魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~ 作:月想
毎度お気に入りと評価、感想を誠にありがとうございます!
今回から第二部『
原作を踏襲しつつ、オリジナル要素が多分に含まれますので、二次創作なんてそんなもんと読み流して頂けると幸いです。
第14話『夏を告げる嵐のライオンハート』
誰もいないナハトベース。
エノルミータ総帥である、水神小夜すらも知らない『廃棄区画』にて。
"
数多の魔法少女たちの残骸、トランスアイテム。
それを母体とし、その何かは少しずつその体を大きくしていた。
ロードエノルメに敗れ散った、ヒロインたちの絶望。
悲しみ。そして、『憎しみ』。
魔法少女たちの輝きが反転した、その昏きエネルギーを吸い上げ、増幅し、力とする。
そうやってその"怪物"は、この世界に自身を刻み付けて、生きながらえてきた。
全ては、『復讐』の為。
あの日、柊うてなが起こした"奇跡"。
強すぎる想いの力が引き起こした、本来はあり得るはずのない
『エ...のる...メぇ...!!』
怪物は咆哮する。
捜すのは、ただ一人の仇敵。
絶望を振り撒く獣は、人知れず世界に解き放たれた。
これより先は、彼女が知らない物語。
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「アズール!そっちに3匹逃げたよ...!」
「任せなさい!」
狼のような魔物が、バラバラにこちらに駆けてくるのを視界に収める。
私は氷の刃を作り出し、すれ違い様にその首をすべて断ち切る。
「準備はいいわね?ベーゼ!」
「うん!」
ベーゼの作り出した巨大な
優に"20を超える"魔物の群れ。
見下ろしても尚気味の悪いその数に不快感を抱きながら、私とベーゼは並んで、それぞれの得物を重ね合わせる。
「「"メナス!!フリーザー"!!!」」
私とベーゼの魔力が合わさったエネルギーの波動。
それはスライムごと、蠢く魔獣たちを跡形もなく消し飛ばした。
「ふぅ...。」
「な、何とかなったね...。」
敵が完全にいなくなったことを確認し、地上に降り立つ。
「朝からお疲れさま。うてな。」
「小夜ちゃんも、お疲れさま。」
変身を解除し、元の小夜とうてなに戻った私たち。
互いに労いつつ、自然に手を合わせる。
小さいハイタッチだ。
「『メナスフリーザー』ねぇ。ロマンがあるのは認めるけど、いいの?仲間より先に、"敵の首領"と合体技なんて。」
「えへへ...。二人の時しか、できないから。でも小夜ちゃんもノリノリだったよね。」
「だから認めるとは言ったでしょ?
まったく、本当に悪い魔法少女ちゃんなんだから。」
「小夜ちゃんこそ、いい悪の女幹部さんだと思うよ?」
そう言いながら微笑み合う。
私たちが互いの正体を知ってから、二週間ほどが過ぎた。
相変わらず、お互いがお互いを引っ張り合う不思議な関係ではあるが。
二人だけの秘密が、絆になっていく。
そんな平穏で幸せな日常を、私たちは過ごしていた。
「でも、最近多いわね。魔物。」
「うん。はるかちゃんと薫子ちゃんも、登校中や下校中に出会すことが増えたって。」
「今回は今までで一番の数だったわ。
うてなと一緒じゃなければ被害が出ていたかも。
単独で行動するのは危険かもしれないわね。」
「二人にも、出来るだけ一緒にいるように言ってみる。
キウィちゃんとこりすちゃんは...」
「私の方から伝えておくわ。
あなたたちと一緒には出来ないし。」
「...魔物、本当にエノルミータが使役してたんじゃないんだね...。」
未だに魔物の出所については謎が多い。
勿論、ヴェナが手を引いている可能性はあるが。
ヴェナが"先生"だった時も、絶えず魔物は出現していた。
エノルミータと関係のある魔物もいるし、正直あべこべ過ぎて判断がつかない。
