魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

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だれる要素は省いているので、トレスマジアとの交戦回数が少なく見えるアズールたち。
何だかんだ1ヶ月近くは経過している為、うてなちゃんは魔法少女として知名度があがって来ています。


第5話『不思議の国のネロアリス』

「あ?今なんつった、貧乳ばか。」

「耳まで団子詰めてはりますのん?目障りやさかい、離れろ言うとるんやけど。」

 

平和なはずの昼休み。

生徒たちが楽しく昼食を楽しむはずの休憩時間にも関わらず、教室は殺伐とした空気に支配されていた。

 

「アタシがさよちゃんに甘えるのの何が悪いってんだよこのばか。」

「それがアカン言うてんねん。場所弁えろや。小夜はんも、あんたが常にひっついとるから食が進んどらんやろ。」

「か、薫子。わたしは大丈夫よ?だから...」

「そうやって甘やかすからつけ上がるんや。はっきり言わんといつまでもこのままやで?この団子脳ミソ。」

「うっせー貧乳ばか!さよちゃんが良いっていってんだろこのばーか!ばーか!」

 

先週転入してきた、レオパルトこと阿良河キウィちゃん。

何だか上手いことわたしに懐いてしまい、原作通り?学校生活を共に送ることになったのだが。

 

何の因果か魔法少女と悪の組織が同じクラスになってしまうこのまほあこ世界。

原作ならトレスマジアはトレスマジアで。

エノルミータはエノルミータで、自然に食事をすることになる。

なので、まほあこ最大の犬猿コンビであるキウィと薫子も、本来はたまに口喧嘩に発展する程度。

クラス全体をお通夜ムードにすることはなかったはずだ。

 

だがしかし。

ここはわたし、"水神小夜"がエノルミータに入った歪んだ世界。

わたしが元から魔法少女側と仲がよかったせいで、うてなとキウィを加え総勢5名での昼休みが恒例となってしまった。

そうなると見ての通り。

前世で因縁でもあったのだろうか?

どうしてもお互いが気に入らないようで、いつもいつも毎日毎日、二人は殺意を込めた口喧嘩を初めてしまうのだった。

 

ちなみに。

口喧嘩と言いつつ薫子とキウィは悪口レパートリーの差が激しく、大体キウィが『バカ』としか言えなくなって終わる。

薫子の性格からして格下は無視するはずなのだが、不思議とキウィには際限なく罵詈雑言を浴びせている。

ケンカする程仲が良いとは言うが、だとしたらもう運命の人なのではないかと思う。

 

「もう!薫子ちゃんもキウィちゃんもやめなよ!

ごはんはみんなで笑顔で食べるんだよ!

じゃないと顔がキーッとなってお腹ムカーッてなっておいしくないんだから。

ほら、なめ茸あげるから機嫌直して!」

「いらんわ!サンドイッチに何でなめ茸やねん!」

「うぇーん!さよちゃんうぇーん!貧乳ばかがうるさ~い!」

「うっさいのはあんたや!!」

「あははー、にぎやかだなー。」

 

ああもう。

キウィは油注ぐのやめないしはるかは天然飛ばすし薫子はキレながらちゃんと突っ込むしうてなは達観し始めるし。

どうしてこうなった。

 

わたしのせいだったわ。

 

「見て...あの子たちまた水神さんの正妻の座を争ってるわ...。」

「小夜さまはみんなのお姉さまなのに...。」

「清楚なはるかちゃんを返して...。」

 

なんかよくない噂を立てられてる気がするし。

みんなのわたしに対するイメージってそんななの...?

 

「バカ!」

「団子頭!」

「ロマネスコ!」

「えと、ミラクルみみる。」

 

ついに単語しか言わなくなったみんなを眺めつつ、平和だったあの頃を思い出し涙するわたしなのであった。

......ロマネスコってなに?

