魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

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もうちっとだけ続くんじゃ(掌クルゥ)
アニメ1期分はプロットできちゃったからしょうがないね。
そう長引かせず一旦は完結する予定です。
1、2話を越えてまだ見て下さる奇特な皆様。
ありがとうございます。 
短い間ですが、この少し狂ったまほあこを、楽しんで行ってください。


第3話『その名は、ルシファアズール!』

「「魔法少女をやめたいっ!?」」

「は、はい...。」

 

放課後の屋上。

秘密の話をする時には、いつもここに来るのがお約束らしい。

...魔法少女っぽい。ちょっと感動する。

 

「なんで!?うてなちゃん、ずっと魔法少女に憧れてたんでしょ!?」

「それは、まあ...そうなんです、けど...。」

「はぁ。はるか、少しは落着きぃ?うてなはんも、事情があってこないなこと言うてはるんやし。理由を聞かせてもらおうやないの。」

 

今でも信じられない。

あのマジアマゼンタが。マジアサルファが。

同じ学校の、しかも同じクラスの。

花菱はるかちゃんと、天川薫子さんだったなんて。

 

今思えば見た目も声もそのまんまなんだけど、魔法で知らない人には分からないよう、認識の阻害をしている、らしい。

ある意味お約束だけど、本物もそんな感じなんだなぁ...。

また感動しちゃった。

...じゃなくて。

 

「わたし...自信がないんです...。昨日も、二人がピンチなのに...わたし何も、出来なくて...。」

「初めてだったんだからしょうがないよ!」

「せやで?始めから上手く出来る方が、変っちゅうもんや。」

 

励ましてくれる二人の姿に、更に罪悪感が強くなる。

...二人とも、今朝からずっと痛そうに胸を抑えてるから。

昨日の惨劇をまだはっきりと覚えている。

わたしのあこがれが、あんな痛々しい...いやらしい...///

お風呂とか、大丈夫だったのかな...?

 

「や、やっぱりわたしじゃダメです...!昨日の記憶を全部消すとかで、どうかやり直しをぉ~...!」

「そない器用な真似、ウチやはるかにできる思うか?」

「そうそう!ヴァーちゃんならできそうとか思ってないんだからね!」

「聞いてみてくださいよぉ~...(泣)」

 

はるかちゃんも天川さんも、まったくやめさせてくれる気がないみたい...。

うう、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

ほんの出来心だったんですぅ...!

 

「やっと出来た三人目の仲間なんだもん!うてなちゃんがちゃーんと戦えるように、わたしたちでサポートすればいいんだし。」

「せやなぁ。まあ、昨日は何の練習もなしにぶっつけ本番やったさかい。次は案外上手くいくかもしれへんしなぁ。」

 

結局、結論は先延ばし。

一度よく考える時間を作ろうと、その日は解散になった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

シュル... パサッ

 

問題は、多い。

着替えながら物思いに耽る。

 

まず、私のまほあこ知識自体がかなり薄れてしまっていること。

流石に主要メンバーの正体やら、戦闘の結末程度は覚えているが、細かいイベントの順序は怪しい。

そもそもまほあこは明確な時期の説明自体がない。

期末テストや夏の描写はされていた気がするが、それだけでは特定は厳しい。

 

原作で言えば11巻途中までの知識はあるはずだが、アニメにもなったロード団との戦い以降は、非常に記憶が曖昧だ。

時間が経ちすぎて磨耗したのか、それとも消されたのか。

どちらにせよ、これ以上原作を歪めて大筋を変えてしまうのは危険だろう。

 

幸い、まほあこの山場は(11巻時点で)ロード団関連で固まっている。

現時点でまほあこ第一話後と同じ時系列と考えられるが、先輩であるロードエノルメたちは、すでに絶賛魔法少女狩り中に違いない。

私が干渉していない以上、彼女たちにイレギュラーは起こり得ない。

つまり、各章のボスキャラ自体は据え置きの可能性が高い。

ついでにお茶の間にガチレズセッ○スをお届けしたケンカップルも健在のはず。

 

とすれば、だ。

私は出来る限り原作をなぞるようにしつつ、

少しでも早く、うてなちゃんをマジアベーゼにして物語の"主役"に戻してしまえばいい。

そうすれば多少のズレは何とかなる。

ボスに関してはきっと、欲望迸るベーゼちゃんが何とかしてくれるだろう。

 

