魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

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皆さんお久しぶりです(一週間)。
今回からついに完全オリジナルキャラが登場する完全オリジナルストーリーがスタートしてしまいます。
所詮二次創作。
あくまでも原作が更新されるまでの暇潰しだと思って読んでやってください。
それでは、第三部『正義の魔法少女(マジア・ジュスティーツァ)編』始まります。


正義の魔法少女(マジア・ジュスティーツァ)
第32話『最強の魔法少女』


人工の鳥たちが飛び交う巨大な巣。

名前の通り陽射し照り立つ地、"日ノ本"の第一印象となるこの『国際空港』は、今日に限り特別な賑わいに包まれていた。

空港内は報道機関に記者、そして偶々居合わせた野次馬でごった返し。

少しでも早く、その"元凶"を一目見ようと我先に足を急がせる。

青空の下、急遽設置された会見ステージ。

目映いフラッシュの中、ついに目的の人物たちが表れた。

途端に、怒声にも似た歓声と記者たちの質問の嵐が巻き起こる。

 

『Hello!My favorite Japanese!』

 

「キャー!!オールよぉ!!」

「オールこっち見てぇ!!」

「私も愛してるわぁー!!」

 

オーディエンスに向かってにこやかに挨拶する少女。

太陽に煌めく美しい金髪を二つ縛りにし、サングラス越しでも分かる澄んだ碧眼を真っ直ぐに日本のファンたちに向けている。

外国人らしいまさにダイナマイトなボディを短めジャケット、タンクトップ、ミニスカートに包み。

指ぬきグローブを付けた手を振りながら、屈託のない笑顔を浮かべている。

衣装の"金"色と合わせて、まさに黄金の輝きだ。

 

「突然の来日ですが、これはあなた方が主演する新作映画の撮影の為ということでよろしいのでしょうか!」

『それはついでだっての。』

 

感じのいい"オール"と呼ばれた少女とは反対に、面倒そうに記者の質問に答える銀髪の少女。興味なさげに肩にかからない程度のボブヘアーを掻き上げ、目線を合わせるどころか記者たちを見下しているように見える。

服装はオールと同じで、違いは色合いが金ではなく"銀"基調であるだけ。

まあ、オールと比べると一部分が少々慎ましいので、そこが違うと言えば違う。

 

「ついで、と申しますと...?」

『ついではついでよ。観光とか、色々したいことがあるに決まってるじゃない。全部言う必要がどこにあるのよ。』

 

記者の遠慮がちな質問をピシャリとはね除ける一番幼い少女。

生意気そうな吊目で記者を睨みながら、長くウェーブがかったオレンジにも見える鮮やかな茶髪を揺らしている。

こちらもやはり、衣装については他二名と同じ。

パーソナルカラーは"銅"色のようだ。

成長期ということで、スタイルについては言及しないでおく。

 

『アルジェント、カルコス!ニホンのフレンドに失礼デース!ちゃんと敬語を使ってくだサーイ!』

『そのわざとらしいのは敬語って言わないから。』

『Oh!これはニホンのAnime CultureへのRespectデスよ!』

『キュートだから、ワタシは好きだよ。』

『Thanks!』

 

カタコトな日本語で二人の態度を注意するオール。

嫌味を返す銀色のアルジェントと、好意を示す銅色のカルコス。

マイペースな三人の様子にファンはともかく、記者たちは困惑気味だ。

 

『Sorry。質問を続けてくだサーイ!』

「あ、ありがとうございます。それでは、来日した一番の目的をお伺いできますか?」

『OK!モクテキ、目的デスね~...?』

 

再開した質問に悩む金色の少女。

やがてにこやかな表情を一変させ、可憐な顔には似つかわしくない覇気を纏う。

 

『"Justice"。正義を成す為デース。』

 

その好戦的な笑みは、決して目の前のオーディエンスに向けられたモノではない。

灼熱の太陽にも等しい"正義"がその輝きを増すのは、一重に消し去るべき"影"があることを知っているから。

 

「楽しみデスね、()()()()()()...。」

 

かくして、歪な歯車は再び回転を始める。

これは"正義"を問う物語。

今、彼女の"あこがれ"が試される。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

一月振りの中学校。

節電という名目なのだろうが、未だに夏真っ盛りな気温なのに"朝だから"と冷房すら付けてくれない。

やはりギリギリに来るべきだったか。

世界征服の暁には学校でもクーラーガンガン政策を押し進め、地球規模の悪となってくれよう。

そんなよく分からない決意をしつつ、学生らしく下敷きでパタパタと風を送ってみる。

うーん...。すごく、ぬるい。

だけどやらないよりはマシだ。

もうブラジャーが暑苦し過ぎて、夏ばかりは薫子が非常に羨ましい。

人も少ないし、今ならはしたなくても多少は許されるはず。

制服を引っ張って、少しでも谷間に風を...。

 

「おはよう小夜ちゃ...っ」

「あ。...おはよう、うてな。」

 

ちょうどはだけさせたタイミングで、偶然登校してきたうてなに朝の挨拶をされる。

アングル的にはかなりキレイに谷間が見えているだろう。

視線を合わせるのが苦手なのは知ってるけど、完全におっぱいガン見である。

 

「今日もたわわ...じゃなくて暑いねっ///」

「ええ。相変わらず思春期真っ盛りみたいで安心したわ。」

「おっは~さよちゃんうてなちゃ~ん...。ダルいから帰っていい~...?」

「おはようキウィ。」

「キウィちゃんおはよう。来たばっかりだよね...?」

 

気怠げにやって来たキウィに早速のラッキースケベは流され、自然にそれぞれの席へと着く。

運が良いことに、ちょうど私の右隣とその後ろが二人の席だ。

暑い暑いとうわ言のように良いながら机に突っ伏すキウィ。

私と同じように下敷きを取り出し、ガバッと胸元へ向け扇ぎ出す。

いや、私はあんなに大胆じゃないけど。

 

「夏休み短すぎ~...義務キョーイクまじブラック~...。」

「文句を言っても時間は巻き戻らないわ。気持ちはよく分かるけれど。」

 

慌ただしく過ぎ去った夏休みを思い返すが、今は楽しい思い出より朝寝坊出来ない現実の辛さが胸に突き刺さる。

考えるのはしばらくよそう。

ところで、いったいいつになったら冷房は出勤してくるのだろう?

