魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

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第35話『反撃開始!留学生は突然に』

「ぁ...お、おはよぅ...薫子ちゃん...。」

「...。」

 

平時より増して遠慮がちなうてなの挨拶を、薫子は冷たい一瞥だけで返す。

事情を知っているはるか、小夜、キウィはそれぞれらしい反応を見せながら、二人のやり取りを見守っていた。

 

「薫子ちゃん、おはよう。何でうてなちゃんを無視したの...?」

「...ほっといてんか。」

 

はるかがフォローに入ろうとするが、薫子は態度を変える気はまったくないらしい。

 

二学期も始まって二週間近くが経った頃。

小夜たちのクラスは非常に暗い空気に包まれていた。

クラスメートからすると珍しいというか、いったいどんな喧嘩をすればあんな険悪になるのだろうというレベル。

二学期は学園イベントがいっぱいなのに、クラスの中心である彼女たちがこんな雰囲気では教室全体が気まずくてしょうがない。

誰か試しに一発ギャグでも飛ばして犠牲になってくれないかと、仁義なき背中の押し合いを水面下で始めている程だ。

 

「おいひんにゅー。うてなちゃん無視するとか、おめーナニサマだぁ?」

「...。」

 

沈黙の中、キウィが薫子の机を勢いよく叩く。

いきなりのバンッ!という衝撃音にクラスの半数近くが飛び上がる中、当の薫子は驚いた様子もなく、ただキウィを睨み付けている。

それだけなら割りといつもの風景に近いのだが、派手な割にキウィの声は低く圧力があり、どことなくマジなオーラに溢れているように感じられた。

 

「答えろよ、ひんにゅー。」

「...あんたに関係あらへんやろ。のけ、アホが。」

「んだと...!?」

「や、やめてキウィちゃん...!?」

 

掴みかかろうとするキウィをうてなが羽交い締めにして、何とか殴り合いになるのを防ぐ。はるかはそれを見て未だに顔色一つ変えない薫子を悲しそうな、それでいて険しい表情で見つめる。

 

「何で止めんのうてなちゃん~!コイツひでぇじゃんか~!!」

「キウィ、そこまでにしておきなさい。事情は分からないけれど、これは二人の問題よ。彼女の言う通り、放っておきましょう。」

「さよちゃんまで~...。」

 

未だ暴れるキウィを小夜が宥め、一触即発の空気は何とか鎮静化した。

 

朝から繰り広げられる、別の意味で手に汗を握るやり取り。

クラスの全員がもう帰りたくてたまらなかった。

中学生にして"気疲れ"というものを学んでしまった。

誰でもいい、この空気をぶち壊す何かが来て欲しい。

誰もがそう思った時、始業のチャイムという福音が教室に鳴り響く。

 

「よーし全員ちゅうもーく。ホームルーム始めるからはよ席着けよー?」

 

チャイムと同時に登場した担任教師に、今日は心底感謝する生徒たち。

小夜たちもまたモヤモヤを抱えながらも、一旦は矛を収めて自席へと戻った。

 

「喜べみんな。この平凡な学校には100年に一度あるかないかの奇跡的なイベントが起こったぞー。」

「せんせー!この学校まだ30年しか歴史がありませーん!」

「100年後には潰れてるとおもいまーす。」

「先生は野暮なツッコミが嫌いでーす。教師にもたまにはテキトーなことを言わせてくださーい。ハラスメントですよー。」

 

いつも通りの絶妙にやる気のない声で生徒の野次を捌く先生。

そんな何でもないやり取りが今日は癒しになったりするのだが、そうなるとやはり気になるのが先生の言う"奇跡的イベント"の中身。

全員が野次を止めて、その一大ニュースに注目する。

 

「なんと、このクラスに()()()が来ます。」

 

『留学生、だと...!?』

 

異口同音。

クラス一丸となってまったく同じリアクション。

この、転校生ですら珍しい平々凡々な中学校に外国から留学生が来たらしい。

これは確かに100年モノの一大事。

問題なのはどこの国出身かと言うこと。

アジア圏だとどうも新鮮味がないというか、出来れば分かりやすく"THE 留学生"な出身がベスト。

ついでにめちゃ美人希望。

事情はともかく、やっぱり容姿が一番気になるのがお年頃女子のサガなのである。

 

「しかもアメリカ出身。超美人。」

『チョービジン...!?』

 

何人か"チョウビなんて国あったかな?"と謎の天然ボケを炸裂させているがそんなことはどうでもいい。

否応にも期待が高まる中、先生の呼び掛けを待たず教室の扉をガラッと開く音がする。

 

「あっ。もっと勿体ぶりたかったのに。」

「No thanks。いつまでも立たせたままで待たせないで。」

 

流暢な英語、この場合は日本語もと付け加えるべきだろう。

高圧的に先生に文句を言う少女の髪は、美しい銀髪。

面倒そうにショートボブの髪を掻き上げると、緑の色合いくっきりな瞳がより輝いて見える。

その容姿の端麗さが、大多数の生徒の目を釘付けにし思考を放棄させた。

 

「というわけで、彼女が今日からクラスメートになる留学生。出身はアメリカ、見ての通り日本語は完璧。みんなよろしくして」

「シャノン・ハートフィールド。よろしくしなくていいわ。」

 

シャノンと名乗った留学生はクラスに"仲良くするつもりはない"と言い放ち、場を騒然とさせる。

また濃い奴が増えたな...とか。

シャノン様素敵!とか。

困惑と歓迎でクラスが二分される中、先生は調子を崩さず淡々と話を進める。

 

「ご家庭の都合でしばらく日本に滞在するそうだ。文化祭とか修学旅行もあるし、みんなは仲良くするつもりでいてくれー。じゃ、席は水神の隣な?」

「はい?」

 

実は色々な悩み事で話を8割方聞いてなかった小夜。

唐突に名前を呼ばれたかと思えば、気付いた時には美人なアメリカンガールが隣にやって来ていた。

 

「あ、えっと...よろしくお願いしますね。」

「......よろしく。」

 

とりあえずの挨拶が返って来たことにホッとしつつ、こんなとこに空席なんかあったのかと微妙にずれたことを考える小夜。

他の生徒は"よろしくするつもりはないんじゃなかったのか?もしかして差別か?"と若干妬みにも似た感情を向けているのに。

 

「よし、イベント終わり。授業始めるぞー。抜き打ちテストからなー。」

『サプライズだらけ!?』

 

また別方向に空気が悪くなる前に、粛々とホームルームを終わらせ授業へと移っていく。

様々な不安材料を孕みつつ、今日も楽しい学園生活がスタートした。

 

「この公式はまだ範囲外で...」

「知ってるモノを利用して何が悪いの?」

 

まるでアニメみたい。

そう思ったのはうてなだけではないだろう。

その日、クラスは理解した。

シャノンという留学生が、あらゆる意味で"パーフェクト"な人間であることを。

 

「古文なんてどこで習ったの...?」

「日本語だからって法則がないわけじゃないでしょ。」

 

数学では通常の生徒が見たことも聞いたこともない公式で解答を導き出し、日本人でも手こずる古文の読み方もパーフェクト。

 

「これくらいも弾けないで教師をしてるわけ?」

「うっ...ひぐっ...!」

 

音楽教師顔負けのピアノ演奏を披露し。

家庭科の裁縫まで完璧な圧倒的女子力まで備えている。

 

「さよちゃん!」

「任せなさい!」

 

そして何より特筆すべきなのが、その身体能力。

体育の時間、今日の科目はバスケットボール。

クラス最強であるはずの小夜とキウィのコンビに対し、シャノンは彼女一人で優位に立ち続けていた。

やっとの思いでキウィが小夜へパスを繋ぎ勝負に出るが、シュート直前にシャノンにボールを奪われそのままごぼう抜き。

逆に得点を許し、試合は完全にシャノンのペースに。

結局、大差で小夜たちの敗北となってしまった。

 

