魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~ 作:月想
どうも月一投稿すら出来ない無能です。
許してちょ←
今回そこそこ長くなったので、一月くらいかけてゆっくり読むとちょうどいいかもです。
トクン、トクンと。
ゆっくりとした電子音だけが響く静かな一室。
真っ白で清潔感のある内装に、同じく真っ白なベッドが三台置かれている。
誰もがそれを"病室"であると認識出来る、シンプルな部屋。
しかしその病室を眺められる
壁に一体化したコンピューターにモニター、円形に設置された座席にはコンソールパネルが備えられており、着座した女性たちが忙しなく端末を操作し、真剣な面持ちでモニターを監視していた。
しかも、どういうわけか服装が全員メイド服である。
スタッフの服装を除けば、まさに"謎の組織の秘密基地"と言った様子。
そんな浮世離れした場所に、トレスマジアは招かれていた。
絶体絶命の状況から再変身を遂げ、何とかエノルミータを退けたのも束の間。
空から飛来した謎のヘリコプターに乗り込み、いつの間にかこのSFチックな場所へと連れて来られたのだった。
到着して30分程経つが、未だにはるかは辺りを見渡してはすっとんきょうな声を上げているし、薫子ですらその設備に興味津々だ。
ただ、残り一人は違った。
「...病院、移動してたのね。」
新生トレスマジアの最後の一人、マジアアズールこと水神小夜は物珍しい景色を眺める
ことなく、ただずっと病室を。
自分を命懸けで救ってくれた恩人たちと、それを悲しげに見守る天花寺ホリィを強化ガラス越しに見つめていた。
「普通の病院ではセキュリティに不安がありますわ。ロードとブランはともかく、お姉さまを危険には晒せませんもの。」
小夜の独り言に応えたのは、トレスマジアをここに連れてきた張本人。
マジアシアンこと、桃森心梅だった。
不満そうな表情はともかく、その言葉遣いや面影は姉である百花によく似ている。
そういえば直接話すのは初めてだったと、小夜はその居住いをわずかに正す。
「心梅さん、ですよね?あの、聞きたいことがたくさん...」
「ここはワタクシが趣味で作った正義の為の秘密基地ですわ。他言無用でお願いしますの。」
「趣味やて、趣味。」
「はぇー...すっごいお嬢様なんだねぇ...なんか貫禄あるし。」
「変態のお姉はんとは大違いやね。」
「でも百花さんも最初はちゃんとしてたし…。」
「表裏激しいタイプかもしれへんなぁ...。」
「聞 こ え て ま す わ よ ?」
全然隠せていない二人のヒソヒソ話に姉そっくりな青筋を立てつつ、心梅は小夜たちの疑問に聞かずとも答えていく。
何万台のカメラで街を監視してるとか、メイドが全部で何百人働いているだとか、正直いちいち覚えてられない部分までしっかり説明された。
どれも正直あまり本筋と関係ないので割愛しておく。
「というわけですの。お分かり頂けたかしら?」
「いや、そこはどうでもいいんですけど。」
「どうでもいいとは何ですの!?今からでも叩き出して差し上げてもよろしくってよ!?」
「おぉ、キレててもお嬢様や。」
「見て見て薫子ちゃん!あのキーボード、イルミネーションみたいだねぇ!」
「はるか、薫子。頼むから黙って。」
自分発信とはいえ、あまりに簡単に脱線する話を無理矢理軌道修正し、小夜は漸く本題に入るチャンスを得る。
「私が知りたいのは、この"トランスアイテム"のことと、"彼女"がどうしてここにいるのか、です。」
その手に握る親友の大切な変身アイテムと、みち子たちを看病するホリィ。
何より気になるこの要素の説明を要求する小夜だったが、心梅はつまらなさそうにため息を吐き、手近な席に腰掛けてしまう。
「それはワタクシでなく、彼女が話すべきことですの。」
小夜が文句を言おうとするより先に、鮮やかな紫紺の髪が視界に映った。
「私に、何かありましたかぁ~?」
「!...シスタ、ギガント...。」
いつの間にか病室から出てきていたらしいホリィに驚きながら、小夜は自らの内で暴れだす警戒心を静かに抑える。
幾度となく自らを殺そうとした相手。
彼女はその正体で間違いはない。
しかし、今日救われたこともまた事実。
以前みち子から聞いた"決着"を信じるよう自分に言い聞かせ、ゆっくりと言葉を絞り出す。
「ホリィさんと呼んだ方がいいかしら...?」
「お好きにどうぞぉ。」
「...まずは、ありがとう。あなたのおかげで私は諦めずに済んだわ。」
「自分を殺そうとした相手にお礼を言うなんてぇ、お優しいんですねぇ~。」
「慣れてるのよ、敵が味方になるのは。一度殺した相手を守る為に、命張る魔王様だっているんだし...。」
「...ふふっ。本当に、あなたたちは不思議ですねぇ~。」
口調は相変わらずふわふわしているが、シスタの時に感じた得体の知れなさはないように思える。
みち子の話題を出した途端、表情が更に柔らかくなったのを見て、小夜の中の不安も薄らいでいく。
「みち子様が守ろうとした方ですからぁ、無事で本当によかったですぅ。」
「ぞっこんなのね。何だか、安心したわ。」
「照れてしまいますねぇ~///」
「...聞かせてもらえますか?あなたがどうして、私たちにジャスティスティールのトランスアイテムを届けてくれたのか。それまでに、あったことを。」
小夜の質問にホリィは頷き、知られざるこれまでの経緯を語り始める。
話はJST帰国の当日。
小夜たちが三姉妹を見送った、あの空港にまで遡る。
――――――――――――――――――――――
『くっ...!なぜっ...!?』
甘く見ていた、というつもりはありません。
ただ、
あの方は、ヴァーツは刃向かっていい相手ではなかったのです。
彼女から伸びる無数の腕。
斬っても、斬っても。
どれだけ斬ろうと手応えはなく、逆に軽く放たれた手刀でこちらの防御は切り裂かれ、私は着実にダメージを蓄積されていく。
『本当に残念です。アナタがこんなにバカだったとは。見抜けなかった自分が嘆かわしい。』
単純な魔力の塊を放ったり、腕を乱雑に振るうだけ。
本気すら出していないのは、すぐに分かりました。
一方的な暴力に、私の体と心は磨り減っていく。
ヴァーツがあの三姉妹を始末しようとするのは予想通りでした。
みち子様が認める皆さんならば、きっとあの最強すら退けると信じていましたから。
だから、その自分が"狩る側"であるという油断を突こうと、ケジメを着ける為の渾身の奇襲だったのに。
結局私は、この裏切りを後悔していました。
素直に従っていれば。
浅ましく、みち子様の近くで少しでも過ごしていればよかった、と。
あれだけ簡単に流せた涙も、本当の死の恐怖の前では一滴も流れることはありませんでした。
そうして全てを諦め武器を手放し、絶望に手折られる瞬間。
『ごめんなさい...みち子、さま...っ』
『その謝罪は認められないな。』
『...!』
背後から、ヴァーツを飲み込む光の束。
