魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

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いつもご愛読ありがとうございます。
今回からシリアス突入となります。
相変わらずお見苦しい文章ですが、お付き合い頂けると幸いです。


第17話『トライアングラー』

『あぁ、うっざ...。』

 

またコレか。

 

最近、『夢』を見る。

いっつもおんなじ夢。

現実とほとんど変わんない、平凡な夢。

 

ナハトベースにこりすと、バカップルがいて。

おかしいことに、そこに小夜ちゃんだけがいない。

小夜ちゃんの席に、"知らない誰か"が座ってる。

そんな誰かも分かんないヤツと、アタシは笑って会話してて。

 

『□○△ちゃんすき~ホテルいこ~。』

 

とか言ってんの。

さよちゃんじゃないヤツに何言ってんだ!って、

ムカついたはずなのに。

怒る所か、アタシの胸は幸せでいっぱいだった。

誰だか知らないそいつに、アタシは()()()()()

 

『悪巧みなんて許さないよ!』

 

場面が変わって、アタシはレオパルトになってて。

向かいにはいつもの正義の味方。

マゼンタと、くそサルファ。

それと知らない"青い魔法少女"。

そいつが何故かすごく気になったけど、

アタシの瞳は常に"隣の誰か"を捉えて離せない。

 

『アタシらのらぶらぶパワーで~、めちゃくちゃにしてやんよ~。』

『毎度毎度、ご苦労なことですねぇ、トレスマジアの皆さん。せっかく来てくれたのですから、本日もじっくり...楽しませて頂きましょうか。』

 

口元をニヤつかせ、邪悪に微笑むその姿に、胸のドキドキが止まらない。

アタシは堪らず、その最愛の人の名前を呼ぶ。

 

『ガンバろ~ね、()()()()()()!』

 

だいたいここで、目が覚める。

 

「っ!?......ちっ。」

 

最悪の寝覚めだ。

てか、暑いし。

 

体と心のキモさを同時に感じながら、イラついた気持ちをそのまま壁にぶつける。

拳の痛みで目が覚めていく。

 

「何がベーゼちゃんだ...浮気かこのクソビッチ...。」

 

たかが夢だ。...夢だけど。

とにかく、すっげー嫌な気分。

アタシは、ちゃんと小夜ちゃんが好きなはずなのに。

自分で、そう選んだはずなのに。

 

「"アタシ"まで、アタシが間違ってるって言いてぇのかよ...。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

ゴゴゴゴ...ピシャア...ン!カッ!

 

「ついに、出来てしまったのね...!」

「当然だよ。頑張ってくれたキウィの頼みだからね。無下には出来ないじゃないか。」

 

どうやって落としているのかも分からない雷に照らされた、場違い過ぎる建物が私を見下ろす。

 

『HOTEL ENORMITY』。

 

洒落たフォントの看板を、まるで誇るかのように輝かせ。

ナハトベースの向かいに、それは鎮座していた。

看板の他に、ホテル前にはデカデカとメニュー表のような文字列が並ぶ。

"ショート3500円"とか、"休憩6000円"とか。

聞き慣れない単語が記載されている。

...まさか本当に金取るつもりじゃないだろうな?

 

「あなたの趣味なのかしら...?」

「"用途"に合わせて極一般的な形を模しただけさ。気に入ってもらえたかい?」

「ノーコメントで...。」

 

キウィが希望した、ホテル。

日本では一般的に"宿泊施設"の意だが。

頭にある単語を付けると、途端にアダルトな概念へと変貌を遂げる。

 

()()ホテル』。

 

所謂、性行為を行う為の施設だ。

仮にも中学生の身で目にすることになるとは。

キウィがそんなものをヴェナに頼んだ理由など一つ。

 

『アタシ、ちょーガンバる!だから、アズールちゃん!これが終わったら、アタシとエッチしてっ!!』

 

あの時の"約束"を果たす為だ。

 

「それじゃこれ、部屋のカギだからね。」

「え、ええ...。ありがとう。」

「キウィにはボクが伝えておくよ。ごゆっくり。」

 

そう言ってふよふよと飛んでいくヴェナ。

一人取り残された私は、渡されたカギを見つめて冷や汗を流す。

 

「キウィと、エッチ...///」

 

いつかこの日が来ることは分かっていたし、キウィとそういう類いのことは、初めてというわけでもない。

 

だが、今日はそれとは違う。

ホントのホントに、"一線を越える"ということだ。

キスはするだろうし、彼女が望むなら操立てで、膜だって破っちゃうかもしれないし...。

 

「どうしよう...どうすれば...。」

 

"しない"という選択肢はない。

キウィは本当に頑張ってくれた。

彼女のことは大好きで大切で、約束を破る気なんて1ミリもない。

大体、私だってキウィとえっちなことしたいし...。

だけど。

 

「うてなはどうするのよ...。」

 

ずっとうてなが大好きで。

彼女と深い仲になりたくて、私はルシファアズールになった。

その想いは今も変わらない。

うてなを見る度、ドキドキする。

仲良くなった今でも、顔が赤くなるのを誤魔化して、必死にお姉さん味を出して接しているのだ。

今なら分かる。

私は、柊うてなを"愛している"。

だから以前の海水浴の時、うてなが私に告白してくれようとしたことが嬉し過ぎて。

内心、頭の中がお祭り騒ぎだった。

 

「なら、何で応えなかったのかって?」

 

