魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

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大感謝祭M公演だけ当選しました!!(挨拶)
ロコパンツGETです。
今回は日常回。相変わらず主人公の出番が少ない...。


第16話『こりすちゃんと7人の姉』

「きりーつ!れーい!」

 

元気な号令が響き、一斉に帰り支度を始める生徒たち。

放課後は何をしようか!と、友人と盛り上がっている子どもがほとんど。

 

『ゲーム!』『サッカー!』『お買い物!』

『じゃああたしんちで!』『公園集合で!』『あのお店気になってたんだ!』

 

皆一様に楽しそうに、それぞれがしたいことを、それぞれの仲間と集まって行うようだ。

 

「あ、杜乃さん。最近何か、困ったことはない?」

「フルフル。」

 

そんな中、誰とも会話せずそそくさと教室を出て行こうとする女の子が一人。

先生に呼び止められた少女は、感情の読めない表情のまま首を横に振る。

 

「そう。...気をつけて帰ってね?」

「コクリ。」

 

頷いた後、先生にぺこりと頭を下げて教室を後にする少女。

きっと心配されているのだろうと、

少女こと『杜乃こりす』は内心溜め息をこぼす。

 

「...。」

 

別に友だちが出来ないわけではない。

作らないだけだ。

趣味が合う子がいないし、そもそもみんな子ども過ぎる。

わたしは一人前のレディなのだから、同じように大人な人でしか釣り合わない。

だから仕方ないのだ。

 

「...。」

 

重ねて言うが。

別に無口で接し辛いから誰からも声を掛けられないわけではない。

わたしが高嶺の花過ぎて、畏敬の念から距離を取られているだけなのだ。

 

「...。」

 

というのが彼女の言い分であるが。

所々事実を理解していることが窺える辺り、聞いてる方が泣きそうになる。

 

まあ実際美少女なので、無口で何考えてるか分からない彼女にも、お近づきになりたいと思ってくれる優しい同級生もいるにはいる。

 

だが、こりす自身は見ての通り斜に構えているので、その好意にまったく気付かず。

結局友人0状態が継続することとなっているわけだ。

 

「...。」

 

下駄箱から小走りで校門を抜け、この後は何をしようかと考える。

お姉ちゃんズは期末テストとやらを終えたようで、みんな暇しているに違いない。

今日は誰に遊んでもらおう。

何をして遊ぼうか。

 

「...。」

 

昔は放課後なんて、家でおもちゃたちと遊ぶしか選択肢はなくて。

ママが早く帰ってきたりしないか、今日は寝る前に会えるかな、と。

ただそれだけを考えて過ごす毎日だった。

 

だから、今はすごく楽しい。

遊んでくれるお姉ちゃんたちがいて、いつもとっても温かくて。

困っている所か、幸せだと思う。

しょうがないお姉ちゃんもいるけど。

 

「...?」

 

ふと足を止めるこりす。

視線の先には、最近美味しくて話題の『たこ焼き屋さん』があった。

 

断っておくが、別に成長期だからお腹が空いていたわけではない。

クラスメートの話していた、インドカレーたこ焼きが気になっていたわけでもない。

店先で注文をしている"金髪リボン"な後ろ姿が見えたからだ。

 

「いらっしゃいませ~。ご注文はいかが致しましょうか?」

「ソースたこ焼き。たこ抜きで。」

「あはは、お客様?当店はたこ焼き屋ですのでたこ抜きなんて」

「たこ焼き。たこ。抜 き で 。」

「ひぃっ!?」

 

あの金髪は何を言っているのだろうか。

それならもうお好み焼きでも食べればいいのに。

 

確か、『天川薫子』と言ったか。

とんだ迷惑客である。

やはり小夜お姉ちゃんの友人は変な人しかいないようだ。

はるかお姉ちゃんはキノコに寄生されてるし、小夜お姉ちゃんだってえっちだし。

 

「...。」

 

こりすは思う。

下手に絡まれてもまずい。

知らないフリで通り過ぎることにしよう。

 

気持ち分だけ気配を消し、こりすはまた歩き出そうとする。

 

「ん?...なんや、こないだ海に来とった小夜のいとこか。どないしたん?そないなとこでぼーっとして。」

「...。」

 

まずい。見つかってしまった。

蛇に睨まれた蛙のように動けないこりす。

そうしている間にも、薫子はこちらに近づいてきた。

 

「...無口な子やねぇ。うちに何か用...あぁ、そゆこと。あんたもたこ焼き、食べはる?」

「!...コクリ。」

 

要注意人物からの思わぬ提案に、思わず頷いてしまうこりす。

やっぱり気になっていたカレーたこ焼き。

こりすは成長期であった。

 

薫子に手を引かれ、お店の前までやってくる。

 

「どれがええ?」

「ビシッ!」

「お姉さん、このカレーたこ焼きも追加で。」

「パアァ!」

「たこ抜きで。」

「バァァン(怒)!!」

 

こりす渾身の台パン。

たこ有りを注文するのにここでまた一悶着あったりしたのだが。

あまりにも不毛な為、やり取りは割愛する。

 

端的に言って、こりすは激怒した。

最近負の方向に感情豊かなこりすさんである。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ゆっくり食べーな。火傷するで?」

「コクリ。」

 

