魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

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小夜ちゃんの誕生日って9(キウ)1()日なんですよ(挨拶)
今回かなりの長編になってしまいました...。
アニメの話数でまとめたい方針なので前後編に分けてないです。すみません...。
お時間ある時に、休み休みどうぞ。


第15話『ドキッ☆ヒロインだらけのアズールの試練!ポロリもあるよっ!』

「トレスマジアの必死な顔が見てぇ。」

 

「初っ端からキャラをかなぐり捨ててんじゃないわよ。」

「ワイルドなさよちゃんもステキ♥️」

 

期末テストを無事終え、何をするでもなくナハトベースに集まった私たち。

各々自由に過ごす円卓で、私はつい頭の中の願望を垂れ流してしまう。

 

「最近トレスマジアと戦ってないでしょ?魔物とか、テスト勉強とか。作業ばっかりで楽しくないのよ。」

「楽しみで戦ってるとか、ある意味悪の首領してるわね...。」

 

転生したのに大して無双出来ないテスト勉強。

たまに変身しても無駄に群れる魔物の駆除ばかり。

いい加減フラストレーションが限界値だ。

 

ベーゼの泣き出しそうな顔が見たい。

サルファの恥辱顔が見たい。

マゼンタの快楽に耐える顔が見たい。

 

「トレスマジアで、遊びてぇ...。」

「さよちゃんアタシで遊ばない?!いいよきて!弄んで!無茶苦茶にしてぇ~!」

「スピー...Zz」

 

何かいい方法はないだろうか。

そう思考を働かせるが、浮かぶのはトレスマジアのえっちな妄想ばかり。

やはり欲求不満は良くない。

 

「ちょっとネモ。ここ教えなさいよ。」

「ふわぁ~...。」

「何よ、また寝てないの?」

「新作RPGのダンジョンがなかなか難易度高くてさぁ...久々に手間取っちまった...。」

「相っ変わらずねアンタ。ちゃんと寝なさいよ。目のクマ余計に酷くなっちゃうじゃない。」

「うっせーなぁ...。」

 

ふと聞こえたバカップルの会話から、掠れて消えかかっていた"記憶"が蘇る。

 

「"ダンジョン"...!その手があったか...!」

「は...?」

「何思い付いても今は手伝わないからね!トップアイドルに暇なんてないの。」

「追試受けなきゃなんねぇばかは大変だよな~。」

「はっ倒すわよ!?何でその感じで勉強は出来んのよアンタ!?」

 

そういえば、原作のうてなもネモの発言から思い付いていたか。

因果は巡るものだと思いつつ、私は早速計画を練り始める。

 

「こりす、ちょっと提案があるのだけど。」

「パチッ。...?」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「完成よ...!」

「マジで造りやがった...。」

「さっすがさよちゃん~。」

 

ミンミンとセミが鳴き続ける初夏の山林。

その拓けた場所に佇む異質な遺跡。

アリスのドールハウスを応用し、私の魔力を練りに練り上げた自信作がこれだ。

 

その名も『紺碧(アズール)試練(シレン)』。

 

名前はフィーリングで、実在の名作不思議のダンジョンゲームとは1ミリも関係はない。

 

「ホクホク。」

「子どもを買収なんて恥ずかしくないの...?」

「失礼ね。一人の立派な女と見込んでの、対等な取引よ。」

 

ほくほく顔で新しいおもちゃたちを眺めているアリス。

おかげでお小遣いが大分吹き飛んだが、トレスマジアと遊ぶ為なら惜しくはない。

ついでにアリスも喜んでくれたし。

 

「さあ、入りなさい!私の可愛い下僕たち!」

「誰が下僕よっ!?」

「何でアタシらまで入るんだよ...。」

「何言ってるの。

序盤はあなたたちが主役よ?

私の為にトレスマジアをひぃひぃ言わせなさい。」

「は~い!アタシがんばる~!」

 

いい機会だ、そろそろこの子たちにも魔法少女をいじめる楽しさを味わってもらおう。

相変わらずロード戦の共闘で、敵意が薄れてるみたいだし。

魔法少女と悪の組織はバチバチにやりあっていないといけないのだ。

うてな(プライベート)ベーゼ(仕事)は別。

悪は悪らしく、卑劣にやらしく正義の味方をいたぶるのがベスト。

レオたちにもそれを理解させなければ。

 

「手伝わないって言ったじゃないっ!」

「だりぃ。アタシらはもう帰...」

 

「こらーっ!!こんな所でなにしてるのエノルミータ!!」

 

これこそ飛んで火に入る夏の虫。

元気な声に空を見上げると、そこにはお馴染みのトレスマジア(ヒロインたち)の姿があった。

 

「あんたらもノコノコやってきてんじゃないわよ!!」

「ハァーッハッハッ!!私たちを倒したくば恐れず追って来なさいなー!!」

「ど、どう見ても罠だぁ...!?」

「逃がさないよエノルミータ!!」

「あぁ、もうっ!気ぃ抜かんといこけ二人とも!」

 

手筈通り、私たちを感知したトレスマジアをダンジョンに誘い込む。

入り口に入ると同時にゲートを展開し、モニタールームにアリスと二人で転移する。

 

ズズズッ...!バタンッ...!

 

「や、やっぱり罠だった...。」

「ど、どこ行っちゃったのアズールちゃんたち!?」

「ホンマに逃げ足だけは速い奴らや...!」

 

勿論扉はすかさず施錠。

退路を塞がれたトレスマジアが狼狽えるのを楽しみつつ、彼女たちの前に魔法で作り出したヴィジョンを投影する。

 

『よくぞいらっしゃいました正義のヒロインの皆さま。

本日はあなた方の為に、細やかながらおもてなしをご用意致しました。

久しぶりの再会を祝して、ごゆるりとお楽しみ頂ければと存じます。』

「また妙なこと企んどるな...!」

「おもてなし...?ご馳走あるの!?」

「マゼンタちゃん。こういうのを皮肉って言うんだよ...?」

 

ちなみに、他の面々にはすでにそれぞれの"持ち場"に付いてもらっている。

"仕掛け"についても説明書を用意したので、あの子たちなら上手く使いこなしてくれるだろう。

 

「さて...。」

 

徐に胸元からカンペを取り出す私。

 

『では最初の問題です!!』

 

デデン!

 

「いやクイズ番組かいっ!!」

 

『マジアマゼンタのスリーサイズは』

 

「8ピーーーーー(プライバシー保護)

「ノータイムで答えないでっ!?///」

 

ブッブー!

