魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~ 作:月想
小野中先生が早く復帰しないと、純正オリジナル展開で完結させなくてはならないのが最近の悩みです。
こっちもロボ子で休載かな...。
『大変だぁ、トレスマジアが現れたぞぉ!』
『ヴェ、ヴェナ...っ!?///』
『急いでくれ2人とも!今日こそトレスマジアを倒すんだ!』
てっきり、爆発四散すると思ってた。
念願の初エッチを邪魔されて、怒り狂ってホテルに八つ当たりすると。
『ごめん、さよちゃん...っ。』
『キウィ...?』
でも違った。
キウィは怒った様子も見せずに部屋を飛び出していく。
彼女らしくない反応に、羞恥も忘れて困惑する。
そしてすぐに思考が行き着く。
ダンジョンで起こった何か。
レオとベーゼの間で、やはり"事件"があったのだ。
キウィが話したくないことだと分かっていたから、追及はしなかったけど...。
でもきっと彼女の中では、未だに終わってない問題で。
その"決着"に、今まさに向かったのだとしたら。
酷い胸騒ぎに吐き気すら覚えながら、仲間たちにテレパシーを飛ばす。
指示を与えて、私もすぐにキウィの元へ急いだ。
『負けないでっ...!
勝って私のところに帰ってきてっ...!
釘付けにするんでしょ!?
好きな女は傷付けさせないんでしょ!?
守ってくれるんでしょ!?
なら立ってよ...!
私の王子さまっ...!!』
現場に到着して私が最初に見たのは、囚われて完全に追い詰められたレオの姿だった。
戦っている相手は、マジアベーゼ。
どちらも私にとって大切な人。
でもこの時の私に、両方を気遣っている余裕はなかった。
レオが何故か、どこか遠くに行ってしまうような気がして。
気付けば感情のまま、必死でレオに向かって叫んでいた。
『食らえベーゼ...!アタシの!全力だぁぁッ!!!』
そこからのレオはすごかった。
真化までは至らなかったが、シスタを倒したという『疑似真化』を発動。
ベーゼを圧倒していた。
だが、光線がまさにベーゼを穿とうとした瞬間。
「...はぁ?ンだよ...これ...。」
光線をベーゼごと呑み込む"黒い泥"。
その
その花を開くと同時に、中から真っ黒な"何か"を吐き出した。
「ベーゼ、なの...?」
黒いドレスのような形に闇を纏い、暗いグレーの素肌が露出している。
髪は白く、結膜は黒く染まり。
長大な角や爪、翼が禍々しさを伴って月に照らされている。
その満月のように燦々と輝く黄金の瞳。
まさに、『悪魔』と言うべき凶悪な姿。
ベーゼに、とてもよく似た何か。
だが、違う。
あれは、『うてな』じゃない。
全身に感じる怖気。
圧し潰されるような魔力の迸り。
その主は邪悪に口を歪ませ、嗤っている。
「どないしたんやベーゼ...!ベーゼ、なんやろ...?」
「ジュル...アヒヒ...ヒャハハ...!!」
「...!?」
ゾクリと肌が粟立つ。
あれは、ヤバい。
真化したロード以上の力。
そして何より、あれは
狙いは、"私だけ"だ。
私を見て、舌舐りをした。
情けないことに、恐怖で反応がわずかに遅れる。
それが致命的だった。
「キヒッ...!」
「ダメっ!アズールちゃんっ...!!」
「なっ...!?」
黒い触手のようなモノが飛び出し、私に向かって凄まじい速度で突っ込んでくる。
直撃する一瞬の間で、私は誰かに突き飛ばされた。
「ま、ぜんた...?」
「よかった...に、げ...っ...」
私を庇って、『マゼンタ』が触手に貫かれた。
何本もの細いそれが、彼女の全身に突き刺さっている。
「ぅ...!?い、や...ぃやあぁぁ...!!なにかはいってぇ...!!あああぁぁぁぁっ...!?きもち、わる、い...!!きもちわるいやだやめてやだうぎぃ...!やめてはいらないでやだやだやだやだやだヤダあぁっ!?」
