魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

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厳密にはこれ、ベゼ×アズではないのでは?(核心)



第20話『魔女誘う悪夢の夜』

「さよちゃんちゅ~!ぶっちゅ~!」

「......。」

 

あのサルファ真化から二日後。

夏休み前、最後の日曜日を迎えた私たち。

特に何か約束するでもなく、自然と全員がナハトベースに集まっていた。

 

「うぇ~ん!さよちゃんがキスしてくれなぁ~い!おとといは熱くてのーこーにぶちゅーしてくれたのに~...。」

「アンタそれ夢なんじゃないの?」

「んなわけねぇだろ!夢なら今日も見たわ!妊娠までいったわ!!」

「え、こわ...。」

「頭大丈夫か...?」

「スピィZz」

 

キウィに背中を押してもらったのにも関わらず、結局うてなと話すことは出来なかった。

あの様子からいくと、やはり"あの時"のことは記憶に残ってしまったらしい。

はるかと薫子とも距離を取って、私だけでなくすべての人間を避けているようだ。

 

「どうすれば...。」

「キスはともかくとして、小夜はどうしたんだ?ずっと上の空見てーだけど。」

「一応総帥だし、サルファが"真化"したこと気にしてんじゃないの?ただでさえベーゼがヤバかったのに、今や戦力バランスガッタガタじゃない。」

「は?サルファはアタシがブッコロスのでどーでもいいんですけど?」

「だから、アンタと違ってアイツは真化して強くなったの。」

「しんかだぁ?あのひんにゅーやたらヘンテコな見た目だと思ったらポ○モンだったのかよ...。」

「お前も『おや?レオパルトのようすが...!』みたいな点滅してたもんな。」

「だれがB弾幕だ!!」

「上手いこと言ってんじゃないわよ。」

 

...人が真剣に悩んでる時に横で面白い話をしないで欲しい。

ちょっと意識が戻ってしまった。

 

戦力バランス。

言われてみれば、確かにエノルミータ側は一人も強化されていない。

一番最初に真化するのはレオだと思っていたのだが。

 

アリスにしてもロコルべにしても、原作では真化まで至っていなかった。

このまま「記録にないので最後までしません!」とならないといいが...。

 

「そうだ、ヴェナ。聞きたいことがあるのだけど。」

「なんだい?小夜。」

 

何も言わず近くで浮いていたヴェナリータに呼び掛ける。

空気を読むことを覚えたのか、ネモに怒られたことを気にしているのか。

最近は妙に口数が少ない。

 

「あのシオちゃんズについてよ。あいつら、あなたから見てどう?"真化済み"ってことでいいのかしら?」

「...そうだね。彼女たちから感じる力は、ボクの想定するキミたちの真化に近い。姿もオーソドックスな魔法少女ではないし、そう考えて間違いないだろう。」

「ハァ!?あのよくわかんないヤツらも真化してるわけ!?」

「どう考えても劣勢じゃねーか、アタシら...。」

 

まあ、予想通りだ。

そもそも原作と同じ姿のベルゼルガ、パンタノペスカは聞くまでもない。

 

「しかも、リーダーのイミタシオ。あいつの剣は"魔法を無効化する"わ。」

「は...?魔法が、効かないってこと...?」

「なんだよ、そのチートは...。」

「それは興味深い...。恐ろしい能力だね。」

 

イミタシオの能力は恐るべきモノだ。

真化どうこうの話ではない。

魔法が無効化されるということはつまり、生身で魔法少女と戦うことに等しい。

前回、奴に斬られた痛みは想像を絶していた。

守りの上から叩き斬られたのだ、マゼンタがいなければすぐに死んでいただろう。

 

「しおぽんず?」

「シオちゃんズよおバカ...。」

「何弱気になってんだおまえら~。んなやつら、クソつよレオパルトちゃんが蜂の巣にしてやんよ~。」

「キウィの言う通りだ。キミたちはまだ真化していない。言い換えれば、"秘められた可能性"があるということさ。」

「可能性ねぇ...。」

「まあ、ミラクルスーパーアイドルな真珠の可能性が無限大なのは、当然よね!」

 

ヴェナにしては珍しく気の効いた台詞だ。

確かに、まだ強化の芽があるうちは絶望することもないだろう。

対策はゆっくり考えればいい。

少なくとも、大剣に触れなければ魔法は無効化されないようだった。

全員でかかれば、あるいは...。

 

「そしてもう一つ。キミたちに嬉しいニュースを伝えておくよ。」

「嬉しいニュース?」

「ホテル割引きとか~?」

「え。金取られんのあのホテル...!?」

 

ヴェナに全員の視線が集まる中、彼は私の方を見てこう告げる。

 

「ルシファアズールの真化だが、()()()()()()()()()にある。」

「!」

「マジか...!」

「ホントなの!?」

「ああ。元から資質はずば抜けていたからね。後は彼女の気分次第だ。」

「ゲロやばえちえち新コスチュームが来るってこと!?///」

「私次第で、いつでも...。」

 

何となく、引き金に指を掛けているような感覚はあった。

ロード戦で"薄氷巫女(うすらいのみこ)"になったのがきっかけかもしれない。

あの後から、妙な違和感があった。

 

「キミが望めば、迷わなければ。真化したキミの力はイミタシオをも凌駕するだろう。」

「彼女を、越える...?」

「期待しているよ。エノルミータの支配者、ルシファアズールの力をね。」

「...。」

 

いつでも、と言うには条件があるように感じるが。

それでも有益な情報には違いない。

元よりあいつには、返すべき借がたくさんある。

イミタシオは、私が倒す。

ルシファアズールの真化、必ず物にしてみせよう。

 

「ありがとう、ヴェナ。お礼にいいことを教えてあげる。」

「いいこと?」

「廃棄されたトランスアイテム。()()()()()()()()()()()()()()()?」

「!...キミは、どこでそれを。」

 

事情を知り過ぎていると思われるのは危険だが、こちらも確証は欲しい。

イミタシオの正体について、ヴェナには原作通り探ってもらおう。

 

「な、ななな...!?///」

「あ?なんだよ真珠。変な声だs」

「なんなのよこれはあぁぁぁ!?!?///」

 

耳をつんざく真珠の絶叫。

変身しなくても使えたのか、ヴォワ・フォルテ。

 

「どうしたのよ急に...。」

「どうしたもこうしたもないわよっ!?見なさいよこれぇっ!?///」

 

真っ赤になった真珠に見せられたスマホ画面。

そこに映っていたのは...。

 

『んぅぅ...!ルベルぅぅっ!///』

『ロコぉっ...ロコぉぉ!///』

 

全力で行為に及ぶ、"ロコ×ルべ"の姿だった。

 

「......見ていいの?」

「っ!?見ないでよへんたいっ!?///」

「いや変態はおまえだろ。」

 

至極真っ当なキウィのツッコミ。

こうしている今も動画は再生されているわけだが。

 

「前々から"そういう趣味"があるのは薄々気付いていたけれど。流石にそれはちょっとどうかと思うわ。」

「そういう趣味って何よっ!?