独り言を呟きながら、私はいよいよホテルの中へ入っていく。

ホテル特有の匂いと綺麗なフロントに、ちょっとだけワクワクさせられ、エレベーターで上階に向かう。

 

「私とうてながあそこで付き合ってたら、絶対本気で戦えなくなるじゃない...。」

 

戦わなければいい?それは違う、ナンセンスだ。

それじゃつまらないのは当たり前として、エノルミータとトレスマジアは()()()()()()()()()()()

 

私たちがこうして変身していることには意味がある。

誰かにとって、利用価値があるということだ。

黒幕はヴェナか、ヴァーツか。

それとも他の誰かか。

今はまだ分からないが、この世界はのんびり過ごすだけで生き残れる程、甘くはないと思う。

私が干渉したせいで、ロードエノルメですら凄まじい強敵と化したのだ。

 

強くならなくては。

でなければ、今度は本当に誰かを失ってしまう。

強くなる為には、更に"想い"の力を強める必要がある。

その為に、私たちは本気でぶつかり合うしかないのだ。

 

「うてなは魔法少女でいたいみたいだし...。」

 

今の彼女は"理想の魔法少女"を目指している。

だからこそ、溢れる欲望を抑えつけて、開いた蕾をまた閉じたのだろう。

本来のマジアベーゼであれば考える必要はなかったのだが、今の彼女のレベリングは一筋縄ではいかない。

 

「まあ、それが建前で。」

 

『レオ×ベーゼは本当にもうありませんか...?』

 

というのが本音の理由。

うてなには本当に幸せになれる選択をして欲しい。

私たちの間には、色々と好きになっても仕方ないイベントが多過ぎた。

つまり、所謂『吊り橋効果』の可能性だってある。

だからあの子には、ちゃんと考える時間をあげたかったのだ。

...は?それぞれちゃんと攻略しといて、今更何ほざいてんのって?

 

「ド正論やん...。」

 

待って欲しい。

せめて言い訳を聞いて欲しい。

 

そんな上手くいくと思いますか?普通。

『原作うてな』って、キウィにあれだけアピールされても簡単に関係をはっきりさせないし。

キウィはキウィであのヒロイン力だから、こっちでも何だかんだデスティニー的にうてなとフォーリンラブすると思ってた。

 

それがまあ、なんとまあ。

なんと綺麗な"トライアングル"か。

私は鈍感系主人公ではないし、前世は数多の恋愛アニメを制覇してきた強豪ヲタク。

ハッキリと理解している。

二人とも、マジに私に"ガチ恋ラブ"だ。

勿論私も、二人にガチ恋なう。

 

「私だけ二股なんだけど。二人とは尊さの差がエグいんですけど...。」

 

誰よりも大切に想っている子たちに、これ以上の裏切りがあるだろうか?

差があるなら、片方に嫌われる覚悟を持つのもありだ。

だが、無理。

どっちも最高。最愛。差などあり得ない。

ずっと一緒にいたい。二人と。

 

「いっそ二人がくっついてくれたら...。」

 

レオ×ベーゼは私の最推しカプ。

二人がもし心から結ばれるのであれば、私は一生処女でも構わない。

記憶が薄れた今も、あのえっちでありながら尊さに溢れたエピソードは色褪せない。

原作読みたい。推しを推しとして供給したい。

そんな支離滅裂な現実逃避を繰り返し、私は部屋へと辿り着く。

 

「広い...。」

 

あと、照明がえっち。

過ごしやすそうな空間、その中で一番強い存在感を放つベッドに腰掛ける。

 

「はぁ...。私が、悪いのよね...。」

 

でも言わせて欲しい。

リアルになった推しに挟まれて、惚れないわけがない。

あんなに可愛くてえっちでいい子に迫られて、我慢出来るって言うのかい?

私の気持ちに共感出来ないなんて、わけがわからないよ。

口とは裏腹に、私は段々逆ギレを始めていく。

 

「...ファーストキスも処女もなくなった私を、うてなは好きでいてくれるかな...。」

 

"初めて"じゃない私は、やっぱり嫌なんだろうな。

結局、

 

『小夜ちゃんはキウィちゃんとエッチしちゃうの?』

 

とは言われなかったし。

......なんて。聞きたかったけど、聞けなかったんだろうな。

 

「ごめんね、うてな...。」

 

私は今日、キウィと交わる。

色々考えるのはその後だ。

今の私は、キウィの幸せの為にここにいるのだから。

決意を込め、私は枕元のオプションメニューを開く。

 

「猿轡、手錠、縄...。鞭はやっぱりショートかしら。...な、長い夜になりそうね...!///」

 

ハァハァと荒くなる息遣い。

水神小夜。

彼女はどうしようもない、真性の『ドM』であった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「やっべぇぞこりす...!ついに爪先が完成しちまった...。アタシ、プラモの天才かもしれん...。」

「...。」

 

誰でも出来るだろ、ちっちぇな。

しかも片方だけかよ。

そう言いたげなジト目でキウィを睨むこりす。

 

このキウィ、さっきから様子がおかしい。

珍しく作りかけで放置していたプラモを持参して、アジトまで来たところまではいい。

問題はここから。

一度として"小夜"の話題を出さず、プラモ作りに集中し始めたのだ。

無言に次ぐ無言。

真珠とネモの声掛けにも生返事を返し、一時間ずっと組み立て続けていた。

...一時間で爪先だけかって?

