魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

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みなさん、お久しぶりです。
お待たせしてすみませんでした...。(待ってない)
ゆるやかにエタらないように頑張ります。
最低評価?も付いたのでもう怖いものなどないのです。


第37話『世界で一番嫌いだから』

「どうして何も話してくれないの...?変だよ...薫子ちゃん...。」

「...。」

 

普段は生徒たちの隠れた憩いの場(立ち入り禁止)であるはずの、校舎屋上。

そんな人気のない場所で、似合わない悲痛な声を上げている人物がいた。

彼女は花菱はるか。

その糾弾の矛先は、天川薫子。

クラスでも仲良しと評判で、その正体は皆さんご存知魔法少女トレスマジアだ。

公私共にナイスコンビである二人が、何故こんなにも険悪な雰囲気なのか。

それは最強の魔法少女たちの来訪に端を発する。

彼女たちのエノルミータへの仕打ちについて意見が合わず、もう一人のメンバーであるベーゼが離脱。

エノルミータへ降ってしまうという事態を招いたのである。

そんなベーゼを擁護するはるかと、頑なに敵として排除しようとする薫子。

はるかの知る薫子なら、宿敵を他人に委ねたり、仲間であるベーゼをきっぱりと敵扱いすることなど出来るはずがない。

明らかに薫子の様子はおかしいのだ。

だからこそ、その理由を詳しく聞きたい。

自分の歪められた強化が原因であるのは知っていても、それだけで留まらない"何か"があるはず。

はるかの薫子への信頼が、その違和感を見逃すことを許さなかった。

 

「どうして...どうして何も言ってくれないの...?」

「...。」

「薫子ちゃん...!」

「ふわぁ~...んだようっせーなぁ~...。」

「!?」

 

二人しかいないはずの屋上。

実は、そう思っていただけだった。

ちょうど二人から死角になっている入り口の屋根上から、聞き覚えのある不機嫌な声が耳に届く。

 

「き、キウィちゃん!?」

「はるかっぴとひんにゅー。アタシ昼寝してんだからさ~。ケンカなら他でやれっての~。」

「ち、違うよ?別にあたしたち、ケンカしてるわけじゃ...。」

 

屋根からスタッと二人の間に降り立つキウィ。

いつも通りの気の抜けた声で昼寝を邪魔されたと抗議するが、普段よりどこか雰囲気がピリピリしている。

一体どの辺りから話を聞かれていたのか。

魔法少女であることがバレていないか、はるかはまた別の不安に苛まれつつも、出来る限りの平静を装う。

 

「どっからどー見てもケンカっしょ。しかもわりぃのコイツっぽいし。おら、さっさとはるかっぴに謝ればかひんにゅー。」

「...。」

「なに無視してんだてめー...。」

「...失せろ、うざったいねん。」

「んだと!?」

 

実際、二人は知る由もないが。

キウィは二人の正体などとうの昔に知っている。

だから何故揉めているのかも分かっているし、原因が自分たちにあるのも自覚済。

一応罪悪感を抱かないわけでもないので、さっさと仲直りして欲しいと思わないでもない。

ただ、どうしても薫子のことは気に食わなかった。

今やキウィにとって最愛の人第二位である柊うてなを、あっさり裏切り者認定しやがったのが許せないし。

何より、妙に納得出来たその正体から理解した薫子という人間と、あまりにも不一致な言動と行動が堪らなく不快だった。

薫子もサルファも大嫌いで、こんな奴どうでもいいはずなのに。

今までやってきた戦いや口喧嘩が、全部無駄になったような。

そんな自分でも飲み込み切れない感情がキウィの苛立ちを煽っていた。

予想以上のムカつく態度に、キウィは感情のまま薫子の胸ぐらを掴む。

 

「やめてキウィちゃん...!」

「おめえはるかっぴがこんな顔してんのに何で何も言わねぇんだよ!」

「あんたに関係あらへんやろ...。」

「あぁお前なんかどうでもいい!でもお前がそんなだとアタシの友だちがみんな暗い顔すんだよ!クソ迷惑なんだよこのあほ!」

「心底ムカつく奴やな...!」

「やめてよぅ...!」

 

止めるはるかを完全に蚊帳の外に置き、二人はいよいよ掴み合いのケンカを始める。

途方に暮れたはるかが小夜に電話で助けを求めるまで、怒り任せのぶつかり合いは続くのであった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「ついに来まシタ!アッキッハッバラー!!」

「急展開だなぁ...。」

 

色々あった分、今度こそヲタクライフを取り戻そうとしていた週末。

気付けば私は、辺り一帯をサブカルに彩られたヲタクの総本山。

世界の"アキバ"に立ち尽くしていた。

隣にはテンション爆上がりの金髪美少女外国人さんこと、アレクシアさんが。

 

そもそも彼女から『アキバに行きたいデース!』と誘われたのが始まりで。

断れない流され気質の私が、目をキラキラと輝かせる美人さんを無下に出来るわけもなく。

今もグイグイと押し付けられる立派なダイナマイトに、ただ顔を赤らめて引っ張られるしかなかったのです。

 

「ウテナ!オススメはどこデス!?やっぱりここはラジオ会館デスか!?本物はタイムマシンが突き刺さってないデース!!」

「ぁ、アレクシアさん...当たって...あと私そんなに来たことないから案内はその...///」

「う・て・な?(ニッコリ)」

「ひぃっ!?」

 

殺気!?

本能的な命の危険を感じて直ぐ様アレクシアさんのたわわから身体を飛び離す。

まるで二人で来ているような説明だったけど、実際はかなりの大所帯だったりします。

 

「随分仲がいいのね?年上好きとは意外だったわぁ(ニッコリ)」

「え!?ぃや、これは...違うくてぇ...!」

「アレックス、少しは落ち着いてよね。恥ずかしいのはアタシたちなんだから。」

「Oh!シャノンたちがlow過ぎるだけデース!」

「無駄に凡人が多いわね。邪魔、不快。早急に減らすべきよ。」

「キョロキョロ...。」

 

笑顔のまま私に怒気を放つ小夜ちゃんと、不思議そうに辺りを見渡すこりすちゃん。

更に嵐の留学生ことシャノンさんに、その妹のキャサリンちゃん。

総勢6名での大遠征となっていた。

 

「そ、それにしても...まさかシャノンさんたちが三姉妹だったなんて...。」

「ハイ!シャナとキティ!ワタシの自慢の妹たちデスよ!」

「暑っ苦しいから引っ付かないでって。」

「ワタシはあったかくて好き。」

 

嬉しそうに妹さんたちを抱き締めるアレクシアさん。

髪色とかあんまり似てないし、反応も正反対みたいだけど。

幸せそうで素敵な姉妹だなって思う。

みんな美人だし。

 

「あなたがキャサリンちゃんね?いつもこりすと仲良くしてくれてありがとう。私は水神小夜。よろしくね?」

「子ども扱いしないで。仲良くしてないし、アンタとも仲良くするつもりはないんだから。」

「そうなの?私は仲良くしたいんだけれど。」

「ワタシ様は違うって言ってるでしょ!ふんっ!」

 

視線を合わせて自己紹介する小夜ちゃんを過剰に拒否するキャサリンちゃん。

プンプンしててあれはあれで可愛いけど、早速嫌われちゃったのかな?

