魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

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なんと、お気に入りが100を超えてしまいました(泣)
高評価まで頂いてしまって...。
みなさん、こんな拙い妄想の産物を楽しんで頂いて本当にありがとうございます!!
正直舞い上がっております()
相変わらず自信はないですが、誠心誠意いいものが出来るよう、努力させて頂きますので。
是非今後とも、変わらぬご愛顧を宜しくお願い致します。
今回はめちゃくちゃ長いです(個人差)


第11話『嘘偽りないもの』

「良かろう。では、始めようか。闇に堕ちたアズールに、牙の抜けたベーゼよ。」

「構えなさいマリーノ!」

「う、うんっ!」

 

ロードの宣言と共に、わたしたちの視界は一斉に黒い波に覆われた。

 

「この程度ッ!」

 

以前やったように、スライムをまとめて凍りつかせる。

これは魔力消費が激しいのがネックだが、今わたしの体には魔力が充実している。

雑兵なら数なんて問題にならない!

 

「ロードエノルメッ!」

 

凍ったスライムを吹き飛ばしながら、ロードの元へ突っ込む。

 

「その手は効かぬと学ばなかったのか?」

「そっちこそ!ちょっとナメ過ぎなのではなくてッ!」

「何...!?」

 

刃を水の鞭に変化させ、ロードの腕を縛って即座に凍りつかせる。

左手にもう一振りの刃を作り出し、がら空きの胴を切り裂く。

が、咄嗟に反応され服を薄く切り裂くに留まる。

 

「眷属よっ!」

「ちっ!」

 

すぐ側に精製されるスライム。

それを切り裂いている間に距離を取られてしまう。

 

「...いたちごっこ、ってやつかしら。」

 

わたしを取り囲むスライムたち。

凍りつかせることは簡単だが、如何せん底が見えない。

 

「アズールさん!捕まってっ!」

「っ!」

 

空から高速で迫る影に手を伸ばす。

何かに飛び乗ると、生き物特有の温かさを感じた。

 

「これ、"プテラノドン"?」

「は、はい。ちょっとヒーローっぽいかな、と思って...。」

 

映画や漫画で何度も見た、翼竜プテラノドン。

だがおかしい。

プテラノドンは鳥のような羽ばたく飛行方法ではなく、グライダーのような滑空飛行をするはずではなかったか。

それに、こんな高速度で飛行出来るなんて変だ。

 

「あの。わたしのこれ。多少なら、特別製にできるみたいで。」

「何それ、チートなの...?」

 

考え方によっては何でもありなのではないだろうか?

例えば、"寒さに以上に耐性がある"動物とか。

あれ?わたしって意外とメタるの簡単だったりする?

 

「こういうのも、できます。」

 

マリーノはどこからか小さい恐竜型のおもちゃを取り出し、鞭で触れて地上に放り投げる。

おもちゃは光を放ちながらその大きさを変化させていき。

 

『グギャアアア!!』

 

巨大な"ティラノサウルス"の姿となった。

その巨体で眷属たちを弾き飛ばし、強靭な顎で蹂躙していく。

 

「なんか...見ないうちに魔法少女からスピル○ーグに転職したのかしら...?」

「ま、魔法少女です!?鞭でジュラシックでも、魔法少女ですからぁっ!?」

 

ちょっと前は可愛い子犬を出す程度だったのに。

時間の流れとは切ないものなんだなぁ...。

 

「しかし、あの無限とも思える魔力。いったいどこから...。」

「あれ...?」

 

下のティラノに異変があった。

まるで()()()()()()()ように、

眷属の山に倒れてしまう。

 

「持続時間が短いの?」

「そ、そんなことは...。負けない限りは、元気なはずなんですけど...。」

 

異常な速度での体力の低下?

...ではなく、"魔力"の低下。

魔力を分け与える力...。

その、()()()()()としたら。

だとすれば。

 

「ロードエノルメの、能力は...っ!」

「気付いたようだな。」

 

ティラノが完全におもちゃに戻り、代わりにスライムがその数を増やす。

 

「魔力を、吸ってる...!?」

「ええ、恐らく。正確には"魔力の流動操作"。魔力を与えることも、奪って自分の力にすることも出来るみたいね...。」

 

原作のロードにそんな能力はなかったはずだ。

マリーノやアリスと同じく、出来る対象が限られるのか。

わたしのように、相手の魔力量によって干渉出来る範囲が変わるタイプなのだろうか。

恐らくは後者だろう。

 

わたしであれば、ある程度抵抗出来ると思うが...。

 

「あなた、魔法少女狩りはその為に...。」

「!...魔法少女、狩り...?」

「そうだ。貴様らが蹴散らした我が眷属たち。全て私がこの手で潰した、魔法少女の"成れの果て"と言える。」

「...ッ!」

 

表情の見えないマリーノから、それでもハッキリとした怒りを感じた。

魔法少女は彼女の全て。

それを比喩とはいえ、あんな姿になったと嗤ったのだ。

ベーゼちゃんなら怒髪天の様相で...。

 

