魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~ 作:月想
今回は気合い入れて書いたつもりです。
文章は残念ですが、伝われ気持ち。
タイトルにもある有名楽曲をイメージしてます。盛り上がるとこで聴くと楽しいかも...?
「悪夢の、魔女っ...?」
変貌したマジアベーゼの姿に驚愕する一同。
とりわけルシファアズールの動揺は激しかった。
自身の知る、原作のベーゼとは違う真化になるとは思っていた。
しかし、彼女の想定していたのはうてなが望むであろう、"魔法少女らしい"真化形態である。
それが今や魔女を名乗り、妖艶に微笑んでいるのだ。
「何よ、あの悪そうなの...まさか、またあいつ暴走してるんじゃないでしょうね!?」
「いいや...。あれは正真正銘、"真化"の力や。うちには分かる。」
「でも、ベーゼならもっと...。」
ロコの疑問に対するサルファ、マゼンタの言葉を聞き、アズールは心の中で首肯する。
真化なのは間違いないが、あれではまるで"暗黒真化"だ。
原作でそうなるのはマゼンタのはずだが...。
「悪夢...?な、何のお話ですの...?」
「パンタノペスカ。あなたはしてはいけないことをしました。」
「へ?わたくしが?」
「トレスマジアをエノルミータと絡ませるなんて...しかも内容は18禁、配信までして...。」
困惑するパンタノペスカを無視し、ベーゼはどんどんその語調を強めていく。
「いいですか?善と悪はもっとバチバチにやり合っていなくてはならないんです。それをあなたは経緯も情緒もなくいきなりイチャイチャさせおってからにまったくもう本当にもうっ!分かってないぜんっぜん!!分かってないっ!!」
「な!?わ、わたくしちゃんと理解し」
「ただオカズにしたいだけでしょう!?はっきり言って、あなたのエロにはストーリーがないっ!!」
「がーーん!?」
ベーゼの発言を聞くうちに全員が気付く。
『あっ、これ平常運転だ。』と。
凄まじい形相で魔法少女の在り方を語るその姿は、いつものブチギレモードそのものであった。
「マゼ×ネロとか触れちゃいけない神聖なモノ同士をくそで塗り固めるような暴挙だしサル×レオは仲が悪いのがいいんですけど!?そして一番気に入らないのがベゼ×アズですよ!なんなんですかケンカ売ってんですか私家で見て発狂しましたよそっとしといて欲しいのに人のトラウマ刺激してなおかつ私たちの約束まで汚しやがってそれにアズールはあんな台詞言わないし胸のサイズとか作り甘いし理解足りてないにわかなら語らないでもらえます目障りなのでっっ!!!」
「がががーーんっ...!?」
捲し立てるベーゼに涙がちょちょ切れそうになるペスカ。
後半は私情がほとんどだった気がするが、一息で言われては反論する気力も起こらない。
「私のヒロインたちを汚した罪...万死に値する...!」
「ひっ...!?」
怒りのままに下手人を睨むベーゼ。
箒を"杖"へと変化させ、ペスカへ突きつける。
杖の先が怪しく輝き、ペスカの体から"煙のようなモノ"が現れたかと思えば、そのまま抜き取られる。
「な、なんですの...?」
「あなたの悪夢、頂きました...。」
ニヤリと笑ったベーゼが杖を振るう。
するとまた煙が発生し、みるみるその
『らめっ...やめへ、ろこひゃんっ...///』
『ロコ、もうマゼンタしか見えないのぉっ!!///』
「ぶーーーっ!?///」
「何でまたあたしぃ!?///」
「ぎゃあぁぁ!?じ、地雷ですのぉぉ!!」
なんと煙は
声も姿も瓜二つ。
不意打ち気味に自身?の痴態を披露されたロコとマゼンタ、更にペスカの悲鳴が響き渡る。
「ふふっ、まだありますよ?」
更に杖を振るうベーゼ。
今度も煙は人の形を成していく。
『き、きつっ...か、かんにんしてや...っ///』
『この縛られてんのがいいんだろ?なぁ、サルファ...可愛いぜ...///』
「何でやねんっっ!?!?///」
「おいぃ!?前回出番なかったのはこういうオチかちくしょおぉぉっっ!!///」
「ロコルべは聖域ですのにぃぃ!?別々にカップリングとか頭どうなってんですの!?的確にわたくしの究極地雷カプをぶちこみやがりましてよぉっ!?!?」
"サル×ルベ"とかいうマイナーカップリングを見せつけるベーゼ。
キレ散らかす当人たちと変態。
"これはヒロインたちに対する侮辱には当たらないのだろうか?"とアズールは思っていたが、勿論ベーゼが望んでこんな物を造り出したわけではなかった。
「辛いでしょう、苦しいでしょう。これは
「なん、ですって...!?」
その恐ろしい能力にペスカだけでなく、その場にいる全員が息を呑む。
まさに、悪夢の魔女。
相手の嫌がる物で苦しめる、ある意味彼女らしいドSな能力である。
「もっと出してあげましょう。不本意ですが、仕方ありません。あなたにはこの罰が相応しいのですから...。」
「っ!もうあったま来ましたわっ!地雷を踏み抜いて頂いたお礼にぶち飛ばして差し上げますわぁっ!!」
挑発するベーゼに激怒し、ペスカは大量のパンタノドールを生成する。
ベーゼは大軍を前にしながら、その妖艶な笑みを崩さずに杖を振るう。
先程のように絡み合う女性ペアが、今度はかなりの数生成された。
その全てが、パンタノペスカにとっての"地雷カプ"であった。
「っ...ゆ、許しませんわぁぁぁ!!!」
「勘違いしないでください。裁くのは、私の方ですよ。」
ドールたちに対し、ベーゼの召喚した悪夢は武器を持ち応戦を始める。
パンタノドールは見た目の模倣は可能だが、能力までは再現出来ない。
それに対し、悪夢たちは本物のヒロインと
「そん、な...!?」
「あなたの悪夢は精巧ですねぇ。それだけは誉めて差し上げましょうか。」
ドールを砕いて開けた道を通り、ベーゼはペスカにゆっくりと近付いていく。
「さあ、仕上げです。更なる悪夢をご覧に入れましょう...。」
「や、やめっ...!?」
杖から蜘蛛の糸のように魔力が伸び、無防備なペスカを包んでしまった。
その姿はまるで、巣に捕らえられた獲物のようで...。
「ふふっ...。"
よい夢を、お楽しみください...。」
―――――――――――――――――――――――――――――
『い、いやぁ...!?やめっ、やめてくださいましっ!?』
嫌がるパンタノペスカの顔に、ネバネバの"納豆"を近付ける。
『うぇぇっ!?くっさ...!くっせえですわぁっ!?』
「まあそう言わずに。おいしいですよ?」
えづくペスカに構わず、その口に納豆を突っ込む。
『もごぉっ!?おえっ...うげぇぇ...!?』
「ほら、まだまだありますからね?」
顔を酷く歪め苦しむペスカを嘲笑いながら、際限なく納豆を突っ込み続ける。
これが私のもう一つの能力。
強制的に相手に悪夢を見せて拘束する、
その名も『
楽しいけど、しばらく納豆は食べたくないかなぁ...。
悪趣味で卑怯。
偽物で化け物な私には、お似合いの能力。
ああ、楽しい。
なんて楽しいんだろう。
もっと苦しんで?