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ヴェナったら、わざわざアジトまで呼び出すなんて。」

「はあ~めんどっちいなぁ~。」

 

色々あって放課後。

LIMEにヴェナから『今すぐ来てほしい』と連絡があり、こうしてキウィとナハトベースまでやってきたわけだが。

この流れ、覚えがあるぞ...。

 

「ヴェナ~?来たわよ~。」

「さよちゃん、もう帰ってホテルいこ?」

「成人したらね。」

「成人したらいいってことぉ...っ!?」

 

姿を現さないヴェナに痺れを切らし帰ろうとしたその時。

 

「小夜、キウィ。二人ともよく来てくれたね。」

「...。」

 

予想通りというか。予想外に美少女な、ヴェナを抱き締めた小学生くらいの女の子が現れた。

やっぱり、"この回"だったか。

 

「どこから拐ってきたの。事と次第によっては警察に突き出すわよ?」

「人聞きが悪いね。彼女の名前は杜乃こりす。ボクらの新しい仲間さ。」

 

勿論そんなことは知っている。

杜乃こりすこと、『ネロアリス』。

エノルミータの三人目の仲間。

おもちゃを操り、ドールハウスに誘い込んだ相手をも思うがままにしてしまう、ある意味一番エグい能力の持ち主だ。

 

アズールが他二人に乳を吸われるシーンは衝撃的だった。

...何だか胸がそわそわする。

 

彼女の素性は知っているが、漫画と現実ではロリの印象は大きく異なる。

漫画だと『変態だなぁ(笑)』で済むところだが、現実で見ると『お前マジか...。』と色々な意味で心がキュッとする。

この子と戦うことになるトレスマジアが不憫に思えるほど、こりすは幼く、そして愛らしかった。

気持ち的には仔犬を殴れと言われているのに近い。

 

「説明しなさい。」

「もちろんさ。」

 

そうして語られる、例の遭遇シーン。

そんな

 

『お姉さん絵に興味ない?』

 

みたいな悪の組織の勧誘はどうなんだ。

どうして弁解できると思ったのか。

コレガワカラナイ。

 

「悪の組織って怪しいバイトかなにかなのかしら...。

キウィ、あなたも何か言って」

「魔法でさ、4年くらい時飛ばせばいいんじゃね?

今のキウィちゃんならいける気がする。

爆弾でばーん。さよちゃんいやーん。みたいな。」

 

真顔で何を言ってるんだこの子。

爆弾は時飛ばしじゃなくて時戻しの方だし。さっきのはやはり失言だったか。

キウィの頬を往復で叩いてから、こりすに向き直る。

離れようとするヴェナを抱き締めて満足気なこりす。

可愛い。

 

「け~っ。あはとふはふぁいははいはほ~。(訳:あざとく可愛さアピかよ)」

「...。」

「おあおあ。ぱひへふひはひさふひほあ~。(訳:おらおら。パイセンにあいさつしろや)」

「...。」

「なにほくそ笑んでんだおめー!」

「...。」

「さよちゃんこの子絡みづら~い...。」

「今のは誰だって笑うわよ。」

 

ダメージ回復までが急過ぎて昔のゲームみたいだった。

つい叩き過ぎてしまったわたしが悪い。

 

「今日はこれからこりすの力をお披露目しようと思うんだ。」

「トレスマジアと戦わせる気?」

「いけるよね、こりす。」

「コクッ...。」

 

迷いなく頷いて返すこりす。

まあ、原作で見ている以上大丈夫なのは分かるが。

それはそうと、子どもを戦わせるということに、なんだか心がそわそわするのは人としての本能か。

いや、中学生は十分子どもなんだけど。

 

「はい、トラスマジア。」

 

雑に変身アイテムをあてがわれ、ネロアリスの姿へ変貌を遂げる。

なるほど、まさにメルヘン。

うてなちゃんが『アリスモチーフは女の子の憧れ』と力説していたのにも頷ける。

 

「おお~人形みた~い。ま、アタシの方がカワイイけど~。」

「そうね、キウィもとてもカワイイと思うわ。」

「とぅんく...♥️」

 

