魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~ 作:月想
以下、最初っから注意書きです。
※※注意※※
原作時点でほぼ何も分かっていないシスタについて深く触れた内容となっております。
わずかな情報から膨らませてキャラを仕上げている為、多大な解釈違いを生む可能性がございます。
この設定が公式と合っている可能性はないでしょう。
苦手な方はオススメしません。
この作品においては彼女はこういった形となります。
ご留意の上、あくまでも二次創作として読んで頂ければと思います。
「紹介するよ、彼女がボクらの王。ロードエノルメだ。」
玉座から感じる威圧感は、聞いていたより遥かに強いものだった。
ヴェナリータの紹介に眉一つ動かさず、彼女はただ冷酷な眼差しで私を見下す。
「お初にお目にかかりますぅ...。私は」
「シスタ、ギガント...。」
「!?」
名乗りを遮るように名を呼ばれ、思わず動揺する。
今思えば、先にヴェナリータから話を聞いていただけだろう。
しかし、その時の私は何故か、彼女に全てを見透かされているような。
何もかも知られているかのような錯覚をしてしまっていた。
「...名乗るより先に覚えて頂けるとはぁ~。私、とても光栄ですぅ~。」
悟られまいと必死に感情を仮面で隠し、お手本のように跪く。
彼女の反応を窺うが、依然として顔色一つ変わる様子がない。
ただじっと私を見つめたままだ。
助けを求めるようにヴェナリータに視線を送るが、あれはあれで面白がっているのか、私たちの様子を眺めて押し黙っている。
「あ、あのぅ~...?」
聞いていた話とは、大分違う。
田中みち子。
プライドが高いが乗せられやすい、単純な人間だとヴェナリータは言っていた。
もっと大仰で、芝居がかった名乗りを言い放ち、高圧的に接してくると思っていたのに。
実際は反対だ。
黙したまま私を見定めようとする姿は、まるで本物の王者。
その圧に耐え切れず、弱気な従者を演じて声を掛けてみたが...。
「...お前は、何を望む。」
漸く返って来た言葉に、更に緊張は増した。
答えを間違えればそれで終わり。
そう思わずにはいられなかった。
「...私はぁ...ロード様の支配が成る瞬間を、お側で見ることさえ出来ればぁ...他に何も望みませぇん。」
頬を流れる涙は勝手に出たものだ。
いつからか、私は本心に関係なく泣くことが出来るようになった。
意識することなく流れるそれは、私の仮面を彩って、その仮面こそが本物だと見る者を騙していく。
だから、望みなど答える必要はない。
仮面を暴かれることなどないと、それまで私は思っていた。
「...好きにするがいい。それがお前の、
「!...。」
きっと彼女には、この時全てバレていたのだろう。
私が彼女を軽んじていることも、裏切るつもりなのも。
ヴェナリータすら、利用しているだけに過ぎないと。
それでも彼女は私を側に置くといった。
私には意味が分からなかった。
理解出来なかった。
だからこそ、知りたいと思った。
「よろしく頼む。シスタ。」
彼女の冷たい瞳と裏腹の、優しい言葉。
先程と打って変わって緩んだ口元が、余計に私を混乱させた。
私にとって彼女だけが分からない存在で、"世界の外"の存在だった。
だから、きっと。
私はこの時から、あなたのことを...。
―――――――――――――――――――――――――――――
「そう簡単には見つからんか...。」
こんな捜し方では意味がない。
分かっていても止まらない足を無理矢理に留め、一度ベンチに座り込む。
日はもうすぐ沈むだろう。
せっかくの休みを無駄にした喪失感さえも、私の焦りを上塗るには足りないらしい。
「みっちゃん、もう今日は帰ろ...?」
「朝から歩き詰めですのよ?いい加減お体に障りますわ。」
「...お前たちは帰っていい。付き合わせて済まなかった。」
心配そうに私に呼び掛ける蘭朶と百花。
元より二人には縁のない話。
私の問題だ。
だから無理せず先に帰ってくれと伝える。
が、しかし。
「ダメ。みっちゃんを一人になんてしない。」
「そうですわ!またお一人のところを狙われるかもしれませんし!」
「だが...」
「側にいる...みっちゃんは、あたしが守るよ。」
「わたくしも忘れないでくださいまし!」
「お前たち...。」
二人は譲らず、私と行動を共にすると離れない。
最近はずっとこの調子だ。
シスタと学園で出会してから、一週間が過ぎようとしていた。
水神を狙い暗躍する彼女を何とか見つけ真意を問い質そうと、あの日以来捜索を続けているのだが。
一向に尻尾すら掴めない。
何の手掛かりもないのに闇雲に街を歩いて、見渡して。
そんな無駄な行動を止められない程に、私は冷静でいられなかった。
寝ても覚めても、彼女に対する疑問が絶えない。
そして、それはどうしても私自身が確かめないといけないことな気がした。
気付けばほぼ毎日、仲間を巻き込んでは彼女の影を追い求める日々を送っていた。
「...すまない。私のわがままに付き合わせてしまって。」
「みち子様のわがままなら、いつだって大歓迎の大好物ですのよ。」
「もも...あたしのセリフ...許さない。」
「えぇ...たまにはわたくしにもシリアスさせてくださいまし...。」
だが、流石に潮時だろう。
正体も分からないままシスタを捜すなど無謀にも程がある。
危険だが、水神を監視する形で待ち伏せするしか方法はない。
遺憾ではあるが、奴に事情を説明しなくては。
そう思い、格安スマホを取り出した時だった。
「シスタの居場所を教えて欲しいかい?」
「「「!?」」」
背後から届いた、平坦な声。
懐かしさよりも不快感が強いその声に驚くが、すぐに"まあ、そうだろうな。"という呆れにも似た感情が湧いてくる。
「随分勿体振った再登場だな。
溜め息交じりに振り返ると、やはりそこには可愛げのない真っ黒くろすけが浮いていた。
ヴェナリータ。
私を消耗品として使い潰そうとした腹黒マスコットにして、恐らくこの世界の黒幕だろうと当たりを付けていた存在。
彼女が殺したはずの、ラスボスだった。
「久しぶりだね、みち子。でもあまり驚いてはいないのかな?」
「ふん。貴様があの程度で死ぬなら苦労しない。」
本当に何事もなかったように、まるで新品のぬいぐるみのようにぴかぴか。
解れたり腕がなかったりした方が多少同情出来るのだが、そんな弱味を見せる気は毛頭ないらしい。
「今まで何をしていた。水神たちを見捨てて隠れていたというわけか?」
「治療に専念していたのさ。シスタの鎌は
嫌味だというのに少しも響いている様子がない。
治療がどこまで本当かは分からないが、追及したところで尻尾を出すことはないだろう。
コイツが生きていたというだけで懸念事項がまた増えるが、"白いの"に好き勝手される頻度は減るはずだ。
今気にすべきなのはヴェナリータの目的ではない。
「シスタの居場所を知っているのか?知っているなら何故私に教える?私と貴様は敵同士のはずだ。」
「敵の敵は、というやつさ。シスタがヴァーツに付いているのはボクとしても問題でね。キミが首輪を着けたがっているなら好都合なんだ。」
「私がシスタを取り戻したとして、貴様の敵には変わりないだろう。」
「制御出来ない化け物と忠犬では力が同じでも危険性は段違いじゃないか。ボクはそれを期待しているだけだよ。」
私では彼女を抑えられないとでも言いたいのか?