もっと泣いて?
その情けない顔が何より好きなの。
怒りに身を任せて真化したこの姿。
アニメで見るような間違った強化なら良かったのに。
他の誰でもない私が、これが"マジアベーゼの正統真化である"と理解してしまった。
力が漲る。
だけど、暴走しているわけじゃない。
感覚としてはロードと戦った、エノルミータのベーゼに変身した時に近い。
高揚しているのに頭は冴えている。
しっくり来る感じがした。
魔法少女じゃなくて、"魔女"。
「ははっ...。」
これが分不相応なモノに憧れた、成れの果て。
いいよ、もう。
何も考えたくない。
ただ、目の前の快楽を貪ればいい。
私はもう、魔法少女なんかじゃないんだから。
「さあ、もっと面白いモノを見せてください...。」
私はペスカの"中"へと手を伸ばし、隠されたもっとも暗い部分を開く。
その人間が、思い出したくない程に苦しんだ記憶。
"トラウマ"。
再現してやれば、それ以上の悪夢などあり得ないだろう。
「ふふっ...ここからが、本、番...っ?」
『
「っ!?」
突如、溢れ出す闇。
濁流のように激しく吹き出し、私を"外"へ押し流してしまう。
「ぁ...ああああああぁぁぁぁぁっっ!!!」
「な、なんだぁ!?」
「呻いてたと思ったら急に叫び出したわよっ!?」
現実に引き戻されると、目の前には狂ったようにもがき叫ぶパンタノペスカの姿が。
魔力が彼女から溢れ出し、先程とは比べ物にならない量の人形が生成されてしまう。
そのどれもが先ほど悪夢の中で見た、"ある魔法少女"の姿をしていた。
『ーーーーー!!!』
「囲まれてるっ!?」
「さっきと様子がちゃうぞ!?」
「まずいわ...!ベーゼ!早くこっちにっ!?」
アズールの声が聞こえて思わず手を伸ばすけど、一斉に人形たちが私たちに襲い掛かる。
私は杖を箒に戻し、何とか空中に逃れることが出来たが。
「......なに、これ...。」
空から見下ろす廃墟は、まさに地獄絵図。
大量の人形たちが自身が砕けることも厭わず、アズールたちに飛び掛かってはその護りに攻撃を加え続けていた。
「何なのよこれ何なのよぉっ...!!」
「バカ!?ロコ伏せとけっ...!」
「...!」
「離れんなよアリスっ!」
「サルファ!?アズールちゃん...!?」
「ぐぅっ!?もっと気合い入れなさい!私たちが折れたら全員終わりよ...っ!」
「うっさいわ...!分かっとんねんそないなことっ...!!」
響き渡る戸惑いと苦しみの悲鳴。
大切な友だちの悲痛な声が、その惨状と共に私の罪を浮き彫りにする。
「と、止めなきゃ...!」
動揺する心を理性で押さえ付けて、
魔力を込めパンタノペスカの縛りを解こうとするが、まったく言うことを聞かない。
「ど、どうして...っ!?」
何度試しても結果は同じ。
毒巣は外れず、代わりに氷と光の障壁が砕け散っていく音だけが聴こえる。
「同じ、だ...あの時と...」
あの色々なモノを変えてしまった、あの夜と同じ。
私のせいで、またみんなが傷つく。
「っ...化け物、だ...」
暴走じゃなくたって、意識があったって。
私の力は制御し切れない。
みんなをただ危険に晒すだけ。
見境なく暴れる化け物と、いったい何が違うと言うのか。
「止まっ、て...」
お願い。
「止まってよ...」
止まれ。
「止まれ...!」
止まれ、止まれっ!
「止まれ止まれ止まれ止まれ止まれっ...!!」
必死に念じる。止まれ、もう止めてくれと。
それでも、何も変わらない。
「だれか...!」
情けなさと悔しさに押し潰され、ついに私は私を諦める。
同時に一際大きな破裂音が響き、大切な人たちの叫びがこだまする。
「たす、けて...っ」
「何をやっている。」
瞬間、私の魔力が断ち切られる感覚が走る。
時間が止まったように、人形たちが動かなくなる。
そして、まるで幻であったかのように霧散してしまった。
誰もが状況を理解出来ない中、私は
「っ...しお、ちゃん...さま...っ?」
「勝手な行動をした挙げ句、相手の術中に嵌まり暴走とはな。仕置きがそんなに好きか、貴様は。」
「ひぃっ!?」
仮面の騎士『イミタシオ』に威圧され、目覚めたばかりのペスカが飛び起きる。
どうやら命に別状はないらしい。
「なによ...助かったの...?」
「...ちげーな。」
「むしろ、悪化したみたいね...。」
アズールたちも無事だ...!