 

「え!?そんなはずは...!」

 

『正解は、最近ファミレススイーツを食べ過ぎて太り気味の8ピーーーーー(プライバシー保護)でした。』

 

「ななななんで知ってるのぉぉ!?///」

「私としたことが一生の不きゃあぁぁーっ!?!?」

「ベーゼぇぇぇ!?」

 

秒速で落とし穴にボッシュートされるマジアベーゼ。

このダンジョンは飛行を封じる特別製。

為す術もなく予定通りの位置に移動したはずだ。

 

「おいこらアズール!卑怯な手使うてベーゼをどこへ」

 

『続いての問題です。』

 

デデン!

 

「ちょい聞けやっ!?」

 

『なめたけの原材料と言えば』

 

「はい!エノキタケ!!」

 

ブッブー!

 

「なんでぇ!?」

 

『なめたけの原材料と言えばエノキタケですが、ルベルブルーメの嫌いな食べ物はなんでしょう?正解は"しいたけ"でした。』

 

「しいたけ美味しいのにぃぃぃぃぃ!?!?」

「何で最後まで聞かんのやマゼンタぁぁぁ!?」

 

憐れにもベーゼと同じように落ちていくマゼンタ。

二人とも素直過ぎる。

なんて可愛いのだろう。

 

「ちっ...!(なんや、ここに入ってから飛ぶイメージがまったく掴めん。細工しおったな...!)」

『ふふっ。不安そうね、サルファ。』

「笑うてられんのも今の内や!うちはあの二人とは違って素直やないしなぁ!」

 

ニヤリと笑うサルファを見て、私も口元を歪める。

 

『では、第三問!』

 

「...!(まずは冷静に最後まで問題を聞いて...!)」

 

ポチッ。ジャコ。

 

『な~んちゃって。』

「問題言えやぁぁぁぁーッッ!?!?」

 

断末魔が心地いい。

結局三人ともボッシュートされるトレスマジア。

ちゃんと騙されてる辺り、サルファもなんだかんだ素直可愛い。

 

「あぁ!たまらないわあの表情!!悔しさと恥ずかしさと怒りの詰まった三者三様の輝きぃ!!

私今っ!最っっ高に幸せっ!!」

「......。」

 

白い目を向けてくるアリスを抱き締めながら、私は興奮する。

これこそがエノルミータの醍醐味。

忘れていた感覚に身震いする。

 

「次はあなたたちの番よ。"秘められた才能"を、私に見せてちょうだい。」

 

この個人的趣味に走ったように見えるダンジョン。

実はそれなりに"真面目な狙い"があったりする。

お楽しみはこれからだ...!

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「あああああああああいいいいいやあああああああ!!!!」

 

およそヒロインとは思えない叫び声を上げて

先の見えない坂を駆けるマジアマゼンタ。

勿論気がおかしくなったわけではなく、彼女の背後には某考古学者トレジャーハント映画でお馴染みの巨石が迫っていた。

 

サルファであればそれを力ずくで砕くという選択肢もあるが、今はマゼンタ1人だし、彼女の膂力と槍では流石に分が悪い。

結果として、彼女はあてもなく坂を下り続けるしかなかった。

 

「どどどどどどどどこかに逃げないと潰されちゃ...あっ!!」

 

このままではマジアカーペットになってしまうと絶望したその時。

右端に"扉"が見え、反射的に中へ飛び込む。

 

「た...たすかったぁ...へとへとだよぉ...。」

 

巨石の転がる音が通り過ぎたのを感じ、何とか難を逃れたと胸を撫で下ろすマゼンタ。

呼吸を落ち着かせ漸く部屋の中を見渡すが、すぐにその異常性に気づく。

 

「ひぇっ!?すごい数のお人形さん!?」

 

彼女がいたのは、まるでコンサートホール。

舞台脇に座り込んでいた彼女は、観客席を埋め尽くす大量のシルバ○アファミリーめいた人形たちを発見する。

そのどれもが、"生きている"かのように歓声を上げていた。

 

「やっぱりここ、アリスちゃんが造ったんだ...!」

「待っていたわよマジアマゼンタ!いえ!宿()()()()()()()っ!」

「こ、この声は...!?」

 

さっきまではなかった人影。

ステージの中央にスポットライトが当たり、その声の主が照らし出される。

 

「ロコちゃん!?」

「アンタの相手はこのスーパーアイドル!ロコムジカよっ!☆」

 

名乗りを上げると共にステージが煌びやかなモノに変化。

巨大な機材とモニターが現れ、マイクがそれぞれの手に握られる。

 

「な、なにこれ!?マイク...?」

「ロコとアンタの勝負と言えば、"これ"以外にないでしょ!」

 

自信満々にモニターを指差すロコムジカ。

困惑するマゼンタは、そこに表示されたタイトルに思わず息を呑む。

 

『うたうまアイドルはどっちだ!?ドキドキ☆脱衣カラオケバトル!』

 

「......。」

「......。」

 

「聞いてた内容と違うんですけどぉっ!?」

「そっちが驚くのぉ!?」

 

主催者側でありながら何故か驚愕するロコムジカ。

狼狽する二人を嘲笑う声と共に、モニターは諸悪の根源たるルシファアズールを映し出した。

 

『ご機嫌いかがかしら?ロコ、マゼンタ。』

「アンタのせいで最悪よっ!!」

「死ぬかと思ったよ!?」

『楽しんでもらえているようで何より。それじゃあルールを説明するわね。』

「部下とくらいコミュニケーション取りなさいよこのパワハラ上司っ!?」

 

二人の苦情を意に介さず、アズールはまた、その豊かな胸元からカンペを取り出す。

彼女はセクシーな女首領を目指しているのだ。

 

『交互に歌って点数を競います。点が低い方が一枚ずつ脱いで、最終的に全裸になったら負け。罰ゲームです。以上。』

「アズールちゃんなんでいっつも脱がすのぉ!?」

「罰ゲームって何よ!?負けたらロコもするんじゃないわよね!?」

『真剣勝負なんだし当然でしょ?まさか逃げないわよね?"スーパーアイドル"ロコムジカが。』

「!......や...」

「ロコちゃん...?」

「やってやるわよぉ!?マゼンタをひんむいてあの時のロコの気持ち分からせてやろうじゃなぁい!?」

「ロコちゃぁぁんっ!?」

 

あまりにもチョロ過ぎるロコに驚きつつ、その実マゼンタは安心していた。

彼女らしくない意地の悪い考えだったが、『歌唱力勝負』であればロコに負けることはないと考えていたのだ。

 

勿論、覚醒したロコの歌は彼女とて聴いている。

感動したし、敵わないなぁとも思った。

だが、その後また聴かされた歌声は、あの素晴らしいものとは似ても似つかない非常に微妙なものだった。

一時間以上歌い続けても、あのレベルから上達していなかった。

あれがロコの素なのだろう。

 

「わ、分かったよロコちゃん!その勝負っ!受けて立ぁぁつ!!」

「それでこそ我がライバル!!前回の雪辱を晴らしてやるんだからっ!!」

 

勝った!