やはり対決は避けられないか。

今からうてなちゃんの乳首が心配だ...。

ポジション的に。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「エノルミータ、いないね...。」

「気配はこの辺りなんだけどね~。」

 

放課後、ケンカで不機嫌な薫子さんを元気付けようと、三人でたこ焼き(たこ抜き)を食べに行こうとしていたわたしたち。

突然エノルミータの反応を感じ、街外れまでその気配を追ってきたのだった。

ちなみに、薫子さんの機嫌は更に悪くなっている。

こわい。

 

「む。」

「あれ?」

 

敵の姿が見当たらず、途方に暮れていたわたしたちが見つけたのは、まるで"ぬいぐるみ"のような生き物だった。

むしろ、動くぬいぐるみ...?

ひどくボロボロで、首が裂けて中から綿が飛び出してしまっている。

 

「なんやこいつ。あからさまに怪しいな。」

「魔物...かなぁ...?」

 

怪しみながら観察していると、ぬいぐるみは突然背を向けて走り出す。

まるで、追いかけて来て欲しいと言うように。

 

『罠だっ!?これは罠だっ!』

 

数多の魔法少女アニメを見てきたわたしには分かる!

これは可愛い見た目で純粋な魔法少女を嵌める悪の組織の罠だぁ!

でも大丈夫。

こんな分かりやすい罠に引っ掛かるような二人じゃ

 

「待てーっ!!」

「待ちぃ!!怪しい言うたやろ今ぁ!!」

 

...ダメみたいですね(諦め)。

でもそんなマゼンタがわたしは好き。

一生推すからねっ☆

 

「じゃなくてっ!!マゼンタちゃんサルファちゃん待ってぇー!?」

 

ぬいぐるみは器用に路地を曲がりに曲がり、最終的に何かの入り口に入っていく。

どう見たってネズミ取りの罠だよね...。

 

「こらーっ!!逃げるなぁーっ!!」

 

まあ、わたしたちのマゼンタは迷いなく扉に飛び込んでいくんだけど...。

 

バタンッ!

 

待ってました!とばかりに独りでに閉まる扉。

 

「...はれぇ?」

「何で分からへんのや罠やって...。」

 

試しに扉を引っ張ってみるけど、やっぱり鍵をかけられたみたいに開かない。

 

「だ、ダメ...開かない...。」

「退いとき。ぶち壊したるわ。」

 

サルファが扉を破壊して外に出ようとするが、そのタイミングで視界が先ほどより暗くなったことを感じた。

これ、影...?

 

『ンナアアァァァァァ!!!』

「なにぃいいいいっ!?」

 

先ほどのぬいぐるみが、何倍にも大きくなったもの。

その最早化け物と言って差し支えないものが、咆哮をあげながらわたしたちを追い掛けてくる。

 

「なにアレなにアレ!?さっきのぬいぐるみぃ!?」

「知らへんわそんなん!!」

「ぶぇ!!...いたた...?」

 

動揺していたマゼンタが目の前の何かにぶつかってしまう。

またしても影に包まれていることに気付いたわたしたち。

見上げるとそこには、巨大なおもちゃの大群が立ち塞がっていた。

みんなどこかボロボロで、まるで使い古しみたいな...。

 

「ぎゃーーーっ!!」

「物なら、わたしの鞭で...!」

 

相手が物なら仲間の動物にできるはず。

そう思って鞭を振るうけど、おもちゃたちに当たりはするものの、何も変化がない。

 

「そんな...っ!?」

「なんや知らんけど、あれを操っとる奴がいる!せやからマリーノの鞭じゃ言うこと聞かせられんのや!」

「いやぁーーーっ!!」

 

逃げるしかないわたしたちは、恐らく敵の思惑通りに奥へ奥へと進んでしまう。

おもちゃたちの目を眩ませ、とりあえず落ち着ける場所を見つけたんだけど。

 

「ハァ...ハァ...っ。わたし、最近こんなのばっかりな気が...。ど、どうしよう、マゼンタちゃん。」

「分かんないよぅ!...分かんない、けど...」

「マゼンタちゃん...?」

「あーかったる。マジあり得へんわ。魔法少女なんて何がおもろいねん。」

 

