魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~ 作:月想
1ヶ月と半分程お休み頂きありがとうございました。
本日より投稿を再開していきます。
内容はアラカルト。
ウォーミングアップがてら流し読みしてどうぞです。
喜章『これまでとこれからへ』
【アレクシア、転校初日】
「ハーイ!ワタシ、アレクシア・ハートフィールドデース!日本がダイスキ!留学をとてもとても楽しみにしてマシタ!仲良くしてくだサーイ!」
「美少女!金髪ツインテ!アメリカン!カタコト!そして何より爆乳!圧倒的属性過多ッ!とんでもねー逸材ですわっ!!」
「Oh!アナタ素晴らしいヲタクの波動を感じマース!さてはソウルメイトデスね?!」
「Destiny has come!運命的な何かを感じますの!!」
「...すごく、嫌な予感が...助けて、みっちゃん...。」
―――――――――――――――――――――――
【残酷な格差】
「さあさあ!久しぶりに姉妹仲良く裸と裸のお付き合いを致しますわよぉ!」
「嫌ですの。」
「反抗期!?」バイーン
「足りないものが、多過ぎますのっ...!」
―――――――――――――――――――――――
【変化】
~ 初日 ~
「アタシに構わないで。仲良くする気はないって言ったでしょ。」
~ 一週間後 ~
「おはようサヨ。ね、今日よかったら一緒に買い物なんてどう?」
~ 文化祭後 ~
「キウィ邪魔。座るならウテナの膝で。あ、ハルカ。こないだはいい八百屋さん紹介してくれてありがとう。カオル、借りた漫画なかなか面白かったよ。今度アタシもオススメの持って来るね。」
~ 最終日 ~
「アタシ、このクラスに来られてよかった。みんなとの思い出、絶対に忘れないから。本当に、ありがとう。」
―――――――――――――――――――――――
【便利でジャンキー】
「ビッ」
「だからお任せするな。コンビニを何だと思っている。」
「ふん!ニホンのコンビニなんかにワタシ様を満足させるジャンクフードがあるわけないわ!」
「バンズにフライドチキン、オニオンサラダを挟み、最後にタルタルソースをかければ簡単なチキンバーガーは出来るが。」
「モグモグ...グッ。」
「ま、まあまあじゃない。そっちのホットチキンも食べてやってもいいわよ?」
※この後夜ご飯が食べられず無事シャノンに叱られた模様
―――――――――――――――――――――――
【キウィ、新技の秘密➀】
『放熱板がなんだってんだ!』
「サラダを食べる約束が...。」
「結構質素なデートだよね。」
「菜食主義なんじゃない?」
「ファンネル...」キュピーン!
「キウィちゃん...?」
「キウィに電流走る。」
―――――――――――――――――――――――
【たまネモ修学旅行 in 北の大地】
「めちゃ寒そう...。」
先程まで乗っていた飛行機がどれだかも、もう分からない。
透明なガラスにはうっすら白い靄がかかっていて、まだ秋にも関わらず外が真冬並みに寒いことを物語っている。
引っ切り無しに飛行機が着いては飛び立っていく様子を何の気なしに眺めながら、姉母ネモはお手洗いに駆け込んだ相方の帰還を待っていた。
あれ程トイレは先に済ませておけと言ったのに、眠いからとコーヒーをがぶ飲みしたのがいけない。
飛行機内のトイレが使えなくなる着陸間近に催した時は肝が冷えた。
あと少しで露出癖に加えとんでもない性癖が発露するところだった。
遠足前に寝れなかったり、アイツは本当に昔から変わらない。
そういうところが可愛いのだと思ってしまうあたり、自分の方はかなり変わったみたいだが。
「ちょっとちょっとネモ。これ食べてみなさいよ。やっぱり本場は段違いにおいしいわよ。」
「いつ出てきたんだよトイレから。てか買い食いはまだ怒られるしそれにしても出すのと食うのがはえーよ。」
「うっさいわね。出すとかアイドルに向かって言うんじゃないわよ。」
「価値観昭和か?」
某有名牧場のキャラメルを口にしながら戻ってきた、ネモのパートナーこと阿古屋真珠。
てっきりトイレから出てくると思っていたので、出口付近にわざわざ立っていたのだが。
どういうわけかネモが見るのを我慢していた土産コーナーからの登場である。
恐らくネモが外を眺めている間に通り過ぎたのだろうが、普通一声掛けるのが常識。
真珠がトイレに行きたいからと先生やクラスメイトを待たせているのだ、買い食いがバレたら倫理的に妥当なお説教を喰らうに決まっている。
「ある意味大物だよな、お前。」
「あったり前でしょ。真珠なんだから。」
ムカつく程にポジティブな真珠を引っ張り、何とか団体行動に再合流するネモ。
ちなみにキャラメルはマフラーの下に隠した。
「
そう、修学旅行だ。二人は今住み慣れた土地を離れ、遠路遥々"北の大地"にまでやって来ていた。
お隣さんである小夜たちの学校は定番中の定番"奈良with京都"だった為、当然自分たちも鹿&寺&湯豆腐という地味旅行だと思っていた二人。
しかし、何故か今回ネモたちの学校が修学旅行の行き先に選んだのは北海道だったのだ。
一説によると教職員たちの猛プッシュがあったとか、なかったとか。
寒い、あと2泊3日は短い。
そんな文句もありはしたが、ぶっちゃけ寺よりは当たりだと生徒からは好評。
本日ついに実行と相成ったのだった。
なったの、だが。
「...なんか、少ないわね。」
「半分くらい休んでるからな。」
各クラス10数人ずつしかいない様子を微妙な表情で見つめる。
なんと修学旅行前日にパンデミック(風邪)が発生。
話題の感染症ではなくただの風邪に生徒や職員が同時にかかり更に拗らせるという逆奇跡な状況となってしまったのだ。
勿論未定延期の提案はあったが、タイミングがタイミングでキャンセルも出来ないし、感染症でないのは診察済なので元気な生徒たちが可哀想だという声もあり、結局は二組に分かれた旅行にすることで話が着いたらしい。
今日来ているのはその第一陣というわけだ。
「まあ、その分休んでる奴らの旅行先は鎌倉とからしいけど。」
「せめて日光までは行きたいわよね。」
「イーブンだろ、それ。」
寺がない分、やっぱり北海道は当たりだと思う。
可哀想な風邪組は忘れて、自分たちはこの少数精鋭を楽しむことにしよう。
気持ちを切り替えた二人は促されるままにバスへと乗り込み、空港を後にする。
「言うて金閣寺の方が見たくね?」
「ふふん。真珠にかかれば地球全てが映えスポットよ。」
「...これ映えてんのお前だけじゃん。」
早速始まる観光ツアー。
トップバッターはド定番の某"時計塔"。
その地味さにテンションを一段階下げられる生徒たちだが、真珠は絶好調だった(ネモ比)。
そこから昼食にジンギスカンを食べるのだが、人数が少ないことを理由に一人辺りの食事が多少豪勢に。
少食のネモはともかく、真珠はアイドルにあるまじき圧倒的豪遊。
一週間後に体重計恐怖症のバッドステータスを獲得することになる。
畳み掛けるように、続いての見学先は某有名"白い恋人パーク"。
「小夜たちへの土産、これでいいよな?」
「いいんじゃない?行きの空港にも売ってたけど。」
「キウィのアホがぐちぐちうるさそう。」
「分かる。小夜とかその場で開けて真珠たちにも配りそう。」
「ホントお母さん。」
「あ、でもこりすが甘いの苦手だったわね。」
「甘いのダメって結構土産殺しだよな。」
ポリポリと配られた某ホワイチョコ菓子を咀嚼しつつ、今は遠く離れている友人を想うたまネモ。
メッセージアプリで送った『寒い、なう。』という一言には『抱けぇ!』『今夜はお楽しみですね。』とだけ返信が来ていた。
どの二人からのメッセなのかは言わずもがな。
せめてはるかたちくらいツッコミを入れて欲しい。
その間も、真珠の手は止まらなかった。
「大志、抱いてますか?」
「真珠こそみんなの夢なのよ。」
「アンビシャスなう。と。」
某クラークさん像の前で記念撮影。
友人に送る用の写真には髭をデコレートされた真珠を添えて。
何だかんだ楽しんでいる間に、気付けば日が沈みかけていた。
急いでバスに戻り、宿泊先の旅館にチェックイン。
夕食には、満を持しての海鮮三昧。
真珠、当然堪能。
再びの豪遊。すなわち暴食。
北の大地、ぶっちゃけ最大の魅力は食。
食こそ本命。他、ついで。
真珠、それを理解しているからこその本気食い。
委細承知の狂乱。
「食いすぎじゃね?」
「ストレスよ...!」
実は溜まっていた、ストレス!