完全に虚を突かれたのか、防御せず布を撒き散らしながら吹き飛んでいく白い悪魔が見えました。
呆気に取られる私の身体を優しく抱き上げる、凛々しく温かいそのお姿。
『ロー...シオ、さま...?』
『新鮮な呼ばれ方だ。急ぐぞ。』
イミタシオ、シオ様はヴァーツの生死を確かめることなく、虚空に開かれた"ゲート"の中へ飛び込みました。
あれでもまともなダメージにならないと判断していたのでしょう。
ゲートが閉じ、目の前に広がるのは真っ暗で何もない空間。
『やあ、久しぶりだね。』
『!...ヴェナ、さん...。』
私が殺害したはずの、私が明確に裏切った人物。
ヴェナリータは相変わらず感情の読めない表情のまま、平坦な挨拶を口にしました。
『とりあえず変身を解除してもらえるかい?そのままだと魔力パターンを追われてしまうからね。』
『そういうことは事前に言っておけ...。』
言われるままに変身を解除するみち子様に倣い、私も変身を解除。
身体のダメージから朦朧とする視界の端に、戸惑った表情のまま固まる三姉妹が見えました。
『随分酷くやられたね。痛いだろう?ボクはもっと痛かったよ。少しは気持ちを分かってもらえたかい?』
『...はぁい...それこそ...痛い、ほどにぃ...』
『そうだろうね。これで一度殺されたボクの溜飲も下がる、ということにしておこう。』
『首輪の付いた忠犬なら害はないと貴様が言ったのだろう。怨み節はそこまでにしてくれ。』
爛々と光る瞳に私が身を竦めると、みち子様はヴェナさんから私を遠ざけて下さいました。
あぁ、優しく慈悲深い我が王...。
一生このまま抱かれていたいですぅ...。
『ではなく...何故、みち子様とヴェナさんが...?』
『奴らがやたらフラグだのなんだの言うから心配だったというか...まあだから、そこの悪魔に頭を下げた。"ホリィの居場所を教えて欲しい。ついでにやばかったら助けて欲しい"とな。』
『悪魔とは傷つくね。現状は救いの神と言っても差し支えない大活躍だよ。』
『ついにただのマスコットとすら主張しなくなったな?』
簡単にまとめると。
私と戦った後、みち子様はエノルミータと接触。
どうせ警戒していたところで対処しようがないと開き直り、ヴァーツと対等の力を持つと思われるヴェナさんに助力を請うたということらしいです。
ヴェナさんは予想外にそれを了承。
ヴァーツと私の動向を監視し、まさに今日動きがあると踏んでみち子様を呼び出した、とのこと。
この空間はお互いに追跡出来ない仕様らしく、緊急避難所としてとりあえず活用したようです。
『あちらは一度見失っているだろうが、再び変身すればすぐに居場所はバレてしまう。もちろん、分かりやすくあの街に戻るのはオススメしない。気が狂わないなら、ここにずっといても構わないけれど。』
『遠慮しておく。もう一人頭を下げた奴がいる。彼女にこの後の隠れ家は用立ててもらっているからな。私がヴァーツを始末するまで、ホリィたちを匿ってもらう。』
『いけませんみち子様...!あれは、あの方は人が刃向かっては...!』
『ホリィ、聞いてくれ。』
絶対的力の差を思い出し、震える私を真っ直ぐに見つめるみち子様。
すごくキュンとしましたねぇ...///
『私も水神たちも、この物語をバッドエンドで終わらせる気など毛頭ない。どれだけ理不尽でも、絶望的でも。私たちは諦めない。何とかなるさ。ここは君が信じ直してくれた世界なんだから。』
『みち子、さまぁ...っ///』
『お姉ちゃんお姉ちゃん。ワタシたちお邪魔なんじゃない?』
『Oh!ホースキックデスね?!』
『うるさい二人共。今いいところなんだから...。』
はぁ。今思い出しても身体が火照ってしまいますねぇ。
何とカッコよく凛々しく慈悲深いことでしょう。
――――――――――――――――――――――
「そんなわけでぇ。
私はこの後心梅さんの元で治療を受け、回復したと同時に小夜さんたちの前に現れたわけだったのですぅ。」
「後半惚気てただけやろ。」
「しっ!そこが一番話したかったんだよきっと...。」
「この世界の人は全員シリアスに徹すると死ぬ呪いでもかかっているのかしら?」
何となく流れは理解出来たけれど。
ヴェナのやつそんなこと一言も私に報告してないじゃない。
自分のアズール、とか言うくらいならホウレンソウくらいしっかりしなさいよまったく。
怒涛の味方ムーブしたって私は信用してやらないんだからね!
「というか、だからシャノンたちはどこへ?このアイテムのこと、一言でもお礼が言いたいの。」
「それは出来ませんわ。彼女たちの隠れ家はトップシークレット。今現在ヴァーツはヴェナリータが抑えていると想定出来ますが、貴女たちが呼び水になる危険性は消せませんの。」
「そっか...。」
「三人共、無事でいてはるんよね?」
「ええ。それはお約束致しますわ。」
心のどこかでシャノンに頼りたくなっていたのかもしれない。
言葉も交わせない状況に心が曇るが、無事でいてくれるなら問題ない。
みち子の言う通り、私たちが何とかすればいいだけだ。
「...あれ?ならホリィさんもここにいたら危ないんじゃ?」
「勿論ですわ。ロードからは彼女も隠すように言われていましたし。トランスアイテムもワタクシが運ぶ予定でしたの。でも、この方全然言うことを聞いてくれませんのよ?」
ため息交じりに心梅さんはホリィさんを睨み付けるが、本人は構わず病室を穏やかな瞳で見つめている。
「お側に、いたいので...私は、それだけで幸せですからぁ。」
「...ごめんなさい。私を守ってみち子は...。せっかく、あなたたちは通じ合えたのに。」
私が折れずに、すぐに逃げ出していれば。
みち子たちがこんな目に遭うことはなかったかもしれない。
そうだったら今頃、二人には安らぎの時間があったかもしれないのに。
私はそれを奪ってしまった。
「必要だと思ったから...では、冷たいかもしれませんねぇ。みち子様がそうしたかったからしたんですぅ。あなたが気に病んでも、きっと嫌なお顔をされるだけですよぉ。」
「それは...そうですね。気持ち悪いとか言われてしまいそうです。」
不思議とみち子本人に言い返された気分になる。
確かに、あの魔王様はこの私に殊勝な態度なんて望まないだろう。
せいぜい目覚めた時に修羅場のフォローをしてやるくらいがちょうどいいか。
罪悪感を一旦飲み下すと同時に、ふと頭に浮かぶ疑問があった。
「蘭朶さんと百花さん...何で目を覚まさないんですか...?」
「ヴァーちゃ...ヴァーツに倒されちゃったからでしょ?」
「いや。気絶するダメージでも、みち子はん程の深傷やない。何日も意識戻らん言うのは変や。」
「当然の疑問ですわね。...ワタクシたちも知りたいところですわ。」
お手上げのジェスチャーをする心梅さんに、目を伏せるホリィさん。
二人にも思い当たることはないらしい。
ヴァーツの攻撃に何か細工がされていたのだろうか?
そうなると、アイツを何とかしない限り目を覚まさない可能性も...?
