【急募】FFTを1ミリも知らないオレたちを誰か助けてくれ 作:12club
side:ラムザ・ベオルブ
アルマを伴い、オーボンヌ修道院へ。
オーボンヌ修道院はグレバドス教会の管轄。
本来、異端者の
そこに。
「あ、いたいた。おーい、ラムザー!」
場にそぐわない暢気な声で僕を呼び止めるのが聞こえた。
「アイリ!? 何故きみがここに!?」
チョコボで駆けてきたふたりに、僕は驚きを隠せなかった。
まさかこんな所で再会するなんて。
「おい、ラムザ。オレの事はとことん無視する気か?」
「ああ、すまないアルガス。おまえも無事なようで何よりだ」
「おまえが異端者にされて、アイリが疑われてるんだ。こっちは踏んだり蹴ったりだぞ」
口先だけはいつも悪いアルガスだが、アイリの身を案じてくれているのは素直に感謝できた。
「きみたちはどうしてここに?」
「それは自分の胸に聞いてよ。私たちだってもうラムザと無関係じゃないんだから」
「異端審問官の件か……」
このことで彼女たちに迷惑をかけてしまったのは不本意だったが、結果として巻き込む形になってしまった。
「まあ、そうは言ってもオレたちの元に異端審問会への出廷を命じられないくらいだ。よっぽどおまえたちの事の方が気に食わないんだろうよ」
「……確かに」
「で、ヤバいブツ抱えてるんだろ? オレにも見せてみろ」
「後には退けなくなるぞ」
「元々退く予定は無いんだ。状況把握しなければオレの身に危険が迫る。首が飛ぶ前にオレに見せろ」
「……これだ」
アルガスに請われて、僕は懐からふたつのクリスタルを取り出した。
聖石「タウロス」と「スコーピオ」。
いつもの仏頂面……になると思いきや、アルガスはニヤリと口の端を曲げてみせる。
「やっぱりか。枢機卿関連なら教会が絡んでいるのは間違いないと踏んでいたが……、物証をおまえが持っていたとはな」
「おかげで僕は異端者だよ」
「違いない。で、そんな物騒なブツを抱えてどうする気だ。邪神崇拝でも始めるのか?」
「そんなことを言いふらしているのは教会だけだ。その前に、こんなもの、見なかったことにした方がいい」
「……何を隠していやがる?」
「今はまだ話せない」
「これでもか?」
ヒュン、とアルガスが僕の首筋に向けて抜刀した。
速い。
こいつも相当、修羅場をくぐってきたということか。
「脅されても無駄だ。これらはいずれ誰の手にも届かないよう、壊すか、誰の手にも渡らない所へ捨てるつもりだからな」
「ふん」
チャッと、かざしていた剣を納刀する。
「おまえが大概、頑固なやつなのは知っているつもりだ。だがディリータはそのことを知っているのか?」
「……知っているはずだ。ある一点を除けば」
「それがおまえが言えない秘密か?」
「そうだ」
「ねえ」と、アルマが僕に話しかけてきた。
「ラムザ兄さんとアルガスさん、そんなに仲が良かったの?」
「馬鹿を言うなよ。こいつとはただの腐れ縁さ」
「アイリ姉さんも、アルガスさんとは仲がいいの?」
「私?」と自分の指で自分を指し示すアイリ。
「私の居所はもう、ベオルブ家じゃなくてサダルファス家だからね……。まあ事情は察してよ」
「今さらだけど、良かったわ。姉さんが路頭に迷っていなくて」
「言ってくれるじゃない。アルマも自分の身を大事にしなさいよ。少なくとも、ベオルブ家はまだ貴女の敵じゃないんだから」
「どうかしら……。少なくとも、私はダイスダーグ兄さんのことがあんまり信じられなくて……」
「ラムザの知っていることを聞いたら、まあそうよね」
言われてか、キョロキョロと辺りを眺め回して、初めて知ったようにアルマが口を開いた。
「ユーリ兄さんはいないの?」
「ユーリ……。ああ、ユーリ、ね……」
そこに、チョコボの足音が聞こえてきた。
かなりの速度だ。
どうやら急ぎの用件らしいが、オーボンヌ修道院にだろうか。
僕らは全員、その方向を見やった。
そこに現れた人物を見て、僕は眼を見開いた。
「ユーリ!?」
チョコボのスピードを緩め、僕らの目の前で止まる。
それを降りる姿は、僕らのよく知るユーリだった。
「久しぶりだな」
不敵な笑みを浮かべて、ユーリが口を開く。
「まさかこんな所で集合するとはな。おまえたちもどうせオレと同じ目的なんだろう?」
……なんなんだ彼は?
以前ゼイレキレの滝で見た時よりも貫禄が……いや、凄みが増している。
いったい彼に何があった?