小夜ちゃんに落ち度があるようには見えないけど。

 

「ムッ...。」

「なによチビッ子。ワタシ様に文句があるって言うの?」

「ジッ...。」

「生意気なガキね...!」

 

小夜ちゃんへの態度が気に食わなかったのか、珍しく感情の籠った瞳で睨みつけるこりすちゃん。

ちなみに背丈も年齢もどっちもチビッ子である。

可愛い。

どことなく二人の抱えている人形とアイボも主人のように睨み合っているように見える。

実はあの人形、ロボ子ちゃんのOFFモードだったりする。

正体を隠す為に後付けでアップデートしたんだとか。

エノルミータ脅威のメカニズムだね。

 

「そこまでにしなよ、キティ。サヨに失礼でしょ?」

「...ごめんなさい、シャナ。」

「謝るならサヨにね。」

「っ...悪かったわよ...。」

「無理しなくていいわ。こりすも、クラスメイトなんだから仲良くね?」

「...コクリ。」

 

意外にも嗜めたのはシャノンさん。

キャサリンちゃんもお姉さんには素直みたいで、嫌々ながらも何とか場は治まった。

 

「姉妹仲が良いのは分かったけど、シャノンがアキバに興味があるなんてね。」

「あの姉のせいで多少は知識あるのよ。まあ、今日はサヨがいるから来ただけ。もっと仲良くなりたかったし。」

「そ、そうなの...?」

 

自然に小夜ちゃんとの距離を物理的に詰めていく泥棒猫(キウィちゃん談)。

クラスでは相変わらず一匹狼風なのに、何故か小夜ちゃんにだけはデレデレなんだよね。

見る目があると褒めたいところだけど、意外と嫉妬深いらしい私はいつも気が気じゃない。

 

「今からでも二人っきりでデートをしない?アタシなら、サヨを退屈させない自信があるよ?」

「あ、あはは...今日はみんなで仲良く遊びに来たわけだから...」

「じゃあ、あなたの話を聞かせて?サヨのこともっと知って、もっと好きになりたいな。」

「す...?///」

 

あーもう。

小夜ちゃんだってデレデレして人のこと言えないと思う。

どーせ銀髪パーフェクト美少女に私みたいな根暗ヲタクジャパニーズは勝てませんよーだ。

キウィちゃんに言いつけちゃうもん。

小夜ちゃんのばか。

 

「そ、それにしても!?キウィが来ないなんて意外ね!?こういう時意地でもついて来そうなのに!」

「あ、うん。今日はお母さんと約束があるとかで、残念そうにしてたよ。」

 

残念そうって言うか、『アタシの代わりにあのアマからさよちゃん守って!(血涙)』って感じだったけど。

外せない用事は仕方ないけど、どう考えても私じゃ役不足だと思う。

私にはキウィちゃんみたいな勝負根性はないし、小夜ちゃんに捨てられた子犬みたいな視線を向けるだけで精一杯。

先行きがすごく不安だ...。

 

「ウテナ!早くいきまショウ!Let's Go!」

「わっ!?ちょ、ちょっと!?」

「サヨ、アタシから離れないでね?」

「えっ、近っ!?」

「迷子になるんじゃないわよチビッ子。」

「ムスゥ...!」

 

私はアレクシアさんに、小夜ちゃんはシャノンさんに。

同じ方向ながら別々に引っ張られてしまって、その様相はまるでトリプルデート。

小夜ちゃんトラレルな状況にメンタルがぐちゃぐちゃになりながら、ついに波乱のアキバ観光がスタートする。

というか、小学生コンビが最後尾なのはまずいと思うんですけど。

真ん中の小夜ちゃんたちがそこに気付くよう祈りながら、私はまたアレクシアさんのたわわに腕の感覚を持っていかれるのでした。

最早凶器ですね、二つの意味で。

なんつって。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「てな感じでよろ。」

「いや無茶だろ。」

「あんたやっぱバカ?」

「うっせぇめちゃばか!副そーすいめーれーだっつってんだろ!」

「パワハラよね。」

「モラハラもあんなこれ。」

 

小夜たちがハートフィールド三姉妹と観光を楽しんでいる中、残りのエノルミータの面々は一応シリアスな雰囲気で臨時作戦会議に興じていた。

 

「たまネモは足止めしてくれりゃいいって言ってんじゃん!」

「いやだからさ。」

「流石に二人だけで()()()()()J()S()T()()()()()は現実的じゃないでしょ。死ぬわよ?今度こそ。」

「真珠がまた現実を語ってる...!?」

「やっぱりはっ倒すわよ?」

 

デート中に呼び出されたかと思えば、"サルファとタイマンするので邪魔者を足止めしろ"といきなりの無茶振りをされたのである。

真化を会得し自分に自信を持てたたまネモだったが、いくらなんでも倍の人数を、それも半分が化け物染みた強さである敵を相手に出来ると思う程自惚れてはいなかった。

 

「いいから言うこと聞けってのぉ!」

「ダメね、ぜんっぜん話聞いてないわコイツ。」

「参ったなぁ。店長にヘルプ頼むか?」

「あの人たち病み上がりじゃない。ていうか、あんたの中でロードさまってもう気軽に連絡するレベルの相手なのね...。」

 

藁をもすがる思いでイミタシオの名前を上げてみるが、あちらに協力するメリットが無さ過ぎる。

第一、ついこの間借りを作ったばかりだし。

シスタ捜索に本腰を入れている彼女たちの邪魔をしたいとも思わなかった。

 

「なあ?せめて小夜たちがいる時にしようぜ?何で今さら急にサルファをぶっ飛ばしたいってなったんだよ?」

「最初からずっとぶっ飛ばしたかったんだよ!今なのは気分だよ気分!」

「ケンカでもしたわけ?」

「してないし...。」

「したわね。」

「ああ、したんだな。」

「してねぇって言ってんじゃん!」

 

感情のままに動くキウィのことだ、大体原因は単純なことが多い。

ただ、たまネモもキウィが本当に単純でバカな生き物だとは思っていない。

意外と仲間想いだったり、頭を使うこともある。

そんなキウィが二人を危険に晒すような無茶苦茶なワガママを言うのには特別な理由があるはず。

そう考えるくらいには、真珠もネモもキウィのことを信頼しているのだった。

 

「...いい加減我慢出来なくなったわけ?うてなとか、はるかへの態度に。」

「......あのひんにゅー、ムカつくんだよ。」

「...はぁ。そーゆうことね。お前、今回は()()()()()なんだな?」

 

小夜とうてながいる時ではダメなのだ。

薫子が傷つく姿をうてなに見せるのも、()()()()()()()()()()姿()を小夜に見せるのも嫌だ。

大切な二人を傷つけない為に、その心配をしないで済むように。

死ぬ気の、本気中の本気で戦えるように。

今このタイミングを逃すわけにいかないというわけだ。

 

「...アンタの気持ちは分かるわ。でも、ただ痛め付ければ何とかなる話なわけ?キウィと薫子がそーゆう戦いをするの、小夜たちが嫌がるって分かってんのよね?」

「...分かってんよ。でも、こうするしかないって思ったから...なんかわかんないけど、アタシがやらなきゃって...アタシしかやれねーだろ、これは。」

「キウィ、お前...。」

 

ネモも友人として、これ以上あの薫子を見ているのは辛いと思っていた。

だからと言って、根性叩き直してやると思えるわけでもない。

きっとそれが出来るのは、誰よりも彼女が嫌いで。

誰よりも彼女を認めている、ライバルにしか出来ないことなのだろう。

 

「だから、アタシがぶっ潰す。あのムカつく面をボコボコにして、性根も何もかもぶっ飛ばして。今日、アタシがマジアサルファを終わらせんだよ。」

「...どーすんの?ネモ。」

「どうするって...やるしか、ないんじゃないか?」

「意地っ張りよね、アンタも。」

「熱いじゃんか、こーゆうの。」

「少年漫画読み過ぎよ、バカ。」

 