「...今は考えても仕方ありませんわ。三人共バイタルは異常なし。医学的には寝ているだけ。貴女たちも疲労があるはず。考えるのはまた明日にいたしましょう。」
誰よりも百花さんが心配なはずの心梅さんがそう言うなら、私たちも従わざるを得ない。
問題は山積みだが、急いたところで状況が変わるわけではないだろう。
「その、心梅さん。なんで」
「"なんでロードを助けるのか"ですの?心底嫌に決まってますわ。...ただ、お姉様を傷つけたワタクシを止めたのはアイツでしたから。これでその分はチャラ。昔の恨みはそのままに、一生罪悪感を抱えさせてやるつもりですから、お気になさらないで。」
「あはは...たくましい、ですね。」
自信満々に胸を張る姿は、聞いていたようなほんわかお嬢様ではなく、立派な貴族のように見えていた。
転んでもただでは起きないところとか、何だかんだ器が大きいところとか。
百花さんにそっくりな気がする。
きっと彼女の背中を見て生きてきたからなのだろう。
やっぱりすごくいいお姉ちゃんなんじゃないですか。
胸の大きさは遺伝してないみたいですけど。
「簡単に食事をご用意しておりますわ。お家にお返しするのは、夕食の後ということで。」
「随分準備がいいんですね?」
「機内でぐぅぐぅお腹を鳴らしている方がいらっしゃいましたから。」
「っ...///」
「小夜ちゃんにしては珍しいよねぇ。」
「至れり尽くせりやね。あ、たこ焼きはたこ抜いてもろて」
「ありませんわよたこ焼きなんて。金持ちなめてますの?」
どうやら、シリアスに徹せないのは私も同じようだ。
数日まともに食べてないんだった...。
栄誉不足を訴えるように、再び盛大な鳴き声を上げる私のお腹。
あんまり興奮しない恥ずかしさに顔を赤らめつつ、小走りで心梅さんの後に続く私なのであった。
――――――――――――――――――――――
「はぁ...。」
気が重い。
数日振りの登校だし、寒いし。
何より登校したところで、そこにはもう私の最愛の人たちがいない。
うてなとキウィはいないのだ。
学校に行く度に、傷口を抉られるような思いをしなくちゃならないなんて。
「弱気になってはダメね...。」
いけない、もう挫けないと誓ったのだ。
どんなに辛くとも、最後に取り戻せばいいだけ。
大切な日常を嘘にさせない為にも、いつも通りの生活を続けないと。
やっとの思いで気持ちを持ち直して、止まっていた足を校門の先へと進める。
「朝から景気の悪そうな顔してはるなぁ。」
「小夜ちゃん!おはよー!」
「!...おはよう、二人とも。」
後ろから肩を軽く叩かれ、振り向くとそこにははるかと薫子が立っていた。
二人ともいつもと変わらない、優しく明るい笑顔を浮かべている。
なるべく気持ちを悟られないよう、努めていつも通りに挨拶をしてみるが。
「大丈夫。あたしたちが、一緒にいるよ?」
「っ...はるか...。」
私の心情なんて、二人にはお見通しらしい。
はるかが私の手を取り、その温かさを伝えるように握る。
手袋越しだけど、何より心が安らぐ気がした。
「ありがとう...もう大丈夫よ。」
「あっ、ごめんごめん!熱いよね!」
「いいえ、元気を貰えたわ。だから、ありがとう。」
「えへへ...///」
「...。ほら、はよ行かんと遅刻になってまうよ~?」
薫子に促され、漸く校舎へと入る私たち。
二人が一緒にいてくれる。
騙していた私を受け入れ、それでも友達だと言ってくれた二人が。
こんなに心強いことはないじゃないか。
もう、何も怖くない。
決意を胸に、ついに私は"変わってしまったはず"の教室へと踏み入る。
「うてな様!」
「うてな様お恵みを!」
「うてなさま!次はわたくしをお使いください!」
「散れ散れジャコどもぉー!うてなちゃ、じゃなくてうてなさまはオマエらみたいなアナジャコに興味ないんじゃぼけぇー!!」
「ふふっ。今日も小動物たちは騒がしいですねぇ。少し躾が必要でしょうか。」
「「「.......ん"?」」」
変わり方が、かなーり予想外でした☆
扉を開き一見しただけで脳を震わせる凄まじい違和感に、三人同時に冷や汗を流し最大級の疑問声を上げる。
ここはひとつ、クールに状況を整理してみようか。
まず、黒板前によく分からない"玉座"みたいな椅子が置いてある。
それ黒板どうやって見るの?首痛いなるよ?
次に、クラスメイトだ。
誰一人立ったり自席に座ったりはしていない。全員が玉座を囲み、玉座を前に跪いたり、とにかく傅いたような態勢で待機している。
四つん這いの人がいるのは何故なんだろう。
ちなみに玉座には誰も座ってない。
Why...?
不思議ですね。
でも何故何故はまだまだ重なりますよ!
「んぶぅー!///」
「椅子なら椅子らしく、静かにしなさい。」
「ん"ん"っ!///」
先生が椅子になってました。はい。
気持ち良さそうにお尻を叩かれてますね。
三十路手前がそれはなかなかにキツいです。
まあ、なんかもうそれはいいとして。
問題は誰が先生に座ってるのか。
誰がクラスメイト全員から崇められているのか。
誰が全員の上に君臨しているのか、だ。
「な...ななな何をしているのうてな!?///」
「ん?...ほう。」
いなくなったはずの柊うてなが、そこにはいた。
いつもの猫背、控え目な態度は欠片もなく。
自信満々に、"自らが王である"という表情で。
着崩した制服で先生を尻で敷き、鞭片手に教室に入ってきた私たちを睨みつけていた。
「オマエらうてなさまを呼び捨てにするとはなにごとじゃい!!死刑じゃ死刑じゃぁ!!クビをはねぇい!!」
「うっさ。なんで傅き方が時代劇やねん。アホはおかしなってもアホやねぇ...。」
「んだとひんにゅーがよぉ!?!?」
ついでにキウィもいた。
無茶苦茶な言動がいつも通りなので反応に困るが、やっぱりクラスメイトと同じようにうてなに従属しているようだ。
キウィはともかく、うてなに関してはキャラクターまで変わってしまっている。
体調悪い時に見る夢かな?
これならいない方が100倍マシかもしれない...。
「うてなちゃんというかみんなどうしたのぉ!?変だよすごくなんかこうもう全体的に全部間違ってる気がするよぉ!?」
「んぶぅ!ぶっぶべっ!!」
「何言ってるか分からないしたぶん先生が一番間違ってるよぉぉ!?!?」
「何言ってるのよはるかちゃん。これが私たちクラスのいつもの風景じゃない。」
「だとしたらあたしもう学校辞めてるよぉ!?!?!?」
「どういう、こと...?」
うてなを女王扱いするのが普通だなんて、そんなのプレイ中の私かキウィしかあり得ないのに。
妄想では確かにスタンダードだけど、こんなのは絶対変だ。
うてなとキウィがおかしくなるのは分かる。
だけど、クラスメイトや先生まで?