またまだけに!
ネモ、黙る。
仕方がない、ストレスなら。
決意する。
旅行後の、ダイエット指南!
「もっと丁寧に洗いなさいよね。」
「アタシん時ゴシゴシやってただろうが。」
夕食後には待ちに待った温泉タイム。
二人は当然のように背中を流し合う。
互いの裸も最早見慣れたモノ。
「...真珠さ、ちょっと胸でかくなった?」
「ブラが少しキツくなったくらい。小夜とかキウィとか見てると、成長してても実感ないわよ。」
「やっぱあれくらいあった方がいいわけ?」
「アンタくらいのが可愛くて好き。」
「いや、好みじゃなくてさ。」
「そういうアンタはどうなの?」
「真珠ならどっちでも。」
「ならいいじゃない。」
「だな。」
もう少し照れや素直になれない雰囲気があったはずだが、弄られる心配がないと分かればこの通り。
クラスメイトの目も憚らずに胸を横からツンツンし、平然とイチャつく始末。
その日、幸か不幸か二人の関係を察したクラスメイトが数人、百合の迷路に迷い込んでしまったとか。
まあこの世界では普通のこと。
男の存在すら疑問視せざるを得ない、百合の園。
筆者も戸惑い、設定に迷う。
それほどの百合百合ワールド。
「...広いわね。」
「6人部屋に2人だからな。」
ホカホカ気分で部屋に戻ると、チェックイン時には意識しなかったぽっかり感を感じるたまネモ。
布団も仲良く二つ並んでいるだけ。
これではまるでカップル旅行だなと今更な感想を抱きつつ、二人は自然に机を挟んで座布団に座る。
「それさ、面白いのか?」
「んー。なんとなくやってるだけ。」
「デ○ズニーだから?」
「んー。たぶんそう。」
いつも通りスマホゲーの日課を消化し出すネモに合わせてか、真珠も某有名パズルゲームのプレイを始める。
修学旅行だからと話題が特別になる程二人は互いを知らないわけではないのだ。
「...お。小夜たちカラオケ行ったんだってさ。」
「え。主役不在で?」
「だから行ったんだろ。」
「はっ倒すわよ。鬼扱いか。」
「真珠の居ぬ間にカラオケ。」
二人だけだからと抑え気味のテンションも、友人の話になると少々上がる様子。
送られて来たカラオケの写真にツッコんだり、小夜たちの修学旅行の報告を振り返ったりして。
いつの間にかみんなが一緒にいるような気持ちになって、しばし賑やかな時間が続いた。
「またまー、歯ブラシここ出しとくぞー。」
「あんがとー。」
気付けば時刻も22時近く。
明日は7時には起床しなくてはならない為、二人は歯磨きやスキンケアを始める。
これで友だちがフルでいれば、布団に入りつつのガールズトークで夜更かし確定なのだが。
本当に四六時中一緒だったたまネモに、睡眠時間を潰してまでの話題はなかった。
当たり前のように布団を隣同士に敷いて、アラームをセットする。
朝は弱い者同士、頼れるのがお互いだけであればアラームはまさに生命線である。
「あんた、寝れるわけ?」
「寝れなかったらゲームしてる。」
「ダメよ。目、悪くなっちゃうわよ?」
布団に入りそこそこの寝心地に安心する真珠。
夜更かしが当たり前のネモを心配し、軽く会話を続ける。
「...寒いわね。」
「北海道だからな。暖房、上げるか?」
「乾燥強くなりそうだし嫌なのよね。」
「ワガママだな。お姫様かよ。」
「そうよ。慮りなさい。」
暗くなった部屋は視覚的にも冷たく見えて、一気に気温が下がったような感覚がある。
寒いと愚痴る真珠は暖房に頼る作戦を気に入らないようで、器用に布団を転がり隣のネモ布団にモゾモゾと侵入していく。
「...狭い。」
「家と変わんないでしょーが。」
先程よりずっと温かくなった布団の中で、真珠はネモの身体に自分の身体を押し付けるように密着する。
そんな彼女をネモは口調とは裏腹に拒まず、片方の腕で抱き寄せる。
「なんかさ。最近マジでヤバかったよな。」
「そーね。最近って言うか、今年ずっとだけど。」
「このままやめるってのは?」
「いいわね。辞表はアンタが作るってことで。」
「まあ冗談だけど。」
「でしょうね。楽しい方が好きなんでしょ?」
「真珠はアイツらが大好きみたいだから、アタシは泣く泣く狸寝入りするしかねぇのさ。」
「ブーメラン刺さってるわよ?」
温もりを感じる幸せに、今までのギリギリ過ぎる戦いを回顧してしまう。
店長ことロードに殺されかけたかと思えば、次はビルみたいな化物に歌をぶつける羽目になり。最新だと正義の味方にやっぱり殺されかけた。
とんだシリアス作品である。
文句を言いたくなるのも無理はない。
「やっぱ、もうそろ終わりなんかな?」
「終わりにしないとヤバいんでしょ。」
「出来んのかな。」
「やるのよ。」
「前向きだよな、マジで。」
「前向きじゃないから、口に出してんの。」
ネモは天井を見つめていて、真珠の顔は見えない。
でも抱き着く力が僅かに増したのを感じて、真珠も自分と同じだと理解した。
理解したから、ネモは身体を真珠の方に向けて優しく唇を唇に触れさせる。
「ん...。」
「ぬくぬくだな。」
「布団の感想じゃない。」
せっかく温かくなった布団から起き上がり、真珠は覆い被さるようにしてネモを下に見つめる。
「なんだよ。」
「最近ネモたまになってんのよ。生意気なのよ。」
「カップリング呼び受け入れんなって。」
うっすら頬を染めながら強がる真珠を抱き寄せ、ネモは自身の鼓動もまた早まっていくのを感じる。
「シたいのか、真珠。」
「聞かなくても分かるでしょ、ばか。」
「修学旅行でとか、見られたらヤバいだろ。」
「ヤバくても、スる。シたい。アンタは?」
「聞くなばか。」
興奮のまま唇を触れ合わせ、生まれたままの身体を重ねる。
他人から見れば淫らな行為。
でも二人には、お互いの気持ちを隠さず伝え繋がり合える、貴重でかけがえのない時間。
修学旅行という特別な場で。
一緒にいるのが当たり前だった相手と二人きり。
当たり前も、特別も。
どちらも大切だと知ってしまった少女たち。
大切だからこそ、あともう一度もう一回と求め続ける。
何度も幸せを刻みつけ、二人は当たり前で特別な時間を過ごしていく。
結局次の日も同じように満喫してしまった真珠とネモ。
次の旅行は自嘲の為みんなで行こうと決めた、反省の残る修学旅行となったのだった。
―――――――――――――――――――――――
【キウィ、新技の秘密➁】
『わ、私はカボチャっ』
「あたしキウイ~。」
「ぷっ。」
「それは、そう。」
―――――――――――――――――――――――
【キウィ、新技の秘密③】
『アーマーパージだっ!!』
