【急募】FFTを1ミリも知らないオレたちを誰か助けてくれ   作:12club

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イヴァリースの強者

side:ユーリ・ベオルブ

 

 オレはザルバッグ将軍からの命を受けて、ランベリー領を中心に戦争の前線を維持している敵騎士団の討滅へと向かった。

 前線に着いたオレはそこの部隊の隊長と顔を合わせる。

 

「ユーリ・ベオルブだ。貴方がこの部隊の部隊長か?」

「はっ! 北天騎士団第52部隊の長を務めております」

「自己紹介はいらない。簡潔に用件を述べる。……来てくれ」

 

 オレに伴って、背後から騎士がひとり前へ出る。

 

「私の騎士団からひとり、そちらの部隊に出向させる。私の副官のひとりだ。これからは彼を通して自分と連絡を取り合って欲しい」

「承知しましたが、ユーリ将軍は前線に出られないので?」

 

 オレを庶子だと侮っての不敬かと思われるかの発言に聞こえたが、多分それはオレの来歴から来る被害妄想だろう。

 彼は純粋に疑問に思ったことを口にしただけだ。

 

「敵騎士団はゲリラ戦が得意と聞く。これからここと同様に、自分への連絡役となる騎士を各前線に配置する。戦線を把握する眼を増やすことで、敵の動きに対処する」

「お言葉ですが将軍。敵の部隊の動きようは大胆にして緻密。多少の小細工を弄する程度では勝利を得るどころか、決定的な決着を見ることなく、翻弄されるだけに終わるかと」

 

 これもまた不敬かと思われたが、それは違うとオレは断ずる。

 彼らにも自負があるのだ。

 自分たちが、かの敵と相対してきて戦線を維持していたという誇りが。

 

 それが自分たちの首を絞めていることと気付かずに。

 

「諸君らの健闘には我々も及第点を与えているつもりだ。意見を(ないがし)ろにするつもりなど一切ない。むしろ我々が知らないこと、勘違いしている点があれば大いに所見を聞かせて欲しい」

「はっ! ご期待に応えます!」

 

 敬礼して、その部隊長は応える。

 オレはひとつ頷き、その前線を後にした。

 

 

 

 今回の敵、飛燕騎士団が厄介なのは、その眼だ。

 分析するに、個々の戦術に極めて優れた点は見られない。

 

 ただひたすらに、視座が高い。

 戦場全体を大きく俯瞰するその眼が、戦場を支配し、定石通りの戦術、戦略を大きく覆す。

 

 大胆にして緻密、とはよく言ったものだ。

 まったくその通りだと思った。

 

 だからオレは前線をランベリー領のみに留めておく愚は避けた。

 敵がランベリー領から前線を俯瞰するというのなら、こちらは眼を増やすだけだ。

 ランベリーだけではない。

 ベスラ、ベルベニア、ゼルテニア。

 あらゆる視点からの眼を増やし、相手に見通せないだけの前線を増大させる。

 

 後は絞め付けるのみだ。

 

 敵がこちらの視点に固執し、視点が届かない前線から順々に、真綿で首を締めるようにじわじわと攻め立てる。

 

 ゲリラ戦に対する処方として編み出したのが、この作戦だ。

 幸いにも敵は決戦を避けている。

 もしこの策が上手くいかなければ、また別の策を考えればいい。

 

 

 

 オレはチョコボを走らせ、次の前線へと向かう。

 

 まずはベルベニアだ。

 最終的にはオレがベスラから、各戦線に指示を出して開戦する。

 

 その予定につまずいたのが、自治都市ベルベニアに到着した時だった。

 

「なんだ……?」

 

 都市内の様子がおかしい。

 

 気が張り詰めている。

 

 ざわざわと。

 何かがざわめいている気配を感じた。

 

 町中に入ってその正体はすぐに知れた。

 

 黄金の鎧にパーソナルカラーの直垂。

 僧衣にも似たフードで頭部を覆うその格好は。

 

「神殿騎士団か……。何故こんな所に?」

 

 チョコボを降り、それを引きながらオレは彼女――神殿騎士の部隊長らしき女に声をかけた。

 

