【急募】FFTを1ミリも知らないオレたちを誰か助けてくれ 作:12club
side:アイリ
おぼろげながらの記憶に頼るなら、私が目を覚ましたのはガタゴトと揺れる狭い乗り物の中だった。
その中で、私は体を横たえて伏せっている。
指を動かす。
ただそれだけの動作で。
「――ッ!!」
背中から焼き串で引き裂くような鋭い痛みが走るのを感じた。
思わず目を見開く。
今度は出来るだけ背に走った痛みを感じないよう、恐る恐る首を横に向けた。
目の前に、今にも泣きそうな顔の、情けないお子様のような表情をしたユーリがいた。
「ユーリ……」
恐らく泣き
「起きたか……、よかった、アイリ」
あんまりよくない。
私はアルガスがやられると思って、ほとんど本能に従って彼を突き飛ばした。
位置が変わった私が、あの女剣士に背中から斬られた。
記憶はそこから飛んでいる。
「ユーリ、戦いはどうなったの……?」
あれからどうなったのか。
皆は無事なのか。
戦いの
聞きたいことは山ほどあった。
「心配ない。ラムザたちが勝ったよ」
「他の皆は? 怪我とかしていない?」
「無事だよ。……おまえが倒れてからは、だけど」
「やっぱり犠牲は出たよね……」
「仕方ないさ。戦争なんだから」
そのまま無言に陥る私たち。
やっぱり作戦はディリータに従った方が良かったのかな。
結局、奇襲はバレてて足並みが乱れての乱戦になった。
従っていれば、密集して敵軍を順調に踏み潰していって、少なくとも今より犠牲は少なかったのかもしれない。
ふと、ユーリの後ろに置いてある木箱に眼が吸い寄せられる。
「ユーリ、あれなに? 馬車に今までは置いてなかったと思うけど」
「見るな」
え?
「敵将の……女剣士ミルウーダの首だ」
「大将の首?」
「見る必要はない。呪われても知らないぞ」
「ユーリでもそんな冗談、言うんだ」
くすりと私は微笑むように、心配を掛けまいと笑って
「私の怪我、どんな感じ?」
もう戦場に出られないとか言われたらどうしよう。
支援部隊に転属とかになっちゃうんだろうか。
「大丈夫だ。出血は派手だったけど、大事な内臓や骨に異常はないって。筋繊維がちょっとやられたから多少の違和感は残るかもしれないけど、原隊復帰は十分可能だそうだ」
「そっか」
だったら幸運だ。
もうユーリと一緒に戦えないって言われたら、どうしようかと思うところだ。
もう一つ、ついでにハッと気が付いた。
「アルガスは?」
ついでって、失礼だとは思ったけど、本当についでに気付いたのだから仕方ない。
「元気だよ。今もラムザたちと馬車の外で、
「なら助けた甲斐はあったね」
「幸せモンだよ。アルガスは」
と、言っていたら唐突に馬車の垂れ幕が開いた。
「もう目が覚めたのか? なんだ、元気じゃねえか」
憎まれ口を叩くのはやっぱりアルガスだった。
「アルガスは平気か? じゃなかったらアイリの代わりにオレがぶん殴る」
「よせよ。オレの身代わりになったのを
「おまえだったから身代わりになったんじゃない。おまえもラムザたちと同じ、オレたちの仲間だったからアイリは庇ったんだぞ」
「ふん、まあいい」
鼻息も荒く、アルガスは
「名誉の負傷に、敵将の首も取った。栄達の道は開けたようなもんだな。さすがはベオルブ家の家訓を受けているだけのことはある」
「何が言いたいんだよ」
口先を尖らせながらユーリが返す。
アルガスは悪びれもせずに応えた。
「あの時、アイリが邪魔しなけりゃ名誉の負傷を受けたのはオレだったわけだ。手柄を持ってかれた、と言っても過言じゃねえ。まったく余計なことをしてくれたもんだ」