これは違うのっ!!///」

「おまえら動画とか撮ってんの?

なに、オカズよう?」

「撮ってねェ!?んだよこれェ!?///」

 

最初はアブノーマルな趣味に目覚めたのかと思ったが、二人の反応的に個人的に撮影した動画ではないらしい。

 

「偽物にしては似すぎじゃない?」

「声も見た目もまんまじゃんか。」

「ホントに違うのっ!真珠たちじゃないのぉっ!!///」

「隠し撮りでもされたんじゃね~の?」

「されるかっ!?大体変身する意味ねェだろ!?///」

「なるほどな~。ヤる時は素顔派、と。」

「「メモるなぁっ!?!?///」」

 

ネット上で見つけた動画らしい。

投稿日は昨日。

上げたてホヤホヤである。

既にかなり拡散されてしまっている様子。

 

「お前エゴサとかしてんのな~。」

「なによ!アイドルならリサーチは基本中の基本でしょ!?」

「【ロコムジカ 歌上手い】っと。」

「...。」

「......。【ロコムジカ 音痴】...お、めっちゃ出る。人気モノじゃんよかったな~。」

「良くないわよ!?あんた鬼なのっ!?(泣)」

 

美声版ロコはまだ世間に公表されてないからね。

そもそもメジャーデビューすらしてないし。

 

「そういえば、その件についてDMでタレコミが来ていたよ。ボクのアカウントをエノルミータ公式として扱っているからね。よく問い合わせが飛んでくるのさ。」

「悪の組織の公式アカウントって何よ。すごい炎上してそう。」

「フォロワー真珠の1000倍くらいいんじゃん。」

「うっさいわね!?まだデビューしてないんだからしょうがないでしょっ!?」

 

無駄にフォロワーが多いヴェナの謎は置いておいて。

凄まじく似ているヒロイン同士のえっちな動画か...。

何か、原作でもそういうイベントがあったような、ないような。

...ダメだ、思い出せない。

 

「まだめちゃくちゃ似ているコスプレイヤーさんの可能性もあるし、一旦は保留ね。」

「えぇ!?まさかの放置!?」

「ボクのアカウントで一応は否定しておくよ。本人たちとは関係がない、とね。」

「それで鎮火すりゃあいいけどなぁ...。」

 

不満げなたまネモを宥め、とりあえず思考を元の話題に戻す。

今重要なのは、どうやってうてなと話すかだ。

このままにはしておけない。

というか、私がうてなと会えなくて死んでしまう。

何とか...何とかいい方法はないものか...。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「題して!『憧れを刺激しろ!うてなちゃん一本釣り大作戦』~っ!」

「えぇ...(汗)」

「なんやちょっと毒されて来とるんとちゃう...?」

 

バラエティー番組張りの明るさで作戦を読み上げたはるかに、薫子と並んでドン引きする。

 

休み明けの月曜日。

やはり、今日もうてなは来なかった。

 

いてもたってもいられなかったのは私だけでなく。

はるかと薫子から『うてなの家に行こう』と誘われたのが事の経緯である。

ちなみにキウィはお母さんと約束があるらしく、今回は不参加だ。

 

と言っても、既に先週から二人は見舞いに行っているらしいし、あまり訪問し過ぎると親御さんの心配を煽ることになる。

そこは考えがあると自信満々にはるかが言うので、半信半疑で付いてきてみたのだが...。

 

「二人とも、うてなちゃんが喜びそうなモノ持ってきた?」

「まあ、テキトーにな?」

「一応はね。」

「もっと気持ち込めて!!うてなちゃんを元気付けたいんでしょ!?真剣にやりなよっ!!」

「「ご、ごめんなさい...。」」

 

珍しく怒り気味のはるかに押され、薫子と揃って思わず謝罪してしまう。

勢いで謝ったが、"刺激しろ"だの"一本釣り"だの。

どう考えてもロクな案ではないだろう。

うてなを魚扱いしているのは、果たして真剣と言えるのだろうか...?

 

「んで?その作戦言うんは?」

「このヴァーちゃん特製『うてなキャプチャー』とカメラを使うよ!」

「とても人間用には見えない罠ね。」

 

パッと見、害獣捕獲用の罠のでかいバージョンだ。

ヴァーツ特製ってなんだ?

時々某四次元ポケットたぬき化するなぁ、あのマスコット共は。

というか、説得じゃなく物理的に捕獲する気だな?

 

「なんと透明になる機能付き!」

「おーすごいすごい。うてなの欲しがるもんで釣って、そん中に閉じ込める言うことけ?」

「薫子ちゃんすごい!何で分かったの!?」

「小夜、ツッコミ譲ったるわ。」

「嫌よ、はるかのボケなんてただでもいらないわ。」

「ボケてないしあたしにだけ辛辣過ぎない!?(泣)」

 

あまりにも予想通り過ぎる案に辟易とする。

よしんば上手くいったとして、そんなのでうてなが話を聞いてくれるのだろうか?

 

「そんな強引な手でいいの?余計に追い詰めてしまうかもしれないのよ?」

「分かってるけど...。でも、今のうてなちゃんには、無理矢理にでもあたしたちの気持ちを伝えるべきだと思う。友だちからの言葉が、今のうてなちゃんには絶対必要だよ。」

「......はぁ。物は試しや小夜。どうせこんままやとええ方法も浮かばんやろ?」

「...ええ、そうね。今回の件に直接関わっているのはあなたたちだもの。任せることにするわ。」

「二人とも...!」

 

勿論、本当は私も当事者なのだが。

ここは"仲間"である二人の顔を立てておこう。

確かに、はるかの言っていることは正しい。

これはうてな一人で立ち直れるような悩みではないのだから。

 

「というわけで!うてなちゃん家のバルコニーに設置してくるね!変身(トランスマジア)!」

 

正義のヒロインが人の家に隠しカメラと罠を設置か...。

これ、魔法少女的にアウトなのでは?