「許せない...!」

「ま、待ってマリーノ!あなたとあいつの相性は...!」

 

怒りのままにロードにプテラノドンを突撃させるマリーノ。

 

「飛んで火に入る夏の虫、と言ったところか。」

「!?」

 

ニヤリと口元を歪めるロード。

その表情を見て、これが罠だと悟る。

触手状に変化したスライムが幾重にも飛び出し、わたしたちの動きを封じた。

 

「こんなもので...!」

「ぁぐっ!?ち、力が...っ」

 

わたしはすぐに抜け出したが、マリーノはそうはいかなかった。

明らかに魔力を奪われている。

やはり、マリーノの魔力量は初期ベーゼと同じ2つ星程度。

抵抗力はないと考えていい。

 

「マリーノを!離しなさいっ!」

「ぁ...っ...」

 

触手を切り裂き、マリーノを解放する。

変身は解除されていないが、わずかな時間でかなりの魔力を吸い取られたようだ。

 

おもちゃに戻ったプテラノドンを見て、あまりの相性の悪さに後悔する。

事前に気付くことも出来たはずだ。

 

「ベーゼのなり損ないを抱えたまま、我が軍勢を相手にどこまで耐えられるかな?」

「...っ!」

 

触手とスライムを交え、私を捕らえようと絶え間なく攻撃が加えられる。

触手をかわし、スライムを避け。

何とか攻撃を当てるが、マリーノを庇いながらの戦闘をするには、あまりにも敵の数が多すぎた。

 

「しま...っ!?」

 

触手に足を絡め取られ、マリーノまで奪われてしまう。

一度に大量の触手が絡み付き、一斉に魔力を吸い上げる。

抵抗し切れず、わたしは触手にされるがまま

自らの魔力を奪われた。

 

「ここまでか。口程にもない。」

「っ...あぁ...!?」

 

体を黒い触手が縛り上げ、力がどんどん抜けていく。

遠くで同じように縛られたマリーノが、ついに柊うてなの姿に戻ってしまったのが見える。

まずい。

普通の姿でこの攻撃には耐えられない。

 

「うて、な...っ...」

 

体から完全に力が抜け、ついにわたしの変身も解けてしまう。

握る力さえなくなり、星の変身アイテムを落としてしまう。

 

「終わりだ、名も無き転生者よ。選択を誤ったようだな。」

 

「いいや、まだだね。」

 

聞き覚えがあるようで、何か違和感を感じる声。

気付けば、わたしの目の前にヴェナがいた。

 

「...ヴェナリータ。不干渉だった貴様が、今さら何を動く。何故そちらを選んだ。」

「君はイレギュラー過ぎる。ボクの望んだ方向には進まないと判断した。」

 

ヴェナはロードに決別を宣言する。

そして再び、わたしの方に向き直った。

 

「小夜。君にここでリタイアされるのは困るんだ。ボクには君が必要だからね。」

「あい、かわらず...じぶん、勝手ね...っ」

「そうさ。ボクはボクの願いの為に、君を助ける。君はそんなボクの提案に、また乗ってくれるかい?」

 

ヴェナは私に、あの始まりの日のように。

()()()()の変身アイテムを差し出す。

 

私は迷わずそれを手に取る。

これもまた、あの時と一緒だ。

 

「乗ったわ...っ!」

 

変身(トランスマジア)っ!』

 

――――――――――――――――――――――――――

 

『ぼ、ぼわふぉるて...』

 

力無く、小さな塊がヘロヘロと飛んで眷属にヒットする。

だが、反応はなし。

最早攻撃にすらならないロコムジカの声。

 

「頑張ってくれロコォ...!今はお前だけが頼りなんだ...!」

「ぞ、ぞんなごどぃわれでもぉ...」

 

ルベルブルーメが、既にがらがら声となった相方を尚も鼓舞するのには理由がある。

 

「...Zz」

「あはは...はぁ...。」

 

マゼンタの膝を枕に、スヤスヤとお昼寝を楽しむネロアリス。

何故こんなことになったのかと言うと、時は1時間程前に遡る。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「いいわよアリス!!」

 

大量のスライムたちがアリスのドールハウスに吸い込まれていく。

 

「これならギリギリ押しとどめられるわ!!」

「このまましばらく頼むぜアリス!!」

「...。」

 

突然だが、アリスは激怒した(二回目)。

散々大事なおもちゃたちをネトネトのベタベタにされ、それでも傷ついた仲間を守る為、尽きぬ雑兵と戦い続けた。

 

だと言うのに、今度は大事なドールハウスをあの汚いスライムでいっぱいにして、限界まで踏ん張り続けろということらしい。

はっきり言って、もう嫌だった。

 