「くっそ~...!アタシとさよちゃんで負けるなんてぇ~!」

「ハァ...ハァ...っ」

 

まだ残暑厳しい中息を切らし、汗を流して倒れ込む二人。

そんな彼女たちを見下ろしに来たのか、額に僅かに汗が滲んだだけのシャノンが近付いて来る。

 

「スゴいのね、シャノンさん。やっぱり本場の人は違うってことなのかしら...。」

「生憎と本場でも負けなしよ。ナイスファイトね、サヨ。」

 

意外にも小夜たちの健闘を称え手を差し伸べるシャノン。

小夜はその予想外の態度に驚きつつ、笑顔でその親切に甘えることにする。

 

「いいゲームだったわ。」

「完敗よ。あなたが部活に入ってくれれば、全国優勝も狙えそうね。」

「クラブには興味ないわ。今気になってるのは、アナタのことだけ。」

「え?」

 

掴んだ手を引っ張り、一気に小夜を自分の胸元へ引き寄せる。

赤と緑の視線が至近距離でぶつかり合い、お互いの体温が伝わって表情に熱を帯びる。

 

「あの、何を...?」

「サヨって、所謂"大和撫子"ってヤツよね?」

「そんな大それた物ではないわよ?実家は神社だし、和服もよく着るけれど...。」

 

シャノンの行動と言動に困惑しつつ、小夜は律儀に質問に答える。

その内容に満足そうに頷いた後、顎に手を添え更に自分へと近付けるシャノン。

クラス全員が息を呑む中、見せつけるような素振りで言葉を続ける。

 

「決めた。サヨ、アナタをアタシの()()()()()()()()()()()()()。」

「がーる、ふれんど...?」

『ガールフレンドぉ!?』

 

突然かつ早過ぎる告白。

ピンと来てない小夜とピュアなはるかを除いて戦慄する一同。

一難去ってないのにまた一難。

あまりにも唐突なライバルの登場に、ついに目眩がしてきたうてな。

バスケはつっ立っていただけなのに。

ちなみに、キウィは完璧に無視され地べたに這いつくばったままであった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「くあー!?ムカつくぅ~!なんなんあのアメリカンビ○チィ~!!」

「キウィちゃん、言い方...。」

 

すっかりお馴染み放課後のナハトベース。

ぐったりと項垂れる私と違い、キウィはまだまだ元気そうだ。

 

「留学生ねぇ。アンタたちホントにイベントには事欠かないわね。」

「これが主人公補正というモノよ。羨ましくてしょうがないでしょう?」

「ウワーウラヤマシー。」

 

空元気で真珠に言い返してみたが、見事な棒読みでスルーされる。

最近はいつも疲れているんだけど、今日はまた更に疲れた。

主に気疲れ。

薫子はうてなを許してないみたいで、はるかともコミュニケーション取れてるか微妙。

私とキウィは事情を知っているのに踏み込めない立場だから、学校でのストレスが半端じゃないのだ。

それに加え、クセの強い新キャラまで現れたのだからもうたまったものじゃない。

 

「ほら、ガールフレンドって直訳で"女の子の友だち"って意味でしょう?だから、ただ単に友だちになりたいってことかもしれ」

「んなわけないじゃん!?ぜったいあのドロボーねこさよちゃん狙ってるって~!さよちゃんのアゴクイ処女とられたうぇーん!」

 

この通り、シャノンの学校での行動にキウィは怒り心頭。

よく分からないところに価値を見出だして、ひたすらに罵詈雑言を吐き出している。

喰ってかかっても悉く無視されてたし。

ワンチャン私はまだアメリカ流の挨拶なんじゃないかと思っているが、キウィとしては完璧に仇敵認定のようだ。

 

「アイツやだきらーい!!うてなちゃんもそーっしょ!?」

「え...私はその、ケンカはしたくないというか...仲良く出来たらその方が」

「うてなちゃんはアイツにさよちゃん取られていいわけ!?」

「それは嫌、だけど...。」

 

同意を求められるうてなだけど、どうにも歯切れが悪い。

やはり薫子とのことを気にしているのだろうか。

 

「小夜ちゃんたち聞いて欲しいのだわ。」

「どうしたのロボ子?」

「こりすちゃんの学校にも留学生が来たらしいのだわ。」

「え、本当に?」

「コクリ。」

 

それはまたすごい偶然だ。

こりすが身振り手振りを駆使して顛末を伝えてくる。

 

『キャサリン・ハートフィールド。アンタたちと一緒にしないで。』

 

ウェーブロングの綺麗な茶髪。

小生意気そうな表情通りの傲岸不遜な物言い。

そして小さな"アイボ"、昔発売されたロボット犬のおもちゃを大事そうに抱えていたんだとか。

こりすはそのおもちゃが気になって、珍しく顔と名前を覚えたんだそうだ。

席は奇しくもこりすの隣。

特に挨拶は交わすことなく、ただじっと睨み合いをしていたとのこと。

 

「そーやって話さないからいつまで経ってもぼっちなんだぞこりす~。こりすとおんなじでぼっちそーなヤツじゃんか~仲良くしたれよ~。」

「ムスゥ...。」

「こりすちゃんをいじめるのは許さないのだわ!」

「ぎゃー!?アタシのお団子ぉぉ!?」

 

こりすのぼっち疑惑を弄るキウィ。

敏感に主の不機嫌を察知したロボ子が怒りのビームを発射し、久しぶりにキウィのお団子に風穴が空いた。

忘れた頃に必ずやっているやり取りだ。

 

「"ハートフィールド"って、シャノンさんと同じ名字だよね?」

「確かに。タイミング的に見ても姉妹かもしれないわね。」

 

流石にこれで赤の他人でした、というのは天文学的な確率が過ぎるだろう。

姉妹揃って私たちと同じ学校同じクラスとは、不思議な縁を感じざるを得ない。

 

「留学生の話なんてしてる場合かよ!」

「バカヤロー話題はもうキウィちゃんのきゃわわ団子が殉職した悲報に変わってんだよ!!また毛先揃えなきゃうぇーん!」

「よりどうでもいいだろ!?」

 

ネモが真剣な表情で声を張り上げる。

先々週からひたすらにシリアス継続中の彼女だが、いい加減疲れないのだろうか。

私はもう疲れたし、シリアスにしようとすると裏目に出てばかり。

だから出来るだけ不真面目にしていたい。

悩むと老けるって言うし。

 

「問題はJ.S.Tをどうするかだろ!このままビクビクしながら過ごすってのか!?」

「ああ、それね。」

「何でそんな軽い反応なのよアンタ。こないだ真珠たちをクビにしようとしたこと、忘れたわけじゃないわよね...?」

 

勿論忘れてませんとも。

二人とも原作では見られなかった真化をお披露目してくれたし、ファンとしては印象深いシーンだった。

"反省はしてるけど後悔はしてない"というヤツである。

二人が強化されたことで、一気に出来ることが増えたのだから。

 

「私にいい考えがあるわ。」

「何でめちゃくちゃ失敗しそうな言い方するわけ?」

 

失敬な。

指揮官が自信満々にいい作戦があると言っているのだから素直に賞賛しなさい。

二人の昇格は向こう一年無しにしよう。

悪の組織はパワハラ上等である。

 

「私と、うてなで立てた作戦よ。」

「大丈夫なのかよそれ...。」

「神作戦なのはカクテーテキに明らか。キウィちゃん乗りま~す。」

「まずは聞いてね...?」

 

キウィ以外の反応は芳しくないが、これはうてなと二人でじっくりぴったり考えた会心の作戦。

きっと上手くいくに違いない。

むしろ、これで無理なら諦めるしかないレベル。

そんな不安を感じさせないよう堂々と胸を張りながら、懐疑的な目を向ける下っ端×2にも分かるように作戦を説明していく。

 

冷や汗を垂らしてはいるが、作戦の有用性は伝わったようだった。

気持ちを切り替え、以前奴らにやられた諸行を思い出す。

絶対に許さない。

分からせてやる、エノルミータの恐ろしさを。

反撃の時間よ!