「お~。」
「大胆ね。」
「ロボならともかく美少女でやるとなかなか...///」
「さよちゃん!アーマーパージだぁ!」
「しないから!物理的に脱がせようとしないで力強っ!?///」
―――――――――――――――――――――――
【うてな、薫子。修学旅行にて➀】
「疲れたねぇ...。」
「疲れたどころか死にかけたわ...。」
「だ、大丈夫なんだよね?」
「ああ。傷も塞がっとるし。」
「よかった...。それで、膝枕はどうだった?」
「膝枕?」
「え。」
「え...?」
―――――――――――――――――――――――
【うてな、薫子。修学旅行にて➁】
「はるかも怪我しとったし...。」
「そ、そうだよね。...温泉は気持ちよかったよね!」
「年寄りやないけど染みるって感じやったね。」
「うんうん。人肌の温かさと温泉の温かさが別々に癒しをくれるよね。」
「人肌?」
「え"。」
「は...?」
―――――――――――――――――――――――
【うてな、薫子。修学旅行にて➂】
「密着なんてするわけないやろ...!」
「そ、そうだよね!?」
「そうだよねとはなんや!うちには無理言うんか!!」
「落ち着いて!?」
「だいたい付き合うてもないのにずぅぅっと人前でイチャコライチャコラしおって!寝てる間に乳繰り始めたらシバくで!!」
「さ、流石にそんなことは...約束したのは手を繋ぐだけだから///」
「くっそがあぁぁっ!!!!」
「薫子ちゃん...!?」
―――――――――――――――――――――――
【スカウトの理由】
「あ!これ持ってないCD!結構レアなのよねぇ!」
「また無駄遣いかよ。もう引退してるアイドルだろ?」
「アイドルは永遠にアイドルなのよ!それにこの人は他とは段違いなんだから!」
「どこが?」
「まず可愛いでしょ?あとあと、歌う時に何て言うか...すごく幸せな顔して歌うのよ。それがとってもアイドルって感じで憧れるの!」
「ふーん。まあ真珠は憧れ止まりだろうけどな。」
「あんですってぇ!?」
「...」
「気になるかな?彼女たちが。」
「いえ、ただ...。憐れで、可哀想だと思っただけですぅ。」
―――――――――――――――――――――――
【みち子、お姉ちゃんになる】
「...はぁ。それで?
「...。」
元から鋭い目を余計にキツくして、田中みち子は自分を呼び出した小さな友人を睨み付ける。
正確には、その後ろに隠れる
「こ、こんにちわ...。」
「何をやっている、水神。」
「ひぅっ」
「ビッ!」
「質問しただけだろう!怯えられる筋合いはない!」
友人こと杜乃こりすは少女を庇ってみち子に注意するが、生まれつきの顔を恐がられてもどうしようもない。
目の前の状況に目眩がしてきたみち子。
あの純粋無垢な小動物のように震える少女は、どう見ても"水神小夜"だ。
記憶より圧倒的に小さいというか、幼いが。
「面倒事に巻き込まれたな...。」
こりすに慰められるミニ小夜を見るにどう考えてもイレギュラーな事態に決まっている。
そうでなくてはこりすがわざわざみち子に連絡してくることなどないからだ。
しかも、この状況で他のエノルミータのメンバーがいない。
みち子はとてつもなく嫌な予感を感じつつ、再び視線をこりすに向ける。
「真面目な話だ。どういうことか説明してもらうぞ。」
―――――――――――――――――――――――
JSTとの決戦、そして和解から一週間が過ぎた頃。
中学生組が修学旅行を終え、束の間の平和が小夜たちに訪れていた。
「退屈ね。」
ナハトベースに響く、総帥の退屈発言。
訪れる沈黙。
先程までだらだらしつつも雑談を楽しんでいた他メンバーは、揃いも揃って押し黙ってしまっていた。
それもそのはず。
自分たちには向かないシリアス&バイオレンスの連続に、彼女たちの心は疲弊していたのだ。
あのキウィですら、この時ばかりは『めんどくなんないように。』と祈っていた。
疲れているのは小夜も同じはずだが、今この瞬間は退屈だと思ってしまったらしい。
「呼んだかい?」
呼んでない。
誰もがそう思った最悪のタイミングで、ヴェナえもんが現れてしまった。
この流れは、まずい。
キウィに何とかしろと視線を送るたまネモ。
しかし、キウィはそれをそのままこりすにスルーパス。
慌てて身振り手振りをしてみるが、小夜は気付いていないようだった。
仕方なしに小夜の方に向かうこりす。
"幼..."だの"うてなちゃん"だの、ヴェナリータとの会話が僅かに聞こえて来る。
小夜は余程ヴェナの提案を気に入ったのか、頷き何かを受け取ると同時にエノルミータに出撃指令を出した。
全員げんなりしつつ、しかしキラキラした目の小夜を止めることは出来なかった。
「アズールちゃん、今度はどうしたの?」
変身し、街で待ちぼうけすること約10分。
少々疲れた様子でトレスマジアがやって来た。
マゼンタはいつもより少し静かなくらいだが、残り二人は明らかにダルそうだった。
正義の味方と悪の幹部がお互いに同情する貴重な瞬間である。
「これで全員ロリになるのよ!!」
アズールがわざわざ谷間から取り出した謎のスイッチ。
彼女のあれな発言に遅れて気付く、哀れな犠牲者たち。
だが、ただ一人だけ動けた者がいた。
「...!」
「え、アリス!?」
背後に控えていたネロアリスがスイッチを奪い取り、状況は逆転した。
まさかの裏切りに驚くアズール、面倒事の回避に喜ぶその他。
やってやった。そうアリスがほくそ笑んだ瞬間。
ポチッ。
「「「「「「「え。」」」」」」」
「なのだわ。」
勢い余って、アリスの指がスイッチを押してしまった。
次の瞬間、それぞれ光に包まれ街中に散らばっていくヒロインたち。
光らなかったのはアリスとロボ子だけ。
アズールに関しては光はしたが、散ることはなくその場に留まっていた。
アリスとロボ子が戸惑っていると、段々光が小さくなっていき。
「ここ、どこ...あの...どなた、ですか...?」
アズールは妙に遠慮がちな、小さく幼い小夜となってしまっていた。
―――――――――――――――――――――――
「つまり、水神を止めたつもりがその怪しいスイッチを押してしまい。他の面子はどこかに飛ばされ、残っていたのはその小さい水神だけだった。というわけか。」
「コクリ。」
「そいつの自業自得ではないか。帰るぞ。」
「ブンブン!」
事情を理解したことで余計に関わるのが億劫になったみち子。
ざまあみろとその場を立ち去ろうとするが、それを必死にこりすが通せんぼする。
「はぁ...。」