「少なくとも"私たち"は知らないし、一般人になんて興味はないわ。」
「そう、だよね。...ヴァーツさんなら、何か知ってるのかな。」
ヴァーツ。
魔法少女たちを生み出すマスコット的存在。
私は前々からヴェナと同じくらい、いや"それ以上に"彼?を疑っている。
あまり信用はして欲しくないのだけど。
「今は考えても仕方ないわね。ほら、急ぎましょう。このままじゃ遅刻よ、私たち!」
「あっ!?小夜ちゃん...!?///」
うてなの手を握って、通学路を駆け抜ける。
色々と心配ごとはあるが、まずは学生としての領分を守らなくては。
また新しい一日が始まる。
私の知らない未来へ続く、新たな日々が。
――――――――――――――――――――――――――――――
「さよちゃん~デートしよ~?」
「今日はダメ。」
「え~!なんで~!?」
夏休みの迫る放課後。
最早クラスでお馴染みの光景となった、小夜ちゃんに甘えるキウィちゃんの姿。
いつもなら我が儘を注意しつつ、何だかんだ言う通りにしてしまうお母さん味溢れる小夜ちゃんのはずだけど。
驚くことに、今日はピシャリと断ってしまった。
「もうすぐ期末テストでしょう?私はキウィみたいに頭が良くないから、勉強しないとまずいのよ。」
「え~。小夜ちゃんも頭いいじゃん~。」
「最近色々忙しくて勉強出来てないの。だから、デートはダメ。」
「え~...。」
小夜ちゃんはクラスでも上位の成績だったと思うけど、その裏にはコツコツとした地道な努力があったんだなぁ。
「じゃあ、また明日ね。」
「む~...。」
頬を膨らませるキウィちゃんの頭を撫で、小夜ちゃんは教室を出ていく。
今朝、危ないから単独行動は控えるって話だったと思うけど...。
小夜ちゃんは自分のこととなると、途端に行動が雑になる気がする。
私は念のため、何かあったらすぐに連絡するようLIMEを送っておく。
「よし...。」
私も帰ったら勉強しないと。
ただでさえあまり得意ではないんだし。
魔法少女になってからというもの、勉強どころか魔法少女アニメを見る時間すらほぼなくなってしまった。
嬉しいやら、悲しいやら。
これ以上成績が落ちたら、せっかく集めた魂の魔法少女グッズが捨てられてしまうかもしれない...。
したくない想像に身震いし、私も教室を後にしようとカバンを持ち上げたその時。
「うてなちゃん~。遊びいこ~?」
「えぇ!?」
小夜ちゃんにフられたばかりの、キウィちゃんと目が合った。
「暇っしょ~?すしいこすし~。」
「え...えっと...。私も勉強しないとだから...。」
「すしダメ~?じゃステーキいこステーキ~。」
「お腹空いてるの...?」
しかもやたら豪華な選択肢だし...。
キウィちゃんはまったく諦める気がないようで、上目遣いのまま私の袖を掴む。
「うてなちゃんおねが~い。"相談"あるし~。」
「そ、そうだん...?」
――――――――――――――――――――――――――――――
「小夜ちゃんに、プレゼント?」
「そ~。」
トレスマジア会議でお馴染みのファミレス。
相談というワードに思わず反応したのがまずかった。
小夜ちゃんですら揺らぐ甘え上手。
私程度の耐久値で凌ぎきれるわけもなく。
あれよあれよという間にいつものファミレスに引き摺られて行ってしまった。
ちなみに、キウィちゃんが注文したのは
『昔ながらの喫茶店風プリンパフェ』。
ステーキでもなければキウイパフェでもなかった。
「どうして急に?」
「ん~。けんせ~?」
「え...?」
牽制って、誰への...?
キウィちゃんはしばらく私をじっと見つめて、やがて普段の表情に戻って言う。
「さよちゃん大人気だし~。そろそろアタシにぞっこんになって欲しいなって~。プレゼントで爆上げ~。からのちゅっちゅ~みたいな~。」
「そ、そうなんだ...(汗)」
小夜ちゃんってそんなにチョロいかな?