そう心で笑うマゼンタを見透かすように、アズールはその表情を邪悪に歪める。

 

『では、始めましょうか。アイドルバトル!レディー!!ゴーー!!!』

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「数だけの雑魚が...!邪魔や!」

 

暗い洞窟に鳴り響く炸裂音。

ネロアリスの操るおもちゃたちが、トラップとしてマジアサルファに襲い掛かる。

しかし、サルファはそれを軽々と迎撃。

殴り、蹴り、砕き、投げ、潰し。

そして前進する。

 

「マゼンタ、ベーゼ...!」

 

テレパシーも繋がらない、孤立無援状態。

彼女ははぐれた仲間の安否が心配で堪らなかった。

特にベーゼは、敵の首領らしいルシファアズールに特別に関心を持たれている。

何をされているか、考えるだけでも鳥肌が立つ。

 

焦りは募る一方だが、あくまでも冷静に、確実に前へ。

そうしていると、いつの間にか目の前に仰々しい扉が現れていることに気づく。

 

「...なんや、もうボス部屋かいな。」

 

不敵に笑いながら、サルファは扉に手を掛ける。

余談だが、彼女の趣味は年相応にテレビゲームだったりする。

こういう趣向自体は嫌いではないのだ。

 

「マゼンタ...!?」

 

勢いよく開いた扉の先。

無駄に広い部屋の中心に倒れていたのは、捜していた仲間の片割れだった。

 

「サル、ファ...?」

「無事かっ!?何されたんやっ!?」

 

急いで駆け寄り、助け起こす。

外傷はないようだが、どこか虚ろな表情でこちらを見つめるだけのマゼンタ。

どこかに敵が隠れているのかと警戒を強めるサルファだったが、()()()()()

 

「なっ!?うぐぅ...っ!?」

 

次の瞬間。"天井"が丸々サルファたちを押し潰そうと墜落してきた。

咄嗟にマゼンタを庇い天井を受け止めるサルファだったが、強い衝撃が小さな体を駆け巡る苦痛に、思わず声を漏らす。

 

「ま、マゼンタ...!はよ...!先、へ...っ!」

 

体を震えさせながらも、マゼンタを逃がそうとするサルファ。

だがマゼンタは逃げる所か、口元をニタリと歪ませてサルファに抱き着いた。

 

「な、なな何しとんねんこないな時、にっ...!?」

「ふふっ...うふふ。フフフ。フヒヒヒヒ!」

 

マゼンタ、ではなく。

()()()()()()()()は不気味に笑い、身動きの取れないサルファの服を乱暴に引きちぎる。

 

「く、そっ...!小癪な罠をぉっ...!!」

『あっさり引っ掛かったなァ。流石正義のヒロイン様だ。』

「!?」

 

突如、サルファの"影"から声が響く。

仲間を心配するあまり、まんまと罠に掛かった憐れなヒロインを嘲笑いながら、『ルベルブルーメ』がその姿を現す。

 

「貴様の仕業やったんか...!!」

「段取りはアズールとアリスだよ。アタシは最後の詰めってヤツさ。」

「っ!?うご、け...へんっ...!」

 

ルベルの影縛りにより完全に身動きを封じられたサルファ。

人形はカタカタと笑うように身を震わせながら、その異形の舌をサルファの耳へ近付ける。

 

「チュルッジュルル...!」

「きひっ!?や、やめ...!?///」

 

今まで味わったことのない感覚に悶える体、恐怖する心。

人形は更に追い立てるように彼女の体の敏感な部分に触れ、弄り始める。

 

「ぁっ!?が、あぁ...!?///」

 

気を抜けばすぐに押し潰される状態で、彼女は未知の快楽に耐え続ける。

思考など最早出来るはずもなく、1分1秒が永遠に思えるほどの苦痛が彼女を襲う。

 

『ガンバれよ~。1時間耐えたら解放していいってさ。恨むならアタシじゃなく、アズールを恨めよ?』

「こ...ころ、す...っ!///」

 

地獄はまだ、始まったばかりのようだ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「はぁっ...はぁっ...し...死んじゃうぅ...。」

 

マジアベーゼは疲弊していた。

というのも、彼女の落ちたエリアはちょっと邪悪な"アスレチックゾーン"。

当たったら真っ二つの鎌や、潰されたらあらゆるものをぶちまける鉄塊が落下、時には左右を行ったり来たりして、常にハラハラドキドキが止まらない場所だったのだ。

 

魔法少女になったことで身体能力は超人となっているものの、元の運動神経には自信がないベーゼ。

常に死を覚悟しながらの前進に、体力も精神力もゴリゴリ削られてしまっていた。

 

「あれ...?」

 

いつの間に辿り着いたのか、あの恐怖のエリアを越え、物々しい扉の前にベーゼは立っていた。

 

「い、嫌な予感しかしないっ...。」

 

"彼女"だったら、間違いなくアスレチックゾーンの方がマシだと思える罠を用意する。

エノルミータモードの時は決して容赦などしてくれない、最愛の人(ルシファアズール)を思い浮かべて震えるベーゼ。

振り返って躊躇うも、結局は進むしかないと自分に言い聞かせること5度。

漸く諦めがついたようで、ベーゼは嫌々ながらゆっくりと扉を押し開いていく。

 

「やっときた~。おっせ~ぞベーゼ~。」

「れ、レオパルトちゃん...?」

 

奇妙な部屋だった。

床にはマス目に合わせてカラフルな四角いタイルが貼られていて、まるで"スイッチ"のようにちょっと浮いて見える。

その区画を挟んで反対側には、入り口と同じように大きな扉が。

そして、エノルミータの幹部である『レオパルト』が立ち塞がっていた。

 

「"スゴロク"遊びってやつ~。サイコロやっから、それ振って出た目まで移動すんの。んで、こっちまで来れたらクリア。止まったマスのお題やんなきゃ次のサイコロは振れないんで~。まあ~がんば~。」

「え、えぇ~...(汗)」

 

気の抜けた声に、簡単過ぎる説明。

なのに聞いただけでも嫌な予感しかしない内容。

うてなは心から不安になるが、その手には容赦なく、某バラエティ番組でお馴染みサイズのサイコロが現れていた。

 

「早くしないと~。一生こっから出れねーぞ~?」

「それは、困るけど...。」

 

きっとやらしい罠だらけに違いない。

他二人と比べ、明らかにそういった攻撃?を受けた回数が少ないベーゼ。

見るのはいいが、されるのは怖い。

だが進まないわけにもいかない。

 

ゴールから逆算すると、振るのは最低でも3回。

何もかも運任せだが、マゼンタやサルファの為にも勇気を振り絞るしかないだろう。

ベーゼは躊躇いがちにサイコロを放り投げる。

 

「やった!5だ!」

「......。」

 

出目は二番目に大きい"5"。

最短クリアも視野に入る幸先の良さに、小走りで双六のマスを進むベーゼ。

しかし、次の瞬間。

 

バァンッ!!