解釈違いでうてながブチギレないことを祈る。

 

「カンペキにセットしてきたよ!」

「餌を取り換える度にあなたが飛んで行くの?」

「大丈夫!あたしでゲームセットだから!」

「どこから来るのよその自信...。」

 

キメ顔のはるかに本日何度目かの呆れを返し、差し出されたスマホの画面を確認する。

 

「モニターは貰えなかったの?」

「もらったけど大きくて、持ってくるの大変だったんだよ。ちなみに罠は折り畳み式だよ!」

「魔法で何とかしなさいよ魔法少女。」

 

小さい画面に文句を言いつつ、映された風景を見る。

 

確かに、うてなの部屋だ。

ただカーテンが閉まっていて、中の様子はよく見えない。

プライバシーの観点から当たり前である。

 

「いや見えなかったら罠もくそもないやろ。」

「だいじょーぶ!LIMEしといたから!」

「『窓の外みて!』...ばかなの?」

「アホやろ?」

「ひどいっ!?あたしどっちでもないもん!」

 

ただでさえすぐに罠と分かる作戦に、更に拍車がかかった。

絶対失敗すると確信したタイミングで、はるかのLIMEに既読が付いた。

 

「スルーはされなかったみたいね。」

「よかったぁ...。」

「いや不安だったんかい。...ん?マジか。カーテン動いとんで?」

 

薫子の言葉に驚きながらモニター代わりに戻ったスマホを確認。

カーテンが不自然に動いているのが分かる。

まさか本当に...?

間もなくして、待ち望んだ部屋の主がその姿を見せた。

 

「うてなちゃんキター!」

「素直過ぎて心配になるわ。はるかのが移ったな。」

「隈はできてないし、よく眠れてるみたいね。よかった...。」

「感想がオカンや。」

 

モニターに映る困惑顔のうてな。

意外と体は元気そうなことにホッとしつつ、

この後の行動について注目する。

 

「で、何を餌にしたわけ?」

「『東京ドームシティであたしと握手券』!限定ストラップ付き!」

「何でドームまで行くねんしたれや握手くらい今。」

「知ってる。あれ、肩たたき券の系列でしょ。」

「ちゃんとイベントのヤツだよ!?自慢じゃないけど即完売品だよ!?」

 

『自慢よねっ!?ロコだってイベントするんだからぁっ!』

 

とか言ってる脳内自称スーパーアイドルは放っておいて。

いくらマジアマゼンタ大好きとはいえ、会いに行ける(というか来てる)魔法少女の握手券などいるのだろうか?

今だってその気になれば縦ロールで遊び放題なのに。

...と、思っていたのだが。

 

「めっちゃ興味津々やんけ!?」

「あんなに目をキラキラさせちゃってまあ...。」

「ふふん!ほらね!これがマジアマゼンタの本気だよ!」

 

どや顔のはるかに少しイラッとするが、確かにうてなは食い入るようにチケットを眺めている。

というか手を伸ばしている。

 

だが、やはり罠だと分かったのか。

すごく口惜しそうな顔をして、結局カーテンをピシャリと閉めてしまった。

 

「えぇ!?待ってようてなちゃあぁんっ!?」

「まあ、握手くらいじゃこないなもんやろなぁ。」

「お触り有ならいけたかもね。」

「触るってどこを!?///」

 

落ち込んだり赤くなったり忙しいはるか。

こういう時はやっぱり締まらない。

 

はるかのターンが終わったので、今度は薫子の番になる。

 

「薫子は何を持って来たの?」

「うちか?うちはなぁ...。」 

 

薫子が自信ありげに紙袋から取り出したのは。

 

「サルファの、フィギュア?」

「マジアサルファの『スク水ヒロインバージョン』。まだ世に出とらん超レア物や。」

 

スク水姿で恥ずかしがるサルファのフィギュアだ。

確かに箱も簡素で、関係者に配られる試作品感があってオタク心をくすぐられる。

中学生なので、スクール水着を授業で着る機会自体はあるのだが...。

 

「...可愛いけど恥ずかしくないの?」

「うっさいわっ!仕事なんやからしゃーないやろっ!///」

 

どうやらちゃんと恥ずかしかったらしい。

あの臨場感たっぷりの表情は現場で見せた姿なのだろう。

可愛いらしく怒り恥ずかしがりながら、はるかに罠を仕掛けるよう指示する薫子。

 

「薫子ちゃんは自分でやればいいんじゃ...。」

「さ、今度こそうてなを一本釣りや。」

「聞いてよぉ!?」

 

文句を言いながらもちゃんとパシられたはるかが帰ってきたところで、再度うてなにLIMEを送信する。

少しして、例のごとくカーテンが開かれた。

 

「何で素直に見るのよ...。」

「どないな反応か楽しみやな...。」

「楽しくなってきたね...!」

 

何やら趣旨が違くなってきている気がするが、気付かぬフリでスマホを注視する。

 

「あたしの時より露骨にキラキラしてる!?」

「あんなにヨダレ垂らしちゃって...。」

「これは脈ありやな!」

 

『何この見たことないフィギュア...はっ!?まさかこれ!まだ発売してないスペシャルな超レアフィギュアなのでは!?あはー!欲しいぃぃ!!』

とでも言ってそうな顔である。

窓に貼り付いて血走った目でフィギュアを見つめている。

 

「喉から手が出そうね。」

「あたしもフィギュアにすればよかったかなぁ...。」

「お、窓開けるで!」

 

そろりそろりと開いていく窓。

しかしある程度開いた後、その動きはピタリと止まってしまう。

 

「なんや、どないしたんや...?」

「...薫子それ、試作品なのよね?発売日はいつ?」

「今年の12月とかやろ。それが何や?」

「なるほど...。」

 

自分のスマホで検索し、予想通りのページを発見する。

 

