が消えると、もう一人が震える手でティーカップを置いた。
「...フ、フフ...フフフ......」
(怖えーーーー‼︎‼︎リアルに見ると結構怖い!
てか大嘘ついてることバレてないよな!?
いや、落ち着けヨゾラ。素数を数えるんだ...2、3、5、とんで27...よし。
クソ、矜持も無いくせに何が研究者だゲマトリアの恥晒しめ...)
有り体に言うなら、彼女は...超ビビっていた。
*
おっす、俺は花城ヨゾラ。元先生で今年めでたくティーパーティーになったTS転生者だ。どうやらこの世界は俺の知る世界線と違うようで、なぜかアリウスが追放されていない。
原作通り事が進んでいたのなら悠々と旅でもしてたのになあ...でも、先生が来るかも分からん以上出来ることはしなきゃいけんし...未来がわかると言うのも楽じゃ無いね。
しかもロングとはいえスカート履かなきゃだし、夏は水着も着なきゃだし...慣れてきたけど、罪悪感というか犯罪臭というか、いけないことしてる感じがすごいする。
...よし、切り替えよう。こんな時は可愛い子達を可愛がるのが1番いいって偉い人も言ってる。おそらく今はアリスクが訓練所で朝練をして...お、いたいた。
「ヨゾラか。おはよう」
「おはよう、ヨゾラちゃん」
「お、おはようございますぅ...」
「おはよう」
ああ〜今日もみんな可愛すぎる...かわいくてイケメンって反則すぎる...ペロペロしたい...しかもみんな会うとちょっと笑顔になるの良くない?これ信頼されてるって考えていいんだよね?ミサキも素っ気ないけどちょっと表情柔らかくなっててカワイイネ...呼び捨てとちゃん付けも最高。推しに親しい呼び方されるってもうファンサがすぎる。やっぱティーパーティーになった時今まで通りの態度で良いよって言っといてよかった〜過去の自分天才すぎ〜しかも原作キャラだけじゃ無くてみんな可愛いんだからほんとにもう毎日尊死して(略)
「ええ、皆さんおはようございます(キリッ)」
「はぁ、今日も元気そうだね」
「ふふ、すごい嬉しそう」
余談だが、アリウスは戦闘特化であり、彼女たちともなれば相手の心情の乱れも見抜く事ができる。
「皆さんもお元気そうで何よりです。今は訓練中ですか?皆さん偉いですね」
「ヨゾラちゃんも最近ティーパーティーの仕事頑張ってて偉いよ。ほら、よしよーし」
「ミ°」
あっあっあっ推しになでなでされて、あっあっあっ
「やっぱりヨゾラちゃんって面白いね」
「姫、あまり遊んでやるな。ところで、何か用があってきたのか?」
「そうでした、今日は皆さんに差し入れを持ってきたんです」
「わあ、美味しそうなシュークリーム」
「こ、こんな美味しそうなものをタダで...明日死ぬんでしょうか...」
「これ、結構良いやつだよね。良いの?」
「腐ってもティーパーティーですから、お金の心配ならしないでください。それに、皆さんはいつも人一倍頑張ってますから。これくらい贅沢する権利もありますよ」
「そういうことならありがたく頂こう。ありがとう、ヨゾラ」
推しの笑顔、プライスレス。
さて、目的も達成したしそろそろ授業の時間だ戦闘関連以外は前世でもう習ったことなので退屈だが、授業を終えたらティーパーティー初顔合わせだ。と言っても実は前からこっそり会ってるんだけどね。ガバトリーチェ。でもこれからは堂々と会えるし、ベアトリーチェの監視もないので実に楽しみだ。そう思えば授業へのやる気も出るってもんよ。イクゾー!
*
終わった〜!待ってろ茶会、今行くぞ!
そそくさと荷物をまとめ、気持ち早足で会場へ向かう。原作よりは近いがやはり広いトリニティで別館から本館へ行くのは時間がかかり、気持ちばかりが昂っていく。興奮してきた。
漸く着けば、そこには既に全員揃っていた。
「みんなーー久しぶりーーー‼︎!」
「ええ、お久しぶりですヨゾラさん。」
「元気そうだね、ヨゾラ」
「ヨゾラちゃーん!久しぶりー!会いたかったよー!」
はわわ、推しに会いたかったって言われた...!
え?推し何人いるんだよって?
うるせぇ!先生なら全員愛さんかい!
「今日は初顔合わせということで、秘蔵の茶葉を使ってみました。お口に合うと良いのですが...」
「えっ、美味しい。すごい美味しいこれ。さすがナギサ」
「フフ、そう言って頂けると嬉しいです。」
推しの笑顔、プライスレス。
ほんとお茶も美味いし、お茶菓子も美味いし、某国みたいにメシマズでもないし、やっぱりトリニティって最高だな。マカロンをこんなに食べれるとは前世では思いもしなかったぜ...
「ヨゾラはいつも本当に美味しそうに食べるね。」
「小動物みたいで可愛いね!」
「な、なにおう。こっちだっていつもは威厳たっぷりでカッコよくやってるんだからな」
「その身長で言われても説得力ないよ⭐︎」
「セイアちゃんよりは大きいし」
「...君達は身長なんかに固執するのかい?ティーパーティーたる者、外見が如何であろうと常に敬われる様な者であることを意識しなければならない。それに、」
「セイアちゃん話ながーい」
「...今日は顔合わせとはいえ、一応生徒会長同士の大切な話し合いなんですけどね...」
「まあ良いじゃん。友達が久しぶりに集まったってことで、最初くらいは、ね?」
「まあ、そうですね。...紅茶のお代わり、頼みましょうか。」
推したちの笑顔、プライスレス。