「なん、や...なんなんや...これ...。」
今まで一度も見たことのない、苦しみと絶望に満ち溢れたマゼンタの顔。
触手が脈動し、マゼンタを文字通り
ベーゼと同じように、闇を衣装として纏い。
その顔に太陽のような輝きは既になく、死人と見紛う冷たい瞳を、ただこちらに向けている。
並び立つ、黒く染まった
この光景を、私は知っている気がした。
「マゼンタ...?ベーゼ...?どうしたんや...?な、なぁ...なんか、言うてや...。
こんなん...悪い、冗談やろ...?」
「やめなさいサルファっ!今の二人は...!」
信じられない光景、信じたくない現実。
サルファはよろめきながら、かつて仲間だったモノたちに近づく。
黒いマゼンタは何も応えることはせず、代わりにサルファに向かって跳躍する。
「かはっ...!?」
「...」
変化した髪がまるで手のように自在に動き、激しくサルファを地面に叩きつけた。
無防備に直撃を受けてしまい、彼女は血を吐くと共に苦しみの声を上げる。
「マゼンタっ...。おね、がい、や...目ぇ...さましてっ...。」
「...」
抵抗せず、ただ信じてマゼンタに呼び掛けるサルファ。
その頬を伝う涙にも目を向けず、マゼンタは彼女の唇に"自らの唇を重ねた"。
「......ッ!?///」
「ちゅ...れろ...」
ガチッガチッと。
歯と歯がぶつかる音がする。
何の感情も見せずに、自らの"初めて"を味わうマゼンタを無理矢理引き剥がし、ぐちゃぐちゃの感情のままサルファは叫ぶ。
「ア...アンタ...なにして...!や、やめっ...!?」
「...」
やはり何も応えず、そのままサルファの衣装を破き捨てる。
動けない彼女の身体を蹂躙し始めるマゼンタ。
私は漸く動くようになった足に力を込め、サルファを救おうとするが。
「アヒヒャ...!」
「あ...!?」
間近まで、あの黒いベーゼが迫っていた。
「ロコ!ルベル!頼む...!アズールちゃんを...!!」
『ヴォワ・フォルテッ!!』
レオの呼び掛けに応え、ロコの音波攻撃がベーゼに直撃する。
しかし、ベーゼはダメージを負った様子もなく、ずっと私だけを見つめて、不気味に嗤い続けている。
「何なのよあいつ...!ルベル、お願いっ!!」
「任せろ...!!」
すかさずルベルが影縛りを行うが、動けないにも関わらず、やはりベーゼは嗤ったままだ。
「何がおかしいんだよ...!!」
「ルベルっ!?危ないっ!!」
「がぁっ...!?う、ぐ...っ...」
独りでに触手がルベルを捕らえ、影から引き摺り出す。
的確に首を締め上げられ、すぐに気絶してしまった。
「よくもロコのルベルを...!許さないわっ!!ヴォワ・ふぉ!?」
「ロコ!?」
怒りに燃えるロコの隙を突くように、背後からマゼンタの髪が動いて、彼女を掴む。
そのまま左右に振り回され、何度も地面に叩きつけられた。
「ぁっ...ぅ...っ...」
「く、そ...!」
動かなくなったロコを見て、レオは苦悶の表情のまま立ち上がろうとする。
既に先ほどのベーゼとの戦いで消耗し、変身を維持するだけで精一杯の状態だ。
「......フヒ...。」
「はな、せっ!?」
私以外には興味を示さなかったベーゼが、一瞬レオを見た。
先ほどより静かに、しかしより"邪悪"に笑みを深くして、触手でレオの体を捕らえ締め上げる。
「あ...がぁ...っ!?」
「やめてっ!レオを離してっ...!」
「イヒヒ...!」
今のレオはボロボロで、これ以上攻撃されたら死んでしまうかもしれない。
相手がベーゼである戸惑いを捨て、全力の魔力でベーゼを凍らせるが...。
「あぐっ!?」
「アズール、ちゃん...!」
難なく氷を突き破り、今度こそ私に肉薄するベーゼ。
私を触手で拘束し、無理矢理地に磔にする。
「ジュル...ペロリ...」
「ベー、ゼ...。ねぇ、ベーゼ...!
いつものあなたに、戻って...!