 

「っ...!?」

 

5マス目に足をかけた瞬間、爆煙がベーゼを包んだ。

予想外の爆発に対応出来ず、ベーゼはそれをまともに喰らってしまった。

 

「あ、ぐ...っ」

「ざんね~ん。爆弾のマス目でした~。」

 

魔法少女の守りがあるとはいえ、確かな痛みがベーゼを襲う。

おどけた様子で笑うレオパルトに、自らの緊張感の無さを恥じる。

相手は"悪"の組織エノルミータ。

魔法少女を倒すことが目的なのだ。

傷つける()()の罠があってもおかしくはない。

そのはずだ。

 

どこか違和感を感じつつも、ベーゼはそう自分に言い聞かせ、次のサイコロを振る。

 

「なんだ"1"か~。ゴールはまだまだ先だな~。」

「っ...。」

 

念の為、体に魔力の障壁を張り巡らし、その一歩を踏み出す。

 

バァンッ!!

 

「あっづ...!?」

 

驚くべきなのか。

またしてもベーゼの踏んだマスは爆発し、彼女の体を高熱の炎で覆った。

備えが功を奏し、軽傷で済んだのはいい。

だが、ベーゼの表情は険しく暗い。

 

「二連続で爆弾マスとか、おまえ運わりぃな~。ま、めげずにガンバれよ~?」

「......。」

 

ベーゼは無言のまま、次のサイコロを振る。

出目は"4"。

数としてはなかなかだが、彼女はまったく喜ばない。

進むことはせず、代わりに到着地点の4つ目のマスを見据え、振りかぶった()()()()

 

バァンッ!!

 

三回目の爆発を確認し、ベーゼはその瞳でレオパルトを睨み付ける。

 

「これ...()()()()()()()()()()()()()、ですよね?」

「......んだよ。気付くのはえーなぁ。」

 

先程までの笑みを消し、レオパルトは感情のない表情で、静かに銃身をベーゼへと向ける。

 

「ここで死んでけよ。マジアベーゼ。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

おに~ぎりの方が~すきなのよね~♪

 

『98点!』

 

「そ...そん、なっ...。」

 

耳に、いや"心"に響く美声と、表示された高得点。

信じられない現実に愕然とするマゼンタ。

その体はすでにほとんど生まれたままの姿であり、女の子の"一番大事な部分"を守るパンツを残すのみとなっていた。

 

『アイドルバトル!勝者!ロコムジカ!』

 

「ロコが...勝ったの...?」

 

マゼンタと同じように、だが正反対の意味で愕然とするロコムジカ。

必死に股を合わせて"見えない"ように抵抗しているが、ステージの段差で観客からは丸見えだったりする。

 

『さあ。最後の一枚を脱ぎなさい。敗北者、マジアマゼンタ。』

「っ...!」

 

非情な宣言。

ルシファアズールは勝者がロコムジカであることを告げ、憐れな敗者にその純潔を晒せと命令する。

 

「ど、どうして...!こんなっ...!」

 

決定的に流れが変わったのは、ロコムジカがパンツではなく、"上ビキニ"を最後に残した時だろう。

そこまではマゼンタの完勝で、下着姿になったロコに非常に申し訳なくなる程の圧倒だった。

 

『上と下なら下を残すしかないよね。』

 

そうマゼンタは考えた。

だが、ロコは違った。

一息でパンツを下げ、一思いにポイと投げ捨てた。

そこから、"世界"が変わった。

羞恥に悶えるロコの歌は、それまでとはまったく違う美声で観客たちを湧かせ、マゼンタすら感動させた。

連戦、連勝。

わけも分からず、マゼンタはただひたすらに服を脱ぎ続けるしかなかった。

"手袋は片方で一回分にならないか"と交渉したこともあった。

だが、無意味だった。

 

「み、見ないでぇ...///」

 

衆目に晒される"桜色"。

魔法少女の、ヒロインの。

戦場を駆けるアイドルの恥部。

人形たちはそう操られたからか、それとも真に興奮しているのか。

更なる熱狂を以て、マゼンタの羞恥を煽る。

 

『ここからが罰ゲームよ。』

「え!?これが罰じゃないの!?///」

 

全裸以上の罰があるのかと狼狽えるマゼンタを嘲笑うように、ステージ床からマッサージチェアのような椅子が現れる。

 

『座りなさい。』

「う、うぅ...///」

 

涙目になりながらも従い、その怪しい椅子に腰掛ける。

 

『楽しいショーを始めましょうか。』

「ひっ!?///」

 

アズールの声に反応するように、突然拘束具が飛び出し、マゼンタの手足を捕らえる。

有り体に言えば丸見え状態。

もがく彼女の股間を狙うように、筆のような、モップのような毛束が展開される。

 

「な、なにっ...!?おほふっ!?///」

 

あろうことか、毛束は回転し、凄まじい速度でマゼンタの大事なところを刺激し始める。

 

「や、やああぁぁぁっ!?んんっ!やめっ!いぃぃっ!?///」

「いやこれ大分アウトでしょうがぁ!?!?///」

 

あまりにも直球過ぎるあれな罰に、思わず叫ぶロコムジカ。

その顔が赤面しているのは、マゼンタの艶姿が魅力的だからか、それとも"もし自分だったら"と想像したからか。

 

『"1時間"耐えたら、解放してあげてもいいわよ?』

「む、むりぃ!?た、たすけ...!あひぃ!?///」

 

悪魔は微笑み、ヒロインの精神は容易く手折られた。

気絶してもなお跳ねるライバルの体に、勝利したはずのロコは大粒の涙を流すのだった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「えっち過ぎぃ...///」

「...。」

 

モニタールームから眺める、マゼンタの痙攣する姿と、サルファが悶絶する姿。

これはヤバい。

これは刺激的過ぎる。

アリスの為にアイマスクを用意しておいてよかった。

教育に悪い所の騒ぎではない。

うてななら、まず間違いなく鼻血を吹き出し昇天していただろう。

キウィにえっちぃことをされていなかったら私でも気絶していた。

ありがとう、キウィ。

 

私ははみ出る涎を何とか嚥下し、ある懸念事項について考える。

 

「こうなると、一番楽しみだったベーゼの様子が気になるところだけど...。」

 

今はレオが相手をしているはずのベーゼ。

その姿は、"何故か"モニタリングすることが出来なかった。

 

「何か知っているの?アリス。」

「...。」

「聞き方を変えましょうか。()()()()()()()()()()?」

「...。」

 

