魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

10 / 53
まさかの毎日投稿です(大嘘)
元々ロード戦の展開が書きたくて続けた二次創作だったので、性欲が如く我慢ができませんでした。
今日はまほあこコラボカフェにいってきます!
何度でもいいますが推しはアズールです!←


第10話『星を墜とす日』

心臓が早鐘を打つ。

ちゃんと、LIMEに返事は来てたし...。

 

「き、来てくれるかな...。」

 

やっぱり不安だ。

急に嫌になったとか、あり得るかも。

既読付いてから返事が来るまで、2時間くらいかかったし...。

 

「こんにちは、柊さん。」

「!...あ...こ、こんにちは...水神、さん...。」

 

気付けば待ち合わせピッタリの時間。

来てくれた嬉しさと、距離を感じる呼び方への悲しみ。

その強い感情の波に流されないよう、精一杯お腹に力を入れる。

 

「話したいことって、何かしら。」

「あ、あの...その...。」

 

勇気を出せ。

言いたいことを言わなきゃ。

薫子ちゃんとはるかちゃんが、あんなにアドバイスをくれたんだ。

ガンバれ、うてな...!

 

「す、捨てないで...っ!!」

「...へ?」

「あ。」

 

あはー!?ま、間違えたぁぁーーー!?!?

修羅場のカップルみたいな台詞が出てしまったぁぁーーー!?

冷たい雰囲気だった小夜さんの表情が今や困惑の色で埋め尽くされてるぅぅーっ!!

 

「ま、まま間違えましたっ!?すて、捨てないでとかじゃなくて...!まあ意味合いはそんなに違くないと言いますか...っ!本心ではあると言いますか...っ!///」

「...。」

 

勢い余って余計なことまで言い出すわたし。

小夜さんはそんな様子を見て、一度溜め息を吐いた後。

 

「これ、あげるわ。」

「へ?」

 

見慣れた銀色ビニールで包装された、魔法少女展の缶バッジを差し出した。

 

「これ、は...。」

「あなたが欲しいって言ってたの、当たったから。」

「覚えてて、くれたんですか...?」

 

気まずそうに目線を逸らし、少し頬を染めながら小夜さんは答える。

 

「元からあなたにあげる為に買ったのっ。

いらないから、あげるわよ...///」

「!...えへへ...///」

 

そのクールに見えて、実は優しいお母さんみたいな雰囲気は、わたしのよく知る小夜さんのままで。

気にしてたのはわたしだけじゃないって。

そう分かった。

 

「ぁ...あ、ありがとうっ!小夜ちゃ」

 

『キャアアァァッッ!?』

 

「っ!?」

 

仲直りできるかもと期待して、お礼を言おうしたその時。

耳をつんざく悲鳴が何重にも重なった。

 

「な、なにっ!?」

「見なさいうてな!魔物がっ!」

 

どろどろとしたスライムのような黒い魔物。

それが無限に思える程の群れを成して、突如として街に現れた。

逃げ惑う人々。壊される街並み。

すぐに変身しようとするけど。

 

「さ、さよちゃんミツケタ~...。グーゼンだね~これは、うんめ~?」

「...。」

 

めちゃくちゃに目が泳いでるキウィちゃんと、『偶然なわけないだろもっと上手くやれ』と言いたげな目のこりすちゃんがやって来た。

 

「キウィ、こりす!?ちょうどいいところに、真珠たちに連絡しっ」

「...?」

「...連絡してカラオケに行きましょうか!歌いたい気分なのよねー!?」

「え、なにライブ?天才的ゲロヤバアイドルキタコレ?」

「クイクイ...。」

 

わたしの顔を見た途端、カラオケの話を始める小夜ちゃん。

え、こんな状況でカラオケ行くの...?