 

「ねぇ。やっぱり今すぐ冷房点けてもらえるよう直談判を」

「...。」

「うてな?」

 

現代人らしくスマホ画面に釘付けのうてな。

仲良くなる前によく眺めていた光景だ。

 

「そんなに楽しそうにして、何を見ているのかしら?」

「え?あ...ごめんね、気付かなくて。

えっと、これは...。」

 

慌てて画面をこちらに向けてくる。

そこには、

『ジャスティスティール突然の来日!』

と大見出し記事が表示されていた。

 

「ジャスティ、スティール...?」

「え!?小夜ちゃん"ジャスティスティール"を知らないの!?」

「し、知らないとまずいことなの?」

「当たり前だよっ!世界最強の魔法少女チームなんだからっ!!」

 

うわぁ。

久しぶりに見たな、熱弁モードのうてなちゃん。

魔法少女オタク特有の早口解説が始まる予感。

というか、世界最強?

この世界は外国にも魔法少女がいるわけ?

アニメや漫画ならテコ入れを疑う初耳要素である。

 

「すてすて~?...あぁー。そいえばなんかバズってたわ。外人だからってバエやがってよ~...。」

「世界的人気を誇るアメリカの魔法少女チーム!今まで悪の組織を10はくだらない数打倒してきた絶対正義っ!ジャスティスティールだよ!!」

「知らないわよ。私鎖国主義だし...。」

 

外国とか恐いし。

大体、よく私とキウィの前で悪の組織を10個潰してるとか言えるな。

縁起が悪すぎる。

アメリカとか言われると、もう完全に頭の中のイメージがアベ◯ジャーズである。

あれと戦うのは流石に遠慮したい...。

 

「小夜ちゃんうてなちゃんキウィちゃんおはよ~!」

「...おはようさん。」

「はるか、薫子。おはよう。

ちょっと助けて欲しいのだけど。」

 

いいタイミングでジャパニーズマジックガールたちのご登場である。

二人を巻き込んでうてなの説教、もとい布教を分散させてしまおう。

 

「二人はジャスティスティール知ってるよね!?」

「あいすてぃー...?」

「なんでみんなスティスティに反応するの!?大事なのはそこじゃないのに!?」

 

相変わらず独特の聞き取り方をするはるかに怒るうてな。

日本人にはちょっと言いにくい名前なのは確かだ。

溜め息を吐きつつ、スマホの画面を操作する。

ついに解説が始まるみたいだ。

 

「ジャスティスティールはアメリカを拠点に活躍する魔法少女チームで、メンバーはマジアオール、マジアアルジェント、マジアカルコスの三人。」

「なんだ、三人しかいないのね。」

「トレスマジアみたいだねぇ。」

 

アメリカでチームだとか言うから、もっとレパートリーに富んだメンバーが大量にいるのかと思っていた。

お金持ちの天才発明家とか、超人兵士、神様に緑の巨人とか。

見せられたのは日本よりちょっと活発寄りの衣装を着た、美人な女の子たちの写真だった。

 

「この金髪の子が、リーダーの『マジアオール』。最初は彼女だけで戦っていて、その頃から"世界最強の魔法少女"って言われてるの。あらゆる武器を使いこなして戦うんだよ?」

「世界最強...。」

「美人で強いなんてすごいよねぇ。」

 

とにかくめちゃくちゃ強いということらしい。

ついでにスタイルも世界最強レベルのようだ。

外国人特有の金髪をツインテールにした姿は、まるでアニメからそのまま飛び出して来たかのよう。

金髪被りでただでさえ気まずそうな薫子が不憫に思える。

()()と言うには大分成熟している感があるが、ベテラン故にそこは仕方ない。

外人さんだし、日本人より大人びて見えるのかもしれない。

 

「この銀髪さんは?」

「『マジアアルジェント』だよ。魔法少女らしく色々な属性の魔法が使えて、やっぱりすごく強いんだって。」

 

オールと違って、年齢的には私たちと同じくらいに見える。

属性魔法のエキスパート。

水や氷も操れるのなら立派なキャラ被りである。

ちょっと度し難い。

誰だ上位互換とか言ったの。

スタイルはいいけど胸は控えめ。

一瞬嬉しそうな顔をした薫子が可愛い。

 

「ちっこいのもいんじゃん。」

「最年少の『マジアカルコス』。機械を操る能力があって、相棒のロボット犬と一緒に戦うの。」

 

今度はこりすと同じくらいの年かな。

上品な髪型に反して非常に生意気そうな目をしている。

能力も操作系で、ロボな相棒までいるとは。

こっちもまたうちと被っている気がする。

エノルミータとしてはあまり関わりたくない相手みたいだ。

 

「そんな三人が日本に来たってニュースが出てて。映画撮影が目的だって言われてるけど、実際にどこへ向かったかは分からないんだ。だから、もしかしたら会えたりしないかなって...。」

「なるほどね。」

「映画撮影かぁ。流石アメリカ!って感じだねぇ。」

 

もしかしたら魔法少女として共演できるかもしれない。

そんな期待をしてしまって、昨日からソワソワしっぱなしというわけだ。

本当に筋金入りの魔法少女好きなんだから。

 

「世界で一番すごい魔法少女...。

会ってみたいね!薫子ちゃん!」

「...まぁ、せやな。」

「薫子ちゃん?」

 

