【急募】FFTを1ミリも知らないオレたちを誰か助けてくれ   作:12club

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アルガスとの出会い

side:ディリータ・ハイラル

 

 魔法都市ガリランドから成都イグーロスへは近いようで遠い。

 というのも、距離間はそれほどではないが、野生のモンスターが数多くひそむマンダリア平原を越えなければならないからだ。

 特にチョコボやゴブリンの群れは、徒党を組めば一個小隊の戦力に匹敵することさえある。

 幸い、そんな群れに発展するほど知恵が回るモンスターでないのが救いなのだが、油断しないに越したことはない。

 さて、オレたちはというと、そういった幸運には恵まれたようで。

 

「状況は?」

「周囲に敵影はなし。順調に行けばそろそろ平原の出口を越えられそうだ」

「そうか、ありがとう」

 

 我らが大将ラムザ・ベオルブはオレの報告を受けて、休憩は挟まずこのままイグーロスまで移動することにした。

 取り立てて危険な旅でもない。

 イグーロスに着けば、何かしらの任務を言い渡されるだろうが、それまでの間くらい士官候補生たちの心を安んじさせるのもまた、大将の務めだろう。

 

 しかし。

 

「……アイリの様子は?」

「問題ない、とは言いがたいな」

「無理もない、か……気丈に振る舞ってはいるけど、心根は優しい女の子なんだし」

「一応、戦場ではビビったら負けだとは言い含めてはおいたけどな。今はユーリが付き添っている」

「彼女もベオルブ家の一員なんだ。それが戦勲なしというのは、あまり兄さんたちに報告したくないな」

「同感だが、こればっかりは本人の問題だ。何かきっかけみたいなものがあればいいんだが」

「うん……。おや?」

 

 ラムザが妙な声を上げた。

 視線を追えば、ひとりの士官候補生が駆け寄ってくるのが見える。

 

「どうした?」

「報告です。この先に骸旅団と思われる盗賊の群れを確認しました」

「戦闘は避けがたいか?」

「進軍路で野営しています。隠れて通り抜けるのは難しいでしょう」

「わかった。そのまま監視を続けてくれ」

 

 と、そのまま報告を聞き終えようとしたが。

 

「それが……」

「何かあったのか?」

 

 斥候があまり言いにくそうな表情で、付け足す。

 

「盗賊の中に、ひとり若い騎士を見ました。捕虜とは思えませんので、決断を急がれた方が良いかと……」

「そうか。きみは本隊に戻ってくれ」

「はっ」

 

 斥候役の士官候補生の姿が見えなくなったところで、オレはラムザに確認する。

 まあ、普段通りのこいつなら大体答えは分かっているんだが。

 

「どうする?」

「助けに行こう。北天騎士団の名誉に傷を付けてはならない。すぐに進発する」

「了解だ」

 

 やはり普段通りのラムザだった。

 とりあえず、厄介事が増えたというか、はたまた武勲を立てる機会を得たか、といったところだが。

 

「アイリ……あいつはどうしたらいいんだろうな」

「ディリータ?」

「なんでもない。行こうぜ」

 

 なるようにしかならないだろう。

 親友を(おもんばか)るばかりで、自分の事を疎かにするわけにはいかない。

 ただ、出来ることなら助けてやりたい、とは思わなくもないのだが。

 

 

 

 

 

side:ユーリ

 

「平気か? アイリ」

 

 オレの呼び掛けに、俯いていたアイリが顔を上げた。

 初陣での疲れが抜け切れていないのか、冴えない表情だ。

 

「ああ、ユーリか」

「大丈夫、とは言い難そうだな」

「まあ、ね。せっかくの初陣だったのに、ディリータにおんぶにだっこで、武勲のひとつも立てられなかったし」

「適材適所みたいなもんだろう。望むなら、後方支援に配置転換を志願することもひとつの手じゃないか? ラムザだって兵站の重要性は理解してくれるだろうから」

「ゴメン。でもまだ、この剣は握っておきたいんだ」

 

 言いながら、鞘に納められた剣を胸元に掲げた。

 

「ユーリみたいに、この剣で何かを守れるんじゃないかって」

「おまえがそう言うなら止めはしないが……無理はするんじゃないぞ」

「平気だよ。心配かけてごめんね、ユーリ」

 

 それきり、しばらく沈黙する。

 口を開いたのは、アイリの方だった。

 

「ねえユーリ」

「なんだ?」

「初めて人を斬った時、何か感じた?」

「そう、だな……」

 

 顎に手をやって、しばし沈思黙考する。

 