「ユーリ……、きみは本当に、僕の知るユーリなのか?」
「おまえたち同様、オレもそれなりに修羅場を経験している。自分達だけが特別だと思うなよ。なあ、アイリ?」
それは双子の妹に向ける視線ではなかった。
あるのは、敵と味方か。
それを強く感じさせる視線の応酬だった。
ふたりの間を、風が
その風が、どうしようもないほど彼らの間に埋まらない溝を示しているようで。
僕はふたりのこれからを心配してしまう。
「オレは北天騎士団、アイリとアルガスはゴルターナ軍、ラムザたちは異端者と来た。それがこの場に一堂に会するのだから、相当に切羽詰まった事態なんだろう」
「ユーリは何が目的なんだ? きみがここに来る理由はないはず」
「言う必要があるか?」
けんもほろろだ。
あるいは、彼が来た目的はもしかしたら、想像に耽っただけだけども。
僕らに会いに来たんじゃないか?
何となく、そう思えてしまった。
刹那。
修道院からかすかだが、悲鳴のような声が風に乗って響いてきた。
僕らは思わずそちらに顔を向ける。
「おい、再会を祝うのは結構だが、もう時間はなさそうだぞ」
「間違いない。アイリ、アルガス、行くぞ」
アイリとアルガスを伴って、僕らは修道院へと向かった。
出てくるのは果たして、鬼か蛇か。
side:ユーリ・ベオルブ
まったく、忙しいやつらだ。
特にあのやり取りの間、アイリはほとんどオレと眼を合わせなかった。
オレが一方的に視線を送っていただけだ。
「あの……、ユーリ、兄さん?」
「どうした? アルマ」
「あの後、ユーリ兄さんに何があったの? その……」
ティータの一件以降、か……。
「ティータの命を奪ったのはオレだ」
「……ッ!」
アルマは両手で口元を覆った。
「オレはそれ以来、覚悟を決めた。退路はない。それだけのことだ」
それだけ言って、オレもラムザたちの後を追う。
「ユーリ兄さん……」
背後で、アルマが呟くのが聞こえた。
オレが遅れて修道院の地下に入ってみれば、中は
どこかしこからも血の匂いが漂い、書庫には斬り殺された僧侶の血が飛び散っている跡も見える。
わざわざこんな場所を鉄火場にしたのは果たして、どんな連中か。
「シモン先生!」
倒れ伏す老僧侶――シモン殿の元に駆け寄るラムザとアルマ。
オレはいつでも抜刀できるよう、剣に手を掛けて周囲を見渡す。
他の皆もそのつもりでいる。
「う……、あ、貴女はアルマ様……」
「どうしたんですか先生! いったい何が起こっているんです!?」
「お逃げください……、ヤツら……教会の神殿騎士団が、『ヴァルゴ』を奪いに……」
ラムザがそれに対して。
「『ヴァルゴ』!? アルマが言っていた通りだ……!」
シモン殿がアルマに介抱されながら、ゆるゆると応じ始める。
「貴方は……、アルマ様の兄君の、ラムザ様ですね……。お逃げなさい……これ以上、ヤツらに関わっては……」
「僕は異端者の烙印を押され、ヤツらに追われています。それも僕が持つ聖石のためなんですか!?」
「……グレバドス教会は落ちた権威を取り戻すため、聖石を集めています……。目的は……、ゾディアックブレイブを再結成するため……」
「しかし、聖石は……。いや、あの悪魔の石は」
ラムザの言葉を聞いたアルガスが、ヒュッと口を鳴らした。
「聖石が悪魔の石だって? どういう意味だ、先生さんよ?」
「そこまでは……、私にも分かりかねます」
「使えない爺さんだな」
アイリが人差し指を口元に立てて「しっ!」とアルガスの暴言を黙らせる。
「ラムザ様……。貴方は兄上様とは違う……。もしかしたら、ヤツらの野望を食い止めることが、出来るかもしれない……」
その声を皮切りにするように、さらに地下の方から叫び声が聞こえる。
悲鳴ではない。
「聖石はどこだ!」
「どこかに隠されているはずだ! よく探せ!」
「ここからさらに地下に行けるようだ、行くぞ!」
怒鳴るような声を聞き、ラムザが立ち上がった。
「アルマ、おまえはここに残れ。僕らはヤツらを追う」
「私も一緒に行く!」
「シモン殿をひとり置いていくわけにはいかない。おまえは一緒に隠れているんだ」
言って、ふたつの聖石をアルマに手渡す。
「もしもの時のためにおまえに聖石を渡しておく。僕が戻らなかったら、必ずバグロスの海に捨てるんだ。いいな?」
聖石を手にして、うつむくアルマ。
無念を抱えた様子で、独り言ちるように呟く。
「こんな時に何も出来ないなんて悔しい……。私も、兄さんのように男に生まれたかった」
「馬鹿だな。信頼できる肉親はアルマだけさ」
アルマがラムザへと振り向く。
力強く、頷いた。
「よし、みんな行くぞ!」
地下書庫2階。
さっきまでとは違う
地下1階に比べ、圧倒的に書棚と書物が多い。
「おまえたちはここに残れ! いいな!」
「はっ! イズルード様!」
甲高い声で威勢よく指示を飛ばすリーダー。
多分、ここを襲った神殿騎士団の幹部か。