所々表情で反応は示していたものの、一言も会話に入らなかった薫子。

はるかの呼び掛けにも気のない返事を返すだけで、どこか上の空に見える。

そんなに夏休みが終わったことがショックなんだろうか。

 

「...あ!そういえば小夜ちゃん!お誕生日おm」

「あ"ー!?はるかっぴすてーい!!」

「むもがっ!?」

 

何かを言おうと私に向き直ったはるかを、すごい勢いでキウィが取り押さえる。

おお、すごい。

見事なヘッドロックだ。

 

「ぐ、ぐるじっ...!?」

「たんじょーびのことは放課後まで秘密だって作戦練ったじゃんか...!」

「ご、ごめ...うげっ...」

 

がくりとダウンするはるか。

必死なのは分かるが朝から保健室送りはまずい。それに隠そうとしているところ悪いが、自分の"誕生日"がいつかなんて覚えているに決まってる。

私は鈍感系主人公ではない。

今日は9月1日。

私、()()()()()()()()だ。

 

「そんなに焦ってどうしたの?」

「え"!?い、いやぁ~...ちょっとプロレスの練習、的な...?」

「ふーん?誕生日だなんだって聞こえた気がするけど?」

「か、かか勘違いだって~!ね!?うてなちゃん!?」

「えへへ...このグッズも再販するんだ...。」

「うてなちゃん!?」

 

憂鬱な夏休み明け初日だったが、放課後はなかなか楽しく過ごせそうだ。

どんなサプライズが待っているのか、彼女たちのお手並み拝見といこう。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「なぁ。本当にこんなに買う必要あんのかよ?」

「しょーがないでしょ?あのバカ、小夜のこととなるとすぐ無茶苦茶するんだから。言う通りにしないと真珠たちがとばっちりよ。」

 

文句を言いながら重そうな荷物を運ぶ4人。

真珠にネモ、こりすにロボ子。

お馴染みのエノルミータの面々である。

 

彼女たちがこの残暑厳しい中、ちょっとした肉体労働に勤しんでいるのには訳がある。

彼女たちの友人兼上司である小夜の、"サプライズバースデーパーティー"の為だ。

本当なら今日は始業式のみで、午後は過ぎ去った夏休みに思いを馳せながら惰眠を貪りたかった。

しかし、彼女たちの上司(その2)が許さなかった。

自分と他の友人は小夜を学校に止め置いておくから、その間に会場設営と買い出しを済ませろ。

それが、彼女たちに命じられたミッションだった。

ちなみに会場はキウィの家である。

 

面倒なところを全部押し付けられた感があり、正直言いたいことはある。

だが、彼女たちも一応年頃の女子学生。

パーティーは嫌いじゃないし、友人の誕生日を祝うこと自体には賛成だった。

 

そんなわけで。

ぶつくさ文句を垂れ流しながらも、最初のミッションで買い出しを遂行中なのだった。

 

「こりすちゃん。重くないのだわ?」

「コクリ。」

 

ランドセルを背負いながら、いつものぬいぐるみ代わりに袋を抱き抱えるこりす。

真珠たちとは違い、その表情は晴れやかに見える。

今回のパーティーはこりすにとって、日頃の感謝を伝える貴重な機会。

この日の為に()()()()()()()()も用意してきた。

今から小夜の喜ぶ顔が楽しみで仕方ないのである。

 

「コンビニで済ませようとしたら店長に怒られるしよー...。」

「店長じゃなくてみち子さんでしょ?

あの人、小夜とは別方向にオカンよね...。」

 

実はまず近場で済まそうと杜乃家近くの店、即ちみち子の勤めるコンビニを訪れたのだが。

何も考えずにカゴに商品を投げ込む姿を捉えられ、『買い出しなら業務スーパーかドラッグストアが基本だろうが!!』とバイト魔王こと田中みち子が一喝。

ついでにエコバッグを持っていないことまで咎められ、遥々徒歩30分程離れたスーパーまで行って来たのだった。

ちなみに、エコバッグは予備を貸してくれた。

なかなか世話焼きな魔王さまである。

 

「代金はキウィに貰ってるからいいけど、流石にちょっと重いわね...。」

「真珠ちゃん。私が持つのだわ。」

「ただでさえたくさん持ってるでしょうに。あんたにばっか使いっパシリさせるわけいかないの。」

「真珠ちゃん、優しいのだわ。」

「優しいヤツには優しいってだけよ。」

 

ロボ子のパワーであれば荷運びなんて楽勝なのだが、一人だけ曲芸レベルな持ち方をすれば嫌でも目立ってしまう。

一応認識阻害はかけているものの、会話が出来る人間みたいなロボットなんてそれだけで十分異質だ。

通報されてしまう可能性もある。

せっかくの日焼け止め対策に見せてコーディネートした私服の隠蔽工作が、一瞬で水の泡になるのだけは勘弁したい。

それがエノルミータ内での共通認識であった。

真珠としては、ただ単に友だちとして対等に接したいというのが本音ではあるのだが。

 

「...やっぱり、変身して一気に持っていかねぇか?」

「だからダメっつってんでしょ。そんなことしてトレスマジアが来ちゃったらどうすんのよ?」

 

裏技ではあるが、変身して飛び立ってしまえばこんな苦行は一瞬で終わらせられる。

そんな案は買い出し前から出ていたが、彼女たちの魔力に反応して、宿敵の魔法少女たちが律儀に駆け付けてくるリスクがある。

今日は悪事を働く気がないと言っても、普段のやり取りから分かるように戦闘は避けられないだろう。

 

「パッと行ってパッと戻れば大丈夫だって。今なら誰もいないしさ。真珠もダルいと思ってんだろ?」

「それはまあ...アイドルに相応しくない扱いだとは思うわよ?」

 

本来こういう時にわがままを言うのは真珠の役割なのだが、今日は年少のこりすたちを意識してか珍しく我慢をしていた。

結局は相方のネモが言い出す形になり、元からあった本音が段々隠せなくなっていく。

 

