魔法少女にはなりません ~転生したらアズールだった件~   作:月想

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お久しぶりです。
お待たせしました。
お待たせし過ぎたのかもしれません(古)
もたもたしてる間にマゼンタ真化しましたね。
こっちは薫子の力もらってるから完全にナース克服してるんすよねぇ(後付け)
今回はそんな二人のお話です。


第49話『真心』

『あははっ!おもしろーい!たのしー!』

 

何がそんなに面白いのだろう。

ツインテールにした桜色の髪を活発に揺らしながら、少女は原っぱを駆け回る。

はしゃぐ姿は子どもらしく愛らしいが、一人きりで騒いでいるものだから、どうしても変に見えて仕方がない。

どうやらそれは幼いながらに自覚していたようで、ピタリと動きを止めた後、笑顔を消してその場に座り込んでしまう。

 

『やっぱり、つまんない...。』

 

先程とは反対の言葉を口にし、空を見上げる。

空はあんなに遠いけれど、どのくらい手を伸ばせば届くのだろう。

子どもながらに想像力を膨らませた少女は、実際に試してみることを思い付く。

立ち上がり、手近な木を見て回る。

 

『ちっちゃい。これもぉ、あれもぉ~...。』

 

とりあえず"高い物"を探そうとして、思い当たったのが木だったらしい。

どうせなら、うんと高くて大きな木を探そう。

少女のお眼鏡に叶う木はなかなか見つからないようで、木を辿るように少女のちょっとした冒険が始まった。

普通の木。少し大きい木。すごく小さい木。

もうちょっと大きかったらな残念賞な木。

色々な木を見つけては通り過ぎ、少女はいつの間にか()()()()()()に来ていた。

 

『へんなおうち!』

 

指差す先には家というには荘厳な雰囲気の建物。

"お社"が見えていた。

少女はまだ読めるはずもないが、入り口には"水神神社"としっかり記載がされていた。

神社なんて幼い彼女は行ったこともないので、鳥居から先の景色はまさに未知との遭遇。

別世界に来たかのように感じられて、少女はその目にワクワクとした輝きを宿す。

 

『わぁ~!みつけたっ!おっきい、おっきいきだぁー!』

 

少し歩いて見つけたのは、太さも高さもこれまでとは比較にならない立派な大木。

お社のすぐ隣に立つそれを見上げ、少女は感嘆の声を上げる。

 

『よぉ~し!』

 

気合いを入れた少女は空に手を触れさせるべく、大胆にもその大木に手足を掛ける。

野生動物かと見紛う程の器用さ、俊敏さで少女はスルスルとその大木を登っていった。

 

『うんっしょ...よいっしょ...わっ!すっごーい!』

 

一番高いと思える枝に腰掛け、眼下の景色を眺める。

大木から見下ろす街並みは小さな少女にとって、果てしなく広いモノに見えていた。

当初の目的であった空をすっかり忘れて、自分の住んでいる世界に夢中になる。

 

"ここを自分の秘密基地にしよう。"

 

お気に入りの場所を見つけて終わるはずだった少女の冒険だが、()()()()はこの後にやって来た。

 

『ちょっとあなた!』

『んん?』

 

真下から掛けられた声。

口調の割に幼い音に興味をそそられ、少女は前のめりになって木の根元を覗き込む。

 

『ごしんぼくになんてことするの!はやくおりてきなさい!』

『わぁ!へんなかっこ!』

『へんじゃないもん!』

 

腰に手を当てプンプン怒っていたのは、巫女服姿に碧い髪が綺麗な少女だった。

同い年くらいのようで、そのブカブカで見慣れない服装に無知な彼女は興味津々。

もっと近くで見ようと身を乗り出して。

 

『あれぇ~~!?』

『え!?わわっ、あぶなっ!?』

 

頭からまっ逆さまに落下。

巫女服少女を下敷きにして地面に倒れ込む。

大した高さじゃなかったのか、それとも巫女服少女が頑丈だったのか。

幸いなことに二人とも大きな怪我はなかったようだ。

 

『ははっ!あはは!おもしろーい!!』

『おもしろくないわよっ!!』

 

落下のドキドキが気に入ったらしく、笑顔で楽しさを表現する少女。

気に入ったのは落下や景色だけではなかった。

冒険の末出会った変な格好の女の子。

落下以上のドキドキが、少女の胸を一杯にしていた。

 

『ねぇ、あそぼ!あたしひとりでずっと』

『ダメっ!』

『うっ!...な、なんで...?』

 

一人でずっと寂しかった。

そう伝えるより先に、巫女服の少女が彼女の言葉を否定する。

一瞬にして笑顔が泣き出しそうな顔に変わる。

 

『あぶないでしょう!あなたがけがしたら、おかあさんたちがかなしむの!それはいちばんダメなことなのよ!!』

『っ...ふぇっ...おかあさん...』

 

巫女服の少女は自分を下敷きにしたことでも神木を足蹴にしたことでもなく。

桜色の少女が危険を認識していなかったことを一喝した。

身重で遊んでくれない母親を思い出し、寂しさから泣き出す少女。

 

『うぅっ...ひぐっ...ずずっ...』

『...もう。なかないの。どこもいたくないでしょう?』

 

ボロボロと涙を流されて気が咎めたのか、巫女服の少女はハンカチを取り出し泣き虫の顔を拭ってあげた。

 

『ごめんなさいがさいしょ。そしたら、ともだちになってあげる。』

『ぐすっ...ぅっ...ごめん、なさぃ...』

『ん。もうこんなことしちゃダメよ?』

 

同い年くらいのはずなのに、彼女には目の前の少女がすごく大きく見えていた。

まるで母親のような安心感に、心がぽかぽかと温くなるのが分かった。

 

碧い少女は先程までの怒り顔が嘘のように優しい笑顔を浮かべると、手を差し出して彼女が立つのを手伝ってくれる。

 

『わたし、さよ。あなたのなまえは?』

『さよ?...じゃあ、さよちゃん!あたし、はるか!おともだちになってくれる?!』

 

水神小夜と花菱はるか。

これが二人の始まり。

幼なじみで親友で、魔法少女。

この世界が定めた、運命の出会いであった。

 

――――――――――――――――――――

 

「ぃたっ...」

「大丈夫!?すぐに治してあげるからっ!」

 

すっかり普段使いが定着した秘密基地。

いつもの座席にいつもの面子が座っているものの、その雰囲気は些かシリアス味を帯びていた。

 

「ごめんなさい、はるか...私が馬鹿だったのよ...。」

「そんなことないよ!小夜ちゃんの気持ち、あたしはちゃんと分かってるから!」

 

小夜に対しマゼンタが回復魔法を施しているのだが、その表情は暗く、小夜の身体には至るところに包帯が巻かれている。

これだけでも激しい戦いがあったことは明白。

見守る他の者たちも、さぞ沈鬱な顔をしているに違いない。

 

「ちょ...ちょ、ちょっとだから分かんないって言ってんでsyあ、ぁー!?」

「はぁ。弱過ぎてつまんねー。ホントにゲーム下手くそだよな、おばあちゃんは。」

「誰がババアよ!?ゲームなんて悪影響で頭がパーになる有害で何の役にも立たないムダ技術でしょーが!」

「思想まで旧世代の遺物かよ。化石系アイドル。」

「ジュラシック扱い!?」

 

まあ、いつも通りそんなことはなかった。

 

ブリーフィングルームの大画面モニターに表示されているのは、今をときめく最新ゲームハードの大人気格闘ゲームソフト。

コントローラーを握って騒いでいるのは、前回めでたく復活した名誉バカップルこと真珠&ネモだった。

 

「いやちょっとは心配しなさいあなたたち!?」

「マゼンタいるならそのうち治るだろ。」

「そーそー。第一痛いの好きなんでしょあんた。」

「こうゆうのは違うの!でもその雑な扱いは何となくハァハァ...!///」

「めちゃくちゃ元気じゃねェか。」

 