反射的に地上に降り立ち駆け寄るが、地獄を引き寄せたのが自分であることを思い出し、その場に棒立ちになる。
「...マジアベーゼか。」
「!...あ、あの...ありがとう、ございました...。」
「何故礼を言われるのかは分からんが、まあいい。ついでだ。」
「ついで...?」
イミタシオは無遠慮に近付いて来て、そのままその手を私に向かって差し伸べる。
「私と共に来い、マジアベーゼ。お前は私に頼るしかないはずだ。」
―――――――――――――――――――――――――――――
「!......私は...。」
「ダメよベーゼ...!」
イミタシオの手を取ろうとするベーゼ。
私はそれを制止し、彼女の元へ駆け出す。
「シオちゃんのジャマ、しないで...。」
「ぐっ!?ベルゼルガ...!」
頭上から振り下ろされる鎌を、何とか氷の刃で防ぐ。
狂戦士ベルゼルガ。
彼女も一緒に来ていたのね...!
「先程の戦いで理解したはずだ。お前は奴らでは止められない。お前の力が解放されればそれだけで周囲を巻き込む。暴走など関係ない。私以外に、お前の手綱を握ることは出来ない。」
「っ...。」
「黙りなさいイミタシオ!
ベーゼ、話を聞いてはダメっ...!」
「ジャマ、するな...!」
「あっ!?」
イミタシオを妨害しようとするが、ベルゼルガに阻まれ押し返されてしまう。
「死んじゃえ...。」
「っ!?」
「させへんよ。」
今度こそ鎌の餌食になりかけた私を救ったのは、巨大な"鉄の拳"。
つまり、マジアサルファだった。
「見逃してあげたのに。あなたから、殺すね...?」
「いつかのお返しや。覚悟せぇよ、包帯女。」
『
光に包まれたサルファがその姿を変化させ、鎌を殴り飛ばす。
「はよせぇアズール!あいつはうちの獲物や!」
「感謝するわ、サルファっ!」
サルファの援護を受け、私はベーゼの元へ駆ける。
「矮小な身で邪魔をするか、ルシファアズール。」
「矮小かどうか、試してみなさい...!」
大剣を構えるイミタシオに気圧されながらも、私は走る足を止めない。
奴に切られた、もう治っているはずの傷が痛む感覚と、魔法を無効化された記憶が頭を過る。
しかし、止まるわけにはいかない。
ベーゼを連れて行かせるわけにはいかない!
「おらぁぁぁっ!!」
「え?」
決意を込めて突撃する私の真横を、大量の"弾丸"が通り過ぎる。
「ちっ...。」
全てあの大剣に掻き消されるが、その煙に紛れて"ぬいぐるみ"が突撃。
あっさりと切り伏せられてしまうけれど、その隙を突くようにして、"影"から伸びた手がイミタシオの動きを封じる。
「レオっ!みんな...!!」
「行ってアズールちゃん!」
「グッ。」
「お前の推しに言ってやれ!」
「ナメんじゃないわよってね!『ヴォワ・フォルテッ!!』」
「雑魚が...。」
イミタシオの膨大な魔力に、全員の攻撃がまとめて吹き飛ばされてしまう。
しかし、休む間だけは与えない。
多種多様な銃火器の雨におもちゃたち、音波に縛りの影が絶え間なくイミタシオに襲い掛かる。
「面倒だな...!」
「アズールちゃんの邪魔はぜってぇさせねーぞ!!気張れよお前らぁ!!」
「「おうっ!!」」
「コクリ!!」
みんなに背を押され、私は漸くベーゼの元へ辿り着く。
顔を伏せ、私に目を合わせようともしない彼女に呼び掛ける。
「ベーゼ、聞いて!あなたは自分自身を勘違いしてる。あなたは危険な存在なんかじゃない。あなたは」
「何が、違うの...?」
「ベーゼ、話を聞い」
「私はみんなを傷つけたんだよ...?大好きなトレスマジアを汚して、レオちゃんに何よりも辛いことをしてみせて...そしてあなたを、犯した...。」
「...私もみんなも、あなたを憎んでなんて」
「許せないよ...許せるわけないでしょ...?みんなが許しても、私自身が許せない...!だって私、楽しんでた...!あんなに酷いことをしたのに、笑ってたの!心から...!!」
「っ...ベーゼ...!」
目に涙を溜め叫びながら、ベーゼはその魔力を迸らせる。
周囲に現れる"黒い泥のようなベーゼ"。
暴走したベーゼによく似た姿のそれが、私から彼女を遠ざける。
「あなた、自分の悪夢を利用してっ...!?」
「来ないで...!触れたらきっとまた...!あなたを傷つけてしまう...だって私は...化け物、だから...っ!」
違う。そんなの絶対に間違えてる。
私の大好きなベーゼは、うてなは化け物なんかじゃない。
あなたは、私の...!