「おまえな……、あそこでアイリが庇わなかったら、袈裟懸けに心臓を真っ二つにされて死んでたんだぞ」
「冗談に決まってるだろうが。ったく、軽口のセンスもない野郎だなおまえは」
冗談のセンスがないのはアンタでしょ。
そう言いたかったけど、背中の裂傷がひりついて大きな声も出せない。
「ま、オレが言いたいことはそれだけだ。兄妹仲の邪魔して悪かったな」
ユーリが言い返すのも嫌ってか、それだけ言って本当に馬車の中から外に出ていった。
はぁ~っと大きく息をついて、ユーリが言い漏らす。
「ったく、あいつは。名誉だの栄達だの、そんなに大事なモンかね」
「大事でしょ。少なくともあいつには」
ユーリは一瞬だけ、外に出たアルガスを見やるようにして。
「そうだったな」
それだけ言った。
ふと、気付く。
何やら馬車の外が騒がしい。
馬車の足音も、ガタゴトという揺れも、いつの間にか止まっている。
ユーリも気が付いたのか、馬車の垂れ幕を眺めながら。
「ちょっと行ってくる。おまえはもう少し寝ていろ」
そう言って、馬車から出ていった。
side:ユーリ
「どうしたんだラムザ、ディリータ。何かあったのか?」
「何もかもあるものか!」
と、大声で叫んだのは。
珍しい、ディリータだった。
「状況は本当なのか?」
ラムザが、恐らく斥候か連絡役であろう騎士に問い返す。
「はっ、復唱します。ベオルブ邸が襲撃され、ダイスダーグ卿が重傷を負いました。犯人は幾人か討ち取りましたが、逃げた者にご令嬢がかどわかされたとのことです」
「それが……ティータ、なんだな?」
「ご令嬢、というだけで詳しいことは何も……。ただ現場にいた者によると、アルマ様はご無事だとのことですので、もうひとりのご令嬢かと……」
ディリータが這いつくばって地面を殴り付ける。
キッと顔を上げて、騎士に向かって怒声を上げた。
「犯人は骸旅団か!? もう屋敷から逃げてどのくらい経つ!? いったいどこへ逃げたんだ!!」
「申し訳ありません。私はこのことを早くラムザ様にお伝えするよう命を受けただけで、詳しいことまでは……」
ディリータが顔をみるみるうちに紅潮させていく。
「時が惜しい! オレはベオルブ邸に行く! チョコボを一頭貸せ!!」
「ディリータ……。わかった」
ラムザがオレに向かって、馬車を引くチョコボを指差す。
「ユーリ、チョコボを一頭、手綱を放してやってくれ。ディリータには早馬の役割を果たしてもらう。こっちには
オレは頷いた。
「了解、すぐさま準備する。ディリータ、おまえも手伝え」
「すまん、ユーリ……!」
焦るディリータを見て、オレは先のミルウーダを思い出していた。
あの時のオレは、頭に血が昇っていた。
アイリが傷つけられたから。
今のディリータはオレに似ている。
だけど、まだその一歩手前だ。
まだティータが死んだと、そう決まったわけではない。
この焦りが、憎しみに変わらなければいいんだが……。
馬車に繋がった手綱を外し、チョコボに改めて一人用の手綱を締める。
ディリータはすぐにそれに乗って、イグーロス城のベオルブ邸へと向かって走っていった。
side:ラムザ・ベオルブ
ディリータがベオルブ邸に戻った頃には時すでに遅く、何もかもが終わった後だった。
幸いにも命を繋いだダイスダーグ兄さん。
それを心配して面談に訪れたザルバッグ兄さんと妹のアルマ。
そして、姿を消したティータ。
僕らがベオルブ邸に着いた時にはさらに遅れて、まさに
「……敵のアジトを落とし、敵将の首も取ったそうだな。よくやった。後はザルバッグに任せておまえたちはもう休め……」
沈黙が場を支配する。
「心配するな……。大した傷ではない」