空いたマジアアズールの枠はどこからか拾ってくるか、最悪私が一時的に加入して誤魔化すとしよう。

ヴェナに記憶操作系の魔法はないのか聞いておくべきか...。

 

問題と言えば、うてなちゃんの正妻枠であるキウィちゃんこと『レオパルト』も問題だ。

状況的にすでにエノルミータに所属しているはずだが、彼女は対シスタギガント戦など、戦力として非常に重要な役割持つ。

だがその原動力はいつも、彼女が大好きなうてなちゃんだった。

マジアベーゼがいない以上、真価を発揮できない可能性はある。

わたしが代わりを担うことは不可能ではないが、ファンとしてはやはりレオ×ベーゼは諦めたくない...。

 

こないだはつい、

『オレはベーゼ×アズールでいく(キリッ』

なんて言っていたが、可能性は多ければ多いほどよい。

アズールをいじめているベーゼも、レオパルトにたじたじのベーゼも最高なのだ。

 

じゅるり。

 

...ではなく。

欲望のまま生きるつもりが、結局あれこれ考えなくてはならなくなった。

真面目に考え過ぎるのは、この"水神小夜"の性分だったりするのだろうか。

 

「...よし。」

 

巫女服に着替え終わると同時に、気持ちを切り替える。

考えることは多いが、一度にすべて考える必要はない。

掃除をしながら、一つ一つゆっくり解決していこう。

 

そう気持ちを整えて、まずは境内に向かう。

思えばここで原作のアズールは変態に目覚めてしまったんだなぁ。

などと煩悩にまみれたことを考えていると。

 

「あれは...。」

 

お願い事、というよりかはまるで懺悔でもするかのように。

ひしひし、さめざめと祈りを捧げ続けている、私の推しの姿があった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

『うてなちゃんがあんなに勇敢だったなんて!』

『小夜はんならともかく、うてなはんがあないにガッツあるなんてなぁ。失礼やけど見直したわ。』

 

なーんて。

褒められてつい調子に乗ってしまっただけなんです...。

やっぱりわたしが魔法少女なんて畏れ多い。

 

「何より...。」

 

『なんでこんなに興奮しゅるのぉ...!?♥️』

 

...仲間がやられて喜ぶ魔法少女なんて。

そんなの、魔法少女じゃない...。

 

「はぁ...。」

 

ため息を吐きながら、いつの間にか来ていた神社。

何かお願い事をしようにも、何をお願いしたいのか、自分でも分からなくなっていた。

 

「柊さん?」

「はぃ...。...え?」

 

名前を呼ばれた気がして、つい返事をしてしまう。

数秒遅れて、その声に聞き覚えがあることを思い出す。

 

「珍しいわね、こんなところで。何かお悩み事かしら?」

「み、水神さん...なんで...?」

 

クラスメートの水神小夜さん。

スポーツ万能でみんなの人気者。

わたしとは正反対の女の子。

神社で会うことにも驚いたけど、その格好は何故か巫女服だった。

か、かわいい...。

 

「...ああ、この格好ね。ここ、わたしの実家なの。」

「じ、実家...。」

「ええ。だからコスプレというわけじゃないのよ。似合っているかしら?」

 

そう言って軽くポーズを決める水神さんが、まるでアニメのキャラみたいに浮世離れしていて。

 

「は、はぃ...とっても...///」

 

思わず赤面しつつ、単純な返しをしてしまった。

 

「ふふっ、ありがとう。それで?神様にお願いしたくなるようなことでもあったの?」

「ぁ、ぇと...その...。」

「言い辛いお悩みみたいね。」

 

水神さんははるかちゃんとも、天川さんとも仲良しだ。

だけど二人が魔法少女であることは知らない、はず...。

素直に相談することはできない...。

 

「別に全部を話す必要はないわ。言いたくないことは言わなくてもいい。話してスッキリすることも、あるんじゃないかしら?」

「...じゃあ、えっと...少し、だけ...。」

 

水神さんの雰囲気がそうさせるのか、

人見知りするわたしには珍しく、ぽつりぽつりと悩みを話し出す。

 

あこがれていたものになれたこと。

でも上手くできなかったこと。

...失敗したはずなのに、何か嬉しくなってしまったこと。

 

まとまってない話だと思う。

それなのに水神さんは、真剣にわたしの話を聞いてくれて...。

 

「つまり、やめた方がいいと思ってる理性と、続けたい本能が戦っているわけね。」

「ほ、ほんのう...。」

 

この場合、本能ではなく煩悩なのでは...?