「で、だ」
「なんだアルガス。オレは今、おまえたちの敵じゃないぞ」
「信じられるか。それよりもおまえ、いったい何のためにここまで来たんだ?」
「こういうことだ」
言って、オレは居残った連中に向けて声を張り上げる。
「我々は聖将軍ザルバッグが誇る北天騎士団! 狼藉者ども、神妙にしろ! 大人しく投降するなら命だけは助けよう!!」
ポカンとした表情でアルガスが黙りこくった。
アイリが呟く。
「ユーリ……、あんた。それを言いにわざわざ来たの?」
「オレはベオルブ家の正義を体現しに来ただけだ。北天騎士団の誇りにかけて、これ以上、無辜の民を傷付けさせはしない」
「……まあ、今はあんたの心意気を買うことにするわ」
その言葉を背に、オレは敵の正面へと舞い降りる。
抜刀した剣をかざした。
「返答やいかに! 黙秘することは許さん! でなければ貴様ら賊徒をこの場で誅罰する!!」
そして、どうやら投降する気は一切ない様子の敵どもがオレたちの正面へと繰り出してきた。
side:アイリ・サダルファス
アルガスもポカンとしているけど、私も双子の兄の威勢を前に唖然とするしかなかった。
こいつは……、こんな鉄火場で名乗りを上げるためだけに来たのか。
だいたい私たちは北天騎士団じゃないっての。
「……どうする? アルガス。このまま北天騎士団のせいにしちゃって私たちだけ帰るって選択肢もあるけど」
「いや、こいつはこれ幸いだ。北天騎士団のせいに出来るなら聖石を手に入れるチャンスがあるってことだ」
「手に入れてどうすんのよ」
「侯爵様か、ゴルターナ公への手土産にするんだよ。出世するにはいい機会だ」
「……やれやれね、うちのご当主様は」
「帰りたければおまえだけでも帰ってもいいんだぞ」
「冗談。このまま北天騎士団のいいようにされてたまるもんですか」
アルガスの頭が極端に鈍っているのを覚える。
地頭はいいってのに、出世のことになると急に視野が狭くなる。
でも、このまま行くと北天騎士団に聖石を奪われる可能性がある。
なにせ相手はあのユーリだ。
あの双子の兄の実力は並の騎士では及ばないほど、錬磨されている。
神殿騎士団とやらの精強さがどれくらいかはわからないけど、多分ユーリには及ばない。
別の意味で信頼できるほど、ユーリの強さは身に染みていた。
と、いうことはだ。
私たちの勝利条件はだいぶ複雑になる。
まず神殿騎士団を残らず殲滅する。
その上でユーリのマウントを取り、その隙に聖石を奪取する。
そして後はランベリー領まで一気に逃げ出す、というところだけど。
「多分、そう上手くはいかないでしょうねぇ」
「なんか言ったか?」
「前途多難、油断大敵って言ったのよ」
「ふん、このオレに限ってそんなヘマおかすかよ」
息巻くアルガスだけど、やはりそう上手くはいかないだろう。
予想以上に敵の防衛線が薄すぎる。
きっと後詰が来ることは間違いない。
とにかく、速攻だ。
ユーリが敵の相手をしてくれるならちょうどいい。
この場はラムザとユーリに任せて、私たちは先にさらに地下へと行かせてもらうとしよう。
ちょっとラムザを裏切るようで気が向かないけど、そうするしかないと思った。
side:ユーリ・ベオルブ
アイリとアルガスは先にさらに地下へと潜ったか。
ラムザたちと共に神殿騎士団の先遣隊を殲滅したオレは内心、ほくそ笑んだ。
ちょうどいいチャンスが巡ってきた。
オレは此度の戦争――白獅子ラーグ公と黒獅子ゴルターナ公が王家の後継者を巡る内乱、いわく「獅子戦争」の裏で動く何者か。
それについても調べていた。
おそらくはラーグ公――いや、ダイスダーグ卿もそれについては察してはいただろうし、それはゴルターナ公側も同じだろう。
エルムドア侯爵は
それらが聖石を。
すなわち、聖石をかすめ取っている異端者ラムザを中心に巡り、教会はマウントを取ろうとしている。
それらが複雑に絡み合った結果、教会は強硬な行動に出た。
つまり、今回の「ヴァルゴ」を強奪し、ひとつでも早く聖石を確保して教会の権威を取り戻すこと。
教会が従来の権威を取り戻せば、ラーグ公もゴルターナ公も、その権威にひれ伏せざるを得ない。
でなければ教会を敵に回して、さらに内乱が泥沼化することになる。
そんなことは誰も喜びはすまい。
ならオレはどうするか。
答えは決まっている。
"ベオルブ家の正義"に従い、この戦争の勝利をラーグ公、ひいてはベオルブ家に捧げる。
ならばなおさら、ここで下手を打つマネは出来ない。
ザルバッグ将軍からオレが後方支援に当てられたのも、ダイスダーグ卿の指示だろう。
だからこそ、オレはここにいられるし、この任の成功を期待されている。
さて、ダイスダーグ卿が何を考えているか。
それはもはや明白だ。
正義を成す。
そのためには手段を選ばない。
戦争の着地点が見えているのは、オレとダイスダーグ卿だけだ。
そう確信していた。