勿論、ヤバくなったら全力で逃げる前提で。

言葉にしなくてもその辺りの認識を一致させ、たまネモはこの無茶振りを受け入れることにした。

 

「で?いつ始めんのよ?」

「いま!」

「準備くらいさせなさいよ。」

「マイクテスト?」

「メイク直さないと。」

「ノリノリかよ...。」

 

三人になるとシリアスとコメディどっち着かずになりがちなこのトリオ。

文句を言いつつゲートを開き、いよいよ持ち場に移動する。

 

作戦はこう。

まず薫子の家近くでキウィがわざと変身し、サルファを誘き出す。

そのまま都心から離れた森へ移動、たまネモは万が一他の魔法少女が現れた時の足止め要員だ。

なるべく援軍が遅れるように人里離れてみるわけだが、敵は全員飛べるのでいまいち意味があるかは分からない。

ほぼ気持ちの問題である。

たまネモに出来るのは一分一秒でも早くキウィが勝利してくれるのを祈ることだけだった。

 

「大体一騎討ちって悪役が負けるよな。」

「空気読みなさいよ...。」

 

今日ばかりは悪役にも加護が欲しい。

不安でソワソワした感情のまま、ついに作戦の火蓋が切って落とされる。

 

『んじゃ、始めっから~。』

『あいよ。』

『負けたら承知しないわよ!』

 

キウィはレオパルトに変身。

魔力を漲らせて、煽るようにサルファを誘う。

 

数分して、狙い通りマジアサルファが現れる。

無言で睨み合う二人。

いつものような罵倒もなく、冷たい視線を交わしているだけだ。

"ついて来い。"

そう話すように飛び立つレオに、サルファは素直に追従する。

何ともハードでシリアスな雰囲気。

たまネモはそれを見ることも出来ず、何となく『あっ。今飛んで来てるなぁ。』くらいにしか分かっていないわけだが。

 

「どういうつもりや。」

「...決まってんだろ。」

 

人気のない森で向かい合う、宿命のライバル同士。

サルファの質問の意味より、苛立ちをぶつけたいだけの言葉に、レオは自分の覚悟を再確認するかのように言い返す。

 

「決着つけんぞ、クソひんにゅー。」

 

レオパルトVSマジアサルファ。

因縁の対決が今、始まる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「Oh!近所のマジメイトよりSo big!お宝ざっくざっくデース!」

「しゅ、しゅごい...!これが店舗限定アクリルスタンドなんだぁ!」

 

アキバ観光はまあ、予想通り盛り上がった。

アレクシアさんとうてなは有名マイナー問わず行く先々の店舗で大興奮。

心配になるくらい片っ端から買おうとするから、私とシャノンさんで手綱を握るのが大変だった。

 

「パァァ...!」

「可愛いお人形さんがいっぱいね。」

 

こりすは"ドール"が気になったみたい。

キャラクターを人形で再現した、それなりにニッチなジャンル。

値段を見てしょんぼりしてたけど、ドール用のお洋服はロボ子(お人形フォーム)の着せ替えに使えそうだったから、手頃なものをプレゼントしてあげた。

オタクの街と言いつつ、小学生が楽しむにはちょっと年齢層が上だと不安だったんだけど、喜んでもらえて一安心。

そうそう、小学生と言えば。

 

「は?何でこのパーツがこんな値段で...これも、あれも...!ジャパンは円安をもっと深刻に考えるべきだわ!」

 

キャサリンちゃんはパソコンか何かの部品?つまり"電気街"としての側面に引き込まれたらしく。

小学生とは思えない難しい単語を呟きながらそこかしこのパーツを手に取っては購入していた。

買い過ぎてシャノンさんに優しく怒られてた。

お姉さんたちと接してる時は年相応だけど、もしかしてすごく頭が良い感じの子なのでは?

天才枠は今まで知り合いにはいなかったし、まほあこにもいずれはそんなキャラが出てきていたのかもしれない...。

えっちい目に遭わせられるように小学生は避けるだろうけどね。

酷い作品ですよほんと。

 

「ふぅ...ちょっと休憩。」

「はい、サヨ。コーヒー嫌いじゃなければ。」

「いいの?ありがとう。」

「どういたしまして。」

 

ベンチに座って小休憩。

なかなか見晴らしのいい場所から景色を眺め、缶コーヒーを一口。

見えるのほぼ電車だけだけど。

 

反対側のベンチではうてなとアレクシアさんがランダム物のグッズを開封中。

懐が広いのか浮気性なのか、基本何が出ても大喜びしているようだ。

いいオタクだな、二人とも。

ちょっと悔しいけど、うてながあんなに自然に仲良く出来る人が出来たのは素直に嬉しいかも。

 

「サヨも何か買ったの?」

「記念程度にちょっとは。お小遣いが多いわけじゃないから。」

「日本は節約を美徳としていると聞いたわ。アレックスたちにも少しは見習って欲しいよ。」

「"ある分使っていい"だと何かあった時心配だって、うてなには注意してるんだけど。そう言うシャノンさんは買い物したの?」

「さんはいらないって。まあ、何冊か本を。」

「そういえば、ライトノベルのコーナーをよく見てたわね。好きなの?」

「...そこそこ?」

「あ、今誤魔化したでしょ?」

 

今日のこの時間だけで、大分自然にシャノンと話せるようになったと思う。

学校での振る舞いや突然ガールフレンドとか言われて必要以上に警戒してしまっていたようだ。

接してみて分かったけど、彼女は身内と外の温度差をわざと激しくしている。

口調はキツくても姉妹には優しいし、友だちと判断した私とうてなにはトゲなく普通に会話してくれる。

つまり、人一倍警戒心が強いのだ。

自分や身内が隙を見せないように、万が一がないように内に入れるのは最小限。

自分が見張れる範囲を徹底して、大切が増え過ぎて溢れやすくなることもない分量を見極めているような。

裏を返せば"自分は器が小さい"という卑屈な自覚がそこにはあるのかもしれない。

その辺りの感覚は共感出来るものがある。

 

「...ファンタジー、昔から好きなのよ。魔法とか、不思議な生き物とか。」

「ハリ○タとか好きなタイプだ?」

「好きよ悪い?グランマだって気に入ってたし...///」

「悪いだなんてそんな。ただ、意外と親しみやすいなって。」

「好きになっちゃった?」

「友だちとしては。」

「oops。大和撫子は手強いね。」

「ふふっ、奥ゆかしさも美徳なのよ?」

「確かに、素敵かも。」

 

思った以上に、波長が合う子なのかもしれない。

ガールフレンド云々はともかく、友だちとしては上手くやっていけそうだ。

 

「ワクワク。」

「ふーん。服のセンスはまあまあね。ま、お人形遊びなんて子どもっぽくて興味ないけど。」

「ムカッ!」

「なによ!アーサーはおもちゃじゃなくて友だちなの!今日買ったパーツでもっとカッコよく出来るんだから!」

「ジー。」

「......別に、撫でてもいいけど...。」

「コクリ。」

「アーサーはすごいのよ!本物の犬より賢いんだから!」

 

チビッ子コンビも何だかんだ距離が縮まった様子。

相変わらずツンツンしているキャサリンちゃんだが、こりすがアイボに興味津々なことで悪い気はしてないみたい。

そんな二人を見て、シャノンが少し嬉しそうに微笑んだ。

 

「キティが同い年の子と楽しそうにしてるの、すごく久しぶり。」

「そうなの?」

「あの子、昔から友だち少なくて。」

「シャノンに似て?」

「まあ、否定はしない。ただキティは私と違って、()()()()()()()()の。」

 

コーヒーが少し苦かったのか、眉を一瞬険しくてシャノンは話を続けていく。

少々真剣な話題になりそうだ。

 