 

「悩んでいるのはやめたくないからよ。じゃなきゃ、すっぱり諦めがつくはずでしょう?」

「それはまあ、確かに...。」

「段階を分けましょうか。今柊さんが考えるべきなのは、『憧れになれちゃった!やったー!』ってことだけよ。」

「えぇ...。と、とてもそんな気分には...。」

「いいから、ほら。」

「ふぇ...?」

 

下を向くわたしの腕を掴んであげさせる水神さん。

 

「はい、やったー!」

「...や、やった~...」

「やったー!」

「やった~...///」

「ふふっ、よかったわね。柊さん!」

「ぁ...ありがと、ございます...///」

 

は、恥ずかしい...。

あやされてる赤ちゃんの気分...。

でも...。

でも何故か、ちょっと楽になった、ような。

 

「ね、柊さんの憧れていたものって、誰でも簡単になれるものなの?」

「それは...。簡単、ではないと思います。」

「そう。なら、尚更ね。」

 

水神さんは置いていた箒を拾い直して、わたしに向き直る。

 

「物事は何でもそう。どれだけ憧れて、望んだとしても。それを叶えられない人は必ず存在する。それがどんなに些末なことでも。叶えられる人の方が少ないに決まっている。」

「ぁ...。」

「だからこそ、叶ったなら目一杯喜ばないと。じゃなきゃ、生きてるのがバカみたいじゃない?悩むのはもっと喜んで、楽しんだ後でいいのよ!」

「喜んで、楽しむ...。」

「ええ!私はそう思うわ。」

 

そう言って笑う水神さんの顔は、どこか悲しんでるようにも見えて。

よく分からないけど、何だかすごく説得力があった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ありがとう、水神さん...。わたしなんかの相談に、乗ってくれて...。」

「なんかじゃないわ。クラスメートでしょ?...それに、小夜でいいわ。わたしも、うてなって呼ぶから。」

「は、はぃ...さ、小夜、さん...///」

「ふふっ、さんは付くのね。じゃあ、また明日。」

「ま、また明日...。」

 

小さく手を振って水神さ...小夜さんと別れる。

いい人だったなぁ...。

小夜さんみたいな人こそ魔法少女に向いてると思う。

わたしとは違って。

...って、相変わらず後ろ向きなことは考えちゃうけど。

 

「...もうちょっとだけ、頑張ってみようかな。」

 

なれたことが幸せって気持ち、わたしにもあるみたいだから。

 

「よし...!」

 

元気よく境内を後にしようとした、その時。

 

パサッ。

 

「ん...?」

 

視界に一冊の本が映る。

本にしては薄く、表紙が暗くて女の人が映っていて。

なにか。とても。

す ご い かっ こ う を し て い る よ う な 。

 

『これえっちな本だあぁっっ!!!』

 

うてなに電流走る。

神社には似つかわしくない煩悩の塊がなぜこんなところにっ!?

誰が何の為にナニをしたと言うのですかっ!?

念のため中身を確認して...。

 

「い、いや...ダメダメあんなの読んじゃ...。早く帰って...。」

 

そう、わたしは魔法少女。

健全でみんながあこがれるような、魔法少女に!

 

ペラッ。

 

「しゅごい...っ!♥️」

 

こんなっ。縛られて!胸が!おっぱいが!こんなに強調されるなんてっ!!

 

「はっ...!?」

 

よく見ればまるで目印のように叡知の結晶が何冊も落ちているっ...!

これを小夜さんが見たら神聖な神社を汚されたと思って悲しむに違いないそうに決まってるそうだそうだわたしが回収しなきゃ!!