というかこれ、明確に私警戒されてる...?
相談とは名ばかりの、正妻からの釘刺し的なやつなのでは...!?
「というか、まあ~...アタシのさよちゃん好き~愛してる~って気持ち。一回形にしたいな~って...///」
「キウィちゃん...。」
冗談めかしているけど、その表情は乙女そのもの。
裏なんてなくて、本当に誰かに相談したくて私を誘ったんだ...。
「わ、分かったよ。私なんかでよければ、相談に乗らせてもらうね。」
「やた~うてなちゃん好き~。プリンあげる~。」
「もがっ!?///」
急にプリンを口に突っ込まれる私。
というかこれ、さっきまでキウィちゃんが使ってたスプーンだよね!?
「でさ~。うてなちゃん、さよちゃんがよろこびそうなもの知ってる~?」
「ぅ、ごくん...。小夜ちゃんが、喜びそうなもの...。」
言われて初めて考える。
あれだけのことを乗り越えて。
こないだなんて、なんかこう...。
告白(仮)、みたいなこともして...///
なのに。
だと言うのに。
「...ま、魔法少女グッズ、とか...。」
「......それうてなちゃんだけじゃね?」
私好きな子のこと何も知らないぃ!?
お出かけしたのだって私の趣味に合わせてくれただけだったし!?
好きなものどころか普段何してるのかすら知らないんですけどぉ!?
「うぅ...ごめんねキウィちゃんっ...私小夜ちゃん力たった5のゴミみたい...!(泣)」
「えと、まあ。どんまい...?」
凄まじい小夜にわかであることが判明し、あまりのショックに項垂れる私。
キウィちゃんは少しの間思案した後、おもむろにスマホを操作し始める。
「何してるの...?」
「小夜ちゃんの好み分かんないならさ~。"カップルらしい"プレゼントにすりゃいいんじゃね~?」
「な、なるほど...。」
つまり個人ではなく、俗世間一般的な感性に頼るということだね?
フィーリングで難しい言葉を並べてみたけど、自分でもよく分からない言い回しだった。
「誰に連絡したの?」
「そりゃあもうあれよ。マジもんの
「...あぁー。」
――――――――――――――――――――――――――――――
「何なのよ急に呼び出したりして。
アイドルの時間はダイヤモンドより貴重なんだから!」
「そこはパールにしとけよ...。」
というわけで、呼び出したのはロコルベこと真珠ちゃんとネモちゃん。
直接その光景を見たことはないんだけど、それはもうすごいラブラブカップルらしい。
仲良しなのは知ってるけど、キウィちゃん曰くもう"済ませている"とのこと。
しゅ、しゅごい...。
「別にいいじゃねェか。お前暇だろ?」
「暇じゃないわよ!?次のテストがヤバかったらママにお小遣い減らされるって言ったでしょ!?」
「勉強したところで変わんないだろ真珠の場合。」
「変わるわよっ!てか変わるようにアンタが教えなさいよネモ!」
「何にすっかなァ...。お、明石風あんじゃん。やるね、このファミレス。」
「聞きなさいよっ!?」
確かに仲良しだ。
二人ともリラックスしているのが分かる。
真珠ちゃんの怒り気味な態度も、きっと平常運転なのだろう。
何だかんだ注文を済ませて落ち着いた二人に、キウィちゃんから本題が切り出される。
「ハァ?小夜へのプレゼント?」
「小夜大好きなお前らが分からねーなら、アタシらに分かるわけねーだろ。」
「じゃなくて。カップル的には何もらったら嬉しいかって話~。」
「なんで真珠たちに聞くのよ?」
「バカップル代表だから。」
「「誰がバカップルだ!?///」」
息の合った返答を見せるロコルベならぬ、たまネモ。
二人揃って照れてるのがまる分かりだ。
「違うんか~?」