 

「やられたらやり返す。倍返しだっ!」

「うわ、古っ...。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「はぁ...色々と憂鬱だなぁ...。」

 

ナハトベースからの帰り道。

今日は寄り道したいからと言って、みんなとは違う帰り方をしてみた。

道すがら色々考えたかったというか、小夜ちゃんたちといると余計に悩んじゃうというか。

 

「私もキウィちゃんみたいに何か言うべきだったよね...。」

 

小夜ちゃんにガルフレ宣言をしたシャノンさんに対して、キウィちゃんはすぐに"小夜ちゃんは自分の恋人だから"と牽制(威嚇)に入った。

まったく相手にされてなかったけど、精一杯の主張だけは出来ていたと思う。

キウィちゃんはいつだって一直線で羨ましい。

恥ずかしがってか自信がないからか、私はまだ堂々と好意を表したりは出来ない。

 

「薫子ちゃんのことだって、私が自分から離れたのに、まだ仲良くしたいって思ったりするから...」

 

全てが丸く納まるまでは険悪になることくらい覚悟してたはず。

後悔しない選択をしたはずなのに、心の底では魔法少女が悪の組織に協力することへの"抵抗感"がないとは言い切れない。

 

「いつまで経っても宙ぶらりんだな、私。」

 

学校休むわけにもいかないし。

せめて家でくらい好きに過ごそう。

せっかくトレスマジアの仕事は強制キャンセルなんだし、久しぶりに魔法少女アニメの一気見とかして。

余裕があれば秘蔵コレクションで小夜ちゃんとの本番に備えたリハーサルを、なーんて。

 

「Excuse me?」

「へ?」

 

妄想で若干気が紛れていたところに、やけに流暢な英語が聞こえてくる。

最近外国関連はまったく良い出来事がないんだけど、無視するわけにいかずその場で振り返る。

 

「Sorry.could you please tell me how to get to Magimate?」

「Oh...。」

 

困った表情で英語で何かを問い掛けてくる外国人さん。

金髪をツインテールにして、どこかの学校の制服を着てる。

すごい美人だ...。

背も高いし、スタイルもすごい。

ちょっと浮いてる丸メガネも逆に魅力的。

まるでアニメから出てきたみたいだ。

...とか、考えてる場合じゃない。

どうしよう、私あんまり英語得意じゃないんだよね...。

困った時のOhだけいっちょまえに出ちゃったけど。

 

「あ、う...えとっ...」

「Can you speak English?」

「え、あ...い、いえす?」

「could you please tell me how to get to Magimate?」

「......ぁはん?」

「もしかして日本語の方がいいデスか?」

「ずこぉっ!?」

 

めっちゃ日本語喋ってるし!?

むしろ何で最初から日本語で聞いてくれなかったの!?

私って日本人顔じゃないのかな!?

 

「Oh!ジャパニーズズッコケ!初めて見まシタ!アナタとっても面白いデース!」

「そ、それはどうもです...///」

 

悪意はないんだろうけどそんなに笑われると恥ずかしいし、ちょっと傷つく。

さっさと要件を聞いて家に帰ろう...。

 

「あの...どういったご用件で...?」

「そうでシタ!ワタシ、留学生!ニホンの魔法少女が大好きで、この街の魔法少女ショップを探してマース!」

「魔法少女ショップ...?」

 

言われてみれば、さっきも"マジメイト"って言ってた気がする。

魔法少女、好きなんだ...。

私とは全然違うけど、何だかシンパシー感じちゃうな。

 

「マジメイトでよければ、私が案内しましょうか?」

「Oh!really!?是非お願いしマース!ワタシ、"アレクシア"と言いマース!」

「アレクシアさんですね。私は柊うてな、です。」

「ウテナ!天使みたいで素敵な名前デース!」

「そ、そうですかね...///」

 

名前を褒められたのなんて初めてで、何だか照れちゃうな。

アレクシアさん、いい人そうだし。

ちゃんと案内してあげなきゃ。

 

「ウテナはハイスクール?」

「あ、いえ。まだ中学生です。」

「妹と同じデスね!」

「妹さんがいるんですね。」

「はい!何でも出来る自慢の妹デース!」

 

中学生の妹さんがいて制服姿っていうことは、アレクシアさんは高校生なんだ。

百花さんもすごいスタイルだけど、あれは中身が残念だし。

アレクシアさんは優しいお姉ちゃんなんだろうな。

私一人っ子だから、ちょっと憧れちゃう。

 

「留学生なんですか?」

「そうデース!妹たちと三人で勉強しに来まシタ!」

「三人だけで暮らしてるんですか?」

「はい!パパとママはアメリカにいマース。」

「大変ですね...。」

「ワタシニホン大好き!毎日幸せデース!」

「あはは...それは、なんというか。日本人として嬉しいです。」

 

自然と質問攻めしてしまったけど、アレクシアさんは嫌な顔一つせず答えてくれる。

そのまま世間話を続けていたら、いつの間にか目的のマジメイトに辿り着いていた。

 

「Oh!これがニホンのメッカ!マジメイト!ついに来まシタよー!!」

 

大興奮で外観を撮影し始めるアレクシアさん。私も初めて来た時ははしゃいでたっけ。

 

「それじゃあ、アレクシアさん。初めてのマジメイト、たくさん楽しんでくださいね。」

「ウテナは行ってしまうんデスか...?」

 

案内を終えて退散しようとしたんだけど、急にしおらしくなったアレクシアさんに引き止められてしまう。

邪魔になると思ったんだけど...。

 

「え、えっと。一緒にいた方が、いいですか?」

「ウテナは、魔法少女好きデスか?」

「...は、はい。多少は。」

「なのは、まどか?」

「え...フェイト、ほむら?」

「Perfect!是非一緒に行きまショウ!!」

「わわっ!?」

 

正しい返答だったのか、勢いよく抱き締められてそのまま店内に連行される。

あぁ、小夜ちゃん以上のたわわが顔に...。

結局抵抗出来ないまま、アレクシアさんのお買い物に付き合うことに。

 

「アニメコーナーはこっちです。」

「オールスターが勢揃いデース!」

 

アニメグッズコーナーでは片っ端からかごに突っ込もうとするのを必死に止めたり。

 

「トレスマジア!マジアベーゼのグッズはありマスか?!」

「え!あ、ま...まぁ...///」

 

何故か気に入られてるベーゼのグッズを紹介する羽目になったり。

 

「アレクシアさんそっちはダメです!///」

「Oh~!?すっぽんぽんで破廉恥デース!///」

 

私もまだ行けてない、18禁コーナーに迷い込んでしまったりと。

久しぶりに、楽しい時間を過ごしてしまった。

 

「ウテナ、今日はいっぱいありがとうデース!とっても楽しいマジメイトでシタ!」

「私も、久しぶりに魔法少女の話が出来て楽しかったです。フェイトちゃんグッズ、たくさん買えて良かったですね。」

「ワタシ彼女をすごくRespectしてマース!髪型も真似っこデース!」

 

帰る前の一休みに寄ったカフェ。

そこでも私たちは魔法少女トークに花を咲かせていた。

 

アレクシアさんはかなりの知識量があって、私がマニアックな話をしてもすぐに反応してくれる。

こんなに話が合う人は初めて...。

お気に入りの作品の話なんて、私より詳しいくらいだ。

 

「確かに、フェイトちゃんそっくりで素敵ですね。コスプレとか似合いそう...。」

「Thanks!コスプレ、ワタシ興味ありマース!ウテナは憧れの魔法少女、いマスか?」

「私ですか?...えっと。」

 