 

「小夜さんのためだからぁっ!///」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ふっふっふっ。興味津々じゃないの。あんなに本を重ねて、欲張りなんだから。」

「なんと言うか。最低だよね、君。」

 

エロ本を食い入るように読み込んでいるうてなちゃん可愛い。このスケベ。

ドSというかちょっと過剰な思春期だよねあの子。

推せる。

勿論、あのエロ本はわたしが餌として置いておいたものだ。

原作通りSM寄りのラインナップを用意した。

 

「彼女がマジアマリーノなのかい?」

「それはまあ、見ていれば分かるわ。」

 

次の瞬間、うてなちゃんを中心に魔力が爆発する。

輝きに包まれたと思えば、そこにいたのはまさに魔法少女な格好となったうてなちゃん、つまりマジアマリーノだった。

訳が分からない様子で慌てている。可愛い。

 

「魔法少女も同じ仕組みだったのね。」

「想いの力の暴走。君は、いったいどこまで知っているんだい?」

「あなたほどじゃないわ。」

 

うてなちゃんの正体をヴェナに知られるのは不本意だが、原作でもヴェナが『魔法少女の正体を知らない』とは明言されていない。

元からすべて知られている可能性もある。

というのは考え過ぎだろうか。

遅かれ早かれ、わたしのせいで三人の正体は感付かれるだろう。

なら、変に隠すのは大して意味がない、はず。

 

「というか、エロ本を中学生の君がどうやって」

「細かいことは気にしないの。じゃあ、行ってくるわね。変身(トランスマジア)。」

 

悪の装束を身に纏い、愛しのあの子の元へ。

さあ、楽しいショーの始まりよ...!

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「きゃー勝手に変身してるぅー!?」

 

な、ななななんで!?

トランスマジアって言ってないのに!

...ま、まさか。興奮、したから...?

 

「きゃー魔法少女でも18禁のほうー!!(泣)」

 

えっちな気持ちになって変身なんてっ!

そんなの、あこがれの魔法少女じゃなぁぁい!!

 

「うぅ...ごめんなさい、お母さん...わたしは、はしたない娘です...。」

「あら。正義の味方がこんなところで、なんてものを読んでいるのかしら?」

「は!?」

 

気付けば頭上に影。

わたしの真上には記憶に新しい、昨日の女幹部さんがふわふわと浮かんでいた。

 

「って見られたぁーー!?!?(泣)」

「ふふっ、見ちゃった。」

 

もうダメだおしまいだぁ...。

えっちな本を読んで興奮のあまり変身した魔法少女を目撃した悪の女幹部だなんて。

こんなのおかしいよ。絶対捕まるのわたしの方だぁ...。

 

「フッ!」

「へ!?」

 

すぐ近くの地面を水の鞭が抉る。

女幹部さんは楽しそうに鞭を振り回しながら、わたしを睨み付けた。

 

「一人とは隙を見せたわね。まずはあなたから血祭りにあげてやるわ!」

「ひっ!?」

 

先ほどまでの恥はすぐに頭から消え去り、必死に逃げることしかできないわたし。

 

「逃げるのは得意みたいね。あなたのそのステッキは飾りかしら!」

「す、ステッキ...!」

 

そうだこの魔法の杖!

マゼンタなら槍、サルファならガントレット。

ならわたしにもきっと。

わたしだけの武器が。

わたしが、魔法少女であるならば...!

 

「!?」

 

光と共にステッキが変化し、迫りくる水の鞭を弾き返す。

や、やった!これが、これがわたしの。わたしだけの武器!

光が消え、武器の全貌が明らかとなる。

剣とか、かっこいいよね...!希望します!

 

「......鞭だこれぇぇ...!?」

 

しかもさっきえっちな本で見たやつぅ...!

※危険ですのでご使用の際は優しく打ってあげてください。

って書いてあった方の長いやつだぁ!?

反応に困って女幹部さん固まってるんですけどー!?

 

「...や、やるじゃないの。目には目を、歯には歯を、というわけね。粋なことするじゃない。」

 

気を使ってくれてるぅぅ!?

ごめんなさい、ごめんなさい!!

えっちな子で本当にごめんなさい...!!

 

「うぇぇーんやっぱりわたし向いてないんだぁ~...。」

 

自棄になって鞭を振り回す。

もうダメだおしまいだぁ...(二回目)

 

パシンッ!

 

「ひゃあんっ!?///」

 

ふいに変な感触がして。

そして何か、異様に色っぽい音が聞こえた。

何だろうと思い、情けなさに濡れた目を開いてみる。

 

ポヨヨンっ

 

視界いっぱいに広がる、天国。

 

「ぁうっ...!///」

 

胸を抑えながらその場に倒れ込む女幹部さん。

これはまさか。当たった...?

 

「よくも...!///」

「ひっ!?来ないでぇっ!?」

 

運良く当たったと思われる鞭。

今度こそやられるという恐怖から、更にめちゃくちゃに振り回してしまう。

 

パシンッ!