マゼンタの様子がおかしい気がして、俯いていた顔を上げる途中。

左隣にいるはずのサルファから妙な発言が飛び出す。

流石に機嫌の限界だったのかと振り返ってみると。

 

「ねーちゃんむっつりそうな顔しとるなぁ。どや?ウチと気持ちいいことせぇへん?」

「...。」

 

焼けた小麦色の肌にバッチリ決めたまつげとメイク。制服を派手に着崩し、わざと下着を見せているような服装。

気だるそうにしながらも、上目遣いで存分に雌をアピールしてくる表情。

どこからどう見ても、いわゆる『黒ギャルビッチ』にしか見えないサルファがそこにいた。

 

「...ま、まままマゼンタちゃんたいへんっ!!さ、サルファちゃんが!わたしの推しが黒ギャルでえっちなすごい姿にぃっ!?」

「マリーノちゃんって言うんだ?結構可愛いじゃん。あーし好きだよ、あんたみたいな子。」

「え。」

 

気を動転させながら反対側に助けを求めるが、更なる衝撃がわたしを襲う。

確かにマゼンタがいたところに、今度は『白ギャルビッチ』がいた。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ドールハウスでなんでも思いど~り~?」

「玩具を意のままに操る、それが杜乃こりす...いや、ネロアリスの能力さ。」

「よく分かんねーけどヤバそうな能力だな~。」

「とても強力で頼もしいね。このドールハウスの中では全てが彼女のおもちゃなのさ。」

 

確かにえぐい。

私の知ってる流れとは違うが、すごい能力には違いない。

というか、ビッチギャルなんていったいどこで知ったのか。

お姉さんとしてある意味心配だよ...。

だがそれよりも、今は考えるべきことがある。

 

「キウィ、今のうちに変身しておきなさい。」

「え~?アリスが強すぎてもうトレスマジアの負け確じゃ~ん。」

「いいえ。この作戦は失敗よ。なぜなら、これは彼女の逆鱗に触れる行為だもの。」

「かのじょ~?」

 

わたしはルシファアズールに変身し、来る戦闘に備える。

かなり緊張してきた。

だってこれは間違いなく。

彼女にとっての"解釈違い"だから。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「わ、わたしの、清楚なマゼンタが...っ」

「ね、マリーノちゃんはあーしのこと好き...?」

 

何だか包容力がすごいマゼンタ(白ギャル)はわたしの体に抱き着いて、甘えるように問い掛けてくる。

 

「あーしらといいこと、しよ?」

「魔法少女とかあかんわダサい。そないなことより気持ちよくなろうや、なぁ?1回2万でどないや。」

 

あまりにもあんまりな二人の姿に、わたしの中の何かが弾けた。

何が起こっているかは分からない。

ただ、これだけは分かる。

 

奴らは()()()()()()()()()()()()()

 

「許さないぜったいに...ッ!!解釈違いにも程がある...ッ!!!(怒)」

「「へっ!?」」

 

わたしの魔力が爆発的に増大する。

その衝撃でおもちゃたちに居場所がバレるが、そんなことはもうどうでもいい。

 

「いいところに来ましたねぇ...。」

 

突進してきた馬のおもちゃを鞭でしばき上げ、"動物の馬に変える"。

 

「ヒヒーン!」

「な、なに!?」

 

馬はわたしの命じるままにマゼンタとサルファをその『尖った』鞍に乗せる。

 

「ひぐっ!?///」

 

続いて側にいた可愛い意匠のクモを模したぬいぐるみ。

同じように本物のクモに変え、糸で二人を縛らせた。

 

「く、くるしぃ...///」

「お二人とも...。ご自分が魔法少女であることをお忘れのようですね...。」

 

鞭を手に軽く当てながら、身動きが取れないビッチ共に近づく。

 

「ま、マリーノちゃんってば...激しいのが好きなの...?///」

「ヘラヘラするんじゃありません。」

 

バシンッ!!