「違うわよっ!///」
「ぇ...アタシら、付き合ってないのか...?」
「いやそれは違くないけどっ...。って!何で変なとこで乙女になんのよアンタ!?///」
キウィちゃんたちがいじりたくなるのも頷けるピュアカップルっぷり。
羨ましいというより微笑ましい。
「というかキウィアンタ!うてなに真珠たちのことバラしたわけ!?」
「それはたぶんさよちゃん。」
「小夜のやつ知り合ったばかりの子になんてプライバシーな話を...!///」
「ま、まあ...。たぶん、大丈夫だと思うぞ?そいつなら...。」
言葉とは裏腹に私から目を背けるネモちゃん。
何だろう?何か妙に距離を感じるような...。
「で。どうなん?何もらったら嬉しいわけ?」
「真珠、ゲーム買ってくれ。」
「真珠はアンタのママじゃないんだけど!?ネモこそ新しいカバン貢ぎなさいよ!」
「アタシはキャバクラ通いのオヤジか!?自分で買えよ減った小遣いでなァ!」
「まだ減ってないし!てか減らないしぃ!?」
話をしようにもすぐに二人の世界に入ってしまう。
キウィちゃんも若干イライラしてきたようで、口調が甘えモードからレオパルトモードに変わって来ているのが分かる。
流石にまずいと思って、私も遠慮がちに口を開いてみる。
「あ、あの。キウィちゃん、真剣に悩んでるみたいで...。何でもいいから、何かアイデアがあったら教えてくれないかな...?」
「.....真剣、か。」
「...まあ。小夜のことに関しては、いつもマジっちゃマジよね。キウィは。」
どうやら真面目に考えてくれる気になったみたい。
届いた食べ物を摘まみつつ、二人はプレゼントについて考えを巡らす。
「でも"カップルだから"とか。立場で嬉しいかどうか変わるプレゼントとかあるの?」
「服とか他人からもらったら怖くね?」
「ああ、知らない人から下着とか最早ホラーね。」
「下着なんて恋人からでも嫌じゃないか?」
「真珠は別に嬉しいけど。」
「「「え?」」」
「へ?」
真珠ちゃんの発言に思わずハモる私たち。
次第に真っ赤になっていく真珠ちゃんに合わせて、ネモちゃんまでその表情をリンゴ色に染めていく。
「ちがっ!?別にネモに似合うやつを見つけて思わずお小遣い全部使って買っちゃったとかそういうわけじゃなくてっ!?///」
「ま、真珠...お前...///」
「違うからっ!?第一アンタ下着もらうの嫌なんでしょっ!?///」
「......嫌なわけ、ないだろ...///」
「ぇ...?」
向かい合うまたネモ。
まるで鏡のように同じ真っ赤な顔を見合せ、二人は言葉を紡ぐ。
「真珠からもらったモノなら、アタシが嬉しくないわけないだろっ...///」
「ね、ネモっ...///」
あまーーーーーーーいっっっっっ!!!
ゲロ甘。
甘いしか、言えんし。
「ブラックコーヒー。淹れてくるね...。」
「アタシ、原液で...。」
――――――――――――――――――――――――――――――
「ちっ...。うてなから呼ばれて仕方なく来ただけやのに。何でこいつがおるんや。」
「それはこっちのセリフだひんにゅーばか。帰れ。」
「ま、まあまあ。薫子ちゃんもキウィちゃんも落ち着いて!ほら、なめたけ食べる?」
「「いらんわ!」」
続いて私が助けを求めたのは、我らが『トレスマジア』こと、はるかちゃんと薫子ちゃんコンビ。
二人とも快く呼び出しに応じてくれたけど、相変わらずキウィちゃんと薫子ちゃんは犬猿の仲。
お店を顧みない悪口合戦を始めようとしていた。
ちなみに、真珠ちゃんとネモちゃんには帰ってもらった。
甘々過ぎてこちらが限界だったので仕方がない。
後、はるかちゃん?
ファミレスに持ち込みはダメだからね...?