「なになに?"本日予約開始!店舗特典は付け替え微笑みフェイスパーツ!"...?」

「マジメイトで予約したら特別な付け替えパーツが付くのよ。うてなならこっちを選ぶでしょうね。」

「んなタイミング悪いことあるか!?ええやんこれも欲しがったらええやん!?」

 

薫子の懇願に反し、無情にも再び閉まる窓。

運悪く正規品の予約開始日と重なってしまった。

試作品のレアリティは分かるが、正規品の仕上げられたクオリティも捨てがたい。

この明らかな罠を避けるのに丁度いい理由付けだ。

うてなの余念なきリサーチ力の勝利である。

 

「次で最後だね...。」

「小夜、あんたに掛かっとるで。」

「そんなこと言われても...。」

「小夜ちゃんは何持って来たの?」

 

躊躇いがちに私が取り出したのは、お気に入りのアニメのBlu-rayBOX。

中学生の身で手に入れるのは本当に大変だった。

ただ、先に出された二人のモノと比べて、どうしても特別感がない。

 

「今までで一番値段は高そうだけど...。」

「流石にパンチが弱いなぁ...。」

「あなたたちが規格外なのよ。何て言っても、あの子の憧れのヒロインなんだし...。」

 

こういう時、"私がマジアアズールだったなら"と思ってしまう。

うてなの最も望むモノを、私はあげることが出来ない。

まあ、それは私が自分で選んだ道で、今さら後悔も何もないのだが。

 

「...せや。小夜あんた確か、あのアホ団子から"見舞い"って何か預かっとったやろ。」

「そういえば!何を渡されたの?」

「えっ!?あ、いや...あれは、別に...///」

 

確かに、キウィから預かった品はある。

あるには、あるのだが...。

 

『うてなちゃんのおみまいっしょ~?アタシがとっておきのやつあげる~。』

 

そうニヤニヤが止まらないキウィから渡された、"とっておき"。

正直、やだ。出したくない。

自分で『これがとっておきよ!』なんて言いたくない。

絶対嫌だ。

万が一うてなに無反応を返されてみろ、恥ずかしいだけでなく心が死ぬ。

泣いちゃう。

 

「怪しい...。」

「今やはるかっ!」

「ひ、卑怯なっ!?HA☆NA☆SEっ!?」

 

薫子に後ろから羽交い締めにされ、無防備なカバンをはるかに引ったくられる。

これが正義のヒロインのやり方かぁ!?

もがく私を無視してガサゴソと中身を漁る。

 

「ん~...お?これ、"写真"?」

「あー!?や、やめて見ないでーっ!?///」

「どれどれ、ただの写真を何でそない意固地に...」

「...。」

 

写真を見た瞬間に固まる二人。

私の顔は羞恥で一気に赤く染まった。

 

「...はるか、セットよろしゅう///」

「う、うん...///」

「やめてって言ってるのにぃ!?鬼っ!悪魔っ!魔法少女っ!///」

 

流れるように罠を設置し終えるはるか。

薫子は勝ちを確信したのか、自分のスマホでネットサーフィンを始めてしまった。

 

「さあ小夜ちゃん!うてなちゃんにLIMEだよ!」

「嫌っ!やだ絶対ダメっ!」

「『窓を開けて?♥️』っと。」

「私のスマホいつの間に!?って今ハート付けてなかった!?///」

 

いつの間にか盗られていたスマホでメッセージを送られてしまう。

既読が付くが、二人より長い時間変化はない。

流石に騙されなくなったのかと安堵した、次の瞬間。

 

バッ!...ピューッ!

 

勢いよく開かれるカーテン。

うてなが写真を視認すると同時に、彼女の鼻血が窓を真っ赤に染め上げる。

 

「相変わらず思春期やな...。」

「あはは...。それだけ、小夜ちゃんが好きってことじゃないかな?」

「~~~っっっ!!!///」

 

あの海へ遊びに行った日。

キウィに言われたのだ。

 

『さよちゃん、胸の前で両肘くっつく~?』

 

と。

純粋な私は、それを罠だと知らなかった。

バッチリ実演し、しっかりと撮影されてしまった。

 

『あれ?胸がつかえて全然くっつかな...』

 

水神小夜、一生の不覚。

写真を撮られるだけでなく、近しい友人に拡散までされてしまった。

ただひたすらに恥ずかしい。

せめてもの救いは、傷心のうてなにも効果抜群だったことだけである。

......救い、なのかな...?

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「はぁ、疲れた...。結局失敗だったし。」

 

うてな釣りから帰宅した、その日の夜。

私は体と心の疲労をひしひしと感じながら、布団にその身を横たえる。

 

端的に言って、作戦は失敗した。

目論見通り(?)うてなは写真に食い付いた。

そこまではよかったが、なんと彼女はわざわざ変身し、鞭で写真を回収するという暴挙に出たのである。

罠は彼女本体の魔力に反応する仕様だったらしく、見事に餌だけを食われてしまったわけだ。

 

「うてなはあの写真、どうするつもりなんだろう...?」

 

せめて楽しんでくれれば幸いだけど。

泣きながら罠だけを回収した、あの惨めさと言ったら...。

 

「思い出したら余計に疲れてきた。今日はもう寝よう...。」

 

明日も学校だし。

心のモヤモヤはそのままに、私は溶けるように寝入ってしまうのだった。

 

それから、たぶん二時間程が過ぎた真夜中。

 

『さよちゃ~ん...。』

 

夢。

どこからか、キウィが私を呼ぶ声が聞こえる。

視界は真っ暗で、ただ彼女の声だけが響いている。

 

『さよちゃぁ~ん...。』

 

ユサユサ。

今度は声と共に、体が揺すられてる感触がする。

妙にリアルだ...。

 

『さ~よ~ちゃ~ん~...。』

 

うぐっ。

なんか、重い...。

お腹に何かが乗っかっている感覚がある。

流石に夢にしてはおかしい。

 

まさか、これが噂に聞く"金縛り"!?

...落ち着け。

まずは冷静に状況を確認するのだ。

枕元にはトランスアイテムがある。

幽霊には魔法で対抗してやる。

恐くない。ぜんっぜん恐くないんだから。

女を見せるのよ小夜!

自分を鼓舞し、ゆっくりと瞼を上げていく。

大丈夫、体は動く!