こりすちゃん、何かすごく『アホかこいつら』みたいな顔してるけど...。

 

「ウチらもなんやたこ焼き食べに行きたなったなぁ!?」

「薫子ちゃんっ!?」

「そうそう!踊り食いしたい気分だよねー!?」

「はるかちゃんっ!?」

 

左右からガシッと腕を掴まれた。

何でここに!?と言う間もなく、それぞれズルズルと引き摺られるわたしと小夜ちゃん。

裏路地に入り、周りに誰もいないことを確認する。

 

「二人ともどうして...?」

「たまたまやたまたま...。」

「うてなちゃんが心配で様子を」

「話しとる場合かっ!///」

 

色々と色々な方向に言いたいことはあるけど、今はわたしたち魔法少女の責務を果たさなくては...!

三人揃ってハートを天に掲げる。

 

『『『変身(トランスマジア)っ!』』』

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ロードとかいうヤツ、タイミング悪すぎ~。せっかくさよちゃんが仲直りできそうだったのに~。」

「コクリ。」

「あなたたち、見てたのね...///」

 

心配してくれたのは嬉しいが、保護者同伴のようでちょっと恥ずかしい。

 

ほのぼのとした思考を切り替え、今のこの状況がロードとの決戦前に()()()()()()ことに思い至る。

いよいよ、決着の時が来たのだ。

 

「行くわよキウィ、こりす!今日であの傲慢なお星様を地に叩き墜とすわっ!」

「上等っ!」

「コクリ!」

 

決意を込め、手に持つ星を天高く掲げる。

 

『『『変、身(トランスマジア)...!』』』

 

――――――――――――――――――――――――――

 

『ヴォワ・フォルテっ!!』

 

一声で数体の魔物を吹き飛ばすロコムジカ。

だが魔物は数を減らすどころか、更に勢力を拡大していく。

 

「ダメだロコ!繋がらねェ!たぶんアタシらと一緒で戦ってんだとは思うが...!」

「寝てたら絶対許さないわよ!?もう!せっかく新しいアイドル水着を買いに来たのにぃ!」

 

買い物と称して初?デートをしていた真珠とネモ。

小夜たちと同じく、自分たちはトラブルに巻き込まれた側だと思っていたのだが。

真実は()()()()()()

 

「ロコっ!危ねェっ!?」

「きゃあっ!?」

 

スライムとは違う、純粋な魔力の刃。

ルベルが気付いたことで辛くも避けることは出来たが。

 

「大丈夫か?ロコ...。」

「へ、平気よ!別に助けてくれなくたって...///」

「!?......あれ、は...っ」

「ってルベル?聞いてんの?さっきから何み、て...。」

 

頭上。

ビルの屋上から見下ろす、威圧の眼光。

其れに付き従う女は自らを巨大化し、主を憐れな裏切り者たちの面前に近付ける。

 

「ロード、さま...っ。」

「久しいな。ロコムジカ。ルベルブルーメ。暇を与えたつもりはないが、随分と楽しんでいたようだな。」

「...っ!?」

 

ロコもルベルも、ロードに不満を持ったことはなかった。

何を考えているかは分からないが、能力はちゃんと評価してくれるし。

力も与えてくれた。

何より、絶対的な支配者としての"カリスマ"が彼女にはあった。

それに純粋な憧れを抱いたのも事実だった。

 

裏切ったのは、ただ単に彼女たちが"理解"出来ていなかったからだ。

悪とは何か。

本当の意味での力の差。

逆らってはならないという恐怖を。

 

「ロードさまぁ。ここは、私が。」

「よい。手ずから罰する為、ここまで来たのだ。」

「悲しいですねぇ...。」

「っ!?」

 

呼吸さえ苦しくなるほどに増した圧力に、二人はついに理解した。

自らと、愛する者の避けようもない"死"を。

 

「裏切り者には、死を以て罰とする。」

「悲しいですぅ。あなたたちの懺悔は、神に届かないようですねぇ...。」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「このっ!」

「あーもう!ウザッ!」

「...!」

 

魔物を凍らせ、吹き飛ばし、砕いて街を進む。

あの魔物は間違いなく、ロードの能力から生まれたモノだ。

原作からして、ロード本体を潰さないことにはこの戦いに勝利はない。

やはり街にはおらず、ナハトベースに陣取っているのだろうか。

 