あなたはこんなこと、望むわけない...こんなの、あなたらしくない...っ。
私の好きなマジアベーゼは、こんな...っ。」
「離せっ...!お前っ!ベーゼ...!!
なにやってんだ...!!
アズールちゃん、泣いてんだろっ...!!
何でこんなことすんだよっ...!
こんなの、違うだろうが...!!」
「キヒヒ...!」
私の言葉も、レオの叫びも聞こえていない。
拘束したまま、レオを私の側まで移動させるベーゼ。
私とレオを交互に見て、また嗤う。
心から楽しそうに、私たちを嘲笑う。
「ヒャハハ...!」
闇で作った鞭。
いつもと違い"トゲ"が付いた長いそれを、大きく振りかぶるベーゼ。
バチィィンッッ!!!!!
私の体を、激しく鞭打つベーゼ。
服も肌も裂け、鮮血が辺りに飛び散る。
「あっがぁ...!?ぃギあぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
「なに、してんだっ...てめぇぇぇ...!!!」
痛い、痛い、痛い!いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいたいたいたい!!!!!
「アヒャヒャヒャヒャッ!!!」
私の意識はそこで、一度途切れた。
―――――――――――――――――――――――――――――
「ぁ、ぎ...ぃ...」
「やめ、ろ...もう...やめろ...っ」
「ヒヒヒ!ケヒヒャ!!」
バシン、バシン。
最早悲鳴すら上げられなくなった身体を、どこまでも愉しげに鞭で叩き続ける。
もう衣服は原型を留めておらず、叩く度にその柔肌から血が飛び散る。
身体には痛々しい傷跡が目立ち、叩かれる度にビクンビクンと跳ねる。
愛する者の血が自らに振りかかり、レオパルトはその瞳から光を失っていく。
最初はひたすら叫んでいた。
アズールの苦しむ声を聞き、怒り叫んで呼び掛けた。
やめろ、ゆるさない、ころす。
無駄と分かっていても、拘束を解くため体を無茶苦茶に動かさずにはいられなかった。
だが途中で気付いた。
声を張り上げる程に。
身を捩りもがく度に。
ベーゼは。この"悪魔"は。
レオは次第に言葉を失い、覇気を失い。
ただ涙を流して、その地獄を見ていることしか出来なくなった。
やがてアズールも限界が来て、もう動物のような鳴き声を上げるので精一杯。
意識も朦朧として、レオの声すら聞こえなくなっていた。
「ヒヒ...ジュル...」
ベーゼは二人の反応に飽きたのか、それとも頃合いだと思ったのか。
鞭を捨て、ボロボロのアズールに覆い被さる。
「なに、を...?...おまえ...まさか...!」
「キヒ...。」
"何か"に思い当たるレオ。
その反応に喜びながら、ベーゼはアズールの頬を優しく撫でる。
愛おしげに、その身体に触れ、弄び始める。
胸をまさぐり、秘部を刺激し。
自分の敏感な部分を、アズールの同じ部分に擦り合わせる。
「ふざ、けんな...やめろ...やめろよ...たのむから...おね、がいだからっ...やめて...っ!...やめてくれぇぇぇ...っ!!!!」
「ちゅぷっ...」
レオの絶叫をBGMに、ベーゼは
舌を入れ、隅々まで舐めて味わう。
アズールの舌に絡めて、絞るようにその唾液を吸い取る。
先ほどまでの狂った様子ではなく、まさに恋人同士のように頬を染め、何度も唇を重ねては熱い吐息を漏らす。
そうするのが、一番気持ちいいから。
一番、レオを苦しめられるから。
見せつけるように、甘く深いキスをした。
「っ...やめ、て...っ...アタシの、なのに...っ...こんな...ひどい、よ...っ」
「れろ...んちゅ...っ」
子どものように泣くことしか出来ないレオ。
いつしか見せつける相手すら忘れて、ベーゼはアズールとの情事に熱中していく。
「よくぞここまで大きくなったものだ。」
アズールは勿論、他の者すら呑み込む程に広がる闇。
ドス黒い魔力を増幅させるベーゼに、ヴェナリータは嬉々として手を伸ばす。
「多少狂いは出たが、問題ない。感謝しているよ。期待通りの出来だ。」
真っ黒な影から、同じく黒い"人の腕"のようなものが伸びていく。
その何者かの腕が、ベーゼに触れようとしたその刹那。
「くだらんな。」
ドズッ!!!