そもそも、アリスはこの扱いが不満だった。

アズールはロード、レオはシスタ。

二人とも派手なボスバトルで、何だかスゴくカッコいい。

なのに自分の相手はスライムで、潰しても潰してもキリがない。

ドラ○エ初期のレベル上げか何かだろうか。

やりがいもないし、ただただ疲れるだけ。

トレスマジアやお姉ちゃんズと遊んでいる時とは大違いだ。

 

「!?」

「アリス!?どうしたの...!」

 

バキバキと今にも壊れそうなドールハウス。

どうしたの、ではない。

もう大分元気そうではないか。

休みたいのはこっちである。

眠い。お昼寝したい。

アリスは成長期である。

 

溜まりに溜まった不満をロコルべに身振り手振りで伝えるアリス。

 

「いや、気持ちは分かるわよ...?けど現実的に、今あれに対処できるのはアリスだけなわけで...。」

「あのロコが、現実を語っている...?」

「っさいわよルベル!?」

 

確かに、この音痴と陰キャと優しいお姉ちゃんではあの物量を相手取るのは厳しいだろう。

もし街があのスライムに壊されてしまったら、きっとアズールもレオも悲しむに違いない。

......レオパルトは自分から壊していたけど。

 

「お願い、アリスちゃんっ。みんなを守るにはアリスちゃんの力が必要なの。

あたしも手伝うから、だからもう少し一緒にガンバって欲しいな...。」

「...。」

 

マジアマゼンタは誠意を込めてネロアリスに助力を乞う。

そうそう、アリスが欲しかったのはこういう反応である。

やはりこのお姉ちゃんは見込みがある。

好きなお姉ちゃんランキングベスト3に入る。

とりあえずキウィよりは上だ。

あれはしょうがないお姉ちゃんだからね。

 

ネロアリスは考える。

やっぱりもうちょっと頑張ってみようか?

今度はロコルべも手伝ってくれそうだし。

 

「お願い、アリス!」

「頼むぜアリス!いや、アリスさんっ!」

 

...しょうがないなぁ。

 

「グッ。」

「「「あ、アリスさん...っ!」」」

 

皆がアリスの漢気に感動し、安堵の笑顔を浮かべた瞬間。

 

バギャアッ!!

 

派手な音と共に、スライムがドールハウスから溢れ出す。

ネロアリスは無表情のまま、そそくさとマゼンタの膝上に移動する。

 

「え...?」

「は?」

「ん...?」

 

やる気はあった。頑張るつもりもあった。

だけどちょっと迷いすぎた。

あとやっぱり眠い。

寝落ちしたら変身も解けちゃうし、これは仕方のないことだ。

 

「スヤァ...Zz」

「「......。」」

「......あ、あ...!」

 

こちらに流れ込んでくるスライムの群れ。

全員が言葉を失う中、眠るアリスの寝息が静かに響く。

 

「アリスさんお眠入りましたぁっ!!」

「「なんでじゃあぁぁっっ!?!?」」

 

仕方ないことなのだ。

分かって欲しい。

アリスはまだ、9才である。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「うぅ...ろごのびぜぃが...ぁいどるのぃのぢが...」

「うわぁ...過去一見てらんねェ...。」

 

そんなわけで。

自ら休眠モードに入ってしまったネロアリスを頼れず、唯一範囲攻撃が可能なロコムジカが大立ち回りを演じることとなったのだった。

 

「あの、ロコちゃん。ちょっとこっちに。」

「ぁによ...?」

 

マゼンタがアリスを起こさないよう、小声でロコムジカに呼び掛ける。

いや、『ロコの声で起きないんだから普通に話しなさいよ。』とツッコむことすら出来ず、言われるがままマゼンタに近づく。

マゼンタはロコの首元に触れ、魔力を走らせる。

 

「これ...!?」

「回復魔法は得意だから。もう大きな傷を治す力は残ってないけど...。

ロコちゃんのサポートなら、まだできるよっ!」

「ま、まぜんた...っ(涙)」

 

ロコは嬉しかった。

宿命のライバルと見定めた彼女の笑顔と思いやりは、まさにアイドルの輝き。

涙を拭い笑顔でロコは決意した。

負けていられない。

ロコこそが最強のアイドル!ロコムジカなのだから!

 

「このスーパーアイドルロコと一夜限りのスペシャルコラボよっ!合わせなさい!マゼンタ!」

「いや夜じゃねェしお前の客いねェだろそれ...。」

 

ルベルの痛烈なツッコミは無視し、ロコは再び邪悪な眷属たちに向き合う。

負ける気がしない!今なら、最高のライブができる!

 

『まずはみんな大好きこのヒットナンバー!聴いてくださいっ☆

L・O・V・E・リー・ロコ♥️』

「歌うなっ!?真面目にやれェーっ!?!?」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「死ねボンバー!!」

「っ!?」

 

技名にしては捻りがないその声と共に、爆煙がシスタギガントを包む。

 

「オラオラオラオラァ!!」

「何ですか、その姿はぁ...!」

「テメーに教える義理はねぇだろ!」

 

先ほどまでとは明らかに違う火力。

本来の力を隠していた?

