例えばインテリビレッジの座敷童という作品のヒロインの座敷わらしが宇宙や並行世界を自由に操る運命操作能力持ちと判明してチゾメノザシキワラシというラスボスになったり。
そしてソースは分からないけど、とある魔術の禁書目録の構想の一つにはエイワスやコロンゾンのような人外キャラをもっと出す予定と聞きましたが本当なんでしょうか?
設定の名残りみたいな物として妖物と関わりがある闇咲逢魔や伝承では吸血鬼説があり、インデックスから人間が持つ魔力ではない歪んでいると評されたマダム=ホロス夫人、神裂火織が日本で対峙した山を呑み込む悪竜等が存在しますが・・・?
それを考えると禁書世界の昔の時代は人外が普通に沢山いそうですよね。
「摩多羅隠岐奈なのか・・・・?」
少年は傲岸不遜に世界全体に強く存在感を誇示しながら、椅子ごと宙に浮かんでいる『秘神』摩多羅隠岐奈を見上げる。
「我に色々言いたいことがあるのは察するが、まずは病院に行って出血多量で死ぬことを回避してくることを優先しろ。自分の身体は大切にだ。話はそれから聞いてやるし、自慢の右手で思いきり殴ってもいいぞ」
一人称を私から我に変更して、上条当麻と同じ高校生か、御坂美琴と同じ中学生くらいの年齢に見える少女の姿になった摩多羅隠岐奈に上条当麻は言いたいことが色々あったけど、自身が転がっているアスファルトの上に突如出現した『後戸』の中にオティヌスと一緒に吸い込まれた。
後戸の神である摩多羅神の『後戸』を通して送れられた行き先は、第七学区の病院。事件が起きるたびに怪我をした上条当麻がいつものようにお世話になっているカエル顔の医者のところである。
こうして上条は『秘神』と会話を録に成立させることなく、この場から無理矢理離脱させられることになってしまったのである。
感覚からして、『七星の剣』ではサーティーンデスは死んでないな。対魔神用として開発された魔術師の性能は伊達ではないということか。
「痛いな・・・・・。やっぱり、予想通りに『魔神』はオティヌス以外にもいたのか!」
摩多羅隠岐奈の予想通りに死神と名乗るサーティーンデスという魔術師は五体満足で生きていた。
だが、ダメージは多少通っているようだ。死の記号を『魔神』摩多羅神は持っていても、彼女の前身になった魔術師達、秦河勝を筆頭とした人間達そのものではない。摩多羅隠岐奈という生者でもあると金色の収穫者という術式が判断したから、そういう結果をもたらしたのだろう。
「その通りだ。『黄金』や超絶者がいる領域に手を届かせることができた、『魔神』を殺し得る牙を持つ死神よ。お前の『魔神』は何柱いてもおかしくはない、確実に複数いるという考えは正しいぞ。摩多羅神はその強さも含めて褒めてやる、光栄に思うが良い」
『秘神』は上機嫌だった。
上条当麻のために戦うシチュエーション自体に喜んでいるのもあるが、サーティーンデスが摩多羅隠岐奈の『後戸』という大抵の存在が足切りを喰らって戦闘の土俵に立てない、塩試合成立メーカーと呼べる術技対策を死神本人も知らない間に成立させていたから。
神々の死の伝承を再現する術式は、シンクレティズムこと神仏習合の化身と言わんばかりにあらゆる神様達の要素を持っている『魔神』摩多羅神に特攻というばかりに刺さるのは勿論のことだが、サーティーンデスの『後戸』から魔術師としての力を強制排出して回収して無力化しようとしたら、あらゆる神々の死因を内包することになって摩多羅隠岐奈が逆にダメージを食らうだろう。