「......なんだ。これは。」
人の形から闇そのものへ変化しようとしていたベーゼを、"巨大な剣"が貫く。
予想外の自体に呆然とするヴェナリータ。
「これが奇跡の行き着く先か。最早笑う気すら起こらん。」
「誰だ。貴様は。」
苛立ちを隠そうともせず、ヴェナは自らの計画を邪魔した剣の持ち主を睨む。
崖上からこちらを見下ろす、"三つの影"。
体に巻かれた包帯にボロボロの白い衣装を着た、一見すると幽霊のような少女。
モノクルが特徴的な、中世風の衣装に身を包んだ上品な雰囲気の少女。
そして、"仮面"を着け体を黒い甲冑で覆った女性。
声やブレストアーマーの形状から、かろうじて女性であることが分かる。
「我々は、『イミタシオ』。魔法少女でありながら、自らの欲望の為その力を振るう者。
「イミタシオ...。ヴァーツの仕業か...?」
その間にベーゼから溢れた闇が消え去り、元の柊うてなの姿に戻っていた。
「あら、わたくし『イミタシオ』は"シオちゃんさま"のお名前だとばかり。」
「シオちゃんの方が、カワイイ...。」
「では、チーム名は『シオちゃんズ』でいかがでしょう?!」
「はぁ...。呼び名などどうでもいい。
今日は退くぞ。」
"イミタシオ"となし崩し的に名乗ることになった仮面の女性が降り立ち、自らの得物を回収する。
「...ヴェナリータ。貴様の好きにさせるつもりはない。見ているぞ、貴様等のことを。」
「...。」
最後にヴェナへ警告を残し、シオちゃんズはその姿をゲートへ消した。
「いみ、たし、ぉ...?」
「...驚いた。まだ意識が残っていたんだね、アズール。」
誰一人として意識を保っている者などいないと思っていたが、水神小夜は違った。
一番外傷があるにも関わらず、彼女はその強靭な精神力でここまでの経緯を記憶していたのだ。
「少し、
「あり、す...に...っ」
「......ああ。すぐにナハトベースに連れていくよ。」
小夜の言葉で気が変わったのか、露にした殺意を消し、基地へのゲートを開くヴェナ。
最後に名残惜しそうにうてなを見て、エノルミータ全員を、自らと共に転移させたのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――
『だって私は、紛れもないあなた自身なのですから...。』
「っ!?」
溺れてから息を吹き返したみたいに、呼吸を荒げて飛び起きる。
チカチカする意識を何とか繋ぎ止めて、自分の体の状態を確認する。
「ハァ...ハァ...。」
変身前の制服姿で、特に怪我をした様子もない。
呼吸を整えながら辺りを見回すと、既に日が暮れて夜になっていた。
それよりも気になるのが、あまりにも酷い"破壊"の痕。
凹んだ地面に、砕けた岩や木々。
小屋なんて、もう木片しか残っていない。
「わたし、は...いったい...。」
「よぉ...起きとったんやな。」
「薫子ちゃん...?」
石の上に腰掛けた薫子ちゃんが、どこか躊躇いがちに私に話し掛けてきた。
その瞳は赤らんで、表情も曇ったモノとなっている。
その尋常じゃない様子に困惑していると。
「すぅ...すぅ...Zz」
隣で寝息を立てている、同じく制服姿のはるかちゃんに今頃気付く。
どこも怪我はしていないようだけど...。
「何が、あったの...?」
「!...あんた、覚えてへんの...?」
「え...?」
薫子ちゃんが驚いているような、怒っているような表情を浮かべる。
覚えてない...?