ちょっと前まではマゼンタだったけど、今は仲間でお友だちな印象が強いし。

...あ、今は仲間じゃないのか。

ならやっぱり、原点的なところで。

 

「ミラクルみみる、ですかね。初めて見た魔法少女なので。」

「あれは素晴らしい作品デース!」

「で、ですよね!私、みみると敵幹部のライバル関係とかもすごく好きで!敵幹部は敵幹部で信念があって、みみるとのやり取りが」

「悪に信念などありまセーン。」

「え...?」

 

今まで満面の笑みで話してくれていたはずのアレクシアさんが、急にその表情を固くする。

突然の変化に驚いて、言葉が続かない。

何かまずいことを言ってしまったんだろうか...。

 

「あ、あの...っ」

「悪は悪。必ず滅ぼさなくては、いつか大切なモノを傷付けられることになりマース。」

「滅ぼすって...でも、何か事情があったら...本当の本当に悪だって判断する方法がないなら、滅ぼしちゃいけないモノを滅ぼすことだって」

「正義には責任がありマース。必ず、守りたいモノを守るという責任デース。その為になら、疑わしきは罰するべき。それが罪であるのなら、正義とはそれを背負うことデース。」

「っ...。」

 

カタコトな口調とは裏腹に真剣な表情で正義を語るアレクシアさん。

その威圧感はまるで、本当にずっと戦い続けて来たような、そんな歴戦の迫力がある。

 

「...Sorry。つまらない話でシタ。忘れてくだサーイ。ウテナはニホンで初めてのソウルフレンドデース。変なことで言い合いはしたくありまセーン!」

「...はい。そう、ですね。」

 

にこやかに戻ったアレクシアさんを見て、ホッとする気持ちと妙な違和感が混ざり合う。

これ以上は思考しちゃいけない気がする。

よく分からないけど、"何か"が警笛を鳴らしてる気がした。

考えても答えは出ないようだし、私もアレクシアさんとはお友だちでいたい。

本能的な部分で、私は不自然にも今のやり取りを忘れることにした。

 

「それでは、ウテナ!また今度遊びまショウ!今日のお礼にカフェ代はオネーサンのオゴリデース!」

「あ、ありがとうございます...。また今度、是非!」

 

気付けば夕焼けも終わり際の18時頃。

ウィンクを残して立ち去るアレクシアさんに挨拶して、その背中を見送る。

とても楽しい時間だった...。

 

「いい人だったなぁ、アレクシアさん。」

 

私の中の違和感は、もう跡形もなく消え去ってしまっていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「それじゃあみんな。作戦通りにいくわよ。」

「ガンバろーね~ベーゼちゃ~ん。」

「う、うん...。」

 

リベンジ作戦当日。

緊張の面持ちで、私たちはナハトベース付近の森林で待機していた。

変身は既に完了済。

前までと違い、すごく優しいレオちゃんが新鮮だ。

 

「失敗すんじゃないわよ?」

「ミスっても足手まといを拾う余裕はねぇからなー?」

「はいはい。いい加減許して欲しいわね。」

 

自信満々にアズールにプレッシャーをかけるロコちゃんとルベルちゃん。

それでもアズールは相変わらずクールだし、レオちゃんはポワポワしてるし。

もしかして、緊張してるの私だけだったりする...?

 

「隠れるのはもう止めたのデスか?」

「隠れ方も分かんないバカの集まりなんでしょ?」

「来たわね...。」

 

今更落ち着こうと思ってももう遅い。

狙い通り、私たちの魔力を追ってジャスティスティールの三人が現れた。

相変わらず小馬鹿にした態度のアルジェントが非常に気になる。

魔法少女ポイントマイナスである。

 

「裏切り者も一緒じゃない。アンタたちが始末すれば?」

「っ...ベーゼ...あたし...。」

「マゼンタちゃん、サルファちゃん...。」

「...言われんでも、尻拭いくらい自分たちで出来る。手出し無用や。」

 

しかもトレスマジアまで一緒。

これも予想通りではあるけど、マゼンタは煮え切ってないしサルファはすごく苛々してる。

二人の不調は全部私のせいなんだけどね...。

 

とりあえず、一応魔法少女同士は協力関係にあるらしい。

特に"計画"は変更しなくても大丈夫みたい。

 

「あの人形とチビッ子はどこ行ったのよ?このカルコスさまが今度こそ分解してやろうと思ってたのに。」

「いてもそんなことさせないけれど。教育に悪いでしょ?これからあなたたちを、人目に晒せないくらい惨めな姿にするのだから。」

「やられ過ぎて記憶が飛んだわけ?雑魚がアタシに勝つつもりなんだ?」

「勝つんじゃないわ。()()()()のよ。特に、あなたは念入りにね。」

 

傲慢が服着て歩いてる感じの二人に対し、アズールは迫力たっぷりに陵辱宣言。

前回散々痛ぶられたアルジェントを鋭い視線で睨み付ける。

ほわぁ...カッコいい。

 

「まだ理解してないっての?アンタはアタシに手も足も出ないって。」

「理解がないのはそちらではなくて?私が、お前を手も足も出なくしてやるって言っているの。」

「コイツ...!」

 

冷静そうに見えてキレやすいようで、アズールの挑発が効果抜群だったらしい。

怒り心頭な表情で、今にも飛び掛かって来そうだ。

 

「では、ワタシの相手はアナタがしてくれるのデスか?マジアベーゼ。」

「ちょ、待ちぃ!ベーゼはウチらが...」

「必要ありまセーン。本気を出せない助力など邪魔なだけデース。」

「っ...。」

 

私を射抜く最強の視線。

どうやら、オールは私をご指名のようだ。

前回彼女たちのことを全否定してた気がするし、結構根に持たれてるのかも。

冷や汗を垂らしながら、精一杯の強がりで何とか目だけは逸らさずに済ませる。

 

「...つまんないの。じゃあ、あのめちゃザコ二匹はこのカルコスさまが遊んであげる。田舎魔法少女は邪魔しないでよね。」

「田舎...?」

「こんガキ...!」

 

仲間二人が標的を定める中、アリスちゃんがいないことに不満そうなカルコス。

カップル二組をまとめて罵倒し、どや顔で見下している。

あんなに可愛げがないとは思わなかった。

 

「子どもがザコザコ言ってるわよ?」

「躾がなってねェなァ。親の顔が見てみたいぜ。」

「アンタたち生意気ね!こないだみたいにボロボロにしてやるんだから!」

「いつまでも雑魚だなんて、ノンキかましてんじゃねーよ。」

「そーよ。スーパーアイドルは日々進化してるの。」

 

ロコルべはどこ吹く風で煽り返し、私たちへ目配せ。

準備万端の表情に、アズールは"作戦開始"の頷きで応える。

 

「ハァ?アンタたちのどこが進化なんて」

 

『『真化(ラ・ヴェリタ)!』』

「「進化って真化(かい)!?」」

「隙ありだぜ!」

『ヴォワ・フォルテっ!』

 

身内以外には初お披露目の真化を果たし、油断していたカルコスではなくお揃いリアクションのトレスマジアを攻撃。

強力になった音波攻撃で二人を空から叩き落とす。

 

「今よルベル!」

『分かってるっての!』

「動けへんっ...!」

 

そのままルベルちゃんが分身を影に潜らせ二人の動きを封じる。

私が見守れるのはここまで。

アズールとレオちゃんが駆け出す音を耳に感じながら、私も全力で移動を開始する。

 

「や~い、おしりペンペ~ン。」

「私と遊びたいんでしょう?なら着いて来なさい!」

「ナメた口を...!」

「カルコス!アナタもCOME ON!あちらの方が面白そうデース!」

「え!?う、うんっ!アーサー!」

『BOW!』

 