安い挑発には乗らんぞ。
とにかく、奴なりに利点があるから出てきたということらしい。
非常に癪だが、今は贅沢を言える状況ではない。
「...いいだろう。乗ってやる。情報を寄越せ。」
「正しい判断だね。彼女の本当の名前は"天花寺ホリィ"。住所は...」
「天花寺、ホリィ?それにその住所は...奇遇ですのね...。」
シスタの本名に現住所を手に入れた。
まるで芸名のような名前だが、ハーフだったりするのだろうか?
彼女の美しい瞳からすると確かに説得力がある。
しかし、家で待ち伏せというのは大分犯罪臭がするな...。
ストーカーっぽい。
「それから、これは"プレゼント"だ。」
「は...?」
投げ渡されたそれは、趣味の悪い"蜘蛛を象ったブローチ"だった。
こんなものがプレゼント?
「何を企んでいる?」
「キミには必要になるよ。相手はボクを騙した稀代の嘘つきだからね。ここぞという時に使うといい。」
だから何故ちゃんと説明をしないのか。
せめてドラ○もんくらいは道具の名前を読み上げたり軽く効能を語ってみせろ。
投げ返そうとするが、ヴェナリータは話しが済んだとばかりに背中を向ける。
「それじゃあよろしく頼むよ。手こずるなら消してくれても構わない。」
「貴様の了承などいらん。さっさと水神たちにその憎たらしい面を見せに行くのだな。」
簡単に言ってくれる。
コイツ自体、シスタとは一番付き合いが長いはずだが、少しも裏切られたショックや情を感じない。
これ以上話していると斬りかかりそうだと思い、捨て台詞と共に立ち去ろうとする。
立ち去ろうとして、最後に一つ。
コイツに初めて、浮かんだ疑問を素直に投げ掛けることにした。
きっと何も分からないだろうと思っても、つい出てしまった言葉だった。
「貴様とあいつ。どちらが悪いんだ?」
「...ではキミには、どちらかが良く見えるのかい?」
疑問を疑問で返した奴の口は、パックリと開いていて。
まるで、夜空に浮かぶ三日月のように吊り上がっていた。
―――――――――――――――――――――――――――――
「うてなちゃ~ん、なでなでしてぇ~?」
「え、えと...こう、かな?」
「えへへ~きもちぃ~。濡れそう。」
「え...///」
目の前でイチャつく二人を見て、だらしなく涎を垂らす内なる朝陽。
を、心から何とか叩き出し。
小夜はその表情を毅然とした険しいモノに固定する。
「ちょっと、うてな。何であなたがまだここにいるの?」
「な、何でって...」
「ここはナハトベース。魔法少女がいていい場所ではないのよ。」
もうずっといて欲しい!
そんな本音を押し隠し、うてなが敵地に馴染んでいることを糾弾する小夜。
もう一月以上前になるが、現れた強敵に対しマジアベーゼとエノルミータは協力関係を一時的に結んでいた。
ベーゼの本来の仲間であるトレスマジアの不和が原因の一つだったのだが、それはもう解決した話。
正義と悪の協力関係は解消され、今では本来の敵同士に戻ったと小夜は認識している。
それなのに、当たり前のようにアジトに正義の味方が入り浸っているのはどうなのか。
うてなとしても馴れ合いは魔法少女的に解釈違いなはず。
決着が着くまでヒロインとしては距離を置くべきと、お互い認識していたではないか。
私だって膝枕して欲しい。
最後の部分はさておき、そんな約束を忘れたようなうてなの態度に小夜は少々不満というわけである。
「それは、その...小夜ちゃんが...」
「私が、何よ?」
うてなとて、小夜と想いは同じ。
たとえ居心地が良くても、自分がこの場にいることは間違っている。
分かっていても、うてなは今小夜から目を離すわけにいかなかった。
どうしても先日の"忠告"が頭を離れなかったのだ。
イミタシオのあの面持ちに、真剣な声音。
誰が小夜の命を狙っているのかは明白だ。
あっさりと受け入れていたが、イミタシオがいなければもう二度もシスタに小夜を殺されていたことになる。
彼女を失う悲しみはもう嫌という程味わったというのに。
平和ボケしていた自分を責め、うてなは再び小夜を守ると心に誓った。
思い返せば、あの時エノルミータに協力したのは魔法少女としての矜持よりも先に、彼女を傷つけられたくないという"愛"故の決断ではなかったか。
そういう意味では、まだうてなにとっての協力関係は終わっていない。
たとえ小夜に拒まれたとしてもこれだけは譲れない。
言葉に出さずとも、それだけの覚悟がうてなにはあった。
「まあまあ。キウィもこりすも喜んでるんだしいいじゃない、少しくらい。どーせあのメダルトリオを追い出したらまた戦うんでしょ?」
「真珠...。」
「アタシらからしたらやり辛いのに変わりはねーんだ。お前もたまには素直になれって。」
上手く説明出来ないうてなを庇うように、たまネモが小夜を説得し始める。
二人が深く考えていないことは分かっていたが、キウィやこりすの安心したような様子に、その場に溶け込むうてな。
「というかさ。最近のんびりし過ぎなんじゃねーの?気が抜けちまってるってか。」
「いやぁ、真珠たちやっぱり強くなってるみたいだし?割りともう大丈夫な気がすんのよね。」
「フラグだろそれ。」
「ヤバかったらあれよ。小夜とうてなでまたあれやればいいじゃない。」
「ふゅーじょん?」
「いや
黙ったままのうてなと小夜を置いて、外野は勝手に話題を変えてしまう。
以前はジャスティスティールの圧倒的力に戦々恐々としていたエノルミータだが、現在二度の撃退に成功している。
自分たちが強くなったことで自信が付いたのは勿論、だからこそ今まで彼女たちを救ってきた小夜とうてなの"究極の姿"がどれだけ強大であったのかを理解することが出来た。
それ故に、二重変身さえ出来れば相手が誰であろうと負けないと考えるのは当然のことである。
が、しかし。
これに異論を唱える者が一人いた。
というか、
「あれをアテにするのはオススメしないよ、真珠。」
「え、何でよヴェ...は?」
「「「「「!?」」」」」
「......ヴェナ...?」
本日二回目。
サプライズ好きの腹黒マスコットの登場である。
うてなを含めて全員が驚愕する中、小夜は目を見開いたまま呆然と死んだはずのマスコットに近付き、その不思議な質感の手に触れる。
「あなたなの...?本当に、ヴェナ...?」
「勿論ボクはボクだよ。
久しぶりだね、元気だ」
「ふんッ!!」
「いたっ」
感動の再会、とするつもりはまったくなかったらしい。
小夜はヴェナが生きていることを確認すると腰の入った素晴らしいビンタをヴェナの頭にお見舞いした。
地面に叩き落とされた割に痛そうじゃない悲鳴を上げるぬいぐるみの姿に、今度は全員困惑の表情を浮かべる。
「このばかっ!腹黒マスコットっ!生きてるならすぐに帰って来なさいよっ!私たちがどれだけ苦労したか...あんたが集めたメンバーでしょ!?責任取らずにくたばってんじゃないわよっ!!」
「それにしてはなかなかの殺意だったよね、今のビンタ。」
溢れ出すままに不満をぶつける小夜、顔色一つ変えないヴェナリータ。
そんないつも通りな様子が微笑ましく感じるのは、小夜の目尻に光る"涙"に気付いたからか。
小夜もまた不安だったのだ。