「あ、あの...ごめん、なさぃ...。」
小さくなった小夜、ではややこしい。
ミニ小夜を恨めしげに見てみるが、怯えながらも呟いているのは謝罪の言葉。
どうも様子がおかしい。
あの謝罪は反省から出ているのではなく、怒られるのが恐くて反射的に出たものだろう。
話を聞く限りここにいる経緯やこりすのことも分かっていないようだった。
「記憶や精神まで退行しているのか?」
ただミニ化したわけではないらしい。
みち子は以前聞いた小夜の話を思い出す。
確か、転生した段階で自意識は成熟した死の直前のままだったはず。
小さくなって記憶がないだけなら、もっと小生意気な発言を連発してくるに違いない。
精神的にも退行しているとみていいだろう。
「ヴェナリータはどうした?」
「フリフリ...。」
「あの悪魔め。わざと行方を眩ましたんじゃないだろうな?」
スイッチの解除方法はヴェナリータしか知らない。
小夜が聞いていたとしても覚えているはずもない。
つまり根本的な解決は不可。
というか、それよりも対策が急務な問題がある。
話によれば、飛んでいったメンバーはいずれも小夜と同じ光に包まれていたという。
小夜がこうしてミニ化している以上、他がどうなっているかは考えるまでもない。
同時多発の"迷子"発生である。
魔物が出る以上、治安が絶対的に安全とは言えない世界なのだ。
記憶もなく何も分からない子どもを放置しておくのはあまりに危険。
それを複数人、こりすとロボ子だけで見つけ匿うのは厳しいだろう。
結論は出た。
極めて理性的に、人道的に考えてこうするしかない。
みち子は観念したように再びため息を吐く。
「捜すぞ、あのバカ共を。」
「パァァ!」
「このままでは仲間にしようがないからな。ロボ子は先に捜しに出ているのだろう?」
「コクリ。」
巻き込まれた以上、我関せずとはならなかった。
みち子は手伝うことを了承。
ヒロインたち捜索に向かうことにしたのだった。
―――――――――――――――――――――――
「あそこなのだわ。」
こりすに案内されるまま、先に捜索へ向かっていたロボ子と合流。
何やら茂みに隠れており、ある一点を指差している。
「あはは!おっきい~!ひろ~い!」
自然の生み出した開けた場所で、文字通り野を駆け回っている小さなピンクいシルエット。
「あれは...小さいが、花菱だな。」
「コクリ。」
捜していたヒロインの一人。
マジアマゼンタこと花菱はるかだ。
やはり小夜と同じく幼女化しており、能天気に遊んでいる辺り精神もすっかり子どもになっているようだ。
「というか、何故隠れる必要がある?」
「お話したことがないのだわ...仲良くしてもらえるか不安なのだわ...。」
「意外とナイーブだなお前。野鳥観察じゃないんだぞ。」
人見知りしていたらしいロボ子を置いて、みち子は真っ直ぐはるかに向かっていく。
こりすもそれに続き、小夜もまたくっついて来た。
「ん~?」
「あー...私たちのことを覚えていないだろうが、怪しい者ではない。一人でいると危険だ、こちらに」
「さよちゃんだぁっ!!」
「は、はるか...。」
怪しくない(怪しい)自己紹介をかまし警戒心を解こうとするみち子だったが、その努力はどうやら不要だったらしい。
ミニ小夜を見たミニはるかは喜びながら急接近。
熱いハグをして、興奮した様子で跳び跳ねる。
「さよちゃん!あそびにきてくれたの!?」
「え...ま、まってはるか...」
「やったぁ!さよちゃんとあそぶのひさしぶり!なにする!?おにごっこ!?」
「あ、あの」
「かくれんぼがいいの!?わかったぁ!じゃあさよちゃんがおにね!」
「はるか、きいて!」
戸惑う小夜に構わず遊ぶ方向に話を進めるはるか。
今にもかくれんぼが始まりそうなタイミングで漸く小夜の声が大きくなり、はるかの耳まで届いた。
「いま、あそぶのはだめ。やらないといけないことがあって。」
「えー!あそんでくれないの!?」
「だから、いまは」
「どうして!どうしてさよちゃんあそんでくれないの!?あたしおともだちなのに!どうしていっしょにいてくれないの!?」
「は、はるか...?」
子どもながらに筋道を立て説得しようとする小夜に対し、はるかは駄々っ子のように不満を爆発させる。
「あそんでくれなきゃやだ!はやくみつけないとさよちゃんのいやがるとこにかくれちゃうからね!!」
「ま、まって...!」
最後に特大の癇癪を炸裂させ、脱兎の如くその場を走り去るはるか。
幼女と思えないその速度に唖然とし、みち子たちはその逃走を許してしまった。
「わんちゃんみたいなのだわ...。」
「幼少期は野生児だったのか。」
「ごめん、なさい...。」
「ヨシヨシ。」
落ち込む小夜を慰め、逃げ出した野生児を追いつつ他のヒロインたちを捜すことに。
当てもなく歩くしかないように考えていたみち子だが、実際はちょっとした救いがあった。
近くであれば微量な魔力反応をアイテムを介して察知出来るらしく、はるかの逃走から20分弱で次のヒロインを見つけることが出来た。
「みんな~!きょうはすーぱーアイドルまたまのすぺしゃるらぶりーライブにきてくれて、ありがとぉ~!」
「虚空に向かって何をしているのだ、あのバカは。」
休憩スペースのベンチをステージに見立て、マイク代わりのペットボトルを片手にバタバタしている幼女。
今も昔も変わらぬスーパーアイドル(自称)阿古屋真珠その人である。
「あんたたちまたまのファンね!このごりらライブによくはせさんじたとほめたげるわ!」
「それを言うならゲリラライブだ。」
「そうともゆー!」
変わらないのはその性格も同じようで、物怖じすることも思考することもなく大人含め自分の客であると決めつけている。
常々ネモが彼女を"ガキのまんま"と評していたが、実際に見てみると納得せざるを得ない。
「それではうたいますっ!てんげーじほりーさんで、えんじぇるらいと!」
「む。」
「ほんとにうたうんだ...。」
この頃にラブロコはまだなかったらしい。
カバー楽曲の歌手名に反応するみち子。
ツッコミを止めて思わず聞く体勢になってしまうが、歌っているのはあの真珠。
やっぱり絶妙にいじりにくい程度に下手くそだった。
「ありがとぉー!」
「か、かわいかったとはおもいます...。」
「やはりパンツありでは厳しいか。」
「スピーZz」
「こりすちゃん、終わったのだわ。」
しっかりフルサイズを聴かされたみち子たちの評価は言わずもがな。
歌詞をちゃんと覚えているのは地味にスゴいことなのだが、それをわざわざ褒める気にもならない歌唱力であった。