残念、それは平常運転です。

 

「ねぇ、ネモ...。」

「...あぁ。真珠の考えてる通りだと思うぜ?」

 

訝しむたまネモ。

頷き合って、微妙な表情で件のキウィに近付く。

 

「せっかくホテル出来たんだろ?油売ってねぇでさっさと」

「あ~アレな~。いいよお前ら。先使ってこいよ。」

「何でよっ!!///」

「ほっとけっ!!///」

 

熱望していたホテルが出来たというのに、一番乗りをたまネモに譲ると言うキウィ。

お馴染みのイジりに一旦は動揺する二人だったが、今日は一味違う。

 

「誤魔化されないわよっ!キウィアンタ!」

「なにビビっ」

「は? ビ ビ っ て な い が?」

 

二人の指摘に食い気味で返すキウィ。

あまりにも分かりやすい。

たまネモとこりすはげんなりしつつ、やっぱり日和っていたキウィの話を聞こうとする。

 

「いつもなら飛びつくとこじゃない。何よ?何かあっt」

「は?は?違うんですけど?アタシは優しいのでゆずってあげてるだけなんですけど?」

「お前に限ってそれはねぇだろ。」

「うっせ!!ビビってねーし!?よし分かった今行ってやる!ここから飛んで行ってやるよぉ!!」

「やりなさいよ。」

「アブねーだろ止めろよ!!」

「まともじゃねーな。いつも以上に。」

 

支離滅裂なキウィの様子に辟易とする。

こりすなんて、今までにない青筋の立て方をしていた。

イライラMAXである。

 

流石にイジる気にもならないと、たまネモは顔を見合せ溜め息を吐く。

 

「ね、真珠たちも心配してんのよ?何か悩んでるなら、話くらい聞くから。」

「仲間だろ、一応。」

「たまネモ...。」

「「カップリング呼びは止めろ。」」

 

キウィを落ち着かせ、向かい合って席に座る。

モジモジした様子でなかなか話し出さない彼女に痺れを切らし、真珠は少し顔を赤らめて問い掛ける。

 

「もしかして、不安とか?その...上手く、出来ないかも、とか...///」

「いや別に?さよちゃんの弱いとこもう知ってるし。朝まで寝かせない自信あるわ。」

「そこまで聞いてないわよっ!///」

 

自爆した真珠を横目で見つつ、ネモは考える。最近のキウィの行動に何か引っ掛かりを覚えたのだ。

妙にこう、周りを意識しているような...。

 

「...お前もしかして、"自分が愛されてる"自信がないのか?」

「っ...!?///」

 

途端に真っ赤になるキウィの表情が、三人に真実を物語る。

やたら小夜の周りを警戒していたのはそのせいか。

自分が一番かどうか不安だったのだろう。

 

「なんだ、そんなことなわけ。」

「んなことってなんだぁ!?アタシは真剣にさよちゃんのこと考えてっ!!///」

「いや、だからさ。」

 

キウィを遮り、ネモは幾分優しげな表情で言葉を続ける。

 

「大丈夫だろ。小夜、お前のことちゃんと好きだし。」

「アンタたち、毎回すぐに真珠たちのことからかうけどさ。端から見れば、アンタたちの方がよっぽどバカップルだっての。」

「そうだよな?こりす。」

「コクリ。」

「......そ、そうかなぁ...///」

 

近くで二人を見ていたこりすたちには分かる。

キウィが小夜小夜うるさいように、小夜だってキウィがいなければずっとキウィの話をしていたし。

キウィと接している時の表情は非常に穏やかで、幸せそうだった。

彼女が心配するようなことにはならないだろうという確信が、三人にはあった。

 

「で、でもさ~でもさ~。もしかしたら...」

「グィィ!」

「いはぁい!?」

 

それでもまだ決心の着かないキウィにブチギレし、こりすは彼女の頬を全力でつねった。

 

「テメェ!?アタシのご尊顔に何を!」

「グッ。」

「!こりす、おまえ...!勇気づけてくれんのかよ...!」

 

叱咤激励と受け取り感動するキウィ。

こりすの表情が心底うんざりしているモノだと理解した上で、

たまネモは何も言わず、ただ成り行きを見守ることにした。

いい加減、面倒くさかった。

 

「...サンキューな、お前ら!阿良河キウィ!"女"になってくらぁ!!」

「今まで何だったのよ。」

「受け取り様によっては下ネタだよな。」

 

雄叫びをあげながら、ホテルに突進していくキウィを送り出す。

やっと終わったかと安堵する三人だが、彼女たちにとっての"本当の面倒事"は、実はこれからだったりする。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

ガチャ...。

 

「さよ、ちゃん...お、おひ...おひかえなすって...///」

「おひかえ?...時代劇...?」

 

やっべ。何言ったらいいかわかんね...。

ヴェナちゃんにカギをもらって、覚悟決めて入ったはずなのに。

ベッドの上で顔を赤くしながら、ちょこんと座る小夜ちゃんを見て、全部吹っ飛んだ。

カワイイが過ぎる...。

 

「......あの、私...お風呂、まだなんだけど...よかったら、一緒に...///」

「...!は、入るっ...!///」

 

いつもとは違う、照れた様子の小夜ちゃんに誘われ、アタシはバスルームまで移動する。

会話もなく、服を脱ぐ音だけがする。

いつもだったらおどけながら、小夜ちゃんのえっちな身体を堪能するんだけど。

今日は、無理。

お互いに顔を見ることもしないで、背中合わせに裸になる。

 

「ひ、広い、わね...///」

「う、うん...///」

 

ピンクい壁にミニプールみたいな浴槽。

その端っこに並んで座って、体を綺麗にしていく。

気持ち分、"下の方"は特に念入りに洗っていく。

大丈夫かな、小夜ちゃんに見られてないかな...?