警戒していたとはいえ、何だかんだいつも窮地を救ってくれたのはヴェナで、エノルミータを集めたのもヴェナだった。
たとえ大好きな先生でなくとも。
小夜にとってヴェナは、困った時の最後の砦に違いなかった。
彼女は決して認めないだろうけど。
怒りより、不満よりも先に。
小夜はきっと、ヴェナとの再会を喜んでいた。
「ばかっ!アホっ!死んじゃえっ!」
「語彙力。」
「酷いじゃないか小夜。ボクは久しぶりの再会を楽しみにしていたのに。」
「これはこれで喜んでんのよ。」
「ヴェナちゃん乙女心分かってね~なぁ~。」
「難しいのだわ...。」
「ヤレヤレ...。」
久しぶりのエノルミータ大集合に、メンバーも自然と上機嫌。
そんな眩しくもある光景に水を差す引け目を感じつつ、うてなはおずおずと手を上げる。
「あ、あの。ヴェナさん。説明してくれませんか?今まで何をしていたのかと...二重変身をアテにするなっていう、根拠。」
「...やあ。キミもいたんだね、柊うてな。勿論話すとも。キミがいるなら更に都合がいい。」
意外にもヴェナは素直に受け入れ、事の経緯を説明していく。
回復に専念していたこと、小夜たちの様子はずっと見守っていたこと。
小夜がジト目を止めることはなかったが、大体の事情を皆が理解した後。
漸く説明は二重変身へと辿り着く。
「知っての通り、あれは二人のトランスアイテムでだけ出来るとびきりのイレギュラーだ。想定していない量の魔力を流して無理矢理共鳴させているんだ。アイテムへの負担は凄まじく、今度試せば自壊する可能性すらある。」
「じ、自壊...。」
「
「!...。」
次使えば、最悪死ぬ可能性すらある。
ヴェナの言葉は二人は勿論、他のメンバーにまで重くのし掛かる。
小夜とてノーリスクで使える技ではないと思っていたが、最後の手段としていたのは事実。
今までの楽観思考が儚く消え去っていくのを全員が感じていた。
「じゃあ、どうすれば...。」
「二重変身に代わる"新しい力"を手に入れればいい。」
「新しい、力...?」
「え、なになにキウィちゃんクソつよ超えて神つよになっちゃう話~?」
「残念だけど、これは小夜とうてなだけに当てはまる話なんだ。」
「えー。」
「はいはいどーせアタシらはモブだよモブ。」
「帰るわよネモ。ふてカラオケよ、ふてカラオケ。」
「あなたたちね...。」
ヴェナから提示された新たな可能性。
その朗報に一同色めき立つが、またしても"二人だけ特別扱い商法"にすっかりやる気を無くしてしまう。
こりすに関しては昼寝を始めてしまった。
そんな傍聴人たちを無視して、ヴェナは当事者であるうてなと小夜へ説明を進める。
「キミたちは自分が
「っ...。」
「何よ、藪から棒に。」
「二人は悩んで来たはずだ。本当に魔法少女でいいのか、エノルミータでいいのか。自分は間違えてしまったのではないか、とね。」
小夜にしてもうてなにしても、それは幾度となく考えてきた命題である。
魔法少女になるべきだったアズール。
悪の総帥になるはずだったベーゼ。
今自らが正反対の道を行ったことを後悔はしないが、過去にはそれが理由で深く傷ついたこともあった。
今更にそんな話をするヴェナに反感を持ちつつ、二人は話の先を待つことにする。
「でも、今はどうだい?二人とも本来あるべき姿でないにも関わらず、素晴らしい才能を発揮し二重変身という奇跡すら成し遂げた。つまり、
「運命を凌駕する...」
「想いの、力...。」
お互い顔を見合せる二人。
入れ替わるように進んだ道のりで、二人は運命を切り拓いてきた。
それは決して偶然ではなく。
だからこそ、二人にしかない可能性があるとヴェナは語る。
「だから、出来るはずだ。キミたちならば、自分の本質すらねじ曲げた究極の擬態が。
「「!」」
限界の、その先がある。
ものすごくバトル漫画っぽい新情報に胸熱な二人。
その期待に応えるべく、ヴェナは病床でひたすらに考え抜いたその名前を万感の想いを込め今、発する。
「名付けるとすれば、そう。"
「深、化...!?」
「......何で急に英語?」
当て字にも程がある。
そこはせめてディープじゃないのか。
字面はともかく和読みは真化と同じでどっちの話しか分からなくならないだろうか?
結局、名付けは後日に延期。
ヴェナは誰にも気付かれない場所で、小さく肩を落とすのだった。
どうにもしまらないのがエノルミータである。
―――――――――――――――――――――――――――――
「...ふむ。やはり出ませんわね。」
3回目のインターホンが虚しく鳴り響く。
予想通り、部屋の主が顔を出す様子はない。
「まあ、素直に出るわけがないか。」
電車を乗り継ぎ、平時ではとても近寄りそうもない大都会を抜け、やって来たのは高層タワーマンション。
聞いた話によれば芸能人御用達の高級マンションで、セキュリティは万全。
普通であればこうして玄関に近付くことも出来ないはずなのだが。
「では、予定通り
百花が手にした無駄に高級そうなカードキー。
それを読み取り口にかざすと、扉はまるでコンビニのような気安さで以て簡単に開いてしまった。
「
「いいのかそれで桃森グループ。」
「もものくせに...。」
シスタの住まいであるこのタワマンは、偶然にも百花の実家である桃森グループの所有する物件だったのだ。
何とも都合がいい話。
やはりこの世界、アニメか漫画なんじゃないかと疑ってしまう。
...まあ、アニメかつ漫画ではあるが。
ともかく、今日程百花を仲間にして良かったと思った日はない。
こんなどうしようもない変態がシリアスで役立つこともあるのだな。
今後の世界征服でも参考にするとしよう。
「みち子様、今めちゃくちゃ失礼なことをお考えではございませんの?」
「そんなことはない。金持ちなら変態くそメガネでも生きる価値があるなと関心しただけだ。」
「良かったね...お金はあって。」
「遠回しにわたくしの価値が家柄だけとディスってますわよね?権力でぶっ潰しますわよ?」
結局金で脅してるじゃないか。
これだから成金は困る。
百花が仕方のない奴なのは今に始まったことではない。
正直どうでもいい。
今はシスタに会うことが大事なのだ。
「よし、行くぞ。」
「うん。」
「ちょ待っておくんなまし!!大活躍のわたくしにその扱いは酷すぎますわよ!?」
ごちゃごちゃ言ってるメガネを無視し、私はエレベーターの階数ボタンを確認する。
シスタの部屋は17階だったか。
タワマンの割にはそこそこの階数だが、あまりこだわりはないということだろうか?
「みっちゃんはさ...」
「なんだ?」
「...ううん。何でも、ない。」
ここ数日、どこか蘭朶の様子がおかしい。
体調が悪いというわけではないそうだが、いつも以上に元気がない気がするのだ。
百花に聞いてもジト目と溜め息を返されるだけなので、その辺りはこの一件が終わったら話し合うことにしよう。
蘭朶は私にとって大切な恩人で、妹のようなものだ。
悩みがあるなら聞くのが年長者の務めだろう。
「クソボケの臭いがしますわね。」
「エレベーターの割にはフローラルな香りだと思うが?」
「小夜様に愚痴り確定ですわ。」
そんなに臭いに敏感だったのか?