まるで元総帥が見えていないかのように振る舞う二人に不満を漏らす小夜だが、すげなくあしらわれてしまう。

 

「焦って一気に取り戻そうとするからそうなるのよ。」

「段階踏んでかないとなー。尺ってもんがあるし。」

「あなたたちねぇ~...!」

 

何があったのかと言うと。

今日も今日とてエノルミータとの戦いに望んだトレスマジア。

先日の真珠の体を張ったネモ奪還作戦に感銘を受けたようで、小夜が突然

 

『あなたたちが目を覚ますまで動かない!』

 

と宣い、仁王立ちを決め込んだのである。

そこいらのアニメであればすぐに正気を取り戻してまとまりそうなものだが、流石にそこまで甘くはなかった。

哀れアズールは見事に情け容赦ない集中砲火を浴び、死に体になりかけたというわけ。

いくら何でも捨て身が過ぎる。

 

「本当にみんな...忘れてしまったのね...。」

「小夜ちゃん...」

 

経緯はともかく気落ちするのも仕方がない。俯く小夜にどう声を掛けるべきか悩んだ後、変身を解除したはるかは優しく小夜の手を握った。

見つめ合う二人。

言葉にせずとも、確かに伝わる想いがそこにはあった。

 

「...ウチ、帰る。」

 

そんないい雰囲気が大層気に入らなかったらしい。

分かりやすいくらいに膨れっ面になった薫子は、不機嫌を表すようにわざと靴音を立てて部屋を出て行ってしまう。

 

「あ、ちょ待てよ!?」

「あんたこそ待ちなさいよ!?ゲームこのままだと心梅センパイにムチャクチャキレられるじゃない!?」

 

そんな薫子を慌てて追い掛けるたまネモ。

ちなみに、モニターは無断使用につきバレれば重罪である。

 

「待てって!どうしたんだよ急に!?」

「相談したいって言ったの薫子でしょ。何ばっくれようとしてんのよ?」

「...ほっといてんか。」

 

少し進んだ先の廊下で漸く捕まえる。

たまネモ相手でもご機嫌は変わらない様子で、どうしたものかと頭を捻る二人。

 

()()()、するんだろ?」

「......で、デートちゃうし...///」

 

これまた前回に話が戻るが。

ネモが帰って来たあの日に、真珠たちに影響を受けて薫子もまた唐突な行動に出たのだ。

 

『二人きりでお出掛けしてくれへん…!?』

 

その場にいたほぼ全員が"え...今言うの?"と首を傾げた。

はるかもネロアリスたちに酷い目に遭わされたばかりでどう考えても平静ではなかったのだが、どういうわけか二つ返事でその"お誘い"は成立してしまった。

舞い上がる薫子。

しかし、十中八九はるかはそれがデートであると認識していないだろう。

 

チャンスでありピンチでもあるこの状況を打開する為、今日薫子はバカップルに助言を求めようとしていたのだった。

 

「勢いで言うんやなかった...!なんも思い付かへん~...!」

「やっといつも通りだな。」

「後悔しても遅いってのよ。やっと巡って来たチャンスなんだから、当たって砕けなさい。」

「他人事やと思て!誰のせいや誰の...!」

 

元はと言えば、目の前で羨ましいようなラブコメを演じてしまったたまネモのせい。

そう責任転嫁して頭を抱える薫子を宥める二人の額に、うっすらと冷や汗が浮かぶ。

小夜と言い薫子と言い、自分たちはそんなに悪影響なのだろうかといよいよ不安になってきたようだ。

 

「コホン。話はお聞きしましたわ。」

「げぇ!?パイセン!?」

「い、いつからそこに...!?」

「人を怪物みたいに...失礼ですわね。」

 

いつの間にか後ろに立っていたお嬢様、司令官こと桃森心梅。

個人的にあまり好きじゃない上に失礼な後輩二人を睨みつつ、視線を思い悩む薫子へと向ける。

 

「迷っているなら、最高のデートスポットをワタクシが提供して差し上げますわ。」

「ほ、ホンマに!?」

「いや待て、この流れ見たことあるぞ。」

「ついに正体現したわね!やっぱりあの変態の妹よこの人!」

「つまみ出しますわよ役立たず×2。」

 

前にも一度デートについて悩んでいた時、心梅の姉である百花から遊園地に招待してもらったことがあった。

あの時は結果としてかなり"アレ"な目に遭って帰ることになった為、二人が警戒するのは当然のことである。

 

「ワタクシはお姉さまとは違います。正真正銘、健全なデートスポットですわ。」

「ホントかぁ?」

「じゃあ、何で心梅センパイがそこまでしてくれるんです?」

「それは...」

 

今回の話は完全にプライベート。

心梅がそこまでサポートをする必要はない為、理由が気になるのは道理だ。

心梅は言いにくそうに口篭った後、少し頬を赤く染めてその問いに答えた。

 

「破廉恥なのは嫌いですが、ピュアなお話は好きですので...///」

「これはお嬢様。」

「この作品には超珍しいお清楚ね。」

 

意外や意外。

この手の恋愛話には興味津々だったお嬢様。

花も恥じらう乙女(希少種)であった。

どうせ他の案もないのだからと賛同するたまネモ。

別に考えるのが面倒になったわけではない。

 

「どういたしますの?ワタクシの提案、受け入れてくださいます?」

「せやなぁ...うーん...」

 

腕を組んで悩みに悩む薫子。

5分程悩み続けたはいいが、別案はまったく浮かばず。

結局は心梅のデートプランを丸々受け入れることになったのだった。

 

――――――――――――――――――――

 

「はぁ...あー...緊張する...」

 

時間が過ぎるのは早いもので、すんなりとデートの日がやって来た。

心梅に招待されたデートスポット、"プラムリゾート"の入り口付近。

薫子はどうにも落ち着かない様子で最愛の人を待っていた。

 

その服装はいつものパンクというか、悪く言えばチンピラ寄りのものではない。

白地に薄い水色が映えるワンピースは、まさに"お清楚"。

彼女の金髪と合わせて、こりすとはまた別方向のお人形さん味を醸し出していた。

 

色んな意味で彼女らしくないこの格好だが、真珠からのダメ出しが原因である。

自称お洒落番長がいつもの格好を"柄が悪い"、"ロック(笑)"、"流行らない"などとメタクソに批判したせいで一悶着どころか十悶着くらいはあったのだが、長くなるので今は割愛する。

 

「おーーい!薫子ちゃーーん!!」

「は、はるかっ!///」

 

待ち人来る。

元気に手を振り駆け寄って来る姿はどこか犬っぽいが、それ程に可愛らしいということ。

視界に入れただけで頬を染める薫子の気持ちが分かるくらい、今日のはるかは特別に見えた。

何と、変なTシャツを着ていないのだ。

はるからしい、ピンクを基調としたふわりひらひらなスカートがよく似合っている。

それらもまた、実は我等のお洒落番長(ガチ)の働きあってこそ。

だが勿論こちらの説明も割愛する。

長いので。

 

「待たせてごめんね!」

「い、今来たところやさかい気にせんで...///」

「そっか!...なんだか今日の薫子ちゃん、すっごく可愛いね!」

「せ、せやろかぁっ!?...は、はるか...も、似合っとるよ...服...かわええ...///」

「えへへ!ありがとぉ!」

 

デートのお約束文言からスタートし、上々の滑り出しと言ったところ。

照れ過ぎてもう原型がない気もするが、人語を話しているだけ薫子にしては頑張っている方だろう。

 

そう思ってうんうん頷きながら、彼女たちを物陰から見守る三人の不審者がいた。

...ではなく、乙女が三人いた。

 

「服装は二人とも見違えたわね。」

「あったりまえよ!誰がコーデしたと思ってんの!」

「うっせぇぞ威張んな真珠。薫子宥めんの大変だったんだからな...。」

 