これじゃまるで
「
「!...うてな、あんた。」
「小夜ちゃん...これって。」
「ええ...。」
うてなの私たちを見る目が、獲物を見つけた捕食者の目に変わった。
先日のやり取りを見るに、うてなやキウィは闇堕ちさせられただけでなく、私たちの"記憶"まで失っているようだった。
つまりトレスマジアの正体も忘れていると思っていたのだが、甘かったらしい。
素顔を晒し過ぎた。
どうやら、私たちがトレスマジアであることに気付いたようだ。
すぐに襲われる可能性に備え目配せする私たち。
「...ふふっ。そう警戒しないでください。貴女たちもここを戦場にはしたくないでしょう?」
「っ...?」
しかし、うてなは私たちの心を見透かしたように笑うと、視線を幾分か和らげて戦う意志はないと手を振ってみせた。
「せっかく芽生えた花ですから。私はまだ、その美しさをじっくりと楽しんでいたいのです。昨日の今日で散らすなんて、そんなの勿体ないじゃないですか。」
「ほんと...ハマり過ぎや...。」
「こんなの...酷いよ...。」
どこまでもベーゼらしく、うてならしくない台詞。
はるかと薫子はかつての仲間の変わり果てた姿に沈鬱な声を絞り出す。
不敵に笑ううてなとキウィとは真逆の反応だ。
だけど、私は違う。
二人が変わってしまったことなど痛い程に承知済だ。
近くで見張れる分、チャンスが増えたとも言えるこの状況。
果たすべきは、"マジアアズールとしての矜持"とみたり。
「ここでは仲良くしたい。そういうことでいいのね?」
「...ええ。クラスメイトですから。ね?」
ニヤリと笑い差し出される掌。
私は真っ直ぐにうてなを見据え、その握手に応じる。
応じながら、力ずくでその身体を目と鼻の先に引き寄せた。
「あなたたちの好きにはさせない。それを忘れないで。」
「!...うふふっ!ええ、ええ。どうぞ、ご自由に。」
私の宣戦布告がお気に召したらしい。
うてなは喜悦の表情のまま手を離し、私と背後に控える二人を眺めて舌舐りをする。
「てめぇせいそけービッチ!!アタシのうてなちゃんに何して」
「いいんですよキウィさん。クラスメイトとは仲良く。これは命令です。」
「はぁぁい~...。」
「仲良く、と言うなら。一つお願いをしたいのだけど。」
「はて、なんでしょう?」
あまり好戦的にしてクラスメイトたちにまで反感を持たれるとまずいだろう。
ある程度順応しているように見せる必要がある。
はるかと薫子には任せられない。
今の私の啖呵は二人の心にも火を灯せたようだし。
その熱さを冷やすようなことはさせられない。
ここは私が身を犠牲にしなければ!
「ハァハァ...よ、良ければ私も、一度足蹴にしてもらってもいいかしらっ!?///」
「は?」
「「台無しだよぉっ!!」」
「はあぁぁんっ!!///」
――――――――――――――――――――――
「お尻が熱いっ...///」
「ウチ、もうあんたに感心も同情もせんからな?」
「昔はこんなんじゃなかったのに...。」
衝撃のスクールライフを何とか終えての放課後。
三人は黒塗りの高級車で送迎され、当初の予定通り秘密基地までやって来ていた。
わざわざ空けてある真ん中の机を囲うようにそれぞれ座り、同じようにため息を吐く。
理由は勿論、主にうてなである。
友人がまるで別人になっているのに、自分たち以外はそれを平然と享受している。
それが当人たちにとってどれ程のストレスかは言わずもがな。
とりあえず授業中に教師を躾るのはやめて欲しい。
はるかについては生まれて初めて"登校拒否"を考えた程だ。
精神的には大分磨り減らされたが、それでも考えないといけないことがある。
だからここまで来たのだと三人が同時に姿勢を正したところで、キリッとした表情でコートを着こなす心梅が入室して来る。
真ん中のお誕生日席が空いていて安心したようだが、そんなことは表情には出さない。
クールな司令官とはそういうものだ。
「集まりましたわね。」
「車やと地味に遠いんやけど。次からビデオ通話とかにせん?」
「あ!あたしお使い頼まれてたんだった!お夕飯間に合うかなぁ!?」
「くっ...何故私の上には座らないの...?隙を突かれるかもと警戒しているのかもしれないわね。明日こそは必ず」
「真面目に聞いて頂けます?社会的に抹殺致しますわよ?」
金持ちこわっ...。
お嬢様の迫力に今度こそ心から聞く体勢を整える三人。
「久しぶりの日常はいかがでしたか?まあ、日常とはとても言えなかったのでしょうけど。」
「そうなんですよ!うてなちゃんがいると思ったら先生に座ってるしクラスのみんなもおかしいし!」
「昨日は聞きそびれたけど、"これ"といい、一体何がどうなってはるん?」
薫子がスマホで見せたのは、砂浜で仲良く花火をする小夜たちの写真。
その違和感しかない写真を見て、小夜は無意識に幾分か表情を暗くする。
「認識が間違ってるとか、そういうレベルじゃない。これじゃあ、まるで...」
「"違う世界に来てしまったみたい"、ですの?」
「...はい。」
小夜の言葉を先読みしたように心梅は答え、
無駄に大きなモニターに"とある画像"を表示する。
「...あれぇ?」
「いつ作ったん?こないなん。」
「私...?」
映し出されたのはトレスマジアのCDジャケット画像だった。
何故こんなものを?
そう口にする者は誰一人いなかった。
気付かないわけがない違和感。
何故なら、そこに写っていたのがマゼンタとサルファ、そして
ベーゼのいない、まるで新しく作り直したようなトレスマジアの写真。
その可能性を否定するように、次々に表示されるアズール入りのトレスマジアの活動映像。
悪の組織との戦いは勿論、アイドルとしてのステージ活動、握手会、コラボ商品の詳細まで。
三人が、特に小夜がまるで覚えのない記録が溢れてくる。
「な、何なのこれ!?」
「これが
「っ!」
よく知る本来のまほあこそのもの、しかし今やあり得ないはずの状況に小夜は困惑する。
心は困惑し動揺しながらも、頭はすぐに何故どうやってと思考を走らせる。
考えても分からない。
分からないが、異世界に飛ばされたのでは?と思えるレベルの無茶苦茶を、それを可能に出来そうな存在を彼女たちは1つしか知らない。
「ヴァーツ...!」
「そないなことまで出来るんかアレ...。」
「え、えぇ!?なんで、どうやって!?」
「落ち着いて下さいまし。今大事なのは方法ではなく、現実の把握ですわ。」
ヴァーツの仕業と当たりを付けながらも納得は出来ない三人。
そんなトレスマジアを嗜める心梅の側に、いつの間にかホリィが控えていた。
「街にはアズールさんのグッズや広告が当たり前のように散見されましたぁ~。私たちの知る世界が変わってしまったみたいですねぇ~。」
「今日あなたたちが学校で体験したように、ワタクシたちと一般人では魔法少女関連の認識が大きく異なるみたいですの。」
「ヴァーツが私たちだけわざと取り残した...?」