まあ、金持ちはみんなそんなものなんだろう。
貧乏人には分からぬ感覚だ。
1分もかからず17階に到着。
ホテルのような廊下を歩いていき、ついに目的の部屋前までやって来る。
「...ここだな。」
まずは深呼吸をして落ち着く。
二人の顔を見て頷き合った後、備え付けのインターホンを慎重に押下する。
数秒待つが、やはり応答はない。
「留守、なのか...?」
「...待って、みっちゃん。」
蘭朶が身を乗り出し、ドアノブに手を掛ける。
動かないはずのそれは、結局何の手応えもなくその首を下げてしまう。
「!...開いている、だと...?」
蘭朶を止める間も無く、開け放たれる玄関ドア。
中の様子は分からない。
タワマンらしく、部屋はかなり広いらしい。
外からは廊下くらいしか見ることが出来ない。
「...入るぞ。いつでも変身出来るように構えておけ。」
「委細承知ですわ。」
「分かった...。」
トランスアイテムを握りながら、最大限警戒しつつシスタの部屋に侵入していく。
海外仕様で靴を脱がなくていいのは助かる。
なんて、こんな状況で考えてしまうのは日本人の性だろうか。
まるで泥棒のように恐る恐る進み、リビングに移動。
待ち構えている可能性を考え、緊張は更に増していく。
「...広い、な。」
「感想そこですの?部屋の主は...いないみたいですわね。」
広々としたリビング。
物は少なく、棚に関してはあるだけで何も入っていない。
空っぽで無個性な部屋。
微かに感じる残り香が、ここが彼女の部屋であることを私に証明してくる。
「リビングにいないのなら、寝室や浴室か?」
「人の気配は感じませんわ。というか、あまりにも物がないのが気になります。これではまるでホテルや、引っ越した後にしか」
「待て。...
「え?蘭朶ならそこに...」
振り返るが、すぐ後ろにいたはずの蘭朶がいない。
他の部屋にいる?
そんな勝手なことをするタイプではない。
心臓が早鐘を打つ。
再び部屋を見渡し、その異常を漸く悟る。
まるで、そう。
見せたくないモノを隠すか、それとも避難させたかのようだ。
いったいそれは何故なのか。
答えは簡単だった。
そもそも、シスタが
一般人感覚で鍵のかけ忘れを考慮していたが、ここにそんなケアレスミスは起こり得ない。
このマンションは全室、"オートロック"なのだから。
「馬鹿か私は...!百花、これは罠だ!今すぐ外」
百花はもう、いなかった。
ほんの少し視線を外しただけ。
その一瞬で、私の前から仲間たちが姿を消した。
必死に思考を巡らせ周囲をグルグル警戒するが、やはり人の気配はしない。
シスタの仕業か?二人は無事なのか?
私の取るべき行動は何か。
冷静さを失った私に正常な判断は出来ず、それが致命的な隙になった。
「勝手に入るなんてぇ...悲しいですぅ。」
「っ!?」
バギンッ!と派手な音と強い痛みを感じ、明滅する意識。
身体中に受ける凄まじい風圧に、私は自分が空中に投げ出されていることに気付く。
部屋にあったあの小さな窓。
あそこに向かって彼女に蹴り飛ばされたらしい。
シスターの割に慈悲がない女だ。
生身の人間にそんな蹴りを放てば、それだけで死んでもおかしくない。
「何とか間に合ったか...!」
ギリギリで変身出来た為蹴り殺されることはなかったが、部屋から大分離されてしまった。
待ち伏せされていた上に、彼女は話し合う気すらないらしい。
危険性はあった。
予想出来たことだ。
でも、私は期待してしまった。
私のせいで、二人を巻き込んでしまった。
その事実を苦々しく思いつつ、二人の安否を問い質すべく高速飛行で部屋に戻る。
部屋は既にもぬけの殻。
だが、今度はすぐ後ろに迫る気配を見逃すことはなかった。
「お探しなのは、これですかぁ~?」
「シスタ...!二人を、離せっ...!!」
見上げる程の巨躯。
久しぶりに見たシスタギガントの様相は、タワマンと合わさって完全に大怪獣そのもの。
かつては味方だったはずだが、敵に回るとなかなかの威圧感である。
その巨大化状態の彼女が、見せつけるように二人を手のひらで転がしている。
二人共意識を失っているようで変身はしていない。
つまり、あそこから落とされたり、握られたりでもすれば...。
「やめろシスタっ!二人は関係ない!!」
「余程大切なんですねぇ...。なら、ちゃんと付いて来てくださいねぇ~?」
二人を解放するように頼むが、シスタは弾みを付けてその巨躯のまま跳躍。
地震と見紛う振動を響かせたかと思えば、遥か遠くに飛んで行ってしまった。
「くっ...!待てっ!!」
あの体のままでも飛べるのか!?
全速力で彼女を追う。
付いて来いと言ったり、わざわざ罠を張ったり。
どうやら彼女としても、私に追いかけ回されるのはうんざりらしい。
「ショックを受けている場合ではないな...!」
決着を着けたいのはこちらも同じ。
長く続いた奇妙な関係に終止符を打つべく、私は決戦の舞台へと向かうのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――
「これが今の部下、ということですかぁ...。」
手も足も出ずに気を失い、無様に倒れ付す蘭朶と百花を嘲るように、シスタは空き地の隅へ二人を投げ捨てる。
抜かりなく、トランスアイテムは二人から奪っておいた。
役立たずの部下を連れ、わざわざ罠に掛かりに来た偽りの王。
いつからそんなに詰めが甘くなったのかと、彼女は自分でもよく分からない苛立ちを覚えていた。
「悲しいですねぇ...。」
彼女はみち子たちが自分の家までやって来るのを予見していた。
というか、"感じていた"と言う方が正しい。
彼女は一際魔力に敏感で、意識して覚えた気配についてはある程度居場所が分かるのだった。
だからこそ待ち伏せ出来たのだが、予想外のお邪魔虫までは予見していなかった。
つまりこれは、実のところアドリブ。
本来の予定にはなかったが、この方が都合がいいかもしれない。
彼女はそんな怒っているのか喜んでいるのか分からない心持ちで、かの王の到着を待つ。
「...やっと来てくれましたねぇ。」
「二人を返せ、シスタ。」
そうして漸く現れた待ち人は、開口一番自分ではなく邪魔者たちを気遣う言葉を発する。
チクりと胸が痛むのを感じながら、シスタはニタリと偽物の笑顔を浮かべる。
「少し
「っ...何故だシスタ!二人を人質にしなくとも、私は!」
「説得出来ると思っていたとぉ?いつからそんなにお優しくなられたんですかぁ~?」
憤りを含みつつ、それでもシスタの変貌に戸惑った様子のイミタシオ。
挑発を続ける姿にいよいよ諦めが着いたのか、表情を引き締め大剣を構えてみせる。
「本当に、戦うつもりなんだな...?」
「うふふ...