「どーよ!さいっこーだったでしょ!」
「お前の将来の為に言うが、あまり才能はないようだぞ。」
「なんでそんなこというのよぉー!(大泣)」
真面目な女みち子。
幼女相手に現実を豪速球。
現在より僅かに弱いメンタルには捉え切れず、直ぐ様の号泣を招く。
一斉に非難の目を向けるこりすたち。
「ひどいのだわ。」
「ケッ。」
「つめたい...。」
「なんだ貴様ら揃いも揃って人を悪人みたいに!お前たちもめちゃくちゃ下手くそって目で見ていただろうが!」
「へたじゃないもぉぉん!!(大々泣)」
悪者にされる理不尽につい口を滑らせ、ミニ真珠は超を超える大号泣モードに突入。
弁解も慰めもまったく受付なくなってしまった。
「はぁ...仕方ない。お前たち、阿古屋をここで見張っていてくれ。」
「どこに行くのだわ?」
「このじゃじゃ馬を
はるかのように見失うことがないよう、こりすたちに見張りを任せみち子は小夜を伴ってその場を離れる。
未だに怯えられていることはさておき、一応の備えとして小夜は必要だと判断したらしい。
捜し出す方法はロボ子を真似た魔力検知のみだが、意外にも今日のみち子はツいていた。
真珠の位置から程近い公園から、微弱な魔力反応を感じ取ったのだ。
一見誰もいない公園を見渡し、その中で一番大きな滑り台に目が向かう。
入り口付近の、ちょうど子どもが一人入れるくらいのスペース。
「ここにいたか、姉母。」
「っ...だ、だれ?」
膝を抱えて踞っていたのは、これまた幼いネモだ。
四人目となれば流石に学習したのか、みち子も出来得る限りの優しい声音で話しかける。
「助けに来た。もう隠れなくてもいい。私たちがお前を守る。」
「でも...そとにでたら、たべられちゃうから...。」
「食べられる?」
「かげからでちゃうとね、サメにたべられちゃうんだ...。」
子どもが一人遊びでよくやる、影を踏み続けるだけのゲーム。
さっきまでのみち子なら『遊んでる暇はない。』と吐き捨てそうだが、今回は違った。
ネモの心底不安そうな表情を見逃してはいなかったのだ。
「サメが恐いのか?」
「こわい...。」
「そうか。だがそうやって影に隠れているのにも限界があるぞ。ずっとそこにいたいのか?」
「...。」
答えないのは出たい気持ちがあるということ。
これまでの流れでみち子にはある"確信"があった。
幼くなって好き勝手をしているように見えるヒロインたちは、今現在の彼女たちの不満や不安を晴らそうとしているのではないか。
そう考えれば、自ずと説得の方法も思い付く。
「影も意外と悪くない。涼しいし、落ち着ける。それに、ここにしか居場所がないし。そんな風に思っていないか?」
「...。」
「今は仕方なくそこにいるんだろう。だが、私は知っているぞ。成長したお前は影に隠れたいのではない。支えたいから、自ら影になったんだ。日向に立って輝いて欲しいモノを守る為に、お前は勇気を振り絞れる奴だ。」
「...さめに、たべられなかったの?」
「お前がサメになったのだ。かつて恐れていたものと同じくらい、お前は強い。ネモ、一緒に来て力を貸してくれないか?」
「しらないのに、しってるひとみたい...。おねえさん、だれなの?」
「店長らしいぞ。アルバイト志望なら、そのうち歓迎しよう。」
ネモの不安は自信が持てないこと。
変わっていく状況の中で自分が大切なモノを守れるのか、側にいていいのかと悩んでしまう癖がある。
その悩む姿を実際に見ていたみち子は年長としてその在り方を肯定し、認めてみせた。
幼いネモには少々難しい内容ではあったが、その心は伝わった。
戸惑いながらも差し出されたみち子の手を取り、ゆっくり日向へと出てくる。
「おねえちゃん...。」
その光景を静かに見守っていた小夜がポツリと呟く。
最も身近で、最も遠いとすら思う存在。
自分とは違いみんなに慕われる姉に似ていると、不思議な感覚を持つのだった。
「またまちゃん、よしよーし。」
「うわぁぁん!こいつらがうたへただっていいがかりしてくるぅ~!」
「うたはへただよねぇ。」
「なぐさめなさいよっ!?」
ネモを伴って再度真珠攻略に挑む。
が、拍子抜けする程一瞬でケリが着いた。
ネモが頭を撫でただけですっかりいつも通り。
悩みはどうしたと言いたくなるが、答えは単純。
スーパーアイドルに悩んでいる暇などない。
アホ、もといポジティブだった。
強いて言えば音痴なことだろうが、悩んだところでどうしようもない(無慈悲)。
この時ばかりは残りも全員バカだったらいいなぁと願う、みち子たちなのであった。
―――――――――――――――――――――――
「こりすちゃん、あれを見て欲しいのだわ。」
「!」
このペースでは捜し切れないと、二手に別れてヒロインたちを捜すことにしたみち子たち。
はるかの言葉に心当たりがあるという小夜にみち子が付いて行き、残りはこりすのパーティーとなった。
とはいえ、既に2時間程歩き回っているわけで、こりすも正直疲れている。
小休止をしようと先程とは別の公園に立ち寄った時だった。
「んだてめー。このぶらんこはあたしのおきにだってしらんのかこらー。」
「しるわけないやろあほ。ぶらんこになまえでもかいてあるんか、あほ。」
ロボ子が指差す先にいたのは、ブランコという非常に可愛らしいモノを取り合う幼女二人。
幼女にしてはパリピなカラーリングの髪が特徴的なその後ろ姿。
おねえちゃんランキング下位独占のあの二人に相違ない。
「あほいうなばか!」
「ばかいうなあほ!」
「キウィちゃんと薫子ちゃんなのだわ。」
阿良河キウィに天川薫子。
バラバラに散ったはずなのに何故よりによってこの組み合わせで合流しているのか。
やっぱり運命的な何かで繋がっているんじゃないのか。
こりすはすっかり癖になってしまった呆れ顔を浮かべつつ、口喧嘩のレベルまで下がった二人に近づく。
偶然見つけられたのは幸運。
後は上手いこと誘導出来ればそれで万事解決なのだ。
「二人とも、ケンカはいけないのだわ。」
「そーよ!ぶらんこなんかよりまたまのうたをききなさい!」
「きくくらいならすなばにうまってたほうがしあわせだねー。」
「あーん?がいやはだまってろばぁろー。」
「せや。これはうちのけんかなんや!」
ミニたちとロボ子が仲裁に入るが、チンピラ幼女たちは聞き入れる様子がない。
違う意味で泣き出した真珠は無視し、こりすはロボ子を手で制する。
「こりすちゃん?」
「...グッ。」
「こりすさんモードなのだわ...!」
説明しよう!