「キティはね、"天才"なの。物心ついた頃から私たちの分からない理論や数式を理解して、飛び級も当たり前の、ニュースになるくらいの天才児。」

「え!?really!?」

「Yes。英語の発音はいまいちね。」

 

驚き過ぎて思わず中学英語が飛び出てしまった。

本当に天才キャラだったとは。

シャノンも学業は人並み外れてると思うけど、語り口的にキャサリンちゃんはそんなレベルじゃないらしい。

 

「同年代の子と話が合うわけないでしょ?それでも、勉強は楽しかったみたいで。寂しさは家族が埋めて、順当に行けば大学も卒業するはずだった。」

「はずだった...?」

「事件があったの。"誘拐"されたのよ、キティが。」

 

誘拐。

映画やアニメの世界ではよく題材になるイメージがあるが、現実で特にアメリカでは非常に多い犯罪だと聞く。

ニュースになる程の天才少女。

身代金目的にしろ、彼女本人が目的にしろ、恰好の標的だと分かる。

 

「理由はまあ、お金とか色々で。何とか犯人は捕まって、キティに怪我はなかった。けど、心は無事じゃなかった。元から他人と接し方が分からない小さな女の子が、他人に恐怖を植え付けられたの。それ以来、キティは壁を作るようになった。あの子にとって、家族以外は全員敵。...最近はちょっとだけマシになったみたいだけど。」

「それは、何というか...大変、だったのね。」

 

気軽に接してしまったことを少し後悔する。

魔法やら魔物やらで、脅威と危険は非日常から来るとばかり思っていたが。

どんな世界にも人間の悪意は確固として存在する。

この姉妹はそんな悪意の被害者なのだ。

キャサリンちゃんだけでなく、それは家族にとってもトラウマになったはずで。

 

「シャノン...もしかしてあなたも?」

「...キティが誘拐された時、すぐ側にアタシもいたの。なのに、助けられなかった。今でも後悔してる。アタシがもっと注意してれば。強ければって。」

 

自分がもしその立場だったのなら。

私は彼女と同じように大切なもの"だけ"を絶対に守れる生き方をするだろう。

たとえ周囲を気遣える優しさがあったとしても、その余裕すら許さない。

そうしていないと不安でとても生きた心地がしないから。

 

「変わったのはアタシだけじゃない。アレックスって、昔はもっとお人好しだったの。」

「今でも優しいお姉さんに見えるけど...。」

「それはサヨたちが善人だから。アレックスはもう、容赦が出来ない。万が一アタシたちに危害を加えるモノがあれば、反省のチャンスは絶対に与えない。優しくない、笑ってないアレックスが出てくるってこと。」

 

何かぼかされている感覚があるが、言葉から来る印象は理解出来る。

善とか悪とか、ハッキリさせるのはむずかしいと思うが。

そこを無理矢理にでも線引きする覚悟が、アレクシアさんにはあるということだろう。

大切なモノを守る為に。

 

「...湿気った話をしてしまったわね。sorry。楽しませるって豪語したのにさ。」

「いえ...。話してくれて、ありがとう。」

「お腹空かない?アキバにはケバブがあるんでしょ?アメリカとどっちが美味しいか試してあげる。」

 

そう言って他のみんなに呼び掛けるシャノンの背中を眺めて、缶コーヒーを一気に飲み干す。

いつもより、少し苦く感じる。

 

私たちって、果たして本当に善人なのだろうか。

エノルミータは悪の組織なわけで。

シャノンたちから見た私たちは、たぶん。

やっぱりどう考えても、ただの悪党なんだろうな。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「おらおらぁ!!」

「何もかもうっとおしいヤツやなぁ...!」

 

森林を飛び交う無数の弾丸に爆薬。

ただ一人を標的としたその激しい攻撃の余波で、中心地は最早森林とは呼べない有り様へと変貌していた。

悪の組織らしい立派な自然破壊である。

 

「豆鉄砲が効くかボケ!!」

「効かねぇならバリアに隠れんのやめろよこのあほ!!」

 

辺りの惨状とは正反対に、対峙するサルファに目立った傷は見られない。

彼女の堅牢な障壁が攻撃を防いでいるのはいつも通りだが、今回は一味違う。

戦う度に成長するヒロインらしく、ついにガントレットを出しながらの障壁展開が可能となっていた。

防ぐだけでなく、弾き、潰し。

確実にレオパルトに接近していく。

 

彼女たちの戦いを語る上で、その圧倒的な"射程の差"は外せない。

数多の銃火器を操るレオと、拳しか攻撃方法のないサルファ。

あまりにもレオが優勢に思えるこの差だが、今までサルファが楽々と倒されたことは一度としてない。

不利な状況を何度も経験した上生き延びたということは、元より戦闘センスが頭抜けているサルファには大きなアドバンテージ。

つまり、同じ様な戦い方では射程の差など勝負を分ける要因足りえないわけで。

 

「入ったで...射程距離!」

「ちっ...!」

 

いつの間にか目の前にまで迫って来ていた宿敵を前に、レオは心底不愉快な顔をする。

"さっきまで不景気な顔をしていたこのペタン娘のことだ、戦いも腑抜けた感じに違いない。きっと気持ちよく蜂の巣に出来る!"と思っていたのに。

何だか動きに関してはいつもよりいいかもしれない。

大変にムカつく。

ムカ着火ファイヤー。

なんて考えつつ、振り抜かれるガントレットを睨み付ける。

普段通りで戦えば負けるのはどちらか。

それを分かっていないレオパルトではなかった。

 

サルファの拳にスモークグレネードをぶつけ爆破。

周囲を煙で満たしてサルファの視界を奪う。

見えないのはレオも同じだが、仕掛けた側のアドバンテージがある。

当然、サルファはこう思うはず。

 

「小賢しい手で後ろから撃つつもりやな卑怯もん...!」

 

見えない状況なら再び距離を離し、安全圏から射撃を行うのが得策。

勿論、分かっている。

()()()()()()()()()のだとレオは笑う。

 

「おまえの想像どーりになんて動いてやるかばぁか!!」

「がはっ!?」

 

サルファの真下から。

顎を狙って爆煙を纏ったアッパーが炸裂する。

レオは離れてなどいなかった。

移動したと見せかけてすぐ側に屈み込み、四つ足で飛び上がった勢いのままサルファを殴り付ける。

それもただの殴打ではない。

"本気モード"となった彼女の拳は爆破を伴ってサルファの肌を焼き付ける。

その突然走る痛みと衝撃は、彼女の意識を一瞬飛ばしかけてしまうほどだ。

 

「ぐっ...そ...!!」

「わんつーわんつーってな!!」

 

そのままインファイトで拳を放ち続けるレオ。

この日の為、ボクシング系インフルエンサーの動画をそれなりに真剣に見ていた成果が出た。

それっぽいボクシングな動きでサルファのガードの隙を突いていく。

この戦法を選んだのは"直で殴りたかった"という個人的感情が主だが、実は理に叶ってもいた。

破壊力の為巨大に設定されたガントレットは大振り過ぎて、あまりに肉薄すると当てることが困難なのだ。

対するレオは小さくて可愛いお手々のままかつ、破壊力を爆破で補える。

まさに一挙両得な名戦法となっていた。

 

名付けて、"猫パンチ大作戦"。

キュート&デンジャラスが座右の銘なレオは、こんなシリアスな場面でも遊び心を忘れたりしないのである。

 

「猫パンチ!猫パンチ!」

「調子に、乗んなやっ...!!」

「ぶげっ!?」

 