挑発が上手く効いたのか、作戦通り私たちを追ってくるJ.S.T。

慣れない鬼ごっこに挑みつつ、目的地へと必死に走り続ける。

 

「み、見えてきた...!」

「もう少しよ二人とも!」

 

漸く見えてきた目的地。

()()()()()()()()()()()()

夏休み前に私たちを苦しめた、あのアズールの試練のリニューアルバージョン。

あの中に入りさえすれば、アリスちゃんの力でJ.S.Tの能力を削ぐことが出来るはず。

苦しくなる呼吸に構わず、勝利の為に残り数百メートルの距離を全力ダッシュする。

 

「オール、あれ!」

「なるほど。あれが自信の源デスね?」

 

ダンジョンを見留めた途端、私たちの追跡を止めるオール。

手元に魔力を貯め、何かをその場に作り出す。

 

「ロケットランチャー!?」

「"あらゆる武器を使いこなす"とはこういうことデース。アメリカらしく派手にいきマース!」

「伏せて二人とも!」

 

ロケットランチャーを何個も作り出し、ダンジョン目掛けて放っては投げ捨てるの繰り返し。

爆発音と共に建物の壁が飛び散り、みるみるその姿をただの残骸へと変化させていく。

 

「そんな...!」

「あんな分かりやすい罠が切り札ってわけ?マジでバカなんじゃないの?」

「コラァ~!せっかくアズールちゃんが建てたスペシャルなダンジョンをぶっ壊しやがって~!あとミサイルパクんなあほ~!」

「ミサイルはアメリカのお家芸デース。」

 

それは色々と語弊があるというか...。

これがアメリカンジョークか。

 

頼みの綱を無惨なコンクリートの塊にされ、崩れ落ちるアズール。

ニヤニヤしたSっ気たっぷりな顔でアルジェントは笑い、残りのメンバーを伴ってゆっくりと私たちに近付いて来る。

前みたいにアズールを痛ぶるつもりなんだろう。

 

「さっきまでのビックマウス、後悔することになったわねぇ!」

「...。」

 

100メートルを切って、残り70、50、30、10メートル。

そして漸く目の前にやってきた三人を直視せず、ただ最後の合図を待ち続ける。

チャンスはきっと、今...!

 

()()()()...!!」

「「「!?」」」

 

『ん...。』

 

私たちを中心にサッカーコート片面くらいの広さで地面から浮き上がってくる"光の壁"。

頭に直接アリスちゃんの声が響き、空中をも囲って空間を魔力で完璧に遮断していく。

 

「ペットは邪魔なのだわ。」

『Bow...!?』

 

壁に向かって吠えていたロボット犬をどこからか現れたロボ子ちゃんが豪快に蹴り飛ばす。

光の壁の外に弾き出し、中には私とアズール、レオちゃんに、J.S.Tの三人が取り残された。

透明でありながら、確固たる結界となったそれ。

J.S.Tは流石に予想外だったのか、結界が完成するまでに逃げ出すことも出来なかった。

 

「ありがとう。見事に引っ掛かってくれて。」

「あんな分かりやすい罠が本命なわけねーだろばぁーか!」

「このアタシにナメた口をっ...!」

「アーサー!こんな結界引き裂いて!」

『...』

「アーサー...?」

 

結界の外にいるロボット犬に助けを求めてるけど、先程までの勇ましい姿とは違う様子。

耳を垂らして、力なくその場で伏せてしまっている。

この結界は魔力を遮断する効果があるから、常時魔力を与えて操るタイプは主人さえ閉じ込めてしまえば使役される側への魔力供給を断つことが出来る。

私とアリスちゃんの経験から来る予想が当たったわけだ。

 

「アリスちゃん、後は踏ん張るだけなのだわ。」

「コクリ。」

「あのチビッ子に人形、隠れてたなんて!」

「こんな結界、今すぐぶち壊してやる!」

「二人とも落ち着きなサーイ。逃げられないのは相手も同じ。むしろ好都合デース。」

 

オールだけは冷静みたいだけど、それでも現状を正しく認識しているとは言えない。

計画は成った。

後は私たちが戦うだけ。

勝つだけだ!

 

「いくわよ...!」

『『『真化(ラ・ヴェリタ)!』』』

「...!?」

 

まず始めに動いたのはアズールだった。

真化して高まった魔力を即時解放。

地面ごとJ.S.Tの足を氷漬けにする。

平時であればすぐに力ずくかアルジェントの炎で脱出出来るはずだけど、彼女たちをある"違和感"が襲う。

その困惑の時間が、私たちには立派なチャンスタイムだった。

 

「いっくよ~!ベーゼちゃん~!」

「う、うんっ!」

 

レオちゃんが空中にばら蒔いた多種多様な爆弾を、鞭で叩いて魔物へと変化させる。

普段は通常形態での戦法だけど、真化形態でやればその力は倍はくだらない。

身動き出来ない魔法少女たちに向かって、無茶苦茶な軌道で魔物爆弾が降り注ぐ。

 

「きゃあ!?」

「何でこんな...!」

「身体中を押さえつけられてるみたいデース...!」

 

違和感への苛立ちを口にしながら爆撃を受けるJ.S.T。

閉じ込めるだけの為に、こんな結界をわざわざ用意したりはしない。

この結界の正体はアリスちゃんの"ドールハウス"。

普段は人形サイズのそれを、限界まで外側に広げて透明にしたモノだ。

アリスちゃんの額に浮かぶたくさんの星から分かるように、かなり無理をしてこの結界は維持されてる。

いつものような強制力はなく、力を抑制するだけで精一杯。

 

「それで十分よアリス...!」

「後はアタシらのトライアングルパワーをさぁ~!」

「見せつけるだけだよね!」

 

攻撃の手を緩めずにひたすら爆弾を炸裂させ続ける。

狙いはオールたちじゃない。

爆発は地面の土を巻き上げ、狭い結界内を土煙が包んでお互いの視界を遮る。

否。

見えていないのは()()()()()()だ。

 

『アズールちゃん、そこから3時5時8時11時方向なのだわ。』

『了解!』

『レオちゃん、そこから6時方向に1個目。撃ちまくれなのだわ!』

『らじゃ~!』

 

頭に響くロボ子ちゃんのナビゲート。

外からアリスちゃんの手伝いをする彼女には結界内の配置が魔力反応という形で把握出来ている。

たとえ土煙で何も見えなかろうが、アズールの氷の縛りが砕かれようが。

私たちが敵を見失うことは決してない。

 

「卑怯な真似を...!」

「見くびっていまシタっ...カルコス!ワタシから離れないように!」

「う、うん...!」

 

ああ、聞こえる。

あの高飛車で自信満々で高圧的な絶対正義のヒロインたちが。

戸惑い、恐怖し、不安に囚われている声。

それに、この音。

レオちゃんが放ったレーザーが、鏡面となった氷に反射と反射を重ね、()()()()()()()()()()()

服が破れているということは当然露出が増えているわけで、彼女たちの悲鳴もどこか恥ずかしさを内包したモノに聞こえた。

素晴らしい。

見えなくても、その光景がありありと脳裏に浮かぶ。

アルジェントの流れるようなピチピチボディ。

オールの弾けて揺れる最胸たわわ。

カルコスは自重。

あぁ、たまらない。

やっぱりヒロインはピンチになってこそだよね!