「離れてよっ...!!」
「アズールちゃんっ!」
ベーゼの嘆きに呼応するように、私を触手で打ち払おうとする黒い泥たち。
その攻撃を"マゼンタスピアー"が切り裂く。
「マゼンタっ!?また私を庇って...!」
「大丈夫!あたしだって強くなりたい!同じ攻撃なんて効かないんだからっ!」
マゼンタはその言葉通り、私を狙う触手を次々と切り伏せていく。
「呼び掛け続けてっ!今のベーゼには、アズールちゃんの言葉が必要だよっ!」
「!...分かったわ。」
「なんで...どうして離れてくれないの...!」
激しくなる攻撃に衣装を切り裂かれながら、それでもマゼンタは槍を振り回し続ける。
「仲間で友だちだからだよっ!あたし覚えてるっ!あたしとサルファを、キラキラした目で"憧れだ"って言ってくれたことっ!」
「そうよっ!魔法少女への憧れこそあなたじゃない...!そんなあなたに憧れる女の子だっているのよ!?みんなあなたを信じてるっ!なのに、あなたはそうやって諦めてしまうのっ!?」
「っ...!私がどう思っても関係ないっ!さっきだって、イミタシオが来なければみんながどうなってたか...!私は危険なの...!化け物なの...!みんなじゃ、私を止められない...!」
「止めるわっ!止めて欲しいならいつだって私がやるっ!あなたの"敵"でいてあげるからっ!だから...!」
「なら...なら今すぐ私を"消して"よっ...!もう二度と誰も傷つけないように、私を殺してよぉっ...!!」
「...ッ!」
「きゃあっ!?」
激しくなる攻撃に、ついにマゼンタが倒れ込む。
危機的状況だが、今の私はそんなことを考える余裕がないくらいに、
「殺せ、ですって...?」
「もう嫌なの...!誰かを傷つけて喜ぶ私なんか...真化したって結局一緒...!こんな醜い化け物はいちゃいけないの...!」
「......なら、やってみなさいよ...。」
「っ...?」
「本当に私が傷つけられるのか、やってみせなさいよ...!その悪夢で、私を壊してみせなさいよっ...!!」
「アズールちゃん...!?」
これは完全に"解釈違い"だ。
許せるはずがない。
こんなことを言わせる為に、私は今まで戦ってきたわけじゃない。
こんなの、うてなじゃない。
今の偽物のうてなに、私を壊せるわけがない!
「さあ!やりなさいっ!偽物のベーゼなんかに、私は絶対に負けないんだから...!!」
「なん、なの...!意味、分かんないよ...っ!アズールの...!バカぁぁっ...!!」
私に向かって放たれる悪夢の巣。
回避することなくそのまま捕らわれ、私は深い眠りに落ちた。
―――――――――――――――――――――――――――――
『キヒヒ...アヒャヒャ...!!』
荒野に響く、悪魔の笑い声。
その足元には、砕け散ったハートと星のトランスアイテムが積み重なる。
1、2、3、4、5、6。
かつて躍動していたはずの、ヒロインたちの屍が地に横たわっている。
ぬいぐるみを抱いたまま動かなくなった女の子と、その子を庇うように、覆い被さったまま力尽きた少女。
特徴的だったお団子頭は解けて、乱雑に伸び散らばっていた。
彼女たちが本当の"姉妹"のようだったことを、私は知っている。
次に目についたのは、お互いを見つめ合ったまま事切れた者たち。
最期の瞬間まで深く愛し合っていたのだろう。
冷たくなった今も、その手は強く結ばれていた。
これ以上の"恋人"たちはいなかったと、私は知っている。
更に悲惨なモノがあった。
金髪の少女の腕はボロボロになり、最早手かどうかすらも分からない。
きっと最期まで手を伸ばし続け、そして守ろうとしたのだ。
彼女が誰よりもカッコいい"ヒロイン"であったことを、私は知っている。
その傍らで、無傷のまま生気を失った遺体が一つ。
涙の跡が目立つその表情と、先程の少女に添えた掌。
自分の生命を使い切ってでも、大切な友だちを救おうとしたに違いない。
彼女の"優しさ"を、私は知っている。
「っ...ハァ...っ...ハァ...っ」
"知っていたモノ"を踏み越えて、私はその悪魔に近づく。
正確には、その悪魔が
逆流する胃の中身を飲み下し、荒くなる呼吸を無視して。
それでも私は足を止めることが出来ない。
「っ...!?」
悪魔が見下ろすそれは、美しかった"紺碧"の髪を自らの血で真っ赤に染め。
瞳孔を開いたまま、ただ空を見つめ息絶えていた。
「ぁっ...あぁぁっ...ぅっ!おえぇぇっ...!」
目を覆いたくなる地獄に、先に体が音を上げた。
涙と鼻水を垂らしながら、抑えることの出来ない吐き気を解き放つ。
「ざよ、ちゃ...なん、で...っ!」
私は死体となった愛しい人の名前を叫びながら、この惨状を招いた悪魔を。
"
『フフ...アハハ...!』
尚も笑い続けるベーゼ。
私は再び絶望する。
これは、"悪夢"だ。
アズールの、小夜ちゃんの悪夢。
これこそが彼女の恐れること。
未来だ。
やはり、そうだった。
心のどこかで期待していた。
彼女はどんな私でも受け入れて、救ってくれると甘えていた。
だけど、現実は違う。
当たり前だ。
私は彼女に示した。
自らが化け物であることを。
ならばこれは当然だ。
当然の恐怖、最善の忌避。
だと言うのに、私の目からは涙が溢れて止まらない。
「やっぱり...つらい、なぁ...!」
私を一人にしないで。
嫌いにならないで。
恐がらないで。
ずっと側にいて。
その想いは、どうやっても止められなかった。
こんなに辛い思いをするなら。
好きになるんじゃなかった。
"憧れ"なんて、持つんじゃなかった。
「わたしは...っ...間違えたんだね...。」
「それは違うわ、うてな。」
ぐちゃぐちゃになった視界に、私が最も愛し、求め憧れたヒロインが映る。
「小夜、ちゃん...?」
「これは私だけの悪夢じゃない。
"マジアアズール"の姿で現れた小夜ちゃんは、悪夢の中で息絶えた自分自身の顔に手を添えて、弔うようにその瞼を下げて瞳を隠す。
「小夜ちゃんと、私の悪夢...?」
「この地獄はある意味で私の悪夢だけど、ほとんどは今のうてなが"最も恐れること"の具現化よ。私を含め、大切なモノを全て壊してしまう悪夢。」
「っ...!」
「早合点しないで。これはね?"夢"なの。あなたは心の底からこの悪夢を避けたがっている。それはつまり、うてなの本心はちゃんと、私の知っている"柊うてな"のままだっていうことなのよ。」
「私の、本心...。」
「その証拠に、見て。」
小夜ちゃんは今も笑い続けるベーゼを指差す。
見ることすら辛いそれを、歯を噛み締めながら目視する。
『アハハ...!フフ...っ...アハ、ハ...っ!』
「!...