長々と解説したが、そんな思いつき作戦で終わる程サルファはヤワではない。

煙も晴れてレオの動きに慣れてきたタイミングで、足に貯めた魔力を炸裂。

鋭い蹴りをレオのツルツルなお腹に突き刺す。

キュートじゃない声を上げて吹っ飛び、そのまま木に激突。

痛みに悶絶しながら何とか立ち上がってみせた。

 

「ぅっ...ふぅ...ふぅ...ってぇな...くそひんにゅー...。」

「ハァ...ハァ...ペッ!...血ぃで昼食ったたこ焼きの味忘れてしもた。どうしてくれんねんこん化け猫...。」

 

憎まれ口を叩いてはいるが、お互いにダメージは小さくない。

これ以上の遊びは不要と、ほぼ同時に真の本気スイッチを点火する。

 

『『真化(ラ・ヴェリタ)ッ!』』

 

真化形態へと変化し、再び互いの得意距離の押し付け合いを始める。

弾数が減った分、一発の威力と速度が格段に上昇したレオ。

しかし、優勢になったのはサルファの方だった。

圧倒的速度でレーザーを回避し徐々にその姿すらレオには捉えられなくなっていく。

 

「くそ!んで当たんないんだよ...!!」

「レーザーやろうとなんやろうと、撃っとんのが人間ならいくらでも避けようがあんねん!」

 

ネタバラシは簡単。

レーザーよりも速く動いているのではなく、向けられたアームの方向から弾道を予測しているだけ。

もっとも、それを可能にしているのはサルファの胆力と目と、雷の素早さがあるからこそ。

サルファにしか出来ない"レオパルト攻略法"がこれだった。

 

「さっきの仕返しや!たっぷり味わってき!!」

「がふっ...!?」

 

レーザーの合間を縫って、光速の拳が着実にレオの身体に叩き込まれていく。

ダメージを負えば負うほど、レオの攻撃頻度と精度は落ちてゆく。

互角だったはずの戦いは、一気に大勢決したかに思われた。

 

「あんたの負けや...!!」

「ぺっ...んなわけねーだろひんにゅー。」

「は...?」

 

パシュン、と。

細い光が、飛び回るサルファの左足を撃ち抜いた。

目の前のレオのアームはだらんと地面へ向いていて、レーザーを放った様子がない。

呆気に取られていたサルファの視界の端に、()()()()()()()のようなモノが映る。

 

「ぱぁん...。」

「い"っあ"ぁ...!?」

 

気の抜けた合図と共に、先程の細い光が四方から放たれ、サルファの四肢を貫いて彼女を地面へと叩き落とす。

痛み以上に一瞬の出来事に理解が追い付かず、サルファはゆっくりと近づいて来る宿敵の顔を見上げる。

 

「おまえさぁ、"ビット"って知ってる?」

「ビッ...ト...?」

「そー。アタシもアリスにプラモ作ってやるまでは知んなかったんだけどさぁ。頭で操作するロボット的なの。なんか使えそうだな~って思ってたんだけど、アズールちゃんには細かくてめんどっちいって言われててさ~。今まで試してなかったんだよね~。」

 

ぼんやりした説明で語られるビットという兵器。

某有名ロボットアニメで、また別の呼び名で親しまれているそれは、高度な空間認識能力等が必要で凡人に操るのは不可能と言われている。

だが事実として、レオはそのじゃじゃ馬を難なく御してみせた。

今も彼女に付き従って、背後でサルファの動きを観察しているように見える。

 

「喜べよサルファ。お前用の新兵器ってやつだ。」

「うち、用やと...?」

「お前が何で負けるのかってさぁ。今から教えてやんよ~。」

 

這いつくばるサルファにしゃがんで顔を近づけ、飄々としていた表情を怒りに満ちた険しいものへと一変させる。

 

「お前、アタシのこと見下してんだろ?」

「何を」

「アタシだけじゃねぇ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がよ。」

「は...?」

 

てっきりいつもの売り言葉に買い言葉だと思っていたところに、仲間すら見下していると突き付けられるサルファ。

すぐに言い返すことが出来ず、間抜けな相槌をするだけに留まる。

 

「守らなきゃいけないっていうんはさ、"おめーアタシより弱いぞ"ってのと同じじゃん。失敗したことのあるやつがんなこと言われたらさ、"成長すると思われてない"って誰だって分かるっしょ。」

「!?」

 

レオの言葉に思い出すのは、仲間だったはずの二人が見せた、困ったようで悲しげな笑顔。

自分が守る、自分が強くなる。

それでいいと思っていた時に、どうしても自分だけじゃ解決出来ない問題が起きて。

気付いた時には二人を遠ざけて、戦う意味すら失っていたのに。

何故自分がそうしたのかも分からなかった。

どうしてと考えれば考えるほどに、頭に黒いモヤが広がるようで。

 

「アタシらが強くなるってフツーのこと。考えなかったおめえの負けだ。マジアサルファ。」

 

吐き捨てた勝利宣言と共に、トドメの光が一斉にサルファへと放たれる。

回避出来ず、レーザーはサルファを無慈悲に直撃。

プスプスと煙を上げる彼女の身体は動かず、レオはつまらなさそうな顔でその場を立ち去ろうと踵を返す。

 

「...お、まぇ...に...」

「!...ゴキブリかよ...。」

「オマエニ...ナニガワカル...!!」

「な、なんだぁ...!?」

 

戦闘不能になったはずのサルファ。

ボロボロのその背中から、()()()()()()()が突き出す。

その異様な光景に既視感を抱きながら、レオはサルファの"らしくなさの原因"を悟る。

 

「んだよ...やっぱなんかされてたんかおまえ!!」

「カつ...絶対に、マケナイ...っ!!」

「やっべ...!?」

 

咆哮と共に身体全体から撃ち込まれる闇の塊。

咄嗟に全力で放ったシュトラールとぶつかり合い、辺り一帯は凄まじい光と爆発に包まれていった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「えぇ...何よあれやり過ぎじゃない...?」

「作品間違えてねぇか?」

 

実際かなり離れているはずのここからでも分かる爆発音と閃光。

ぶわっと吹き荒ぶ風に思わずドン引きするたまネモ。

顔を青くしながらも、しっかりと真珠のパンツを確認していたのは内緒だ。

 

「こんだけドンパチしてたらどう考えてもアイツら来んだろ...。」

「隠しようがないじゃないこんなの。ヤバくない?普通に警察とかも来ちゃうわよね?」

 

彼女たちがスタンバイしてから20分程。

終了連絡があるどころか戦闘はどんどん派手になっているらしく、トラウマのJ.S.Tどころか警察がやって来て取り調べされそうなくらい、周囲への被害がスゴいことになってきていた。

ばっくれたい気持ちとキウィが心配な気持ちが鬩ぎ合い、やっぱり帰ろうかと傾きかけたタイミングで。

ついにその時はやって来た。

 

「!真珠あれ!マゼンタじゃないか!?」

「え!?...あ、ホントね!ピンクくて分かりやすい!」

 

ネモが指差す方向には戦場目掛けて真っ直ぐ飛んでくるピンク。ではなくマゼンタ色の魔法少女の姿が。

とりあえずJ.S.Tじゃなくて良かったと失礼にも安心した二人は変身。

最近足止めしてばっかりだな。

真化した割に地味だな、活躍が。

なんて考えつつ、自分たちの役割を果たすべく宿敵の元へと飛び立つ。

 

「ここで会ったが百年目!待ちなさいマジアマゼンタ!」

「ロコちゃん!?今はあたし、行かなきゃいけないの!邪魔しないで!」

「まあ待ちなさいって。あっちで何やってるのかロコが説明してあげるわよ。」

「え?ロコちゃんが...?」

 