 

「いぎぃっ...!?///」

まだそのビッチな姿勢を崩さないマゼンタに、激しく鞭をぶつける。

 

「生意気な雌豚ですね。誰が喋っていいと言いましたか?」

「な、なんやねん!ウチらはただあんたの為に!」

「正義のヒロイン、魔法少女。」

 

バチンッ!!

 

「あがっ!?///」

「トレスマジア。全ての女の子の憧れ。そのあなたたちが...!」

 

何度も、何度も何度も何度も。許せない気持ちのまま鞭をぶつける。

 

「こんな淫猥に、ましてや悪の思い通りに媚びへつらう?」

「待っ!?や、やめ...っ」

 

バシッ!バシッ!

 

「いけませんいけませんいけませんいけません」

「ぁ...ぇ...///」

「ま、マリーノすていっ!?」

「解釈違いにも程がある。」

 

ズビシィッ!!

 

奴らの前に、まずは彼女たちに指導が必要なようですね。

体を痙攣させるしか出来なくなったビッチを、再び魔法少女に矯正する為に。

わたしは何度も、鞭を振り続けた。

 

「ヒロインとしての矜持を持ちなさい。」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「なんだこのクソヤバ女...。」

「...。」

 

うわぁ。

ひどい。これはひどい。

何が酷いって、とっくにマゼンタもサルファも元に戻ってるのが酷い。

 

まさにマジヤベーゼ。

じゃなくてマジアベーゼ。

流石のキウィもドン引きである。

臨戦体勢を取っていたが、あのうてなちゃんは絶対に相手をしてはいけない気がする。

わたしの中の本能と書いてアズールがそう囁いている。

よし、逃げよう。

幸いこりすは小さいから、変身が解けて飛べずとも、わたしがおぶっていけばすぐ逃げられるはずだ。

ん...?変身?

 

「お眠の時間みたいだね。」

「変身解けちゃってる!?」

 

ということは...!

 

「...あなたたちですか。"わたしの"魔法少女たちを汚したのは。」

 

ネロアリスの変身が解けたことで、ドールハウスからクソヤバ女が解き放たれる。

 

「どちらかと言うと二人が汚れてるのはあなたのせいだと...。」

「黙 り な さ い 。」

「はぃ(震)」

 

どうしよう。まじこわい...。

こりすの正体がバレないよう抱き締めている為、わたしは戦うことができない。

頼みの綱はレオパルトだが。

 

「おいクソヤバ女!どーでもいいけどおまえの仲間助けなくていいのかー!」

「はい?」

 

レオパルトが指差す方向。

そこにはビクンビクンしながらお尻を押さえる、哀れな雌豚。もとい魔法少女の姿があった。

 

「ひ、ひどぃ...やめへ、って...いっひゃのに...っ///」

「ま、まりーの...おぼえ、ときや...っ///」

「ーーー。」

 

怒髪天状態だったうてなちゃんも、漸く頭が冷えてきたのか。

二人の様子に急激に勢いを失い、全身冷や汗が吹き出ているのが分かる。

 

「......アハー。ヤチャター(泣)」

「で、でかしたわレオパルトっ!」

「ほめられたってことはホテル!?」

 

推しの絶望顔は辛いが、今は身の安全を優先したい。

発想が飛躍する思春期女幹部を引っ張りながら、わたしはこの場を離脱する。

 

「お、覚えておきなさいトレスマジア!これがわたしたちエノルミータの力よー!あっはっはっはー!!」

 

悪役らしい捨て台詞。

その声が必死過ぎて情けないことに気付く余裕は、今のわたしたちにはなかった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「わたし、自首しようかと思うんです...。」

「落ち着きなさい。事情は知らないけどたぶん警察が迷惑よ。」

「まあ元気出せってうてなちゃん。なんかしらんけどキウィちゃんが慰めてやっからさ~。」

 

あのドールハウスの一件があった翌々日の放課後。

 