いったい、何の話、で...。
『きもちわるいやだやめてやだうぎぃ...!やめてはいらないでやだやだやだやだやだヤダあぁっ!?』
はるかちゃんの顔を見て、何かがフラッシュバックする。
「な、に...いま、の...。」
「っ...うてな、ええから。
「...じゃあ、なんで...薫子ちゃんは、そんな顔するの...?」
今にも泣き出しそうな薫子ちゃん。
その拳は固く、血が滲みそうなほど強く握り締められていて。
「わたし、が...やったの...?」
「ちが、う...違うんや...!」
破壊された森林。
抉れた地面。
寝たままのはるかちゃん。
泣いていて、私を
記憶が、鮮明に蘇っていく。
『上等だベーゼ!!アタシはテメェを振り切って...!アズールちゃんと添い遂げんだよぉっ!!』
うる、さい。
『へ...。だから死なねーよ。アズールちゃん残して逝けるか...!』
黙れ。
『アタシは...!アズールちゃんと...!!大好きなあの子とっ!!添い遂げるんだあぁぁぁぁッ!!!!!』
お前には、渡さない。
『ふざ、けんな...やめろ...やめろよ...たのむから...おね、がいだからっ...やめて...っ!...やめてくれぇぇぇ...っ!!!!』
ザマアミロ。
"コレ"ハ、ワタシノモノダ...!
「ぁ...あぁっ...ああああぁぁぁっっ!!!」
「うてな...!?」
全部、思い出した。
はるかちゃんを汚した。
薫子ちゃんを傷つけた。
キウィちゃんの心を抉った。
小夜ちゃんを、犯した。
その全てを私は、笑いながら、楽しんでやっていた。
覚えている。
大切な人たちの悲鳴も、その時感じた悦びも。
全部この身体に刻まれている。
小夜ちゃんの味も、血の匂いも、全部...。
『気持ちよかったでしょう?』
「っ...!?......ばけ、もの...っ」
「なに、を...?」
悪の組織とか、魔法少女とか。
もうそういう問題じゃない。
「『化け物』、だよ...っ。わたし...魔法少女なんかじゃない...ホンモノの、怪物...っ!!」
「違うっ!!違うやろ...!?うてなは魔法少女で、うちらの仲間やろっ!?」
フラフラと立ち上がり、手に持っていたトランスアイテムを落とす。
ひび割れたそれは、光を失い黒く変色していた。
私にはもう、必要ない。
トランスアイテムをそのままに、その場を立ち去ろとする私。
薫子ちゃんが私の腕を掴んで引き止める。
「うてな...!!待っ」
「離して...。」
「離さへんっ!あんたは、うちの...!」
「次は...殺しちゃうかもしれないよ...?」
「っ...!?」
反射的に手を離す薫子ちゃん。
やっぱり、怖いんだね...。
笑っているのか、泣いているのか。
そんなぐちゃぐちゃの顔を最後に見せて、私は一人帰路に着く。
「私は...。」
"柊うてな"は、魔法少女になんて。
―――――――――――――――――――――――――――――
「これが今回起きたことだよ。」
「なによ、これ...。」
「...。」
ナハトベース、そこに展開されたドールハウスにて。
全員がアリスの治療を受ける中、ヴェナから事のあらましが語られた。
「キウィ、お前...」
「......なんだよ。」
「その...大丈夫、か...?」
「......。」
「悪い...そんなわけ、ねーよな...。」
ヴェナが自身の不利になる情報を隠したおかげで、ある程度ショッキングな場面は省かれている。
アリスには何かあった時の為待機してもらっていたのだが、あの場に居合わせなくて本当によかった。
もっとも、事の経緯を知る私やキウィには意味のない配慮だ。
特にキウィには、見るのも辛い"トラウマ"となっているはず...。
「分かってもらえたかな?マジアベーゼは危険な存在だと。」
「...あの姿について、知っていることはないの?」
「ないね。完全に予想外さ。正義の味方にあんな本性があるなんて。」
「...。」