何だかんだありつつ、一緒の席でたこ焼きをつつくことになった二人。

最初は警戒していたこりすも、カレーたこ焼きの美味しさにすっかり絆されていた。

 

「今日は小夜とは一緒やないんやね。」

「コクリ。」

「あの団子女とも知り合いやったっけ?」

「コクリ。」

「仲ええん?」

「フルフル。コクリ。」

「"仲良くしてやってる"、か。あんた、なかなかええ性格しとるなぁ。気に入ったわ。」

「フンス。」

 

意外にも相性が良さそうな二人。

ネロアリスには何度か酷い目に遭わされているマジアサルファだが、お互いにその正体を知る由もない。

 

「あれ?こりすじゃん。...え、どういう組み合わせ...?」

 

二人が談笑(喋っているのは薫子だけだが)していると、これまた見知った顔がやってきた。

不健康そうなクマ、気だるげな表情。

着崩した制服を暑そうにパタパタしているのは、『姉母ネモ』。

好物はたこ焼きである。

勿論、たこ入りのヤツ。

 

「おぉ、なんやあんたか。こないだはおおきに。タコ苦手やから助かったわぁ。」

「ならなんでたこ焼き頼むんだよ...。てかそれ、またたこ入ってないのか?」

「モグモグ...。」

 

自然な形でネモも二人と同じ席に着く。

この店の評判を聞きつけ、わざわざやって来たとのこと。

 

玄人らしくシンプルなソースたこ焼きを注文。それを頬張る表情から、かなり満足のいく味だったことが分かる。

 

「あのツインテの子は一緒やないんか?」

「あぁ、真珠?アイツは追試勉強。てか、別にいつも一緒なわけじゃねェし。そっちこそ、縦ロールの子は?」

「奇遇やん、はるかも追試勉強。今日はうてなと二人で、小夜にビシバシされとるはずや。」

「マジ?んじゃ真珠も一緒だわ。こないだ小夜に泣きついてたし。」

 

二人の会話から、お姉ちゃんズが軒並み勉強中だと理解したこりす。

残るはキウィだが、この流れだと小夜に引っ付いて「勉強だるいからホテルいこー?」とか言ってみんなの邪魔をしているに違いない。

本当にしょうがないキウィだ。

 

「お互い、バカな相方持つと苦労するなぁ。」

「だな。...けどまあ、勉強が全部ってわけでもないし。」

「それはうちも同感や。」

「...へっ。薫子が勉強見てやればいいんじゃねーの?」

「あかんあかん。面倒やしそない時間あったら遊ぶわ。」

「だよなぁ。アタシも最近寝不足だし。」

「なんや、徹夜でゲームでもしとるんか?」

「当たり。最近買ったRPGがなかなか骨太でさ。」

「ああ、16やっけ。」

「お、分かんの?」

 

盛り上がる二人の会話。

奇しくも同じゲーム趣味。

よく一緒にいる友人の特徴など、実は似た者同士だったのだ。

相容れないのはタコの好き嫌いのみ。

お互いにこういった話が出来る同年代は貴重な為、ついつい話に熱が入る。

残り一人をそっちのけで。

 

「プクゥ。」

「あ!?わ、わりぃこりす...。別にお前を無視してたわけじゃなくてさ。」

「つい話し込んでしもうたなぁ。堪忍やで、こりすはん。」

 

分かりやすく機嫌を損ねるこりすにそれぞれ謝る二人。

たこ焼きも食べ終わり、もう解散でも構わないのだが。

 

「...。」

「...なぁ。よかったら、今から家来ぉへん?」

「え?...ああ、いいぜ。」

 

目配せをする二人。

それぞれのチームでは何だかんだ、仲間を気遣う苦労人ポジション同士。

先ほどの会話をこりすが聞いていたことも、解散の雰囲気に残念そうな顔をしていたことにも気付いていた。

 

「こりすはどうする?」

「...コクリ!」

 

ネモの問いに、ハッキリと頷くこりす。

そんな子どもらしい素直な反応に、柄にもなくホカホカとした気分になってしまうお姉さんたちなのであった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「...。」

 

昨日はなかなか楽しかった、と無表情ながら上機嫌で思い返すこりす。

 

ゲームというのは初めてやったが、不思議と中毒性のあるモノだった。

二人が寝る間も惜しんで興じるのも理解できる。

ネモにちょっと触らせてもらった、"動物が住む森で生活するゲーム"はこりすも欲しいと思ったほどだ。

ただ、後半は二人が対戦ゲームに熱を上げ過ぎて放置気味にされてしまったのがマイナスポイント。

 

『アタシあんま格ゲーやんないからさァ。』

 

とか。

 

『このゲーム買うたばかりでエイムがなぁ。』

 

とか。

お互いにしょうもない逆マウント合戦になっていたのは滑稽だった。

二人とも目がずっとキィー!となっていた。

普段から目付きが悪いのは、きっとゲームのせいに違いない。

 

「フンス。」

 

あんな風にならないよう、ゲームはやってもほどほどにしようとこりすは決意した。

二人とも優しいし楽しかったが、反面教師の側面が強い。

『二軍お姉ちゃんズ』の称号を与えよう。

 

「あれ?こりすじゃない。どうしたのよ、こんなとこで。」

「?」

 