サングラスや帽子で変装した気になっているこの三人。

言うまでもなく小夜に真珠、ネモであった。

一人スター被れがいるのはともかく、友人の恋路を心配してわざわざ尾行しに来た友情に厚いヒロインたちである。

決して面白がっているなんてことはない。

 

「ふふっ。スタートからして茹でタコみたく真っ赤じゃないの。ピュアピュアな薫子のお手並み拝見といこうじゃない。」

 

面白がってなど、いないのだ。

 

「んで、実際どうなんだよ小夜。脈あんのかあれ。」

「勢いのワンナイトならワンチャン。」

「あんたそれ無理矢理連れ込むだけじゃないの...?」

「友情をダシにして一口、みたいな。」

「くたばりなさいよ。」

 

幼なじみにして親友(はるか側の主張)である小夜に見解を問うが、返って来たのはR18展開。

勿論冗談だったようで、幾分か真剣な表情で小夜は言葉を続ける。

 

「まずそもそもの関係性が恋愛に発展し辛いのよね。はるかは薫子を完全に親友って思ってるだろうし。」

「知らない仲の方が一気に交際までいけちゃったりするのよねぇ。」

「加えて相手はあのはるかよ。鈍感というか、恋愛という概念を分かっているかも怪しいわ。...まあ、身体はもう立派な雌みたいだけどね!」

「最後いらねぇよ最低だよやっぱ。」

 

薫子が悪いというより、相手がはるかなのが難易度を跳ね上げている要因だと小夜は語る。

 

少々旗色が悪い評価だが、それを覆す為のプラムリゾートだ。

意外にも電車で行き来出来るこのリゾートだが、色々なデートスポットが集まった地元では有名な複合施設である。

詳細は後に説明するが、心梅が絶対の自信を見せるに相応しいてんこ盛りリゾートだと言っておこう。

 

「ほ、ほな行こか...?///」

「うんっ!」

 

仲良く並んで移動を開始する薫子たち。

追い掛けようと小夜たちが物陰から出ていこうとした、その時。

 

「あぁん?」

「おや、奇遇ですね。」

 

道行きを塞ぐように、二つの黒い影が薫子たちの前に現れた。

 

()()()()()()()()()()()()!?」

「な、何でおんねんっ!?」

 

見知っていても今は警戒せざるを得ない、エノルミータのベーゼとレオパルト。

その正体であるうてなとキウィの姿がそこにはあった。

服装も黒基調だからか、私服からして闇堕ち感がすごい。

 

「デートに決まってんだろひんにゅーがよぉ。」

「知らないのですか?今このプラムリゾートでは"ミラクルみみる"とのスペシャルコラボを開催中なのです。アトラクションに加え貴重なグッズまで売り出されているというのに、見逃せるはずがないでしょう?」

「どうしよう二人ともすっごくいつも通りだ...!」

「闇堕ちして何で趣味嗜好まったく変わってないんやムカつくなぁ!?」

 

敵になった割に相変わらずな様子に毒気を抜かれかけるも、直ぐ様気を引き締める薫子。

お互いにトランスアイテムを取り出し、一触即発の様相を呈するが...。

 

「ストぉぉ~~~っっプッ!!!!」

「...?」

「はるか...?」

 

両者の間に割って入り、大声を上げるはるか。

呆気に取られるうてなたちに笑顔を向けて、はるかは薫子のトランスアイテムを鞄に戻させる。

 

「今日はお休みで、遊びに来ただけなんでしょ?だったら止めようよ。戦うのはまた今度で!」

「...ふふっ。ええ。今はその方が好ましいですね。」

「はぁ...はるかは優し過ぎや...。」

 

悪さをしないなら戦う必要はない。

無用に傷つけたくはない。

今も昔も変わらない優しさで、はるかはその場の激突を防いだ。

文句を言いつつ、薫子も僅かに笑みを見せている。

 

「そうだ!せっかく会えたんだし、一緒に回ろうよ!」

「おめぇアタシとうてなちゃんのらびゅらびゅデートをジャマする気かこらぁ!?」

「このあほに賛同すんのは不愉快やけどウチも嫌や!せっかく二人きり...な、何でもあらへんとにかくダメやそれはっ!///」

「......はぁん?」

 

仲良く遊ぼうという提案に吠えるように反対したキウィだったが、同じく異を唱えた薫子の様子を見て何やら思案顔。

やがて非常に意地悪な表情を浮かべて、うてなに耳打ちを始めた。

 

「...なるほど。花菱さん、そのご提案ありがたく受け入れましょう。」

「ほんとに!?」

「ええ。ただし...」

 

ニヤリと口端を歪めると、キウィを片腕で強く抱き締める。

もう片方の手で頭を撫でると、恍惚とした表情を浮かべるキウィ。

その様を見せつけるようにして、うてなは二人に微笑んだ。

 

「ご注意願いますよ。私たちの愛し合っている姿に嫉妬しないように、ね。」

「っ...ナメ腐りおって...!」

 

彼女たちの心変わりの理由は明白だ。

薫子の反応に()()()()()()()()()()()()()()と気付き、その楽しみを邪魔してやろうという魂胆なのだ。

奥手そうな薫子の前で大胆にいちゃつき、不快感で思い出を塗り潰してやろうという邪悪な思い付き。

怒りのまま拒否しようとする薫子を、()()()()()()()()()()()

 

「んみぃぃ!?!?///」

「なんのぉ!仲良しならあたしたちだって負けないよっ!ね、薫子ちゃんっ!」

「んみ...みみ...んむゅ...///」

「......ほらねっ!」

「いや気絶しかけてますよねそれ?」

 

はるかの天然と薫子のピュアハートにより、ここに善と悪の"ダブルデート"が成立してしまった。

意気揚々とリゾートに入っていくはるかたちだが、見守る真珠たちは気が気ではなかった。

 

「どうすんだあれ!?」

「知らないわよ!というか、小夜あんた気を確かに持ちなさいよ...?アイツら変になってるだけで、元に戻ればきっとまたあんたにべったり」

「ぅ...うてキウキタコレーー!!///」

「あーもう嫌この変態リーダー!?」

「真珠、心配するだけ損だぞ...。」

 

恋人二人の変貌振りにショックを受けるかと思いきや、推し同士のイチャコラに昇華して大喜びである。

逞しくなった小夜に心底呆れて疲れ果てつつ、たまネモは重い足取りでプラムリゾートを進んで行くのであった。

 

――――――――――――――――――――

 

さて。

波乱のスタートとなった薫子のデート大作戦だが、ここからは舞台となるプラムリゾートについて説明しつつ、道行きで発生した様々なイベントを見て行きたいと思う。

 

プラム、つまり梅をモチーフとした意匠が示す通り、この複合施設は心梅の希望を強く反映したものとなっている。

 

どっかの変態とは違い、善良でまともな心梅が打ち立てたコンセプトは"老若男女が楽しめる普遍の楽園"だ。

仰々しい言い方だが、要は"ファミレスみたいに1つは好きなもの、楽しめるものがあるように作った"ということらしい。

 

リゾートには大きく分けて3つのエリアが存在しており、順繰りに巡って行けば何かしら好みに合う場所が現れるという寸法。

人によっては1エリアで日の大半を過ごしてしまうこともあるらしいが、薫子たちはとりあえず全てを周るつもりのようだ。

 

「おっきい観覧車だねぇ~!」

 

そういうわけで、最初にやって来たのは"アトラクションエリア"。

詰まるところ、遊園地の区画である。

富◯急とかよ◯うりランドとかが頭に過る、定番中の定番な雰囲気の遊園地。

 

勿論、愛のお泊まり部屋になるお城などはない。

非常に健全。悪く言えば地味。

豪華ではあるが意外性はない、遊園地らしい遊園地。

と、どこかの痴女は妹の仕事を辛口評価している。

お前の好みの問題じゃねーか。

と、思っても言わないのが大人の対応ですよね。

 