「あいつらは敵だ、民衆に危害を加える危ない連中だ、ってそう思ったな」

「私も、盗賊を見たときはそう思ってた」

「何かあったのか?」

「ディリータに言われたんだ。戦場ではビビった方が負けだって。深呼吸したら、視界が澄んで見えた。でも、なんて言ったらいいか……」

「アイリ?」

 

 そう言うアイリは、どこか遠くを眺めている気がした。

 

「助かった、って思ったよ。ディリータが来てくれて。あいつとなら、一緒に戦えるんだって」

「それで消極的になっちゃったってわけだ」

「人を殺す覚悟も()えたけどね」

「そいつはディリータが悪いな」

「でも、もしかしたらディリータがいなかったら、私も死んでたかもしれないし」

「ああ、別にディリータを責めたいわけじゃないぞオレは」

「おかしなユーリ」

 

 クスクスと、()んでみせるアイリ。

 重症だな、これは。

 と。

 

「報告!」

 

 斥候がオレたちに向かって声を上げた。

 っていうか、いつの間に来てたんだ。

 

「何があった?」

「平原の出口で盗賊が野営していた。ラムザたち級長らはこれを撃退する考えで、前線は既に敵と交戦しているらしい。あんたらも準備を頼む!」

「了解だ。ありがとう」

「なんの。じゃあ他の連中にも伝えなきゃいけないから、これで!」

 

 言って、斥候はさっさと引き上げていった。斥候が末端まで連絡を付ける頃には、戦闘は終わっているだろうが。

 

「立てるか、アイリ?」

「問題ないよ。行こう」

「無理はするなよ」

「平気。じゃあ先に行ってるね」

 

 それだけ言って、アイリは平原の出口へと向かっていった。

 

「アイリ……」

 

 不安を抱えたまま、オレはあいつを見送るだけだった。

 

 

 

 

 

side:アイリ

 

 そうだ。

 あいつらは盗賊だから倒すんじゃない。

 私たちを憎む、敵だから倒すんだ。

 ビビったら負けだ。

 気迫で圧し負けてどうする。

 

 でも。

 

「やっぱりちょっと怖いな……」

 

 独り()ちて、ブンブンと頭を横に振る。

 

 前線に着いた、と気が付いたのは、そこでは既に戦闘が始まっていたからだ。

 盗賊を追い立てているのは、やはりラムザとディリータだった。

 遠くから見ていても分かる。

 勇敢で、目端も利く。

 戦うために生まれた男児というのは、かくも勇ましいものなのか。

 それに比べて私は……。

 

 ふと、周囲を見回してみれば、見慣れない若い騎士の姿が見えた。

 兵装からして、骸旅団の一味とは思えない。

 

 助けなきゃ……!

 

 その騎士の元へ向かって走る。

 途端。

 騎士へと接近していく盗賊の姿が見えた。

 

「危ない!」

 

 騎士が私の声に応えるように、向き直る。

 盗賊の接近に気が付いたようだけど、逃げるにはもう遅い。

 せめて、私が彼の盾に……!

 

 フッと、腕が動いた。

 スローモーションのように私の、敵の動きが流れて見える。

 

 私の叫びに気が付く、敵。

 思わず足を止めている。

 

 剣を抜く私。

 

 ぎょっとしたような表情になる、敵。

 

 吸い込まれるように、敵の胸板を、私の剣が貫く。

 

 流れるような動きが終わった時、私は騎士の盾になって、なおかつ迫る盗賊を刺し貫いていた。

 どう、と盗賊がその場に倒れ伏す。

 

 ぜえぜえと息をつく。

 騎士を見やると、彼は呆然とした表情で私を見ていた。

 

「……大丈夫?」

 

 私自身が全然、大丈夫じゃなさそうな声音で、騎士に尋ねる。

 

「あ、ああ。悪い、助かった」

 

 その若い騎士はそれだけ言って、少し後ずさった。

 ……?

