【急募】FFTを1ミリも知らないオレたちを誰か助けてくれ   作:12club

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ゾディアックブレイブの伝説

side:アイリ・サダルファス

 

 丘を越えて、さらに山を越えて。

 私たちはようやくライオネル城に辿り着いた。

 

 そしてその城門前。

 

「何者だ! ライオネル城に何用か?」

 

 門番が居丈高(いたけだか)な声で私たちに問いかける。

 

「私はルザリア聖近衛騎士団所属の騎士アグリアス・オークス。神の御子、聖アジョラの救済を求めてオーボンヌ修道院より参上いたした。開門を願う!」

 

 アグリアスの応えに対する返答は。

 

「聖アジョラの救済はすなわち猊下(げいか)の御心である。猊下の救済を求める者には等しく門が開かれるであろう。開門せよ!」

 

 声音は厳しいけど、どうやら率直にこちらの願いを聞いてもらえそうだ。

 ようやく一息つける。

 

 私たち一行は開かれた門をくぐり、城内へと進んだ。

 

 

 

 

 

 応接室。

 ライオネル城は窓も少なく陽光の入りが欠けていて、何やら陰鬱な雰囲気を(かも)し出している。

 

 その部屋で、私たちはドラクロワ枢機卿と対面した。

 

「なるほど、事情はよく分かりました、アグリアス殿。そういうことならばこのドラクロワ、手を貸さずには致しますまい」

 

 簡潔に、ドラクロワ枢機卿が述べる。

 人の良い好々爺(こうこうや)といった風情の方で、厳しげな表情の中に温厚な人柄が見受けられる。

 

「早速、聖地ミュロンドへ使者を差し向けましょう。教皇猊下に直奏するのです。ラーグ公の不正を暴き、オヴェリア様の御命が狙われぬよう計らいましょうぞ」

「フューネラル教皇猊下はお聞き届くださいますでしょうか?」

「ご安心なされよ、アグリアス殿。貴殿がそのように不安にされればオヴェリア様も心休まらぬというもの。古く汚らしい城ではございますが、聖地より返事が来るまでの間、ゆるりとくつろいでくだされ」

 

 枢機卿猊下の返答に対して、オヴェリア様がひとつ、礼を述べる。

 

「枢機卿猊下、御心遣いに感謝いたします」

「全ては聖アジョラのお導きです。ご安心めされよ」

 

 そう言って、ムスタディオへと視線を向ける。

 

「ときに若き機工士よ。そなたの願いも聞き届けました。バート商会を壊滅させるため、我がライオネルの精鋭たちをゴーグに派遣しましょうぞ」

「ありがとうございます、猊下」

「が、その前に、なぜそなたら親子が狙われているのか話してくれぬか?」

 

 聞かれたムスタディオが、眼に見えて狼狽(ろうばい)するのが分かった。

 

「……よいよい、これであろう?」

 

 言って、枢機卿猊下が懐から手の平大の宝石を取り出し、テーブルに置いた。

 

「そのクリスタルは……?」

「貴殿らは"ゾディアックブレイブ"の伝説をご存じかな?」

 

 私たちは曖昧に(うなず)く。

 

「……小さい頃、教会でよく聞かされたあのおとぎ話ですか?」

「これはこれは、アグリアス殿は教会が嘘を申しているとでも?」

「そ、そのようなことは決して……」

 

 そのやり取りを見てか、オヴェリア様が(ぎん)じ始める。

 

「太古の昔、未だこの大地が形を成していなかった時代、悪魔(ルカヴィ)が支配するこの大地を救わんと12人の勇者が悪魔に戦いを挑みました」

 

 私たちはオヴェリア様を注視する。

 

「激しい死闘の末、勇者たちは悪魔を魔界へ追い返すことに成功し、大地に平和が訪れました」

 

 オヴェリア様が続ける。

 

「12人の勇者たちは黄道十二宮の紋章の入ったクリスタルを所持していたため、人々は彼らを黄道十二宮の勇者……、ゾディアックブレイブと呼ぶようになったといいます。その後も、時代を超えて、私たち人間が争いに巻き込まれる都度勇者たちが現われ世界を救ったとか……」

「流石はオヴェリア様、よくご存じですな……」

「オーボンヌ修道院でシモン先生から教わりました。……そういえば聖アジョラは彼らを従えて、混乱したイヴァリースをお救いになったと聞いております」

 

 枢機卿猊下がコクリとうなずく。

 

「勇者たちが所持していたクリスタルを我らは『聖石』と呼んでいます。そして、今、我らが目にしている石こそ、伝説の秘石、『ゾディアックストーン』……」

 

 ムスタディオがうつむき、オヴェリア様が驚嘆したように呟く。

 

「まさか『聖石』が本当にあっただなんて……」

「聖石にはルカヴィたちを凌ぐほどの"御力"備わっているとか……。たしかに不思議な力を感じますが、私にはただの大きなクリスタルにしか見えませんが……」

 