「ヴェナの奴いつ来るのよ!?最近まったく連絡ないしっ!」

「アズールちゃんカレシの愚痴言ってるみた~い。」

「あんな見た目も中身も真っ黒な無表情野郎願い下げよっ!」

 

一向に現れないヴェナに文句を言いつつ、ロードがこの場にいないか確認する為に前進を止めないわたしたち。

そんな中、違う場所で戦闘音が聞こえることに気付き、接近する。

 

「キリがあらへんっ!」

「マリーノ!

この辺りの人は全員助けられたよっ!」

「ありがとうマゼンタちゃんっ!

一気に、決めるっ!」

 

魔法少女トレスマジア。

人命救助を優先していたようだが、どうやら殲滅態勢に移行するところらしい。

 

「お願い!"マンモスさん"!」

 

持っていた小さなマスコットを鞭で変化させ、巨大なマンモスを召喚する。

 

「おお~すげ~。」

「キラキラ...!」

 

スライムを踏み潰し蹴散らし、道を切り拓いていくマンモスの姿に、レオもアリスも感動しているようだ。

絶滅した動物まで操れるようになったのか。

 

「強くなったようね、マジアマリーノ。」

「っ!...アズール、さん。」

 

マリーノの前に降り立ち、トレスマジアとの合流を果たす。

 

「あァ?なんでオマエがいんだよツンデレマジア。」

「それはこっちの台詞や...今すぐその団子頭を潰して視界良好にしたろか...?」

「久しぶりだねアリスちゃん!元気だった?」

「コクリ。」

 

敵対しているとは思えない仲の良さ(?)を見せるわたしたち。

もっとなんか、『これはお前たちの仕業かぁー!』みたいなやり取りはないのだろうか?

 

ドシンッ!

 

「あれ?」

「え...?」

 

突然、マンモスがその動きを止め倒れ伏す。

その消えかけた顔面には、巨大な瓦礫がめり込んでいて...。

 

「みんな伏せなさい...っ!!」

 

二の轍を踏まない為に。

全力の力を込め、絶対零度の壁を作り上げる。

わたしたちに瓦礫の弾丸雨が降り注いだのは、その直後だった。

 

「な、何だったの...?」

「ハァ...ハァ...っ。」

「アズールちゃんだいじょぶっ!?」

「え、ええ...。今度は、守りきったわよ。」

「アズールちゃん...っ。」

 

体に伝わる地響きを感じて、わたしたちを包んだ影を見上げる。

 

「悲しいですぅ。まとめて楽にしてあげたかったのですがぁ~...。」

「っ!テメェ...!」

 

シスタギガント。

わたしがかつて完膚なきまでに叩き潰された強敵。

自然とわたしたち三人の表情が険しくなる。

 

「シスタギガント!あなたに用はないわ!ロードは、ロードエノルメはどこにいるのっ!」

「ここだ。」

 

ドサッ。と。

"何か"が投げ捨てられた音がする。

それは水色の、見覚えのある衣装を着ていて。

 

「ルベ、ル...っ!?」

「...!」

「こんのクソ女っ!!アタシらの舎弟をリンチしやがったな...!?」

 

いや舎弟じゃねェよ!?

と、いつものように突っ込むこともせず、

まるで時が止まったように動かないルベルブルーメ。

 

「手を下したのは私一人だ。もっとも、手を使う必要すらなかったが。」

「あなた...っ!」

 

仲間を侮辱されたことに怒り、頭に血が昇る。

そんな私を嘲笑うように、ロードはスライムに掴ませたもう一人を見せびらかす。

 

「ルベ、ル...おね、がい...起きてよ、ねぇ...ルベルぅ...っ!!」

 

ルベルと同じくボロボロに傷つけられたロコの姿。

その瞳には光はなく、ただただ頬を伝う涙を延々と流しているだけだった。

 

今の私には分かる。

ロコの苦しみが。

愛する者を失った悲しみが。

 