「自分はユーリ・ベオルブ! 貴女たちは何者だ! 町中での戦闘は禁止されているぞ!」

 

 オレの存在に気付いた女騎士が、こちらに視線を向けた。

 表情を見るまでもなく分かる。

 

 あれは怒りに燃えた眼だ。

 

「ベオルブですって? ならばおまえはラムザの縁故か……もしくはザルバッグかダイスダーグの小間使いか!?」

「どちらかと言えばザルバッグ聖将軍の手の者だが、貴方の用件はラムザか?」

「おまえの知ったことではない! 用がなくば、疾く立ち去れ!」

 

 どうやら話し合いに応ずるつもりはないらしい。

 それに、ラムザに用件があるらしいことも図星のようだ。

 

「こちらは名乗ったぞ! そちらもまた名と身分を明かすのが騎士の礼儀ではないか!」

 

 言われて、彼女は一瞬だけ眼を逸らした。

 侮っている。

 そう感じた。

 

「私はメリアドール・ティンジェル! ラムザに弟を殺された神殿騎士よ! 此度は教皇猊下の命ではなく、彼の仇を討つためにここに立っている!」

 

 ラムザが彼女の弟を?

 

 とかく要領を得ない内容だったが、いったいこの女は何を根拠に言っているんだ?

 

「何かの間違いではないか? 自分は彼と共にしばらくあったが、そのような事実は存じ得ぬ」

「間違いですって? シラを切るつもり!?」

 

 メリアドールが怒声で返す。

 

「イズルードは、リオファネス城でラムザに殺された私の実弟! おまえもラムザと共にいたなら、その詳細を知っているはずでしょう!」

「確かにリオファネス城がかつてない大惨事を迎えたことは知っている。だがそれがラムザによってもたらされたというのはあまりに常識を外れた認識だろう!」

「おまえは何か知っているわね……! ラムザの前に、まずはおまえから事情を聞くとしましょうか!」

 

 ……やれやれ。

 なんでこうなるかね。

 

 ともかく、コイツの相手をしなければベルベニアの前線に辿り着くことは難しそうだ。

 

「いいだろう。ただし、町中での軍隊同士の戦闘は禁じられている。一対一での戦いなら応じよう!」

「望むところよ!」

 

 メリアドールがオレの前へと降り立つ。

 

 互いに、剣を抜いた。

 

 

 

 戦闘開始直後、オレは後方へとたたらを踏んだ。

 メリアドールの踏み込みが予想以上に速い。

 

 そして振りかぶってからの振り下ろし。

 

 ガギン、と金属が金属を叩く音が響く。

 

 重い。

 まるで剣ではなく、巨大な鈍器で殴られているかのような衝撃だ。

 このまま剣を合わせていては刃がひしゃげ、最後には叩き折られるのがオチだろう。

 

 剣を下げ、さらに後方へと退く。

 

 追撃してきたメリアドールの剣が振り下ろされる。

 

 その勢いを殺しつつ、オレは鍔迫り合いへと持ち込んだ。

 

「……弟はこの腐りきったイヴァリースを救おうと、本気で考えていた!」

「言い分があるなら聞いてやるが?」

「この戦争は無辜の民草を根絶やしにせんと、そうとすら思える権力者の豚どもの争い! それを私たち神殿騎士団、ひいてはグレバドス教会が正すために立ち上がった! それを無惨にも異端者の手に掛かって死んだ弟の無念、おまえに分かるか!?」

「権力者同士の争いが、民たちを苦しめている。オレもそれはよく理解している。その上でオレはザルバッグ将軍に従っている!」

「やはりおまえも権力者の走狗(そうく)か!」

「冷静になれ、神殿騎士メリアドール! まずはこの争いを終わらせることが先決! その上でこのイヴァリースを強き方向へと導く指導者が必要だ!」

「それを私たち、教会が成そうとしている! ラーグ公やゴルターナ公、それらに従う蒙昧(もうまい)な畜生たちにこのイヴァリースは任せられない!」

「教会が成せると、本気で思っているのか? おまえにはこの戦いを裏から操ろうとしている黒幕の姿も見えないのか?」

「何を言っている!?」

 