凄まじい魔力反応がサルファの物であることに気付いたマゼンタは、お使いを断念してここまで一飛び。

最近の相棒のおかしな様子にいつも以上の不安を抱いていたのだが、事情を聞けるのであれば下手に振り払うより効率的かもしれない。

促されるままに、マゼンタはロコと共に地上へと降り立つ。

 

『はい確保ー。』

「あ!?ロコちゃんヒドい騙したの!?」

「ロコたち悪の組織よ?たまには悪いことしなきゃね。」

「悪事ってレベルかこれ...。」

 

手筈通り、影縫いでマゼンタを動けなくするルベル。

素直過ぎて相変わらず心配になるなと思いつつ、今日はシリアスにいこうとロコは自制して会話を続けることにする。

 

「説明しないとは言ってないわよ。この先でレオとサルファが戦ってんの。一対一で。あんたたちの為にね。」

「二人が!?...あたしたちの為にって...」

「サルファじゃないわよ?レオがあんたたちの為に戦ってやってんの。」

「ど、どうして...!?」

「ベーゼの為とかアズールの為とかあるんだろうけど。一番はやっぱり自分の為じゃないの?スッキリしたいんでしょ、アイツも。」

『結局自分の為じゃんか。』

「うっさいわね!こう言わないと邪魔しないように説得出来ないかもでしょ!?」

 

ロコの話を聞いて、マゼンタは更なる罪悪感を覚えた。

自分のせいで悩ませてしまったサルファがベーゼを拒絶し、そのベーゼの為にレオが戦ってサルファが今傷ついている。

止めなくちゃいけない。

そう咄嗟に考えても、縛られた身体は言うことを聞いてはくれない。

 

「離して...!すぐに二人を止めなきゃ...!」

「この話聞いてまだ邪魔する気なの?」

「だってこれはあたしのせいで!」

「悲劇のヒロインぶるなっての!!」

「!?」

 

途端に声を荒らげるロコ。

マゼンタとついでにルベルまで驚かせ、ロコは面倒そうに溜め息を吐く。

自分のキャラじゃないと思いつつも、きっと他の誰も言わないだろうと納得してしまった。

ライバルのよしみで少しお説教してやろうと決意する。

 

「あんたのせいでこうなったんなら、何で何もしなかったわけ?ベーゼを引き留めたりサルファをひっぱたいたり、いつものマゼンタならもっと気持ちに正直に全力で動いてたはずでしょ?」

「それは...!」

「罪悪感で遠慮してんじゃないわよ。役立たずなんて思っちゃダメだって、そう言ったのはあんたでしょ?だからロコもルベルも、まだここにいるんじゃない。何でそう言ってくれたあんたが、一番自信なくしてんのよ。」

「っ...!」

 

リーダーなのにいつまでも真化出来ない自分が情けなかった。

それでも強くなろうとした矢先に、仲間を失望させる真化を会得してしまった。

仲間を、友だちを悩ませて。

結局足手まといであると証明してしまった。

こんな自分が何とかする!大丈夫!なんて言ったところで、二人を安心させることなんて出来るはずがない。

だからいつの間にか、ちょっとでも出来ることをと薫子に話を聞こうとしたり、喧嘩を止めてみたり。

そういう"やれることはやっている"という体裁だけを取るようになっていた。

 

「あたしっ...」

「まあ、エノルミータのロコたちが言えることじゃないけど。大切だったり信頼してるのに、ちょっと色々遠慮し過ぎなんじゃないの?今のトレスマジアって。」

『うちはもっと遠慮して欲しいけどな。』

「それはそう。」

 

思えばベーゼの暴走があってから、みんなそれぞれで抱えているモノを共有することもなかった。

"信用"と体の良い言い方をして、"自分に出来ることはこれしかない"と自分に言い聞かせ。

本当の意味で助けようとしていなかった。

そんなことも反省しないまま向かって、二人の戦いを止めることが出来るのだろうか?

 

「ロコたちが足止めしてんのはね、アンタの為でもあんのよ?時間はまだあるわ。どうしたらいいか、ちゃんと答えを出しなさいよね。」

「あたし...あたしは...。」

『今日なんだかIQ高いなロコ...。ちょっと感動した。』

「ふふん。バラドルもドラマ主演もいけんのよロコは。」

 

すっかりやって来るかもしれないJ.S.Tのことは忘れているロコルべ。

とある事情で彼女たちが街を離れていたのが不幸中の幸い。

悩むマゼンタを前方先輩面で見守りつつ、早く帰りたいという本音を飲み込む。

先程よりよく見えるようになった爆ぜる景色に向かって、小さくエールを送るのであった。

 

「負けんじゃないわよ、副総帥さま。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「んだそれ...!?ずるだろずるっ!?」

「ウチハ...マケヘン...!!」

 

背後から放つビットの攻撃も、まるで生きているかのように蠢く黒い翼に防がれた。

レオにとっては予想外過ぎる事態だ。

さっきまでムカつく奴を漸くボコボコにし、説教まで食らわせて完全勝利を成し遂げていたというのに。

何なんだこのひんにゅーマジアは。

負けを認めるどころか、正義の味方のくせに完全に悪堕ちし超暴走モードである。

ヒロイン特有の悩んでやらかすお決まりパターンだとばかり思っていたが、まさか本当に()()()()()()()とは。

こうなると、倒して目を覚まさせるのは仲間である魔法少女の役割だとベーゼやアズールなら思うのだろう。

だが、レオは違った。

レオにアニメのお約束は分からぬ。

彼女が抱く感情は単純。

翼がちょっとカッコよくてムカつくのと、他所からもらった力で戦っているのはズルいのでムカつくということ。

そして何より、()()()()()()()()()()()()自分と戦っていないのがめちゃくちゃにムカつくのである。

 

「くっそぉ~...なめやがって~...。」

 

銃口の潰れたアームを憎々しげに見つめる。

不意打ち魔力ぶっぱを咄嗟に光線で相殺した余波により、攻撃の要であるアームは甚大な損傷を受けた。

対するサルファは意識も不確かなものの、防衛本能的に翼で防御と迎撃を繰り出してくる状態。

決定打に欠けるレオが攻めあぐねるのは仕方のないことであった。

 

「ハァ...ハァ...これじゃケンカにもなんないじゃんか~...。」

 

忘れがちだが、真化はまだまだレオたちには消耗が激しい形態。

もう一時間近くも戦っている上に、ダメージも少なくない。

彼女のスタミナと魔力もついに限界を迎えていた。

 

「めんどっちい...痛いのやだ...アズールちゃんとえっちしたい...。」

 

泣き言というか本音を駄々漏れにしながら俯く。

真面目なのは本当に疲れる。

こんなのは向いてない。

分かっていたことだが、ちょっとカッコつけ過ぎたと後悔する。

でも、それも一瞬。

 

「キウィちゃん、いきまーす...。」

 

頑張ったらアズールとベーゼに褒められご褒美をもらえるに違いない。

そう無理矢理に自分をぶち上げ、彼女は最後の魔力を壊れたアームに集中させ宿敵(不調)に突っ込んでいく。

 

「カツ...カツンヤ...!!」

「かつやだぁ?アタシはバリバリのよしのや派じゃボケぇぇ!!!」

 

真面目に不真面目。

話す言葉とは裏腹の覚悟を決めた瞳で突進するレオパルト。

自身の身体を傷つけるサルファの翼にも怯まず、ただひたすらに前へ。

やがて似合っていないと散々罵倒したチャイナドレスが目の前に現れる。

その苦しそうな顔を見てか、それとも自身より圧倒的に薄い胸を見てか。

 

「可哀想なやつ...。」

 