 

「あひぃっ!?///」

 

またしても柔らかい感触と、嬌声。

そして視界にはもちろん。

 

ばいんっ!

 

「たわわ...♥️」

 

視界おっぱいの、おっぱい。

 

「あ、あなた...!ゆるさ、ないわ...!///」

 

まぐれ当たりに喜ぶこともなく、わたしの視線はただ一点に注がれている。

 

おっぱい。

ではなく、立派なおっぱいの女幹部さんだ。

 

女幹部さんは恥辱と痛みに悶え苦しみながら、なおも立ち上がろうとしている。

 

「じゅる...っ///」

 

その表情。悪でありながら、それでも不屈の精神があるような、その顔...。

 

「あなたがその気なら、こっちにも考えがあるわ!」

 

む、夢中になってる場合じゃない!

女幹部さんは近づくのは不利と悟ったのか、一度離れて氷の氷柱を大量に作り出した。

あの数は鞭じゃ捌ききれないっ!

 

「ど、どうしたら...!」

 

慌てた勢いでまたしても鞭が勝手に振るわれ、神社に飾ってあった"狛犬の面"に偶然触れた。

 

「なっ...!?」

「これは...!」

 

変身した時に似た光を放つお面。

それは形を変化させ、小さな"犬"の形へ変化する。

 

「わん!」

「わんわん!」

「わんわんわん!」

 

三個のお面はそれぞれ三匹の犬へと変化する。

そうか!これがこの鞭の!わたしの能力!

 

「物を動物に変えただと!?」

「やったぁ魔法少女っぽいぃ!!(泣)」

 

ビジュアルも何だか可愛いし、これは大分魔法少女ポイント高めっ!

 

「み、みんなお願い!」

「「「わーん!」」」

 

勇敢にも三匹の犬は、わたしの合図で一斉に飛びかかっていく。

 

「子犬風情で何がっ...」

「わーん!」

「...かわいいかよぉ♥️」

 

子犬の可愛いさに隙を見せた女幹部さん。

そのまま氷柱を飛ばすこともせず、一匹目に顔、二匹目に胸(!)、三匹目に股間(!?)を抑えられ倒れ伏す。

 

「や、やめっ!?そこはっ!ぁっ!だ、だめ!ひゃっ!?はげしっ!んもごぉ...♥️///」

「ビジュアルのわりにやることがえげつないぃ!!」

 

ぎゃー!!女幹部さんの体が水揚げされた魚のようにビクビクしてるぅ!!

こんなの小さな子どもに見せたら何か決定的なものが歪んでしまうぅぅ!!

 

そこからおよそ30分間。

子犬が元のお面に戻るまで。

ビチビチというか、ビクンビクン跳ね続ける女幹部さんを眺めることになった。

うわぁ。すっごいえっち。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ハァ...ハァ...っ///」

「あ、あの。...大丈夫ですか?」

「あなたがやったんでしょう!?///」

 

ですよねー。

女幹部さん、まだ腰が抜けたままみたいだし。

 

「きょ、今日はこのくらいにしませんか?このままだと一方的に...。」

「なにを、言っているの...。」

「え...?」

 

女幹部さんはわたしを更に強く睨み付け、フラフラの足に無理矢理力を入れ立ち上がる。

どう見ても戦える状態じゃない。

それなのに。

 

「わたしは、負けない...。目的を達成するまでは...絶対に、負けられないのっ...!!」

 

こっちを真っ直ぐ睨みながら、ふらつく足でゆっくりとわたしに近づいてくる。

 

「絶対に、諦めないんだからっ...!!」

「っ...!///」

 

やがてわたしの目の前に。

目と鼻の先に、その瞳がやってくる。

悪役にはあまりに不釣り合いな、熱く光輝くその瞳。

わたしのよく知る、"あこがれた"姿と同じ輝き。

 

「......ふふっ...」

 

バシィンっ!!

 

「きゃあぁぁ...っっ!!」

「ふふっ...うふふ...!」

 

今度はよく見て。狙って鞭を振るう。

力なく倒れるその体。

傷ついた、その柔肌。

 

「ぐっ...!」

「ふふふっ...あはは...!」

 

なのに。その目はなに。なんなの、その輝きは。

どうして消えないの、どうして立ち上がれるの?

諦めたくないから?譲れない目標があるから?

悪役のくせに、悪の組織のくせに。

ねぇ。

なんでなんでなんでなんでなんでなんで?