ただ高笑いをしているだけだと思っていた、その化け物の頬を伝う涙。
肩を揺らし、次第に嗚咽すら混じって。
「これがね、"私の"悪夢。もしうてなに、こんな辛い思いをさせてしまったらって...それが一番、私が恐れることなの。」
「...。」
小夜ちゃんは困ったような笑顔を浮かべて、私にそう言った。
そして、泣き続けるマジアベーゼに向き直り。
その醜い姿に構わず、ぎゅっと抱き締めた。
「辛かったね...ごめんね...。
止めてあげられなかったね...。
でも、もう大丈夫。
絶対に、こんなことにはさせない。
その為に、私は生まれてきたから。」
『さよ、ちゃんっ...ごめん、ね...ごめん、なさ、いっ...!』
小夜ちゃんの言葉に闇が溶かされていく。真っ黒な表情が私と同じ、情けない泣き顔に変わる。
そしてベーゼはみんなの亡骸と共に、光の粒子となって消えていった。
「......なんで...?」
「...何が、かしら?」
「なんで...おかしいよ...どうして...っ」
あんなに酷い目に遭わされて、これだけの地獄を見せられて。
何で、そこまでして。
何故命を賭してまで。
「私なんかを...!愛してくれるの...っ!?」
「...。」
私にそんな価値なんてない。
私にはあなたに想ってもらう資格がない。
なのに何故、あなたはこんなに私を愛してくれるのか。
全てを捧げてくれるのか。
分からない、何も分からない。
拒絶にも似たそんな気持ちを小夜ちゃんにぶつける。
「ずっと泣きっ放しで目が真っ赤ね。」
小夜ちゃんはすぐには答えず、代わりに私の頬を流れる涙を拭ってくれる。
「マジアベーゼの真化形態。あなたは化け物に相応しいだとか言ってたけど、私には分かったわ。何でそんな能力になったのか。」
「ぇ...?」
得意気に笑う小夜ちゃんは、自らの衣装を見せびらかすようにその場でくるくると回ってみせる。
「悪夢や、トラウマ。
それを
定番だもの。
私とうてなが大好きなヒロインは、困難を越えて更なる力を身に付けるものだから。」
「ぁ...。」
そんな場合じゃないのに、妙に納得してしまった。
我ながら、単純過ぎて恥ずかしい。
そんなしょうもない理由で、私はあんな悪役らしい能力に目覚めたのか。
「相変わらず脇役になろうとするんだから。私にとって"主人公"はあなたなのよ?『解釈違い』はこっちの台詞なんだから。」
「ご、ごめん、なさい...?」
ムッとした表情のまま私の手を握り、その手を自分の胸に近付ける小夜ちゃん。
「特別に見せてあげる。
私のトラウマ、一番深いところ。
恥ずかしいから説明はしないけど、ここにあなたの求める答えがあるわ。」
「え...?ぁ...///」
引かれるままに彼女の胸に触れると、景色が吹き飛んで、さっきまでとは"別の光景"が現れる。
薬品臭く、静かで暗い、ベッドだけの部屋。
等間隔で電子音が鳴っていて、どこか不安になるような空間。
「"病院"...?」
『病院の一室』と思われるその場所。
ベッドには、一人の女の子がいた。
私よりきっと歳上だけど、その体は痩せ細って動くのも辛そうだ。
一目見て気付く。
彼女はもう、長くはない。
...でも、その子は"笑顔"だった。
本当に、心の底から幸せそうに、少女は笑っている。
とても、キレイだと思った。
それはまるで、咲き誇る花みたいで...。
彼女は手を震えさせながらも、何かの漫画を読んでいるようだった。
「魔法少女に、あこがれて...?」
聞き馴染みのないタイトルに反して、不思議と親近感を持つその名前。
少女の側には、そのシリーズと思われる既巻がキレイに並べられていた。
「え...?これ...マジア、ベーゼ...?」
表紙には見覚えのある姿。
たった一度だけ私が変身した、"エノルミータのベーゼ"が描かれていた。
戸惑う私の思考は、耳をつんざくアラーム音に中断される。
「あ...!?」
少女の手から、漫画が滑り落ちる。
辛そうな様子で、それでも彼女は笑顔を浮かべ続ける。
「ありがと、べーぜちゃん...。」
「!?...だ、ダメっ...やだよ...!死なないで...!
力尽きる、その最期の瞬間。
私に『ありがとう』と言った少女。
彼女を"小夜"と認識した途端に、その景色は暗闇に溶けてしまった。
「今の、は...。」
「...はい、おしまい。もう二度と見せないからね!恥ずかしいし。」
真っ暗な空間に、私と小夜ちゃんだけが浮かんでいた。
「ぁの...えっと...。」
「...悲惨に見えたかしら?