頑なに答えないアリス。

"見覚えのないプラモデル"があることには気付いていた。

レオが何か細工したのだ。

 

私たちに。

私に"見せたくない何か"をしている。

レオにとって『マジアベーゼ』という存在がどういうものなのか、私はもっとよく考えるべきだった。

 

最悪の光景が脳裏に浮かぶ。

状況を把握する為、転移しようとするが。

 

「アリス...?」

「フルフル...。」

 

アリスに制止され、手を掴まれる。

彼女の目と手が、必死に"行ってはいけない"と語りかけてくる。

 

「何が起こっているのか、把握は出来ているのね?」

「コクリ。」

 

このダンジョンはあくまでもアリスのドールハウスだ。

私はモニターからしか見ることが出来ないが、探りさえすればアリスには全フロアの状況が分かるはず。

そのアリスが見せたくないと言う光景。

それほどに凄惨な様子なのか。

それとも、()()()()()()()()()()()のか。

普段の様子を見ていれば、どちらなのかは容易に想像がつく。

 

「......分かったわ。でも、どちらかに命の危険があればすぐに教えて。あなたもそんなのは、嫌でしょう?」

「...コクリ。」

 

キウィ、うてな...。

二人の身を案じつつ、平静を保つ為再びマゼンタとサルファのモニタリングに戻る。

 

「愛の試練、ってやつかしら...。」

「...。」

 

まずい。鼻血が出てきた。

やっぱりこれは素晴らしい光景だ。

二人にも是非見て欲しい。

録画しておこう。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「おらぁっ!くたばれっ!はよ死ねっ!おっちねぇっ!!」

「っ...!」

 

容赦のない弾丸の雨あられが私に降り注ぐ。

床のタイルを小さな鋼の魔物に変えて盾にするけど、段々と数を削られ耐えられなくなってきている。

 

「おまえの戦い方は散々見てっからさ~!この部屋、タイル以外はくそ地味に作ってんだよねぇ!」

「レオ、ちゃん...!どうして...!?」

 

まさに用意周到。

私の魔物を生み出す能力の弱点も踏まえた密室空間。

"必殺"の心構えで私に襲い掛かるレオパルトちゃん。

何が彼女にそこまでさせるのか、思わず私は問い掛けてしまう。

 

「どうしてだぁ?決まってんだろ...!邪魔なんだよ、おまえ。」

「!...それは、アズールの為...?」

 

アズールに気に掛けられている私が邪魔で、アズールを独り占めにしたいから?

 

「そうだけど...!そうじゃねー!」

「意味、分からないよっ...!?」

 

更に激しくなる銃撃。

ついに魔獣も倒れ、私の体ががら空きの状態になってしまう。

 

()()()()()だっ!!」

「っ!?」

 

ミサイルが迫り、あわや私に直撃する瞬間。

暗闇に包まれ、一瞬にして視界に映る景色が変わる。

 

長く暗い一本道の通路。

背後を振り向けば、先程入ったものとよく似た扉が見えた。

 

「やあ。間一髪だったね。」

「あ、あなたは...!」

 

"転移した"と気付いたのと、その声に反応したのは同時だった。

見覚えのある、真っ黒なふわふわと浮かぶぬいぐるみ。

 

「ヴェナ、さん...?」

「覚えていてくれて嬉しいよ。マジアベーゼ。」

 

ヴェナさんは私に近づき、後ろを指(手?)差して言う。

 

「あれが双六エリアの出口。ここを進めば最終ステージに行けるはずさ。」

「あ、ありがとうございます...?」

 

親切に案内してくれるヴェナさん。

エノルミータ側の人(?)なんだけど、ロードと戦った時も、今だって助けてくれたし。

もしかして、怪しいのは見た目だけ...?

 

「あ、あの...。なんで、助けてくれたんですか...?」

「キミにリタイアされると困るからね。キミは我が組織に必要な人材だ。」

「え...?」

 

『キミはベーゼであるべきだ。

だけど、それもまたキミ自身だろう?

キミが何をして、何をしたいかは。

キミが決めることじゃないかい?』

 

私の胸に響いたあの言葉。

今もまだ忘れていない、あの時のやり取りが頭を過る。

 

「そ、そんな...!ヴェナさんが言ったんですよ?私がしたいことは、私が決めるべきだって...!」

「......そうさ。だからキミが望むんだ。エノルミータになることを。」

「何を言って...!」

 

ヴェナさんは手を翳し、モニターを展開。

とある『写真』を映し出す。

 

「ぇ...?」

 

写っていたのは、小夜ちゃんとキウィちゃん。

裸でキウィちゃんと抱き合う、"見たこともない艶やかな表情"をした小夜ちゃんの姿だった。

 

「マジアベーゼ。キミが水神小夜と結ばれることは決してない。」

「な、にっ...なんで...?」

 

 

映し出された光景と、ヴェナさんの言葉で思考が止まる。

 

「安心して欲しい。小夜はまだ純潔を保っているし、唇も奪われてはいない。」

「っ...。」

「彼女はただ、慰めてもらったのさ。キミのことで苦しむ心をね。」

「私の、せい...?」

 

きっとあの、一騎討ちの後。

こんなことがあったと言うのか。

他でもない、私のせいで。

 

「でもそれも時間の問題だ。もう直二人は"契りを交わす"。キミに残された時間は少ない。」

「!...」

 

ロードと戦う前の、レオパルトとアズールの会話を思い出す。

分かっていたことだ。

そんなこと。

 

「そもそも小夜は、キミを好きだと言ったことはあるのかい?」

「それは...ない、けど...でも、約束して...!」

()()()()()()約束をかい?」

「は...?」

「彼女はキミたちとこうして過ごすのが一番幸せなのさ。関係性の変化なんて邪魔でしかない。」

「..."決着"を、着ける気がない...?」

「その通り。都合のいい言い訳だろうね。」

 

『その時まだ気持ちが変わっていなかったら。』

 

あれは、"そういう"意味だったのか。

あまりにも脆い、心の支え。

崩れ去っていく信頼と思い出。

 

「...違う。小夜ちゃんは、そんな人じゃない。」

 

真っ黒になりそうな心を、ギリギリで踏み留まらせる。

ヴェナさんの言葉を鵜呑みにしちゃダメだ。

小夜ちゃんは私の為に命すら投げ出してくれたんだ。

その小夜ちゃんを信じなくてどうする。

 

「どちらにせよ、小夜はレオパルトとの約束を果たす。それまでにキミがアズールを倒せれば別だが。無理だろうね。なり損ないのキミでは、力が足りない。」

「......。」

 

マリーノだった時より、能力も魔力も強くなった。

それでも、あの"奇跡を起こした姿"には遠く及ばないし、アズールの方が強いことも何となく分かってはいる。

 