何故わざわざそんなことを...。

シスタは激しいラッシュを受けながらも、冷静に思考を働かせる。

 

「余所見はアカンでぇっ!!」

「...!」

 

背後からサルファの拳が振り切られる。

単純だが重い一撃。

体格の差はまさにアリとゾウだが、それ故に俊敏さではあちらが勝る。

それを知ってか、サルファもレオパルトも動き回りながらのスピードに乗った奇襲を軸とした戦闘を行っていた。

 

『厄介ですねぇ...このコンビはぁ...!』

 

お互いを気遣うこともせず、時には巻き込む可能性すらあるにも関わらず。

どちらもギリギリのラインを、最大の力でぶつけてくる。

()()()()()()()()()のコンビネーション。

力で勝るシスタが押し切れない理由がそれだった。

 

「おっちねボケェ!!」

「ぅぐ...っ!?」

 

爆発がシスタの胸にまともに入る。

今日初めてのクリーンヒット。

 

「どーよレオパルトちゃんの真の力はぁ!!」

 

ぐらつく視界でレオパルトが嗤う。

 

「オラオラかかってこいよデクノボー!!まだ始まったばっかだっt...ばぶーっ」

「吐血ーっ!?」

 

突然、凄まじい量の血を吐き出すレオパルト。

シスタはその姿から、敵の力の秘密を理解した。

 

「何やねんその血の量!?そんなに痛手は受けとらんやろ...!?」

「オエーッ」

「レオパルト...あなたぁ。"魔力"を上手く...扱えていませんねぇ?」

 

苦しみながらこちらを睨み付ける視線に確信する。

 

「本来星3の力を持つあなたが自分を星0だと偽っていたのはぁ...それが理由ですかぁ。」

「あ~?んなわけ...ねーだろ...。舐めプだよ、舐めプ。」

 

相変わらず強がりを続けるレオパルトに、薄く涙を浮かべながら告げる。

 

「悲しいですねぇ。強がりもいいですがぁ...あなたぁ。"死"にますよぉ?」

「は...?死ぬ...?」

 

宿敵に向けられた死の宣告に動揺するサルファとは反対に、レオはそれを笑い飛ばす。

 

「死ぬわけねーだろ。アタシはアズールちゃんとエッチすんだよ。」

「?」

 

唖然とするシスタを意に介さず、レオは更にその魔力を高めていく。

 

「アズールちゃんと!!エッチだぞ!!考えただけでたぎるゥ!!あふれるゥ!!こりゃあ急がなきゃウソだろ!!だから早く死ね!!今しね!!すぐしね!!アタシらのお祝いにしねぇ!!」

「...そうですか。それはぁ...。」

 

レオパルトの一見無茶苦茶で緊張感のない言葉を聞き、シスタギガントは思う。

命を削ってでも実らせたい愛。献身。

それはシスタには、彼女には分からない感情だ。

理解できない。理解しない。

そう思って彼女は今までの人生を生きてきた。

 

だが。

だが、今は本当に。

ほんの少しだけ。

自分さえ理解出来ない程度に。

 

「"羨ましい"ですねぇ...。」

「がぼ...っ!?」

 

レオパルトの乱打にも怯まず、シスタはその巨大な右手で敵を捕らえ地面に叩き付ける。

 

「ぁ...がぁ...っ」

「アホ...!あんなんもう...っ!」

 

レオパルトを助けようと気を放した隙を突き、今度はサルファを確実に蹴り飛ばす。

 

「が...ッッ!?!?」

 

ビルに叩き付けられるサルファ。

トレードマークのリボンが外れ、その長い髪が彼女の血に濡れる。

 

「終わりましたねェ...。」

「.....まだ、や...っ。」

 

よろける姿が、さながら目障りな蚊のようだ。

 

「お前は、うちが...っ!!」

「しつこいですねぇ。」

「ぶ...っ!?!?」

 

正面から殴りかかるサルファを、虫を払うように弾き飛ばす。

血を撒き散らしながら地面に潰れる姿に、今度こそトドメを刺したと確信するシスタ。

レオパルトにも引導を渡す為、足を振り上げる。

 

「悲しいですぅ...。その愛が、叶うことはありませんねぇ...。」

 

ガギンッ!

 

まるで自分に言い聞かせるように放った手向けの言葉。

だがしかし、その終わりの一撃は光の壁に阻まれる。

 

「本当にぃ。しつこいですねぇ。」

「ハァ...ッ!ハァ...ッ!」

 

左腕は折れ、最早動かすこともできず。

視界は朦朧。血は絶えず流れている。

だがそれでも、マジアサルファは立っていた。

 

ガギィッ!!