 ラムザが青くなったムスタディオの顔を覗いて。

 

「どうしたんだムスタディオ。顔色が悪いみたいだけど……」

 

 それに応えたのは枢機卿猊下だった。

 

「……ゴーグの地下でこれと同じ石を見つけたのではないかな?」

「地下には壊れて動かない機械がたくさん埋まっています……。でも、あの石を近づけると死んでいるはずの機械がうなり始めるんだ……」

「バート商会が狙っているのはその聖石ですね……?」

「あの石にどんな力があるのか、オレにはわかりません……。しかし、ルードヴィッヒはあの力を解明して兵器にしようとしています……。親父は、聖石を渡してはならないと言っていました……。だから、親父はやつらに……」

 

 ルードヴィッヒ。

 その人物が、バート商会の黒幕か。

 

「心配いたすな、若き機工士よ。教会が責任を持って管理しましょう。我らの兵が悪漢どもと戦っている隙に一刻も早く聖石を持ち帰るのです」

「は、はいッ。猊下」

 

 ラムザが体をムスタディオに向けて。

 

「僕も一緒にゴーグへ行こう」

「ありがとう、ラムザ」

 

 ムスタディオは素直に礼を述べた。

 

「ここまで来られたのも貴公のおかげだ。感謝する、ラムザ」

 

 アグリアスもそう述べて。

 

「何の力にもなれないですけれど、気を付けてくださいね」

 

 オヴェリア様も彼に感謝の意を告げる。

 

「大丈夫です。オヴェリア様のお言葉だけで充分です」

 

 ラムザは朗らかな笑顔を向け、オヴェリア様に一礼した。

 

 

 

 

 

 ここで一旦、ラムザの物語は私たちの手から離れる。

 

 次に、私の前に訪れたのは……。

 

 

 

 

 

「ったく、ようやく羽を伸ばせるってもんだ」

 

 ライオネル城から外に出て、空気を吸う。

 枢機卿猊下には悪いけど、どうにも城の中の空気は淀んでいるのを感じていた。

 それに対してはアルガスも同意見のようだ。

 

 私はぐっと背伸びをして大きく息をついた。

 

「まあこれで、オヴェリア様も無事に済むんじゃない? 予定からは大幅にずれちゃったけど」

「出世の近道だと思ったんだがな。だがまあ、オヴェリア様がオレたちの目の届くところにあるうちはまだまだチャンスがあるってもんだ」

「どうかしらねぇ。アグリアスも近くにいるし、オヴェリア様も教会の保護下に入るみたいだし、チャンスの芽はもう潰れた気がするよ」

「悲観的なことばかり言っても仕方ねえだろ。それよりも、何かいい案でもあるのか?」

「無いから悲観的なことを言ってるんでしょ。アルガスは楽観的過ぎ」

「ほざけ」

 

 ぶちぶちと文句という世間話を話しながら、ライオネル城の城下町を歩く。

 

 何か甘い物でも口にしたいな。

 果実のジュースとか。

 

「アイリ」

 

 そう声を掛けられて、私は振り向いて。

 くわっと眼を見開いた。

 

「ユーリ!?」

 

 未だ見慣れない、左官装備に身を包んだ双子の兄がそこにいた。

 

「久しぶりだな」

「どうしてこの場所に? 私たちをつけてきたの?」

「そんな暇なことはしない。北天騎士団が動けない以上、単独行動でオヴェリア王女を追ってきただけだ」

「まだそんなこと、企んでるんだ」

 

 剣に手を掛けかける。

 しかし、ユーリからは敵意が感じられない。

 ここでやり合う気はないってことか。

 

「おまえたちもノロノロと歩いてきたものだな。おかげでチョコボを一頭潰しただけで、おまえたちに追い付くことが出来た」

「何が目的なの?」

「どうもしない。アイリ、おまえはイグーロスへ戻るんだ。その方が身のためだぞ。ダイスダーグ卿も、おとなしくしていれば危害は加えないと言っていた」

 

 冗談じゃない。

 事の真相を知っている私たちを、あのダイスダーグさんが穏便(おんびん)に見逃すものか。

 

「……何が目的かって聞いているのよ」

「言うと思っているのか?」

「こっちからも言っておくけど、オヴェリア様にはもう手を出させないよ。教会がバックに付いてくれるみたいだからね」

「それこそちっぽけな楽観論だ。ダイスダーグ卿はおまえたちの行動など、全てお見通しだ」

「……何の話?」

「それこそ言うと思っているのか、おまえは?」

 

 話は平行線だ。

 ユーリは何も言う気はないらしいし、こっちから言うことも何もない。

 

「いいか、いい加減おとなしくイグーロスへ戻れ」

 

 それだけ言って、ユーリは私たちに背を向ける。

 