ポツリと同情するのと同時に、ゼロ距離でありったけの魔力を炸裂させた。

 

「ぐべぇっ!?」

「ッ...!?」

 

辺りを消し飛ばす程の閃光の煌めき。

壊れたアームで、尚且つ至近距離での発砲。撃たれたサルファだけでなく、撃ったレオもまた、凄まじい速度で吹っ飛ばされた。

幸いだったのは、木にぶつかる瞬間まで変身が持っていたことだ。

 

「ぅっ...ぶへっ...っ...」

 

口に溜まった血を吐き出し、痛みに必死に耐えてよろよろと立ち上がる。

せっかくのお気に入りの服が台無しだ。

カランと転がり落ちたのはトランスアイテム。

レオパルトは阿良河キウィに戻っていた。

生きるか死ぬかの一か八かの賭けに勝った。

今度こそ、キウィちゃん大勝利のはず。

ボヤける視界や遠退く意識を繋ぎ止め、フラフラとまた前に進む。

世界一ムカつくヤツがくたばったかどうか確認しなくては。

いつの間にか趣旨が変わっている気がしたが、今やどうでもいいこと。

アタシの方が強い。

それだけで心すっきりなのである。

 

「手間かけさせやがって...ひんにゅーのくせに...。」

 

そこそこ歩いたところで、漸く見つけた。

私服姿で倒れている金髪の貧乳少女。

いつものリボンは千切れ飛び、長い髪はボサボサに地面に投げ出されていた。

毛皮の絨毯かな?とキウィは思ったが、今はそれより面倒事が終わった喜びが勝っていた。

 

「へへ...ざまぁ...やっぱレオパルトちゃんさいきょー...。」

「.....っ...。」

「......ちっ...んだよ生きてんのかよ...。」

 

ピクリと動いた薫子の指に悪態を吐くキウィ。不思議と安堵したかのような印象を受けるが、本人は決して認めることはないだろう。

そういえば、このままだと正体がバレてしまう。

驚くのかやっぱりかと思うのか。

ちなみにキウィの方はうてな=ベーゼがインパクト過ぎて他は割かしどうでもよかったというのが素直な感想だったりする。

考えれば考えるだけ面倒なことだらけ。

こうなっては仕方ない。

今はとにかく薫子をこけ下ろして勝ち誇ることだけ考えるようと、現実逃避を実行する。

 

「ウチ、ハ...!」

「!?......は...?」

 

第一声。

何を喋るのかと思えば、さっきまで聞いていたいつも以上にうざくてキモくて暗く詰まった声のまま。

足元にはトランスアイテムが転がり、姿も完全に天川薫子に戻っているというのに。

宿敵の心は、今もまだ何かに支配されたままだった。

 

「カ、つ...うち...マ、ケ...っ」

「ッ...!!」

 

ゴスッ!と鈍く乾いた音が響く。

キウィの拳が薫子の横っ面を捉えた音だ。

気付いた時には、殴っていた。

 

「おまえ...おまえいい加減にしろよ...!!」

 

拳が痛い。

キウィちゃんの可愛いお手々が可哀想。

身体中痛くて、頭もぼーっとする。

でも、止まらない。

ムカつく。ムカつくムカつくムカつく。

怒りのままに目の前のバカへ拳を叩きつける。

 

「んでおまえがそんなんなってんだよ...正義の味方だろ...はるかっぴが好きなんだろ...!?なのになんで好き勝手されてんだてめぇ!!」

 

馬乗りになり、何度もそのムカつく顔を殴りつける。

一生本人は肯定しないだろうが、きっとキウィは薫子を認めていた。

正義の味方であろうとする頑固さも、身体を張って仲間を守る根性も。

全てにおいて気に食わないが、だからこそ"負けたくない"と思えるヤツだった。

友だちも仲間もごめんだが、敵としてはやりがいのあるヤツだと思っていたのだ。

それが、何故こうなるのか。

得体の知れないモノに操られ、友情も愛も、誇りさえも失おうとしている。

何故コイツは抗わないのか。

何故コイツが抗えないのか。

お前はそんな弱いヤツじゃなかっただろうと。

そう素直に話せないから、キウィはひたすらに薫子を殴る。

拳から血が出るのも構わず、ムカつくと叫んでは殴るを繰り返す。

 

「あほ!しね!ひんにゅー!ばか!ひんにゅー!あべっ...!?」

「っさいねん...なにしてくれとんねん...どあほ...っ」

 

突然自分のご尊顔に突き刺さる拳と、やっぱりムカつく生意気な関西弁にキウィは笑う。

キウィの拳は、薫子の心に届いていた。

一転して、今度は薫子がキウィに馬乗りになる。

 

「あんたに...おまえにうちの何が分かんねん...!うちはただ、守りたかっただけや...!!」

「べっ!?ぶごっ!?しるかばぁか!!片想いのくせに!!」

「それは関係あらへんやろ!!」

 

殴られながら、殴りながら。

二人は話し合いとは言えない、ただの叫び合いを重ねていく。

薫子はダメージでケンカしている相手が誰なのかも分かっていないし、キウィだって自分が何をしたいのか思い出せない。

そんな無茶苦茶な状態でも、二人には確かな感情があった。

"怒り"だ。

自分や相手に対するやり場のない激情。

ただそれを発散する為だけに、何か意味があると思うこともなく。

怒りに任せて、ただ痛みを与え合う。

 

「どうしろって言うんや!!うちにはベーゼを止めてやれる力がない!マゼンタを変にさせない方法も分からない!うちじゃ二人を守れんのに、他にどうせぇって言うんや!!」

「しるかっつってんだろひんにゅー!勝手に諦めて勝手に悟ってんじゃねーぞこら!!大事で好きってんなら全部信じて全部愛するしかねぇだろーが!!弱いてめぇに誰がいつ頼ったってんだ!!」

「ぅがっ!?」

 

何度目かのマウントの取り合い。

心の内を晒け出す薫子に対し、キウィはキャラをもかなぐり捨てた一喝を返す。

重い一撃を叩き込んだ後、転がりながら二人は息を入れるようにして距離を取る。

 

「おまえが疑ってんのはおまえの力じゃない。二人だ。二人を信じられないから、おまえはアタシに勝てねぇ...。」

「!...うっさいねん...このくそ団子...!」

 

立ち上がって向かい合う二人。

次が最後と最早ない力を振り絞り、同時に拳を振りかぶる。

お互いの顔面を交差した拳で打ち抜く。

ぐらつき、倒れゆく二つの身体。

しかし片方は踏み留まり、敗者となった宿敵を見下ろす。

 

「おっぱいも愛も足りねぇんだよ...出直してこいや、ば薫子...っ。」

 

いい顔してんじゃねーよ、と付け足すこともなく。

この宿敵同士の大喧嘩は、一先ずの決着をみるのであった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

『さ...サル...サルフ...サルファ...サルファ!?」

「っ...ぁ...?」

 

視界に飛び込んで来たのは真っ赤な夕焼け。

それとピンクに揺れるツインテールに、誰よりも愛しく大切な人の、今にも泣き出しそうな顔だった。

 

「よかった...!すぐに治してあげるね...!」

「マゼン、タ...うち...」

「喋らないで!女の子がこんなにお顔ボロボロにして...いっつも一人で無理するんだから!」

 

暖かいマゼンタの魔力が伝わり、痛みが和らいでいく。

心配から来るお説教。

久しぶりに感じる、オカン染みた優しさを噛み締める。

一人で無理をする、か...。

 

「あいつは...?」

「あいつ?...レオちゃんなら、あたしが来た時にはもういなかったよ?たぶんロコちゃんが先に迎えに来たんじゃないかな?一時間くらい立ちっぱなしにされたし...。」

 

誰だか知らないが、とてつもなくムカつく奴だった気がする。

正体を見たはずなのに、何故かまったく思い出せない。

殴られ過ぎて記憶が飛んだのだろうか?