「というより、"魔力適性の差"かもしれませんねぇ。変えられるなら、私や心梅さんの認識をそのままにしておく利点がありませんからぁ~。」
言われてみればと、三人はホリィの説明に頷く。
世界の認識をいとも簡単に変えてしまうとは。
かつて味方だと思っていた存在の規格外さに、冷や汗を垂らすはるかと薫子。
「じゃあ...うてなが積み上げてきた...あの子の努力は全部...っ」
「小夜ちゃん...。」
うてなの憧れ故の苦悩、夢を叶えた喜びの姿。
魔法少女としてのマジアベーゼを間近で見てきた小夜は、その全てが塗り潰されてしまった現状に苦悶の表情を浮かべる。
「小夜さんたちが覚えているなら、私は問題ないと思いますけどぉ~。」
「問題ないって...」
「愛する人が覚えているというのは、とても幸せなことですからぁ。」
「この状況を何とかするのが目的なのです。やることも考えることも変わらない。違いまして?」
「...その通りですね。すみませんでした。落ち込んでいる場合じゃないのに。」
年長者二人の励ましに静かに頷きを返し、小夜は思考を切り換える。
とんでもパワーを持っているヴァーツの対処は到底思い付かないが、今はヴェナに任せるしかない。
そうなるとまずはエノルミータをどうするかという問題になる。
「キウィちゃんたちも同じように認識が変わっちゃってるのかなぁ?」
「うーん...アイツらはおかしくなったベーゼに操られとる状態やろ?それにさっきの魔力適性の話にも矛盾してまうし。」
「...ベーゼの作り出した魔物って、倒したら元の物に戻るわよね?」
「あー。一回あたしのシイタケを使って、結局ボロボロになって帰ってきたことがあったよ...。」
「つまり、あのアホ共をボコって変身解除まで痛めつければ元に戻るて言いたいんか?」
「単純だけれど。」
「二人とももうちょっと優しい言い方にしない?トレスマジアV2は魔法少女チームなんだからね?」
エノルミータを如何にして正気に戻すか。
三人は今までの経験を元に、まずは正義の味方として至極当然な"打倒"を案として思い浮かべる。
トランスアイテムは人間が気絶するくらいのダメージを受ければ自然と変身が解除される仕組みだ。
訓練次第である程度無理は効くが、命の危機近くまで変身は維持できるものではない。
変身さえ解除してしまえば、もしかしたら。
「三人であの人数を一度に倒すつもりですの?」
「慣れてるし大丈夫!...だよ、ね?」
「...正直旗色は悪いわ。気付いとると思うけど、アイテムが変わった影響か
「ピンチなのは変わらないってわけね。」
切り札である真化が出来なくなっている。
口に出さずとも自覚していた事実が三人共通の物だと知って、淡い期待を裏切られた気分になる。
ベーゼが原作のような調子なら本気で潰しに掛かることはないだろうが、いつ心変わりするかも分からない。
それこそ、ヴァーツが合流してしまえば手詰まりになる可能性は高い。
与えられた時間は短いのだ。
「あのぉ~。つまり、各個撃破の取っ掛かりがあればいいんですよねぇ~?」
「そうですわね。一人をおびき出せれば、それが一番ですけれど。」
発言が止まってしまってから数分後。
おずおずと手を上げたのはホリィだった。
心梅の"一人をおびき出す"という部分に薄く笑い、先程より自信を持って言葉を続ける。
「では、こういうのはいかがでしょう~?」
――――――――――――――――――――――
『というわけで、本日はトレスマジアの皆さんに来て頂きました~!』
《うぉぉぉぉ!!!!》
どうしてこうなった?
目の前に広がる興奮した人の群れをステージから見下ろし、小夜ことマジアアズールは人生三度目になる"アイドル活動"から必死に目を背けようとしていた。
そこそこ大きなイベントスペースには『トレスマジアファンミーティング』という題目が掲げられ、司会のお姉さんがニコニコ顔でイベントの流れを説明している。
慣れた雰囲気で観客に手を振るマゼンタとサルファに合わせ、自身もぎこちない笑顔でファンサ(笑)を行うアズール。
頭の中はこの作戦を提案したホリィへの怨み節でいっぱいだ。
「こんなので本当に釣れるのかしら...。」
そう。
別にこれはトレスマジアのお仕事として、日々の生活を潤す為に働いているわけではなく。
"エノルミータを元に戻す"という、ちゃんとした命題を果たす為の大事な作戦なのである。
「連中のアホさがそんままやったら、必ず手ぇ出してくるはずや。」
「それうてなちゃんに対しても言ってるよね...?」
頭の中で会話する彼女たちに補足すると。
あの日ホリィが提案したのはちょっとした
芸能人であるホリィの伝でトレスマジアの単独イベントを開催。
トークショーとライブをセットにした比較的小さなものだが、ファンにとっては見逃せない推しのステージ。
それはきっとエノルミータも同じはず。
つまり、"トレスマジア自体がエノルミータをおびき出す餌になる"と考えたのだ。
前回邪魔された仕返しに、このイベントを台無しにする為やって来るという想定。
観客を危険に晒しかねない提案を一度は渋る三人だったが、前回ベーゼが"一般市民には興味がない"と話していたことを思い出す。
仕掛けるにしても直接的な暴力から始まることはないだろうという結論になった。
しかし、おびき出すとしてそれでは結局総力戦になるだろ。と思ったそこのあなた。
それはこのイベントの"ライブ"という部分が肝になっていたりします。
約1名いるでしょう?ムキになりそうな可愛い悪役が。
「ええと...歌詞の始まりはあれでダンスはここからこう動いてそれで」
『それでは早速最初の質問です!いつも凛々しく美しいアズールさん!』
「へ!?私!?...い、いえ...そんなことは...///」
そんな思い付きの作戦の為に三日三晩詰め込まれたプリプリの歌とダンス。
ヴェナの催眠アシストもなしにそれをマスターする羽目になり、何度も頭の中で反芻するアズール。
そんな不安でいっぱいの彼女に、司会から反応し辛い呼び掛けが飛んで来る。
『ズバリ、アズールさんの好みのタイプはどんな人ですか?!』
「へ、好み!?そ、それはその...好きなことに一生懸命な人、とか...?///」
『きゃー!ヒロイン!甲子園に連れて行って欲しい感じですねー!』
いやうてなもキウィもスケベに一直線なだけですけどね。
なんていうツッコミは勿論出さず、"私はアズール様に一生懸命です!"とか、"私じゃダメですかー!"とか。
聞こえてくる黄色い歓声に、本当に自分のファンがいる違和感と羞恥心を感じて、心をぐちゃぐちゃにされていた。
恥ずかしい、緊張する。
いいから早く終わってくれ。
そう心から叫びたいアズールを尻目に、トレスマジアへの質問コーナーは非常にゆったりと進んでいく。
『あたし、こないだロマネスコのレシピを調べてたんですけどぉ。』
何故こんなにスラスラ答えられるんだろう?
あれかな?中にちっさい前田○織が入ってるのかな?