 ギシリ、と競り合う剣に重みが増す。

 言葉とは裏腹に、メリアドールが揺らいでいるのが見て取れた。

 

「ラーグ公もゴルターナ公も、この戦いすらも誰かに利用されている。その誰かとはグレバドス教会の教皇、その人だ!」

「馬鹿な! なぜ私たちがそんなことをしなければいけない!?」

「戦いに次ぐ戦い、それに疲弊する民たち、そしてその責を負うべき国家。今まさに全てを決さんと両軍総攻撃の準備が始まっている」

 

 メリアドールの剣を弾き、間合いを広げる。

 これ以上コイツに付き合っている暇はない。

 

「そうして流された多大な流血を以て教会が争いを調停する。築かれるのは王家を傀儡とした教会主権国家。教皇の真の狙いはそれだ!」

「私たちが築くのは民たちが安心して暮らせる理想郷、すなわち神の国! 凡愚(ぼんぐ)どもにそれが分かってなるものか!」

「ならば従えメリアドール! 我ら北天騎士団――いや、ベオルブ家に!」

 

 オレは剣を下ろし、片手を差し出す。

 

「ベオルブ家こそがこのイヴァリースを救い、舵を取る真の強者だ! 血に濡れた結末を求めるのであれば、真に強き者に従うのが道理であるはず! なればこそ、教会よりベオルブ家の方が相応しい!」

「黙れ! 黙して聞いていれば、この畜生風情が!」

「もはや語る言葉さえ持たないか。覚えておくがいい、メリアドール! この戦いの後に、真にイヴァリースを導く者が誰であるのかを!」

 

 傍に駆けさせたチョコボに乗り付け、その場から駆けていく。

 タイマンに持ち込んだ甲斐があった。

 もはやヤツも追ってはこれまい。

 

「待て! ユーリ・ベオルブ!! 教会に対する侮蔑、撤回しろ!!」

 

 メリアドールの台詞を尻目に、オレはベルベニアの町を後にした。

 

 

 

 

 

side:アイリ・サダルファス

 

 私は相も変わらず戦線を見渡せる高台へと上って、周囲の状況を見回していた。

 ランベリー領の前線に動きが見える。

 攻撃的な気配はない。

 となれば、その前段階の準備といったところか。

 

「……ユーリが動いたわね」

「はい?」

 

 私の言葉に、隣に(はべ)る少女兵士が聞き返す。

 

「アイツは騎士としては上出来とも言うべき司令官よ。かつてはダイスダーグさんと裏の仕事も請け負ったことのある、清濁併せ吞んだヤツ。用兵家としての才覚は分からないけど、ひたすら合理的に歩を進めるのが得意で、何が最善なのかを即断できる。それがユーリ」

「あ、いえ。私が聞きたいのはそう言うことではなく」

「え?」

 

 私は間の抜けた声を上げて、隣の少女を見やった。

 

「えーと、そのユーリっていう人のプロフィールは知らないんですけど。アイリ副官、敵なのにご存じなんですね」

「……まあ、確かにそうね」

 

 バツの悪い顔を見られるのが嫌で、私はそっぽを向いて頬を掻く。

 しかしさらに続けて聞いてくる。

 

「副官にとって何か特別な人なんですか? 例えば、かつての恋人同士とか」

「いや違うし。……黙ってるつもりはなかったんだけど、私の双子のきょうだいなのよ」

「え? きょうだいなのに敵同士なんですか?」

「いろいろ事情があるのよ。大人には」

「はあ」

 

 と。

 

 不意にジャリ、と砂を踏む音が聞こえた。

 私たちはふたりして、そちらの方へ見やると。

 

「サ、サダルファス卿!」

「おう」

 

 少女の声は無視して、私に視線を向けるサダルファス卿――アルガス。

 男爵になってから、やけに目立つ赤い毛皮のマントを身に付けるようになったのはこいつの見栄え意識だろう。

 まあ馬子(まご)にも衣裳(いしょう)という格言通り、見た目だけならそれなりの貴族っぽく見えるのが利点か。

 