「うぇぇ~~い。」

「あばばばばばば!?!?」

「きゃーー!!」

「あかん何も感じへん...職業病や...」

 

彼女たちが乗るのも、当然定番過ぎるアトラクションたちだ。

最初に乗ったのはFUJI◯AMAもかくやという気合いの入った絶叫ジェットコースター。

楽しそうにしているのはカップルの片割れだけで、うてなは女王様キャラをかなぐり捨てて失神寸前。

薫子に関しては普段の高速飛行に慣れ過ぎた結果、ジェットコースターの恐怖と興奮をまったく感じないようになってしまっていた。

二人とも違う意味で目が死んでいる。

初手から色々と残念なダブルデートである。

 

「ふ、ふふ...所詮は作り物...この私が恐れるはずgぎゃあぁぁ!?!?」

「えへへ...いいよぉうてなちゃあん...もっとつよく、ギュってしてぇ♥️」

「このこんにゃく食べてもいいのかな!?」

「落ちてるもんも吊るされとるもんもあかんよ、お腹痛なるよ。」

 

続いて入ったのはこれまた定番の、所謂お化け屋敷。

決して戦◯迷宮ではない。

ジェットコースターとは違いこれならそこそこに恐怖を感じるのだが、相変わらずホラーに弱過ぎるうてなとそれを理由にスキンシップしまくりのキウィ。

更に視点がやっぱりズレてるはるかのせいでいまいち緊張感が出ない。

 

だが、これはまたとないチャンス。

はるかが怖がればそれを庇い、漢もとい女を見せることが出来るはずだ。

気合いを入れる薫子。

そんな彼女たちに迫る恐怖の影。

いち早く気配を察し、さあ来い!と身構えるが。

 

「タコやんかあぁぁぁ~~っ!?!?」

「薫子ちゃんこれイカだよぉ!?」

 

現れたのは6:4くらいでタコではなくイカっぽい何かだった。

何故病院コンセプトのお化け屋敷にイカの化け物がいるのか。

いつもの薫子ならツッコミそうなところだが、タコっぽい時点で彼女には対応不能。

庇うどころかはるかに慰められ、女を見せる所ではなくなってしまうのだった。

 

「みてみてアルパカさん!モフモフでかぁいいねぇ!」

 

主にうてなの希望で足早にアトラクションエリアを離れ、次の区画に向かうことに。

 

第二のエリアは"ナチュラルエリア"。

動植物との触れ合いがテーマになっており、植物園と動物園、そして水族館が合わさったてんこ盛りな区画だ。

"触れ合うなら人間同士が一番ですわ!"とか言わないように。

 

シンプルにはるかの好きな変な植物やきのこの展示もあったりするのだが、最初に引き寄せられたのは動物との触れ合いパークだった。

独特の見た目なアルパカに、興味津々で撫でたり餌をあげたりするはるか。

かわいい×かわいいの光景に、さぞ薫子も癒されたはず。

 

『ベロォン』

「んべぐっざぁっ...」

「薫子ちゃんは食べ物じゃないよぉぉ!?」

 

残念、そんなことはなかった。

何を勘違いしたのか、1頭のアルパカが薫子の顔面をベロリと一舐め。

ベタベタの不快感とアニマルな悪臭が薫子を襲う。

 

「ふふっ。そんなに私に可愛がって欲しいのですか?卑しい雌ですね、まったく。」

「うてなちゃんやばぁ。ばぇ~。」

 

そんな中、うてなはアルパカの群れに囲まれ謎に君臨してしまっていた。

後にSNSで話題となり、プチバズりしたのは言うまでもない。

祝え。マジアベーゼ、悪の女王がアルパカをも支配し、世にも珍しいカワイイ悪の軍団が誕生した瞬間である。

 

「薫子ちゃんこれ!でっかいヒトデ見つけた!!」

「毒持ってへんの?色ヤバいやんそれ。」

 

触れ合いの流れで、今度は水辺の生き物ふれあいコーナーにやって来た一行。

自然大好きのはるかは非常に楽しんでいるようだが、薫子は一人戦々恐々。

 

海と言えば、あれ。

ギリ触れ合えそうなことといい、どうしてもあれを想像してしまい寒イボが立ってしまう。

だが見渡す限り、足が複数ある系はいないように見える。

安心しかけてドギツい色のヒトデをつついていた時だった。

 

「くらえ!めんだこばくだぁん!」

「タコやあぁぁ!?!?」

 

背後からメンダコを投げつけられ今日二度目のタコ絶叫。

ちなみにメンダコは購入したおもちゃである。

家族連れに笑われ取っ組み合いのケンカに発展したのは言うまでもない。

 

『ハッ。おもしれー女。』

「...。」

「サクッモグモグサクッサクッモグモグズズッ」

 

精神的にも体力的にも疲れた一行は第三のエリア、"ショッピングエリア"に移動した。

ここはある意味で小さな街だと思ってくれていい。

多種多様な売店にフード、カラオケやボーリングといった娯楽施設。

それらがずらっと並ぶ様は、このリゾートのコンセプトを体現しているとも言える。

 

その中で薫子たちが選んだのは、映画館だった。

どうやら切実に休みを取りたかったらしく、短めの恋愛映画を選び静かな時間を過ごすことにしたのだ。

 

映画と言えばそれなりにデートの定番。

一緒の映画を見て感動し、暗がりの中遠慮がちに手を握り合う。

そんな甘酸っぱい期待は開始5分で幻と消えた。

 

映画の内容がベタなのはまあいいのだが、どう考えてもはるかが楽しんでいるのは映画ではなくポップコーンなのである。

止められない、止まらないとばかりにサクサクサクサクと放り込まれるポップコーンたち。

手を握ろうにもポップコーンとのラブラブが過ぎる。

というか、塩だらけでばっちぃし。

 

やっと食べ終わったかと思えば直ぐ様爆睡を開始。

ほぼ幼児な行動に深く溜め息を吐いて、今度は隣で猫みたいに撫でられるキウィを睨み。

薫子は微妙な映画を、微妙な心地で観賞するのであった。

 

――――――――――――――――――――

 

「ほら、キウィさん。口をお開けなさい。」

「ふぁ~い、あ~ん♥️」

「ぬけぬけとイチャつきおってからに...」

 

時間は既にお昼過ぎ。

ポップコーンでは埋まらなかったお腹を満たす為、休憩を兼ねて食事をすることにした薫子たち。

向かい側の別席でカップルらしいやり取りをするうてなたちを見て、露骨に不機嫌を晒す薫子。

 

実は映画の後寄ったゲームセンターで、"はるかにUFOキャッチャーのぬいぐるみをプレゼントする"というチャンスイベントがあったのだが。

 

『ありがとう!前にネモちゃんにももらったことがあってね!』

 

という、まさかの応援側からの裏切り行為により台無しとなっていた。

不機嫌なのはたぶん、そのせいもあるのだろう。

 

「二人とも仲良しで楽しいねぇ!」

「いない方がもっと楽しいわまったく...。」

 

笑顔のはるかに小さな声で言い返す。

せっかくのデートを台無しにされたようで、当初の決意はどこへやら。

大層不満そうな薫子を見て、はるかはその表情を真剣なものへと変える。

 

「薫子ちゃん。もしかして、何か悩んでる?」

「...別に。」

「そうやって溜め込んで、こないだみたいなことになったらって心配なの。薫子ちゃん、いっつも無理するから...。」

 

ヴァーツが原因とはいえ、一時のすれ違いは薫子の悩みも要因だった。

二度と同じことを繰り返さぬよう、はるかは薫子の様子を常に気に掛けている。

突拍子もないタイミングでの誘いも、"何か話したいことがあるのではないか"と考えたからこそ、OKを出したのだった。

 