汚いとか、思われてないかな...?

そうやってビビりチラシながら、体についた泡を洗い流す。

 

「あったかいわね...///」

「う、うん...///」

 

さっきから"うん。"しか言えてねー...。

少し距離を離して、浴槽に浸かる。

そのまま、たぶん5分くらい無言が続いて。

 

「さよちゃん...もしかしてずっと待っててくれてた...?///」

「そんなによ...?でもほら、キウィを先に待たせたら、きっと不安にさせちゃうと思って...///」

「そっか...あんがとね...///」

 

優しい。マジ天使。

あれ以上待たせなくてよかった...。

感謝してやるぜ!こりす!たまネモ!

 

「...あのね、キウィ。改めて、あなたにお礼が言いたいの。」

「え、なんの...?」

 

小夜ちゃんは表情を真剣な感じに変えて、アタシの方を向いた。

うわぁ。カッコいい...惚れる...。惚れてた。

 

「私を理解してくれて。私を、ヒロインにしてくれた。

あなたはあのシスタギガントを倒した。

正直、勝算はかなり薄いと思ってたの。

それでも、キウィはそれをやってのけた。

...シスタと戦うって、私が負けたあの時から決めていたんでしょう?

私の為に、戦ってくれたのよね...。」

「...アタシはいつだって、さよちゃんの為に戦ってるよ。」

 

アタシのさよちゃんを傷つけようとするヤツは、アタシがぶっ潰す。

アタシのさよちゃんの楽しみを邪魔するヤツは、アタシがぶっ飛ばす。

ただそれだけだ。

これまでも、これからも。

 

「...この前、ダンジョンでさよちゃんに負けた時さ。

"悔しかった"んだよね。

アタシ、さよちゃんになら何されてもうれしいって思ってたのにさ。」

「キウィ...。」

 

前より出来ることも増えて、全力で戦ってみた。

だけど、小夜ちゃんには全然敵わなかった。

アタシがあほサルファと死にかけながら倒したシスタですら、今の小夜ちゃんには大した相手じゃないんだろう。

 

「さよちゃんより弱いんじゃ、さよちゃんのこと守れねーじゃん?」

「キウィ、私はそんなこと」

「分かってる。でも、アタシはさよちゃんを守りたい。"王子さま"としてさ。好きな女はぜってぇ傷つけさせないから。」

「好きな、女...///」

 

小夜ちゃんがホントに無敵なら、アタシらにまであんなことする必要がない。

きっと、何か不安があるはず。

今の小夜ちゃんでもダメ。アタシらじゃ論外。

そんな"ヤバい何か"がこの先あるんだろう。

でも、()()()()()()()

そんなの、アタシが諦める理由にはならんし。

 

「さよちゃんの為になら、アタシはどこまでも強くなれる。だから、待っててね。すぐにスゲーアタシを見せて、さよちゃんの目を釘付けにしてやっからさ。」

「...ずるいわ、本当に...///」

「え?」

「さ、さあ!もう上がりましょうかっ!///」

 

バシャンッ!と波を立てて急に立ち上がる小夜ちゃん。

そのままそそくさとバスルームを出ていってしまう。

怒ってはないと思うけど、最後なんて言ってたんだろ?

 

「...///」

「...///」 

 

バスタオル、着替え、ドライヤー。

またなんも会話しない無言の時間が過ぎて、最終的にバスローブ姿で、二人してベッドを見つめる。

止まらんし、もっと早くなる鼓動。

ついにやって来た、待ちに待った瞬間。

なのにアタシは、まともに動けないで固まるだけ。

 

小夜ちゃんを守りたいし、一番好きなのはマジ。

でも、最近のアタシは...。

毎晩見る、『あの夢』を思い出す。

ホントにここで。

さよちゃんと"して"いいのかな。

今の、アタシで...。

 

「さ、さよちゃんっ...?///」

 

小夜ちゃんがゆっくりと着てたバスローブを脱ぎ捨てる。

視界に映るその身体。

小夜ちゃんの、えっちでキレイな身体。

 

理性がぶっ飛びそうなのを必死に抑えて、ついでに噴き出しそうな鼻血も抑える。

小夜ちゃんはベッドに寝そべり、アタシに向かって手を伸ばす。

頬を真っ赤にして、潤んだ瞳でアタシを見る。

 

我慢、我慢だキウィぃ...!

本番は、気持ちに整理を付けてからじゃないとダメ...!!

だからやっぱり今は...!

 

「きて、キウィっ...!///」

『こんなん我慢できるかあぁぁぁ!!!///』

 

「さよちゃあぁぁんっ!!!///」

 

バスローブを投げ捨て、欲望のまま小夜ちゃんに覆い被さる。

ありとあらゆるところを味わい、触れる。

肌キレイ...やわらかい...いいにおい...!