「な?飛ばせば楽勝だって。」

「でも...こりすはどう思う?こりすがどうしてもって言うなら、真珠も考えてあげなくもないけど?」

「逆に情けねぇぞ真珠。」

「うっさいわね!?我慢してるのにアンタがごねるからでしょうが!?」

 

最終的に唯一わがままを言っても許されるこりすに丸投げしようとする真珠。

そんなしょうもない見栄を張るお姉ちゃんにジト目を返しながら、空気を読んでしまうこりすちゃん9歳。

 

「コクリ。」

「Goサインなのだわ。」

「んじゃ、決まりだな。」

「しょーがないわねぇ。アイツらに捕まる前に帰るわよ!」

 

『『『変身(トランスマジア)。』』』

 

こりすの賛同を得て、直ぐ様エノルミータとしての姿に変身する面々。

荷物を楽々と担ぎ上げ、悠々と空へ舞い上がる。

 

「やっぱ快適だな!」

「これなら5分もしないで着くわよ!」

 

ハイスピードで雲を切るエノルミータ。

一気に楽になった上に、風を感じて暑さまで緩和された。

解放感に表情を綻ばせる四人だったが、この時ばかりは()()()()()()()

 

「Excuse me!」

「あン...?」

「なによ、アンタたち...?」

 

彼女たちの道を遮るように、三つの影が立ち塞がる。

宙に浮かぶ見慣れない人物たちに警戒を強めるロコルべ。

件の人物たちは不敵に笑ったまま、ロコたちを順番に指差す。

 

「二人足りないみたいだけど?」

「構いまセン。待っていれば出てきマース。」

「ちょっと!誰だって聞いてんの!ロコたち今は忙しいんだから!」

「新しい魔法少女か何かか?わりぃけど戦いとかは今する気ねぇんだ。」

 

マイペースに話し合う金と銀の少女たち。

ロコルベは最近トレスマジアとシオちゃんズとしか戦っていないからか、得体の知れない相手にも関わらず、緊張感に欠けた対応をしてしまう。

それがいけなかった。

 

「まず一人。」

「は...?」

 

隣にいたはずのロボ子が消え、轟音と共に地上に土煙が舞う。

わけが分からないままに、ルベルは目の前に迫る鋼鉄の牙を目撃する。

 

「これで、二人目。」

「ルベルっ!?」

 

突然現れた茶髪の少女。

ルベルを弾のように蹴り飛ばし、一瞬にして戦闘不能に追い込んでしまう。

残されたロコとアリスは相方を傷つけられた事実に遅れて気付き、漸く怒りの感情を露にする。

 

「何なのよ...何だってのよアンタたち...!」

「正義デスよ。エノルミータ。」

 

和やかな空気は消え去り。

蹂躙が始まった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「おっせーなぁ~アイツら...。」

「何を待っているの?」

「べべ別にぃ!?何も待ってないけどぉ!?」

 

なら何でいつまでも放課後の学校にみんなで残っているんだか。

今日は始業式がメインの日だから、午後は授業がない。

普通ならみんなで街に遊びに行くとか、でなければ家でしばらく出来ないお昼寝を楽しむとか。

色々出来てしまう貴重な時間を嫌いな学校で過ごすなんて、まずキウィがするわけがない。

 

「小夜ちゃん!みんなで椅子取りゲームとかどうかなぁ?!」

「5人で?」

「最強決定戦だよ...!」

「不戦敗で結構。」

 

はるかまでグルということは、いつものメンバーは全員関わってると見ていい。

キウィたちが足止めしている間に、真珠たちがパーティーの準備中といったところか。

 

「そろそろ帰ろうかしら~?」

「ま、待って小夜ちゃん!まだちゃんとJ.S.Tの説明が終わってないから...!?」

「え。」

 

説明、まだあるの?

朝からずっと語り続けていたのに未だ話題が尽きないと申すか。

冗談で言ったつもりなのに本当に逃げたくなってきた。

もういい加減ジャスティスティールの名前は聞きたくない。

J.S.Tなんて省略があるならもっと早く使って欲しい。

今日一日で私はすっかりスティスティ恐怖症だ。

 

「トレスマジアが一推しなんじゃないの?ハリウッドスターに随分とお熱じゃない。」

「え!?そ、それは何というか...私が愛しているのは魔法少女という概念そのものであって特定の一つだけを贔屓にするような気はないというかその」

「浮気者。」

「はぐぅっ!?」

 

うてなの箱推し主義が内包する原罪を突いてダウンさせてやった。

前にも言ったが、私は原作キウィほど出来た女ではない。

トレスマジアはともかく、会ったこともない女に現を抜かすのは許さないんだから。

私は嫉妬深い悪役なのだ。

 

「...今日はあんまり話さないのね。どうしたの?」

「...別に。ほっといてんか。」

 

今朝から様子のおかしい薫子に話しかけてみるが、すげなくそっぽを向かれてしまった。

恐らく時期的にはとっくにはるかにラブ注入なはずなのに、そんな想い人からの声掛けにすら生返事を返すだけ。

夏祭りの時は普通だったし、昨日辺り何かシリアスなイベントでも起こったのかな?