それはさながら、背後に扉を開かれて『秘神』に敗北した博麗の巫女や白黒の魔法使いや氷の妖精や鴉天狗がリベンジマッチで生み出した摩多羅隠岐奈攻略法と似たようなモノだった。
とにかく、多数の神々の死の要因を魔術として使えるサーティーンデスという魔術師は、摩多羅隠岐奈という色々な神々を内包、習合している神様と相性が本当に良かったのである。
ただし、『後戸』を経由した絶対必中の術技とも言える謎の属性に包まれた術式を筆頭とした攻略されない術技を『秘神』は幾つも所持している。本体から切り離された分霊とも呼べる摩多羅隠岐奈は持っていない機能だが、『魔神』達がデフォルトで持つ『位相』操作による世界改変攻撃が、『魔神』は魔術サイド単独で殺せるということを証明しようとする死神の障碍として立ち塞がるが。
関係ない話になるが、摩多羅神の次にサーティーンデスの術式による攻撃が思いっきりぶっ刺さる神様を探すと、地獄の女神と呼ばれている『三相の女神』になるだろう。『秘神』と同じようにシンクレティズムの化身とも言えるからだ。
エレシュキガル、ヘカテー、ヘケト、ヌト、ヘリオス、アポロン、ミスラ、ミトラ、メタトロン、弥勒菩薩、アルテミス、セレネ、ペルセフォネ、デメテル、ヘラ、ユノ、ヘベ、ルキナ、エイレイテュイア、アフロディーテ、アテナ、メティス、アナト、アースティルティト、メドゥーサ、イシュタル、アシュタレト、アスタロト、イシス、イオ、オーディン、メルクリウス、ヘルメス、ルゴス、ルーグ、トーティタス、エスス、トート、トリスメギストス、リリス、リリトゥ、モルガン、モリガン、マルザンナ等の多岐にわたるこれらと同一視されて内包しているから。
中には摩多羅隠岐奈と習合している神様も存在していて、同じ肩書きも持っているから、『三相の女神』は『秘神』と同一視することもできるかもしれない。
「それはどうも・・・・・。『魔神』サマにお褒めに預かり光栄だよ」
椅子を消失させるのと同時に地上に降り立った摩多羅隠岐奈は大鎌を獲物しているサーティーンデスに対応するように、自身の頭の横の空間に展開された、小さな『後戸』から一振りの剣を抜き出した。
それは七星剣や黒い竜が意匠された倶利伽羅剣や草薙の剣等の摩多羅神に関係しているモノに由来する剣を一つに纏め上げた欲張りハッピーセットと呼べる無名の剣だった。
「喜べ、魔術師サーティーンデスよ。神殺しをした人間。常世神を討伐した秦河勝としての側面も出して、先達としても対応してやる」
サーティーンデスに向けて作成した剣を突きつけながら、そう言った摩多羅隠岐奈の目はどこか遠い懐かしいモノを見る目になっていた。誰も気づかない一瞬だけ。
はて・・・・・。『秘神』の目はサーティーンデスを通して何を映していたのだろう?
これは一部の限られた存在しか知らないかもしれない『秘神』の隠された過去。摩多羅隠岐奈の人間時代とも言えて、多数の人間達と一緒に彼女という神様を構成する材料になった転生者の遠い昔の記憶。聖徳王と再会したことで蘇った、秦河勝としての秘匿された事象。
「見て、かっちゃん。綺麗な花畑が辺り一面に咲いているぞ!」
この神様は本当に感性がおかしい。自分達を崇めていた人間達、大生部多を私が討伐しても気にしなかったから。普通、どんな神様だろうが己を信仰する者達が討伐されたら何かしらのアクションを起こすのだろうに。何故馴れ馴れしく懐いてきたのだ?
・・・・・もしかして、単に気づいてないだけなのか!!??私が軍を率いて常世神を崇める集団を弾圧したことを!!??