息を吐くように嘘を言うヴェナ。
あの時、ベーゼに何かしようとしていたことは覚えている。
だが具体的なことまでは分からないし、糾弾するまでには至らない。
隣で私を看病してくれるアリスまで、ヴェナを疑い睨んでいるのが見える。
「マゼンタ、大丈夫かしら...?」
「何で真珠が心配すんだよ。」
「うっさいわね...あんなことがあったんだから、当然でしょ...。」
私を庇って、マゼンタはあんな姿になってしまった。
ベーゼがうてなに戻るのと同時に、マゼンタもはるかに戻っていたが...。
今となっては無事を祈るしかない。
「というか、最後に映ってたあの"三人組"は何なのよ?魔法少女なわけ?」
「彼女たちは、一応そう名乗っていたね。」
「イミタシオ...。」
いよいよ現れたか、『シオちゃんズ』。
記憶が薄れているとはいえ、
『イミタシオ』のことは忘れることが出来ない。
何せ、ある意味で次のボス枠だからだ。
その正体についてだが、私の知る子どもの姿ではなかったし、認識阻害で断定は出来ない。
だが、残りの二人。
側で控えていたモノクルが特徴的な女と、包帯ぐるぐる巻きな女。
それぞれ、『パンタノペスカ』と『ベルゼルガ』で間違いないだろう。
あの二人が揃っていて、イミタシオの正体だけが違うとは考え辛い。
やはり、生きていたんだ...。
姿が違うのは、原作とは異なる負け方をしたからか、それとも...。
「回復次第、トレスマジアにトドメを差しに行くのを推奨するよ。ただでさえ危険因子が増えたからね。遊んでいる余裕はないと、キミたちももう分かっただろう?」
「あなたね...!」
「ヴェナさん...っ!!」
ヴェナの物言いに抗議しようとした私を遮って、ネモが珍しく声を張り上げる。
「ちょっと黙っててくんないかな...?
コイツら、みんな傷ついてんだよ。
体も、心も。
大事なもん無茶苦茶にされて...。
頼むから、そっとしておいてやってくれよ...。
アタシの仲間をさ...。」
「ネモ、あんた...。」
「......分かった。すまなかったね。今は、ゆっくり傷を癒すといい。」
ネモの言葉に、ヴェナは何を感じたのだろう。
一言謝罪を添えて、彼はゲートでどこかに移動してしまう。
「...。」
「大丈夫よ、こりす...。もう、痛くないわ...。」
包帯で巻かれた手を、震えながら握るこりす。
心配を掛けてばかりでごめんね。
そう気持ちを込めて、もう一方の手で彼女の頭を撫でる。
「ハァ...。これじゃあ、せっかくのキレイな肌が台無しね。」
「真珠...?」
「今度オススメのスキンケア教えたげるから。ちゃんと回復しなさいよね。アイツの為にも。」
「...ありがとう。お願いね。」
真珠の指した方向に目を向ける。
決して私の方を見ずに、ただ反対側を向いて寝そべっているキウィ。
「キウィ...あのね...。」
「...!」
私が話し掛けると同時に、布団を頭から深く被る。
"今は話したくない"。
その意思表示だとすぐに理解した。
「......。」
枕元のスマホを操作し、"うてな"の連絡先を表示する。
連絡すべきか、しないべきか。
幾度か迷って、やがて何もせずスマホを元の位置に戻した。
『あっがぁ...!?ぃギあぁぁぁぁぁぁ!?!?!?』
思い出す度にズキンと痛むのは、傷ついた体か。
それとも心か。
あの力は一体何なのか。
あれが、本当にうてなの本性なのか...?
それよりも、私はそんなにあの子を追い詰めていたのだろうか。
細かい部分の記憶が薄れて、原作ではどうやって乗り越えたのか。
参考程度にしかならないそんな事柄ですら、思い出すことが出来ない。
もう、完全に原作から解離しているというのに...。
私のせいだって、そんなことはもう分かってる。
でも、どうやったらいいの?
どうしたらみんなを守れて、誰も傷つかないようにできるの?
不安で、怖くて、辛い...。
ねぇ、先生...。
先生は、どうすればいいと思う...?