「勝つ方法を教えてあげよう。エノルミータを受け入れ、"真の"マジアベーゼになるんだ。そうすれば、今のアズールすら超える力をキミは手にするだろう。」

「...話は、それだけですか。」

 

ヴェナさんを通り過ぎ、私は最終ステージとやらを目指して通路を進み始める。

 

「私は魔法少女です。魔法少女として、アズールを倒してみせます。」

「...よく考えるといい。ボクはいつでも、キミを待っているからね。」

 

ヴェナリータ。

認識を改めなくちゃいけない。

あれは、()()

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「マゼンタちゃん!サルファちゃん!」

「っ...ぉ、おう...何とか、合流できたみたいやな...。」

「ベーゼ、無事でよかった...。」

 

仲間との再会を喜ぶベーゼだったが、二人の異様に疲弊した姿に不安を覚える。

目の前にある"如何にもな扉"。

その先に待ち受けているのが誰なのかなんて、分かりきっている。

 

「二人とも、大丈夫...?私一人でも」

「アホぬかすなや。こちとら散々好きにやられて、はらわた煮え繰り返っとんねん。」

「そうだよ!今日という今日は、絶対に懲らしめてやるんだから!」

 

怒りと使命感に燃える瞳。

そこに正義のヒロインとしての矜持を認め、ベーゼは二人と共に進むことを決める。

 

「分かった。行こう!」

「うん!」「おう!」

 

三人で一気に扉を開く。

暗闇に光が差し、その眩しさに思わず目を細める。

やがて正常に戻ったトレスマジアの視界に映ったものは。

 

「「なッ...何ィーーーーーッ!?!?」」

 

何かこう絶妙に悪意を感じる、"アトラクション的アスレチックな立体物群"だった。

 

ベーゼとマゼンタは我を忘れて叫んでいるし、サルファに至っては閉口し白目を剥いている。

 

「待ちくたびれたぜトレスマジア~!」

「あなたたちはっ!?」

 

声のする方向を見ると、そこには先程までそれぞれを苦しめていたエノルミータ幹部たちの姿があった。

 

「今度はどういうつもりなの!?レオちゃん!」

「えっ!?...どういうつもり!?アズールちゃん!!」

『それでは説明しましょう。』

 

上空から聞こえるアズールの声にわずかに眉を潜めるベーゼ。

そんなことには誰も気付かず、沸き上がる怒りと困惑を抑えて元凶からの説明に耳を澄ます。

 

『最終ステージ"限界領域"!あなたたちにはその身一つでこの障害物を乗り越えてもらうわ!集まった6人のうち、一番最初に私の元へ辿り着くのは一体誰なのか!?ヒロインたちのプライドを賭けた一戦が、今始まる!』

 

「もうずっとアホやん...。」

 

まだ遊ぶつもりなのかと内心ドン引きするトレスマジア。

文句があるのは身内も同じ。

 

「ちょっと待って!?6人ってロコたちもってこと!?」

『当たり前じゃない。』

「アタシらいいことねーじゃん!?」

『安心なさい。勝ったらご褒美があるわ。負けたら罰ゲームだけど。』

「「なんでだ!?」」

「しゃあごほうびぃ!勝つ!勝つったらかーつ!」

 

乗り気なのがレオパルトただ一人なのにも構わず、開始を告げる笛の音が高らかに鳴り響いた。

 

『さあ!最初に挑戦者たちを待ち受けるのは海と見紛うほど広大な"プール"!今後のレース展開を占う試金石と為り得るのかぁ!?』

 

「ロコ泳げないって知ってるわよねぇ!?」

『そんな金づちには特別にビート板を用意してあるわ。命懸けでバタバタなさい。』

「無理よぉ...っ!?(泣)」

 

嫌々ながらも、ロコ以外は順調にプールを泳いでいく。

 

「うおぉぉー!!ごほうびぃー!!」

「...(アホが。先が見えない以上今は体力を温存するのが最善。あない全力出してガス欠になったら目も当てられ...)」

「ギャーーーッッ!?!?」

 

ただ()()()()()()()()()()

全員、分かっていたはずだった。

でも仕方なかった。

もう考えるのが嫌だったのだ。

 

「何よこのタコ!?てかタコのくせに最近出過ぎじゃないの!?ロコより目立ってんじゃないわyもごぉっ!?」

「ロコォーッ!?」

「タコ嫌やあぁぁぁぁ~っ!?!?!?」

 

突如プールの底から出現した巨大タコ。

正体はもちろんアリスのおもちゃだが、最初に餌食になったのは一応仲間であるロコであった。

何故タコなのかは最早言うまい。

目論見通り、サルファはキャラを忘れて全速力で逃げることとなった。

 

「ろ、ロコぉ...骨は拾ってやるからなぁ...(泣)」

「はやく助けなさいよぉぉぉ!?!?」

「ハァ!ハァ!く、くそ...っ。めっっちゃ疲れたぁぁ...!」

「うおぉぉー!!アズールちゅわあぁんっ!!」

 

周りを大きく突き放してトップに立つレオパルト。

彼女の進む先に待ち受けていた次なる試練は、崖と崖を結ぶ、"凍りついた綱"であった。

 

『第二の試練は凍りついた綱を股で渡り切る"ひんやりセクシーロープウェイ"!単独トップに躍り出たレオパルトだが、このまま一位をキープできるのか!?』

 

「ぜんっぜん平気ですけどぉー!?愛の力が熱くてすごいんですけどー!!」

 

凍った綱が股間に食い込む冷たさと痛みすら物ともせず、レオは凄まじい速度で綱を進んでいく。

だが、しかし。

 

「にゅっ。」

『説明は最後まで聞きなさいレオ。進むのは"障害物を避けながら"よ。』

 

「む~ね~ん~。」

 

石柱をストライクゾーンにぶちこまれ、憐れにも落下していくレオパルト。

何とも言えない表情を浮かべ、他の挑戦者たちも次々綱に股を当てて進み始める。

 

「うひぃ!?ち、ちべたい...!それにもう、お股は、無理だよぉ...!///」

「ぐっ...ハァ...ハァ...っ。」

「っ!(二人とももう限界だ...!やっぱり、ここは私が頑張るしかない...!)」

 

身を捩り苦しんで、なかなか進まない仲間たち。

マジアベーゼは自らを奮い起たせる。

涙が出そうな感覚を必死に押し殺し、少しずつだが着実に前へ進んでいく。

 

そんな試練が片手では足りない数続いた。

数え切れない恥を晒しながらも、ヒロインたちはその理不尽な試練を乗り越えていった。

 

ちなみに。

脱落はつまらないからとのことで、一度落下すると最初からやり直しになる凄まじい鬼畜仕様である。

みんなが心で泣いた。

実際にはロコだけがギャン泣きした。

 