はるかと薫子は、尻が痛すぎて(もちろん事情を知っているのはわたしとうてなだけだが)二日連続で学校を休んでいた。

 

一応二人から断片的に聞いたが、うてなから謝罪もあり、そもそも油断して操られた自分たちも悪いと言う旨で話は着いているとのこと。

 

しかし、うてなは日に日にお通夜ムードを強めていた。

自業自得気味ではあるが、気の毒に思ったわたしは、放課後うてなを連れて出掛けることにした。

意外なことに、キウィもそれに付き合ってくれると言う。

 

不思議と、キウィはうてなに優しい。

うてな自体が(いつもは)人畜無害なこともあるが...。

ファンとしてはやっぱり、素で相性がいいんじゃないかと勘繰ってしまう。

キウィは年相応に見えるし、うてなは幾分か気楽に話せている気がする。

正体を知らなくても、彼女たちはよき関係になる運命なのだ。

 

「で~さよちゃんさ~。これからどこ行くん~?ホテル~?」

「三人でいいの?あなた...。」

「ホテル大好きだね、キウィちゃん...。」

 

ともすれば凄まじい発言なのだが、言動に慣れているわたしたちは軽く受け流す。

 

「今日はこりすの家に行くわ。」

「こりすん家か~。じゃあえっちぃのはダメだなぁ~。」

「こりす、ちゃん...?」

「親戚の子なの。たまに様子を見に行く約束をしているのよ。」

 

道すがら、うてなにこりすのことを説明していく。

嘘多めで申し訳ないが、そうしないことには話せることが少なすぎた。

 

やがてそのマンションにたどり着き、ドアロックを解除してもらうため、呼び出しボタンを押す。

 

「わたし、初対面でいいのかな...?」

「大丈夫よ。それにうてなには助けて欲しいことがあるの。」

「助けて欲しい、こと?」

 

こりすが困っていることには女子力が必要なのだ。

はるかに頼むか、自分で出来るようにするか。

迷いはしたが、ここはやっぱりうてなが適任だ。

推しの心温まるエピソードは是非回収したい。

 

「...んだよこりすのやつ。全然出ないじゃんかー。」

 

ガチャ。ウィーン。

 

「いやなんか言えしっ!」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「...。」

「(可愛い...。)...こ、こんにちは。わたし、二人のお友達の、柊うてな、です。よろしくね...?」

「コクリ。」

 

玄関でわたしたちを迎えたこりすは、簡単に挨拶するうてなに頷き、部屋に招き入れる。

さっぱりとしたリビングに、書き置きと食事にしてはちょっぴり多めの2000円が置いてあるのが見えた。

最初はあんまり親子仲が上手くいっていないご家庭なのかとハラハラしたっけな...。

シーン自体は少ないが、お母さんがこりすをとても大切に思っていることはよく分かる。

まほあこの数少ないほっこり枠である。

 

「お~。ここがこりすの部屋か~。おもちゃいっぱいじゃ~ん。」

「コクリ。」

 

こりすは少し自慢気に、色々なおもちゃをわたしたちに見せていく。

そのどれもがボロボロだが、それだけ長く大切にしてきたことがこりすの表情から感じ取れた。

少し。ほんの少し。ちょっとだけ。

笑っている。わたしたちにはそう思えたのだ。

 

「な~な~こりす~。この人形スゲーじゃん~。なんていうの?アンティーク?」

「!」

 

ガラスケースに入れられた高級そうな人形。キウィがそれを手に取ると、こりすが目に見えて慌てた様子を見せる。

 

「あ~でもこれ壊れてんじゃん~。」

「!」

「キウィ、勝手に触ってはダメよ。こりすが大切にしてること、あなたにも分かるでしょ?」

「あ~...。ごめんな~こりす。」

「...コクリ」

 

人形を抱いたこりすは安心しつつも、どこか悲しそうな雰囲気だ。

わたしは隣にいるうてなに耳打ちし、うてなもそれに答えて頷いてくれる。

 