「ッ!!」

「ロコちゃん...ッ!!」

 

マゼンタが飛び出すと同時に、魔力を爆発させる。

ロードの目の前に接近し、マゼンタの槍に合わせて氷の刃を振り下ろす。

 

「手を使わせたことは褒めてやろう。」

「「!?」」

 

何でもないように、"両手"でわたしたちの武器を受け止めるロード。

そのまま虫を払うように、一閃。

わたしとマゼンタは成す術なく地に叩きつけられた。

 

「マゼンタっ!?」

「アズールちゃん!?」

 

助け起こされるわたしたち。

ロードはわたしたちを見下ろした後、興味をなくしたようにロコを解放した。

 

「あっ!?」

 

マリーノが慌ててキャッチし、無防備のまま投げ出されるのを回避する。

 

「くだらんな。エノルミータ、トレスマジア。

所詮、ごっこ遊びに興じている貴様らでは。

この私には、決して勝てん。」

「なん、ですって...っ!」

 

この生活は、私の新しい人生は。

ごっこ遊びなんかじゃない...っ!

 

「気に入らない...気に入らないわねぇ...。」

「アズール、ちゃん...?」

 

傷ついた体に力が漲る。

この感覚は、いい。この怒り、憎しみ。

これこそ間違いなく、"悪"としての矜持。

 

「ふふっ...ごっこ遊びをしているのはどちらかしら...。世界征服なんて、子どもみたいな野望を掲げて。そんな理由であなたは、ルベルを殺したわけ...?」

「...。」

「気に入らない...気に入らないわねぇっ!

いつもいつも高いところから見下ろしてっ!

空に輝くお星さまのつもりなのかしらぁ...!?

ひとつ、ふたぁ~つ...!

その目障りな光、潰して砕いて弄んでっ!!

地に転がる糞の仲間にしてあげるわ...!!」

 

悪としての感情が、本来の力を引き出す。

魔力が何倍にも膨れ上がり、ロードの支配した空間を塗り替える。

 

「これ、は...!この力は...!?」

「案ずるなシスタ。これがあれの"本来の力"だ。」

 

わたしを見て笑うロードの姿に、更に怒りが募る。

 

「ルシファアズール。私と同じ王の名を名乗り、

私に"匹敵する"力を持つ者よ。

ならば、来るがいい。我等の城へ。

主にふさわしいのはどちらか。

決めるとしよう。」

「...上等よ。」

 

ロードはその仰々しいマントを翻し、暗いゲートの中へと消えていく。

 

「...!」

「あ、アズールさんっ!」

「いかせませんよぉ。」

 

追い掛けてゲートを通ろうとするわたしに、呼び止めるマリーノ。

その二人を狙って、巨大な拳が振り上げられる。

 

「邪魔すんじゃねぇよ。」

 

数多の銃火器による、全方位射撃。

シスタの動きが鈍り、わたしたちは回避に成功する。

 

「服が埃だらけですぅ~...。」

「ゲートが...っ!」

 

時間稼ぎには成功され、ロードが開いたゲートは閉じてしまう。

 

「ちっ!ヴェナはいったい何をやってるのよ!?」

「呼んだかい?」

「わっ!?...ヴァーツさんにそっくり...。」

 

いいタイミングと言えばいいタイミングで、件のまっくろくろすけが現れる。

 

「ヴェナ、ナハトベースにゲートを!」

「人遣いが荒いね、アズールは。」

「いいから早くっ!」

「させませんよぉ。」

 

シスタの手がまたしてもわたしに迫るが、その手に今度は大量の爆弾が炸裂する。

 

「ヒリヒリしますぅ。なんなんですかぁ...?」

「だから、邪魔すんなっつってんだろーが!」

 

レオが立ち塞がるようにわたしとシスタの間に立つ。

 

「レオ...?」

「アズールちゃん。ここはアタシらに任せてロードのとこに行って。

マリーノ、お前もな。

シスタは、アタシがやる。」

「だけど...。」

 