「今日ね、うてなちゃんたちを見てて、少し安心したんだ。」

「安心?」

「うんっ。二人とも悪い子になっちゃったけど...恐がりだったり、好きなものに真っ直ぐだったり。ちゃんとうてなちゃんとキウィちゃんだなぁって。」

「はるか...」

 

ほとんどが変わってしまっても、根っこの部分に変わらないモノを確かに残している。

それを知られただけでも、希望が増したように感じられた。

どうにもならないことなんてない。

そう伝えたくて、はるかは薫子に"大丈夫だよ"と声をかける。

 

「きっと全部何とかなるよ。だから、何か困ってたり悩んでたりするなら、あたしに話してみて?あたしの全力で、絶対薫子ちゃんを助けてみせるからっ!」

「......おおきに。でも...言えへんこともあるんよ...。」

「...そっか。」

 

はるかの優しさが薫子を。

薫子の誠実さがはるかを。

お互いの長所が逆にお互いの表情を暗くする。

 

「薫子...頑張って、諦めちゃダメよ。」

 

そんなほろ苦い様子を遠巻きに見守る小夜。

ラーメンをずるずるすすりながら、表情だけは至極シリアスに決める。

カップル二組とは違い、それなりにリゾートを楽しんでいたのは秘密だ。

 

「真珠には取ってくれなかったくせに!」

「状況が違うっつってんだろ!第一あれは妹ちゃんたちの為で」

「うっさいばか!浮気よ浮気!」

「こんなんで浮気になるかよっ!膀胱くらいちっちぇ器だなァ!」

「今日は漏らしてないっての!お化け屋敷もジェットコースターも耐え切ったでしょうが!///」

 

目的を忘れて痴話喧嘩勃発のたまネモ。

UFOキャッチャーの件は別の場所にも飛び火していた。

内容は非常にくだらない上にちょっと恥ずかしい部分も含まれている。

 

周りの目も気になるし、今日は薫子のサポートが自分たちの役目。

二人を窘めようとラーメンを完飲し、リーダーらしく威厳を出そうとしていると。

 

「あ、やべ。うてなちゃんめんご。過ぎとる、時間。」

「......な...ななななんですってえぇぇーーっ!?!?」

 

キウィがスマホを確認し、うてなにその画面を見せる。

次の瞬間、今までとは非にならない大絶叫を上げて彼方へと走り去ってしまううてな。

追走するキウィも爆速だ。

呆気に取られる薫子たち。

 

小夜はおもむろにスマホで検索をかけ、納得の頷きを見せる。

 

「みみるのコラボストア。()()()()()()()()だったのね。」

 

一番重要なストアの時間を失念していたうてな。

悪の総帥、渾身の大失敗。

今から走っても流石に間に合うことはないだろう。

何とも微妙な理由だが、唐突に決まったダブルデートはこうして終わりを迎えたのだった。

 

――――――――――――――――――――

 

「どれがいいかなぁ~...?」

 

なし崩し的にダブルデートが解散となった為、はるかと薫子は売店でお土産を探すことにした。

まだまだ帰るには早い時間だが、今は二人で盛り上がる気分ではなかったのだ。

 

気を紛らわせるように物色する品々。

やはり梅推しが強く、ガチな梅干しまで売っている。

薫子が心底いまいちな表情でそれらを眺めていると、はるかが袖をクイクイと引っ張って来る。

 

「これなんかどうかなぁ?」

「あん?...はぁ。」

 

笑顔ではるかが見せてきたのはど真ん中に赤い点、もとい梅干しが配置された白Tシャツだった。

よく見ると下に海苔文字で"プラムリゾート"と書いてあるように見える。

 

「いや白飯着とるんか。誰が着るんやそんなん?」

「あきほとか似合うかなぁって...」

「あんた妹を弁当箱にするつもりなん?却下や却下。」

 

友人の誰かなら敢えてスルーするのもありだが、三つ子ちゃんが犠牲者となれば話は別。

関西の血を滾らせ的確にツッコミつつ購入を阻止する。

不満そうにするはるかが"じゃあ~..."と続いて出してきたのは、これまたトンチキなTシャツだった。

 

「"男は黙って梅干し!"かっこよくない?!」

「三人とも妹やろ!お土産感もゼロやし無しや無し!」

 

筆文字で書こうが意味不明である。

今時男とか女とか、面倒な団体に絡まれても知らないからな。

 

意固地になって三着目のTシャツを探すはるかを見て、薫子は溜め息を吐きながらスマホを操作し始める。

3分程して、納得したように頷く薫子。

 

「ここアカンわ。あっちやあっち。」

「えっ、か、薫子ちゃん?」

 

大胆にもはるかの手を取り、今いる店を出て別の場所へと向かって行く。

少し歩いて辿り着いたのは、先ほどとはまったく違う有名なキャラクターとのコラボグッズを販売してるお店だった。

 

「わぁ!これなつながよく見てるやつ!こっちはみふゆが遊んでたおもちゃの!」

「あきほちゃんはウルトラマムが好きやったやろ。子どもは下手なご当地グッズより、こういう好きなもんが何より嬉しいんや。」

 

棚には子どもたちに大人気のキャラクターたちがぬいぐるみ、文房具、フィギュア等多岐にわたる種類で陳列されている。

妹たちの好みを思い出しながら、予算とも相談しつつベストなお土産を薫子は選び出していった。

 

何でもないようにオススメの物をピックアップする薫子を見て、はるかは密かに心が温まるような、不思議な感覚を感じるのだった。

 

「ホントにありがとう薫子ちゃん!選んでもらった上に、お金まで手伝ってもらっちゃって...。」

「気にせんでええよ。今日はうちが誘ったんやし、ちびちゃんたちが喜ぶなら何よりや。」

 

ベンチに座り、購入したお土産を確認する二人。

薫子のフォローが光り、無事それぞれにいい物を購入出来たようだ。

 

「薫子ちゃんはほんっとーに優しいよね!」

「人によるやろ。優しい人に優しゅうしたるんは普通や。」

「ふふっ。それが優しいんだよ。...」

 

ただ普通のことだと謙遜する薫子に、はるかはふと彼女と出会ってからの日々を思い出す。

魔法少女の勧誘を断られたこと。

自分を心配し、結局魔法少女になってくれたこと。

危ないことや悲しいこと、色々なことがあって。

それでもいつも側には薫子がいて、いつも支えて助けてくれた。

 

強くて、優しくて。

だからこそ心配で、とても大切な友だち。

一緒にいるだけでポカポカするその温かさを胸に、はるかは普段は言えない気持ちを伝えることにした。

 

「あたし、薫子ちゃんに会えてよかった。薫子ちゃんがいてくれたから、今日もこうやって笑顔で過ごせてる。薫子ちゃんと一緒にいると、何だかそれだけで楽しくて幸せで。本当にありがとう、薫子ちゃん。」

「な、なんやの急に...っ?///」

 

まるで告白のように恥ずかしくて、でも偽りのない気持ちが薫子に伝わる。

高鳴る胸の鼓動。

もしや?はるかから...?