そう胸を張って考えていると、後ろから聞き覚えのある声に呼び掛けられる。

振り返ると、そこには学生服姿の自称スーパーアイドル『阿古屋真珠』が立っていた。

 

「街中に一人なんて危ないわよ?」

「...。」

 

気付けば色々な店が居並ぶ街中まで来てしまっていた。

今日はどうしようかと考えながら歩いてしまったからか、家を通り過ぎていたらしい。

 

「アンタも買い物?ならせっかくだし、付き合いなさいよ。」

「...。」

「ぁによその嫌そうな顔...。」

「...。」

「勉強はいいのか...?だ、誰から聞いたのよそれ!?へ、平気に決まってるでしょ!?集中するには息抜きが必要なんだからっ!!」

「...。」

 

あ、こいつ嫌になってサボったな?と、こりすは真珠をジトッ...と睨み付ける。

 

「べ、別に真珠の成績はアンタには関係ないでしょ!?暇なら付き合いなさいよねっ!」

「...。」

 

思いっきり開き直る自称スーパーアイドル。

手を引く真珠に、こりすは内心溜め息を吐く。

予定がないのも事実の為、やれやれと思いながらも付き合ってやることにする。

 

どうせサボっていることを揶揄されたくなくて、ネモに声を掛けられなかったのだろう。

しょうがないお姉ちゃんその2。

寂しいならそう言えばいいのに。

 

「カワイイ服、見に行きましょ。こりすに似合うの身繕ったげる!」

「コクリ。」

 

この真珠は音痴アイドルかつダメお姉ちゃんだが、服のセンスだけはいい。

数少ない見習うべき点だ。

たまにはママ以外のコーディネートを見て勉強するのも悪くない。

こりすはファッションにも気を遣う、大人な女である。

 

「ここよここ!安いのにいい感じな服が多くて真珠お気に入りの...」

 

ギャアァァァァ!!ファァァァァ!!

 

阿鼻叫喚。

主婦たちの雄叫びがこだまする地獄。

真珠がお気に入りと呼んだ店は、今まさに"戦場"と化していた。

 

「ああ...バーゲンの時間だったのね...。」

「...。」

 

『バーゲンセール』。

それは主婦たちの仁義なき死闘の場。

ある者は家計の為。

またある者は購買欲求を満たす為。

秩序を省みず、セール品を求め狂う野獣となる。

そう、震えながら語ったママの言葉を思い返す。

 

「ビシッ。」

「いや行かないわよ!?片腕持ってかれるじゃないあんなの!?」

 

試みに真珠を向かわせてみようとするが、やはり怖気付いている様子。

このまま終わるのを待つしかないと、諦めていると。

 

「とったぁぁ!!これで三人分っっ!!なつな!あきほ!みふゆ!お姉ちゃんやったよぉぉぉ!!」

「この声、どこかで...。」

「...!」

 

主婦たちでごった返すバーゲンエリア。

その片隅にこりすは見つけた。

"ピンクのクルクルした物体"を。

 

ビヨヨヨーン!

 

「~!」

「な、なに!?やめて!?引っ張らないでっ!?あたしはセール品じゃないよぉ!?」

 

反射的に接近し、その物体を引っ張って遊ぶこりす。

ピンクのそれは非難の声を上げ、やがて主婦の山からその埋もれた頭を飛び出させた。

 

「ってあれ...?こりすちゃんと、真珠ちゃん?」

「アンタ...はるか?」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ぷはー!勝利の美酒だねー!」

「ただのオレンジジュースでしょ?おっさんくさいわね。」

「チュー...。」

 

場所は移って喫茶店。

戦場から帰還したへとへとのはるかの為、小休止を取ることにしたこりすと真珠。

昨日に引き続き、かなり珍しい組み合わせである。

 

「しっかしアンタ。よくあんなヤバいとこ突っ込めるわよね。」

「あはは。まあ、妹たちの為だからね。」

「はるかって妹いるの?」

「うん!なつなにあきほにみふゆって言ってね!三つ子なんだよ?」

「へぇー。珍しい家系してるのね。」

 

なるほど。妙にお姉ちゃん味を感じると思っていたが、リアルガチお姉ちゃんだったのか。

 

「妹たちに、可愛いお洋服買ってあげるって約束してたから。だから、ちゃんと買えてすごく嬉しいの!」

「...ふーん。いいお姉ちゃんじゃない。」

「えへへ、照れちゃうよぉ///」

 

真珠は思う。

この真っ直ぐな優しさに、太陽みたいな輝き。マゼンタもそうだが、まさに"ヒロイン"な女の子。

正直、羨ましい。

真珠もこれくらい素直ならなぁ。とつい考えてしまう。

 

「それで?どんなの買ったのよ?」

「見たい?ふっふっふ~。」

 

得意気に笑うはるかに期待を高める二人。

じゃじゃーん!というお決まりの声と共に見せられたのは。

 

「すごくカワイイでしょ!」

「...。」

「...。」

 

デカデカと"すなぎも"とプリントされた、子どもサイズのTシャツだった。

 

「......だっさ。」

「えぇ!?じゃ、じゃあこっちは!?」

 

予想外らしい反応に慌てるはるか。

挽回しようと続け様に二枚の服を取り出す。

"ぼんじり" "とりかわ" 。

文字と色が違う以外、まったく同じTシャツだった。

 