「何でこんなの呼んだのうてなちゃん~...。」
「お友だち歴で言うと、私たちよりはるかちゃんたちの方が長いから。小夜ちゃんの喜ぶモノ、何か分かるかもしれないって思って。」
「あ~...。」
「小夜ちゃんが、どうかしたの?」
不機嫌そうにそっぽを向く薫子ちゃんとは対照的に、進んで話を聞いてくれるはるかちゃん。
スムーズに今回の相談内容について説明する。
「あたしに任せて!小夜ちゃんの親友として力になるよ!」
「「おぉー。」」
「親友やったんか...。」
胸を張るはるかちゃんに期待を寄せる私たち(一人除く)。
ガサゴソとカバンを漁るはるかちゃんが取り出したのは...。
「じゃーん!」
「...。」
「...?」
「...なんやこの、キモイの。」
ファミレスの机にどかっ!と置かれた謎の黄緑色の植物。
集合体恐怖症の人にはなかなか厳しい見た目のそれを自慢気に撫でながら、はるかちゃんは語る。
「『ロマネスコ』だよ!カリフラワーの一種なんだけど、アブラナ科アブラナ属の一年生植物で」
「キノコですらッ!ないんかいッ...!!」
薫子ちゃん魂のツッコミが響く。
今までのキノコキャラは何だったのか。
そこはヤバいキノコじゃないのか。
見た目が変なら何でもいいのか。
そのやるせない感情すべてを乗せた、見事なツッコミだった。
「プレゼントならロマネスコが一番だもんげ!」
「ええからはよ親友の座から下りろ。付き合わされる小夜が不憫や。」
「そこまで言う!?(泣)」
戦力外なことが判明した親友(笑)を無視し、薫子ちゃんに視線を集中させる私とキウィちゃん。
冷や汗を流しながら、薫子ちゃんからのテレパシーが私に届く。
『何やってんねんうてな。そいつ一応恋敵ちゃうんか?敵に塩送ってどないすんねん。』
『いやぁ...キウィちゃんはお友だちだし...恋敵とか、そういうのじゃ...。
それに私、同担は別に気にしないタイプだから...。』
『推しやなくて恋人の話やろ!!』
『ご、ごめんなさい...!?』
『まったく...しゃあないなぁ。』
薫子ちゃんは溜め息を吐いて、すぐにその表情をお馴染みの悪い笑顔に変える。
「小夜の喜ぶもんなぁ。知っとるで?
二人で出かけたこともあったさかい。」
「マジか!?教えろ薫子!!」
即効で食いついたキウィちゃんの姿に、益々口元を歪める薫子ちゃん。
これは...嫌な予感...。
「小夜はなぁ、ナマコが好きなんや。」
「ナマコ、だと...!?」
「せやで?三度の飯よりナマコが好きで、
食べるのも愛でるのも大好きなんやって。
家にはペットのナマコと養殖ナマコがおって、寝る時はお気に入りのナマコぬいぐるみを抱き締めて眠りに落ちるそうや。」
「そ、そうだったのかぁっ...!」
そんなわけないでしょ。
ナマコ愛好家の時点でそこそこ"アレ"なのにペットと同じ生き物を喜んで食べてるとか小夜ちゃんの感性歪み過ぎてひどい。
虫とか爬虫類好きには割りといるのかもしれないけど、私の小夜ちゃんはそんなことしない。
解釈違いは認められません。
「せやからナマコ関連なら、どないなプレゼントでも小夜は喜ぶやろなぁ。」
「お、恩に着てやるぜ薫子...っ!こうなったらありとあらゆる手を使って最高のナマコとナマコグッズを集めてやるぜぇ!!」
「待って。待ってキウィちゃん。」
今にもありったけのナマコをかき集めて一繋ぎの大ナマコをプレゼントしそうなキウィちゃんを引き止める。
「か、薫子ちゃんっ。そのイタズラは誰も幸せにならないから...。薫子ちゃん以外。」
「あはは!こない簡単に信じるかぁ?やっぱし団子頭にはあんこしか詰まっとらんみたいやねぇ。」
「は?...あ!薫子てめぇ!!騙しやがったなこのひんにゅー!!」
「騙される方が悪いんや。」
「こ ろ す っ !!」
漸く騙されていたことに気付いたキウィちゃんと、それを心底気持ち良さそうに笑う薫子ちゃん。
結局いつも通りの言い合いを始めてしまう二人。
私とはるかちゃんでは到底止めることも出来ず、ヒートアップし過ぎてついにファミレスを追い出されてしまった。
...ここ、よく使うのに。
出禁にならないといいなぁ...。
――――――――――――――――――――――――――――――
ピンポーン。
暴れる二人をはるかちゃんと引き離し、キウィちゃんを宥めながらやって来たとあるマンション。
「ここって。こりすちゃんの家じゃ...?」
「そだよ~。行く約束してたのすっかり忘れてた~。」
「えぇ...(汗)」
小夜ちゃんとデート行けてたらどうするつもりだったのかな...。
こりすちゃん、しばらく口聞いてくれないんじゃ...?