自分とは真逆のマゼンタにメタい感想を抱いているうちに対抗心が芽生えたのか、次は堂々と答えてやると気合いを入れたアズール。
背筋を伸ばしマイクを握り締め、
『はひぃっ!?///』
突然大音量で矯声を上げてしまった。
静まり返る会場。
『あ、あの~...ど、どうされました?』
『す、すみません何でもなっ...!?///』
顔を真っ赤にしながら弁解しようとするアズールだったが、再び何かに激しく反応するように身体を跳ねさせる。
「急にどないしはったん...?」
「な、なんか
本人にしか分からない異変。
サワ...シュッ...コシュッ...ジュズ...。
時に耳穴を弄られるような。
まるで小さく柔らかい手に耳をマッサージされているかのような快感と音が、アズールの身体に走っていた。
突然の感覚に悶えるアズールを訝しげに見るサルファだったが、彼女もまた冷静でいられたのはそこまでだった。
(フ~っ♡)
『ひゃぁっ!?///』
『さ、サルファ...?』
今度はサルファの声だった。
普段、営業モードでも聴けないような愛らしく弱々しい鳴き声が響く。
マゼンタの心配する言葉も、今のサルファに聞き取る余裕はなかった。
「な、なんっ...!?///」
(耳が弱点とか~ひんにゅーのくせにかわいいじゃんか~...ざぁこ♡)
「ひぐっ!?///」
何を隠そう、実は耳が性感帯の魔法少女だったサルファ。
その物凄く聞き覚えがある上に嫌いな声の囁きに身体をくねらせ、未知の快感を浴びせられ続ける。
『え、えっと...もしかして体調が悪いとか?』
『だ、だいじょっ...ふぎぃっ!?///』
(ごきげんよう、アズール。今日も素敵ですよ...レロ♡)
必死に耐えようとするアズールの脳に突き刺さる最推しのハニーボイスと耳舐め音。
痙攣する様子は非常に艶かしく、会場のざわつきはより強くなっていく。
"今夜はこれでいい"とか、"写真撮りたい"とか聞こえてくるのは気のせいだと思いたい。
「こ、れっ...///」
「ぐっ...べー、ぜっ...///」
皆さんは"ASMR"というコンテンツをご存知だろうか?
耳触りのいい音や声優さんのボイスを流してリラックス効果を与えるというのが趣旨の音声コンテンツなのだが、現在の用法は主にアダルティ。
敏感な聴覚を刺激して
どこでそんなモノに目を付けたのか知らないが、エノルミータはASMRに嫌がらせの可能性を見出だしたらしい。
トレスマジアに気付かれることなくASMRを仕掛けられる道具を作成。
魔力で強化した脳トロボイスとマッサージ(byアリス)による"耳責め"を決行したのだった。
よりによって、衆人環視のステージで。
(ちゅ...れろ...ぐちゅ...ちゅるる♡)
『や、やめっ...ぃっ...///』
(ぢゅぼっ...じゅる...ぼじゅっ...れろ...ちゅっ♡)
『!...ら、めっ...///』
機器を通して届けられるベーゼとレオパルトの舌による愛撫。
耳がクソ雑魚のサルファ、エロ攻撃に弱い上に特効が過ぎる推しボイスに当たってしまったアズールに耐え切れるはずもなく。
二人は細かく痙攣した後、その場で力無く倒れ伏してしまった。
誤算だった。
エノルミータが反応してくれたまではいいが、ここまで強力な妨害に出るなんて。
あわやトレスマジア全滅。
ファンの前で無様な姿を晒し、社会的抹殺となってしまうのか。
残ったマゼンタだって、今までエノルミータのエロ攻撃に耐えられた試しがない。
もうダメだ、終わった。
魔法少女にはなりません。完ッ!
(ゴソ...ベロベロ...ガサゴソ...)
『........ん?』
(ゴニョゴニョ...ベロ...ペロペロ...)
『........大物かな?』
なんてことはなかった。
正義の魂とはそんなに簡単に滅ぶことはないのだ。
耳の中の変な音に戸惑う様子を見せながら、幼少期以来の巨大な耳垢の存在を疑うマゼンタ。
女の子が耳穴に指突っ込まないの。
ばっちいでしょ。
断っておくが、マゼンタはちゃんと耳掻きは定期的にするしやってあげるのも得意です。
お姉ちゃんだからね。
(あ、あれ...?おかしいですね...。)
(あのピンクふかんしょー?)
(ASMRってぶっちゃけ個人差だよな。)
(みんな違ってみんないいってことね!)
『あー!?エノルミータだぁぁ!?!?』
『え、エノルミータ!?』
まったく反応しないマゼンタについ心の声を漏らすエノルミータの面々。
それに気付かない程マゼンタはおバカではなかった。
すぐに驚きの声を上げ、司会や観客もそのエノルミータというワードに反応。
先程とまた違ったざわつきに答えるように、ついにマジアベーゼたちがその姿をステージ上に現した。
「ふふっ。流石ですねマジアマゼンタ。私たちのASMR攻撃が効かないとは、やはりリーダーの名は伊達ではないということですか。」
「エイリアンスマイル...?何言ってるか分からないけど、二人をこんなにしたのはあなたたちだったんだね!」
こいつ、もしかして耳が遠いだけなのでは...?
そんな心配にも似た感想を抱いて、後ろに控えるレオパルトたちが冷や汗を垂らす。
緊張感が若干削がれる中、観客たちは悪の組織の登場に大混乱。
我先にと会場外へ出ていこうとする。
「ま、マゼンタ...はよ...さく、せんを...っ///」
『あ!そうだった!みんなストぉぉーーップっ!!!!』
「...?」
マイクから炸裂するマゼンタの大声。
観客は耳キーン状態を強制され、自然とその場から動かなくなる。
まるで市民を逃がさないようにする行動にベーゼが疑問符を浮かべるが、当のマゼンタは
『ロコちゃん!!あたしとアイドルバトルだよっ!!!』
「......は?」
『真のアイドルの座を賭けてっ!いざじんじょーにしょおぉぉーーぶっっ!!!』
「な、なんですってーーっ!?」
凄まじい既視感。
反撃、開始します。
――――――――――――――――――――――
ロコはラヴリー ラヴリーロ・コ♡ みんなキュンキュンメロメロリン♡ 超絶キュートなミラクルガール! その名はロコロコ ロコムジカ♡(ロコちゃーん!) 聞こえるわあなたのハート どくどくバクバク鳴ってるわ 恋してもいいのよロコに 恋愛NGだ・け・ど(笑)
「ロコのくせに上手い、だと...!?」
「むむっ...大丈夫!パンツは履いてるよ!」
「え。ナチュラルに今覗いたん?マゼンタアカンよ染まってはるよ...?」
意外!それはロコムジカ(パンツ装備)の美声!