でも、案外幸せだったのよ、あの子は。
優しい人と会えたし、家族も最期まで愛してくれた。
...お姉ちゃんとは、結局仲直り出来なかったみたいだけど。」
他人事のように言う小夜ちゃん。
今までの"分からなかったこと"全てに対する答えが、あの光景だった。
まだ理解し切れない部分もある。
でも、何か質問したりはしない。
小夜ちゃんの言葉に、ただ耳を傾ける。
「あのね、うてな。
あなたは、あの女の子を"救った"のよ。
辛い病気と必死に戦い続けられたのは、あなたにもらった力があったから。
好きなモノに正直で、スケベで...でもとっても優しくて、素敵な主人公。
そんなあなたを愛することが出来て、彼女は幸せだった。」
「っ...ぅっ...」
あらゆる言葉、そして行動。
それらに籠った想いに気付く。
どれだけ嬉しかったのだろう。
どれだけ辛かったのだろう。
あんなに早過ぎて、辛過ぎる死を越えて。
せっかく新しい人生を得たというのに。
私の為に、その命を捨て去ったことすらあった。
私は、何もしてない。
魔法でこの子の病気を治してあげられたわけでもない。
だけど、この子は言った。
"愛してよかった、それが何より幸せだった"と。
あまりにも深い愛に、また涙を堪えられなくなる。
「だから、ね。そんな素敵な、あの子の"あこがれのヒロイン"を、化け物なんて...消えたいだなんて、もう絶対に言わないで...。」
「!...でも...っ」
「...大丈夫よ!」
私はまだ、自分にそんな価値があるなんて思えない。
そう言おうとした瞬間、悪夢のベーゼと同じように抱き締められた。
小夜ちゃんの愛が、心に伝わる。
それを形にするように、小夜ちゃんは優しく、私に"口付け"をしてくれた。
「っ...///」
「うてなが自分を信じられなくても。
私はうてなを信じてる。
あなたは、魔法少女マジアベーゼ。
今は自信が持てないと言うのなら、それでもいい。
あなたが、本当に心から魔法少女を名乗れる、そんな日が来るまで。
"化け物"の役目は、
「え...っ?」
そう言って、彼女は私から離れていく。
「私の大好きな
マジアアズールの衣装が千切れ飛び、彼女の額を二対の角が突き破る。
食いしばる歯は鋭く尖り、禍々しい魔力が彼女を包んでいく。
「愛する人の願いを、守る為になら...!私は...ッ!!」
闇の輝きを見に纏い、小夜ちゃんは。
"ルシファアズール"は咆哮する。
「化け物を超える、"悪鬼羅刹"と成り果ててみせましょうッ...!!」
『
―――――――――――――――――――――――――――――
「え...?」
「これ...雪...?」
誰ともなしに驚きの声を上げるヒロインたち。
戦う手を止め、その不思議で幻想的な光景にただ魅入ってしまう。
真夏の廃墟に、季節外れの雪が舞い散る。
「...!」
「アズールちゃん...!」
「あれ、まさか...!」
「ホントに...いつでも、なれんのかよ...。」
衣装を切り裂かれ、満身創痍のエノルミータ幹部たち。
彼女たちが瞳に映すのは、目の前の
劇的な"変貌"を遂げた、自らを統べる
月明かりに照らされるその姿は、舞い散る雪よりも艶かしく、美しい。
「ルシファ、アズール...!」
その底知れなさに何かを直感したのか、イミタシオは標的をアズールへと変え、一心不乱に駆け出す。
「"控えなさい"。」
「くっ...!」
アズールが手を翳すと、そこからイミタシオを阻むように激しい吹雪が巻き起こる。
足を止められ、間近でその姿を見せつけられるイミタシオ。
「貴様...
「...ええ、そうよ。」
後ろ手に結った紺碧の御髪。
花魁のように蠱惑的に晒された肩と胸元。
夜の月を思わせる上品で美しい着物に反して、刺々しい具足と手甲が赤黒く輝く。
腰には二振りの刀を差しており、その刀身からは鞘に包まれているにも関わらず、凄まじい魔力と冷気が溢れている。
目を奪われる華美さとは裏腹に、額には長大な二対の角が生え、犬歯も鋭利に発達していた。
美しさと凶暴さを併せ持つ、人を外れた艶姿。
一言で表すのならば、"鬼の姫武者"。
「ルシファアズール。真化形態。
『"
たとえ悪鬼羅刹に堕ちようとも。
全ては愛するあなたの為。
その覚悟を体現した、真の姿が今ここに。
深き愛故に、少女は冷たき鬼へと成り果てた。
「これが...アズールの、真化っ...///」
「...そこで見ていなさい、ベーゼ。本物の、"化け物"の力を。」
自らに見惚れるベーゼにそう告げて、アズールはイミタシオに向かって歩き出す。
手を掲げ、先程と同じように吹雪を発生させる。
「同じ手を...!」
魔法殺しの大剣を盾にするイミタシオ。
しかし、魔法であるはずの吹雪は
「無効化は出来ないようね。」
「ちっ...!」
理由の分からないイレギュラーに舌打ちしつつ、努めて冷静に障壁を展開する。
しかし、次第に激しくなる吹雪と、"凍りつき始めた"自らの手足に気付き、仮面の下の表情に動揺の色が浮かぶ。
「また...貴様はっ...!!」
魔力を放出することで退避し、難を逃れるイミタシオ。
最早取り繕うこともなく、自らの"トラウマ"に対する怒りを露にして、アズールを睨み付けた。
「いいだろう...!奇跡を以て私の前に立ち塞がるのならば...!」
魔力を纏わせたマントを盾に突貫。
吹雪をはね除け、肉薄することに成功する。
「
「...いつか。」
ガギィンッ!!
刃がぶつかり合う音が響く。
身の丈を超える大剣を、透き通る細身の刀身で受け止める。
氷の刃は、決して霧散することも、砕け散ることもない。
その銘を『朝霜』。
少女が終えた一生のように儚く、けれど決して消えぬ思い出のように強固な刃。
「いつか...どこかで。誰かが、私を倒すでしょう。」
「っ...!?」
ガギャンッ!!