あ。元から無口だったね。
ガチャ。ウィーン。
心なしか前より長く待たされた後、いつも通り無言でドアが開く。
何度かお邪魔している私たちは、慣れたルートで部屋の前まで辿り着く。
「ムスッ...。」
「おっすこりす~。来てやったぞ~。」
バタン!
不機嫌なこりすちゃんが見えたかと思えば、すぐに勢いよく閉められる扉。
あぁ。これは相当怒ってるな...。
「んだよ~。ちょっと遅くなっただけだろ~。」
「たぶん、キウィちゃんが忘れてたって気付いてるんじゃ...?」
「開けろよこりす~!」
キウィちゃんが呼び掛けるけど、一向にこりすちゃんが応じる様子はない。
「き、キウィちゃん、まずは謝った方が...。」
「ハァ~?遅れただけでちゃんと来たじゃん。こりすがガキなだけだし~。」
キウィちゃんも意固地になってる。
まずい、本当にケンカになっちゃう...。
こんな時、小夜ちゃんならきっと...。
「んだよこりすのやつ!もういい!帰る!」
「き、キウィちゃん待って!」
「やだ!こりすなんてもう知んないし!」
「...あのね、キウィちゃん。何でこりすちゃんが怒ってるか分かる?」
「拗ねてるだけっしょ!ガキだから!」
「こりすちゃんはね、キウィちゃんを楽しみに待ってたから。だから怒ってるんじゃないかな...?」
どうでもいい約束なら、破られて怒ることなんてない。
今日起きた時から、もしかしたら昨日から。きっと楽しみにしていたはず。
「キウィちゃんが小夜ちゃんとデートの約束をしてて、それをただ忘れてたからってすっぽかされたら、キウィちゃんはどう思う?」
「それは......ヘコむ...しにそう...。」
「落ち込むのは、その約束がすごく楽しみだったからだよね。小夜ちゃんのことが好きで、楽しみで。こりすちゃんも、"一緒"なんだと思うよ。」
「......。」
こういうのは向いてないかもしれないけど。
今の私に出来ることをしないと。
変身してなくたって、私は魔法少女なんだから。
「こりすちゃん、待ってるよ?