後はトランスアイテムに手を伸ばし

 

「ざよぢゃあぁぁ~~んっ!!」

「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

視界いっぱいに映る、涙と鼻水でぐちゃぐちゃのキウィの顔面。

恐怖のあまり抜ける魂。

そのまま私の意識は霧散してしまった。

 

転生したらアズールだった件、完。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「うぅっ!さよちゃんのうらぎりもの~っ!!」

「死ぬかと思った...。何よ?裏切り者って。というか、どうやって入って来たの。」

 

流石にこんなオチで終わってたまるか!と、気合いで体に魂を戻し。

お互いに少し落ち着いたところで、未だに泣き崩れているキウィに説明を求める。

 

「これなんなのぉ~!?」

「これ...?」

 

突きつけられたスマホ画面を確認する。

 

『んんっ!いいわっ!気持ちいい...!好きよ、ベーゼ...!///』

『アズール!愛していますっ!もっと、もっとあなたに触れたいっ...!///』

 

ルシファアズールとマジアベーゼが"乳繰り合っている"。

しかも、()()()

はぇー...すっごいリアル...。

 

「何よ、これ。」

「さよちゃんのうわきものぉ~!仲直りしてって言ったけどこういうことじゃなぁいぃ~!うぇぇーんっ!!」

 

更に泣き叫ぶキウィ。

勿論、身に覚えはない。

 

「ねぇ、キウィ?私はあなたとの約束を蔑ろにして、ベーゼとこんなことをしたりしないわ。」

「でも~...だって~...!」

「信じて。私はあなたを裏切ったりしない。」

「......分かった~...疑って、ごめんねぇ...?」

「大丈夫。私こそ、不安にさせてごめんなさい。」

 

疑いが解けたところで、詳しい事情をキウィから聞いていく。

 

夜中にネットサーフィンをしていたところ、偶然この生放送を見つけてしまった。

じっとしていられず、直接問い詰めようと私の家に突撃してきたということらしい。

生放送なんだし、来た時点で私が無実なのが分かりそうなものだが。

まあ、それだけ動揺していたということだろう。

 

「...なるほどね。」

「何か分かったの?さよちゃん。」

 

この流れで漸く思い出した。

こんなことが可能なのは一人しかいない。

 

「キウィ、準備なさい。」

「じゅんび?」

「こんなことをしてくれた変態にお仕置きしに行くわよ。居場所を特定出来るわよね?」

「...もち!」

 

覚悟しなさい()()()()()()

エノルミータ総出で報復してあげる!

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「い~いですわよ~!ハイもっとくんずほぐれつ!!表情見せてくださいまし~!!♥️」

『アズール~!///』

『いやんベーゼぇ~...///』

 

あぁ、たまらない。

魔法少女になって本当によかった。

なんて素晴らしいセイカツなのだろう。

 

自分の体を愛撫しながら、変態モノクル女こと『パンタノペスカ』はその息を荒くする。

とある廃墟に陣取り、カメラを構えて絡み合う()()()()を撮影する。

 

彼女の能力『パンタノドール』は、土を使ってゴーレムを生成し、それを手足のように操ることができる。

ゴーレムの形態は彼女次第で、実物の人間と寸分違わぬ姿で造り出すことが可能だ。

それを悪用し、魔法少女やエノルミータのヒロインたちを模倣。

自分の好きなシチュエーションで卑猥な行為をさせていたというのが、事の真相である。

 

「最初は一人で楽しんでおりましたが、やはり自カプの良さは万人に理解されるべきもの!毎晩続けて来たおかげで視聴者数もうなぎ登り!オ○禁なんてクソくらえですわ~!」

 

そう言って益々自分への愛撫を激しくする変態モノクル。

控えめに言って、過去最低の魔法少女である。

欲望の為に魔法を使うヒロインにあるまじき外道。

ちなみに、リーダーのイミタシオには完全に秘密。

バレたら間違いなくお仕置きなのだが、それはそれで楽しみだと思ってしまうモノクル痴女。

ダメだこいつ...早くなんとかしないと...。

 

「明日はついに禁断の二次元に手を出してしまいましょうか!?王道を往く『なの×フェイ』?それとも新時代のスタンダード『まど×ほむ』?捗りますわねぇー!!♥️」 

 

「オイ...何してんだテメ~...。」

「諸先輩方の名前を出さないでくれるかしら?こんなR18すれすれ作品、アルティメットでスターライトにブレイカーされてしまうわよ?」

「はっ...!?アズール様にレオパルト様っ!?」

 

青筋を立てて怒りの形相でパンタノペスカを睨むルシファアズールにレオパルト。

いつの間にか背後を取られていたようだ。

 

「魔力遮断しても無駄なんだからっ!」

「SNSの特定班ナメんなよテメェ!」

「...Zz」

「ネロアリス様にロコルべ様までっ!?」

「「だからカップリング呼びはやめろぉ!!///」」

 

二人だけかと思えば、前方には残りの幹部たちの姿が。

眠っているアリスはともかく、ロコルべは後ろ二人と同じようにブチギレ状態である。

 

「...ふっ。エノルミータ総出でいらっしゃるとは予想外ですわ...。絶体絶命、のようですわね。」

「...カッコつけるならまずその手を股間と胸から離しなさい。」

「嫌ですわっ!()()()()()()なのでっ!」

「何がよっ!?///」

「聞くなロコォ!?ただでさえ最近アウト寄りなのに完全に越えちまうぞラインを!」

 

あまりの変態加減に押され気味の露出カップルとドM総帥。

我が道を往く痴女モノクルは相変わらず愛撫を続けながら、真剣な表情で叫ぶ。

 

「わたくしは二次創作をオカズにマ○かいてるだけですのっ!それの何が悪いんですのっ!?」

「アンタ著作権って知ってる?」

「この場合は肖像権よ。いつまでもメタるのはよくないわ。」

「とりあえずしょーきゃく。」

「ギャァァー!?わたくしのベゼ×アズがぁぁ!?!?」

 

呆れ顔のレオパルトが、容赦なくベゼ×アズのゴーレムを焼き尽くす。

悲鳴を上げるパンタノペスカ。

流石に手は離れた。

 