 

「せっかくの祝いの日にしけたツラしてんじゃねーぞひんにゅー。」

「...帰る。」

「あ?てめぇ段取り決めたろーが。急に逃げるなんて許さ」

「気分やないんよ。すまんな...。」

 

キウィが止めるのも聞かず、教室を不機嫌そうに出ていく薫子。

今のやり取りだけで怒ってしまったわけではなさそうだが。

 

「薫子ちゃーん!?ま、待ってぇ!?」

 

はるかが慌てて後を追い掛ける。

せっかくのパーティーなら薫子も一緒がいいが、無理にとは言わない。

とりあえず機嫌が直ってくれればと思う。

 

「これだからひんにゅーばかはよぉ...。」

「キウィちゃん...真珠ちゃんたちから連絡は...?」

「鬼電してんのにガン無視~。たく、はじめてのおつかいかよ~...。」

 

ヒソヒソと話し合う二人。

いつまでこの場で待機を続けるのだろう。

何かやることはないかと思考に耽ってみる。

 

そういえば、ロボ子の偽名を考えなくてはならない。

はるかや薫子の前で呼べば全員の正体がバレてパーティーどころじゃなくなる。

そう思って、候補を天下の大先生に聞いてみようとスマホを取り出したその時。

 

『Hello!everyone!』

 

上空にいつも私がやるみたいに、大画面のモニターが浮かび上がる。

映っているのは見知らぬ金髪少女。

いや、正確には知っている人物だ。

 

「ま、マジアオールだぁ...!?」

「んだぁ?あのぱつきんビッチ。」

「朝から1ミリも説明聞いてないのね、キウィ。」

 

噂をすれば、まさかのご本人登場である。

興奮を隠し切れないうてなとどうでも良さそうなキウィ。

何故わざわざ魔法のモニターなんて...。

あれがここから見えるということは、少なくともこの街にあのマジアオール本人がいるってことだ。

世界の大スターが、何故わざわさこの街に?

何か嫌な予感がする。

 

『ワタシたちはジャスティスティール!正義の魔法少女チームデース!エノルミータ、聞こえてマスカ?!』

「「!」」

「エノル、ミータ...?」

 

悪い予感というのは的中するものだ。

世界最強から、エノルミータ(私たち)の名前が出た。

キウィと二人、顔を見合わせる。

 

『アメリカからはるばるアナタたちを倒しに来マシタ!今から30分以内に駅前広場に来てくだサーイ!残りは()()()()()()()デース!』

「は...?」

 

最強からの果たし状。

問題はそんなことじゃない。

ドシャッと水っぽい音を立てて、何かがオールだけしか映っていない画面に割り込んで来る。

 

「あれ...ロコ、ちゃん...?」

 

ボロボロに切り裂かれたセーラー服のような衣装。

ズタズタになった帽子は、彼女ではなくもう一人の水色の少女に弱々しく覆い被さる。

動かない二人。

前にも、同じような光景を見たことがある。

ちゃんと覚えてないのは、たぶん。

 

「いくわよキウィ...ッ!!」

「ぶちまけさせてやるッ...!!」

「二人とも待って...!!」

 

血が昇り過ぎて、視界も何もかもが真っ赤にチカチカしていたから。

キウィと教室を飛び出し、誰かが見ているかもしれないなんて、少しも考えずに変身を遂げる。

あまりの急展開。

頭の中は、あの時と一緒。

仲間を傷つけた奴らを絶対に潰すという、真っ赤な思考だけだ。

 

「ロコ、ルベル、アリス、ロボ子...!

ちゃんと、生きてなさいよ...!!」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「しつこいチビッ子ね!」

「ん...!」

 

空中で何度も交差する4つの光。

迫り来る鋼鉄の爪を得物であるアサルトライフルで弾き返すアニメチックなロボット。

銅色の少女は思うように攻め切れない現状に八つ当たりしながら、その爪をロボを操るネロアリスへと振りかざす。

 

『Bow!!』

「躾のなっていないワンちゃんなのだわ!」

 

アリスを庇おうとするロボ子だったが、その隙を今度は鋼の牙が襲う。

狼のようなそれは全身金属で覆われ、まさに凶悪な"ロボット犬"とでも言うような様相を呈していた。

ミシミシと嫌な音を立てて腕に食らいつくそれを、もう一方の腕から放つビームで焼き焦がそうとするロボ子。

しかしそう上手くはいかず、気配を察したロボット犬に軽々と避けられてしまう。

 

「カルコス、意外に手こずってるわね。」

「日が浅いあの子には良い経験デース。」

 

かれこれ20分程、ネロアリスとマジアカルコスの戦闘は続いていた。

その間、エノルミータの残りのメンバーを誘い出したりはしたものの、マジアオールとマジアアルジェントの二人はまったく戦闘に加わっていなかった。

先に倒した水色の二人は勿論、今戦っているネロアリスとその人形も、元からカルコスだけで始末させるつもりだったからだ。

これも全て経験の為。

オールにとってはちょっとした親心のようなモノだったが、アルジェントはそれが相手への最大の侮辱になることがよく分かっていた。

所謂"なめプ"。

だからこそ、アルジェントは愉快そうにその表情を歪めているのだが。

 

「カルコス~?手伝ってあげようか~?」

「大丈夫!アルジェントはそこで見てて!アーサー!やるわよ!」

『Bow!!』

 

アルジェントからの呼び掛けに、自分が仲間たちの期待を裏切っていることに内心焦るカルコス。

ロボット犬、"アーサー"をロボ子から遠ざけ、自身もネロアリスから距離を取る。

腕に装着した近距離用のメタルネイルを銃のような形に変形させ、やって来たアーサーへと接続する。

 

「ファイアッ!!」

「...!」

「アリスちゃん!」

 

巨大な砲身と化したアーサーから、アリスたちをそのまま包める程の巨大な魔力弾が放たれる。

咄嗟に操っていたプラモデルが、更にロボ子が自らの体をアリスの盾とする。

容易く装甲を溶解させられ、崩れ去っていくアリスのプラモデル。

減衰したとはいえ、尚も強力な火力がロボ子の背中を焼き潰す。

 

「アリスちゃんは...私が...っ」

「ユサユサ...!」

 

アリスを抱き締めたまま墜落するロボ子。

必死に揺さぶるが、いつもの優しい声は聞こえては来ない。

 

「面白いおもちゃじゃない。まるで人間みたいにご主人様を守るなんて。」

「フルフル...!」

 