大好きなお姉ちゃんとして、言わないといけないことがあるんじゃないかな...。」
「...ん。分かった...。」
キウィちゃんは神妙な面持ちでインターホンを押す。
ドアは開かないが、きっとモニターから様子を見ているに違いない。
「...ごめんなこりす。ちゃんと埋め合わせすっからさ~...。ここ開けてくれよ~...。」
キウィちゃんなりの、精一杯の謝罪。
しばらく無音の時間が続くけど、やがて小さな音を立ててゆっくりと扉が開いた。
「こりす...!」
「...コクリ。」
「こ、こりすぅ~!(涙)」
感動の瞬間。
仲直りのハグをする二人を笑顔で眺め、私は小夜ちゃんのいつも見ている景色を堪能するのであった。
...というわけには行かず。
「こりすちゃん、こんにちは。今日は何して遊ぼうか?」
「コクコク。」
私に抱き着き、そのまま私
「こ、こりす~...!?キウィおねーちゃんのこと忘れてんだけどぉ~!?!?」
まさに
結局、キウィちゃんが泣き出すまで部屋に入れようとはしなかった、実はドSなこりすちゃんなのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――
「ぬいぐるみ直して欲しい?んなの、うてなちゃんに頼めよ~。」
「フルフル。」
やっとの思いでこりすちゃんの家に入れてもらった私たち。
何をして遊ぶのかと待っていると、こりすちゃんが持って来たのは所々破けたり、千切れたりしてしまったぬいぐるみたちだった。
「アタシ裁縫なんてできないしさ~...。」
「...。」
「こりすちゃん。私でよかったら、また直すよ?」
「...。」
こりすちゃんは迷った様子で、でもやっぱりキウィちゃんの方を見つめている。
「キウィちゃんに、直して欲しいんだね?」
「コクリ...。」
「んでだよ~。アタシ下手っぴだし、小夜ちゃんにも頼んでやるからさ~?」
机の上に置かれたあのアンティークのお人形と、こりすちゃんらしくない、ロボットのプラモデルが視界に映る。
どちらも
「あのプラモデル、こりすちゃんが作ったの?」
「ん~?あぁ~。あれアタシがやったやつ。かっけ~っしょ?」
キウィちゃんの作ったプラモデルに、さっきの約束の話。
それが今日の"プレゼント探し"に繋がった。
「!...キウィちゃん、お裁縫やってみない?」
「えぇ~...アタシ、そういうこまいの苦手だし~...。」
「こりすちゃんと小夜ちゃん。二人とも喜ばせられるかもしれないよ?」
「え、やる。...何で?」
大切な人からのプレゼント。
気持ちを伝えるには、やっぱり"手作り"が一番だよね!
――――――――――――――――――――――――――
「お、終わったぁ~!!」
「はるかの場合は別の意味で、やな。」
鳴り響くチャイムと同時に、クラスが一瞬にしてお祝いムードに変わる。
期末テスト、終了。
それはつまり、夏休みが間近に迫っていることを表す。
まるで戦時中からの終戦記念日。
かく言う私も、無事終わったテストにホッと胸を撫で下ろしていた。
「まあ、何とかなったわね。うてなはどう」
「ぉ...おわった...わたしの、たましぃ...。」
死神と賭けでもしたのだろうか?
真っ白な灰になったうてなから結果を察する私。
二人きりならおっぱいでも使って慰めてあげたいところだが、学校ではそうもいかない。
せめて追試対策は手伝ってあげようと決意する。
「さよちゃん、あのね。」
「キウィ。テストお疲れさま。
しばらく遊べなくてごめんね?
埋め合わせに、今日はこの後」
「これ、あげる!」
そう言って、手の上の何かを私に見せるキウィ。
「小さい、" レオパルト"?」
「そうっ!よかった!伝わった...!」
デフォルメされてはいるが、その特徴をよく捉えている。
見事なレオパルトのマスコットだった。
「これ...あなたが作ったの?」
「うてなちゃんに教えてもらって~。ついでにこりすのぬいぐるみ直したりした~。」
「テスト期間中、ずっとこれを...。」
マスコットを見せる手。
その"絆創膏だらけ"の手を見て、キウィがどれほど苦労してこれを作り上げたのかを悟る。
「裁縫、苦手だって言ってたのに...。」
「ガンバったら、さよちゃん喜んでくれるかな~って。」