「いやだっさ。」

「コクリ。」

「えぇぇぇぇ!?!?」

 

デザイナー全部一緒だろ。

テキトーな仕事をするな、絶対焼き鳥食いながら考えたぞあれ。

 

色が赤橙青でギリ四季を感じられるのが救いか。

まあ、全部半袖なんですけどね。

 

「絶対カワイイと思うのにぃ...(泣)」

 

今更だがこのはるか自体、胸にデカデカと"ダイナモ"と書かれた服を着ていた。

それなりにまとまって見えるのが不思議である。

 

「ま、まあ。似合うならいいんじゃないの...?(汗)」

「そうだよねっ!あの子たちなら似合う!きっとカワイイ!!」

「...。」

 

あれが似合うのも、それはそれで可哀想なのでは?とこりすは思う。

しかし、口に出すことはしない。

こりすは空気の読める女だ。

 

「そんなことより、昨日の勉強会キツかったわよね。」

「そうだねぇ。小夜ちゃん解けるまで帰らせないの一点張りだったし。」

「その割にうてなにだけ優しいし。」

「そうそうっ!差別だ!偏見だ!親友にも優しくしなさーいっ!」

 

自然に話題を変える真珠。

相手によっては「勉強しなくていいの?」とカウンターを食らう話題だが、素直なはるかはそのまま会話を続けていく。

 

「...。」

「え?何で小夜ちゃんが、うてなちゃんに優しいのかって?」

「コクリ。」

「それはねぇ~...。」

 

珍しく悩んだ様子を見せるはるか。

うんうん唸った後頷いて、少し頬を赤く染める。

 

「小夜ちゃん、うてなちゃんのことが好きみたいなんだよね...///」

「ハァ!?」

「!?」

「わっ!?び、びっくりしたぁ...。」

 

一応キウィの身内である二人からすると、はるかのぶっちゃけはまさに寝耳に水。

確かに仲良しなのは知っていたが、はっきりと小夜からうてなに"好き"の矢印が向いているとは。

流石のこりすも、これには動揺した。

 

「てっきりキウィのアホと両想いなのかと思ってた...。」

「いや、分かんないよ!?キウィちゃんのことも好きだと思うしっ!」

「え。二股ってこと...?」

「そういう不純なのじゃなくてっ!?///」

 

この場にいない小夜の代わりに慌てふためくはるか。

親友の風評被害を防ぐ為、必死になって言葉を探す。

 

「上手く言えないけど...最初?からうてなちゃんが好きで気になってて、やっと仲良くなれたのと同時にキウィちゃんが来て。でもキウィちゃんがずっとアピールしてるし。だから小夜ちゃんも、段々キウィちゃんに惹かれてる、みたいな...。」

「うわぁ...。それ、肝心のうてなはどう思ってるの?」

「それが...うてなちゃんも、小夜ちゃんが好きらしくて...///」

「えぇ...。そっちで両想いなのに、割って入れてるキウィが強過ぎない...?」

「...。」

 

そんな熾烈な争いになっていたとは。

こないだ二人で編み物をしていたが、あれも水面下でバチバチにやり合っていたに違いない。

こりすは優しいお姉ちゃんズの大人な一面に戦慄を覚える。

 

「キウィちゃんに押され気味なのか、うてなちゃん最近元気なくて。心配なんだよね。」

「あぁ...言われてみれば、昨日も前よりテンション低そうだったわあの子。身近にそんな見事な三角関係があるなんてね。」

 

真珠もこりすも、レオパルトの『エッチ宣言』は知っている。というか聞いてたし。

なので、更にうてながいたたまれないし、小夜がどうするつもりなのかも分からない。

こちらはこちらで板挟み状態だ。

 

「こればっかりは本人たち次第なんじゃない?真珠たちが心配してもしょうがないっていうか。」

「それはそうなんだけどねぇ...。みんなあたしの大切な友だちだし、どうしても気にしちゃうよ。」

「...自然と話してるけど、アンタは普通に受け入れるわけ?その...女の子同士ってとこ。」

「お互いにいいならいいんじゃないのかな。友だちも恋人も、仲良しなのは一緒でしょ?」

「...意外としっかりしてんのね、はるかって。」

「えへへー照れちゃうよぉ///」

 

生来のおおらかさからか、性別云々は彼女には然して問題ではないらしい。

ますます主人公っぽい。

 

マゼンタもきっと素顔はこういう子なんだろう。

宿命のライバルを思い出してか、ふと意地悪をしてみたくなる真珠。

 

「じゃあもし小夜に告白されたら、アンタどうするわけ?」

「へぇ!?///」

「さっき言ってたのは所詮、はるかの予想なんでしょ?もしかしたらそういう可能性もあるわけじゃない?」

 

口元をニヤつかせて質問してみる。

案の定な狼狽え方に、小さな嗜虐心をくすぐられる。

 

「小夜ちゃんが、あたしを...?///」

「たとえばよ、たとえば。」

「え、えぇぇ...///」

 

俯いてしまうはるか。

意外と満更でもなさそうなのが微妙に弄りにくい。

 