だとすれば更に苛々して怒鳴りたくなるが、不思議と今はスッキリとした心地だった。

あんなの忘れてしまおう。

リベンジのチャンスならいくらでもある。

それより先にやるべきことがあるし。

 

「はるか...ごめん...。」

「!...何で謝るの?悪いのは、弱いあたしなのに...。」

「ちゃう...違うんや...うち...はるかのことも、うてなのことも...信じられへんくて...。」

 

あいつに言われた通りなのが不愉快。

とてつもなく不愉快だが、事実だった。

自分では守れないと諦めるばかりか、二人が自分で乗り越える可能性すら勝手に諦めていた。

二人は弱くなんてないのに。

そんなこと、仲間として分かっていたはずなのに。

その不信を突かれてしまった。

...突かれた?いったい、誰に?

 

「相談するべきやった...うちらは...仲間なのに...。」

「薫子ちゃん...。」

「だから、ごめん...勝手に決めつけて...勝手にっ...諦めてっ...ごめんなさいっ...!」

 

思い出せない何かがあったとしても。

この事態は自分が招いたことだ。

だから、謝らなくてはいけない。

立ち上がる為にも。

再び仲間と歩いていく為にも。

 

「謝るなら、あたしだってごめん...。薫子ちゃんやうてなちゃんに任せっぱなしで、全然リーダーらしく出来なかったよね...。」

「そないなこと...。」

「ううん...決めたんだ。あたし、強くなる。今度は言葉だけじゃなく、本当の意味で強くなりたいの。二人にたくさん迷惑掛けちゃうかもしれないけど...それでも、あたしはなりたいあたしになりたい。そうすればきっと、今度こそ全部を守れる気がするから。」

 

瞳に宿る強い意志は、決して初めて見るモノなんかじゃない。

ずっと知っていた、はるかの持つ本当の強さ。

歪められて尚消えないその輝きが眩しくて、つい目を細めてしまう。

 

「一緒に...強ぉなれるかなぁ...。」

「...なれるよ。だってあたしたち、三人で無敵のトレスマジアだもん!」

「はは...無敵とは初耳やなぁ...。」

「無敵になるの!それでみんな全部まとめて守っちゃうんだから!」

 

すごく久しぶりに見た、当たり前で一番大切な笑顔。

太陽みたいなそれを、二度と忘れないように胸に刻み込む。

バカやな、うち。

ホンマもんのあほんだらや。

これを見れんようになる正解なんて、あるわけないやん。

 

「一緒と言えば、みんなにちゃんと謝らないと。まずはうてなちゃんでしょ?小夜ちゃんにキウィちゃん、クラスのみんなにも。みんなすっごく心配してたんだからね!」

「せやなぁ...。」

 

身体ボロボロで、あまりの情けなさに恥ずか死しそうやけど。

何でやろな...。

何だかちょっと、エエ気分や。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「うてな。ホンマに、すまん...!」

「薫子ちゃん...勝手なことしたのは私で...私こそ、ごめんなさい...!」

 

土日挟んだだけでとんでもない大進展をしたものだ。

気まずい空気に包まれる教室で、登校した薫子が開口一番うてなに謝罪を始めた。

びっくりした様子のうてなも段々事情を理解したようで、どうやら上手く仲直り出来そうである。

お互いに謝るあの感じ。

日本人だなぁ、って思っちゃうよね。

 

「おいひんにゅー。アタシにも謝れ。土下座な。土下座超えて土下寝な?」

「何であんたに謝ることがあるんや。そないなこと死んでもごめんやけど?」

「ぶっころす。」

「やれるもんならやってみぃ。」

 

まさか二人の喧嘩を見てほっこり出来る瞬間が来るとは。

やはり日常は尊い。

 

「やめなよ二人とも!?小夜ちゃんも早く止めてって!というかキウィちゃんお顔どうしたの酷いことになってるよぉ!?」

「アタシのご尊顔フェイスがひどいとはひどいぞはるかっぴ!許さんっ!!」

「あー、また早速変なところで変なすれ違いがー...。」

 

雑に貼られた絆創膏やらガーゼやらでもっさりしているキウィの顔を見ても、薫子たちはレオパルトの正体に思い至ることはないらしい。

傷が半端に残っているのはこりすなりのお仕置きだ。

治療していた時は何だかんだすごく心配していたし。

私も経緯は真珠たちから聞いたが、最終的に素顔で殴り合ったと話されて肝が冷えた。

正体バレもそうだが、生身で傷つけ合うのはダメだ。

キウィにも薫子にも傷ついて欲しくない。

えっちな目に遭うならともかく。

 

「キウィ、そこまでにしておきなさい。」

「でもさよちゃ~ん...はるかっぴとひんにゅーが~...。」

「よく頑張ってくれたわね...本当に、ありがとう。大好きよ、キウィ。」

「はぅっ!?耳元に愛を囁かれてキマるぅ...これがリアルASMRかぁ...///」

 

相変わらず可愛いのにカッコいいんだから。

流石、私の王子様ね。

しばらく自由にスキンシップを取らせてあげることにしよう。

それがご褒美になるなら御安い御用だ。

 

「退きなよ団子三兄弟。」

「へぶっ!?」

「おはよう、サヨ。今日も素敵ね。」

「おはようシャノン。団子...?」

 

キウィを投げ捨て何事もなく朝の挨拶をするシャノン。

団子三兄弟とはまさかキウィのことだろうか?

だとすれば真ん中がデカい気がするし、考えようによっては団子五兄弟とも言える。

というかあの歌海外にも広まってるの?

 

「なにすんだパツキンビッチっ!!」

「サヨ、今度の日曜日二人で映画でもどう?邦画にちょっと興味があって。」

「別に構わないけどいったいどんなジャンル」

「無視すんなパツギンナンパ師!!あとさよちゃんもナチュラルにデート受けないでぇ!?」

 

とことん相手にされないキウィだが、それもまたこのクラスの日常風景になってきている。

 

「なんかすっごく仲良くなってない!?うてなちゃんコイツちゃんと見張ってたん!?」

「え!?ぁ...その...み、見てはいた、よ...?」

「見て興奮するタイプ!?ぶぇぇーん!!さよちゃん寝取られるぅ~!?交尾したんだアタシ抜きでぇぇ~!!」

「キウィちゃん!?なんかすっごくとてつもなく誤解してるよね!?///」

 

うてながいて、キウィがいて、はるかと薫子。

シャノンにクラスのみんな。

みんなが笑って過ごせる日常がある。

取り戻した平和は安らかに、今日もまた始業のチャイムを迎える。

私たちの本当の2学期が、今漸く始まったような気がした。

 

「みんな仲良しで楽しいねぇ!」

「うちら以外ただの修羅場やねんけど?」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□next episode◼️□

 

「あなたはどうして魔法少女になったの?」

 

次回

 

第38話『桜花繚乱』





◼️character profile□

【挿絵表示】


・名前 :シャノン・ハートフィールド
・年齢 :14歳
・身長 :165cm
・誕生日 :5/20
・好きな物 :一番なこと、ガム、ファンタジーもの
・嫌いな物 :二番以下、姉と比べられること、バカ
・最近の悩み :たくさん(恋とかお金とか胸とか)
・家族しか知らない秘密 :ユニコーンぬいぐるみがおきに
―――――――――――――――――――――――――――――
次回は3/9(日)0:00投稿予定です。
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