「来てくれたわね、アルガス」

「あのな……。部下の手前、馴れ馴れしい口の利き方をしないよう努めることは出来んのか、おまえは」

「はいはいサダルファス卿。ご来訪どーもありがとうございまーす」

「どんな挨拶だ。……まあいい。オレをわざわざ呼んで、どういうつもりだ?」

「ここがどんな場所かわかる?」

 

 言って、私は一歩その場から退いた。

 アルガスがそれに従うように、私が立っていた場所に立って辺りを見回す。

 

「……おまえが最初に所望した、ランベリー領の進軍経路を一望できる高台だろ。それがどうした?」

「戦線が動くわ」

 

 それを聞いて、相変わらず仏頂面のアルガスがそのまま返す。

 

「……次の動きは?」

「わからない。だけどこっちの利点を潰そうとしているのが見える」

「おまえの望みは何だ?」

「一個大隊を貸してちょうだい」

 

 ぴくりと、アルガスの眉が動いた。

 不機嫌そうな目線で私を見やる。

 

「……おまえ、それにどれだけの出費が伴うか分かっているのか?」

「戦争に勝つためよ。用が済んだらすぐに返すから」

「未だにロクな戦果をあげられてないだろ。おまえは」

「そうでもないわよ? 少なくともお偉いさんには、雷神シドが南天騎士団の"矛"なら、私たちはその"盾"だって言う人もいるくらいなんだから」

「……それを含めて"飛燕騎士団"、か」

 

 はあ、と一息ついて、アルガスは。

 

「なあ、なんでオレの騎士団が"飛燕"なんて呼ばれているか知っているか?」

「空を飛ぶ燕のごとく敵を翻弄するから、じゃないの?」

「気紛れな燕みたいに空を飛び回って遊んでいるからだ、っていうもっぱらの噂だ。オレはそっちを信じる」

「神経質ねえ。所詮、噂なんだから聞いてて楽しい噂の方を聞いてた方がマシでしょ」

「ああ、そうかもしれん。そうかもな」

 

 鬱陶しげに手を振った。

 

 本題に戻そう。

 

「で、どう? サダルファス卿」

「いいだろう、兵は出してやる。目的だけ教えろ」

「ここよりもさらに高い場所に本陣を置きたいの。兵隊はその草取り活動ね。あの辺りは特に山賊とかが多いから」

「ゲルミナス山岳か。確かにあそこからなら、ランベリー領だけじゃなくゼルテニア地方一帯を一望できるからな」

「でしょ」

「ああ、だが」

「何のためにそんなことをするか」

「……そうだ」

「多分、ユーリが動く」

 

 アルガスが眉をひそめた。

 眉間にしわが寄る。

 

「おまえがアイツに負けるサマが見えないが」

「そのための布石よ。やるからには勝つわ」

「承知した」

 

 ばさっと、アルガスは大きく手を振ってマントをはためかせた。

 

「副官アイリに命じる。敵軍の動きをさらに牽制し、見事、北天騎士団を打ち負かしてみせよ」

「かしこまりました、サダルファス卿」

 

 言って。

 私とアルガスはふたりして、含み笑いをして。

 声高く笑い合った。

 

 アルガスが去っていく。

 

「なーんか、副官とサダルファス卿って仲がいいですよね」

「なんだかんだで数年来の友達だから」

「えー。実は恋人同士とか、そーいう昵懇(じっこん)の仲じゃないんですかー?」

「ばーか」

 

 私は少女兵士にデコピンをくれてやった。

 

 

 

 後で知ったけど、どうやらユーリはゼルテニア領全域をひた走っているようだ。

 これもアイツの布石か何かか?

 その正体はわからない。

 

 だけど、それとは別に気になることがある。

 

 ラムザたちの動き。

 それと連動するように。

 

 神殿騎士団、そしてディリータが動いている。

 

 私はユーリの企みとは別の、何と言うか。

 うなじを芋虫が這っているかのような、得体の知れない情勢の動きを感じ取っていた。

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