「こりすちゃん。よかったら...わたしにその子直させてもらえないかな...?」

「え!うてなちゃんそんなこと出来んの!?」

「小さい頃お母さんに教えてもらって...。こりすちゃんが嫌じゃなければなんだけど...。」

「えーやばー。うてなちゃん家庭的~。でもさよちゃんはあげな~い。」

 

原作通りのやり取りにほっこりする。

一部残念な改変があるが、とりあえずは仕方ない。

後はこりすがどうするかだが...。

 

「......スッ。」

「きっとキレイにしてあげるね...!」

 

心配無用。

うてなの優しさは、確かにこりすに届いたらしい。

こりすがうてなに懐いてくれれば、後々エノルミータに引き込むのに役立つかも?などという打算もあるにはあるが。

変える必要のない、変わらないで欲しい彼女たちの絆を、守りたい。

すでに歪めてしまったからこそ、これ以上は、と。

そう縋る私のエゴがさせた辻褄合わせ。

それを自覚しながらも、笑顔で話す二人の姿を、わたしもまた笑顔で見守るのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ー!」

 

翌日。

キラキラと輝くように見違えた、お気に入りの人形。

うてなが直した人形に興奮が隠せない様子のこりす。

だが、その"恩人"であるうてなの姿が見えないことに気付き、少し表情が曇る。

 

「ごめんなさいね。うてなは風邪を拗らせてしまって。お人形は早く渡してあげたいからって、無理してまでわたしに渡してきたのよ?」

「...。」

 

原作通り、うてなは風邪を引いた。

本来であればネロアリスが恩返しとして治すのだが、万が一正体がバレてしまってはまずい。

第一、友人としてあの状態で出歩かせるわけにはいかない。

人形だけでも届けて欲しいと頼まれ、わたしだけでまたこりす宅に訪問したというわけだ。

 

「...。」

「お見舞いに行きたい?でも、移したら困るってあの子も言っていたし。」

「...。」

「...はぁ。頑固な子ね。分かったわ。でも、ちゃんとわたしの言う通りにするのよ?」

「コクリ。」

 

正直苦しそうなうてなちゃんは見ていられなかったし。

アリスの能力と体調不良が重なれば、上手いやり方もある。

少し危険だが仕方ない。

推しの為、体を張ることにしよう。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「あれ...ここは...。」

 

知らない天井。じゃないか。

ここは病室。確か、小夜さんにこりすちゃんのお人形をお願いして。

その後...どうしたんだっけ。

まあ、いっか。

疲れたし、体調も悪い気がするし。

何か辛いこととか、楽しいことがあったような。

 

「あらおはよう。体調はどうかしら?」

「ぁ。さよ、先生...。まだ、つらくて...。」

 

わたしのベッドに腰掛けて、優しく頭を撫でてくれる。

さよ先生は、わたしの先生だ。

いつからか分からないけど、そうなのだ。

 

「確かに、まだ熱があるわね。」

「はぃ...///」

 

額と額をくっつけて、熱を計る。

先生の顔が近くて、ドキドキする。

 

「じゃあ、脱ぎましょうか。」

「はぃ...///」

 

わたしは先生に言われるまま、上も下も、下着も残さず脱いでしまう。

 

「は、ずかしぃ、です...///」

「ちゃんとキレイにしてあげるからね。」

 

先生は動きやすいように白衣を脱ぐと、タオルを取り出してわたしの体を拭いていく。

 

「ん...っ///」

「よしよし。いいこ、いいこ。」

 

首筋、胸、お腹、背中、お尻。

全身を優しく、撫でるように拭いてくれる。

 

「ぁ...せんせ...っ///」

「ちゃんとキレイにしなきゃでしょう?」

 

先生はわたしの恥ずかしいところまで、丁寧にしっかりと拭き取っていく。

 

「ハァ...ハァ...っ///」

「次は、お注射ね。」

 

先生が取り出した注射に、体がピクンと反応する。

 

「せんせ...わたし、こわぃ...あの...いつも、みたいに...///」

「ふふっ、しょうがない子ね。」

 

先生は上着を脱いで、その豊満な胸を露にする。

 

「これで、安心できるわよね?」

「は、はぃ...んちゅ...///」

 

わたしは目の前に差し出された先生のおっぱいを、口に含んで吸う。

なんでこんな...おかしい、ことを...?