返事の代わりに妖艶な死神の姿へと変ずるシスタ。
これが真の姿で、今まで見せていたのは全て嘘。
嫌でもそう思うしかない状況で、最後にせめてと、イミタシオはもう何度目になるか分からない疑問をシスタにぶつける。
「何故、ヴァーツに従う?君の目的は何なんだ...。」
「...あなたが知る必要はありませんよぉ。裸の王様さぁ~ん。」
「っ...!!」
最早言葉は届かないのか。
自らの不甲斐なさへの怒りを魔力に込め、黒騎士は死神の鎌へ剣を叩き付ける。
それぞれの望む"終わり"を賭けた戦いが、今始まった。
「ふふっ...うふふっ...!!」
「くっ...!」
魔法殺しの大剣が幾度となく死の鎌を破壊すべく振るわれるが、"呪い"を纏うそれには効果がない。
頑丈さで圧倒的に劣るはずの鎌を巧みに使いこなし、踊るようにシスタは攻めに転じる。
一歩、また一歩と後退するイミタシオ。
いつの間にか防戦一方、弾くだけで精一杯になる。
「それでは簡単に刈り取れてしまいますよぉ~?」
「うぐっ!?」
シスタの鎌が鎧の隙間に食い込み、浅くイミタシオの肌を裂く。
通常であればかすり傷程度。
だが、そんな小さな傷がどうにも鋭く痛む。
傷口に対しての出血量も異常だ。
「なるほど...厄介だな...!」
ヴェナの言っていた"厄介さ"を文字通り痛感する。
シスタの鎌は呪いを相手の傷に刻み込み、魔力による治癒を"阻害する"のだ。
少しの傷が命取り。
まさしく、"ヒロインキラー"。
それが真化したシスタギガントの戦法だった。
「このままではそう時間は掛からず、貴女の首を刈れてしまいそうですよぉ~?
通常のヒロインたちが相手なら、非常に強い殺傷能力を持つこの鎌。
しかし、イミタシオに関しては違う。
彼女には呪いを打ち祓う"更なる力"がある。
呪い特効、つまりシスタの天敵であるはずのイミタシオ。
しかし、何故彼女はその姿にならないのか。
当然の疑問を挑発という形で浴びせる。
「...そうやって私に倒されるのが望みか?」
「はぁ...?」
「
「...。」
一際強く弾かれ、始めて仕切り直しを強いられるシスタ。
イミタシオは傷口の痛みに耐えながら、違和感から確信に変わった考えをシスタへ突き付ける。
「君は絶対に真意を話すことはないだろうと言われた。だから、私は私の勘を信じさせてもらう。」
「何を言っているんですかぁ...?」
「君自身、本当にこれでいいのかと決めかねているんじゃないか?君はさっき、待ち伏せていたんじゃない。待っていたんだ。」
「言っている意味が」
「さっきだけじゃない。ヴェナリータを不意討ちした時も、文化祭で水神を始末しようとした時も。君は、
イミタシオに方法は分からないが、彼女はいつも自分が間に合う範囲で行動していたように思う。
彼女が邪魔が入るのを祈るだけなんて、そんな行き当たりばったりなことをすると思えなかったからだ。
根拠のない願望、勘。
否。そうではないはずだ。
それはあり得ない。
何故なら、イミタシオは覚えている。
シスタが気付かれていないと思っているはずの、
心に焼き付いて離れないそれが、何より強くイミタシオにシスタを信じさせてしまうのだ。
「何を根拠にそんな世迷言を...」
「君は私を救ってくれただろう。見捨てることも出来たのに、ボロボロの自分を顧みず、君は私にこの力を与えてくれた。」
「...それは、ヴァーツ様にそう指示されたから」
「違う、違うだろう!だって...だって!なら何で...!何であの時"キス"をしたんだ...!?」
「っ!?」
ピシリ、と。
シスタの仮面に罅が入った。
雨の中、ボロボロの身体で感じた彼女の温かさ。
『どう、か...ごぶじ、でっ...』
その音も、感触も。
一時たりともイミタシオは忘れたことがない。
きっとあれは、あれこそが唯一の真実なのだと確信する。
死にかけで意識もないに等しいあの瞬間を、それでも夢幻ではないと心が叫んでいた。
「幻想なんかじゃない!偽りなんかじゃない!あの時確かに私たちの想いは繋がった!お互いに嘘まみれの関係でも、あの時だけは、あのキスだけは本当だったんだ...!」
「なん、でっ...?」
「キスしたいくらい好きだったからに決まっているだろうがっ!!」
「っ!?///」
唖然とするシスタに想いをぶつけながら駆け出し、ヴェナからもらったアイテムへ魔力を込める。
使い手の願いに応えるように
"
ベーゼの能力をコピーした試作品が、隠された天花寺ホリィの過去を暴き出す。
―――――――――――――――――――――――――――――
『さあ、ホリィ。神に祈りを捧げましょう。』
『はい、しすたぁ。』
物心がついた頃には、私はもう孤児院にいた。
親の顔は知らないし、赤ん坊にも等しいくらいの年にはもう捨てられた。
『今日もごはんが少なくてごめんなさい...本当はもっと、お腹いっぱい食べさせてあげたいのに。』
『ううん...わたし、へいきだよ?おいしい、よ?』
『本当に、あなたはいい子ね。』
この孤児院はシスターが一人で運営していて、貧しい中でも決して子どもを見捨てない慈悲深い人だと有名だった。
私も優しくしてくれる彼女が大好きだったし、母親とまで思っていた。
『~...♪』
『ホリィはお歌が上手ね。将来はきっと歌姫になれるわ。』
『ほんと!?わたし、おひめさま?』
『ええ。お姫様よ。』
私が甘えると嬉しそうにしてくれて、他の子より気に入られているなんて、子ども心に優越感を感じたりしていた。
そんな日々が、この先もずっと続くと思っていた。
『よぅし...?』
『あなたをね、家族として迎えたいと言ってくれる人がいるの。お母さんとお父さんが出来るのよ。今よりずっと幸せになれるわ。』
『...しすたぁが、おかあさんがいい...。』
『...ホリィ。これはあなたの為なのよ。』
養子縁組。
孤児院は常に里親を募集していて、それが今回上手く見つかったという話だった。
私は幼く、まだ理解し切れないことだったし、大好きなシスターと離れたくなかった。
だけど結局シスターは私の為だと判断して、私は孤児院を離れることになった。
『しすたぁ...また...また、ねっ!』
『元気でね、ホリィ。』
最後に見たシスターは涙を流しながら笑顔を浮かべ、手を振ってくれた。
私はきっとまた会えると信じて、力一杯手を振り返した。
もう片方の手を引く人を見て、これからはこの人が優しくしてくれるのだと期待もして。
今思えば、酷く滑稽だ。
何も分かっていない子ども。
おバカな子ども。
少しも疑っていないじゃないか。
この先の人生が、まさに"生き地獄"になるだなんて。
『ごめんなさいごめんなさい...!!』
養子縁組だなんて真っ赤な嘘。
私は労働力として
簡単に言えば奴隷に近い。
毎日まともな食事も与えられずに、昼夜問わず様々な仕事をさせられた。
失敗すれば殴られて、ただでさえ少ないごはんを貰えなくなった。
辛くて、悲しくて。
でも私は、誰かに助けを求めることはしなかった。
無駄だと分かっていたからだ。
私が助けて欲しかった人が、私をこの状況に追いやった。
知らなかった、騙されたなんてことはなかった。
聞けば、あのシスターは子どもを預かっては売り飛ばして、私腹を肥やしていたらしい。
使い潰されれば真実を話すことは出来ないし、まさか教会のシスターがそんなことをするとは誰も思わないだろう。
私が可愛がられていたのは、"容姿が他より優れていたから"だそうだ。