抜き出されたもう一振りが、奇跡を許さぬ剣を弾き飛ばす。
その銘は『夜雪』。
三日月を思わせる鋭く美しい刃は、少女が生きる今のように、鮮烈で力強い一撃を生み出す。
「けれどそれは、今ここではなく。
お前にでもない。」
得物を失ったイミタシオを見下ろし、刃を突き付ける鬼。
一見してイミタシオに向かって話しているように聞こえる言葉。
だが、それは間違いだ。
その鬼が想い、紡ぐのはただ一人のみ。
「私を倒せるのは、この世で唯一人。
私の憧れた、"本物の魔法少女"だけ。」
背中を向けたアズールが、それでもただ自分だけを見つめていることに気付くベーゼ。
「いつか現れるその日まで。
恐怖なさい。
その頭を垂れて、命を乞いなさいな。
私こそ、悪鬼羅刹。
エノルミータの王。
「...っ!」
もしも、本当にあなたが"化け物"であるならば。
その役目すら私が被りましょう。
あなたが望むなら。
私が、望むから。
嘘でも、誠にしてみせましょう。
あなたは、
ただ、願っていて欲しい。
魔法少女にあこがれて、あなたはここにいる。
ただそれだけが、私の幸せ。
この想いは、たとえ死んだって消えないから。
だから、もう一度。
私を信じて。
「剣を取りなさい、偽りの魔法少女よ。
決着を着けましょう。」
「貴様...!」
「シオちゃんっ...!?」
「あんたの相手はうちや...!!」
刃を戻し剣を取れと、イミタシオを解放するアズール。
屈辱に見えない顔を歪ませながら、偽りの魔法少女は自らの得物へ走る。
そんな彼女を気にかけるベルゼルガだったが、サルファの追撃が止まず助けに行くことは出来ない。
「認めん...認めんぞ...!私は甦り、今度こそ間違えないと決意した!二度と魔法に、奇跡などに負けるわけにはいかんのだ...ッ!!」
大剣に禍々しい魔力を込めるイミタシオ。
その必死な姿に既視感を覚えるアズールだったが、"今度こそこれ以上はない"と確信する。
二振りの刀を合わせ、一つの"大太刀"と化す。
「"
イミタシオに対抗するように魔力を凝縮し、大上段に刃を構える。
「お前を倒すのは、魔法でも、奇跡でもない。」
「燃え尽きろッ!
先に放たれる、イミタシオの全魔力を束ねた火炎。
その、かつて"自分を焼き尽くした焔"を前にしても、彼女が震えることはない。
魔法でも奇跡でもない。
確かに今、この胸にある想いを込めて。
全身全霊の、絶対零度の一撃を。
「"愛"よッッ!!!」
ぶつかり合う焔と氷。
自然の摂理すら覆して。
羅刹の愛は燃え盛る憎悪すら凍りつかせ、真っ白に塗り替えていくのであった。
―――――――――――――――――――――――――――――
「ぐっ...あぁぁっ...!?」
カランと音を立てて、イミタシオの仮面が凍りついた床に落ちる。
砕けた甲冑と、血を流す頬を抑え苦しむ彼女の"素顔"を覗き込む。
「やっぱり、あなただったのね。」
「!?...
魔力が弱まっていたからか、それとも因縁があるからか。
私より先に、ベーゼがその正体を言い当てる。
「えっ...ろ、ロードさまぁっ!?」
「ロードさまが、魔法少女ぉ!?」
「お前ら自然に"さま付け"かよ...。」
かつて部下だったロコルべもベーゼの言葉に触発され、認識阻害を越えて彼女を"ロードエノルメ"であると認識する。
「一体、どういうことや...?」
「それはボクらが説明しよう。」
ゲートが"二つ"開き、それぞれから黒と白のマスコットが現れる。
「ヴェナ、遅かったじゃない。」
「すまないね。だが、キミの戦いは見せてもらったよ。エノルミータの王に相応しい力を示してくれたね。」
「ヴァーちゃん!?何でその真っ黒な子と一緒なの!?」
「違いますよ!?ヴェナが勝手にタイミングを合わせて来ただけですからっ!?」
それぞれのマスコットと軽く言葉を交わし、説明とやらを促す。
「アズールの言った通り、ナハトベースの廃棄区画からトランスアイテムが無くなっていることを確認した。前の戦いで倒された彼女が持ち去ったとみて間違いない。」
「1つはイミタシオが、もう1つはパンタノペスカが使用しているわけね。」
「めっちゃバレてますの...。」
「く、そっ...!」
「シオちゃん...っ!」
立つことすら出来ないロードに駆け寄るベルゼルガ。
憎しみの篭った瞳を、刺すようにこちらに向けてくる。
「そして、ベルゼルガ...。彼女はかつて僕が勧誘した魔法少女、"マジアブラン"で間違いありません。どうしてロードと一緒に!?その人はあなたとあなたの仲間を...!」
「うるさい...!シオちゃんは、あたしの全部...!」
ベルゼルガはヴァーツの問いには答えず、手に持った血鎌に魔力を溜め込む。
「ルシファ、アズール...!おまえ...おまえは、ころすっ...!!」
「...退く、ぞ...っ。」
「な、なんで...!?あたしはあいつを...!」
「命令だっ...!!」
「っ!?」
私に殺意を向けるベルゼルガを制し、ロードは二人に撤退を命じる。
「このまま逃がすとでも...!」
「今ですわっ!!」
私たちとシオちゃんズを隔てるように生み出される大量の土塊。
戦闘力は皆無だが、時間稼ぎには十分だった。
「待ちなさい!!」
「アズール...!ぜったいにゆるさない...!おまえは、あたしが...!!」
「いいからさっさとずらかりますわよっ!?」