なんでそんなにキレイなの?

なんでこんなに魅力的なの?

キレイキレイキレイキレイキレイキレイキレイキレイキレイキレイ!!!

こんなのっ...!!

 

『推せるっ...!♥️』

 

体が勝手に鞭を振るう。

この、『悪の女幹部の姿をした何か』を試すように、愛でるように...っ!

 

「もっと!もっと見せてっ!!その顔を...っ!///♥️」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ぁ...ぎ...///」

「ハァ...!ハァ...!///」

 

気付けば日は沈み、目の前には衣装をほぼほぼ散らせた悪の女幹部さんの姿。

力が抜けて手から鞭が離れる。

 

わたしは、いったい...。

 

「げん、かい...みたいね...!」

「っ!?」

 

見るからにボロボロ。

それなのになお、彼女は立ち上がる。

...嬉しい。恐怖じゃない。

わたしは今、確かに喜びを感じてる!

 

「!...お仲間が来た、ようね...。」

「え?」

 

意識を彼女から離すと、確かに暖かみを感じる"何か"が迫っているのが分かった。

 

「この借りは、必ず返すわ...マジア、マリーノ...!」

「ま、待って...!」

 

闇に溶けるように消えていく彼女。

どうしても聞かないといけない。

わたしはそれほど彼女に夢中になっていた。

 

「聞かせて!あなたの名前を...!」

「......アズール。」

「アズール...?」

「ルシファ、アズール。堕落の紺碧。魔法少女を。『あなた』を、闇に堕とす者...。」

 

そう言って、彼女は今度こそ闇に消えた。

 

「ルシファアズール...。」

 

ちょっと、言いにくい名前だなって。

無意識に頬を染めながら、わたしは呟くのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「か、体中がヒリヒリすりゅ...!」

「治癒魔法が使えてよかったね。まあ、それくらいの魔法じゃ治しきれないと思うけど。」

 

シャワーのお湯が針の雨みたいだった。

体中鞭で叩かれてボロボロ。

魔法がなければ刺激で死んでいたと思う。

 

「ルシファアズール。" ルシファー"から取ったのかい?

なかなかのネーミングセンスだね。」

「うるさいわね。怪人サド女よりマシでしょ?」

「よく分かったね。超能力かな?」

「科学と魔術を交差させるのは止めなさい。関係ない物語が始まってしまうわ。」

 

これでも真面目に考えたんだから。

カッコいいじゃない、堕天使...。

 

「あれがマジアマリーノ。柊うてなの本性というわけだね。」

「...ええ、そうよ。素敵でしょう?」

 

わたしをいたぶるあの姿。あの喜び様。

間違いなく"マジアベーゼ"その人。

今日のことで、確かにその芽を植え付けることに成功した。

 

「後は水を与え続けるだけ。」

「なかなかの策士、いや役者と言うべきか。どこまでが演技だったんだい?」

「秘密よ。わたしの中身まであなたに理解されては困るもの。」

「つれないね。ボクは更に君を知りたくなったのに。」

「わたしもあなたを知りたいわヴェナ。教えてはくれないのだろうけど。」

「知りたいなら教えるよ。ボクの故郷では種族の迫害が」

「嘘乙。」

 

ヴェナが興味を持ったのは本当にわたしか。

それともうてなちゃんか。

引き続き警戒は必要だ。

 

「そうだ。明日、放課後に付き合ってもらってもいいかな?」

「いいわよ。どこに行くのかしら?」

「エノルミータの本拠地さ。会わせたい人もいるからね。」

 

物語は始まってしまった。

歪みを生みつつも、時計の針はその歩みを止めることはしない。

嬉しいね、楽しいね。

色々なものを巻き込んで、もっともっと。

 

「気持ちよくなろうね、ベーゼさま...♥️」

 

――――――――――――――――――――――――――

◼️□next episode◼️□

 

「見た目だけの情けないコーハイはさぁ。」

 

「キウィちゃんことこのレオパルトが、指導してしつけて、根性叩き直してやんよ~。」

 

 




Q.これ主人公の方がマジヤベーゼなのでは?
A.そうだよ()

Q.うてなちゃんはこんなチョロくない!
A.キウィちゃんのレス乙

うてなちゃんは恥ずかしがり屋なだけで、別にアズールや小夜に惚れたりはしていません。
あくまでも趣味の範囲内です。
安心してください、正常ですよ!(まだ)
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