飛鳥時代。辺り一面に色とりどりの花が咲いている丘陵に彼女達はいた。彼女?彼?推古朝朝服と言われる服を着ている性別不明な人間とアゲハ蝶みたいな大きな羽を背中から生やしている一柱の神様がいた。
「常世神よ、かっちゃんとは言わないでもらおう。私には秦河勝という名前があるから、それで呼んでもらえないか?」
「でも秦河勝という名前は本当の名前でもないんじゃろ?翁と呼ばれていた人間よ」
「何故分かったのだ?」
「常世神の余にかかれば、お主の考えることは丸見えじゃ!!ただ、性別や年齢を筆頭とした分からないことが多いのが残念だのう」
秦河勝という名前を名乗って聖徳王の近臣として活動している転生者をからかいながら、一緒に花畑を見て楽しんでいる神様の正体は常世神だった。幼さと成熟さが違和感なく同居しているせいなのかチョロそうな雰囲気を纏っているが。
後の世の歴史では世を乱す邪教の神であると認定されて、秦河勝に討伐された神様であるが・・・・・常世神といえども、神様が何故現し世に普通にいるのだ!?ここはとある魔術の禁書目録世界ではないのか!?と狼狽えるところだが、秦河勝と名乗る翁信仰の元になった転生者は狼狽えなかった。理由は簡単。そういう世界とはすぐに気が付かなかったから。
そもそも禁書世界の人外は、神の力や『悪魔大王』と同じように別位相に住んでいると思われるが、フロイライン=クロイトゥーネや吸血鬼と言った人外の存在も現世に普通にいるのである。それを考えると魔術を極めて規格外の神になった『魔神』以外の神様達もいてはおかしくはない。『僧正』がなろうとした仏やギリシア神話の夜の女神ニュクスが良い例になるかもしれない。
これを考えると東方Projectの世界に転生したのではないか?と転生者が勘違いしてしまうのも仕方ないだろう。聖守護天使エイワスや大悪魔コロンゾンと出会ったら、とある魔術の禁書目録世界と早く気がつくことができたかもしれないが。
『なぜ常世の神を殺さない?』
ここ最近、頭の中に何者かの声が響いてくるようになってきた。昔からうっすらとノイズのように聞こえていたかもしれないが、常世の神と出会ってからより鮮明に聞こえるようになってきた。これはどういうことだ?聞き覚えがあるような、ないような声だが・・・・・。
「河勝。どうしたのじゃ?辛いことがあれば、余に言ってもいいのじゃぞ?」
「それはどうも。ただ、下手したら常世の神である貴方様より長く生きていますから、私はいつも世の中に不満を抱えていますよ」
常世神の問いに、後の世に『秘神』と呼ばれる神の材料に成り果てる、翁信仰の元にもなった人間は素直に答えを返す。
この時代には存在しない摩訶不思議な妖術、近代魔術を使える渡来人として、前世の魂の故郷とも言える日本にやってきて、今は秦河勝と呼ばれている転生者はいつも不満を抱えていた。理不尽な世界そのものに向けた怒りの感情。差別を無くしたい、誰もが笑って暮らせる平和な世の中を作りたいという渇望を溜め続けていた。今の時代だけでもそんな願望は生まれてきただろうが、生きるのも精一杯な人間達が多い昔の時代という環境なことにも転生者の渇望の強さに拍車をかけていた。
そんな理由で基本的にいつも不満を表す顔がデフォルトに見える秦河勝であった。常世神だけでなく、聖徳王を筆頭とした各関係者にも心配されるほど、表情が固定されていたのであった。
それでも不満以外の表情を周りに見せることはできたが。
現に常世神にかっちゃんでなく、河勝と呼ばれたことに感謝を示す柔らかい笑みを浮かべているではないか。
「それにしても河勝は優しいのう。大生部多達を殺さずに生かすという選択肢を取るとは、この常世神は感謝するのじゃ!」
「優しくなんてありませんよ。遣隋使で随の皇帝に喧嘩を売るに等しい暴挙をやらかした皇子様ほど物騒ではありませんが、これでも戦闘狂の気質がありますし、『一般的』に考えたら記憶を消して作り変えることは人を殺すことと同様に酷いことに当てはまると思いますが?」
「いいや。誰がなんと言おうと常世神が保証するのじゃ。秦河勝は優しい人間と!!」
繰り返す言うが、転生者は世の中に不満を強く感じていた。幾度も挫折の経験をしてきたが、そのたびに胸の中に刻みつけていて、神様を誕生させるほどの強い信念を糧に人生の目の前に立ち塞がる障碍を乗り越えてずっと生きていた。近代魔術の使い手とも言えても、超絶者や『魔神』といった存在と同じように魔法名は所持していないが。