―――――――――――――――――――――――――――――
「マゼンタスピアー!」
掛け声と共にマゼンタが魔物を貫いていく。
片手間に魔物を殴り飛ばしながら、視線はずっとマゼンタを追いかけている。
「サルファ?」
「ホンマに、大丈夫なんやな...?」
ベーゼの暴走から2日。
マゼンタは...はるかは、すっかり元気になった。
少しも不調な様子はなく、変身してもいつも通りの姿。
あの、"黒いマゼンタ"になることはなかった。
「大丈夫!心配性だなぁサルファは。」
「なら、ええけど...。」
「魔物だってバッタバッタと倒してるでしょ?元気だよ、アタシ!」
そう言ってガッツポーズをするマゼンタは、確かに平気そうで。
そんな彼女の顔を、うちはまともに見れなくなっていた。
『何も、覚えてへんの...?』
『うん...アズールちゃんを庇った後は何も...。』
マゼンタは、うちにしたことを覚えてなかった。
キスも、身体を舐められたことも。
はるかのことを思えば、忘れていてよかったのかもしれない。
あんなことをしたと彼女が知れば、きっと必要以上に気に病んでしまうだろう。
「サルファ?顔、赤いよ?」
「っ!?な、なんでもない...!///」
でも、うちは忘れてない。
もう、
うちにとってはるかは、大切な友だちだったのに。
あの日のことが、ずっと頭から離れなくて。
そんなことを考えている場合じゃないって、分かっているのに。
「...ねぇ、サルファ。この後、またうてなちゃんのお家行ってみない?」
「...ああ。そやね。」
出現した魔物を片付け終わると、マゼンタからこの後の予定について話があった。
うてなは、この二日間学校を休んでいる。
その理由が体調不良でないことは、勿論分かっていた。
昨日もうてなの家へ見舞いに向かったが、会うことすら出来なかった。
LIMEに連絡しても、既読すら付かない。
「うちがあの時、ちゃんと否定してやれとれば...。」
「サルファ...。」
うてなの慟哭に寄り添うことも、自分を"化け物"と罵るのを、怒ってやることも出来なかった。
散々偉そうな、姉御気取りのことばかり言っておいて。
うちはあいつを、
「...ね、大丈夫だよ。すぐに、元通りになれるから。」
「マゼンタ...。」
握ってくれた手は、とても温かくて。
改めて、はるかの愛情の深さを実感する。
この温もりを、二度と失いたくない。
「マゼンタ、あの...うちな...?」
「あら~!尊い場面に出会してしまいましたわ~!」
「!?」
突然響いた声に驚き、振り返る。
「あんたらは...!」
「おや?わたくしたちをご存知で?」
「他の者より外傷が少なかったからな。かろうじて意識を保っていたのだろう。」
「なるほど。では、改めて自己紹介と致しましょうか。」
黒い甲冑仮面と、モノクル女が勝手に会話を進める。
後ろの包帯女は、ただじっと甲冑仮面を見つめているだけだ。
暴走するベーゼを止めた、魔法少女...。
「わたくしは『パンタノペスカ』。」
「...『ベルゼルガ』。」
「名乗る名前などない。」
「リーダーの『イミタシオ』さまですわ。」
「あたしたち...『シオちゃんズ』。」
「しお、ちゃんず...?」
「カワイイチーム名だね...?」
「勝手に名乗るな。私は認めないからな、そんな気の抜けた名前は。」
『シオちゃんズ』を名乗るこいつらのことは、一応マゼンタには共有している。
敵か味方か分からない連中。
特にあの、"イミタシオ"とか言う仮面女。
他と雰囲気が違うし、一撃でベーゼを止めたあの大剣。
確実にただ者ではない。
「ベーゼさまは...いらっしゃらないようですね?」
「当てが外れたか。...帰るぞ。」
「ちょお待てや!何であんたらがベーゼを気にすんねん...!」
早々に立ち去ろうとする三人を引き止め、何故ベーゼに用があるのか問い詰める。
「あなたたちも魔法少女なんだよね?」
「まあ、一応はそうですわね。」
「じゃあ、仲間だね!この前は助けてくれてありがとう!」
近付いて手を差し出すマゼンタ。
けれど三人は、誰一人として握手に応じようとしない。
「勘違いをするな。我等は仲間でもなければ、貴様等を救ったわけでもない。」
「なら、何が目的や!」
「..."力"だ。何者も阻めぬ力。」
「力...?」
仮面女が一歩前に進み出て、その目的を語り出す。
「それとベーゼが、何の関係があるんや?」
「マジアベーゼ。あの禍々しき力には、利用価値がある。
「なっ...!?」
利用価値?有効活用?
あのベーゼの力を、今あいつ自身を苦しめている力を、狙っている?