「というか、何でアリスも連れて来たの?今はお眠の時間じゃない。」

「それがよ。前に一人だけ留守番にされたの、気にしてたみたいで。」

「"何かあったら連れてけ"って頼まれてたのよ。今日だって寝てたのに、眠い目擦ってロコたちのとこまで来たんだから。」

「そう...アリスが...。」

 

眠るネロアリスを優しく撫でるアズール。

愛おしげに見つめる表情は母親そのもの。

エノルミータは悪の組織だが、構成員の仲は非常に良いのだ。

 

「さっさと片付けて家まで送ってあげましょう。

レオ、その変態のケツに鉛弾を」

「待ちなさーーいっっ!!」

「!?」

 

聞き馴染みのある声が響く。

早々に始末を着けようとしたエノルミータの前に、二つの光が降り立った。

 

「トレスマジア参上っ!」

「一人足りないみたいだけど?」

「あれ...?それじゃあ今のあたしたちって、ドゥーエマジア?」

「語呂が悪い帰れ。」

「うっさいわクソ団子!またなんか企んどるんやろ!」

「今回は私たちが被害者なの。悪いのはアイツよ。」

 

早速仲が良いのか悪いのか分からない会話を繰り広げる正義と悪。

今日は戦う気がないのか、アズールはとりあえず誤解を解こうとする。

 

「信じられるかっ!こんな...こない卑猥なことすんのあんたらだけやろがっ!!///」

「卑猥?」

 

照れてるのか怒ってるのか分からないサルファ。

最近どこかで見たような光景に首をかしげつつ、これまた見覚えのある形でスマホの画面を見せつけられる一同。

 

『は~い。お乳の時間でちゅよ~。』

『コクコク。』

『はいちゅっちゅ~。』

『ちゅ~...。』

『おいちい?』

『ん...。まま、ちゅき!』

 

画面に映っていたのはマゼンタとネロアリスだった。

胸をはだけたマゼンタが、アリスに乳首を吸われる様子だけが淡々と流れていく。

つまるところ、『授乳プレイ』である。

 

「誰やうちの相方をこない辱しめてくれたボケはぁっ!!///」

「だからそいつだって...。」

「アリスの台詞が解釈違い。」

「マゼンタとアリスってあんなかんけ~だったんかよ~。」

「なにこの映像っ!?あたし知らないよ!?というかまだミルクは出ないよっ!?///」

「ゲシッ!」

「いったぁ!?んだよ起きてんのかよアリスてめー!」

 

授乳動画にそれぞれの感想を言い合うヒロインたち。

勿論これもペスカの仕業であり、悪の組織が正義の味方を説得する羽目になった。

最初は信じなかったサルファも、キレるアリスの様子で漸く納得したらしい。

 

トレスマジアを加え、総勢7名が諸悪の根源を取り囲む。

 

「どう落とし前つけてくれんねん...!」

「汚ねぇ花火一択だろ~がよぉ...。」

「お、お待ちになって皆様方...!?」

 

鬼の形相で近づくサルファとレオパルトに、内心チビりそうなペスカ。

彼女は真化を果たしてはいるが、こと戦闘については自信がなかった。

7人の中で真化できるのはサルファだけだが、この多勢に無勢をひっくり返すのは厳しい。

ゴーレムたちも容易く突破されてしまうだろう。

 

「7人でわたくしをいたぶるおつもりですのね!?それでもヒロインなんですのっ!?」

「「「「「「お前が言うな!」」」」」」

「コクコクコク!」

 

お前も魔法少女だろ!と今までの行いを棚上げした発言に、またしてもキレ散らかす一同。

その隙にペスカは脳ミソを大回転。

とっておきの打開策を思いついた。

 

「わたくしのカップリングに文句があるのならば、暴力でなく()()()()()()()()()()()()()()()()ではなくてっ!?」

「ハァ?」

「どういう意味かしら?」

 

食いついた!

してやったりとほくそ笑むペスカ。

そのまま饒舌に語り出す。

 

「わたくしを唸らすようなカップリングをプレゼンしてくださいまし。

もし自カプより興奮を抑えられないカプを提示出来たならば、わたくし何をされても構いませんわ。

全裸で土下座も余裕ですの。」

「アホくさいわそんなん!さっさとぶちのめしてはよ寝た」

「ふーん?面白そうじゃない。」

「「「「ハァ!?」」」」

 

パンタノペスカの論点すり替え提案に一人興味を示すルシファアズール。

早めに始末してしまいたい気持ちは彼女にもあった。

だがしかし、その提案を受けた場合の展開が面白そうで仕方ない。

自爆、赤面、芽生え。

何だかすごく可愛いモノが見れそうだと思ってしまった。

最近シリアスで忘れがちだが、彼女はただ、可愛い推したちを愛でたいだけの愉快犯なのである。

 

「いいわ、乗ってあげる。

楽勝でしょ?レオ。」

「あったり前だよアズールちゃん。

レオ×アズこそが至高だって、はっきりわからせてやんよ~。」

「うちらは知らんからなっ!この際まとめてあんたらもぶちのめしてっ!」

「なに、逃げんの?」

「......あ?」

「サルファ...?」

 

自信満々に賛同するレオパルト。

流れに逆らうサルファだったが、分かりやすい挑発を受ける。

まさか...?と不安になったマゼンタは、すがるような思いで相方を見つめる。

 

「自信ないから逃げんだろ?いいよ別に。

マゼンタの最有力カプはマゼ×ネロで決まりだな。」

「......ろうやないか...。」

「なんだって~?」

「やってやろうやないかぁっ!?そんなのうちは認めへんでっ!!///」

「サルファちゃんっ!?」

 

あまりにも簡単に挑発に乗り、カップリング論争に参加することにした魔法少女たち。

秘められた恋心故の参加表明だったのだが、当のマゼンタにはレオへの対抗心で引くに引けなくなったようにしか見えていない。

みんなのヒロイン、マジアサルファ。

苦労人かつ不憫な子である。

 

「ふふっ、決まりですわね。お題はこちらから出させて頂きますわっ!」

 

得意気にゴーレムを作成し始めるペスカ。

正直、他カプとか地雷なので聞くのも話題に出すのも嫌なのだが。

自カプの良さを当の本人たちに見せて反応を貰えるなんて、またとない機会。

結構楽しくなってきていた。

 