気分良く笑いながらアリスの元へわざわざ降りてくるカルコス。

ロボ子をおもちゃ扱いされたことに抗議を示し、アリスは普段見せないような怒りの形相で同年代と思われる少女を睨む。

 

「アンタを始末した後にこのワタシがたっぷり遊んであげる。安心してよ?ちゃんと大切にしてあげるから。」

「キッ!」

 

ロボ子を抱き上げ動くことが出来ないアリスに向かって、カルコスは先程の砲身を容赦なく突きつける。

このままではロボ子ごと撃ち抜くことになるが、そんなのは些末事。

どうせバラバラにして中身を見るのだからと、カルコスはまったく躊躇しなかった。

 

「全員一緒のとこに送ってやるわよ。感謝しなさいよね!」

 

エネルギーが満ち、再度発射の時がやって来る。

けれど決して、アリスはロボ子から離れようとしなかった。

諦めたわけではない。

ただ、信じていたからだ。

大好きなお姉ちゃんたちなら、必ず来てくれるはずだと。

 

「"ディフュージョン・シュトラール"!!」

「きゃぁっ!?」

 

雨のように降り注ぐレーザー光線が、銃口とアーサーの結合部を幾重にも撃ち抜く。

行き場を失ったエネルギーが暴発し、カルコスとアーサーを後方へ勢いよく吹き飛ばす。

近くにいたはずのアリスたちだが、こちらは巻き込まれることなく、それぞれが温かい腕に抱き抱えられていた。

 

「遅くなってごめんな、アリス。」

「ロボ子も、よくアリスを守ってくれたわ。」

 

いざという時、一番頼りになるお姉ちゃんたち。

ルシファアズールにレオパルト。

どちらも既に真化形態となっている。

安心する声と、落ち着く匂い。

自然と目を潤ませながら、アリスは安堵の笑顔を浮かべる。

そんなアリスと傷ついて反応のないロボ子を戦場から避難させ、怒髪天の様相で敵の元へと舞い戻るアズールたち。

 

「主力の登場デスね。」

「やっと来た。...まあ、雑魚二匹よりはマシってとこ?」

 

吹き飛ばされたカルコスを心配することもせず、ノコノコやって来たメインディッシュに喜悦を深めるオールとアルジェント。

余裕たっぷりにアズールたちへと近づいていく。

 

「待って!ソイツらなんてワタシだけで...!」

「十分なのは分かってマース。But、終始見ているだけじゃワタシたちもSo tiredデース!」

「そーゆうこと。味見くらいさせてもらわないとね。」

 

何事もなかったかのように戻って来たカルコスを制し、アズールたちの前に立つ二人。

その挑発的な態度はアズールたちの怒りを更に逆撫でする。

 

「ナメくさりやがってぇ...!よくもアタシの大事な妹分と舎弟をボコってくれやがったな...!!」

「ハッ。悪の組織が仲間の仇討ち気分?随分と生ぬるいヴィランね。お国柄ってやつ?」

「最強だか何だか知らないけれど、私の可愛い部下を傷つけた落とし前。きっちり払ってもらうわよ...!」

「自己紹介は不要みたいデスね?ならば、始めましょう。taskは早めにclearするに限りマース。」

 

激昂するアズールとレオを更に挑発するJ.S.T。

オールは二人を見比べて、視線をアズールの方に定める。

 

「アルジェントはあのナチスキャットを。ジャパニーズオーガはワタシがやりマース。」

「ハァ?あっちがリーダーなんでしょ?なら強い方はアタシが」

「無駄な話し合いをワタシは好まない。前にも言ったはずですよ?」

「っ...分かったわよ...。」

 

アルジェントの文句を一蹴し、にこやかな雰囲気を一変させるオール。

その実力の底知れなさに緊張しつつ、アズールたちは迷わず先手を打った。

 

「レオ!」

「ぶち抜けっ!!」

「Oh...?」

 

会話の隙を突いての氷の縛り。

オールの手足を凍らせ身動きを封じたところへ、すかさずレオパルトのビームが放たれる。

あわや直撃かと思われたが、空中に突然現れた"土の壁"に見事防がれてしまった。

 

「気を付けてよね。空中じゃ"クレスト"は遅くて脆いんだから。」

「Sorry。想定よりちょっと早かったデース。」

「仲良くお喋りしてる場合かしら!」

 

奇襲をアルジェントの魔法で防がれたのも束の間、すぐにお得意の近接戦を仕掛けるアズール。

 

「ジャパニーズサムライですね?!オニとカタナはBest much!ワタシも大好きな組み合わせデース!」

「っ!?」

 

動けない間を狙ったはずが、一瞬で氷を砕かれ自由になった両手で渾身の袈裟斬りを白刃取りされてしまう。

力を込めているはずなのに、ピクリとも動かない。

 

「アズールちゃん!?」

「よそ見するなこのナチス女っ!」

 

アズールの助太刀をしようとするレオパルトに、アルジェントが生み出した火炎の息吹きが放たれる。

咄嗟にビームをぶち当てて拮抗するものの、空中から新たに雷を生成され、無防備な身体を稲妻に射抜かれてしまう。

 

「がぁっ...!?」

「レオ!?」

「アナタの相手はワタシデース。」

 

落下していくレオパルトを助けようとするが、掴まれた刀を外すことも出来ず、ただ目の前のオールを睨むことしか出来ない。

そんなアズールを嘲笑いながら、オールは自分から抑えていた刀を離してしまう。

 

「何を...?」

「サムライにはナイトと相場は決まっていマース。今日はswordでお相手しマスね!」

「どこまでも馬鹿にしてっ...!」

 

おどけて豪奢な細工の剣を作り出し、クイクイと指で挑発するオール。

普段は冷静なアズールも完全に遊ばれていることに気付き、らしくなく声を荒げながら力任せに斬りかかっていく。

 