"こりすさんモード"とは、いつもはぷりちーでびゅーてぃふぉーなこりすちゃんが漢気を発揮し、様々な事態を瞬く間に解決してしまうという非常にかっちょいいモードなのだ!
「ビッ!ババッ!ブンブン!ビシッ!」
今にも掴みかかりそうな二人の間に立ち、毅然とした身振り手振りで注意するこりす。
最後にポーズも決め、心地よい疲労感と達成感がこりすに芽生える。
二人もきっと感動し、ついには"こりすお姉ちゃん"と呼び慕うようになるだろう。
そうに違いない。
「はぁ?なんかいいたいならしゃべれよ、いみわかんねーし。」
「なにひとりでおどってんねん。じゃますんならあんたからしばくで?」
「......ピギッ」
「あ。やっべーのだわ。」
まあ、このチンピラ二人がそんな殊勝な態度するわけがないんですけどね!
数分後、街に響き渡る哀れな幼女の叫び声。
その光景の一部始終を見守っていたロボ子は後にこう語る。
「あれは最早アリスではなく、ハートの女王だったのだわ。」
地雷を踏み抜いたキウィと薫子に、ついでに見ていただけのたまネモまで。
幼女化が解けた後も、しばらくはこりすに絶対服従してしまったんだとか。
―――――――――――――――――――――――
「ここ、です。」
「...なるほどな。」
こりすが逆鱗という名のお人形遊びに興じている一方で、みち子とミニ小夜は水神神社にやって来ていた。
目的は勿論、暴走機関車と化したはるかの確保である。
「はるか、ごしんぼくにのぼってたことがあって...」
「それでお前が嫌がるところ、か。」
神社にそびえ立つ霊験あらたかなご神木。
確かにこれに登るのは罰当たりだし、神社の娘なら嫌がって当然だろう。
「この高さを登るのか...?」
木登りとしては本当に猿か何かなんじゃないかと思うレベルの難易度。
一度登っている以上可能なのだろうが、正直疑わしい。
半信半疑でとりあえずご神木を観察していると。
「あ!さよちゃんやっときたね!」
快活な声と共に顔を出したのは、本当にミニはるかであった。
ただし、すぐ横の茂みから。
「登っていないではないか!茂みから飛び出すとかポ○モンか貴様!」
「おばさんだぁれ?」
「私はまだ20歳だクソガキ...!」
マイペース過ぎるはるかに気にしている老け顔をいじられ大人の余裕を失うみち子。
ミニ小夜はこのままだとまた逃げられるかもしれないと不安になり、はるかの手を掴んで離すまいとする。
「はるか、かくれんぼはもうやめにしよ?」
「かくれんぼはもうしてないよ!いまは"おとしもの"さがしてるの!」
「落とし物だと?」
予想外の言葉に首を傾げていると、ミニはるかは笑顔のまま茂みの向こう側を指差す。
手を引かれるままにその方向に進んでみる。
「なぃ...ど、どうしよぅ...」
「柊か...!?」
「ひぅっ!?だ、だれ...っ?」
地面をよちよちとハイハイ、ではなく。
何かを必死に探している小さな背中があった。
癖のある黒髪に、不安そうにか細い声、そして今にも泣き出しそうな表情。
幼い以外は見間違いようのない、我等が主人公こと柊うてながそこにはいた。
「これで何とか揃ったな...。」
とりあえず全員無事だったことに安堵するみち子。
しかし、ミニうてなの様子は明らかに動揺していて、無事だと言うには問題があるようだった。
「どうしたの...?」
「ぇ、あ...///」
「あのね!このこはうてなちゃん!なんかねぇ、だいじな
「ハート?...まさかトランスアイテムか!?」
「とらんす...?」
ハートと聞いてまず思いつくのがトランスアイテムだった。
うてながトランスアイテムを落としたのだとすれば、近くに彼女がいたことに気付けなかったのにも納得がいく。
「よく、わからないんだけど...あれ、だいじで...でも、なくしちゃって...わたしっ...」
「朧気ながら記憶があるのか...?」
頭では分からなくても、心が覚えているというやつだろう。
大切なものを落としてしまい、後悔と罪悪感で涙を流すうてな。
「...だいじょうぶだよ。」
「ぇ...?」
「ぜったいにみつけてあげる。だから、なかないで?」
彼女もまた、心が覚えていた。
ミニ小夜はうてなの頭を優しく撫でると、近くの茂みを真剣に見つめて掻き分けていく。
ミニはるかもまた、そんな小夜に続くように辺りを捜索し始めた。
「ど、どうして...?」
「忘れているだけで、すぐに思い出すはずだ。それより、聞きたいことがある。」
「な、なぁに...?」
「うてなはずっとここでトランスアイテムを探していたのか?」
「う、うん...」
「気付いた時には一人だったはずだが、その気付いた位置から大きく移動...歩いたり、走ったりして離れたりしたか?」
「ううん...して、ないです...。」
みち子はそれだけ聞くと地面ではなく上の方、
「みちこさん?」
「事情説明は省くが、恐らくうてながここに来た時は空から落ちる形だったはず。であれば、どこかの木に引っ掛かっている可能性が高い。それにだ。」
みち子は粗方周囲の木を窺った後、再びあのご神木までやって来る。
木は高く流石に上を覗くことは出来ない。
だが、あったのだ。
ご神木のすぐ近くの地面。
そこがちょうど
「うてなが落ちて来たのはここで間違いない。なら、このご神木が当たりと考えるのが妥当だ。」
「!...。」
そうと分かれば後は確かめてみるだけ。
すぐにみち子は変身して確認しようとするが。
「水神?」
「わたし、いきます!」
なんと、よりによって神社の娘である小夜がご神木に足をかけ、登り始めてしまった。
「小夜、流石に危険だ!私が行くからお前は」
「わたしがやります!やりたい、から!」
「お前...。」
制止するみち子だったが、小夜が決して譲る気がないのはすぐに分かった。
冷や汗を浮かべながらも、みち子は構えていた自らのトランスアイテムをそっとポケットに戻す。
ゆっくりと着実に登っていく小夜。
その後ろ姿が、みち子には何故か無性に誇らしく思えて。
結局小夜が戻って来るまで、静かに見守ることとなったのだった。
「はい、これ。」
「ぁ...!ほんとに...あり、がとうっ」
「どういたしまして。」
予想通り、うてなのトランスアイテムはご神木が預かってくれていた。
苦労して漸く見つけた落とし物を、小夜はうてなに微笑みながら手渡す。
「ごめんね...わたし、だめで...めいわく、ばっかりで...」
「そんなことないよ。うてなちゃんは、すごいよ。」
「すごい...?」
「はるかがくるまで、ずっとひとりでさがしてたんだよね。あきらめないで、たいせつだからって。それはね、すごくつよいってわたしはおもうよ。」
「っ...///」