 

迷わず踏みつけるシスタ。

1回、2回、3回。

辛いとか、苦しいとか。

そんなことより考えるのは、あの始まった日のこと。

 

『薫子ちゃん!あたしと魔法少女、やらないっ?!』

 

最初は勿論断った。

似合わないし、正義の味方とかガラじゃないし。

はるかの危なっかしさとしつこさに折れてしまったのが失敗だった。

やっぱり武器は可愛くないし、人気もマゼンタに集中するし。

小夜が先に誘われていたことを知って、あっちの方が似合ってると納得せざるを得なかった。

 

なのに。

はるかはいつも、うちを頼りにして。

何も疑わず、いつだってうちに背中を預けた。

学校でも、ずっと付きまとってきて。

本当にお人好しで、いつも優しくて。

 

うてなもそう。

正体を知って、本性を知って。

普通幻滅するはずのとこを、いつまでもずっと、あないキラキラした目で見つめてきて。

臆病なくせに、意固地で。

がんばり屋で。

 

「守り、たぃ...っ」

 

バギッ!!

 

うちには勿体ない、優しくて大好きな仲間。

変なものが好きだったり、性欲旺盛だったり。

欠点はあるけど、ほっとけない大切な友だちを。

うちは失いたくなかった。

この手で守りたかった。

ただ、それだけだ。

 

「ちから、を...っ」

 

命でも何でもくれてやる。

だから今だけ、今この瞬間だけでいい。

仲間を守れる力を...。

 

「あい...つを...倒せ、る...力を...ッ!!」

 

バギンッッ!!!

 

その必死の願いと共に、光の守りは儚くも砕け散った。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「アズールソードっ!」

 

凛々しく響く声に目を覚ます。

瞬間、体の不快感がなくなり、温かく柔らかい感触に包まれた。

 

「っ...?」

「もう大丈夫よ。」

 

眩しさを感じながら目を開くと、視界に映るのは見たことのない魔法少女。

わたしたちと同じ衣装、だけどカラーリングは異なる。

その美しい、"紺碧"に輝く髪と同じ、アズール色。

間違いない。

何がどうなっているか分からないけど。

これは現実だ。

何度も夢見た、わたしの理想の魔法少女。

わたしの"あこがれ"が、今ここにいる。

 

()()()、アズール...っ?」

「不承不承ながら仕方なく、ね。こんなファンサは、今回限りだから。」

「え、エモぉ...っ(泣)///」

 

突然過ぎる推しの過剰供給に色々と酷い顔を晒してしまうわたし。

そんなわたしを笑顔のまま、優しく床に寝かせるアズールさん。

 

「あなたは休んでいなさい。ロードはわたしがっ!?」

「アズールさんっ!?」

 

いつの間にか現れた触手に足を掴まれ、アズールさんは拘束された。

わたしは今戦場にいるということを思い出し、自分も戦わなきゃと変身アイテムを探す。

 

「なっ、ない...!?」

 

見つからない。どこにもない!

というか、変身が解けてる!?

アズールさんに正体を知られた...!?

 

「探さなきゃ...!」

 

そんなことは今はいい。

早くアズールさんを助けなきゃ!

周りを見渡すわたしに、黒い影が近付く。

 

「柊うてな。」

「ひゃいっ!?...あなたは、確かヴェナさん...?」

 

というか、何でわたしの名前を...!?

動揺するわたしに、ヴェナさんは()()の変身アイテムを差し出す。

 

「そ、それ...!?」

「してみるかい?変身。」

「...わたしに、(ベーゼ)になれって、言うんですか...?」

 

エノルミータの、恐らくは変身アイテム。

それはつまり、魔法少女でありながら悪に堕ちるということで。

 

「キミには選ばれし力がある。」

「それは...悪の組織の、リーダーとしての...?」

 

以前言われた、アズールさんの言葉を思い出す。

わたしがなるべき姿。

本来のわたし。

ずっと否定してきた、本性。

それを認める時が来たのかな。

だけど、ヴェナさんはその小さな頭を振って答える。

 

「キミはベーゼであるべきだ。

だけど、それもまたキミ自身だろう?

キミが何をして、何をしたいかは。

キミが決めることじゃないかい?」

「わたしが、決める...。」

「キミが今、したいことは何だい?」

 

わたしがしたいこと。

そんなの決まってる。

善でも悪でも構わない。

今はあの人を。

わたしの"推し"を助ける力が欲しい...!

 

「アズールさんを、助けます...っ!」

 

ヴェナさんから星を受け取り、敵に突き付けるように天高く翳す。

 

変身(トランスマジア)...!』

 

いつもとは違う闇の輝きを身に纏い、わたしは変身する。

露出の多い服装に、悪魔のような角と翼。

いつもなら恥ずかしくて頭が沸騰するはずが、今は力が漲って、溢れていく。

というか。これは、すごく...。

今までにないほど...!