おかしく、ないか。

優しくて、安心する。

 

「じゃあ、入れるわよ。」

「ちゅー...ちゅる...///」

 

先生は注射を、わたしの恥ずかしいところにあてがって。そして...。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「ぎゃあーーっ!?///」

 

ベッドから飛び起きるわたし。

病院のベッドではなく、わたしの部屋の。

わたしのベッドだ。

な、何かとんでもない夢を見ていた気が...。

 

「あらおはよう。体調はどうかしら?」

「へぇっ!?///」

「な、なにどうしたの...?急に変な声を出して。」

「さ、さささ...小夜、先生...?」

「先生?」

「じゃなくてさん!小夜さん何でここにっ!?」

 

夢のせいではあるが、部屋に小夜さんがいるのはそれはそれですごくまずい気がする。

大体友だちでさえ招いたことがない家だ。

いきなり小夜さんはハードルが高過ぎて前人未到が過ぎる。

 

「こりすがね、あなたにどうしてもお礼を言いたいって聞かなくて。」

「あ...。」

 

ベッドの脇には、すやすやと眠っているこりすちゃんの姿が。

その腕にはわたしが直した、お気に入りのお人形が抱き締められている。

 

「よかった...。」

「そうね。改めて、ありがとう。何かお礼をしなくちゃ。」

「い、いえいえそんな...っ。喜んでもらえたなら、わたしはそれで...。」

 

気持ちよさそうに眠るこりすちゃんの姿が、本当に幸せそうで。

その様子だけで、頑張った甲斐があるというもの。

 

「実は、ちょっとしたお礼はもうしたのよ。風邪、良くなったんじゃないかしら?」

「え?...あれ、ホントだ。」

 

あれだけ辛かった風邪が、ちょっと寝ただけで治った...?

 

「わたしたちの家に伝わる秘伝の薬を飲ませたわ。名前を九死一生薬と言って、10人に飲ませれば1人はどんな病気でもたちどころに治るという破格の薬なの。」

「......それ、残りの9人はどうなったんですか...?」

「...。」

「飲んで大丈夫な薬ですよねっ!?」

 

小夜さんの小粋なジョークだと思いたいが、治った以上何かはあったはずである。

こわい。神社育ちこわい...っ。

 

「とにかく、元気そうでよかったわ。はるかたちも今日学校に来たし、来週からはまたみんなで過ごせるわ。」

「あ、はい...ソウデスネ...。」

「まだ気にしてるの?いつまでもそんなだと、薫子に怒られるわよ?」

「ひぃっ...。」

 

ちょっと前までは。わたしの日常は魔法少女にあこがれるだけのものだった。

それが今では、小夜さんにはるかちゃん。薫子さんに、キウィちゃん。

それにこりすちゃんとも友だちになれて。

 

「えへへ...。」

「...治ったと言っても、万が一があるかもしれないし。もう少し寝ていたら?こりすも、まだ起きそうにないし。」

「は、はい...。じゃあ、お言葉に甘えて...。」

 

最初にあったドキドキとかは、いつの間にか消えていて。

横になるとすぐに、わたしはウトウトし始める。

 

「おやすみ、うてなちゃん。」

「ぉやすみ、なさぃ...。」

 

夢のような現実を噛み締めながら、わたしはまた、夢の世界に落ちていくのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――

◼️□next episode◼️□

 

「マリーノのグッズを①から⑫までお願いします。あと記念パンフレットも。」

「やめてさよさぁぁん~!///」




Q.女医こりすを奪ったな!?
A.大体原作でもよく見たら風邪と関係ないお医者さんごっこしてるだけですし。うてなちゃんが勝手に発情(

Q.びーちく吸われるうてなちゃんはどこ?ここ?
A.それはまあ、希望があれば後々...?
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