「か...」

「か?」

「考えさせて...!!///」

「......ぷっ。アハハ!」

「ふぇ!?」

「真面目に考え過ぎでしょ!冗談よ冗談!」

「も、もうっ!///」

 

素直過ぎるはるかの反応に破顔する真珠。

散々性格の悪い奴らに遊ばれてきたからか、そんな彼女の可愛らしさに心洗われる思いだった。

 

「カワイイわね、アンタ。真珠が認めたげる。」

「カワっ...!?///」

 

自然に出た真珠の言葉に、赤面を強めるはるか。

頬杖をつきながら、悩ましげな上目遣い。

ダメアイドルらしからぬ口説き文句と美少女っぷりなのだが、本人はまったく気付いていない。

 

「...。」

 

"浮気"だ...。

 

子どもながらにこりすは確信した。

心は痛むが仕方ない。

ネモに必ず報告しようと決意した。

 

数日後。

たまネモに修羅場が訪れるが、速攻で仲直りした。

詳細はゲロ甘いので伏せることにする。

9歳にして胸焼けに苦しんだこりすは、この時の行いを一生悔いたという。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

ピンポーン。

 

「は、は~い...。あれ...こりす、ちゃん?」

「ビシッ。」

 

やっと来た週末の土曜日。

炎天下の中わざわざこりすがやって来たのは、『柊うてなの家』だった。

 

「どうしたの...?お家まで一人で来るなんて...。」

「フリフリ...。」

「あっ...お人形さん、ほつれちゃったんだね。言ってくれれば直しに行ったのに。暑かったでしょ、どうぞ上がって?」

「コクリ。」

 

勿論、ただ人形を直してもらう為に来たわけではない。

昨日、真珠たちから『うてなが元気がない』と聞いたこりす。

大事なお人形を直してくれた恩人に、何かお返しがしたかったのだ。

 

とはいえ、落ち込んでいる理由が理由。

どうすれば元気付けられるか、皆目検討が付かない。

案内に従いつつ、こりすはどうしたものかと思案する。

 

「何か飲み物持って来るね?」

「コクリ。」

 

通されたリビングを見渡す。

机にはノートと参考書。

覗いてみると、そこにはそれなりに上手い"マジアマゼンタ"の絵が描かれていた。

どうやら集中出来ていないらしい。

ご両親は留守のようだ。

 

「お待たせこりすちゃん。」

「ペコリ。」

 

持ってきてもらった麦茶を手に取る。

小さな体にこの夏の日差しは厳しい。

ただの麦茶だったが、今のこりすにはそれが何よりのご褒美に思えた。

 

「ふふっ、ゆっくりしていってね。」

「コクリ。」

 

人形を預け、ただじっとうてなの裁縫する様子を眺める。

そのまま10分ほどが経過し。

 

「な、何か見る...?(汗)」

「...コクリ。」

 

うてなは本来人見知り。

例え相手がこりすでも、じっと見つめられる状況に耐えられるはずがなかった。

 

「...。」

「何か気になるの、あるかな?」

 

うてなの部屋に行き、本棚のコレクションを物色する。

予想通り、魔法少女系しかない。

こりすは一通り眺めて、その中の一つを手に取る。

ドット柄のジャケットが気に入った。

"まどか"というのは、主人公の名前だろうか?

 

「あ!?そ、それはこりすちゃんにはまだ早いかもっ!?」

「ムスッ...。」

 

せっかく選んだのにあえなく取り上げられてしまった。

不機嫌になるこりす。

本棚から離れ、勝手に部屋を漁り始める。

妙に気になった引き出しを開けてみると。

 

「...。」

「あ。」

 

出てきたのは、何冊かの"雑誌"。

いずれも露出の多い女の人が表紙だ。

しかも、みんな縛られている。

 

「ち、ちちちち違うの!?こ、これはぁっ!参考資料でぇっ!?///」

「ジト...。」

 

なお悪いだろ。何の資料だよ。

うてなお姉ちゃんもやっぱり変態さんだった。

お姉ちゃんズは変人しかいないということが確定した。

内心、結構ショックだった。

 

パサッ。

 

「?」

 

雑誌と雑誌の間から何かが落ちる。

"写真"だ。

写っていたのは、小夜お姉ちゃんとうてなお姉ちゃん。

海で撮ったのだろう、珍しいツーショットだ。

 

「...。」

「ぁ、それ...。ちょっと前まで、飾ってたんだけど...。」

 

机の上には、空になったフォトスタンドが畳まれていた。

 

「...。」

「こりすちゃん...?」

 

写真をフォトスタンドの中へ戻し、うてなに手渡す。

うてなはしばらく写真を眺めていたが、やがて躊躇いながらもこりすに悩みを語り始める。

 

「私、小夜ちゃんのこと何も知らなくて...。何をしたくて、何を思ってるのかも分からないの。信じたいのに、不安で...。そうやって小夜ちゃんのせいにしてる私自身が、嫌になっちゃって...。」

「...コクリ。」

 

うてなと並んで、ベッドに腰掛ける。

誰にも相談出来なかったからか、堰を切ったように言葉が感情と共に溢れ出した。

 

「ごめんねっ...意味わかんないよね、こんな話っ...。」

「...フルフル。」

 