そもそも魔法名とは近代以前の文化ではないので古い時代に存在した魔術師達には無いのは当たり前だろう。代わりに信念や目的はあるが。
「ようやく認識できる時期になったか」
気がついたら暗黒の宇宙と呼べる不思議な世界にいた。
この世界を私は知っている。日本の四季を中心とした色々な場所を映す『後戸』も。空間を埋め尽くすように展開されている北斗七星を中心とした星々や銀河も。自身の目の前で尊大そうに椅子に座りながら、黒いもやみたいなベールで顔を隠している人物も。
「低次の自己でも流石は私を構成することになった人間だな。もう一人の自分、高次の自己、秦河勝の成れの果てとも呼べる摩多羅神が姿を現すこの状況でも動揺しないとは」
秦河勝の目の前に時系列を無視して現れたのは摩多羅隠岐奈であった。幾らなんでも『魔神』という全能に近い存在とはいえ、ここまでの無茶苦茶な芸当ができるのかと思わざるをえないが、彼?彼女?は目の前にいる存在をそういうものだと思い込んで勝手に納得していた。
「ここはお前の夢の中だ。『秘神』の力を持って、『後戸の国』経由で未来から過去に介入してきたのにすぎん」
そうか、私は神を造ることができたのか・・・・。目標を達成することができたのか。
「そうだ、お前の願いは叶う予定だ。未来の世界でな」
『秘神』は秦河勝の思考を読むように一方だけが話すという形で会話を成立させていた。かつての自分だから能力なしでも、考えることが手に取るように分かるのだろう。
「だがな・・・・・もう一つの願い、常世神を助けたいという願いは残念ながら叶わんぞ」
その言葉を聞いた私はもう一人の私に詰め寄ろうとしたが、できなかった。身体をどんだけ動かしても摩多羅神との距離を詰めることができない。無限、AINSPH、00の数を象徴する魔神達を内包することができる世界では通常における一歩がはるかに遠い。どれだけ移動しても髪の毛一本の距離にも満たない。
「諦めろ。ここは隠世と近い性質を持つ世界だ。ただの人間ではどうしようもならん。基本的に自由に動き回れるのは『魔神』達か、『魔神』に匹敵するような特殊な存在か、この世界の主の私が許可を出した者のみだけだ。今からお前が『後戸の国』を自由に動ける性質を持たせるから待っておけ」
『後戸の国』を自身に動けるようになった転生者がしたことは、単なる武器としても使っている霊装の剣を利用した魔術だった。摩多羅隠岐奈の許可なしでも『後戸の国』を自由に歩き回れるように、今の状態を基準点として固定するという行為。
「幻想殺しの使い方が上手だな。コロンゾンが管理している深淵を踏破していないとはいえ、並の魔術師達より遥かに腕がある」
秦河勝は、あらゆる時代・神話の転換点に色々な器に宿って現れるという特徴を持つ、幻想殺しが機能の一つとして宿った七星剣という霊装の所持者であった。
「答えてもらおうか。常世神が死ぬとはどういうことだ?」
破邪の力だけでなく、幻想殺しの力が籠もった七星剣を突きつけられても、黒いもやのようなベールに覆われた顔から唯一見える『秘神』の口の形は笑っていた。
「聡明なお前なら分かっているだろう。常世神の力が段々と弱っていることを」
「確かに常世神は初めて出会った時から神と思えないくらいに弱っていたように見えた。だが私は何もしてない。『妖精化』の術式も打ち込んでいない。なのに何故死ぬことになるのだ?」
右手で握っている七星剣を囮にするように摩多羅神の土台になった秦河勝が天狗や十字教とも関係があることを利用した独自の『妖精化』の術式を速攻で組み立てながら、彼?彼女?は『秘神』に訪ねる。
「ノヴィコフの首尾一貫の原則だよ。
左手から飛び出ている光の杭が消失していく。秦河勝は悟ったのだ。
『妖精化』の術式は通じないし、仮に目の前にいる神に『妖精化』の術式を叩き込むことが成功するという奇跡が起きても妖怪クラスの強さにしかならない。それも三九式座敷童ことチゾメノザシキワラシという運命を自由に操る妖怪レベル。
公式クロスオーバー作品でチゾメノザシキワラシの力を持っている座敷童が『魔神』オティヌスより格下扱いされていたことを知っている者から見たら大きな弱体化だろうが、それでも対象の運命を固定化させる摩多羅隠岐奈の引力は強かった。
そしてダメ押しのように『魔神』でありながら前人未踏の域に足を踏み入れた者の姿を、椅子から立ち上がった摩多羅隠岐奈が秦河勝の目の前で晒す。