 

「滾って来ましたよ...!///」

「おねーちゃん危ないっ!」

「っ...!?」

 

彼女たちの背後から放った"魔女の毒巣(リディキュール・バインド)"。

誰に当たるかと思えば、二人を庇ったカルコスになったみたい。

聞き捨てならない発言をしていた気がするけど、残念ながら追求は後回し。

悪夢を見るのが彼女で好都合。

流石に、子どもを攻めるというのは良心が痛むからね。

いや、ホントに。ね?うふふ。

 

「う...ぁ...」

「カルコス!?くそっ...!アイツら絶対に許さない!!」

『「それはこちらの台詞ですよ?」』

「「!?」」

 

土煙が晴れ始め、防御態勢を攻撃態勢へ変える瞬間を待ちわびていた。

今度はいい加減慣れつつある自身のトラウマを複数体作り出し、力ずくでオールとアルジェントを拘束。

逃げられないように溶かして地面に固定する。

 

「ぐっ...動けないデース...!?」

「力さえ戻ればこんなの...!」

 

視界を遮る物がなくなり、拘束されたオールとアルジェントの姿が明瞭に見えるようになった。

スカートは破けてパンツが露出し、胸部は綺麗に片乳だけはみ出ている。

あれが最強の魔法少女の生乳首。

綺麗なピンク色で、非の打ち所のないおっぱいだ。

 

「でっかぁ...///」

「Oh!破廉恥!ジャパニーズスケベデース!///」

「恥ずかしがってる場合!?カルコスが辛そうなの、早く助けないと...!」

「こっちは悲しくなるくらいちっさ。」

「ファ○ク...!アンタはマジのマジでぶっコロス!!///」

 

胸囲の格差はアメリカでもシビアに存在するらしい。

形とバランスがキレイでこれはこれで好きだけど、やっぱりおっきいのには敵わないよね。

大は小を兼ねるって言うし。

 

「あら、随分いい格好になったわねぇ。」

「ベーゼちゃんそんな奴らのおっぱい見るならアタシの見て!触ってもいいよ!」

「レオちゃん、趣旨が違ってきちゃうから...///」

 

思わず頷きそうになるくらい魅力的な提案だけど。

今日は彼女たちへの"お仕置き"が目的。

視線だけはまだ強気なオールたちをアズールと並んで見下ろす。

ここからが本番だ。

 

「っ...い、いやぁ...っ」

「クソガキの子守りとかめんどっちぃなぁ~...。」

「オマエ!カルコスに何をする気なの!?」

「どーもせんけど?ただらびゅい二人が心置きなく楽しめるように人質にするだけだっての~。」

「人質...!?」

 

雑にカルコスを引き摺りながら私たちから距離を置くレオちゃん。

右手の銃口を眠るカルコスに押し付け、いつでもとどめを刺せる状態にしている。

本当に攻撃するつもりはないものの、オールたちの抵抗を封じるには有効な手段。

卑怯でも今の私たちにはこうするしか道はない。

 

「ベーゼ!魔法少女がこんな真似をして!許されると思っているのデスか!?」

「痛いところを突きますね。でも、安心してください。無闇に傷つけるだけのあなた方と違って、私はこれから始まるお仕置きに"愛"を込めていますので。」

「何故そこで愛なのデース...!?」

 

必死に抗議するオールの目の前に移動し、その少し赤く染まった頬を撫でる。

最強の魔法少女であるが故に、彼女はあまりこういった経験はしてきてないようだ。

 

「力を抑制されてるとはいえ、アンタたち程度の力じゃアタシたちを傷つけることなんて出来ないわよ...!」

「あっそう。別にいいわよ?傷が付かない=痛くないってわけでもないだろうし。」

「何言ってんの、アンタ...?」

「日本流のお・も・て・な・し。たっぷり楽しんで行ってね?」

 

吠えるアルジェントも今のアズールには逆効果。

アルジェントの身体を舐めるように観察した後、力任せにパンツとチューブトップを破り捨てる。

 

「なぁっ!?何してんの頭おかしいわけ!?///」

「だって邪魔じゃない?こんなにキレイなのに見ないのは勿体ないもの。でしょ?」

「ひぎっ!?///」

 

表情はにこやかながら、アルジェントの乳首をかなりの力で摘まむアズール。

今までのアルジェントからは想像も出来ない情けない声を上げる。

 

「ちゃんと痛いみたいね。それとも、気持ち良かったとか?」

「ふざ、けんな...っ!///」

「ちょっとやりにくいわね。ベーゼ、この雌豚のお尻をこっちに向けさせてくれる?後ろ向きにするんじゃなくて、下から抱え上げる感じで。」

「分かりました。」

「誰が雌豚よ乳牛女っ!///」

 

アズールの要望でバインドを形状変化。

正面におっぱい、お尻、そして丸見えの秘部が見える状態にする。

乳牛とか言われると小夜ちゃんの例の衣装を思い出してしまう。

そういえばまだ着てもらってないや。

 

「随分キレイだけど、もしかしてまだご経験はないのかしら?」

「言うわけないでしょ!?///」

「お可愛いこと。女王様ぶっても中身はまだまだ乙女というわけ?流石魔法少女ね。」

「さわる、なっ...///」

 

言葉でアルジェントの羞恥を煽りながら、優しく真っ白なお尻を撫でる。

正直羨ましい。両方の意味で。

 

「じゃあこれも初めてよね。ただのロウソクじゃないのよ?()()()()()()()の為の、特別製。」

「な、何する気なのよ...!?」

 

谷間から一本のロウソクを取り出すアズール。この為にわざわざ持参したらしいけど、まさか常備してるわけじゃないよね...?

レオちゃんが作り出したミニミニ火炎放射機で火を付け、アルジェントの目の前に持っていく。

 

「アンタまさか...!?」

「そろそろ垂れるわよ?楽しみよね?最初はどこがいい?やっぱりご自慢の小さい胸かしら?」

「ふざっ!?あづぅっ...!?///」

「胸は胸でも乳首にクリーンヒット。さっきつねったのと合わせて気絶するくらいの刺激でしょう?」

 

痙攣するアルジェントに容赦なく二滴三滴と溶け出した蝋を降り掛けるアズール。

火傷することはないものの、見た目から連想する温度への恐怖といつ来るか絶妙に判断し辛い刺激。

プライドの高い彼女には精神的にもすごい負荷がかかっていることだろう。

 

「低温で溶け出すロウソクなの。こうやって敏感なところに、ポタポタ、ポタポタ。熱い?痛い?それともやっぱり...。」

「ゃ...やめっ...///」

 

お尻を震わせてもがくアルジェントだけど、その表情には怒り以外の感情があるように見える。

乳首もお尻も、大事な部分も蝋まみれにされて、潤んだ瞳は何を意味するのか。

 

「気持ちいいんでしょう...?」

「っ!!///」

 

アズールに耳元で囁かれ、一際大きく身体を跳ねさせるアルジェント。

そんな姿を見てある程度満足したのか、アズールはロウソクを投げ捨てて、自身の魔力で人ひとりが入れるくらいの筒状の"氷の器"を作り出す。

中にはたっぷりと水を注いである。

 

「なに、をっ...?///」

「気持ちいいんじゃ、お仕置きにならないもの。お仕置きは苦しくなければね。ベーゼ?」

「はい。」

 

拘束を腕と足に集中させ、堅牢な枷に変化させる。

手枷側にアズールが水の鞭を結びつけ、一度乱暴にアルジェントを地面に叩きつけた。

 

「あぐっ!?」

「うんうん。これくらいの重さなら大丈夫そうね。」

「コロ、ス...!」

「活きがいいわねぇ。元気に()()()()()()くるのよ?ここでちゃんと見ていてあげるから。」

「は...?」

「せーの!」

 

勢いをつけてアルジェントを空高く打ち上げるアズール。

その動作はまるで釣りでもするかのよう。

乱雑に持ち上げられたアルジェントを、それ以上の衝撃で氷のプールへと突っ込む。

 

「もがっ...!ごぼぼっ!?」

「サメでも連れてくるべきだったわね。エサがもがいているだけじゃつまらないわ。」

 

透明な器から見える、自由を奪われ呼吸すら出来ず苦しむ釣り餌。

いくら強いとはいえ、生物であることに違いはない。

窒息の苦しみと恐怖に歪むその美しい顔。

 