小さくなっても何も変わってなどいなかった。
うてなの悩みは恐らく"罪悪感"。
それを優しく取り去り、包んで癒す愛を、小夜は変わらずに持っていた。
二回目に負けた時もこんなやり取りをしていたなと、苦い思い出を苦笑いでみち子は回顧していた。
ゆっくり小夜に近づくと、木登りで付いた汚れを払ってやり、ポンっと不慣れに頭を撫でる。
「?」
「よくやったな。立派だったぞ。」
「ぁ...うん...///」
らしくないことをしていると自覚しつつ、でもそうするべきだと思った。
みち子はそんな自分の気まぐれに満足した様子で、これまたらしくない笑顔を浮かべた。
「これで全員確保だ!杜乃たちと合流して、私はさっさと帰らせてもら」
「さよちゃんっ!?」
「は...?」
高らかにミッションクリアの宣言を始めた時だった。
ミニ小夜が倒れた。
まるで糸の切れた人形のように。
―――――――――――――――――――――――
「...よし。大分下がってきたな。」
額の温度を確め、氷水で冷やしたタオルを乗せ変える。
何てことはない、ただの体調不良だ。
「無駄に肝を冷やしたぞ、まったく。」
水神が倒れた瞬間、思わず妹が死んでいる姿を思い出してしまった。
心配性が過ぎるなと、妙に過保護になってしまった自分に苦笑いする。
苦しそうな吐息に発熱。
幼くなっている今は実家や病院に連れて行くわけにいかず、変身までして蘭朶の家に駆け込むことになった。
幸い、熱以外の症状はなく今はすやすやと心地よさそうな寝息を立てている。
「クイクイ。」
「ドールハウスは必要ない。このバカ、暇だと言う割に疲労を溜め込んでいたのだろう。今はそのまま寝かせてやれ。」
「コクリ。」
子どもになったことで体質が弱くなったのかもしれない。
なかなかの激戦だったらしいからな。
柊の方は平気そうにしているが...。
ちなみにガキ共と杜乃たちも今は家にいる。
元に戻す方法が見つかるまでは仕方ない。
「ビッ。」
「手慣れているだと?...まあ、経験だ。身内に、体調をよく崩す者がいてな。」
小さい頃から、あの子はよく調子を悪くして寝込んでいた。
小学生くらいの時は両親の代わりに私が看病したりもした。
あの頃はまだ、姉妹らしく会話も多かった気がする。
遊びに行かず、面倒を見る私にあの子はいつも謝っていたっけ。
だから私はいつも謝ることなんてないと断っていた。
何故なら。
「ごめんね...おねぇちゃん...Zz」
「!......平気だ。お前は私の妹だからな。」
今日だけ、姉代わりになってやろう。
もっと優しく接してあげられたはずの、あの子の分まで。
あの子と同じ境遇から掴んだ奇跡。
私が決して無駄にはさせないから。
「ほぇー。うてなちゃあん、このこかぁいいねぇ~。」
「う、うん...///」
「こもりうたをごしょもうね!まかせなさいよ!」
「おきなくなっちゃうからダメだよ~。」
「おなかすいたねぇ~!」
「うちたこやきたべたい。」
「みんな、小夜ちゃんが起きちゃうのだわ。」
いつの間にかワラワラと集まって来ていたミニミニヒロインズ。
揃いも揃って自己中だが、小さければいくらか可愛げもある。
「...よし、夕食を作るとするか。」
「やたぁー!」
「アイドルにふさわしいりょーりにしなさいよね!」
「たこやきがいいなぁ~。」
「たこぬき!たこぬいておくれやす!」
「すてーき!すし!」
「ぜ、ゼリーあるかな...。」
仕方なく、ガキ共の夕食を用意することにした。
めちゃくちゃなリクエストは受け入れがたいが、喜んでくれる相手がいるというのは気分がいい。
何か忘れている気がするが、気にしなくていいことなのだろう。
ガチャリ。
「ん?」
「み、みっちゃん...?」
「あらあら~!」
ドアがゆっくりと開く音。
次に聞こえて来たのは、同居人の震え声。
私は考えていなかったのだ。
20歳とはいえ、成人である私が。
杜乃含め年少の幼女に囲まれ、甘えられてさえいる。
この状況を他人が見れば、一体どんな感想を抱くのか。
私をよく知る二人が見れば、どんな反応をするかということを。
「みち子様ってばそっちでしたのね!」
「ち、違うっ!?これには事情が!?」
「こんなに、たくさん...!誰との子...!?あの、あの女の子どもなんでしょ...!!」
いい笑顔で最低の勘違いをする百花。
どこからか取り出した包丁を向け鬼の形相で凄まじい勘違いをする蘭朶。
朝から晩まで貧乏くじ。
「助けて、ホリィ...。」
「みちこ、あうとぉー!」
結局、幼女化はスイッチを杜乃がもう一度押しただけで解け。
それでもしばらく百花に弄られ続け、蘭朶に思い出し泣きされる日々を送ることになるのだった。
―――――――――――――――――――――――
【うてなと真珠】
「ちょ、ちょっと大胆じゃないかな...?///」
「これくらいでいいのよ服なんて。素材がいいんだから自信持ちなさい!」
「素材、いいかなぁ...?」
「小夜とキウィがベタ惚れしてるってだけじゃ不満?」
「...納得、するしかない、です///」
「うむ。素直でよろしい!」
―――――――――――――――――――――――
【キウィとみち子】
「...うん、決めた。これにするか。」
「お~ん?こっちのドクロはらんらんで~。そっちのキラキラネックレスは~?」
「...も、百花にだ。」
「みち子、ダウトぉ~!」
―――――――――――――――――――――――
【はるかとネモ】
「すごーい!ホントにネモちゃんはクレーンゲーム上手だね!」
「下手なくせにやたら高望みするアホが近くにいるからな。取ってやんないとうるさいんだよ。」
「真珠ちゃんは幸せ者だねぇ~。あ、次はあれお願いできるかな?」
「OK。特撮系ってことはあきほちゃんのか。」
「うん!あたしこういうの得意じゃないから、ネモちゃんがいてホントに助かっちゃった!ありがとう!」
「気にすんなよ。全部妹たちの為なんだし。アイツらにははるかの善良さを少しは見習って欲しいぜ、マジで。」
―――――――――――――――――――――――
【薫子と蘭朶】
「これ...オススメ...。」
「お、なかなかええね。こーいうんはうてなもはるかも趣味やないから、蘭朶はんがおって助かるわ。」
「あたしも、趣味が合う人は...貴重...。」
「これからも仲良うしておくれやす。」
「...うん。アクセショップ開けたら、割引してあげる。」
「それはお得やね!贔屓にさせてもらうわ。」
―――――――――――――――――――――――
【こりすと百花】
「...」ペコリ
「あらあら!あなた様は町長のご息女ではございませんの!どうぞ上がってくださいまし!すぐに温かいお紅茶を用意致しますわ!」