 

「何だかとってもっ!気分がいぃいぃですねぇぇっ!!」

「あれ、は...!?」

「マジアベーゼだと...ッ!?」

 

わたしは飛び上がり、周りのスライムたちを鞭で叩く。

抵抗もなく"眷属"と化したスライムたちをロードの操る触手にぶつける。

拘束されたアズールさんを解放し、今度はわたしが彼女を抱き止める。

 

「大丈夫ですか?アズールさん。」

「......え、ええっ。だいじょぶ、よっ!?///」

 

何故か表情を真っ赤にするアズールさんを下ろし、二人並んでロードエノルメに向き合う。

 

「マジアアズールに、マジアベーゼだと...?...くっ、ククッ...!アハハ!!」

「何がおかしいんですか!」

 

ロードは一頻り笑った後、わたしたちを忌々しげに睨む。

 

「運命は私に抗うなと、そのまま眠れと言いたいらしい。...だが、断る。貴様らにも、運命にも。この世界にも負けぬ...!私には、勝たなくてはならない理由があるのだ...っ!」

 

ロードが咆哮と共に一斉に眷属を突撃させる。

 

「ここは私がやるわ。」

 

身構えるわたしを背にして、アズールさんはその大群を見据えた。

 

真化(ラ・ヴェリタ)

 

再び輝きを放ち、アズールさんはその姿を()()()()()()()

白く美しい着物は所々露出して、覗く素肌が艶かしくも神々しい。

結った髪が光を反射し、その背には天女を思わせる羽衣を纏っていた。

その姿はまるで、ルシファアズールとは真逆。

 

「マジアアズール。『薄氷巫女(うすらいのみこ)』。」

「っ!///」

 

見惚れた。

瞳の奥を奪われたその一瞬の時間。

それだけの間に、あの大群は嘘のように真っ白な氷塊に変わっていた。

 

「な、に...ッ!?」

 

動揺するロードを無視し、アズールさんはわたしの方に振り向いてこう言う。

 

「似合っているかしら?」

「は、はぃぃ...!とっても...!!///」

 

何これ何?

死んじゃう尊過ぎて死んじゃう。

まって。良さ過ぎてほんとしんどい。

何だこの神々しさ。

神か。神推しだこれ。

こんなのやっぱり無理。

我慢なんて出来ないっ!

これはもうっっ!本当にっっ!!

 

「推せるぅっ!!!///」

 

またしても全身に力が漲り、わたしの体に異変が表れる。

髪が伸び、角が肥大化する。

更に強くなったことが分かる!

これが、推しの力ッ!

 

「本当に、欲張りなんだから。でもこれで、一緒に戦えるわね。」

「はいっ!推しの為なら何でもしますっ!!///」

「なんか、異様にキャラが変わったわね...?」

 

アズールさんはわたしに笑いかけた後、余裕を崩したロードを見下ろして宣言する。

 

「終わりよ、ロードエノルメ。」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

バギンッッ!!!

 

砕いた。

確かに、踏み抜いた。

そのはずだった。

 

「......!?」

「...ふざけんな。」

 

潰したはずのその体。その心。

だと言うのに何故だ。

何故足が動かない。

何故、まだ立っている。

何故!その細腕一つで私と()()()()()()!?

 

「うちは負けん...ッ!アイツらは、仲間はッ!!絶対にうちが守るんや...ッ!!」

 

サルファの体が"雷光"のように輝くと同時に、山のようなシスタの体が宙に浮かぶ。

 

「私が...っ!投げられた...っ!?」

 

そう認識した視界に映るのは、()()()()()()()一瞬姿が変わるマジアサルファ。

それはまるでチャイナ服を着た、雷の天使のように見えて...。

 

「トロいなぁ。」

「があぁ...ッ!?!?」

 

それはまさに、"神鳴(かみなり)"の一閃。

渾身の右ストレートがシスタを撃ち抜き、地面に風穴を空ける。

 

「ハァ...ハァ...っ」

 

体にバリバリと電気を纏いながら肩で息をするサルファ。

理解はできないが、一時的に強くなった?

考える余裕もなく、その華奢な体には色濃くダメージが表れている。

 

「いま、ので...っ」

 

今ので終わっていなければ。

そう言おうとした時にはもう、目の前を土煙が覆っていた。

 

「痛い、ですぅ...。」

「く、そ...っ」

 

お互いに膝をつくが、シスタはよろけながらもすぐに立ち上がってしまう。

 

「驚き、ましたぁ...あなたに、こんな力が残っていたなんてぇ...。」

「嫌味、か...この、ゴキブリシスター...っ」

「悲しいですぅ...。」

 

すでに空っぽの体。

絞り出すものすらない体に、それでも力を入れる。

シスタがゆったりと拳を振りかぶる。

その瞬間。

 

「......!?」 

 

今度はシスタの胸に、()()()()()()()()()

 

「ふわぁ~...よく寝たわ~。

てかサルファ、テメェ...。」

「!?」

 

気の抜けた声に振り返ると、そこには気絶していたはずのレオパルトの姿が。

しかも。

 

「アタシより目立つな。

"ヒロイン"は、アタシなんだよ...!」

 

サルファと同じように、その体を()()()()()()()()()

 