「よいしょっと。」

「ごばっ!?げほっ...!ぶはっ...!おげぇ...っ」

「なんだ、まだ元気そうじゃない。餌なら餌らしくくたばって役に立ちなさいな。」

「ま、待って...!?んぼぉっ!!」

 

死なないギリギリのタイミングで引き上げ、またすぐにプールへ逆戻り。

あのプライドが高いアルジェントが、無様な姿を晒して命乞いまでしている。

やっぱりアズールはすごい。

ドMなアズールもドSなアズールも、どちらも素敵でつい身体が熱くなってしまう。

 

「やめてくだサーイ...!アルジェントをいじめないで...!!」

「人の心配をしている場合ですか?次はあなたの番ですよ。」

「っ!?///」

 

アルジェントを庇うオールを冷たくあしらいながら、アズールがやったように邪魔な衣服を引き剥がす。

いよいよそのご立派なモノの全貌が明らかになり、私のテンションも否応なしに高まっていく。

 

「Ah...!?///」

「世界最強ともあろう人が、随分と可愛い声で鳴くんですね。ますます興奮してきました...。」

 

意外にも初で可愛い反応をするオール。

引く手数多だと思っていたけど、もしかしてアルジェントと一緒でそういう経験がなかったり...?

あそこの毛まで金髪なんだなぁとか最低なことを考えながら、前屈みの体勢になるようバインドを調整する。

理由は勿論、そのアメリカンサイズなお乳を見やすくする為だ。

 

「あまり抵抗しないでくださいね。でなければ妹さんも同じ目に遭うかも。」

「卑劣過ぎマース...!」

 

妹って認めるんだ。

じゃあ、カルコスはオールの妹。

アルジェントを入れて三姉妹ではないよね?

胸のサイズが遺伝してないし。

 

それにしてもそう、胸。

私への怒りに身体を震わせる度に、ぷるんぷるんたゆんたゆん。

目の前で綺麗ででっかいおっぱいが揺れに揺れては弾んでいる。

 

「たわわぁ...///」

「あうっ!?///」

 

思わずパシンっ!といい音を出して乳ビンタをかましてしまった。

あぁ、しゅごい。

ばるんばるんのぶりんぶりんだ...。

そのまま欲望のままに何度か往復ビンタ。

痛がるようで感じているような、とても色っぽい声を上げてオールは身を捩る。

 

「うぅ、ジンジンしマース...!///」

「嫌がっている割に随分気持ち良さそうでしたね?もしかして、胸が性感帯なんですか?」

「し、知りまセーン...!///」

 

しらばっくれても乳首は正直みたい。

吸いやすそうな硬さになってるから。

...はっきり言って、吸い着きたい。

でも、それはダメ。

これはあくまでも横暴な正義へのお仕置きなのだから。

私の性欲を発散するのが目的じゃない。

なので()()()()()()()()()()()()ことにする。

 

「これ、ご存知ですか?」

「ひゃっ!?///」

 

予め魔物に変化させていた器具。

ウネウネ蠢くそれの、二股に分かれた口をオールの両乳首にそれぞれ装着する。

見よう見まねで作ってみたんだけど、サイトのとそっくりな会心の出来だ。

吸盤カップはしっかりと乳首を捕まえている。

 

「世の中には"搾乳機"というものがあるそうです。本来は乳牛用の機械なのですが、昨今のサブカルでは女の子に装着して無理矢理に乳搾りを行うのがポピュラーだったりします。」

「サク、ニュウ!?///」

「まあ、妊娠もしてないのにミルクが出ることはないでしょうし、専ら性的嗜好品扱いですね。じゃあ、始めますよ。もしかしたら本物より強力かもしれません。これ、元は"掃除機"ですから。」

「っ!?///」

 

魔物に命令を出し、吸引スイッチをONにする。掃除機特有のけたたましい音と共に、カップがオールの乳首を力一杯吸い寄せ始めた。

 

「んひっ!?Noooo~!!!!///」

「すっごいえっち...///」

 

海外の人の喘ぎ声は興奮出来ないっていうのをよく聞くけど、オールのは何だかすっごいいい。

やっぱり魔法少女だからなのかなぁ?

感じてる中に抵抗を諦めない芯の強さが見えるというか。

身体を暴れさせる程に吸引は激しくなり、その刺激で更に暴れてしまう。

オールを襲う痛みと快楽の無限ループ。

そんな風に盛り上げられたら、私だってただ見てるだけなんて出来るわけがない。

 

「っ...!///」

「いぎっ...!?///」

 

ビンタよりも低く重い、ベシン!という音。

搾乳で敏感になった胸を、更に鋭く鞭で叩く。人間というより動物のような声を上げ、刺激に耐えきれず痙攣を繰り返すオール。

その姿に世界最強の面影はなく、まるで死にかけの虫みたいにピクピクしている。

 

「いぃぃですねぇぇぇ!!私はあなたのそんな姿が見たくて見たくてしょうがなかったんですよぉぉ!!///」

「んぐぅぅっ!?!?///」

 

鞭でオールを叩く度に、どんどん私が理想の魔法少女から離れていく感じがする。

でもまあ、今回だけは許して欲しい。

一応あっちが悪い部分もあるし、私は今エノルミータ側なわけだし。

"エノルミータのベーゼ"としては平常運転なんだろうし、これはある意味小夜ちゃんへのファンサみたいなものだ。

J.S.Tとの戦いが済めば、また一から健全で王道な魔法少女を目指せばいい。

...今はそう。休暇中なのだ。

休みの日に好きなことや向いてることをするのは悪だろうか?

私は違うと思うし、さっきも言ったようにこれはお仕置き。

全てが致し方ないことで、やらなきゃいけないことを前向きに頑張るのは大変偉いことだと思う。

だから、大丈夫。

ここでこんなに楽しかったからと言って、私がエノルミータに堕ちることなんてあり得ないのだから。

 

「いけないことだって分かってるのにぃ...!でもだめぇ!こんなの我慢出来るわけなぁぁいっ!私の"天職"見つけちゃったぁぁ!!///♥️」

「ああぁぁぁんっっ!!!///」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「おぉ~...いいなぁ。アタシもアズールちゃんとベーゼちゃんにいじめてほしー。」

 

激しい攻防(意味深)を繰り広げるアズールたちを羨ましそうに眺めるレオパルト。

彼女は彼女で人質の管理という大役を預かっているのだが、そもそも性分として地味な役回りは向いていないのと、想い人たちが自分以外でハッスルしているのは何だかんだ面白くない状況。

集中力が切れるのは時間の問題であった。

 

「っ...たす、け...あれっく...っ」

 

悪夢にうなされ続けるカルコス。

最初のうちはその内容が気になって聞き耳を立てていたが、気付けばそれよりオールの嬌声の方が大きくなっていた。

自然と注意はそちらに向かって、()()()()()()を見逃してしまう。

 

『Bow!BowBow!!』

 

先程まで魔力供給を遮られてダウンしていたはずのロボット犬、アーサーが結界ギリギリまで接近し、出来る限りの大きな声で咆哮する。

彼の活動用魔力を全て絞り切った、一見すると無駄にしか思えない負け犬の遠吠え。

しかし、その主には決定的な刺激となったようだ。

 

「っ!...いい子ね、アーサー!」

「お?」

 

相棒の咆哮を目覚ましに、悪夢から飛び起きたカルコス。

油断していたレオのアームを跳ね除け、勢いよく結界の発生源であるネロアリスの元へ突っ込んでいく。

 

「伏せるのだわアリスちゃん...!」

「...!」

「ぶっ潰れなさいっ!!」

 

右腕に形成された鉄の杭打ち機。

所謂"パイルバンカー"を唸らせ、結界に力一杯撃ち込むカルコス。

抑制などお構い無しに全霊を込めたその威力は、主の制御を失った結界を容易く粉々に破壊してしまった。

 