背伸びをして、うてなの頭を撫でる。

いつもママや、小夜お姉ちゃんがしてくれるのと同じように。

大丈夫、大丈夫。いいこ、いいこ。

そう気持ちを込めて、一生懸命撫でる。

 

分からないなら聞けばいい。

不安なら、そう伝えればいい。

もっとしたいように、気持ちのままに動けばいい。

言葉にせずとも、こりすはそう伝えようとしている。

そんな風に、うてなには感じられた。

 

「...ありがとう、こりすちゃん。勇気を出して、小夜ちゃんと話してみるね?」

「コクリ。」

 

少しスッキリした様子のうてな。

大したことは出来てないが、今日のお人形一体分くらいは恩返し出来たかな?と思う、こりすなのであった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

『ひとりぼっちは寂しいもんな...。』

 

「うぅっ!何度見ても泣けるぅ!自らを犠牲にしてでも誰かに寄り添うその優しさぁっ!まさに魔法少女ぉぉっ!!分かるこりすちゃん!?これが魔法少女なのぉ~!!(泣)」

「コクコク。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ホカホカ...。」

 

気付けば夕方も終わりに近い時間。

つい長居してしまった。

 

あのアニメ、なかなか面白かった。

特にあのマスコットがよかった。

どことなくヴェナリータみたいだったし。

可愛かったから、ぬいぐるみとか欲しい。

小夜お姉ちゃんも知ってる作品らしいから、今度売ってないか聞いてみよう。

 

「...。」

 

帰り道でこりすは思い出す。

今日は土曜日だが、ママはお仕事で帰りが遅い。

夜ご飯は自分で買って欲しいと頼まれていたのだった。

少し寂しいが、日曜日とその次の祝日は遊んでくれる約束をしている。

今日はうてなお姉ちゃんが遊んでくれたし、これくらいへっちゃらだ。

 

「...。」

 

こりすは近所のコンビニに足を運ぶ。

本当は街まで美味しいご飯を買いに行きたいが、疲れていてそこまでの気力はなかった。

 

「いらっしゃいませっ!......む。なんだ、また一人なのか?」

「...コクリ。」

 

よく通っているコンビニ。

最近この店に、ある"新人"が入った。

長い黒髪に吊目。ちょっと悪者っぽい、でも美人な新人店員は、既にこりすと顔馴染みだ。

 

「ビシッ。」

「お任せで!じゃない。コンビニは行きつけのバーじゃないんだぞ、まったく。」

 

こりすのジェスチャーに、当たり前のように返事をする店員。

文句を言いつつ、せっせと食品コーナーから品物を選んでいく。

 

「前はパスタだけだっただろう。もっとバランスよく食べろ。たくさん食べれないのなら尚更だ。」

「コクリ。」

 

こりすでも食べられる量かつ、バラエティ豊かな品々。

値段も予算内で最効率。

なかなか優秀な店員なので、こりすは結構気に入っていた。

この店員が入ってから、コンビニの利用頻度は激増したと言っていい。

 

「温めますか?」

「フルフル。」

「袋はご利用でしょうか?」

「コクリ。」

「ビニールでいいから持ち歩けと言っただろう。たかが5円、されど5円だ。」

「...。」

「ケチ臭い?お前も働くようになれば分かる。その発言は世間知らずの証拠だな。」

「プクゥ...。」

 

一々小言が多いのが玉に瑕。

何だかちょっと小夜お姉ちゃんみたいだ。

 

「振り回したりするなよ?コンビニの容器は耐久力に難ありだからな。」

「コクリ。」

「レシートのお返しです。...それと。」

 

会計を済ませ帰宅しようとするこりすを呼び止める店員。

 

「これはおまけだ。安心しろ、私の私物だからな。」

「...。」

 

差し出されたのは小さな四角いチョコレート。

どういうわけか、この店員は毎回必ずお菓子をくれる。

怖い顔をしているが、何だかんだ子どもには優しいお姉さんなのだ。

 

「ペコリ。」

「ありがとうございました!またお越しくださいませっ!」

 

チョコを受け取り、今度こそコンビニを後にするこりす。

店員の威勢の良い声が、夕焼け空に響いた。

 

「...。」

 

ちなみに。

実はこりす、甘いものが苦手だったりする。

見た目に反して辛党。

一筋縄ではいかない、複雑な女である。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ごめんね、こりす...。明日は絶対に、一緒にお出掛けしましょうね...。」

「.....コクリ。」

 

申し訳なさそうに玄関から出ていく背中を見送る。

待ちに待った、日曜日。

ママに急なお仕事が入った。

残念だけど、これが初めてじゃない。

慣れているし、しょうがないのだ。

 

「...。」

 

だから、平気。

そう自分に()()()()()、こりすは人形を抱き締める。

 

「...。」

 

何もする気が起きない。

こりすはベッドに横になり、そのまま意識を失った。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

ピンポーン。 ピンポーン。

 

「...?」

 

インターホンの音で目を覚ます。

寝ぼけ眼を擦りながら、いったい誰だろうと機器を操作する。

 

『あ、繋がった。私よ、こりす。』

「!」

 

カメラから見えたのは、夏らしく髪をポニーテールにした『小夜お姉ちゃん』だった。

予想外の来訪者に驚き、しかし喜びながら鍵を解除する。

2分ほど経過して、今度は部屋のインターホンが押された。

 