ただの変態だと思っていたこりすだったが、百花の意外な面倒見の良さに感心したようだ。
腐っても姉は姉ということだろう。
―――――――――――――――――――――――
【I'll be there for you】
ついにこの日がやって来た。
真っ白なドレスとベールに飾られた自身の姿を見つめ、後ろ手に纏められた紺碧の髪に触れてみる。
かつて少女だった面影はもう僅かに感じる程で、今やすっかり大人の女性そのものだ。
もう魔法少女は厳しいかな、と苦笑いをひとつ。
そして、彼女は促されるままに部屋を出ていく。
ゆっくりと進む道中、様々な思い出が浮かんでは消えていく。
始まりは赤紫の少女から。
自分が夢と見紛う程の幸せに生きていると気付いたあの日。
そこから少しして、真っ黒な悪魔が自分を迎えに来た。
大好きなあの子に近付こうとして、ものの見事に敵対関係になってしまって。
それでも楽しい日常に、どんどん友だちも増えていって。
大切な人との離別があったけど、だからこそ私は私の人生を生きている実感を持つことが出来た。
知らない世界に、どうすればいいか分からない問題の連続。
それでも、みんながいてくれたから。
みんなが一緒で、三人が一緒だったから。
私は今日、この日を迎えることが出来た。
私の人生は、まさに魔法だ。
決して解けることのない魔法。
たとえもうヒロインじゃなかったとしても。
この魔法は、愛は消えることはない。
彼女は胸一杯の幸せを抱き、皆が待つ晴れ舞台に辿り着く。
扉から現れた彼女へ祝福する声と花びら、そしてライスシャワーが降り注ぐ。
ライスシャワーを投げる二人の少女。
式に合わせてトレードマークの色を封じられてはいるが、青や赤もなかなか似合っていると心の中で感想が浮かぶ。
黒髪の少女のウィンクにさりげなく微笑み、彼女は鮮やかに飾られた道を更に進んでいく。
「おめでとぉー!!」
「洋風もなかなか似合ってはるなぁ。貴重な休み返上して来た甲斐があったわ。」
「式場もママさんたちの言う通り素敵でしょ!オススメしてよかったぁ!」
「これで明日も休みやったらなぁ...。」
「元気出して!またたこ焼き作ってあげるから!」
「ええ加減しいたけ入りはやめへん...?うちはただたこを抜いて欲しいだけなんよ...。」
最初に見えたのは彼女にとって親友と呼ぶに相応しい二人。
ツインテールからサイドテールに変わったくらいしかいい意味で大きな変化のない、桜花のような女性。
相変わらずな100%の笑顔は見ているこちらも自然と笑顔にしてくれる。
隣に立つ金髪を肩口程で切り揃えた女性は幾分か頼もしさが増した気がするが、はんなりさには磨きがかかり愛らしさと大人っぽさがいい味を出している。
仲良しで何よりだが、二人共仕事が忙しいらしいので身体を壊さないか心配だ。
彼女の保護者目線も相変わらずである。
「綺麗なのだわ!素敵なのだわ!」
「コクリ。」
次に見えたのは、すっかり身長が逆転してしまった妹同然に大切な二人。
あの無口な少女も、もう大学生。
色気すら感じるミステリアスに、お姉ちゃんズは悪い虫が付かないか非常に心配している。
その辺りはいつまでも天真爛漫な相棒が守ってくれると信じているようだが。
「お、来た来た。しっかしドレスも白無垢もとか。そんな無茶苦茶が通るなら、一応体裁整えたアタシがバカみてぇだよなァ。」
「別にいいじゃない。似合ってたわよ?タキシード。」
「いや、仕事着と変わんねぇしさ。」
「ぁによ、着たかったのドレス?その分このスーパーアイドルのさいっこーなドレス姿が印象マシマシになって幸せでしょーが。感謝しなさい!」
「へいへい。ごちそーさま。」
その奥に発見したのは、人を出汁にまたもやイチャつく筋金入りのバカップルだ。
しかし二人の薬指に輝く銀色を見て、最早バカップルではなくなっていたのを思い出す。
執事然とした雰囲気のタキシードは好評だったし、スーパーアイドルは本当にスーパーアイドルだったので文句は言えない。
末長く爆発しなさいと、思わず二度目の祝福を呟いてしまう程だ。
「っ...立派に"ぃ!な"った"な"ぁぁ~...!!」
「本日何度目の姉バカですの?キャラ崩壊とかそういうレベルじゃねーですわよ。」
「おまえなぁ!!妹があんなに立派な姿を見せてくれたのに感極まらない姉がどこにいる!?貴様は耐えられると言うのかぁ?!」
「嫌ですのわたくしを一人にしないでぇ後生ですのぉぉ!!」
「お姉様、静かにしてくださいまし。」
「えへ...あたしはドレス派...。」
「私、教会はちょっとぉ~...悲しいですぅ。」
「じゃあ、欠席でいいよね。」
「祈るだけならお一人でもできますねぇ~。」
「は?」
「なんでしょうかぁ~?」
変わったと言えば、あらゆる面で変わってしまった人物がひとり。
あんなに姉バカになってしまうとは彼女の両親さえも想像していなかっただろう。
そこには彼女としては感謝してもし切れない経緯があるのだが、少しは自分の幸せも考えて欲しいというのが本音。
あのトリオはこちらとは正反対というか、永遠に修羅場を続けてしまいそうだ。
ついでにお嬢様姉妹はいい加減相手を見つけて欲しい。
蓋を開けてみれば、みんな揃いも揃って心配な人ばかり。
向かい側にいる海外から遥々来日してくれた三姉妹も忙しくて死にそうらしいし、これからも長々と見守る必要があるようだ。
そして。
仲間たちに見送られ、彼女は漸く辿り着く。
何よりも大切で、愛する二人。
ウェディングドレスを身に付けた、癖のある美しく長い黒髪の女性。
希望通りの白無垢を押し通し、場にそぐわない違和感をその魅力で塗り潰す翡翠髪の女性。
二人共だが、少女の頃の小悪魔感を妖艶に昇華させ、それでいて優しく微笑む姿はまるで天使のよう。
その魅力は今も昔も彼女の胸を高鳴らせる。
「「小夜(さよ)ちゃん!」」
差し伸べられた手を握り、彼女は舞台の中心へ。
三人は今日、永久の愛を誓い合う。
あらゆる困難を乗り越え、傷つき。
それがまたこの先に待っていたとしても。
三人一緒なら、絶対に負けない。
紡いだ絆と愛が魔法になると知り、少女たちは大人になったのだから。
だから、きっと大丈夫。
心からの笑顔を浮かべて、三人の唇が一つに重なる。
万雷の祝福と幸福に包まれ。
かつてヒロインだった少女たちは、物語のゴールに行き着くのだった。
―――――――――――――――――――――――
◼️□next episode◼️□
「終わりね、トレスマジア。」
1話分には満たない思い付きをまとめてみました。
次回は8/24(日)0:00投稿予定です。
※8/23追記
モチベーション低下が著しく投稿遅れます。
すみません。
※9/7追記
コロナ、なう...ガクリ