 

「さよちゃっ...///」

「私だって、触りたい...!///」

 

小夜ちゃんも、アタシの身体に触れてくる。

敏感なところをまさぐり合って、お互いに身体が震えるのを、抱き締め合って堪える。

 

「ハァっ...ハァ...っ!///」

「さよ、ちゃんっ...!///」

 

自然と唇と唇が近づき、ついに触れ合いそうになるその瞬間。

 

ガチャ!バン!

 

「大変だぁ、トレスマジアが現れたぞぉ!」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「サルファ!上!」

「おう!マゼンタ、右や!」

 

抜群のコンビネーションで魔物を打ち倒していく二人。

やっぱりいいなぁ、魔法少女のカッコいいシーン。

 

マゼンタスピアー、久しぶりに見た気がする。

最近はずっとヒーラー役だったし。

サルファシールドも頻度低くなったかも。

また技名叫んで欲しいなぁ。

 

「お二人とも、油断大敵です。」

「なっ!?」

「えぇ!?」

 

倒された魔物から、"新たな魔物"が現れる。

隙を突いてその腕を伸ばし、二人の手足を拘束する。

 

「ぐっ...!」

「う、動けないっ...!?」

「寄生虫を参考に作成してみたのですが、あまりよくありませんねぇ。ビジュアルが魔法少女らしくありません。ナンセンスです。」

 

特訓の為全力で、って言う話だったから、つい試してみたけど。

これは悪者のビジュアル過ぎる。

実際にやるとしてもカンガルーの赤ちゃんみたいなイメージでやってみるかなぁ。

魔物は私の"命令通り"、二人の衣装を破り腋を露出させる。

 

「なっ!?べ、ベーゼ!どういうつもりや!?///」

「まずいよサルファ!?ベーゼ、"敬語モード"になっちゃってるっ!」

 

私はもがく二人にゆっくり近づき、サルファの汗が光るその美しい腋に手を伸ばす。

 

「ひっ!?は、ひゃ...や、やめ...!あはははははっ!?///」

「正義のヒロインが、たかが魔物に後れを取るなんていけませんねぇ。」

「べ、ベーゼ?ま、まいった。あたしたちの負けでいいから、だからもうやm」

「参った?魔法少女が、悪に"降参する"と?」

「!?...しまったぁ...。」

 

擽られ身を捩るサルファを見て、降参を宣言するマゼンタ。

魔法少女は決して諦めてはいけない。

たとえ捕まり、辱しめを受けたとしても、最後まで戦い抜く。

それを練習とはいえ、参ったなんて。

 

「これは、お仕置きが必要みたいですねぇ...。」

「た、たすけっ!?」

 

魔物が多数の腕を展開し、それぞれの敏感な部分を狙う。

ごめんね、マゼンタちゃん、サルファちゃん。

でもこれは、二人の為だから。

 

「いい声を聞かせてくださいね。」

 

恐怖に歪む二人の表情に舌舐りをして、私は指をパチンと鳴らす。

程無くして、魔法少女たちの絶叫がこだました。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ご、ごめんね...二人とも...。」

「はぁ...。もうええ加減慣れて来たわ、ベーゼの悪癖も。」

「なんか、怒るのももういいかな~って...。」

「あ、諦められてるぅ...。」

 

ある意味見放されてるとも取れる発言に、がっくりと肩を落とす。

 

あのダンジョンでの出来事以来。

私たちトレスマジアは、余暇をこうして特訓に充てるようになっていた。

特訓場所はいつもの山。温泉付き。

マリーノだった時も特訓はしたが、現在の戦績はその真逆。

私が魔物を駆使して、二人を打ち負かすことがほとんどになった。

それは個人的に嬉しいのだけど...。

勝つ度にテンションが上がって、先ほどのように二人に"ヒドいこと"をしてしまう。

日に日に自分を抑えられなくなっている気がする。

 

「はぁ...。」

「でも、ホントに強くなったよねベーゼ。あのロードエノルメも倒しちゃったんだし。」

「でも今は、三人がかりでもアズールに勝てん。」

「アズール...。」

 

ルシファアズール。

本気の小夜ちゃんに、私たちは敗北した。

全力でやったつもりだった。

けど、届かなくて...。

 

「...うてなちゃん、小夜ちゃんとはお話出来た?」

「え...?」

「最近、妙に落ち込んではるし。どうせ小夜関連で何かあったんやろ?」

「それは、その...。」

 

何かあったと言うより、私が勝手に小夜ちゃんに対して不安になっているだけ。

...小夜ちゃんとは、一度話してみるつもりだ。

どう言ったらいいか分からないけど、素直に気持ちを伝えてみようと思う。

 

「...大丈夫。これは私と小夜ちゃんの問題だから。

何とか、してみせるよ。」

「...そっかぁ!なら、大丈夫だね!」

「デート失敗してうちらに神社まで引き摺られていったヤツの発言とは思えんなぁ。」

「そ、それは言わないで...///」

 

笑って応援してくれる二人に心で感謝しつつ、ヴェナリータからの勧誘について、二人に話すべきか思案する。

あの時のように分断されることがあれば、またやって来るかもしれないし。

起こったことくらい共有しよう。

そう考えて口を開いた、その時。

 

「マジアベーゼぇ...!!」

「っ!?」

「アホがっ!!」

 

頭上から大量の"手榴弾"が降り注いだ。

咄嗟にサルファシールドが展開され、爆発から私たちを守ってくれる。

煙が晴れたその先にいたのは、いつもの嗤い顔ではない、真剣な表情のレオパルトだった。

 