淡い期待は()()()()()()()()()()()()()()()

 

「だから、これからもあたしの親友でいてねっ!薫子ちゃんが一緒なら、あたし絶対に大丈夫だと思うんだ!」

「......親友...?」

「うんっ!相棒とも言うよね!」

 

はるかに悪気がないのは分かっている。

だが、それは何よりも薫子に現実というものを理解させる言葉だった。

 

いくら期待しても、待ってていてはこの想いは成就しない。

傷を恐れては、壁は壊そうとしなければ。

この想いに未来はないと痛感してしまった。

 

その痛みが、結果としてついに薫子に()()()()()を踏み出させるきっかけとなる。

 

「...嫌や。」

「えっ...?い、嫌...?」

「...親友なんて、嫌や。」

「っ...な、なんで」

「うち...ウチは...」

 

戸惑うはるかを真っ直ぐに見つめ、頭で物を考えるのをやめる。

紅潮する頬も潤んだ瞳も取り繕いはしない。

ただ想うままに、裸の心を今さらけ出す。

 

「ウチ、一番やないと嫌や...友だちよりも、家族よりも...誰よりもウチを、はるかに一番やって思って欲しいっ...うちが一番好きやって、そう言うて欲しい...!だって、だって...!ウチにとっての一番ははるかやからっ!はるかが、大好きやからっ!はるかに愛してるって、言うて欲しいんよっ!///」

「っ...!?///」

 

かくして、一人の少女はついにその想いを吐き出した。

その表情と言葉は、いくら鈍感で初な相手でも勘違いしようのない、心からの愛の告白であった。

 

動揺する頭にうるさくてしょうがない鼓動。

はるかは何とか言葉を捻り出そうとするが、働かない頭では満足に文を作ることも出来ない。

 

「ぁ...えっと...ご、ごめんぁ、たし...」

「っ...!」

 

そうして口をついて出た言葉が"最悪"だった。

ただでさえ不安でいっぱいの薫子の耳に届いた謝罪の音。

彼女が勝手にその続きを想像してしまうのは、仕方のないことだった。

 

「やっぱり...小夜が好きなん...?」

「え...?」

「いつも、小夜だけ特別扱いで...幼なじみってだけで、あないべったりしないやろ...っ」

「ま、待って、ちが」

「ええよ...分かっとる...あいつは変態やけど、優しくて頼りになって、うちよかよっぽどええ...分かっとるんよ...!」

 

ずっと抱えていた嫉妬心とも対抗心とも取れない本音を暴露し、その頬を涙が伝う。

かける言葉が見つからず、はるかはただ"違う"という一言さえ伝えられない。

やがて薫子は乱暴に顔を拭うと、無理矢理に作った笑顔をはるかに向けた。

 

「大丈夫や...うち、もう諦める...明日からは、またちゃんと親友に戻るからっ...こないなこと言うて、ごめんな...っ!」

「っ!?ま、待って薫子ちゃんっ...!」

 

たまらずその場から逃げ出すように離れていく薫子。

このまま行かせてはならない。

それだけを軸に必死に彼女を呼び止めようとするはるか。

見守っていた小夜たちもいよいよフォローに回ろうかと思案していた時だった。

 

「「っ!?」」

 

耳に響く爆発音。

ショッピングエリアの中心近くで、何かが炸裂したのが分かった。

 

――――――――――――――――――――

 

「全て...全て壊れてしまえばいい...!!」

「そだ~こわれろこわれろ~。」

 

休日の平和なリゾートを襲う悪の凶刃。

まさに悪者らしく咆哮するマジアベーゼの横で、気の抜けた様子で爆弾を投げ続けるレオパルト。

 

何故先程までリゾートを楽しんでいた彼女たちが、このような暴挙に出たのか。

ベーゼの大量に流す涙が悲しき理由を想起させる。

きっと並々ならぬ事情が

 

「みみるの限定フィギュアは事後通販がないのですっ!!こんな非情な世界、全て燃えてしまえばいいっ...!!(号泣)」

 

...彼女としてはそれ程の悲劇だったのだ。

別にまた予約取ればとか、フリマとかあるじゃん?とは言ってはいけない。

彼女は手間を惜しむ割に、自分自身で手に入れることにこだわる面倒なオタクであった。

 

楽しみにしていたフィギュアが手に入らないと知り絶望。

こうなっては八つ当たりで施設を破壊しつつトレスマジアを誘き寄せ、盛大にいたぶらなくては気が収まらないということらしい。

時間忘れてたキウィが悪いし、もっと言うと"予約自分で取れよ"とも指摘してはいけない。

彼女は今、すごくすごい悪の総帥。

倫理的正論など望むべくもないのだ。

 

「そこまでやエノルミータ...!」

 

そうしてしばらく理不尽な破壊活動に勤しんでいると、漸くマジアマゼンタとマジアサルファが飛び出して来た。

アズールがおらず落胆する気持ちに気付かないようにしながら、ベーゼはニヤリと獲物の登場を嗤った。

 

「随分遅い到着ですね。待ちくたびれて、周辺丸々木っ端微塵になってしまいました。」

「ベーゼ...!どうしてなの!?今日はお休みだって約束したのにっ!」

「どこに約束を守る悪役がいるんです?」

「黒焦げにしたるぜ~!」

 

突如暴れ出した理由を問うマゼンタだったが、その思いは悪には届かない。

レオパルトの銃弾が容赦なくマゼンタへ放たれるが、それは彼女の目の前で拳に叩き潰された。

 

「...ウチが終わらせる。手ぇ出さんといておくれやす。」

「さ、サルファ...?」

 

怒っているのとも悲しんでいるのとも違う、真剣で鋭い瞳で。

サルファはマゼンタを制しエノルミータの前に立つ。

 

「おや?どうやら遊んで欲しいようですね。」

「今日こそおっちねひんにゅー。」

「覚悟するはお前らや...!」

 

脚部のブースターを使い、真っ直ぐに突っ込んでいくサルファ。

機動力は確かに上がっているが、相手は遠距離攻撃のレオパルトにサポートも得意なベーゼ。

高速で迫るサルファにも余裕を崩さず、レオパルトの上方に投げた爆弾をベーゼの鞭が撫でる。

 

「迎撃させて頂きますね。」

「ぐっ...!?」

 

爆弾が生命を与えられたように変化する。

蝙蝠の翼を広げ、無茶苦茶な軌道でサルファ目掛けて炸裂していく。

咄嗟にシールドで防ぐも、漏れ出た炎が彼女のスカートや肩部分を焼いてしまう。

 

「そんなんで...!」

「というのもお見通しですが。」

「がぁっ!?」

 

怯まずに突進を再開すると、そこに待ち受けていたのは空中にも及ぶ設置型の地雷。

サルファを感知した瞬間連鎖爆発を起こし、獲物を派手に後方へ吹き飛ばした。

 

「サルファ...!?」

 

地面に叩きつけられたサルファに直ぐ様マゼンタが駆け寄り回復魔法による治癒を試みる。

が、いつもより治癒が遅い。

薫子の告白と今の彼女の無茶な戦い方が、マゼンタの精神を動揺させていたのだ。

 

「落ち着いてサルファ!今は一緒に戦わないと...!一人じゃダメだよ!」

「...ええんよ。マゼンタは、そこで待ってれば。」

「ま、待って...!?」

 

マゼンタが一緒に戦うように呼び掛けても、サルファはそれをまったく受け入れない。

先程と同じように突っ込んでいくサルファは多少回避はするものの、やはりベーゼたちの張り巡らせた罠にかかり確実に傷を負っていく。

あまりに無謀なその捨て身の行動に、それが全て自分のせいであるとマゼンタは結論付けた。

薫子を無用に傷つけ、自暴自棄にしてしまった。

 

「止めないと...!」

 

自分のせいでこれ以上彼女が傷つくのを見たくない。

マゼンタは魔法を使ってでもサルファを止めるべく死地へと飛び込もうとするが。

 

「待ちなさいマゼンタ。」

「っ!?あ、アズール...!?」

 

飛び立とうとした彼女の腕を掴んだのは、変身を終えいつの間にかやって来ていたアズールだった。

驚いてすぐ、サルファの元へ急ごうと力を込めるが、アズールは決してその手を離そうとしない。

 

「離してアズール!サルファを、薫子ちゃんを助けなきゃ...っ!」

「あなたはそうやって、()()()()()()()()()()()()()?」

「え...?」

 

予想外の言葉に力を失い、着地するマゼンタ。

アズールは彼女を立ち上がらせると、その顔を今まさにダメージを負うサルファへと向けた。

 