原作では。

確かにレオパルトはシスタギガントを打倒している。

しかし、今のシスタは4つ星の規格外の力を有しているイレギュラー。

本来の力を出したとしても、3つ星のレオでは...。

 

「たまにはさ~。アタシもいいとこ見せたいんだよね~。」

「ダメよレオ...!もしあなたに何かあったら、わたしは...っ」

「だいじょーぶ。だってアタシ。」

 

ついこないだも見た、あの色褪せない笑顔でこう続ける。

 

「アズールちゃんの、おーじさまだし。」

「!......任せたわ。」

「任された!」

 

私をヒロインにしてくれた王子様を、信じる。

背中を押されるように、ゲートに向けて歩き出す。

 

「あ。そーだ。」

「え?」

 

気の抜けた声に振り返る。

 

「アタシ、ちょーガンバる!だから、アズールちゃん!これが終わったら、アタシとエッチしてっ!!」

「...。」

「はぁ...っ!?///」

「えち...!?///」

「レオ...。...分かったわ。」

「分かっちゃうんですかあぁぁっ!?!?///」

 

周りの反応を無視して、彼女の覚悟に答える。

それがどれだけ勇気を出した願いなのか、私にはもう分かるから。

 

「あっ!?い、行っちゃうんですか!?わ、わたしは...。」

「行けマリーノ。」

「サルファちゃん?」

「行ってあいつの目ぇに、強くなったアンタを見せつけて来るんや。」

「マリーノちゃん!任せたよっ!」

「マゼンタ、ちゃん...。うん...!いってきます!」

「「いってらっしゃい。」」

 

わたしの後に続くマリーノを受け入れ、二人でゲートをくぐっていく。

 

「っしゃお前ら。雑魚どもは頼んだわ~。

あとロコルべの手当てよろ。変身解けてないってこたぁ、まだ生きてんだろ~。」

「!?ほん、とに...?」

「うん、大丈夫だよロコちゃん。危ないけど、まだ生きてるから!」

「っ...るべ、るぅ...っ!」

 

最後に見えた背中は、立派な副リーダーそのものだった。

 

「クイ...。」

「心配すんなアリス。アリスの分も、アイツにはしっかりお返ししてやっから。」

「...コクッ。」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ここが、エノルミータの本拠地...?」

「今はロード団の、だけどね。」

 

相変わらず飾り気のない室内を、ふわふわと浮かぶヴェナを追うように進む。

 

「何してたのよ、今まで。」

「色々と用事があってね。」

「色々って何よ?わたしたちより大事な用なわけ?」

「ボクも色々あるのさ。」

「...(なんだかすれ違いがちなカップルみたいな会話だなぁ...。)」

 

不満をぶつけながら話していると、漸く見慣れた景色にたどり着く。

 

「...来たか。」

「相変わらずふんぞり返るのが好きみたいね、ロードエノルメ。」

 

見上げた玉座に当然のように居座るロード。

逃げることも、隠れることもしていない。

 

「吠えるな"マジアアズール"。"ベーゼ"を伴に付けるとは、それほど私が怖いか?」

「マジア、アズール...?ベーゼ、って...。」

「それ以上喋るなっ!!」

 

すっかり意識から消えていたが、このロードがいったい何者なのかは未だ分かっていない。 

うてなちゃんの前で原作の話をしないで欲しい。

私と同じ転生者?

物語の顛末を知る程度なら別世界のロードである可能性もある。

 

どちらにせよ、聞くわけにはいかない。

この場で聞けば私のことまで、うてなちゃんに知られてしまう。

 

「冷静さは失っていないようだな。」

「余計なお世話よ。」

 

街で見たスライムが、このアジトでもブクブクと沸き上がっていく。

 

「良かろう。では、始めようか。闇に堕ちたアズールに、牙の抜けたベーゼよ。」

「構えなさいマリーノ!」

「う、うんっ!」

 

ロードの宣言と共に、わたしたちの視界は一斉に黒い波に覆われた。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「がは...っ!?」