ここで聞くべきかどうか迷ったが、ディリータから話させるわけにはいかない。
ディリータにはここで口を開く権利がないことは、彼本人も分かっている。
「兄さん。ティータは……ティータはどうなるんですか」
間が開く。
おもむろにダイスダーグ兄さんが、重々しく口を開いた。
「……骸旅団の本拠地がわかり次第、北天騎士団が総攻撃を仕掛ける」
思わず駆け寄ろうとするディリータ。
それを制止するアルガス。
僕はショックを隠せなかった。
「そ、そんな……!」
僕の顔色も、ディリータの焦りもわかっているであろう兄さんは、口調を変えずに淡々と続ける。
「骸旅団はもうガタガタだ。逃げている者も数えるほどしかしない。頭目のウィーグラフの居所はまだ把握できていないが、時間の問題だろう……」
僕はそんな兄さんの顔を見たくなくて、それでも聞かないわけにもいかず、心なしうつむいて兄さんに問う。
「ティータを……、見殺しにするんですか……?」
ふっと、ダイスダーグ兄さんが僕に顔を向けた。
「大丈夫だ。手は打ってある……」
口調を変えずに、淡々と。
「ティータの無事を確保するまでは、総攻撃など絶対にせん……。本当の妹だと思っているティータのことを、見捨てられるものか……」
そう続けた。
side:アイリ
ラムザたちがダイスダーグさんと面談している間、体を一日近く休めたおかげで、何とか歩ける程度には回復した。
まったく、うちの同級生たちは皆、優秀な子ばっかりだ。
「大丈夫か、アイリ?」
「痛みもだいぶ引いてきたし、眼に見える傷は完全に塞がったって太鼓判押されたからね。まだ中はじくじくするけど、もう普通に歩けるよ」
それでも肩を貸してくれるユーリに、私は笑顔で応える。
多分、空元気に見えただろうけど。
「……ティータ。大丈夫かな」
ポツリと呟いた私に、ユーリは沈痛な面持ちで。
「大丈夫だって。ダイスダーグさんもザルバッグさんもいるんだ。天下の北天騎士団が野盗相手に後れを取るはずがないだろ?」
そう言った。
だったら、何故そんな重たそうな表情でそんなことを言うのか。
「ユーリ、平気?」
「なにが」
「なんだか敵のアジトを落とした時からちょっと変だよ。ユーリってそんな辛そうな表情したことなかった気がして」
「……多分、おまえがあの女剣士に斬られたからだろうな」
「わたし?」
「今のディリータの気持ち。オレには分かる気がする」
……まあ、あれだけ焦るディリータを見ていたら、わからないはずもないだろうけど。
でもユーリがいま言いたいことは、なんだか違うことのように思えた。
「多分、アイリが同じようにいなくなったら、オレだってああなるよ」
「そういうことが言いたいわけないんじゃなくて?」
「なんでそう思うんだよ」
「違うんじゃない?」
「だから、なんでだよ」
「私にもわかんない」
「なんなんだよ、おまえは……」
それこそなんでさ、ユーリ。
ふと、立ち止まる。
玄関わきの窓。
その外に、ラムザとディリータがいた。
「なんだろ、ふたりとも」
「行ってみるか」
肩を支えられて、私とユーリは二人三脚の足運びで玄関のドアを開いた。
「待てよディリータ。どこへ行くつもりだよ」
ラムザが一歩前に出ているディリータに声をかける。
ディリータはそれを無視して去ろうとするが、早足でラムザがディリータの横に立ち、肩を掴んだ。
「とにかく落ち着けよ!」
ラムザの言葉に乱暴に応えるように、掴まれている肩から強引にラムザの手を引き剥がす。
「落ち着けだと!? 落ち着いてなどいられるものか!!」
「どこへ行ったのかもわからないんだ、
ぐわしと、ディリータがラムザの胸ぐらを掴み上げて。