普通より高値を払わされたと、殴られながら聞いた。
最後に見たシスターのあの笑顔の意味を、私は漸く知った。
あの涙も、かけてくれた全ての言葉も偽り。
その日から、私にとってシスターは悪の象徴になった。
『~...』
それでも、歌うことだけは好きだった。
シスターに褒められた歌。
嫌いになって当然なのに、何故か歌っている時だけは何もかもを忘れられる気がして。
気付かれないように、こっそり小さな声で歌うのが、私の唯一の楽しみだった。
そんなか細い幸せを頼りに耐え続け、数年が経過した頃だ。
『こんにちは!素敵な歌声ですね!』
『っ!?...な、なに...ねこ...?』
『猫じゃないですよ!僕はヴァーツ。分かりやすく言えば、魔法使いです!』
『魔法、使い...?』
私の目の前に、彼女が現れた。
話すぬいぐるみなんて見たことはなかったし、誰かとまともに話すのも久しぶり。
おまけに魔法使いだなんて変なことを言うしで、頭はまったく働いていなかったと思う。
『酷いですね...こんなに傷がいっぱい。お腹も空いているんじゃないですか?』
『ぇ...あ...』
ヴァーツが手をかざすと、不思議な光と共に殴られた傷が治癒していった。
彼女は本当に魔法使いだったのだ。
『あなたの歌、とても素敵でした。聞かせてくれたお礼に、何でも一つ願いを叶えてあげましょう!』
『ねが、い...なん、でも...?』
『はい!僕、がんばっちゃいますよ!』
突拍子もない話だったけど、その時の私には疑う気なんて微塵も起きなかった。
"ここから助けて"とか、もっと切羽詰まったお願いをするべきだったのだけど。
私は迷わず、頭に浮かんだある願いを口にした。
『...歌を...聴いて欲しい、です...たくさんの人に、聴いて...縮こまって、恐がったりしないで、大きな声で...大きな舞台で歌いたい...それで、みんなに私を...好きになって欲しい、です...。』
『...任せてください。願いは、確かに聞き届けましたよ。』
そこからは、そう。
シンデレラをイメージしてくれればいい。
ヴァーツが手を振ると汚れていた服や体が綺麗になり、体調も良くなった。
薄暗い牢屋のような小屋から、いつの間にか眩しい日差しの下にいて。
この時、人生で初めて"海"を見たんだっけ。
『え、え...!?』
『転移魔法は得意なんです。トラウマに障ると嫌ですから、とびきり遠い国にしておきましたよ!この国は治安もいいし芸能文化が盛んですから、あなたの願いにぴったりなんです。あ、大丈夫ですよ?すぐに言語も話せるようにしますから。』
感情も思考も追い付かないくらいの奇跡。
神様が救ってくれたんじゃないかとか、教会が嫌いになったことも忘れて舞い上がっていたのを覚えている。
『大事なことを忘れていました。あなたのお名前を教えて頂けますか?』
『私は...ホリィ、です。』
『ホリィさん?フルネームですか?』
『ふる、ね...?』
親の顔を知らない私には自分の名字なんて分かるわけがなかった。
事情を察したヴァーツは少し悩む体勢を取った後、私の頭に触れて何やら思い付いた様子だった。
『...なるほど、あなたのお母さんはこの国の...分かりました!では、これからはこう名乗ってください!"天花寺ホリィ"、と。』
『......てん、げいじ...。』
本名なのか芸名なのか。
西洋人と日本人のハーフらしい私には、お似合いの名前ではあった。
ヴァーツに手を引かれるまま日本に住むことになった私は、知恵と住居を与えられ数日でこの国に順応することが出来た。
魔法とヴァーツ自身のコネを利用し、ついには本当に歌手デビューまで決まり。
わずか半年程で、私は夢を叶えることが出来てしまった。
『天花寺ホリィです!私の歌、少しでも好きになってくれたら嬉しいですぅ!』
どんな小さなステージでも嬉しくてしょうがなかった。
もう何かに怯える必要はない。
大好きな歌を誰かの前で歌って、喜んでもらえる。
そんな幸せが私の胸を満たしていく。
心から歌う私の姿が好ましく映ったのか、瞬く間に私は芸能人として人気を集めることになった。
歌手というより、アイドルに近かったと思う。
ヴァーツのビジネス的なサポートもあり、テレビに雑誌と。
順風満帆にスターの階段を駆け上がっていった。
『皆さ~ん!!本当に、ありがとうございますぅ~!!』
満員のドームライブ。
見渡す限りのサイリウムに、割れんばかりの拍手と声援。
あの光景は、死んでも忘れられない。
『魔法が、インチキですか...?』
『い、いえ...ヴァーツさんには、本当に感謝しています。でも、最近思うんです。私の歌が喜んでもらえるのも、魔法のおかげなんじゃないかって...。』
でも、そんな絶頂の中で"不安"はあった。
人々の心を魅力しているのが自分の実力だと、素直に誇ることが出来なかったのだ。
芸能人として生活する中で、必死に努力する同業者の姿は何人も見ていたし、それでも夢へ届かない人がほとんどだと知ってもいた。
我ながら不幸な身の上だと思ってはいたけど、夢に真剣になればなる程に魔法という奇跡に頼った自分が不正をしているような気がした。
だから、思い切ってヴァーツに少し距離を置いて欲しいとお願いしたのだ。
彼女に頼らなくてもいい自分になりたいと意気込んで、前向きな選択として。
『...分かりました。けれど、少し残念です。ホリィさんは
『え...?』
『この世界はそんなに素晴らしいものじゃないということを、ですよ。』
それだけ言い残し、ヴァーツは私の前から姿を消した。
釈然としないまま、私はまた芸能人としての生活を続けていく。
事務所は勿論人間が運営していたし、前からあった仕事がなくなるようなこともない。
CDは相変わらず売れて、私自身の実力にも自信が持てるようになった。
だから油断して、忘れてしまっていた。
この世界の"残酷さ"と、人間の"醜さ"を。
『ぇ...あ、あのぅ...私、ここに来るようにと言われて...あなた、は...?』
『ふふっ。待っていましたよ、天花寺ホリィ。』
成人し、芸能界にも慣れてきたと思っていたある日。
事務所に指示されるまま、私は高級ホテルの一室へと足を運ぶことになった。
そこで待っていたのは、知らない40代くらいの女性。
高そうな衣服から、すぐに"偉い人"であることだけは私にも分かった。
『ここに座りなさい。』
『あ、あの...どうして』
『早く。』
『!...っ。』
理由を聞く間も無く、私は命令通りその人の隣に座らされた。
奴隷同然だった経験からか、私は素直に従ってしまった。
そこからどうなったかなんて、少しでも外界に触れたことがある人間なら誰にだって分かるだろう。
ただ、私は違った。
本当に何も分かっていなかった。
悪夢みたいな世界は昔の話で、今はもう優しく温かい世界に生きていると錯覚してしまった。
私がバカだったのだ。
人間はどこまでも愚かで、貪欲で。
弱い者が食われるのが当たり前。
獣と何も変わらない。
私の夢見た舞台すら、作り出したのは醜い畜生で。
私はずっと、私の死体の上を笑顔で駆け回っていただけだった。
『っ...ぅっ...』
『...迎えに来ましたよ、ホリィさん。』
『......ヴァー、ツ...さん...?』
汚され、泣きじゃくるだけの私の前に、再びヴァーツが現れた。
いつもの笑顔はなく、どこまでも感情の見えない表情をしていたと思う。
『僕がいないとこうなるんです。』
『...』