 なんで彼は、私を(いぶか)しむように見ていたのだろうか。

 

 戦いは、いつの間にか盗賊の全滅という形で終わっていた。

 

 

 

 

 

side:ユーリ

 

 戦闘が終わり、本隊が撤収準備を整えている頃。

 オレとアイリ、ラムザ、ディリータらは盗賊に囲まれていた若い騎士と面会していた。

 

「オレの名はアルガス。ランベリー近衛騎士団の騎士……だ」

「騎士……?」

 

 怪訝(けげん)な表情で、ディリータが呟く。

 アルガスと名乗った騎士は、渋々ながらといった風情で付け足す。

 

「……いや、騎士見習いさ。何だよ、士官候補生なんだろ。おまえたちだって一緒じゃねえか」

「すまない。失言だった」

「……まあ構わねえよ」

 

 素直にディリータは謝罪した。

 オレは騎士見習い――アルガスがこんな所で何をしていたのか気になって。

 

「あんたはなんでここに? しかも盗賊どもに襲われていたんだ?」

 

 アルガスが俯く。

 歯噛みしながら、それに応えた。

 

「……侯爵様をイグーロスに送る途中、骸旅団の精鋭に襲われた。おかげで部隊は全滅、侯爵様も奴らに……」

 

 その言葉に、アイリはぎょっとした表情で。

 

「ちょっと、それって大問題じゃないの! 侯爵様って、エルムドア侯爵のことでしょ? まさか侯爵様まで犠牲に!?」

「おまえは……確か、オレを助けてくれた女か。落ち着いて聞いてくれ」

 

 アルガスがアイリを(たしな)めるように肩をすくめた。

 

「部隊はオレを残して全員討ち死にしちまった。だけど侯爵様だけは奴らに連れ去られたんだ。今も行方が知れない」

 

 そこまで言って、今度はアルガスが怪訝な表情で。

 

「ところでおまえらは? こっちは名乗ったのに、名乗り返さないのは礼を失しているんじゃねえのかよ」

「ああ、すまない。そんなつもりはなかったんだが」

 

 アルガスの言う通り、確かに礼儀知らずだった。

 

「オレはユーリ。こっちの娘は双子のアイリ。で、そっちがラムザとディリータだ」

「ラムザ・ベオルブだ。よろしくアルガス」

 

 ラムザは名乗ると同時、アルガスに向けて手を差し出す。

 握手のつもりだったのだろうが、アルガスの反応は眼に見えて豹変した。

 

「ベオルブって……あのベオルブ家か!? 北天騎士団の団長ザルバッグ将軍の!?」

「あ、ああ」

 

 アルガスが、差し出されたラムザの手を両手でぐっと握りしめる。

 

「お願いだ! 北天騎士団の力を貸してくれ! 何としてでも侯爵様を助けないと、オレは……!!」

「どういう意味だ?」

 

 ディリータの言葉に、アルガスは口角泡を飛ばして続ける。

 

「言った通りだ! 連れ去られた侯爵様を助けるために力を貸してほしい! 頼む!」

「まあ落ち着けよ、アルガス」

 

 どうどうと、焦りのあまり叫び散らすアルガスをなだめて、ディリータは。

 

「エルムドア侯爵は連れ去られたんだろう? なら何かしら、骸旅団の方にも狙いがあるはずだ。例えば……、身代金目当てだとか」

「奴らがそんなタマかよ! 急がないと侯爵様の身に危険が……!」

「だから落ち着けって。なあラムザ?」

 

 ディリータは、相変わらずアルガスに手を握られているラムザに水を向けた。

 たじたじになっていたラムザが頷く。

 

「ディリータの言う通りだよ。エルムドア侯爵が誘拐されたんだ。きっとイグーロスでも大騒ぎになっているよ」

「今は何より、イグーロス城へ報告するのが先決だ」

 

 ディリータがオレとアイリに目配せした。

 

「ユーリもアイリも、それでいいよな?」

 

 オレは頷いて。

 

「アルガスには悪いが、オレたち士官候補生がどうこう出来る案件じゃない。ディリータの言う通りだよ」

 

 続いて、アイリも。

 

「ユーリと同じく、だね。きっとベオルブ家の家長ダイスダーグさんやザルバッグさんが何とかしてくれるよ」

 

 そこまで言われて、アルガスはようやく冷静さを取り戻したようだ。

 掴んでいたラムザの手から両手を離す。

 

「わかった、そうしよう。……それと」

 

 アルガスがアイリに視線を向けた。

 

「ん、なに?」

「さっきは礼も言わずに悪かったな。助けてくれてありがとよ」

「あ、うん……。たまたま運が良かっただけだよ。私も、助けられてホッとしたわ」

 

 そうしてアルガスという新たな仲間を加えて、オレたち士官候補生はイグーロスへ進むことになった。

 撤収準備はもう終わっている頃だろう。

 

 騎士見習いアルガス。

 何かと直情的だが、悪いやつじゃなさそうだ。

 ベオルブ家がどう出るかはともかく、オレはこいつの力になってやりたい。

 

 とまれ、まずはベオルブ家に報告だ。

 エルムドア侯爵の身は心配だし、何よりアルガスを助けることに繋がるからな。

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