「意味がないだと? たったひとりの妹なんだぞ!!」
ラムザが苦し気に悶えながら、ディリータに抗弁した。
「に、兄さんたちも言っていたじゃないか……。ティータの無事を確認するまでは……総攻撃なんて……しないって……」
「……ッ!」
「ティータを……見殺しになんかしない……って……。く、苦しいよ……」
そこでようやく頭が冷えたのか、ディリータはゆっくり、ラムザの胸ぐらから手を離す。
「……すまん、大丈夫か? ラムザ」
「あ、ああ……」
そこまでふたりのやり取りを見て、私は声をかけた。
「ディリータ、大丈夫? ラムザもデリカシーなさすぎ」
「おい……、デリカシーがないのはおまえもだぞ」
ユーリに注意されて、ハッと口をつぐんだ。
「ご、ごめんディリータ。私……」
「いや、いいよ。言いたいことは分かる。おまえは隣にユーリがいるもんな」
ディリータのその言葉を受けて、私はガツンと石で殴られたような衝撃を受けた。
そんなつもりで言ったわけじゃないけど、なんて言うか、後悔先に立たず、だ。
「ディリータ。アイリが無事なオレが何を言っても説得力がないとは思うが、とにかく落ち着け。いつもの冷静なおまえに戻れよ」
「……本当に説得力がないな」
「でも少しだけいい方にも考えろよ。アイリは無事ですんだんだ。ティータもきっと無事だって」
「そっちは、まだ説得力がある」
「頭が冷えただろ? どうすればいいのか、みんなで考えよう」
「……すまん」
過去の行いの自分に言い聞かせるように、私たちに頭を下げるディリータ。
とりあえず、いい方に展開は転がった、のかな……?
ガチャリと、さっき閉めた屋敷の扉が開いた。
「オレは"絶対"なんて言葉。"絶対"に信じないけどな」
アルガスだ。
「兄さんが嘘を言っているとでも?」
「ああ、オレだったら平民の娘を助けるなんて躊躇はしないな」
ディリータの下がった熱がみるみるうちに上がっていくのを感じる。
「なんだと……?」
「貴様ら平民のために攻撃の躊躇などしないと言っているんだ!」
「き、貴様ッ!!」
怒号一発。
ディリータは拳を振り上げ、思いきりアルガスを殴り付けた。
「ディリータ!」
「よせ、ディリータ!」
私とラムザがディリータを押し留める。
ディリータはもがき、力任せに私たちから逃れようとして。
「放せ! 畜生、放せ!」
尻もちを突いたアルガスが、手で口元を拭って言い連ねる。
「やはり平民は平民だ。どこまで行っても貴族にはなれやしねえ」
「言わせておけばッ!」
ディリータが怒り心頭のまま、アルガスに迫ろうとする。
「やめろ、ディリータ! アルガスもいい加減にしろ!」
アルガスは立ち上がり、
「よく聞け、ディリータ。貴族には貴族の義務がある。平民にも役割がある。それを理解できないおまえはここにいちゃいけない。わかるか? わかるかこの野郎!」
「なんだとッ!」
「貴族は平民を守り、平民は貴族に尽くさねばならない! それが"貴族が平民を守る社会"ってやつだ! 王家は、領主は、貴族はその社会そのものを守らなければならない! おまえみたいに貴族の庇護を被っただけのやつはただのごく潰しだ! それが理解できないのなら、さっさとここから出ていけ!!」
「何も知らないヤツが好き勝手なことを言うな!!」
「好き勝手を言っているのは自分だということがわからんのなら尚更だ!」
眼に見えてディリータはキレているけど、同様にアルガスもキレている。
どうしようもない、埋めようのない差を、どこまでも理解しているから。
それは、私やユーリが通った道だ。
じゃあ、私の選んだ道の本当の姿って、いったい……?