「クールな切れ者と聞いていましたが、これではまさにオーガ。美しさの欠片もありまセーン。」

「黙りなさいっ...!!」

 

刀を一本から二本へ。

手を休めることなく放たれる連撃も、オールには片腕だけで軽く受け流されてしまう。

次第に焦りが生まれ、攻撃は更に精細さを欠いていく。

 

「オニとカタナは好きデース。But。」

「っ!?」

 

一際強く踏み込んだ瞬間、片方の刀を手元から弾き飛ばされてしまう。

がら空きになったアズールの急所に、オールの柄当てが突き刺さる。

 

「悪党は大嫌いなのデスよ。」

「かはっ...!?」

 

蹲るアズール。

まるで差し出されたかのような首に向かって、オールは容赦なくかかと落としを繰り出す。

 

「アズールちゃぁぁん...!?」

 

そのまま地面に叩きつけられるアズール。

派手なクレーターを作り上げ、中心にボロボロの背中を晒す。

 

「くっそおぉぉぉぉっ...!!!」

 

地面に膝を突いたまま、照準をオールに定めるレオ。

ありったけの魔力を集中させ、最大出力の一撃を放つ。

 

「ジャパニーズは一騎討ちが大好きだと聞いたのデスが?」

 

迫り来る極大のビーム砲も何のその。

軽口を挟んで、余裕のままに魔力を纏わせた剣を振り下ろす。

 

「とても残念デース。」

 

レオパルトの全霊の一撃を、まさに一刀両断。

渾身の一撃もただのエネルギーに成り果て、標的を見失い明後日の空で虚しく炸裂する。

チリチリと煙を出す剣をロウソクでも吹き消すように気楽に鎮火するオール。

そんな前代未聞の強敵を、レオはただ呆然と見上げる。

 

「そん、な...っ」

「アタシを無視するな...!」

「あぐっ!?」

 

完全にオールの独壇場となっていることに苛ついているのか、アルジェントはレオの横っ腹を憂さ晴らしに強く蹴り上げる。

 

「さっきまでの威勢はどこ行ったわけ?ねぇ?...ねぇったら!」

「うぐあぁっ...!?」

 

痛みで反応を返せないレオに苛立ちを募らせ、その頭を強く踏みつける。

周囲に響き渡るレオの悲鳴に、気絶していた仲間たちの意識がかすかに戻る。

 

「レ、オ...っ」

「クソ、がぁ...っ」

「っ...。」

 

口を動かすのでやっとのロコルべに対して、フラフラとでも立ち上がるアズール。

朦朧とする意識に鞭を打ち、仇敵を見上げる。

 

「Last one。簡単なオシゴトでシタね。」

 

「ま、待ってください...!!」

 

オールが立っているだけで限界のアズールにトドメを刺そうとした時。

別方向から緊張を孕みながらも、必死な制止の声が聞こえてきた。

 

「ジャスティスティールさん...!それ以上はどうか、止めてください...っ!」

「Oh!アナタたちが本場のMagic Girls!トレスマジアデスね?!」

 

遅れてやって来たベーゼ、マゼンタ、サルファに笑顔で応対するオール。

殺気の消えた彼女に少し安心したのか、ベーゼは表情を幾分か柔らかくして会話を再開する。

 

「え、エノルミータへの攻撃を止めてくれませんか...?」

「What's?なぜデース?」

「えと...彼女たちはその、私たちの敵役というか...私たちが、倒さなきゃいけない相手で...だから、オールさんたちが戦う必要ないっていうか、その...そうだよね?サルファちゃん。」

「...。」

「サルファちゃん...?」

 

上手く説明出来ず、サルファへ助け船を求めるベーゼ。

しかし期待とは裏腹に、サルファは押し黙ったまま苦々しい表情のまま地上のレオパルトたちを見下ろすだけだった。

 

「あ、あの!エノルミータは確かに悪い子なんですけど、本当に悪いってわけでもなくて!助けてくれたり、良いことだってする子たちなんです!敵というよりライバルみたいな感じで...だから、それ以上傷つけないでもらえませんか!?」

「マゼンタちゃん...。」

「Hum...。」

 

マゼンタの訴えに考えるポーズを取るオール。

ベーゼは説得出来る可能性を感じ、期待の視線をオールへと送る。

しかし、返って来たのはただ首を横に振るだけの、"No"を突き付ける意思表示であった。

 

「悪は悪デース。必ず滅ぼさなければなりまセーン。それがJustice。魔法少女というものデース。」

「っ...!違いますっ...!魔法少女は容赦のない正義の権化なんかじゃ...!」

「なぜそこまでして彼女たちを庇うのデスか?そもそもワタシたちに依頼をして来たのは」

「僕ですよ、トレスマジアの皆さん!」

 

オールの主張に思わず反論してしまったベーゼ。

エノルミータへの肩入れを不審に思われてしまうが、その会話を遮るように更なる役者がゲートから現れる。

 

「ヴァーちゃん...?」

「お久しぶりですね、マゼンタさん!サルファさんもベーゼさんも、お元気そうで何よりです!」

 

その場には不釣り合いな程、爽やかにトレスマジアへ挨拶する白いマスコット。

ヴァーツはいつも通りの笑顔を浮かべたまま、マジアオールの隣へ移動する。

 

「な、何で...どうして、ヴァーツさんが...?」

「どうしてって、苦戦するあなた方への助っ人に決まっているじゃないですか!エノルミータは悪の組織。倒すべき敵です!これ以上勢力を拡大する前に誰かが止めなくてはなりません。それが正義というものです。」

「で、でも...!」

 

ヴァーツの言っていることは正しい。

いや、正しくない。

こんなのは違う。

私たちがのんびりしてたから?

こうなったのは、私たちのせい?