「よく見なさい。サルファはね、あなたが思っているような弱い子じゃないの。」

「だ、だって...あたしが薫子ちゃんの気持ちに気付いてあげられなくてっ」

「いいから、黙って。そして、目に焼き付けなさい。あなたを愛する女が、どれだけカッコいいのかをね。」

「っ...?」

 

促され見つめる先には、何度も爆弾を喰らい血を流すサルファ。

焼かれて、撃たれて。それでも絶対に立ち上がる親友の姿に、もう止めてくれと涙が溢れる。

だが、そうじゃない。

見なければいけないのは、そんな表面的な部分ではないのだ。

 

「んだこのひんにゅー...アホか、まじで。」

「流石に、つまらなくなって来ました。玉砕覚悟とは、どういう風の吹きまわしです?」

「ハァ...ハァっ...うちが...ウチが、終わらせたる...っ」

 

再び立ち上がるサルファは息も絶え絶えで、今にも崩れ落ちてしまいそう。

その姿を嘲笑うベーゼたちだが、彼女の瞳は未だ光を失ってはいなかった。

 

「いい加減、あんたのその姿は見てられんし...何より、そこのアホ含め戻ってもらわんと...アズールが、笑えへん...っ」

「はぁ?」

「アズールが笑えへんと、マゼンタも笑えへん...!」

「!...薫子、ちゃんっ...!」

 

血と共に吐き出した言葉は、ひたすらに真っ直ぐな"愛"そのものだった。

 

「あぁムカつくっ!何で恋敵の恋敵増やさなアカンねんっ!ウチフラれたんやぞっ!アホっ!くそがぁっ!」

「な、なに言ってんだコイツ...」

 

感情を爆発させいつものサルファらしい口調が戻る。

呆気に取られたレオたちを尻目に、その叫びは尚も続く。

 

「でも、でもなぁ!小夜はええ奴やっ!友だちやっ!友だちが笑って、それで大好きな人が笑ってくれるならっ...!その為に戦うんがウチの在り方や!マジアサルファはそういうヒロインなんやっ!だからっ...だから今日!ウチが全部終いにしたるっ!!それではるかを、笑顔にしたるんやぁっ!!」

 

自らの恋心や命でさえ犠牲にしても、必ず最愛の人の幸せを叶えてみせるという決意。

"献身"という愛情表現。

ヒロインとして、恋する乙女として。

薫子が出した結論がこれだった。

燃え上がる想いが彼女に更なる魔力を与え、ついにその拳がレオパルトの頬を捉えた。

 

「んべぇっ!?」

「っ...これは...!」

「ハァっ...!ハァっ...!」

 

ベーゼたちの目の前に迫るサルファ。

更に増大する魔力に、ベーゼはレオパルトを抱えて必死に距離を開こうとする。

輝きを放つサルファの身体。

彼女の純粋な想いに、ついにカルコスのトランスアイテムが応える。

 

真化(ラ・ヴェリタ)ッ!』

 

金色に輝く光の翼をはためかせ、"鋼鉄"を纏った天使が舞い降りる。

手足に装備された機械仕掛けのグローブとグリーブ。

動きやすいように極限まで布と装備を削ぎ落とされたスーツ。腰にブースターが装着され、頭にはイヤーガードとバイザーが付いていた。

電撃天使とも違う新たな真化形態。

"鋼鉄天使(シュトローム・アイゼル)"が誕生した瞬間だった。

 

「うふっ...ふふっ...うふふっ!すぅぅばぁらぁぁしいぃぃっ!マゼンタの次はあなたですかっ!暴れた甲斐があったというものですよっ!!」

「戻ったらケツ百叩きや、ベーゼ...!!」

「やられるのは趣味じゃないですねぇ!!」

 

狂喜乱舞するベーゼは昂る魔力で黒い斬撃を放つが、新しいサルファはそれを拳一振りで叩き割ってしまう。

鋼鉄の装備からエネルギーバリアが発生し、彼女の身体を薄く覆っていく。

ベーゼは先程よりも巨大な刃を生成し敵を切り裂こうとするが。

 

「効かへんなぁっ!」

「何ですって...!?」

 

刃は身体を傷つけることも出来ず、ただくっつくようにサルファに密着しているだけ。

鬱陶しい虫を払うようにして、刃は砕き折られた。

 

「今度はこっちの番や。」

「くっ...!」

 

両者共に翼を開き縦横無尽の空中戦を始める。

絶え間なく放たれるメナスヴァルナーも片手間に弾かれ、じわりじわりと押されていくベーゼ。

元々優れていたスピードに機械の力と頑強さを手に入れ、まさに鬼に金棒状態。

やがて紙一重で避けていた拳の一撃が、ついに僅かに悪魔の羽を穿った。

 

「うぐっ!?」

「ベーゼちゃんっ!」

 

墜落するベーゼを抱き止めるレオパルト。

大きく息を乱すベーゼを見て怒り心頭のレオは、真化してその巨大なアームを憎きヒロインへと向ける。

 

「堕ちろぉ!かとんぼぉー!!」

「それはとっくに攻略済やアホ団子!」

 

アームから放たれるレーザーもタイミングのくせと狙う向きを見切ったサルファには当たらない。

以前本気のタイマンをした時の焼き直し。

奇しくもあの時はサルファがおかしくなっていた。

しかし二人の命運を分けたのはその戦いがいかに心に刻まれていたかという点だ。

苦い敗戦の中で、確かに感じた仇敵への感謝。

その借りを返す時が来たと思うことで、サルファの心は更に燃え上がる。

 

「それに、今は避ける必要もないんよ...!」

「なぁっ!?」

 

動きを止めたサルファに炸裂するレーザービーム。

しかしそれは彼女の肌を焼くことも傷つけることも出来ない。

むやみやたらと連射されるビームを受けながら、サルファは右拳に魔力を集中。

ガントレットがみるみる内に巨大に変化していき、その身体をゆうに超える大きさとなる。

 

「まずいっ...!レオさんっ!?」

「あ、あぁっ...!?」

「くたばっても知らんからなっ...!!

くらえぇぇーーっっ!!!」

 

装備した全てのブースターを点火し、目にも留まらぬスピードで急接近。

地面目掛け、ビームで抵抗するレオをまとめて殴り抜く。

瞬間、震える大地と破裂したような閃光。

装甲が収納され、元のサイズに戻った拳の下には、通常形態に戻り気絶したレオの可愛くない姿があった。

その様子を汚い絨毯みたいだと吐き捨て、漸く果たしたリベンジの味を噛み締める。

 

「頭も根性も足りてへん...出直してこい、あほキウィ。」

 

いつかの意趣返しを終え、まずは一人とレオの変身を解除すべく近付くサルファ。

 

「っ!誰や!」

「ビッ!ビッ!」

「ヒロウ、ノダワ。」

 

気配を感じたサルファだったが、四方から突然現れた"ぬいぐるみ"に押し潰されるようにして抑えられ、一瞬動けなくなってしまう。

その隙に何かがレオとベーゼを回収し空へと飛び上がる。

 

「ちびっ子と人形か...!」

「クスクス。」

「アマイノ、ダワ。」

 

サルファたちを嘲笑うのはネロアリスとその相棒、もとい下僕のロボ子。

その頭上には既にアジトへと繋がるゲートが設置されていた。

 

「しもうた!?」

「次は必ず...もっとっ!もっと苦しめて輝かせてあげますからねぇぇ!!」

 

追い掛けようと空へ飛び上がるが時既に遅し。

ベーゼたちは相変わらずの捨て台詞を残し、さっさと退却してしまった。

 

苦虫を噛み潰したように悔しげな表情を見せるサルファ。

やがて疲れ切った様子で戻ってきた彼女を、小夜とはるかはそれぞれ違う心境で温かく迎え入れるのだった。

 

――――――――――――――――――――

 