「おいコラ!アホ団子っ!あんた唐突に何してくれはるんや!」

「引っ込んでろサルファ。アタシが用あんのはマジアベーゼだけだ。」

「あ?何ナメたこと言うて」

「サルファちゃん。」

 

いつも通りレオちゃんに突っ掛かるサルファちゃんを制止して、私は一歩前に出る。

何故このタイミングなのかは分からないけど、用件は分かっていた。

 

「こないだの続きっていうことだね...?」

「あぁ...。あの時はどうやってかしんねーけど、逃げられたし。今日で終わりにしてやるよ。」

「...分かった。サルファちゃん、マゼンタちゃん。手は出さないで。」

「...うん、任せたよ。」

「ちょっ、マゼンタ!アイツはうちが」

「ごめんね、サルファちゃん。

でも私が戦わなくちゃ。

決着を着けなきゃいけないの。」

「あんた...。」

 

二人を説得している間に、更に二つの影が降り立ったのが見えた。

 

「ちょっとレオ!何一人で突っ込んでのよアンタ!?」

「アズールが来るまで待ってろって!てか、ヴェナさんに言われたからって、お前がこんなとこまで行くことないだろ!」

 

ロコちゃんに、ルベルちゃん。

レオちゃんの応援に来たというより、引き止めに来たといった感じだ。

 

「手ぇ出すなよロコルベ。アタシはベーゼと片を付ける為に来てんだ。邪魔したらお前らもまとめてぶっ飛ばす。」

「何言ってんの!?アイツ、ロードも倒しちゃうようなヤバいヤツなのよ!?アンタが勝てるわけ」

「うるせぇ!!アタシがやるんだっ!!邪魔すんな...!!」

「な、なによ...!ロコはアンタを心配して...。」

「...下がるぞロコ。マジでヤバそうなら、その時は割って入ればいい。」

「ルベル!?」

「レオだってシスタを倒してんだ。こいつがやるって言うなら、信じるしかねェだろ。」

「っ...。」

 

マゼンタちゃんと同じく、あの二人も静観することにしたみたいだ。

後はライバルであるサルファちゃんだけど...。

 

「ベーゼ。負けたら、承知せぇへんで?」

「...うん。勝つよ。」

「...よし。なら、ぶっ潰してこい!」

「はい!」

 

バン!と背中を押されて、レオちゃんと1対1で向かい合う。

レオちゃんと、キウィちゃん。それぞれの表情と思い出が浮かび、やがてそのすべてが1つに重なる。

一緒に戦ってくれたこと。

いつも仲良くしてくれること。

本当は傷つけたくなんかない。

だけど!

 

「レオちゃんには、負けられないからっ!」

「上等だベーゼ!!アタシはテメェを振り切って...!アズールちゃんと添い遂げんだよぉっ!!」

 

瞬間、魔物と砲撃がぶつかり合う。

以前の戦いの焼き直し。

岩を魔物に変化させ、レオちゃんが放つ弾丸を物理的に防ぐ。

 

「またジリ貧がお好みかよ!考えなしじゃアタシには勝てねぇ!!」

「考えなしじゃ、ないよ...!」

「っ!?」

 

()()()レオちゃんを縛る魔物の触手。

 

「あれ、アタシのパクりか!?」

「オマージュと言って欲しいですね...!」

 

ルベルちゃんの能力を参考にした魔物。

オリジナルより劣化しているけど、隙を作るには十分!

私は持っていた恐竜のおもちゃを変化させ、巨大な怪獣に変化させる。

 

「またデカブツかよ...!?」

「放てっ!!」

 

動けないレオちゃんに向かって、怪獣の熱線を容赦なく放つ。

"これが私の全力全開作戦"。

確実に直撃したはず...!

 

「ところがぎっちょんってなぁ!!」

「!?」

 

熱線による煙から飛び出し、そのまま怪獣へ突っ込む黒い猫のようなシルエット。

 

「死ねゴ◯ラもどきっ!!」

 

次の瞬間。

幾重にも爆発が炸裂し、怪獣は崩れ落ちた。

『本気モード』となったレオちゃんが、再び私の前に降り立つ。

 

「今ので全力かぁ...?なら、アタシの勝ちだなぁ~。」

「...ふふっ、前々から気になってはいましたが、それがあなたの本気の姿ですか...。」

「だったらなんだよ?」

 

一見露出が高いだけのエロコスチューム。

でもそこには"爆煙"を使ってレオパルトの特徴を形作る工夫と、彼女の名前が戦車と動物のダブルミーニングであったという証左がある。

 

「いぃいですねぇぇ...!ヒロインとはそうでなくてはぁぁっ!!」

「な、なんだ...っ!?」

「あぁ...出てしもうたな...。」

「ベーゼの、本気モード...なのかなぁ?」

 

力が漲り、髪と角が伸びていく。

ダンジョンでの戦いでは何故かなれなかったけど、今は違う。

だって最高に気分がいいから!

 

「さあ続けましょう!もっと見せてください!あなたのヒロインとしての輝きをっ!!」

「意味わかんねーこと言うなっ!!そんなにお望みなら!直接その体に味わわせてやるよっ!!」

 

魔物は出さず、魔力と魔力をぶつけ合う。

正面からの真っ向勝負。

 

「メナスヴァルナー!!」

「うがっ!?」

 

何度かぶつかり合い、漆黒の魔力刃がついにレオちゃんの体を捉える。

 

「っ...ごふっ...」

「...?」

 

苦しそうに吐血するレオちゃんに違和感を感じる私。

確かに当たりはしたけど、そこまでのダメージになる程だったかな?