マゼンタの挑戦という形で二つ返事で始まったロコとのアイドルバトルpart3。
観客の反応を見てどちらがアイドルに相応しいかを競う、という話らしい。
ぶっちゃけこれに勝ち負けが着いたからといってロコが投降するとは思えないわけだが。
そこはこう、トレスマジアの知らない落とし穴的な仕掛けがあるようだ。
よもや卑怯とは言うまいby心梅。
ともかく、トレスマジアとしては真面目に貫きたいアイドル道。
いつものロコならば絶妙に弄りにくい程度に下手な歌唱でほぼ不戦勝になるはずなのだが、今回は様子が違った。
なんとパンツを履いているにも関わらず始めから美声モードだったのだ。
勿論おっぱいも見せてはいない。
観客たちもそのパフォーマンスに圧倒されているようで、これはなかなか厳しい戦いになるかもしれないとトレスマジアは考えを改める。
改めようとしたが、
『ありがと~~っっっっっ!!☆』
相手がエノルミータであることも忘れて、その見事なパフォーマンスを拍手で称賛する観客たち。
しかし、トレスマジアはそれに乗じることはない。
「どーよ!見惚れて声も出ないかしら!?」
「はっきり言って最悪ね。」
「はぁ!?ぁんですって!?」
自信満々にトレスマジアにアピールするロコに対して、アズールは吐き捨てるように感想をぶつける。
「まさかド下手な方がマシやと思うなんてな。」
「ぜんっぜんロコちゃんらしくない!こんなのダメダメ!アイドルじゃないよ!」
「馬鹿にしてんじゃないわよ!ロコのこのパーフェクトなパフォーマンスのどこにいちゃもん付けられるって言うのよ!?」
アズールに続いて批判する二人に激怒するロコ。
トレスマジアは言葉もなく頷き合い、ロコの間違いを糾す為アズールが前に進み出た。
「ロコ、あなたルベルとえっちはしているの?」
「はぁ!?///」
「あれぇ?どうしよう意志疎通まったく出来てなかったのかなぁ?」
「今からでもクビにしたろかこの変態。」
アズールのあれな質問に本人以外が動揺するが、彼女はそれに構わず言葉を続ける。
「ロコ、ルベルのことは好き?」
「...何言ってんのあんた。
「はぁ...やっぱりね。」
そのあり得ない発言に、マゼンタたちも漸くアズールの意図を理解する。
裏付けを取るようにチラと覗き見たルベルの顔に動揺はなく、つまらなさそうに状況を見守っているだけだ。
「そこまで弄られてはるんか...。」
「ヒロインとして一番大事な部分を奪われてしまった、というわけね。」
「...ロコちゃん。あたし、自分がアイドルだなんてつもりはないけど。アイドルが大事にしなきゃいけないことなら、知ってるよ。」
「...何よ、偉そうにロコに説教?」
歪められてしまった友人を悲しげに見つめながら、今度はマゼンタが語り出す。
「"愛すること"、なんだって。見てくれてるお客さんや、支えてくれる人たち、友達、仲間。その全部を愛して、ありがとう!って気持ちで歌うんだって。それがアイドルだって言ってたのはロコちゃんだったのに...。」
「何言うのかと思えば。あんたバカなんじゃないの?感謝なんて必要ない。愛されるなんてロコには当然のことなの。むしろロコを愛せる愚民共がロコに感謝すべきじゃない?アイドルは、
「っ...」
邪悪に嗤うロコにマゼンタの言葉は最早届かない。
マゼンタは言い返すことはせず、代わりに仲間たちと共にマイクを構える。
「愛するが故にアイドル。」
「いっちょ分からせたるか。」
「二人共...うん!いくよっ!」
タイミングを図ったように流れ出す『プリズムプリンセス』の前奏。
トレスマジアは淀みなくポジションに着き、ダンスと歌唱をスタートする。
練習したとは言え、まだまだ拙いそのパフォーマンス。
こんなものかと見下すロコだったが、すぐに周囲の熱気に愕然とする。
観客の歓声が自分の比ではない。
元々トレスマジアのファンなのだから当然だ、と考えるのは簡単だが。
盛り上がりというか、観客の目の輝き方が段違いなのだ。
自分よりも幼稚で下手な動きの、いったい何がそうさせるのか。
観察し、漸く気付いた。
ステージで舞う彼女たちの目が、ずっと会場のみんなに向けられていることに。
観客は勿論、舞台袖で見守るスタッフ、司会者。
敵であるはずのエノルミータにさえ。
トレスマジアは笑顔を向け、言葉ではないありがとうを伝え続ける。
その姿こそ、まさしく愛。
全てを愛おしく想うような、彼女たちのアイドルとしての渾身の1曲。
たった数分のそれは、見る者に夢のような興奮を与え。
大歓声の中、ついにその演目を終えるのだった。
『みんな!今日は来てくれてありがとう!』
『これからも、うちらトレスマジアを!』
『よろしくおねがいしまーーすっ!!』
「っ...!?な、に...?」
再び響く拍手喝采の中、ロコムジカは頭が割れるような痛みに襲われる。
声援に包まれるトレスマジアの姿に、言い知れぬ既視感と、清々しいまでの敗北感を感じた瞬間だった。
自分が自分で無くなるような、何かに意識が塗り潰されそうな感覚。
「ふむ...。今日のところは完敗としか言いようがありませんね。ロコさん、今は抑えて後日リベンジを」
「ちが、う...」
「ロコさん...?」
『アイドルは、ロコなのに...!!』
「...!」
膝を突くロコを励ましつつ撤退を促すベーゼだったが、ロコはそれが見えていないかのように無視。
観客席に向け、突然音波攻撃を放った。
「うぐっ!?」
「きゃあっ!?」
「サルファ!アズール!?」
間一髪、障壁と氷の壁でその攻撃を防ぐサルファとアズールだったが、勢いを殺し切れず自らが作り出した護りと共に後方へ吹っ飛ばされてしまう。
「ロコムジカ、何を...!」
『ああぁぁぁぁーーっっっ!!!!!』
制止するベーゼとエノルミータ。
しかし、ロコから漏れ出す"真っ黒な魔力"に阻まれ退避を強いられる。
魔力は更に高まり続け、ロコをすっぽり覆い尽くしてしまう。
一際大きな光を放ち、消えていく闇の繭。
悲鳴渦巻くステージに降り立ったのは、彼女のイメージカラーすら
『ロコを愛さない奴なんて、消えなさい...!』
「ダメっ...!」
間髪入れずに観客席へ攻撃を仕掛けるロコに対し、マゼンタはまだ使い慣れない盾で身体ごと使うようにして防いでみせる。
ぐらつく視界に構わず急いで障壁を展開し、執拗に放たれる音波攻撃を必死に耐える。
アズールとサルファは不意打ちのダメージから動けず、エノルミータも率先して市民を逃がそうとする様子はない。
更に強まり広がっていくロコの絶叫。
マゼンタ一人で守りきれなくなるのは時間の問題だ。
「このまま、じゃ...!?」
背後には怯えて動けない観客。
前方には見ている方が辛い程に声を張り上げ、関係のない人たちを壊そうとする友人。
どちらも助けたいに決まっている。
だが今の自分のままではどちらも救えない。
もう何度目かも分からない無力への憤り。
だが、マゼンタは諦めない。
一度は掴んだ境地。
あの時だって、考えていたのはただ"守る"ということだけだった。
それは今も変わらない。
変わらないからこそ、自分は魔法少女なのだと。
内に眠る力をその想いと共に点火した。
『"
『ァ...?』
爆発する障壁。
しかし、それは
爆煙の中から垣間見える黄金のシルエット。
メタリックなマゼンタカラーで染められた兜に手甲、脚鎧は金色で縁取られ、腰部装甲はスカート状に。
頑強な各部の鎧に反して胸はビキニのような胸当てがあるだけ。
露出した腹や胸元に色香を纏わせながら、彼女自身の凛々しい表情により全体的にはヒロイックな騎士を想わせる立ち姿となっている。
黄金の盾と槍を構える様子は、神話の"戦乙女"のようにも見えた。
「てんぺっ...じゃなかった!...マジアマゼンタV2真化形態!"