「第一のカップリングはこちら!"マゼ×ネロ"ですの!」

 

『ちゅ~。』

『よしよし。おいちいでちゅか~?』

 

「再現せんでええっ!!///」

「いってぇですわぁっ!?」

 

目の前で再現される授乳プレイ。

赤面する本人たちの代わりに、サルファは元凶に鉄拳制裁を与える。

 

「だ、だってぇ...素晴らしさを伝えるには、ちゃんと見て頂かなくてはなりませんもの!」

「これのどこが素晴らしいんやっ!」

「は!?見て分かんねーとかセンスどうなってやがりますの!?」

「立場分かっとるんかお前っ!?」

「...仕方ありませんわね。特別に口頭で説明して差し上げましょう。」

 

自カプをバカにされ、状況も弁えずキレ気味で答えるパンタノペスカ。

冷静なフリで怒りながら説明を始める。

 

「いいですか?愛情深きマゼンタ様と愛に飢えるアリス様。敵味方の境界を越え、お互いを求め合うその尊さが何故分からないのですか!」

「ブンブン!」

「アタシママじゃないもんっ!」

「ならば示してくださいまし!これ以上のカップリングを!」

「...。」

 

ペスカのカプを否定する二人。

アリスは一歩前に出て、身振り手振りを使って理不尽な辱しめに抗議した。

 

「なになに?"そもそも子ども扱いするな。大人のレディとして扱え"?...そんなことしたらアカバンされちまいますの。児○とか勘弁ですわ。」

「フリフリ!」

「"ならせめてアズールお姉ちゃんにしろ"?そんなのただの幸せな親子風景じゃありませんの。えろくない、論外ですわ。」

「ムッカァ!」

 

アリスの怒りもなんのその。

相手にもせずあしらってしまう。

そんな中、アズールだけは『え、私ならいいの...?』と戸惑っていた。

早速何かが芽生えたらしい。

 

「マゼンタ様は何かございませんの?」

「え!?あたし!?」

「なければマゼ×ネロが成立しますが。」

「そんなぁ!?」

 

マゼンタは必死に頭を悩ますが、彼女はまだそういったことに疎く、はっきりとした答えが出せない。

散々悩んだ挙げ句、"ある一人"に視線を向かわせる。

 

「あ、あの...アズール、ちゃん...///」

「え?何よ?」

「アズールちゃんって、どうしてあたしたちにえっちな悪戯...するの...?///」

「どうしたのよ急に。」

「その...あたしのこと、どう思ってるのかなって...///」

「どうって...魅力的だと思うけど?」

「!へ、へぇー...そ、そーなんだぁ...///」

「じゃなきゃ苛めたりしないわ。」

 

...え、何この空気。

まるで幼なじみ系ヒロインが、鈍感主人公の好意を探ってるみたいな。

何で悪の女幹部と魔法少女がこんな雰囲気を出しているのか。

この作品に似つかわしくない、ピュアな何かを感じる。

突然の健全な空気感に困惑するR指定ヒロインたち。

 

「...なんか、悪くねーですわね...。」

「「!?」」

「...ま、マゼンタが思い付かないならしゃーないなぁ!?」

「お、おう代わりに言ってやれよひんにゅーばか!?」

「うちに指図すなっ!!」

「背中押してやったんだろーがっ!!」

 

危機感を覚えて割り込むサルファとレオ。

予想外の所に伏兵がいたものだと、お互いに肝を冷やしている。

何とか"マゼ×アズ"の芽を有耶無耶にするが、いつも通り口喧嘩を始めてしまう。

 

「丁度いいですわね。続いてのカプに移りますわ。」

「あぁ?」

「ちょうどいいって、何言うて...」

 

ゴーレムを造り変え、二つ目のカップリングを生成するペスカ。

 

『なんや、生意気言うてもう限界なん...?///』

『うっせぇ...お前もこんなに濡らして、ピクピクしてるくせに...///』

 

「二番目のカプは、"サル×レオ"ですわ!」

「「おげえぇぇぇ~~っ...!!」」

 

同時に拒絶反応を見せる犬猿コンビ。

仲間たちも現実ではあり得ない光景に、内心ドン引きである。

 

「犬猿の仲!ライバル同士!だからこそ燃え上がる愛がありますのよっ!あとお二人とも我が強いのに小さめで可愛いのでっ!」

「燃え上がるかっ!!」

「誰がチワワやっ!いてこましたろかこの変態っ!!」

 

今にも襲いかかりそうなチワワ二匹を意に介さず、パンタノペスカはその魅力を語っていく。

 

『サルファ...///』

『レオ...///』

 

「いつまでこの気色悪いの出しとんねんっ!?」

「ぶっ潰すっ!!」

「私は嫌いじゃないわね。」

「「え?」」

 

武装を展開した二人を横目に、アズールは一人うんうんと頷く。

彼女もかつてはただの一般まほあこオタク。

あらゆるカップリングを妄想し、サル×レオも勿論熟考した実績(?)があった。

 

「何て言うのかしら。

男同士の友情にも似た、爽やかで健全に熱い関係。

カップリングと言うよりコンビとして推せるような。

それでいて二人とも一途で可愛らしいところがあって、この二人の絡みでないと見れない一面がある。

そんな味のあるカップリングよね。」

「長文で何言うてはるん、あんた...。」

「アズールちゃん?どうしてか分からんけど...今のアズールちゃん、ちょっとヤダ...。」

「お分かり頂けますのっ!?この良さが、魅力がっ!」

「悪くない着眼点よ。気に入ったわ。」

 

ガシッ!と握手を交わす変態と変態。

清々しい表情をしている横で、みるみる好感度ゲージが下がっていく。

 

「認められると言うのは、嬉しいものですわね...。」

「あなたの愛は分かったわ。早く次を出しなさい。」

「ええ、参りますわっ!!」

 

げんなりしている周りを無視して話を進める変態たち。

ゴーレムがまた新たに造り変えられていく。

 

「...なぁ、ロコ。」

「何よ。」

「アタシら、ここまで一言も台詞がないんだけどさ。」

「...それが何よ。」

「たぶんアタシらの出番、この話にはもうないんじゃないかって。」

「...何でよ。」

「...共通認識なんじゃねーの?」

「何がよ...。」

「...ロコルべしか勝たん、みたいな...///」

「......ばーか...///」

 

「ジト...。」

 

この状況で何で盛り上がってんだよ。

お前らやっぱりあの動画保存してんだろ。

という思いを込めてバカップルを睨む。

アリスのご機嫌ゲージは最低になった。

 

「わたくしの一押しですのっ!」

 

『捕まえたわよベーゼ...///』

『アズール...私は...///』

 

振り出しに戻る。

一押しと銘打たれたカップリングは、最初に見せられた"ベゼ×アズ"であった。

 

「先程は焼かれてしまいましたが、これこそ最上のカップリング!