「こんにちは、こりす。」

「~!」

 

扉を開けてすぐに、現れた小夜に抱き着く。

 

「わっ!...よっぽど寂しかったのね。遅くなってごめんなさい。」

「?」

 

でも、何でこんなにタイミングよくお姉ちゃんが家に来てくれたのか。

頭を撫でられながらこりすは考える。

 

「おばさまから電話があってね?『約束を守れなかった私の代わりに、こりすと遊んでくれないかな?』って。」

「!...。」

 

平気なように見せていたはずなのに、ママにはすべてお見通しだったらしい。

というか、いつの間に連絡先を交換していたのか。

ママもお姉ちゃんもちゃっかりしている。

 

「無理して来たんじゃないのよ?私が来たいから来たの。こりすをひとりぼっちになんてさせないわ。」

「...。」

 

抱き着く力が強くなる。

今までで一番ポカポカしているのが分かる。

 

「今日はおばさまが帰ってくるまで、ずっと一緒だからね?いっぱい遊びましょう!」

「コクリ!」

 

やっぱり、小夜お姉ちゃんが一番好きだ。

いつも優しくて、まるでわたしのことが何でも分かるみたいに、やって欲しいことを必ずしてくれる。

本当のお姉ちゃんだったら、ずっと寂しくないのにな。

 

小夜の手を引きながら、こりすはそんなことを考えていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ごきげんよう、素敵なお嬢様。」

「ペコリ。」

「丁寧なご挨拶をありがとう。きっと素晴らしいお母様がいらっしゃるのね。ほら、あなたもご挨拶なさい?」

「ほ、本日はおひがら、おひが...おひ、おひかえなすってぇ!!」

「『2点』」

「2点!?どっからどう見てもパーペキに上品なおじょーさまだったろうがっ!!」

「ムスッ...。」

「はぁ...。今のはキウィが悪いわ。」

「えぇ~っ!?」

 

幸せ気分はどこへやら。

素敵なお茶会ごっこは奇抜な時代劇に早変わり。

 

昼ごはんを食べ、昼寝もせずに小夜と遊び始めたタイミングで。

 

ピンポーン。

 

本日二度目のインターホン。

誰が来たかは簡単に予想できた。

 

『おっすこりす~。おねーちゃんだぞ~。』

『待ってたわよキウィ。ちゃんと頼んだものは買ってき』

『ポニテさよちゃんたまんねぇ!!抱きたいっ!抱かせてっ!あと嗅がせてぇ~!!』

『いや、嗅ぐ...?(汗)』

 

ダメな方のお姉ちゃんこと、キウィが来た。

どうやら小夜が何かを頼んで呼び寄せたらしい。

最初は喜んだこりすだが、あまりにもキウィにはお人形遊びの才能がなかった。

どんなシチュエーションでも趣旨は外すし、まともな台詞が出たことなど一度もない。

 

「だいたいお人形あそびなんて子どもっぽ過ぎんだよなぁ~。」

「ムカッ!」

「二人ともやめなさい!キウィはお姉ちゃんなんだから、そんなこりすが傷つくことを言っちゃダメよ。」

「先に文句言ったのこりすじゃんか~!」

「ムー!」

 

端から見たら、完全にケンカする姉妹とそれを叱るお母さんである。

すっかり険悪になったムード。

何とか仲直りさせたいと小夜は頭を悩ませる。

 

「...そうだ!キウィあなた、こりすにサプライズのプレゼントがあるって言ってたじゃない。」

「!...。」

「あぁ~...ん~...。」

 

嫌々ながらも、買い物袋を漁ってプレゼントを取り出すキウィ。

不機嫌だったこりすもすぐにワクワク顔になる。

これで期待通りのモノさえ出てくれば...。

 

「じゃ~ん。かっけ~だろ~。しかも前よりでけ~ぞ~。」

「...。」

「き、キウィ...。」

 

そう思っていた時期が、小夜にもありました。

取り出されたのは以前より大きい、"プラモデルの箱"だった。

 

微妙に見た目は違うが、相変わらずこりすが好きな方向とは真逆である。

もっと無難なところを選ぶこともできるだろうに。

流石キウィだ。チャレンジャー過ぎる。

勿論、褒めてはいない。

 

「...。」

「嬉しくて声も出せねーか~。こりすもカワイイとこあんじゃ~ん。」

「はぁ...。」

 

声はいつも出してないでしょ。と言う気力すら失せた小夜。

一人上機嫌なキウィがこりすの頭を雑に撫でる姿を、ただ眺めていることしかできなかった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「あ~!これ切っちゃダメなやつじゃ~ん!もうやだ~!んで最初からかんせーしてねぇんだよこのプラモ~!!」

「ジト...。」

 

プラモデルだからだろ。前と同じことをわざわざ言うな。

そんな思いを込めて、こりすはキウィを睨む。

 

買ってきた責任?を取る形でまたもやプラモを作成することになったキウィ。

サイズアップした結果、難易度もそれに比例して上がってしまい。

ただでさえ細かいことが苦手な彼女には、かなり厳しい試練となってしまったのだ。

 

「少し休憩したら?もうすぐ夕飯もできるし。」

「さよちゃんのてりょうり!やたぁ~!」

「キウィが買って来てくれた食材で作った、スパイスカレー。こりす、カレー好きでしょ?」

「コクコク!」

 