捨て台詞を残し、新しいゲートに吸い込まれていくシオちゃんズ。
姿が消えるその瞬間まで、狂戦士の双眸は私を捉え続けていた。
「待てコラべるべるオムレツ!アタシのアズールちゃんにナメた口聞きやがって!とんずらとか許さねぇぞコラーっ!!」
「オムレツじゃなくてベルゼルガ、ね。」
パンタノペスカの残した土塊を八つ当たり気味に蹴散らすレオ。
それでもまだ腹の虫が治まらないようだ。
私としては、一息吐けて安心したというのが本音。
ベルゼルガのあの並々ならぬ憎悪は気になるが、とりあえず撃退出来たようだし。
あちらには分かりやすいヒーラーもいないから、ロードの回復には時間がかかるだろう。
「い、行っちゃった...。」
「...はぁ。めっっちゃ疲れたぁ...。」
危機が去ったと気が抜けたのか、大の字で横になるマゼンタとサルファ。
そこに、おずおずと声を掛ける魔女っ子が一人。
「あ、あの...二人、とも...。
わたし...ご、ごめ」
「おーおー。また随分と教育に悪そうな格好になってもうたなぁ。」
「っ...!」
サルファの感想にショックを受け、余計に縮こまってしまうベーゼ。
そんな仲間の様子にサルファは悪びれることなく、微笑みながらこう続ける。
「ま、ええんとちゃう?よう似合っとるし、最近の子どもは"ちょいワル"なくらいが好きらしいで?」
「そうそう!ハロウィンみたいで可愛いし、きっと大人気だよっ!」
「!...サルファちゃん...マゼンタちゃん...っ。」
自らを受け入れてくれる"居場所"に戻り、涙と共にやっと笑顔を見せるベーゼ。
私は内心ほっとしながら、表情を引き締め三人揃ったトレスマジアに近付いていく。
「...泣いとる場合やないで、ベーゼ。
「え?」
ゆっくりと自らを見せつけるように歩き、彼女たちを見下ろす位置まで辿り着く。
戸惑うベーゼに構わず、抜き身の夜雪を突き付ける。
「私の力、思い知ったかしら?どうやら、震えて立つ力すら出ないようね!」
「え?...私、しゃがんでるだけ」
「その程度で"化け物"とは笑わせるわね!以前は
一気に捲し立てる。
反論の隙を与えず、全力で悪の女首領を"演じる"。
「悔しいでしょう!情けないでしょう!ならば強くなりなさいマジアベーゼ!諦めず真の魔法少女となり!私の野望を阻んでみせなさいっ!」
「!...。」
「好き勝手言うてくれはるやん。」
「あたしたちを忘れないで欲しいよねっ!」
ベーゼを左右から挟むようにして支え、立ち上がらせるマゼンタとサルファ。
刃に怯まず、真っ向から私を見据える。
「あんた程度、うちだけで十分や!」
「あぁ?!お前はアタシがブッコロすんだよひんにゅーマジアっ!ついでにベーゼも潰す!アズールちゃんとイチャイチャすんなばーかばーか!」
「あたしだって、真化して二人の力になるっ!」
「ロコを差し置いてプリティーキュートなアイドル真化なんて許さないんだからっ!」
「お前だけ台詞がしょうもねぇよロコ...。」
「コクコク...。」
いつの間にか後ろに控えていた仲間たちと共に、ニヤリと不敵に笑ってみせる。
ヒロインたちの目に焼き付けるのだ。
エノルミータという"巨悪"を。
正義を彩る、"悪の華"を。
「我が宿敵トレスマジア!
夢と希望と憧れを抱いて進みなさい!
その先で私たちは待っているわ!
そこが私たちの、決着の時よ!!」
「これじゃあ"宣戦布告"ってより...」
「"叱咤激励"よね。」
「コクリ。」
「ツンデレアズールちゃんたまんねぇ...///」
捨て台詞を残し、私たちはその場から離れていく。
堂々と、自信満々に靴音を鳴らして。
「待って、アズール...!」
ベーゼの私を呼ぶ声が聞こえるが、立ち止まることはしない。
遠ざかる私たちに、それでも大きな声が届く。
「私!今は偽物だけどっ!いつかなるからっ!私の、
「......ええ、待ってるわ。」
彼女に聞こえないように、小さく返事をする。
私の知ってるマジアベーゼは、もういない。
でも、それでいい。
ベーゼちゃんにあこがれて、この世界に来た私だけど。
私はもう、今のうてなを愛しているから。
あなたがあなたでいてくれる幸せが、何より嬉しいのだから。
「...あんなに仲が良いのに敵同士なんて。」
「ああ、おかしいね。だからこそ、ボクはアズールを"選んだ"んだ。」
「ヴェナ...あなたは...。」
「ヴァーツ。魔法少女ごっこはもう潮時だよ。
覚悟しておくといい。」
「待って...!」
ヴェナを伴って、私たちはゲートを潜る。
悪夢の夜は明け、雲の切れ間から朝陽が射し込む。
充足感と裏腹に押し寄せる疲労感で、現実に引き戻される私たち。
「学校、行きたくない...。」
水神小夜、中学二年生。
またの名を、ルシファアズール。
―――――――――――――――――――――――――――――
◼️□next episode◼️□
「今から"ムラムラ"してきたぁ...!こんなクソッタレユーレイ屋敷、さっさとぶっパなしてさぁ!ぜったい三人でホテルいこーな!うてなちゃんっ!!」
アズールらしさって、やっぱり愛なんじゃないかと。
そう考えての真化理由でした。
まほあこにしてはシリアスでごめんなさい。
凍刃羅刹のイメージはfateの武蔵ちゃんと玉藻、デジモンのリリスモンとかを統合した感じです。絵心があったらなぁ。
次回は9/23(月)0:00投稿予定です。※遅れる可能性大です。