即興で考えたにしては外国語マシマシの形態名を高らかに叫び、ポーズを決めるマゼンタ。
正義の味方の土壇場強化に、恐怖に震えていた市民たちは活気を取り戻す。
ついでに"まためっちゃかわえぇ!というかよう見たらセクシー!あかん!アカンよマゼンタぁぁ!!"とか。
"あれがマゼンタの真化ですか!素晴らしい!辱しめ甲斐がありますねぇ!"とか聞こえてくるが、今は気付かないフリをしておくべきだろう。
『邪魔をしないでぇぇ!!!』
「やらせないよっ!」
マゼンタの変化を認識出来ているかも怪しい程の狂乱の中、再び攻撃を始めるロコ。
マゼンタが盾を掲げると、観客をすっぽりと覆うように光の屋根が形作られた。
激しい衝撃をぶつけられながらも、その屋根はビクとも動かない。
「これは少々まずいですね...。」
「行かせないわよベーゼ!」
「アンタらもや...!」
「っ...ロコ...!」
暴走以上に厄介なことになると踏んだのか、ベーゼは配下を伴ってロコの元に急ぐが、アズールたちの妨害に遭い動けなくなる。
ルベルの悔しげな声は友情故か。
それがロコに届くより先に、マゼンタの槍が眩い輝きを放った。
「今すぐ助けてあげる!だからちょっと我慢してね、ロコちゃんっ!」
『アァッ!?アアアアァァァッッ!!』
「その気持ち悪いの、全部ひっぺがしてあげるからっ!!いっけえぇぇ!!"金色びかびかビーーーム"ッッ!!!」
名前はまだない、魔を払う聖なる光を直接叩き付けるビーム砲。
ロコの身体を包む闇が勝手にそれを防ごうとするが、
闇を搔き消すようにロコを飲み込んだ光は空高く舞い上がり、一際大きな輝きを見せ爆ぜていった。
「ロコ...真珠っ...!」
光が晴れた先には、ステージに倒れ伏す変身が解けた真珠の姿があった。
近くに転がったトランスアイテムは黒くくすんでしまっている。
アズールは周りに構わず真珠の名を呼び駆け出す。
抱き上げた身体には、まだ確かな温もりが感じられた。
「無事よ!生きてるわ...!」
「ハァ...ハァっ...よかっ、た...。」
「マゼンタ!?」
アズールの言葉に安心して緊張の糸が切れたのか、真珠に続いて気を失うマゼンタ。
サルファはすぐに助け起こそうとするが、目の前のベーゼたちを警戒して動くことが出来ない。
「...してやられましたね。撤退します。」
「え、ベーゼちゃん...でも...」
「いくぞ。ベーゼ様の命令だ。」
「は?おま、いいんかよ!?」
「弱いヤツがわりぃんだ。アタシには関係ねぇ。」
絶対有利な状況の中、しかしベーゼは撤退を選択。
作り出したゲートにレオパルトたちが消えて行く。
「今日は私たちの敗けを認めましょう。しかし、次こそは。地面に這いつくばるのはあなたたちだと心得なさい。...では。」
「っ...マゼンタ!」
捨て台詞を残し、完全に戦場から離れたエノルミータ。
残されたトレスマジアは、ボロボロの会場で、それでも確かに手にした勝利を噛み締めるのだった。
――――――――――――――――――――――
「あー...えっと...その...色々と、ごめん...。」
「色々てどこからどこまでか分からんよねぇ。」
「ちょ、薫子ちゃん...。それ言い出したら小夜ちゃんにもっと怒らなくちゃいけなくなるから。」
所変わって秘密基地。
新たに追加されたベッドには、すっかり正気を取り戻した阿古屋真珠の姿があった。
最初は記憶の混濁が見られたものの、小夜たちを友人として認識しており、トレスマジアの説明を受けて大体の状況を把握するに至っていた。
最終決戦からまともな対面は初めてということで、はるかと薫子とは大変気まずい真珠。
直前のやらかしも含め、珍しく平謝りに徹する様子が見られた。
「でも本当によかった!真珠ちゃんが、真珠ちゃんに戻ってくれて...。」
「はるか...。迷惑、かけたわね。今度ばっかりは本当に助かったわ。」
「ううん。だってロコちゃんも真珠ちゃんも、大事なあたしの友だちだもん!」
「っ...あんたってホントに魔法少女よねぇ~!(泣)」
純粋な善意に触れて浄化されるが如くベッドに泣き崩れる真珠。
感動的な場面にホッと一息吐きつつ、心梅が年長者として事務的な説明を開始する。
「そろそろよろしくて?」
「げっ...バーサーカー...。」
「サーヴァントみたいに呼ぶんじゃありません。阿古屋さんのトランスアイテムですが、見た目通り使用不可とした方がいいでしょうね。無理に使おうとすればまた黒歴史を生み出しそうですし。」
別部屋にて隔離調査されている真珠のトランスアイテムは、撃破時と変わらず黒くなってしまったままだ。
状態としては破損した心梅のモノに近いが、完全に損傷しているわけではないとのこと。
改善さえ出来れば再使用の目もあるが、当分は戦力としては期待出来ない。
「また役立たずってことね...。」
「そう悲観することはありませんわ。あなたが戻せたということは、他のメンバーも取り戻すことが出来るということ。希望はあるだけで価値がありますから。」
「...この人ホントにあれの妹なわけ?実は性癖歪んでたりしない?」
「それはウチも調査中や...。」
「ぶっ と ば し ま す わ よ ?」
無礼過ぎる年下にブチギレ寸前の心梅だが、真珠だって元ロード団の功罪がある。
それを追求しない辺りやはり人並み外れた器なのだが、誰も素直に褒めないからストレスは溜まる一方。
小夜たちはそろそろ彼女のメンタルを気にした方がいいと思う。
「はぁ。とにかく今は安静にしておくこと。回復したら雑用でも何でもこき使って差し上げますの。」
「あ、最後に一ついいですか?」
「何ですの?」
紅茶休憩でもしようと離席する心梅を引き留め、真珠は
「小夜もおかしくなってるわけ?」
「ゔぇぇーんっ!!よ"がっだぁ!!またまがっ!ま"だま"がま"だま"なのぉぉぉ!!」
「平常運転じゃありませんの。」
真珠が目を覚ましてから今の今まで、小夜は号泣しつつ真珠の腕に抱き着き続けていた。
服の袖はもう涙と鼻水でぐちゃぐちゃ。
かつてない取り乱し方に真珠も反応に困っていたのだった。
「ちょっといい加減離しなさいよ!キウィじゃないんだからベタベタされても喜ばないわよ!?」
「真珠っ!真珠真珠真珠ぁぁ!!」
「ひうっ!?ばっ、小夜あんたどこ触って!?///」
感激のあまり真珠を押し倒して全身を確かめるように撫でる小夜。
最早喜んでいるというより欲情しているようにしか見えないが、誰もその愛の抱擁を止めようとはしない。
「二人きりにしたる?」
「あはは...そうだねぇ。みち子さんたちいるけど。」
心梅の言った通り、この光景は彼女たちの希望だ。
新たな真化がもたらした、仲間たちを救う力。
事態が好転する予感を感じながら、はるかはベッドに置かれた小夜のスマホへと視線を送る。
そこにはかつて間違いなく撮影した、仲良く化粧品を選び合う、小夜と真珠のツーショット写真が表示されていた。
――――――――――――――――――――――
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「あなたたちこそ、私が初めて見た"嘘偽り無いモノ"だったんですよぉ。」
たまたま奪還。
次回はもう1月かな?
皆さん、よいお年を(サボり)