『事務所にとって、あなたは仲間でも友達でもなく。ただの"商品"なんです。あなたを売り飛ばしたシスターと同じように...どれだけあなたが尽くしても...人間はあなたを、愛してなんてくれません。』
『っ...どう、してっ...』
『そういう世界だから。人間が人間だからですよ。憐れで愚かだとは思いませんか?』
『っ...!』
ヴァーツの言葉は私にとっての現実だった。
何もかもに裏切られ、嘘で塗り固められた世界。
そんな中で、私を救ってくれたヴァーツの魔法だけが、ただ一つの真実。
『...何で、まだ泣いているんですか?本当はもう悲しくもないはずなのに。』
『......泣いたら...早く...終わった、ので...』
『...そうですか。嘘が便利な魔法になったんですね。』
涙は流れているのに、表情は固まったまま動かない。
笑ったまま泣き続ける私に、ヴァーツは彼女の目的を語り出す。
それは世界を憎む私にとって、ある意味清々しいものであった。
だから私はヴァーツに忠誠を誓って。
そしてある、"命令"を受けることになった。
『やあ。ボクはヴェナリータ。いきなりだけど、君は悪の組織に興味はないかな?』
かくして、私はヴァーツの言う通り彼女と対を成すヴェナリータと出会った。
"芸能界で生き残るには魔法が必要になる"との誘い文句だった。
まったく以て同感だ。
こんな業界はズルをして漸くトントン。
むしろ、枕なんかよりよっぽど美談だろう。
誘いに応じ星形のアイテムを受け取り変身する。
そんな私を見て、ヴェナリータは何でもないように一言感想を述べる。
『悪の組織が聖職者とは、洒落てるね。』
真っ黒なシスター服。
動揺しながらも、そっくりだなと思った。
だから、自然にポツリと呟いてしまったのだ。
『悲しいですぅ...。』
そう漏らす私の顔は、あの日のシスターと同じように。
嘘の涙と嘘の笑顔で彩られた、とても醜いモノになってしまっていた。
―――――――――――――――――――――――――――――
「ぇ...今の、は...っ!?」
溶けるようにほどけた蜘蛛の糸。
シスタは抱き合う形となっていたイミタシオから後退り、明らかな動揺を見せる。
「これが、君の背負った過去か...。」
予想しない形で暴かれた天花寺ホリィの過去。
想像を絶する苦難の人生に、イミタシオは沈鬱な表情を浮かべる。
信じていたモノに裏切られ続け、自らが嫌っていたはずの嘘に染まってしまった。
そんな彼女を未だに突き動かすのは、やはり世界への憎悪だろうか。
人に絶望してしまった彼女を従えるだけの目的とは、いったい何なのか。
「...いや。そんなことはどうでもいい...。」
何も知らなかった彼女のことを、これで少しは理解出来た。
何故ヴァーツに付くのかも納得は出来た。
これでやっとスタート地点。
シスタをこのままにしておくわけにはいかない。
それだけの理由がイミタシオにはあった。
「っ...知られた...よりによって、あなたに...っ!」
先程までの徹底した敵対体勢ではなく、肉体的にも精神的にも隙が見える。
トラウマが甦ったのか、イミタシオだけには知られたくなかったのか。
そんなシスタの様子に何かを決意したように、イミタシオは地に刺さったままの剣を掴む。
「
真の力を解き放ち白騎士の姿へと変化するイミタシオ。
天敵であるその姿に何とか冷静さを取り戻し、シスタは自嘲しつつ再び鎌を構える。
「失望した、ということですかぁ...私のような穢れた女は、迷いなく始末出来ると?」
「違う。君を救いたい。」
「......救う、ですって?」
救いという言葉はシスタの地雷だった。
ミシリと柄を砕かんばかりに握り締め、魔力を漲らせ激昂する。
「あなたに...あなたなんかに私の何が分かると言うんですか?!平凡な家庭に生まれ平凡な人生がつまらないという理由だけで悪になったあなたなんかに...!私の何が救えるって言うんですかぁ!!」
力任せに放たれた斬撃を、振り払うように切り裂く剣。
激昂するシスタとは真逆に、イミタシオは穏やかな表情でシスタを見つめていた。
初めて見せる激情に、彼女がもう仮面を着けてはいないと確信出来たからだ。
「確かに、君に比べれば私はあまりにも幸せなんだろう。君の気持ちを、本当の意味で理解することは出来ないかもしれない。」
「なら簡単に救うだなんて」
「出来る出来ないはともかく...そうしたいと思った。だから、命を賭けてみることにしたよ。」
「...命賭けで、私と戦うと...?」
「受け止めてみせる。君の怒りも、憎しみも。」
ゆっくりと近付いて来るイミタシオ。
迷いのないその瞳にたじろぐシスタは、最早制御の付かなくなった感情をそのまま吐き出してしまう。
「どうして...そうまでして、私なんかを...っ」
「何度でも言ってやる。君が好きだからだ。」
「っ...私はあなたの思っているような女じゃないのに...!」
「いいや、違う。君は君が思っている以上に素敵な人だ。」
「なに、を...」
凄まじい過去を見せたはずなのに。
あれだけ醜い姿を晒したのに。
何故そんなにも真っ直ぐに想いを伝えてくるのか。
好きだと言ってくれるのか。
そんなシスタの不安と戸惑いを、もう二度とイミタシオが見逃すことはない。
自分らしさなどかなぐり捨て、純度100%の"告白"を開始する。
「まず、優しい。」
「.....へ?」
「気が利くし側にいてくれると落ち着くし。頼んでいなくても食事を用意してくれて、それがインスタントや冷凍食品なのがまたいい。料理は苦手なんだろうか、なら私が作ろう。大人っぽいのに苦手なことがあるんだな...可愛い。ってなる。なった。」
「な、な...っ?///」
「可愛いといえばはっきり言って見た目は超タイプ。垂れ目で物憂げな雰囲気がセクシーで私より背が高いのとかドストライクだし、声も綺麗。ずっと突発的に抱き締めそうになるのを我慢してました。」
「へ、へぇぇっ!?///」
突如羅列される"シスタの好きなとこ100選"。
10個言う前に相手のキャパを超えてしまったが、イミタシオが本気を出せば本当に100程度造作もない。
突然のキャラ崩壊に先程までのシリアスが完全に吹っ飛び赤面してしまうシスタ。
なおこの間、イミタシオは非常に真剣なキメ顔のままである。
場のギャップと人のギャップで脳の処理が追い付かなくなっても仕方がない。
「君はあれだけの過去を持ちながら、私を救ってくれた。キスをしてくれた。君は自分を嘘の塊だと思っているのだろうが...あの時の感触は、想いは紛れもない本物だ。君が信じなくても、私は信じるよ。」
「なん、で...何で今更そんなことをっ...もっと...もっと早く、言ってくれれば...!」
「私だって有能な悪の王を演じるのは大変だったんだぞ。"昨日と匂いが違うね。シャンプー変えた?"とか言えると思うか?嫌われるだろう流石に。」
「か、嗅いでたんですかぁ...!?///」
「...私はただ、カッコつけていただけだ。いいところを見せたくてな。為さねば為らぬことがあるというのに、この気持ちを完全には抑えられなかった。」
「っ...///」
赤裸々過ぎて性癖がおっぴろげになっていることにも気付かず、イミタシオは言葉を紡ぐ。
色々言ってはいるが、彼女が伝えたいことは非常にシンプルだ。
どんなことがあっても、この気持ちは変わらない。
たとえ恥じたい過去や引け目があったとしても、そんなことは関係がないのだ。
「私は君が好きだ、ホリィ。
君が欲しい。心からそう思うよ。」