...いや、それよりも。
「人の仲間をモノ扱いしくさって...ケンカ売ってはるん...?」
「何が悪い。"怪物"は首輪を付けて飼い慣らすか、さもなければ処分するのが常識だろう?」
「おまえッ...!!」
武装を展開し、全速力でイミタシオに接近する。
我慢ならん!ベーゼを!
魔法少女に憧れた、優しいあいつを...!
怪物と呼んだな...!!
「シオちゃんに、なにするの?」
「...!」
振り抜いた拳を"赤黒い鎌"に防がれる。
イミタシオを狙ったはずなのに、いつの間にか目の前にベルゼルガが立ち塞がっていた。
「ねぇ。あたしのシオちゃんになにしてるの?」
「こい、つ...!」
全力にも関わらず、ベルゼルガの鎌はびくともしない。
問い掛けてくるその様子は不気味で、まるで怪談に登場する幽霊のようだ。
「シオちゃん。こいつ、
「...手短に済ませろ。」
「は~い...。」
「がふっ...!?」
鎌を反転させ、柄で的確に鳩尾を突かれる。
『はや、い...!?』
そう驚愕する間もなく、続け様に刃の腹を叩きつけられて、勢いのまま地面に激突する。
「さ、サルファ...!?」
「あ、ぐ...っ!」
かろうじて立ち上がるも、ダメージは大きい。
霞む視界に構わず、頭上にいたはずのベルゼルガを探す。
「こっち...。」
「ぁっ!?」
背中から馬乗りになられ、無様に地面に押さえ付けられる。
「やめて...!同じ魔法少女同士で戦うなんておかしいよ...!」
「貴様等と一緒にするな。」
「残念ながら、同じとはとても。わたくしたちは全員"真化"に至り、
『真化』。
前にベーゼが話していた、うちらの到達すべき強化形態。
うちが疑似的に発動出来ただけのあの力を、こいつらは使いこなしとる...!?
「弱すぎ...。じゃあ、死んでね?」
「ぐぅ...!?」
「やめて...やめてよぉ...!!」
首を狙って鎌を振りかぶるベルゼルガ。
不甲斐なさを感じる間もなく、うちの首はそのまま撥ね飛ばされ...。
「待て、ベルゼルガ。」
「シオちゃん?」
なかった。
イミタシオの大剣が、鎌と首の間に挟み込まれる。
「そいつを殺せば、穏便にベーゼを勧誘する芽がなくなる。始末するのに苦労はかからぬと分かったのだ、今やる必要もないだろう。」
「シオちゃんがいいなら、あたしはそれでいいよぉ。」
解放されたが、ダメージで動けないうち。
無様なうちの姿を、シオちゃんズは空中から見下ろして言う。
「その程度の力では、どのみちベーゼの暴走に巻き込まれて死ぬことになるだろう。」
「ある意味、慈善活動ということですわね。」
「ベーゼに伝えておけ。"私が手綱を握ってやる"とな。」
「バイバ~イ...。」
忌々しい捨て台詞を吐いて、シオちゃんズは飛び去っていく。
たったの二発。
それだけでまともに動かなくなった体。
立ち上がることすら出来ない自分の情けなさに、涙が滲む。
「サルファ...!大丈夫!?すぐに手当てして」
「くっそぉぉぉ...っ!!!」
何度も何度も、地面に拳を叩き付ける。
強くなれていると思ってた。
でも、とんだ勘違い。
ダンジョンの時も。
ベーゼの時も。
そして、今も。
「何もっ...出来へんかった...っ」
「薫子、ちゃん...。」
うちが守るって。
はるかも、うてなも。
大切だから守ると誓ったのに。
「情けなくてしゃあないねん...!うちは...!うちは弱いっ...!!」
仲間を守れない程に、うちは弱い。
その事実を痛感し、泣き叫ぶ。
血と涙を流しながら。
自然と変身が解けるその瞬間まで、怒りのまま拳に八つ当たりすることしか出来なかった。
「...あたしは...っ。」
それを辛そうに見つめる、はるかの気持ちも考えずに。
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◼️□next episode◼️□
「正義の味方。ナメとったら、アカンえ?」
地味に修正を繰り返す毎日。
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