 

「あいつ...やっぱ無茶しとるんやな...。」

「無茶?サルファは何か知ってるの...?」

「...前に仕方なく一緒に戦った時。あのレオパルトの姿を見たシスタが言うてたんや。力を制御出来てない、"そのままじゃ死ぬ"。ってな。」

「え...?」

 

死ぬ?レオちゃんが?

キウィ、ちゃんが...?

 

「へ...。だから死なねーよ。アズールちゃん残して逝けるか...!」

「っ...!!」

 

反射的に追撃を放つ。

レオちゃんはそれを何とか避けて、爆発を使って私に接近してくる。

今、私...。"トドメ"を刺そうとした...?

 

「ち、違う...私は...!」

「戦ってる最中にヒトリゴトかよっ!!」

 

動きが鈍り、隙だらけの体を押し倒されて、完全にマウントを取られてしまう。

 

「終わりだベーゼ!アズールちゃんはなぁ!!アタシんだッ...!!」

「ま、まだぁ...!!」

 

『アズール』という言葉を聞く度、頭の中に火花が散る。

咄嗟に小屋の入り口から飛び散った、小さな"電灯"の破片を鞭で叩く。

 

「なっ!?んだこれぇ...!?」

 

人を中にすっぽり入れられる程の大きさになった魔物は、自らの破片を回収するのと同時にその体にレオちゃんを捕らえる。

 

「こんなもんすぐにぶっ壊してっ!!」

「させないっ!!」

 

魔物に合図を送り、内部に電流を流す。

レオちゃんが傷付くことも考えずに、全力で電気を浴びせた。

 

「ぁ!?アガアアァァァァッ...!?!?」

 

体を跳ねさせ悶え苦しむレオちゃん。

光が放たれる度に彼女の絶叫が辺りに響く。

 

「......ふふっ...。」

 

何て、綺麗なんだろう。

もっと、見せて欲しい。

もっと聞かせて欲しい。

もっと...。もっと!

 

「めちゃくちゃにしたい...!」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

『どうですか!?刺激的ですよね!?きもちいいですよね!?』

 

『わたしも!!とっても!!気持ちいい!!です!!』

 

『レオパルト...いえ...キウィちゃん...。』

 

『今のあなたは、世界一可愛いですよ。』

 

また、夢を見た。

 

「っ...。」

「ふふっ...ふふふっ...///」

 

体中が痛くて熱い。

息の詰まるガラスの中から、嗤う悪魔と目が合う。

マジアベーゼ。

その正義のヒロインらしくない、恍惚とした表情が、アタシを"魅力的だ"と。"愛おしくて堪らない"と伝えてくる。

 

アタシがここに来たのは、ヴェナちゃんに言われたからじゃない。

小夜ちゃんとのエッチを邪魔されたからでもない。

 

アタシ自身が、"怖かった"からだ。

 

マリーノのことは嫌いじゃなかった。

最初はクソヤバ女だと思ってたけど、アタシを庇ってくれたし。

優しくて、不思議と安心感があった。

だから、アズールちゃんを任せていいと思って、ロードとの戦いにも行かせた。

 

でも、マリーノは"ベーゼ"だった。

小夜ちゃんが言っていた、あの方ってヤツで。

アタシが()()()()()()()()()()ヤツ。

 

それを知った時から、アタシはあの夢を見るようになった。

妙にリアルな、たくさんの思い出たち。

いつもアタシを助けてくれて、アタシのお願いを聞いてくれて。

ホテルはいっつも断られてたみたいだけど...。

 

全部、現実じゃない。

だけど、たぶん。 

この夢は、『本当に起こるはずのこと』だったんだって。

理屈じゃなく、アタシには分かった。

 

日に日に強くなる、ベーゼへの想い。

アタシは、アタシ自身に責められているような気分だった。

アタシを間違った方向に進ませたって。

 

小夜ちゃんに、自分で『間違いじゃない。』って言ったのに。

そう言ってアタシは小夜ちゃん(愛する人)の『王子さま』になったのに。

だから焦った。

ベーゼさえいなくなれば、まともな自分でいられると言い訳して。

小夜ちゃんの気持ちも考えないで、ベーゼと戦った。

 

「アタシ...ダメ、だ...。」

 

頭の中で、"正しい"思い出が強くなる。

勝手に膨らむ、愛しい気持ち。

 

アタシの好きな人って...。

誰、だったっけ...?

 

「レオ...ッ!!」

「っ...?」

 

ボヤけた視界に映る、"紺碧"に輝く誰か。

息を切らして、必死にアタシを呼んでいる。

 

「負けないでっ...!

勝って私のところに帰ってきてっ...!

釘付けにするんでしょ!?

好きな女は傷付けさせないんでしょ!?

守ってくれるんでしょ!?

なら立ってよ...!私の王子さまっ...!!」

「!」

 

さよ、ちゃん...。

小夜ちゃん。

アズールちゃん。

アタシの大好きな、最愛の人。

アタシの選んだ『ヒロイン』。

 

正しいとか、望まれるかどうかとか。

そんなのはどうだって良かったんだ。

忘れてた。

アタシは、愛したかった。

誰かの特別になりたくて、誰かを特別にしたかった。

それは誰かに言われたからとか、ましてやそうあるべきだと思ったからでもない。

ただの、『ワガママ』だった。

ワガママじゃなきゃ、アタシ(阿良河キウィ)じゃない。

 

なら大事なのはただ1つ。

アタシがどうしたいかだ。

 

そんなの、考えるまでもない!