分からない、分からない。

ベーゼは焦り、言い返す冷静さすら失っていく。

このままでは絶対に取り返しの付かないことになる。

それだけは分かっているのに、どうしたらこの場を納められるのかがまったく分からない。

 

「ベーゼ。もうええ。」

「え...?いいって...何が...?」

「見ての通りや。エノルミータは、今日ここで終わる。明日からトレスマジアは不要になる。」

「......何、言って...」

 

困惑するベーゼにサルファが告げる。

今日ここで、自分たちの手ではなく。

横から入って来た世界最強に、宿敵が倒されると。

潰されるのを、ただ黙って見ていろと。

 

「さあ、オールさん!アズールを倒して、日本に正義を取り戻してください!」

「OK!さっさと済ましてニホンをEnjoyデース!」

「やめてっ...やめてぇぇっ!!」

 

ヴァーツの合図と共に、オールは剣をアズールに向けて蹴り出す。

フラつくアズールと目が合い、いつかあった別離の瞬間を思い出す。

あの時も今も、ベーゼの手は変わらず届かない。

 

「まだ終わってもらっては困りますねぇ。」

 

ズシン!という地響きと共に、剣を押し潰す大質量。

土煙に目を覆う一同。

彼女たちが次に目にしたのは、瞳に涙を湛えた巨大なシスター姿の女性だった。

 

「シスタギガント...!」

 

かつて死闘を演じた強敵の再来に驚きを隠せないサルファ。

敵が増えたにも関わらず、相変わらずオールたちは余裕を崩した様子がない。

 

「これが本場の"ウルトラマム"デスね?!」

「アメリカじゃ流行らないデザインだわ。」

「随分な荒業を使ってくれたね、ヴァーツ。」

 

元の人間サイズに戻るシスタ。

その肩に乗っていたヴァーツにそっくりなマスコットから、馴染みの人間であれば気付く程度の怒りを織り混ぜた声が響く。

 

「やはり来ましたね、ヴェナリータ。」

「お前のせいで予定が大分狂ってしまった。シスタのことは、まだアズールたちにも秘密にしたかったんだけどね。」

 

黒と白のマスコットは互いの駒を従えながら、久方ぶりの会話を交わす。

ヴァーツの声音に対し、ヴェナリータの方には明確な敵意が表れている。

それだけ彼を怒らせる事態だと言うことだ。

 

「ボクのアズールたちはやらせない。ここは退いてもらうよ、ヴァーツ。」

「劣勢なのはどう見てもエノルミータです。絶好の機会を逃すとでも?」

「戦力分析を見誤ったようだね。頼んだよ、シスタギガント。」

「仰せのままにぃ...。」

 

ヴェナリータを、そしてアズールを庇うように進み出るシスタ。

ニヤリと口元を歪めながら、()()()()を艶かしく呟く。

 

真化(ラ・ヴェリタ)...。』

 

黒い輝きに包まれ、シスターを模した衣装が変化していく。

大胆に露出した太もも、谷間。

ウィンプルで隠されていた長髪が紫に妖しく照らし出される。

腕には真っ黒な長手袋を装着し、足にはそれに対応するブーツを履き。

胸下中心にはまるで辱しめるかのように十字架のマークがあしらわれている。

そして何より目を惹くのが、その腕に握られた巨大な"鎌"。

その艶やかで忌避感を覚える姿は、まるで"死神"。

 

「シスタギガント。"巨刃凶鎌(フェイタリティ・デスシックル)"...。」

「あれが、シスタの...!」

「真化...?」

 

ある者はその力に生まれて何度目かの武者震いを感じ。

ある者は聖職者からの転身に度肝を抜かれ。

またある者はかつて手を抜かれていた事実に気付き、悔しげに歯を食いしばる。

 

「シスタ。目的はアズールたちの離脱。迅速な退避をお願いするよ。」

「分かりましたぁ...。ヴェナさんのご用命とあらばぁ~...。」

 

ヴェナの指示に従う素振りを見せるシスタ。

予想外の強敵にワクワクした顔を見せるオールたち。

両者がにらみ合い、魔力が迸る。

周囲が固唾を飲む中、ついにシスタの鎌が動き。

そして。

 

「な、ぜ...?」

 

ズブリ、と。

()()()()()()()()()巨大な鎌が後ろから真っ直ぐに貫いた。

 

「!?」

「シス、タ...どう、して...っ」

「ヴェナさんならぁ、ご存知のはずですよぉ?」

 

グリグリと傷を抉りながら、黒い何かを吐き出すヴェナにシスタは笑顔を向ける。

 

「私...嘘つきなんですぅ。」

「ごばっ...」

 

血しぶきを上げながら地面に落ち、段々と原型がなくなっていくヴェナ。

最後に残った頭を、シスタは躊躇わずぐちゃりと踏み潰す。

 

「嘘、よね...?ヴェナ...?」

 

腰が抜け、アズールはその場に座り込む。

あまりにも急で、あまりにも呆気ない最後。

こんな別れ方になるなんて、彼女は勿論誰もが予想していなかった。

 

「ご苦労様でした、シスタギガント。」

「これも正義の為ですからぁ。」

 

全ての事情を知っているかのように、シスタへ労いの言葉を送るヴァーツ。

シスタもまた、それに自然に受け答えをする。

 

「最後まで気付いていなかったなんてぇ。本当はお優しい方だったんですねぇ...。」

 

この場のほとんどが状況を理解出来ない中、シスタは黒い泥となったかつての共犯者に向けて、別れの言葉を言い放つ。

 

「私、悲しいですぅ。」

 

ぱっくりと裂けてしまったかのような。

満面の笑みを浮かべながら。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

◼️□Next episode◼️□

 

「......うてなちゃん、なの...?」




色々と無茶苦茶だね!
メダルトリオの衣装モチーフはパワパフガールズZです。
内容はよく知らないにわかです←

気になる次回は12/21(土)09:00投稿予定です。
※実験的に時間変えてみます。
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