小夜の特製カレーにテンションの上がる二人。

もうすぐと言いつつ、もう後一時間ほどはかかりそうだ。

カレーは煮込みが命。

こりすは違いの分かるレディである。

 

「...こりす~、わりぃんだけど風呂借りていい~?なんか汗でキモくてさ~...。」

「コクリ。」

「せっかくなら、こりすも一緒に済ませちゃったら?食べたら今度こそ眠くなっちゃうかもだし。」

「...コクリ。」

「んじゃ、行くぞ~。」

 

さっきまでケンカをしていたはずの二人だが、仲良く入浴することに。

素直に洗面所に向かい、裸の付き合いを開始する。

 

「ほら、洗ってやんよ~。」

「コクリ。」

 

ワシャワシャと髪を泡立てる手は、意外にも繊細で優しい。

丁寧に、絶妙な力加減で洗い上げていく。

 

「髪は女の命だかんな~。手入れはちゃんとすんだぞ~。」

「コクリ。」

「流すぞ~?」

「コクリ。」

 

すっかり優しいお姉ちゃんモードのキウィ。

こりすが彼女を嫌いになれないのも、時偶こういった姿を見せてくれるからなのだ。

 

「ふぃ~。疲れたなぁ~こりす~。」

「コクリ~。」

 

そうやってお互いに体を洗った後、予め沸かしておいた湯に二人で浸かる。

そういえば、ママ以外とお風呂に入るのは初めてだ。

"お姉ちゃん"って、やっぱりこういう感じなのだろうか。

 

「...なぁ、こりす。ロードとかと戦った時にさ。」

「...?」

「夢見たって言ったろ?こりすも、同じやつ見たって。」

「...コクリ。」

「あれさぁ。夢じゃなかったら、どうする?」

「...。」

 

急に雰囲気が変わった。

いつもとは違う、どこか真剣な様子でキウィは続ける。

 

「さよちゃんならさ..."お別れ"の時、ああいうこと言いそうだなって。...夢で、よかったよな。ホントに。」

「...コクリ。」

「最近、嫌な予感ってーの?なんかすんだよ。胸騒ぎってやつがさ。」

 

あの時のことは、今でも夢に見ることがある。

あの、リアルな"喪失感"。

もう二度と会えないのだと分かった時の、心がぎゅっと締め付けられる感覚。

あれだけはもう嫌だ。

こりすは無言を以て、キウィの言葉に同意する。

 

「...次は絶対、アタシらで守ろうな。」

「コクリ。」

 

ほっこりする湯船の中、二人は決意を新たにする。

もう二度と取り零さない。

この日常は、自分たちの手で守り切ってみせる。

お互いに背中を預け、そう誓い合うのだった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ただいま~...。」

 

すっかり遅くなってしまった。

仕事とはいえ、娘との約束も守れず。

帰ったのは23時過ぎ。

母親失格だなと、内心落ち込む。

 

「もう、寝てるわよね...。」

 

起こさないように音に注意しながら、リビングに辿り着く。

 

「これ...。」

 

机の上には、ラップをかけて綺麗に盛り付けられたカレーライス。

"うさぎ"の形に整えられたごはんが、とても可愛らしい。

その近くに書き置きを見つけ、手に取る。

 

『だいすきなママへ いつもおつかれさま。明日はお出かけ、楽しみだね。』

 

「こりすっ...。」

 

無口な娘が、その気持ちを込めて書いた置き手紙。

そんなシンプルなものが、疲れも何もかもを吹き飛ばす。

明日は目一杯楽しませよう。

目を涙で潤ませながら、こりすママはそう思った。

 

「ちょっとだけ...。」

 

今はちょっとだけ、最愛の娘の顔が見たい。

細心の注意を払い、こりすの部屋を覗く。

 

「!......ふふっ。」

 

予想通り、スヤスヤと可愛い寝息を立てて眠る愛娘。

そんな娘を、まるで守るように左右から挟む"お姉さん"が二人。

こりすと同じく、二人とも気持ち良さそうに眠りに落ちていた。

 

「よかったね、こりす。こんなに優しいお姉ちゃんが、たくさん出来て。」

 

幸せそうに"笑う"こりすの姿に、またしてもポロポロと涙を流す。

今日は何をしたのかな?

昨日は誰といて、一昨日はどんな思い出が出来たのか。

明日聞かされるだろう、そんなエピソードたちに期待しつつ。

こりすママは一人、愛娘たちの特製カレーに舌鼓を打つのであった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ついに、始まるんですねぇ...。」

「ああ、そうさ。これで漸く始められる。」

 

稲光が天から地を貫く中、築き上げた"愛の巣"を見上げて、悪魔は嗤う。

 

「柊うてな。水神小夜。その力尽きるまで踊ってもらうよ。ボクの舞台で。()()()()()()()()ね。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□next episode◼️□

 

「きて、キウィっ...!///」

 

『こんなん我慢できるかあぁぁぁ!!!///』




いまいちはっちゃけられないうてな。
彼女なりに理想の魔法少女になろうとしているが故なのですが、小夜のことと合わせてストレスが溜まり気味な様子。

次回は一応、8/18(日)0:00投稿予定です。
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