 

血を吐き出しながら、成す術なくビルに叩きつけられる。

 

「悲しいですぅ。あなたではやはり、私に勝つことはできませんねぇ。」

 

服はあちこち汚れて穴が空いている箇所もあるが、その美しい肌にはまったく傷がない。

圧倒的な力の差で以て、シスタギガントはレオパルトを蹂躙していた。

ロードは"彼女は無星ではなく、3つ星程度の実力はある"と言っていた。

だとしても、4つ星のシスタに勝てる道理はない。

レオパルトの強がりが、シスタには本当に憐れで悲しく見えていた。

 

「おしまいですねぇ。」

「っ!?」

 

ガギンッ!

 

無慈悲に振り下ろされる拳が、光の障壁に阻まれる。

 

「大口叩いといて何普通にボコボコにされとんのやっ!やっぱアホやなあんたっ!」

「おまえ、なんで...。」

 

マジアサルファ。

彼女の堅牢な障壁がシスタの拳を防いだのだ。

 

「こいつはうちがやる...っ!役立たずは大人しく休んどれ!」

「うっせぇツンデレ!こいつはアタシがヤるんだよっ!!」

「仲良しですねぇ...。」

「「仲良くないっ!」」

 

いつも通りの言い合いを始める二人をまとめて潰そうと、今度は足を大きく振りかぶるシスタ。

 

「「げっ!?」」

 

ガギィッ!!

 

たったの一撃で、自慢の防御に罅が入る。

ロコムジカの癇癪を超える衝撃に、本能的な生命の危機を感じてしまう。

 

「く、そ...っ!!」

「...ちっ。おいツンデレマジア。もうちょいそのまま耐えてろ。準備っすから。」

「何のんびりしたこと言うてはるんやっ!?耐える余裕なんてな...っ」

 

ベギィッ!

 

話す間もなく、シスタの追撃がサルファを襲う。

亀裂が全体に走り、もう一撃と耐えられないのは明らかだ。

 

「終わりにしましょぉ...。仲良く天国へ逝ってくださいねぇ。」

「もう、アカン...っ!?」

 

「あァ?()()()()()()()()()()()()?」

 

突然起きた爆発。

意味も分からず爆発を受けたシスタは、バランスを崩してその巨体を地面に横たえる。

 

「......なんや、その姿は...?」

「あ?」

 

胸上部に刻まれた3つ星。

まるで猫のような耳、尻尾、四肢。

それらがすべて、爆煙のようなもので彼女の体に形作られている。

 

「なんやその痴女マシマシの格好はぁ!?///」

「え~。なんてこたぁないっしょ~。」

 

大切な部分を最低限に隠す程度で、肌の露出がすご過ぎる格好に思わず突っ込むサルファ。

そんなサルファを軽く受け流し、レオは再び立ち上がった敵を睨み付ける。

 

「仕方ねぇなぁ。...おい、()()()()。手伝わせてやるから弾除けくらいにはなれよ?」

「何度言わせんねん。それはこっちの台詞や猫女。悪もん退治は正義の味方の仕事や。引っ込むなら今のうちやで。」

 

相性は最悪。お互いが何より嫌い。

だが今は。

同じ方向、同じ敵を見つめて、同じ場所に立っている。

 

「見せてやるよォ。アタシらの本気...!」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ルベル...起きなさいよ...起きてよ...お願い...ルベルぅ...っ!」

「......ぁ...」

「!ルベルっ!?」

 

ルベルブルーメが霞む視界に最初に映したのは、幼なじみの泣き顔だった。

歌を馬鹿にされた時とも違う、自分を本気で心配してくれた時の涙。

昔、流行りの病気で高熱を出した時があったが。

看病なんて出来ないくせに、ずっと側にいて、結局自分も風邪を引いてしまっていたっけ。

その時の顔と、よく似ている。

 

「ロ、コ...」

「ばか...っ。ばかばかばか...っ。ばかっ!ばかルベル...っ!!弱いくせにロコを庇って...!勝手に、死にかけて...っ!!しんぱいっ...させんじゃないわよぉ...っ!!」