敵同士であるにも関わらず確かな絆を感じるやり取り!

実は攻めと受けが見た目と真逆なあべこべ感!

お互いの凸凹がぴたりとハマり、最高のヒロインとなる完璧なコンビ!これもう公式なのではありませんことっ!?」

 

ペスカの熱弁に閉口する一同。

これについては前回起きたことがあるので、いまいち否定がし辛いのだ。

一人だけ事情を知らないマゼンタですら、ベーゼがアズールを仲間にしたがっていたことを思い出し、半ば納得してしまっていた。

 

「さあ、アズール様!いかがです!?」

「...残念だわ。私はこのカップリングを認めるわけにはいかないの。」

「何故です...?あなたもベーゼ様も、互いに特別な感情があるのでしょう?」

「だからこそよ。これはあの子の"願い"を裏切る行為だわ。」

「願い、ですの...?」

「もう二度とこんなカップリングを妄想しないよう、もっといいネタを提供してあげる。来なさい、レオ。」

「...うん!」

 

アズールはレオパルトを呼び、自然にその体を抱き寄せる。

ただならぬ雰囲気を感じ取り、ルベルは持っていたアイマスクをアリスに装着させた。

 

「ねぇ、レオ。」

「なぁに、アズールちゃん。」

「"約束"、ここで果たしてしまいましょうか。」

「えっ?///」

 

レオを抱き寄せるアズール。

彼女の帽子を外し、顎に手を添え自らに向けさせた。

 

「ちょっ!?あんたら人前で何を...!///」

「いやぁぁ!?お止めになってぇ!?他カプ絡みの押し売りなんて見たくありませんわぁ!?」

「みんなの前で、するの...?///」

「恥ずかしいの?いつもこんな格好をしているくせに。」

 

周りが制止するのにも構わず、アズールはレオの上着をめくりパンツを露出させる。

 

「お尻が丸見えじゃない。こうやって引っ張ったら、大事なとこまでハミ出ちゃうわね。」

「あっ...アズールちゃ...///」

 

グイグイと紐を引っ張り、レオの羞恥を煽る。

 

「アズールちゃんだって...れろ...///」

「んっ///」

「和服なのにこんなとこに穴空いてて...腕上げたら横から腋とおっぱい、丸見えじゃんか...///」

 

アズールの腕を掴み、その腋を嘗める。

互いに羞恥で顔を赤らめながら、それでも互いを味わうことを続ける二人。

 

「ほら...横から直接触れちゃうよ...?柔らかくて、硬いとこ...///」

「んぅっ...上手よ、レオ...///」

 

エスカレートしていく行為。

アズールを押し倒し、レオは上着すら脱ぎ去ってしまう。

 

「アズールちゃん...すき...大好き...他の誰よりも、アタシがアズールちゃんを愛してるから...だから...///」

「私も、愛しているわレオ...だから、もっとして。もっと感じさせて...あなたの愛を///」

「な、何なんですの...これはっ...!」

 

二人だけの世界に周りが赤面しどうしたらいいか分からなくなる中、パンタノペスカは戦慄していた。

推しカプでもない、ただのエロの押し売り。

それなのに、自然とその手は自分の敏感な部分に伸びてしまっていた。

二人から伝わる愛おしさの波。

互いを互いに思い遣り、求めているからこその反応。

造りモノではない、心と体が真に快感を感じているからこその表情。

認められない。

認めたくない。

それなのに、どうしようもなく興奮する... !

 

「これが、"本物"っ...!///」

 

ヒュッ...ズシャアアァッッ!!

 

ペスカが負けを認めそうになったその直前。

彼女とレオアズを掠めるように、"黒い魔力の塊"が柱に激突した。

 

「っ!?」

「いい加減にしてくれませんか...。」

 

コツコツと靴音を響かせ、近付いてくる人影。

鞭を引き摺りながら、ゆっくりと月明かりにその身が照らされていく。

 

「べ、ベーゼ様...!?」

「パンタノペスカ...あなただけは許しませんよ...。」

 

黒い光を纏いながら、マジアベーゼは()()()()()()その言葉を発する。

 

真化(ラ・ヴェリタ)。』

 

更に光が強まり、ベーゼの姿が変化していく。

長く伸びた髪、それに合わせて角も翼も肥大化した。

臀部には悪魔の尻尾が生え、その体を露出の多い紫色のボンテージ風の衣装で覆っている。

それを隠すように羽織ったマントがたなびき、頭には特徴的な三角帽子を被っていた。

鞭が変化した箒に股がるシルエットは、まさにおとぎ話の魔女そのもの。

 

「あれが、ベーゼの真化した姿...?」

「...私は"魔女"。魔法少女を騙る化け物にふさわしい姿でしょう?名前は、そうですね...。」

 

『"悪夢の魔女(ナイトメアウィッチ)"』

 

魔女を名乗る少女は、獲物を前にして妖艶な舌舐りをして見せる。

 

「ふふっ、楽しみですねぇ...。あなたの"悪夢"は、一体どんな味がするのでしょうか...。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□next episode◼️□

 

「私の大好きな主人公(ヒロイン)、柊うてな。生まれる前から、あなたを愛してる。魔法少女に憧れる、あなたの夢を叶える為になら...。」

 

たとえ悪鬼羅刹に堕ちようとも。

全ては愛するあなたの為。

その覚悟を体現した、真の姿が今ここに。

深き愛故に、少女は"冷たき鬼"へと成り果てる。

 

次回。

第21話『深愛刃鬼』




やがて魔女になる君たちのことは、「魔法少女」と呼ぶべきだよね。(◕‿‿◕)

次回は9/14(土)0:00更新予定です。
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