後に、『疑似真化』と呼ばれる形態。

ヒロインたちがその体の限界を超えてなお、心を輝かせ続けた末に辿り着く"異常"。

当然、いつまでも続くものではない。

 

「うし!アタシが倒したぁ!」

「はぁ!?アホかじぶん!?追い詰めたんはうちやろっ!」

 

お互い死にかけているにも関わらず、いつもの言い合いを始める。

 

「まだ...ですぅ...っ」

「「!?」」

 

巨大な影が再び起き上がる。

驚愕する二人以上に、シスタは自分に驚いていた。

起き上がらなくていい。

役目は十分に果たした。

その、はずなのに。

 

()()()()()()()()、シスタギガント。』

 

あの人の顔を。

あの、"偽り"の主の顔を思い出す。

別にその真意を聞いたことはない。

私も、本心を話したことはない。

だけどきっと、あの人は"知っていた"。

私が裏切ることも。

仕えてなどいないことを。

なのに、あの人は。

私を、一番信用するわけにいかない人間を、信じてしまった。

分かっているのに。

知っているというのに。

あの人には、()()()()()()()()()()

 

「...負けられ、ませぇん...っ」

「?」

「私は...っ!あの人の願いを...っ!」

「泣い、てる...?」

 

いつも浮かべていた、ただ話を合わせる為だけの嘘泣き。

それとは違う熱が、シスタの両目から頬を伝う。

 

「なんやこいつ...っ!今までとは迫力が...!」

「...ハッ!」

 

レオパルトはその様子をマジマジと見つめた後、ニヤッと口元を歪める。

 

「純愛じゃねーか。いいぜ認めてやるよぉ。オマエも"ヒロイン"ってことだな!」

「意味分からんことほざくなっ!?...と言いたいところやけど。今回ばかりは、分からんでもないなぁ。」

 

全魔力を拳に集中させるシスタに対して、二人は体を点滅させながら、最後の力を振り絞る。

 

「どっちが本物のヒロインか、決着といこうじゃねーかぁ!!」

「これで決めんとホンマに終わりや!合わせろ()()()()()ッ!!」

「テメーが弾になんだよ貧乳マジアッ!」

 

黒と黄。二つの閃光が重なり、シスタの渾身の拳とぶつかる。

 

「わた、しはぁ...っ!!」

「「ヒロインはっ!!」」

「アタシ」「うち」

「だああぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

薄れ行く意識の中、最後に思い出したのは。

誰にも心を許さないあの人が見せた隙。

玉座でうたた寝をしていた時の。

まるで少女のような、安らかな寝顔だった。

 

「ロード、さま...。」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

気絶し、元のサイズに戻ったシスタギガント。

それを視認し、自らの勝利を知るレオパルトとサルファ。

 

「あたしが、たおし、た...っ」

「ば、か...うちが、たおしたん、や...っ」

 

お互いに変身が解けていることにも気づかず、拳を合わせてそれぞれの道へ歩いていく二人。

 

「あず、る...ちゃ...っ」

「まぜ、んた...っ」

 

やがて力尽き、瓦礫だらけの街に倒れ伏す。

一つの戦いが、ここに決着した。

 

「こうふん、してきた...っ。がくっ。」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「終わりだと...?この、私が...?」

「そうよ!あなたに勝ち目はないわ...!」

 

真化した私に、強化状態のベーゼちゃん。

たとえ原作よりロードが強化されていたとしても、今の私たちには敵わないっ!

 

「ふざ、けるな...っ」

「ベーゼ!合わせなさい!」

「はい!」

 

怒りに身を震わせるロードを狙い、魔力を最大まで高める。

 

「私は!私は負けない...っ!止まらない...っ!

世界を制しっ!理を制しっ!

神すらも超えてっ!

私は必ず"あの子"を...!!

私はァ!!死ぬわけにいかないのよ...っ!!!」

「!?」

 

今までにないロードの様子に驚きながら、魔力の塊をベーゼと共に射出する。

運が良ければ生きていて欲しい。

そんな余計なことを考えている時に、"それ"は起こった。

 

真化(ラ・ヴェリタ)

 

空間が、闇に支配される。

凝縮した"黒"が、ロードエノルメの体に集まり、新たな形を成していく。

 

「そん、な...っ!?」

「これ...アズールさんと同じ...っ!?」

 

闇が晴れ、"新たな姿"となったロードが現れる。

露出の高い赤い衣装に、一部の肌を包む"鱗"。

鋭い爪に強靭な尻尾。天を突く角と、長大で禍々しい翼。

その姿は悪魔というより、まるで...。

 

「ドラ、ゴン...?」

「そうだ。()()。我が名はロードエノルメ。"黙示録の竜(アポカリプス・レッド)"。」

 

 

真化形態。『黙示録の竜(アポカリプス・レッド)』。

知らない。そんな姿は...。

そんな、力は...!!