「うっせェな...仕方ないだろ...あと、痛ェ...。」

 

きつく抱き締められるほどに、彼女がどれほど自分を愛してくれているのかが分かる。

 

泣いた顔を見ているのは辛いが、真珠の為に生きてきたネモには、やっと繋がった彼女との想いが何より嬉しかったのだ。

 

『もうやだー!なぐさめなさいよねもー!』

『はーい。またまちゃん、よしよし。』

『ふふん!』『えへへ。』

 

そんなやり取りも思い出して、ルベルはロコの頭にポンと手を乗せてみる。

 

「もう大丈夫だから...泣くなよ、ロコ...。」

「泣いてない、わよ...っ。ばか...。」

 

口では言い返しつつ、ルベルの思いを汲んで笑顔を見せるロコ。

そんなロコの姿を見て、ルベルもまた笑顔になるのであった。

 

「ううっ、ひぐっ!よがっだねぇろごぢゃんっ(泣)!」

 

二人の様子を端から眺めて号泣しているマジアマゼンタ。

地味にロコルべの命の恩人なのだが、二人だけの世界が展開している為、今やただの回復装置として気配を消すに至っていた。

 

「なんか、余計に戦い辛くなっちゃうなぁ...。」

 

アズールもレオパルトもそうだが、みんなちょっと普通の乙女過ぎないだろうか。

最近はアレな攻めもご無沙汰だし。

いよいよ以て何故戦わないといけないのか、なんて日アサから深夜アニメにクラスアップなシリアスを展開しなければいけなくなる。

 

深夜枠なのは元からか...。

などと考えつつ、マゼンタは今は別の場所で戦う友人二人の無事を祈っていた。

 

「サルファ、マリーノ...。」

「ロコ...///」

「ルベル...///」

「...(怒)」

 

ちなみにこの間も、街にはロードの眷属が無限にポップし、被害を出し続けている。

それを一人で対処することになったネロアリス。

 

いい加減、我慢の限界だった。

おもちゃは謎スライムのせいで汚れるし、なんかイチャついてるカップルはいるし。

回復したなら、早く手伝って欲しい。

 

まともなのはわたしだけかっ!

 

アリスは激怒した。

必ず、かのお姉ちゃんズにおもちゃをねだらなければならぬと決意した。

アリスにお財布事情は分からぬ。

アリスは、まだ9さいである。

 

そういえば、そろそろお昼寝の時間であった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ここまでか。口程にもない。」

「っ...あぁ...!?」

 

体を黒い触手が縛り上げ、力がどんどん抜けていく。

遠くで同じように縛られたマリーノが、ついに柊うてなの姿に戻ってしまったのが見える。

まずい。

普通の姿でこの攻撃には耐えられない。

 

「うて、な...っ...」

 

体から完全に力が抜け、ついにわたしの変身も解けてしまう。

握る力さえなくなり、星の変身アイテムを落としてしまう。

 

「終わりだ、名も無き転生者よ。選択を誤ったようだな。」

 

――――――――――――――――――――――――――

◼️□next episode◼️□

 

「死ぬわけねーだろ。アタシはアズールちゃんとエッチすんだよ。」

 

「うちは負けん...ッ!アイツらは、仲間はッ!!絶対にうちが守るんや...ッ!!」

 

「このスーパーアイドルロコと一夜限りのスペシャルコラボよっ!合わせなさい!マゼンタ!」

「いや夜じゃねェしお前の客いねェだろそれ...。」

 

「アリスさんお眠入りましたぁっ!!」

 

「グッ。」

 

「何だかとってもっ!気分がいぃいぃですねぇぇっ!!」

 

 

 

「うてなちゃん。ありがとう!」




盛り上がってきましたね!()
次回は月曜日投稿予定です。
予告がまるで最終回みたいですが、ロード戦はさらにもう1話続きます。
楽しみにして頂ければすごく幸いです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。