「アズールちゃん!破られたのだわ!」

「撤退するわよ!みんな急いで!」

 

緊急事態にアズールは即時撤退を指示するが、それもそのはず。

あれだけ追い詰めてボロボロにしたアルジェントが、結界が解けた途端拘束を力ずくで破壊し始めたのだ。

その戦闘力は辱しめられて尚健在。

横目でオールもまた自由になりかけているのを確認し、頭の中でロコルべにも撤退を指示する。

想定していたとはいえ、かなり危険な状況。

最悪の場合仲間だけでも逃がす算段を立て始めたアズールだったが、ここでカルコスは予想外の行動に出る。

 

「アーサー!オールをお願い!」

『Bow!』

「離しなよ...アタシは、まだ...!///」

「ダメ...!逃げなきゃだよアルジェント...!」

 

この状況でも未だ優勢のはずのカルコスたちが撤退を始めたのだ。

アズールたちが面食らって動けない間に手早くオールとアルジェントを回収し、森林の中へと消えていく。

 

「い、行っちゃった...。」

 

ポツンと取り残されるエノルミータ。

一応しばらく警戒してみたが、やはりもうこの近くにはいないらしい。

互いに顔を見合わせていると、反対側からロコとルベルがやって来た。

マゼンタたちと戦っていたはずだが、おかしいことにその身体にはまったくと言っていいほど傷はない。

 

「逃げろって言ったり来いって言ったりどっちなのよ!?」

「ちょっと予想外な動きをされたの。...二人とも、怪我はない?」

「ああ。てか、アタシらは()()()()()しな。」

 

ルベルたちはルベルたちで、拍子抜けな出来事があった。

トレスマジアの正体に気付かぬフリをして、ついに至った真化でマゼンタとサルファを圧倒してやろうと悪役魂を無理矢理燃やしていたのだが、動きを止めた後ロコルべそっちのけで二人は口喧嘩を開始。

自分たちのテンションとかけ離れたシリアス具合に気まずくてしょうがなかったとか。

 

「中身知ってる分いたたまれなさがスゴかったわよ、まったく。」

「あの二人が、そんなに...。」

 

仲良しだった仲間の変わり様に責任を感じるベーゼ。

そんな感情を敏感に感じ取り、レオはおどけてベーゼを後ろから抱き締める。

 

「れ、レオちゃん?」

「とりま今日はアタシらの勝ちってことで~。やったねベーゼちゃ~ん。」

「...うん。ありがとう、レオちゃん。」

 

色々と気になることはあるものの、今日確かに前回の雪辱を果たしたのも事実。

"今は気にせず喜ぼう"という励ましに感謝し、ベーゼはレオの抱擁を受け入れる。

 

「その様子なら、上手いことやれたってわけね?」

「勿論。しっかりと情けない吠え面を録画してあるわ。帰ってみんなで鑑賞会といきましょう。アリスは目隠しね。」

「ムスゥ。」

「そんな顔しないの。今日の勝利はアリスとロボ子のおかげ。本当によくやってくれたわ。ご褒美はちゃんとあげるから。」

「バンザーイ。」

「やったのだわ。」

 

アリスたちをフォローしつつ、勝ち誇ってどこからか懐かしいカセットテープを取り出すアズール。

リーダーの勝利宣言を受け、エノルミータは凱旋気分でナハトベースへの帰路に着く。

 

「あなたも一緒にね。」

「アズール...う、うん///」

 

自然に腕を絡ませ、寄り添って歩くアズールとベーゼ。

完全決着とはいかないまでも、二人にとっては大変満足な一日となったのだった。

 

「私より大きい胸はさぞ気持ちよかったんでしょうね。あんなに楽しそうにしてたんだし?」

「......もしかして、怒ってる?」

「怒ってないわよっ!!」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ここまで来れば大丈夫...!」

 

戦闘地点から離れたどこかの林で、カルコスは傷ついた二人の仲間を優しく横たわらせる。

 

「カルコス...何で逃げたりしたの?アタシたちならあのままでもアイツらをヤれたのに!」

「っ...ごめんなさい、おね...アルジェント。ワタシ、こわい夢を見て...それでっ」

「二人とも、落ち着いてくだサーイ。まずは休みましょう。リラックスデース...。」

 

ジンジンと痛み敏感になった胸を抑えながら、二人に変身解除を促すオール。

彼女自身も裸同然の衣装から、()()()()()()()の制服姿となる。

オールに続いて、残り二人も同じように制服姿となった。

 

「キティ、いらっしゃい。もう大丈夫デース。」

「アレックスっ...!」

 

キティと呼ばれた少女はオール、その正体であるアレクシアに取り乱した様子で抱き着いた。

そんな妹の姿を見て、配慮に欠けた物言いをしてしまったとアルジェントことシャノンは反省。

詫びの気持ちを込めて、遠慮がちにキティの頭を撫でる。

 

「ごめんね、キャサリン...。もしかして、あの時の夢を見せられたの...?」

「うん...。」

「大丈夫、アタシとアレックスがいるわ...。」

「......ありがとう...。」

「お礼を言うのはワタシたちの方デース。キティのおかげで助かりまシタ!」

「そうよ。責めたりしてごめんなさい。本当によくがんばったわね、キティ。」

「えへへ...///」

 

まだ幼い妹を優しく慰める二人の姉。

そんな三姉妹の憩いの時間を、無作法に邪魔する者が一人。

 

「大丈夫ですか?アレクシアさん。」

「...ヴァーツ、デスか。」

 

どこからともなく現れたヴァーツ。

心配そうな表情を浮かべ、ふよふよと三人に近づいてくる。

 

「まさかあなた方でも負けてしまうとは。エノルミータはやはり危険な相手ですね。」

「負けてないわよ!アイツらが思ったより卑怯だっただけ!次は絶対に叩き潰してやる...特にあのアズールってヤツだけは絶対に!!」

「前回も手加減をしていたから逃げられたんじゃないですか?次は本気でやらないと、今度は辱しめられるだけじゃ済まな」

「わざわざ嫌味を言いに来たのですか。」

 

反論するシャノンへ苦言を呈するヴァーツに対し、アレクシアは口調を取り繕うことも忘れてマスコットの言葉を遮る。

"それ以上喋るな"。

変身していない状態にも関わらず、彼女は最強たる由縁を示しとてつもないプレッシャーを放つ。

 

「...失礼しました。ただ、僕は心配しているだけなんですよ。」

「No problem。今回でエノルミータとベーゼが侮れないことが分かりました。ワタシたちを辱しめ、キティにトラウマを思い出させた落とし前。必ず付けさせます。」

 

最強を本気にさせる程の仕打ち。

まさに竜の逆鱗に触れてしまったエノルミータ。

その末路を想像し、白い妖精は貼り付いたような笑顔で寄り添い合う姉妹の背中を見送る。

 

「期待していますよ?アレクシア・ハートフィールドさん。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

◼️□Next episode◼️□

 

「おねーさま!わたくしもつよくてやさしいまほーしょーじょになりたいですの!」




◼️character profile□

【挿絵表示】

・名前 :アレクシア・ハートフィールド 
・年齢 :17歳
・身長 :170cm
・誕生日 :12/25
・好きな物 :妹たち、魔法少女、アメコミ、お寿司
・嫌いな物 :悪
・最近の悩み :ブラのサイズ変更が早い
・家族しか知らない秘密 :普段の眼鏡は伊達眼鏡

―――――――――――――――――――――――――――――
リアルとの兼ね合い、意欲の低下等もありエタらない為にも投稿頻度を【二週間に一度】に落とします。
待っている方がいれば申し訳ないとは思いますが、気が楽になるのでこの方針にさせてください。

次回は1/25(土)0:00投稿予定です。
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