「これ以上、聞き分けが無いのなら次に会う時はまたオレたちの敵だ」

「お生憎様。ユーリこそ、夜道を歩く時は背中に気を付けるんだね」

「ふん」

 

 背中越しに、ユーリは私たちに向かって手をひらひらと振った。

 

「お互い、生きていたらまた会おう」

「多分その時は戦場だろうけどね」

「分かっているならこれ以上オヴェリア王女に付きまとうのはやめろ。じゃあな」

 

 言い残し、ユーリは私たちの前から去っていった。

 本当に、いったい何が目的なんだか……。

 

「あの野郎、オヴェリア様の暗殺にでも来たんじゃないのか?」

 

 アルガスが物騒なことを言い出す。

 けれどオヴェリア様は城の中。

 簡単に手出しが出来るとは思えない。

 

 でも。

 

「わざわざここに来たってことは何か勝算があるってことよね」

「ならオレたちでオヴェリア様を守らないとな。アグリアスだけじゃどうにも不安だ」

「そうだね……」

 

 胸騒ぎがする。

 この感覚には覚えがある。

 何か、全てが誰かの手の平の上で、どこまでもお膳立てされているかのような。

 そんな雰囲気。

 

 私は鼻息も荒く、むんっと気合いを入れ直した。

 

 

 

 

 

side:ユーリ

 

 素直に言うことを聞いてくれるはずがないことは分かってはいたが。

 どうもアイツらはオレたちの邪魔をすることをやめないつもりらしい。

 

 それが寿命を縮めるだけだとも知らずに。

 

「よう、ユーリ」

 

 気軽にオレにかけられる、壮年の男の声。

 

「ガフガリオン……」

 

 黒鎧をまとった壮年の剣士がそこにいた。

 袋を手に持って、それに入っていたモノをかじっている。

 

「その様子だと、おまえの妹は相変わらず諦めるつもりはないようだな」

「ああ、身の程知らずにもほどがある」

 

 ガフガリオンがここにいるっていうことは、それはつまり。

 

「ドラクロワ枢機卿との話はついたのか?」

「ああ、ダイスダーグの言った通り、オレたちに協力するつもりだそうだ。どンな腹積もりをしているかはわからンがな」

「と、言うと?」

「条件があると言っていた」

 

 条件?

 ダイスダーグ卿からはそんな話、(つゆ)ほども聞いていなかったが。

 

「なんでもラムザたちに、自分らにとって重要な宝石を盗まれたンだとよ。それを取り返せばラーグ公に協力するとさ」

「宝石?」

「オレにもさっぱりわからンが、まああっちの個人的な事情だろ。渡りに船とばかりに、オレたちをいいようにこき使うつもりだ」

「だがそれは、条件さえ果たせば枢機卿もラーグ公側に付くということだろう。少しばかり使われる程度なら、計画に支障はない」

「どうだかね……。あの御仁の考えてることがさっぱりなうちは、油断しないに越したことはないと思うがな」

 

 ガフガリオンの心配ももっともだ。

 どうも枢機卿にいいように利用されている気がする。

 あまりにもあちらにとってタイミングが良すぎる。

 

「だが今、ラムザはここにはいない。邪魔をするのはアイリたちと、アグリアス。ヤツらさえ排除できれば王女奪還の芽も出てくる」

「枢機卿には協力しないつもりか?」

「そこまでは言っていない。ただ、枢機卿を信用し過ぎるなってことだけだ」

「盤がオレたちに傾いているうちに、全部片付けちまおうって腹か。さすが、ダイスダーグの薫陶を受けたやつの言うことは違う」

 

 そもそもが、ダイスダーグ卿にとって予想外のタイミングで、枢機卿が協力の申し出を受け入れたことが問題だ。

 ダイスダーグ卿にとっては手の平の上だろうが、枢機卿を利用しようというのは流石に無茶だと思う。

 

 どこかで計画が狂い始めているのだ。

 

「最悪なのは枢機卿にいいように使われた上に、王女の身柄を抑えられることだ。邪魔が入らないうちに一気に片付けたい」

「そう上手く事が運べるかねぇ」

「運べるかどうかじゃない。やるしかないんだ」

 

 そうだ。

 これ以上の失敗は許されない。

 

 ただでさえ、この先のイヴァリースの命運を背負う王女が宙ぶらりんになっているのだ。

 イヴァリースの未来の為にも、ダイスダーグ卿に王女の身柄を渡さなくては。

 

 最低、その首だけでも。

 

 自然、手に力が入る。

 剣の鞘に触れていた手がそれを揺らし、ガチャリと音を立てる。

 

「ところで、なんだその袋は?」

「ン? ああ、揚げ芋さ。おまえも食うか?」

「いただこう」

 

 腹が減っては戦は出来ぬ。

 オレもご相伴(しょうばん)にあずかることにした。

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