「っ...!!///」
今まで見たことのないような優しい微笑みで、イミタシオは手を差し伸べる。
夢見た以上の光景が、現実としてホリィの前に広がっている。
すぐに手を取ってしまいそうな多幸感。
こんな感情が本当に自分にあったのかと驚き、喜びながら。
彼女は再びその想いに
「...私は、私はもう誰も信じないっ!!あなたの愛も嘘かもしれないっ!すぐに冷めてしまうかもしれないっ!ロード様だって私の大嫌いな人間でっ...憎くて仕方がない世界の一部ではないですか...!!もう、もう嫌なんですっ!!苦しむくらいなら、もう全部壊してしまいたいんですぅっ!!!」
溢れ落ちる涙に嘘の色はなく、その叫びには本心が籠っていた。
彼女の鎌が主の想いの力を一身に受け、その形をより禍々しく、巨大なモノにする。
見上げんばかりの死神の鎌を前に一歩も引かず、イミタシオは笑顔のまま聖剣をシスタに突きつける。
「ならば勝負だ。その鎌に今までの全ての悲しみと憎しみを込めるといい。私を全ての元凶と思い、躊躇いなく振るえ。それで私が殺せなかったら、君は私のモノだ。」
「っ...まだ、そんなことをっ!!」
「知っているか?この世界で一番強いモノを。魔法でも、奇跡でもないそうだ。」
どす黒いオーラを纏う鎌を激情のまま振るうシスタ。
剣を上段に構え迎え撃つイミタシオは、淡々とこの世界の所感を語る。
今まで負けて来たのは、全てこの日の為だったと悟りながら。
かつてない輝きを放つ聖剣に想いを込め、今解き放つ。
「それはな...」
「死んでっ!!くださあぁぁいっっ!!」
「"愛"だよ。」
横薙と縦斬、白と黒。魔法と呪い。
正反対、対になる力はされど釣り合うことはなく。
闇は溶けるように光に飲み込まれていく。
単純な力負けではないと、他でもないシスタが理解していた。
ぶつかり合う力が、結び付いていくのを見たから。
彼女と自分の愛が、繋がるのを感じてしまったから。
自らの身体にぶつかる魔力全てに、イミタシオの想いを感じて。
痛みを知覚する余裕がないくらいの満足感を得てしまっていた。
「君を覆っていた悲しみや憎しみも、私の愛には敵わなかった。取り返しが付かない重さなんて、あんな思い出にはないんだよ。幸せを諦める必要なんてない。私が、君の"本当"になるから。」
彼女にとって、それはまさに"救い"だった。
神でもシスターでも、魔法使いでもない。
彼女にかかった呪いを解いたのは、ただ彼女を愛しただけの魔王だった。
あまりにも単純。
だからこそ強い願望で、生きる意味になり得る。
憎しみも傷も消えないけれど、それを考えられなくなる程の熱情を、ホリィは手に入れたのだった。
「私の勝ちだ。ホリィ。」
「はぃ...私の、完敗ですぅ...みち子、さま...///」
傷付き倒れたホリィを抱き止め、みち子は彼女に勝利宣言をする。
もうこれでお前は私のモノだと。
決してもう離したりしないと、強く強く抱き締めて。
あの日の優しい幻のようなキスではなく。
記憶に焼き付く、深く激しいキスをした。
―――――――――――――――――――――――――――――
「で、フラれたと。」
「フラれてなどいないが?最後にはちゃんと帰って来るんだが?」
「ちょ!?泣かないでよ20歳。悪かったわよ、流石に。」
見た目以上に弱ってるんだなこの魔王様。
何故この私が自分の元仇に気を遣わなければならないのか。
いつもの鋭い表情のままボロボロと涙を流すみち子を眺めながら、私は今日何度目かの溜め息を吐く。
ヴェナリータが帰って来たと思えば、その直後にシオちゃんズがナハトベースに転がり込んで来たのだ。
みち子以外は目立った外傷はないものの、当分は目を覚まさないらしい。
かなり強い魔法をかけられたとのことだが、寝ているだけならさっさと帰ってくれないだろうか。
掛かり付けの医者扱いはこりすにとっても非常に不本意だろう。
ほら、分かりやすいくらいにむくれているじゃないか。
「そんなに心配なら何でシスタを行かせちゃったんですか~?」
「離さないって言ったんじゃないんすか?」
「それはだってその...彼女がどうしてもとだな...。」
「そこはもう強引にロードムーブしましょうよ~。」
「そうそう、エノルメエノルメするべきでしょそこは。」
「そ、そうなのか...?」
たまネモってば完全に面白がってるな...。
みち子から大体の事情は聞いたが、どうやらシスタと和解はしたが『すべきことがある。』とその場を去って行ってしまったらしい。
勿論彼女を心配して引き止めたけれど、すごく晴れやかな笑顔を見せられて頷かざるを得なかったんだそうだ。
『大丈夫、ちゃんと帰ってきますから。』
世間一般では圧倒的にフラグな発言だけど、惚れた以上信じたいという心境なのだろう。
気持ちは理解出来る。
先程からヴェナが距離を置いて話を聞いているが、まさか粛正オチをかまそうとしてるんじゃないだろうな?
今のうちに首根っこを掴んで動けなくしておくべきかもしれない。
「...何にせよ、今回はお疲れ様。良かったわね、想いが実って。」
「ふん。貴様からの労いなど不要だ。...だが、まあ。一応感謝しておく...。」
「感謝?何の?」
「...確かに強かったからな。その...愛、というやつは...///」
「ぷっ。」
「やはり貴様はいつか殺すっ!///」
我が仇敵ながらなかなか初な奴よ。
これだからみち子いじりはやめられないぜ。
何だかんだ、彼女は彼女で成長しているということなのだろう。
殺すだの物騒なことは言っているが、もう軽々しく人を傷付けるようなことはしないだろう。
せいぜいこれからも定期的にじゃれ合って、お尻を楽しませて頂きたい。
「百花さんはどうでもいいとして、蘭朶さんにどう言い訳するか考えておくのね。たぶん死ぬしかないけれど。」
「みち子~アウトぉ~。らんらんには全体的にえろく盛って教えとくからよろよろ~。」
「は?」
一歩間違えれば明日は我が身。
もし生き残るようなら万が一の参考にしなければ。
強く生きて、みち子。
私の未来の為に。
「小夜ちゃん。」
「ひっ!?違うの私は二股じゃなくて二人に真剣なだけで」
「二股...?あの、雑談はいいんだけど...今はほら、みち子さんに聞かないと。」
「...あぁ、そうだったわね。」
いつの間にか後ろにいたうてなに促され、忘れていた目的を思い出す。
ある意味ベストタイミングでの登場だったのだ、ちょうど恩も売れたしインタビューくらいさせてもらうとしよう。
「みち子、治療したお返しに聞かせなさい。」
「なんだ水神!?今阿良河をどう懐柔するかで忙し」
「あなたの真化...いえ。
"深化"についての話よ。」
―――――――――――――――――――――――――――――
◼️□next episode◼️□
「うてなちゃんはさぁ、アタシのこと好き~?」
「え...す、好きだけど...あの...///」
「じゃあしてく~?」
「え...?」
「ホテルえっち。」
「え"っ。」
きっと本編はくだらない理由でかつ小物っぽくヴェナにお仕置きされるんじゃないかな。
それに比べれば扱いはいいですよね←
ベルゼルガとシスタの得物を被せたのはわざとです。
二人の死神に愛される魔王様って素敵ですよね。
次回は5/4(日)0:00投稿予定です。
※5/2追記
現時点で半分くらいしか書けてません(白目)
GWで書ききれればってレベルなので、5/11(日)0:00投稿に延期します。すみません。