「ラムザ、目を覚ませ。そいつとおまえは一緒にいちゃいけない」
「なに……?」
「おまえはベオルブ家の御曹司だ。誇り高い武門の誉れだ。だからこそ貴族と平民の何たるかがわかっていないそいつと一緒にいてはいけない。少なくとも、おまえの兄キたちはそう思っているはずだぜ」
「馬鹿な! ディリータは親友だ! ずっと兄弟みたいに育ってきたんだ!」
「だからこそ目を覚ませ。友達ゴッコはもうおしまいだ」
バシン、と強く弾かれた。
私とラムザはたたらを踏んで、ディリータが叫ぶ。
「おまえみたいな貴族ばかりじゃない! オレはラムザを信じる!」
立ち去るディリータの背中に、アルガスがしつこく続けた。
「ディリータ、仲間のよしみで教えてやる。骸旅団の本拠地はジークデン砦だ。ラムザの兄キから聞いたよ」
それに聞く価値があると、心の底で留まったか、頭の隅で判断したのか、ディリータが立ち止まる。
「もっとも、正面からは近づけないぜ。幾重もの防衛線が張られている。裏から攻めるしかないな」
「……チッ」
「せいぜい頑張れよ。貴族に庇護された平民サマ」
思いきり皮肉を浴びせられて、ディリータはようやくベオルブ邸から立ち去っていった。
ラムザがアルガスに向かって叫ぶ。
「アルガス! おまえはいったい何がしたいんだ!?」
「おまえもあいつも現実が見えてないんだ。それをほんの少しだけ教えてやりたいだけだ」
「それだけじゃないだろう! 僕らを煽っていったい何のつもりだ!」
つと、言葉を切って。
アルガスはふっと空を仰いだ。
顔を下ろし、私とラムザの間を通り過ぎて。
去り際に。
「まだ返し切れてない借りがあるからな」
そう言って。
彼もまたベオルブ邸から去っていった。
「アルガス……」
私にはアルガスが何を考えているのかわからない。
だけど、何となく彼の人柄は分かる。
あいつの根っこは悪いやつじゃない。
ただ、自分を追い落とした貴族に密かに恨みを抱いていて。
やり切れない思いを、自分を認めないモノに八つ当たりして。
あいつは……、人間すぎる。
ちょっと過激で感情的過ぎる、ただの少年だ。
私たちと同じ、年頃の少年。
あの年頃の難しさは、私たちも経験している。その真っ最中だ。
だから私たちは、分かり合えてしまえる。
だから私たちは、反発してしまう。
自分の
まだ遅くはない。
今はティータ救出に全力を尽くそう。
みんなが協力し合える、その際限まで。
side:ユーリ
オレは何も言えなかった。
ラムザやディリータの感情も、アイリの行動も、アルガスの本音も透けて見えるようで。
今も、立ち去っていく彼らを追うことも出来ずにいる。
あの女剣士――ミルウーダを介錯してから……いや。
アイリを傷付けられてから、オレの中の何かがおかしい。おかしくなってきている。
今まで細かった視線がむりやり広げられたように、ぶわっと視界が広がっている。
広がった視界は空から地面を見るようで、今まで狭く深かったものが、広く高くなっている。
そこにオレの疑問がどんどんと立ち昇ってくる。
オレの抱く正義って何だ?
アイリを傷付けるヤツを倒すことか?
ラムザやディリータの邪魔をするヤツを叩きのめすことか?
分からないことだらけだ。
戦いの正義。
アイリ曰く、戦いを制した後にそれを考えるのはダイスダーグさんやザルバッグさんだとも。
ならオレにとっての正義って、いったい――。
「ここにいたか、ユーリ」
不意に話しかけられてそちらを見やる。
玄関口から出てきたのは。
「ザルバッグ将軍……」
「平時だ。ザルバッグと呼んで構わんぞ。もっとも用件はそれだけではないがな」
「自分に何か? ザルバッグ将軍……いえ、ザルバッグさん」
「うむ。おまえに頼みたいことがある」
穏やかだったザルバッグさんの顔が引き締まる。
「もう間もなく、ジークデン砦に総攻撃を仕掛ける。おまえには私の補佐を務めてもらいたい。引き受けてくれるな?」
一も二もない、これは軍事命令だ。
他ならぬザルバッグ将軍からの。
オレの正義は――どこだ?