『ななななんとっ!?最終関門を残し全員が同着ッ!このローションの滝を登りきり、コイ○ングからギャ○ドスに進化するのは誰なんだあぁ!?』

 

「ギャラ○スは厨ポケだよなァ。」

「だ、誰がコ○キングやねん...っ。」

 

ぬるぬるのローションが滝のように流れる急坂。

呆然とするヒロインたち。

疲労困憊、気力などあるはずもない状況で、おずおずと手を上げる者が一人。

その姿はまるで、授業中に先生に断りを入れる学生のようだ。

 

「あ、あの...っ。と、トイレは...ありませんでしょうか...っ///」

『あるわけないでしょ?』

「そ、そんなぁ!?///」

 

モジモジと股を抑えてヘタリ込むマジアマゼンタ。

先刻の容赦ない股間への攻め。

そしてこのエリアのプールや氷綱。

敏感になった股間と急激に冷えた体という不調が重なり、マゼンタはついに"催して"しまったのだった。

事情を知っているロコの表情が大変気まずそうなものに変わる。

 

「その辺でしてこいよ見ねーから。」

「いやできるわけないよねぇっ!?///」

 

ワイルド過ぎるレオの発言に、全員が引いた。

 

ヘタリ込んだまま動けないマゼンタに寄り添うサルファ。

サルファもまた、体力の限界。

本人は諦めないだろうが、坂を上がるのはもう無理だろう。

 

「二人とも、そこで休んでて。後は、私が!」

「ベーゼ...あんた...。」

 

ベーゼはオブジェとして飾られた巨大な木の枝に鞭をくくりつけ、それを支えとして滝を登り始めた。

ぬるぬるでべとべとだが、進めないわけじゃない。

 

「まずいわ!このままじゃ負けてロコたちが罰ゲームよ!?」

「んなのゴメンだっつーの!早く追いかけ」

「そない素直に行かせる思うかぁ...?」

 

ロコルベの前に立ち塞がるマジアサルファ。

ふらふらで息も絶え絶えだが、追い詰められた彼女の恐ろしさはロコたちもよく知っている。

迂闊に攻められない緊張感が漂う中、ベーゼは順調に滝を登っていく。

 

「見えた...!頂上...!」

「いかせるかぁ!!」

 

あと少し。

ほんの僅かでゴールに手が届く。

その隙を突かれ、ガシッ!と肩を掴まれ引っ張られる。

 

「っ!?れ、レオちゃん...!?」

「アズールちゃんの一番は、アタシだぁぁっ!!」

 

自分を踏み台に駆け上がろうとするレオを必死に抑えるが、自力の差か力負けし始めるベーゼ。

 

「ぁっ!?はな、してっ...!?」

「離すかぁぁ!!」

 

更に強まる力に、ついに耐えきれなくなったその瞬間。

 

「なぁっ!?///」

「ベーゼっ!」

「マゼンタ、ちゃん...!?」

 

伸びるレオパルトのパンツ。

下からそれを引っ張っているのは、すでにギブアップしたはずのマゼンタだった。

 

「おまっ!?や、やめっ...!?///」

「マゼンタちゃん!そんなに動いたら、おしっこが...!」

 

マゼンタは自分を心配するベーゼに微笑み、最後の力を振り絞る。

 

「勝ってね、ベーゼ...。」

「マゼンタちゃあぁぁんっ!!」

 

自らのパンツを()()()()()()()()()

マゼンタはレオとレオのパンツと共に、キラキラと輝きを放ちながら落下していく。

その軌跡には、"綺麗な虹"がかかっていた。

あまりにもあんまりな光景。

ヒロインたちは涙した。

今度こそ、全員リアルにガチ泣きした。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「うっ...うぅっ!感動じだぁっ...!(泣)」

「ドンビキ...。」

 

あまりにも美しい放尿。

まさかこんな感動的な形で、マゼンタがお漏らしフラグを回収することになるとは。

流石私たちのヒロイン。

漏らしてなお輝くその心。

感服せざるを得ない。

 

玉座で感動に震えている私の前に、ついに挑戦者が現れる。

 

「来たよ、アズール...!」

「...ええ。待っていたわベーゼ。」

 

観戦モードはここまで。

これからはダンジョンの最奥で待つ"ラスボス"として、舞台に立つことにしよう。

 

「てっきりレオが勝つと思っていたわ。あなた、こういう体力勝負は苦手でしょ?」

「...レオちゃんには、負けられないから。」

 

そう答えるベーゼの体はねとねとで、戦いの形跡も残るボロボロの状態だ。

だが、その瞳にはいつもと違う闘志が宿っているように見える。

 

「アズール。"約束"は、嘘じゃないよね?」

「あなたに嘘は吐かないわ。」

「...じゃあ、今日で終わりにするよ。アズールを倒して、私が...。」

「ベーゼ...?」

 

様子がおかしい気がするが、どうせ戦うことには変わりない。

私はアリスに目配せし、ベーゼ以外の全員もこの場に転移させる。

 

「うぅっ...み、みんなの目の前で...あたしぃっ...」

「ドンマイ...ドンマイやマゼンタ...。」

「くっそぉ!アタシのごほうびがぁ~!」

「たこ...もう、いや...こわい...触手、やだぁ...」

「何だこの地獄絵図。いったい誰が幸せになったって言うんだよ...!」

 

「私だけど?」

「「「「「え。」」」」」

 

面白いくらいにこちらに気付かないので、痺れを切らして話し掛ける。

 

「今回のダンジョン攻略。勝者はトレスマジア。褒美に、私に挑む権利をあげるわ。」

「何であんたと戦うのにこない苦労せなアカンのや!?」

「そうだよっ!今回は流石に悪い子過ぎるよアズールちゃんっ!」

 

怒りが爆発するトレスマジア。

身内であるロコルベまで不満げにこちらを見ている。

 

「負けたあなたたちには"罰"を与えないとね。」

「罰...!それはそれでごほうびぃ~!」

「「んなわけあるかぁっ!」」

 

そういえばと思い出し、私はハチのおもちゃを数匹放つ。

文句を言うのに夢中で隙だらけのお尻に、その針を突き刺させる。

 

「「「「「「いったぁ!?」」」」」」

 

「って...何よこれ...?」

「傷が...」

「ていうか、魔力が...」

「か、回復してる...?」

 

アリスに頼んだ特別製。

少々の治癒と、一時的ではあるが魔力を増加させる効果がある。

全員の傷と魔力が回復したのを見届けて、私は改めて宣言する。

 

「罰として、あなたたちは"トレスマジアと一緒に私と戦いなさい"。手加減は不要よ。」

「ハァ!?」

「何言い出すかと思えば!」

「分かった~。」

「「それでいいのか副総帥っ!?」」

 