「すまん...ウチ、あない啖呵切って、終いに出来へんかった...。」

「何で薫子が謝るの?あなたのその気持ちだけで私は嬉しいわ。大丈夫、私の愛は私が自分で取り戻してみせるから。」

「せや、ね...ウチが勝手に張り切っただけや。堪忍やで。」

 

夕暮れ美しいプラムリゾート。

傷を癒し、漸くゆっくりと会話が出来る状態となった小夜たち。

沈む夕日を眺めながら、まずは薫子が謝罪の言葉を口にした。

覇気のない雰囲気は、勿論うてなたちを取り戻せなかった無力感もある。

しかし、それが主たる要因でないことを小夜は知っていた。

 

「だから、謝る必要はないでしょう?それに...話さないといけないのは私じゃなくて、こっち。」

「わっわっ!?」

 

モジモジと背後に隠れ、らしくもない恥ずかしがり屋となっているピンクのくるくるを引っ張り、薫子の前に立たせる。

さっきもすぐ側で治療をしていたくせに、二人とも一言も会話をしなかった。

()()()()()のはあなたの仕事でしょうと、小夜は呆れた様子ではるかを小突く。

 

「あ、あのぉ...えっとぉ...あたし、その...」

「っ...」

 

相変わらず戸惑い躊躇って物を言わないはるかに、薫子は心労を深めていく。

 

"もう見ていられない"。

 

未だ距離を置いて見守っているたまネモまで苛立ち飛び出そうとした時だった。

誰よりも我慢の限界が来ていた小夜が再び二人の間に立つ。

 

「はっきりしない子ね!これ以上見てられないわ。ねぇ薫子、あなたは勘違いしているの。」

「勘違いて...何が...」

「はるかはね、私に()()()()()()()()()()()()って言ったのよ。」

「......は?」

「いぃやあぁぁぁーーーっっ!?!?///」

 

小夜の口から出た言葉の真意を測りかね、間抜けな音を返す薫子。

代わりに、まるで裸を見られたかのように顔を真っ赤にして発狂したのははるかだった。

リゾート内にも関わらずのたうち回り、周囲からは少々奇異の目で見られている。

 

「この子と初めて会った時、最初は友だちになってって言われたんだけど。その後すぐに"あたしもいもうとがいい!さよちゃんおねーちゃんになって!"って甘えて来て。お母様が身重で寂しかったみたいなの。」

「は、はぁ...?」

「やめて小夜ちゃんやめてぇ!昔の話だからぁ!あたしもう立派なお姉ちゃんだからぁ!!///」

 

彼女たち幼なじみの馴れ初めは薫子も聞いたことがあるが、まさかそんな関係だったとは。

黒歴史を暴かれ頭を抱えるはるかを見るに、作り話ということはないようだ。

たまネモもついでに驚かせる真実に、何となく薫子も小夜が何を言いたいのかを理解し始める。

 

「ほら、私が代わりに暴露してあげたんだから。後はあなた自身の言葉で伝えなさい。お姉ちゃんなんでしょ?妹じゃなくて。」

「っ...小夜ちゃんのいじわる...///」

 

言い辛かったところを完全にバラされて諦めがついたのか、はるかは真っ赤な顔のまま薫子に正面から向かい合う。

 

「さ、小夜ちゃんはその...昔から大人っぽくて、お姉ちゃんだなぁって感じで...ちょっと、あこがれ?みたいなあれで...ほめて欲しいなぁ~とか...その...だから、えと...す、好きとかじゃないよっ!!///」

「......そうなん?」

「そうなん!そうなんすっ!!///」

 

説明はド下手だが要は素敵な年上に感じがちのよくある"憧れ"というやつである。

同い年だがお姉ちゃんらしい小夜に、はるかは姉という定義を見出だしたわけで。

そこには甘えたいという欲求はあれど、恋愛感情はなかったわけだ。

これもある意味で小夜が人生2周目なことによる歪みと言えるだろう。

実際、中身は合算すると最早アラサーである。

 

「だから、そのっ...薫子ちゃんがあたしを、す...すす、好きって言ってくれて...びっくり、したけど...嬉しいような感じも、してね...?///」

「は、はるか...それって...!?///」

 

続く言葉は告白への答えだった。

諦めかけた夢が一気に目の前に現れる奇跡。

沈んでいた薫子の表情がパァッ!と一気に輝き、物語は見事なハッピーエンドへ

 

「でもやっぱりちょっといきなりはごめんなさいっ!!///」

「いやこの流れでフラれんのかあぁぁいっ!?!?」

 

辿り着かなかった。

渾身のツッコミがリゾート内を木霊し薫子が真っ白に燃え尽きていく。

人間って枯れるんだなと、小夜たちの無責任な感想がシリアス雰囲気をギャグ時空へと貶める。

 

「あ、待って待って違うからっ!薫子ちゃんいきなりがダメだって意味だよぉ!?///」

「......え?」

「あ、戻った。」

 

カラー漫画みたいに色がついた薫子の手を、はるかがそっと握り締める。

いい加減恥ずかしさに慣れてきたのか、饒舌になったはるかは更に言葉を紡ぐ。

 

「...あたし、薫子ちゃんのこと、ちゃんと考えるから!真剣に、たくさん考えるから!親友として、相棒としてじゃなく...あたしを一番に想ってくれる女の子として、ちゃんと見るからっ!だから...あたしとこれからも、一緒にいてくれないかな...?///」

「は、はるか...!///」

 

今はまだ答えは出せない。

でも、いつか必ずちゃんとした返事をしてみせる。

それまで待っていて欲しい。

拙い言葉は、それでも薫子の胸を打った。

互いに瞳を潤ませながら、その手を強く握り合う。

 

「ええよ...ウチ、待ってる!ずっと待ってるからっ!///」

「うんっ...ありがとう、薫子ちゃん!///」

 

ハグもキスもない、結局何の結論もないこの関係。

だが、確かに薫子の気持ちははるかへと届いた。

どこまでも奥手でピュアな親友二人を溜め息混じりに見守り、小夜は困ったように微笑む。

 

「ま、一歩進展ってとこね。」

「身を捧げるような愛が、友情を恋に変えた、ってか...。」

「どうしたのよ急に。ポエマー?」

 

たまネモも今日一日尾行した甲斐があったと一安心。

良いことを言ってまとめようとするが、そういえばと失念していた"何か"を思い出す。

 

「心梅センパイ結局来なかったわね。」

「めんどくなったんだろ?第一このリゾートとパイセンのデートプランなんて、ほとんど使えな」

「まさに純愛ですわねぇ...♥️」 

「「げぇぇパイセンいつの間にぃっ!?」」

 

壁に耳有り背後に心梅有り。

いいリアクションのたまネモをガン無視し、その視線は見つめ合うはるかと薫子へ。

実は監視カメラで一日中デートを観察していた心梅先輩。

趣向は違えど行動は同じの桃姉妹であった。

 

「これからが本番ですわよ、トレスマジア!」

 

最後に司令官らしい台詞を放ち、今回のデート騒動は終幕となる。

誰得な三角関係を乗り越え、絆を強く深めた魔法少女たち。

取り戻すべきヒロインは残り4人。

戦え!我等がトレスマジア!

負けるな!僕らのトレスマジア!

 

...追伸。

予想外の被害に流石に動揺した心梅。

大画面モニター無断利用の件をいいことに、存分にストレスをバカップルにぶつけることとなった。

トレスマジアはともかく、その他の仲は溝が深まるばかりのようである。

 

――――――――――――――――――――――

 

    ◼️□Next episode◼️□

「そうよね。あなたが私から離れるわけがないわ。ごめんなさい、ベーゼ。」




何です?えっちな展開がまったくなかった?
原作読んでなさい(暴)
世にも珍しいシリアス&クールなまほあこです。
用法容量を守ってご活用ください。
次回は4月に出します。
読了ありがとうございます!

I'll be back...!
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