 

「っ!!」

 

初めて相対した時のように、恐怖を振り払ってロードを凍らせようとする。

しかし、凍り付かせるどころか、ロードの体は周りの水分を()()()()()()()

 

「終わりだ、マジアアズール。マジアベーゼ。」

「ベーゼッ!!」

「っ!!」

「"魔竜咆哮(ダークネス・ロア)"。」

 

ロードの腕から漆黒の炎が放出される。

咄嗟にベーゼと魔力を集中させ、撃ち合いになるわたしたち。

 

「ぐぅ...っ!?」

「力がっ...違い過ぎる...っ!?」

 

二人の最大出力でも、拮抗し得ないほどの力。

 

「っ...!ぇ...?」

 

圧されていく中、ついにベーゼの変身が解けてしまう。

呆然とするうてなちゃんだが、魔力を吸われていたことを考えれば、かなり消耗していて当然。

"こうなる"ことは、覚悟していた。

 

「...!」

「あ、アズールさん...っ!?」

 

射出していた力を、全てうてなちゃんを守る為に使う。

障壁を張り、彼女の盾となる私。

 

「やめて...っ!やめてくださいっ!!そんなことしたらダメですっ!!そんなのアズールさんが...っ!!」

 

推しの頼みでも、こればっかりは聞けないかな。

あまりの火力に服が焼け、髪留めも落ちる。

 

「まだ戦えますっ!!戦えますからわたし...っ!!トランスマジア!...なん、で...。」

 

今のうてなちゃんには、もう戦える力はない。

だけど、絶対に死なせない。

守るんだ、私が。

 

「トランスマジア!トランスマジア!!なんで...っ!なんでよなんで出来ないのっ!?トランスマジア!トランス、マジアっ!トランス...っ!早くしなきゃアズールさんが...っ!!」

 

涙を浮かべながら、何度も変身を試みるうてなちゃん。

今までの思い出が脳裏に浮かんでは消えていく。

 

小夜になる前の思い出。

初めて魔法少女となったうてなちゃんを見た時のこと。

神社で相談に乗った時のこと。

鞭でたくさん叩かれた時のこと。

逆鱗モードを見たこと。

ドールハウスでちょっとえっちに介抱したこと。

デートに行けたこと。

魔法少女の話ができたこと。

すれ違ってしまったこと。

仲直りしようとしてくれたこと。

最後に生でマジアベーゼを見せてくれたこと。

 

それとあの、入学式でのこと。

 

全部、私の推しとの、幸せ過ぎる思い出だった。

 

「うてな。あなたが、倒しなさい。あなたなら、勝てるわ。」

「倒しますっ!倒しますからっ!今一緒に戦って...っ!それで...っ!だからぁ..っ!!」

 

キウィ。

ごめんね。

私の王子様になってくれたのに、私もう帰れないみたい。

私もキウィが大好きだよ。

 

こりす。

元気にスクスクと育ってね。

美人さんになったこりすの姿、見てみたかったなぁ。

 

はるか。

みんなをよろしくね。

あなたならみんなを幸せにできる。

お母さんみたいに、みんなを見守ってあげてね。

 

薫子。

苦労ばっかりかけてごめんね。

困った子たちばかりだから、あなたを一番頼りにしているわ。

 

真珠。

ネモと末永くお幸せに。

私は真珠ちゃんの歌、可愛くて好きだったよ。

 

ネモ。

真珠と仲良くね。

エノルミータは変わり者集団だから、あなたの良識と面倒見の良さが必要よ。

 

お父さん、お母さん。

素晴らしい人生をありがとう。

親不孝で、ごめんね。

 

最後に、大好きな私の推し。

大好きな、ベーゼちゃんに。

...ううん、そうじゃないや。

大好きな、私の"友だち"へ。

 

 

 

「うてなちゃん。ありがとう!」

 

 

 

「!......さよ、ちゃん...?」

 

魔力の炎に呑まれ、私の意識も体も一瞬にして燃え尽きる。

大丈夫、うてなちゃんには届いてない。

 

よかった。

ちゃんと、守れたね。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

カラン、と。

そう音を立てて、ひび割れたハートが地に転がる。

柊うてなはただ、光を失った瞳でそこにいたはずの影を見つめる。

彼女の最後の笑顔が、焼き付いて離れない。

止めどなく涙が溢れ、地を濡らす。

 

「アズー、ル...小夜、ちゃん...。」

 

震える口で、知った瞬間に失った名前を紡ぐ。

 

『柊さん。』

『うてな。』

『うてなちゃん!』

 

だが、誰も応えない。

頭の中では、彼女の自分を呼ぶ声がこんなにも鮮やかに浮かぶのに。

 

「ーーーーーーーーッッッ!!!!!!」

 

泣き叫んでも現実は変わらない。

水神小夜は、もうこの世にはいないのだから。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

◼️□next episode◼️□

 

「柊うてな。それがキミの、本当にあこがれた姿なんだね。」

 

第12話『My dream girls』

 

 




次回、vsロード団戦。完結です。
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