ロコルベと違い、すぐに首肯して私に銃を向けるレオ。

 

「アズールちゃんがやれって言うならやる。それが愛ってもんだろうが。」

「何でちょっとカッコいいんだよ...。」

「カッコよくはないでしょ...。」

 

私はアリスを巻き込まないよう位置を変え、空から全員を見下ろす。

 

「始めましょう。少しは楽しませて頂戴。」

「邪魔やエノルミータ!あんたらの手ぇなんて借りんでもうちらだけで十分や!」

「んだと!?アタシにアズールちゃんからのお願いを断れってのか!?」

「サルファ、今だけは仲良く...」

 

いまいち緊張感が足りないみたい。

私は手をかざして、軽く魔力を込める。

 

「!?」

「マゼン、タ...?」

 

()()()()()()()動かなくなったマゼンタを見て、漸く空気が変わる。

 

「まずはヒーラーを潰す。ゲームの基本でしょ?」

「貴様ぁ...っ!!」

 

怒りに身を任せてサルファが私の腹をその拳でぶち抜く。

しかし溢れるのは血ではなく、大量の"水"。

 

「しまっ...!」

「残念。それでは足りないわ。」

 

私の分身は弾け、その水はサルファの全身を包む。

一気に凍らせ、マゼンタと同じ氷像と化す。

一瞬にしてトレスマジアの二人を戦闘不能にした。

残るは後一人。

 

「容赦無さすぎだろ!?ちょっとは情緒ってもんを考えろ!」

「それで動きを止めたつもりかしら。」

 

ベーゼを攻撃しようとする私をルベルが影を使って制止する。

しかし無駄だ。

影ごと凍りつかせ、ルベルをその中に閉じ込める。

 

「カラクリさえ分かれば怖くないのよ、あなたの能力は。」

『ヴォワ・フォルテッ!』

「軽いわね。」

 

氷壁でロコの音波攻撃を防ぎ、お返しにブリザードを浴びせる。

 

「きゃあぁっ!?」

「もっと感情を込めなさい。そんなんじゃ響かないわ。」

「アズールちゃんッ!!」

 

轟音と共に多種多様な弾丸が放たれる。

私は昔戦った時と同じように、銃身ごと弾丸を凍らせようとするが。

 

「!」

「あっつあっつに熱してっから!簡単に雪だるまにはできないよ~!!」

「やるわねレオ!楽しくなって来たわ!」

 

凍らせる時間が遅れるのはせいぜい数秒。

でも弾丸が飛ぶ速度を考えれば、その差は致命的。

氷壁作成や回避を繰り返して何とか凌ぐが、煙幕が視界を遮りレオを見失ってしまう。

 

「こっちだよアズールちゃんッ!!」

「っ!?」

 

煙から飛び出したレオの姿は変化していた。

爆煙が獣の部位を形作り、大事なところのみを覆ったまさに"レオパルト"な形態。

実際に見るのは初めてで、思わず私は感動を覚える。

 

「受け取って!アタシの愛ッ!!」

「ごふっ!?」

 

手から発せられる爆発を受け、ついにダメージを負う。

痛い。すごく痛い。

なのに私は口元を歪め笑ってしまう。

 

「いいわ...!これがあなたの愛なのね!レオッ!!」

「そうだよアズールちゃん!もっと見てっ!もっと感じてっ!アタシを愛してぇっ!!」

 

爆発を受けるのも構わず飛び込んできたレオの手首を掴み、そのまま全力で凍らせる。

何重に、幾重にも氷を張る。

危なかった。

予想通り、"一番近い"のはレオのようだ。

 

「残るは、あなただけみたいね。」

「......。」

 

最後の生き残り。

マジアベーゼは"大量の魔物"を従え、私を真っ直ぐ見据える。

仲間がやられても、どれだけの隙があっても攻撃せず、ただ自らの軍勢を造り上げることだけに注力していた。

スライムに獣型、果てはドラゴンのようなモノまでいる。

 

「これじゃあどちらがラスボスなのか、分からないわね。」

「私、本気だよ。」

「"真化"は、あの一回限りだったようね。今は言葉すら思い出せないというところかしら。」

「関係ない。絶対に勝つから...!」

「無理よ。今のあなたじゃあ、ね。」

 

髪も角も変化がない、()()()()()()()()()()()()()ベーゼ。

私の誘い方が悪かったのか、彼女のメンタルの問題なのか。

本当の意味での"本気"を引き出せていないようだ。

内心で落胆と心配の両方を抱いて、私はその手に魔力を集中させる。

 

「このままじゃ、ダメ。弱過ぎるのよ、()()()()。」

「みんなっ!お願いっ...!!」

 

ベーゼの軍勢と、私の放つブリザードが激突する。

辺り一面を、ダンジョン全体を銀世界に変えながら私は思う。

誰一人として『真化』できていないこの状況。

異変はきっと、すぐそこまで来ているのに。

私は本当に、みんなを守り切れるのだろうか?

 

「私のまほあこ、シリアス過ぎない...?」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

綺麗な満月が浮かぶ夜の森林。

ダンジョンの残骸をイス代わりに、眠ってしまったこりすを抱っこしながら、私は足元で気絶しているうてなを撫でる。

 

「トドメは刺さないのかい?」

「あら、いいの?()()()()()()()()()()()()()?」

「...ボクのお気に入りはキミさ。小夜がいれば、我がエノルミータに敵はいない。」

 

月明かりに照らされてなお、真っ黒なヴェナリータ。

探りを入れてみるが、相変わらず本性を見せる気はないらしい。

 

「全員を真化させる狙いだったのかい?それにしては随分と一方的だったけど。」

「いいのよ、これで。私たちの力は想いの力。"無力"を思い知らせれば、"愛"持つヒロインは必ず燃え上がる。」

 

私の言葉にとりあえず納得したのか、ヴェナはゲートを開いて傷ついたキウィたちを転移させていく。

私もこりすを送る為、別のゲートを開こうとするが。

 

「愛、か。そういうキミは、いったい誰を愛しているのかな?」

「恋バナがしたいの?意外と乙女なのね、あなた。」

 

ヴェナの問いをはぐらかして返す私。

澄ました顔で、動揺を悟らせまいと取り繕う。

 

私が、愛すべきなのは。

愛したいのは。

 

いったい、"どちら"なのだろう。

 

「月が、綺麗ね。」

「......このタイミングで言う台詞かい?」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□next episode◼️□

 

「こないだはおおきに。タコ苦手やから助かったわぁ。」

「ならなんでたこ焼き頼むんだよ...。てかそれ、またタコ入ってないのか?」

「モグモグ...。」




ふざけたかったのに結局シリアスです。
原作も割りとそんな感じです←

次回は8/10(土)0:00投稿予定です。
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