そのほにゃっとした笑顔に、思わず胸がキュンとしてしまう。
私はマスコットを受け取り、今できる最高の笑顔で応える。
「ありがとう、キウィ。こんなに素敵なプレゼント、生まれて初めて...。本当に、ありがとう。」
「!...さよちゃんの初めて、もらっちゃった~///」
おどけるキウィの頭を撫で、精一杯の感謝を伝える。
うてなもこれに付き合ってくれたのだとしたら、あの真っ白状態はそのせいなのかもしれない。
......いよいよおっぱいで詫びるしかないか。
「お礼に今日は付き合うわ。好きな所に遊びに行きましょう。ホテル以外でね?」
「やた~!...でも、ちょっと待って~。」
「どうかしたの?」
キウィは何やら思い出した様子で、私に抱き着こうとした腕を引っ込める。
「ちょっと、うてなちゃんと"お話"~。」
――――――――――――――――――――――――――――――
「どうしたの?キウィちゃん。」
テストで久しぶりの絶望を味わっていた私はキウィちゃんに屋上まで呼び出された。
「マスコット、さよちゃんに喜んでもらえた~。」
「!...そっか!よかったぁ!」
キウィちゃんがどれだけ努力してあれを作り上げたか、私が一番よく知っている。
期末テストを犠牲にした甲斐があったというものだ。......もの、だ...っ。
「うてなちゃんのおかげ。ありがと~。」
「そ、そんな...///」
頑張ったのはキウィちゃんだし、プレゼントを渡したいって考えたのもキウィちゃんだ。
恋するヒロインの姿、しかとこの目で見届けさせてもらったよ。
「それでね。うてなちゃんに聞きたいことあって。」
「聞きたいこと?」
「うん。うてなちゃんも、
.........へ?
「うてなちゃんは"作ってたやつ"、渡さないの?」
「な...え...?」
困惑して言葉を失う私に構わず、キウィちゃんは話を続ける。
「あれ、マジアベーゼっしょ?さよちゃんマリーノ好きだったし、喜ぶと思うな~。」
「...!」
不意に出た、別の私の名前に動揺する。
見事に小夜ちゃんへの気持ちを言い当てられ、最早私が魔法少女であることすらバレてしまったのではないかと錯覚する。
「ぇ...と...その...」
「さよちゃんの一番は渡さないけど~。
"二番"だったらいいよ~?」
「え...?」
そう言ってキウィちゃんは顔を近づけ、そのまま私の頬に軽く"唇を触れさせる"。
それがチークキスであることに気付き、動揺していた頭はついにショートしてしまった。
「な!?なななななにをぉっ!?///」
「照れてるうてなちゃんかわいい~。うてなちゃんなら、アタシもいいよ~。」
「いいってナニが!?ナニを...!?///」
完全に使い物にならなくなった脳みそにキウィちゃんの小悪魔発言は難解過ぎる。
意味不明な返しをする私を笑っていたキウィちゃんだったが、途端にその目つきを鋭くする。
「でもやっぱ~、うてなちゃんもさよちゃんの一番がいいって言うならさぁ?」
バンッ!と私の後ろの壁に手を付けて、至近距離で見つめ合う私たち。
「いつか決着、着けようね...?」
「ヒュッ...(震)」
その好戦的過ぎる壁ドンに、思わず腰が抜ける私。
先ほどとのギャップで心も頭もぐちゃぐちゃである。
「じゃあ、アタシこれからさよちゃんとデートだから~。また明日ね~。」
「......ば、ばいばーい...。」
フリフリと手を振って屋上から離れるキウィちゃんを、放心状態で見送る。
「あ、あはは...。」
渇いた笑いが屋上に響く。
どうやら、キウィちゃんにとっては、私はもうただの友だちではなかったらしい。
二つに一つ。
魔法少女と言い、恋愛と言い。
この夏は私、柊うてなにとって。
人生最大の、波乱の日々となりそうです...。
――――――――――――――――――――――――――――――
◼️□next episode◼️□
「マジアベーゼ。キミが水神小夜と結ばれることは決してない。」
レオパルトは豹です。戦車です。知っていますとも。
タイトルはフィーリングです←
2期の1話らしくメインキャラクターたちの日常風景を描いてみました。
主人公の出番が少ない?平常運転やろ()
小夜ちゃんはこっからが本番やさかい!
次回は8/3(土)0時更新予定です。
要望は引き続き募集中です!