 

「アタシは...!アズールちゃんと...!!大好きなあの子とっ!!添い遂げるんだあぁぁぁぁッ!!!!!」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

魔力が爆発し、電灯の魔物が内部から破壊される。

中から現れたのは、瞬きをするように体を"点滅"させたレオパルト。

絶え間なく変化しては戻りを繰り返している。

 

「あいつ...この土壇場でまたあれを...!」

「真化、じゃない...?じゃあ、あれが!?」

「ふふっ...す、素晴らしい...!」

 

かつてない力を感じさせるレオちゃんを見て、興奮を抑えられなくなる。

あれが、『疑似真化』。

諦めなかったヒロインが辿り着く、限界を超えた力。

 

「私は!世紀の瞬間に立ち会えている...!!」

「アタシが、勝つ...!」

 

彼女の放つ黒い光線は凄まじい火力だった。

魔物を一瞬で蒸発させ、私の全力の一撃でも減衰させるのがやっと。

 

「なんて、美しい...!」

 

彼女を輝かせたのは、間違いなく『愛』だった。

アズールの激励を以て、レオちゃんはその才能を開花させた。

あまりにも美しい、ヒロインの輝き。

これは、敵わないなぁ...。

 

「限定フォームは、至宝...。」

「食らえベーゼ...!アタシの!!全力だぁぁッ!!!」

 

一際強い黒い光線が、私に向かって放たれる。

私の体は限界。もう避けることも出来ない。

 

『これで、いいんだ。』

 

始めから分かってた。

私が、キウィちゃんに勝てるわけない。

 

真っ直ぐで積極的で。

すごく可愛くて、愛情深い。

非の打ち所のないヒロインだ。

小夜ちゃんに相応しいのは、キウィちゃんだって。

そんなの、初めて会った時から分かってたんだ。

 

だから、もうこれでいい。

諦めよう。

私は小夜ちゃんとは結ばれない。

結ばれるべきなのは、キウィちゃんだ。

 

私はただ、魔法少女でいられればいい。

昔はそうだったじゃないか。

欲張る必要なんてない。

こんな素晴らしい、ヒロインの輝きを見られたんだ。

もう、十分満足してるから。

だから...。

 

『う そ を つ く な 。』

 

「な、に...?」

 

突然、ドス黒い"何か"が沸き上がってくる。

私と同じ形をしたその何かは、私を乱暴に押さえつけてこう言う。

 

『諦めるなどと、なんて愚かな。

彼女が相応しい?魔法少女でいられればいい?

()()()()()ことをベラベラと言って。

魔法少女のくせに、悪の組織に屈するつもりですか?』

「ち、がっ...わたしは、わたしとしてっ...!」

『柊うてなとして、阿良河キウィに負けると?

くだらない。あなたは本当に嘘吐きですねぇ。

まあ、仕方ありませんか。

今のあなたはすべてが"偽物"。

魔法少女への憧れですら、ただの()()なのですから。』

「っ!?そんなことないっ!!私は魔法少女を...!!」

『彼女たちを辱しめたいのでしょう?以前アズールが言ったことは見事に図星。あなたはただ、ヒロインを欲望の捌け口にしたいだけ。』

 

どんどん体が闇に沈んでいく。

この感覚は始めてじゃない。

ロードと戦った時の。

小夜ちゃんを殺された時と同じ感覚。

 

『水神小夜が欲しい。素直にそう言ったらどうです?

彼女を自分だけのモノにしたい。

犯したい、弄びたい、凌辱したい。

彼女に欲望をぶつけたくてしょうがないと。』

「ち、がう...っ...さよ、ちゃんは...わたしの...!」

『彼女を魔法少女にしたいのは、それが一番興奮する形だから。

叶えてあげましょうその願い。

何より私が、小夜の壊れた姿を見たい。

だって私は、紛れもないあなた自身なのですから...。』

 

頭に浮かぶ光景。

全身を傷つけられ、犯され、汚し尽くされて。

ただ愛液を垂れ流すだけのモノになった『マジアアズール』。

()()、小夜ちゃん。

壊れたその"最愛"の姿を見て、私は思う。

 

「きれ、い...///」

 

意識が完全に闇に沈む。

どこまでも堕ちていく。

今の私にはそれが。堪らなく気持ちよく感じられた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「...はぁ...?ンだよ...これ...。」

 

黒い塊。

まるで"蕾"のようなそれは、花を咲かせるように開き。

中から、真っ黒な何かを吐き出す。

 

「ベーゼ、なの...?」

 

全身に感じる怖気。

圧し潰されるような魔力の迸り。

その主は邪悪に口を歪ませ、ただ()()()を見つめる。

 

どこかで、誰かの声が聞こえた。

 

「咲いた。」

 

「斯くも醜き、欲望の華が。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

□◼️next episode□◼️

 

「ふざ、けんな...やめろ...やめろよ...たのむから...おね、がいだからっ...やめて...っ!...やめてくれぇぇぇ...っ!!!!」




ちょくちょく一人称やら過去投稿分も修正してます。
次回は8/25(日)0:00投稿予定です。
※前後する可能性がございます。
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