星を操り障碍統べて全て隠す『四色』の麗人と呼べるかもしれない未踏級としての姿を。
透明にも『白』にも見える『後戸』が摩多羅隠岐奈の前方の空間にに展開されたと思うと四季を模した四色に輝く光のオーラが『秘神』を包み隠すように放出される。星々のように光り輝いている四色のオーラを足していくと一つの『白い』光のオーラに変化するだろうと思わせる。
「だがな・・・・・誤魔化しようはある」
自分自身という人生最大の障碍が立ち塞がっても目の光が諦めの色に染まらなかった秦河勝に神託が授けられた。
「また抜け出したのか。常世神は私に討伐された形式を取っているから、人目につかない方が嬉しいんだがな・・・・・」
綺麗な星空が見れる夜の花畑の丘陵に常世神は立っていた。
「のう・・・・河勝。星空は好きか?」
左手には常世神専用の『妖精化』の術式が籠もった光の杭、右手には七星剣を器とした幻想殺しを持ってきた秦河勝に対して、常世神は問いかける。
「・・・・・好きですよ。星空は」
翁面に隠された秦河勝の表情は見えない。
「余はお主の手によって死ぬ運命じゃろ?」
冷たい風が星々の光に照らされた夜の花畑を揺らす。
常世神のアゲハ蝶のような羽と秦河勝が着ている推古朝朝服も夜風によって揺れる。
「・・・・・・」
常世神の問いに彼とも呼べるし、彼女とも呼べる性別不明の転生者は何も答えない。だが、その装備と無言が常世神に対する答えになったようだ。
「お主に殺されるなら余は満足じゃ。秦河勝という人間と出会えて良かったと思っているからの」
「常世神よ。短い間ですが、私も貴方様と出会えて良かったと思っていますよ」
一緒に夜空一面に広がる綺麗な星々と花畑を見ながら語り終わった時が常世神の最後だった。
常世神は何の抵抗もせず、いや・・・・できないほど弱っていた彼女は専用の『妖精化』の光の杭で心臓の位置を正確に貫かれて倒れた。
ただでさえ、日に日に神と呼べない領域まで弱体化していく彼女。妖精として矮小化していく常世神を見下ろす秦河勝は追撃と言わんばかりに幻想殺しが宿った七星剣を振り下ろして、現し世から消し去ったのであった。
どんな形であろうが、神は神。ここに神殺しという偉業がなされたのだ。太秦は神とも神と聞こえくる。常世の神を打ち懲ますも。と後の世に語り継がれるであろう。
夢の世界経由で上条当麻をゼロから作り上げた幻想郷に招待した日にて。
「ねえ、私とあなたはずっと前に会ったことがある気がするの。どうしても人違いと言えない。何か知らないかな?」
「何度も言っているだろ、人違いと。摩多羅神という私とアゲハ蝶の妖精であるお前とは、そこまで深い縁はない。茶飲みの邪魔をするな、さっさと失せろ」
強い語気にショックを受けながら去っていく一人の妖精の背中を見る摩多羅隠岐奈に語りかける者がいた。ネフテュスである。
「相変わらず常世神の成れの果ての妖精に冷たいわね。いつまでも隠し通せると思うの?」
娘々と同じ古参の『魔神』ネフテュスは、
「隠し通します。私であって摩多羅隠岐奈でない人間。秦河勝と呼ばれた人間との約束ですから」
秦河勝と摩多羅隠岐奈が常世神に対してやったことは、聖守護天使エイワスが『人間』アレイスター=クロウリーの子供のニュイ=マ=アサヌール=ヘカテ=サッポー=イザベル=リリスを『火花』による死の運命から救うため、自分がいる世界に避難させる行為と似ていた。
常世神は秦河勝によって死ぬ。これは絶対的な事象。だが、その先は確定されてない。幾らでも誤魔化しようがきく。幻想殺しを利用することで妖精として固定した後、アゲハ蝶の妖精になった常世神を現し世から『後戸の国』に避難させることで、厳重に保護していたのだ。幻想郷ができるまで。
「それに・・・・・恥ずかしいことですが、気まずいです」
聖徳王と再会するまで、秦河勝が摩多羅隠岐奈の一部の記憶を封印していた理由はこれもあるかも知れない。個人的な都合上、常世神の成れの果ての妖精と顔を合わせづらいのだ。
アゲハ蝶の妖精に常世神としての記憶と力を完全に取り戻させたら、秦河勝と同一視できるけど、完全には同一視できない摩多羅隠岐奈としての自分になんて言ってくるのか分からなくて。
ネフテュスは呆れ果てた。明確に性別が女性と断言できる摩多羅隠岐奈は、確かに秦河勝と同一視できないだろう。だが、特定の相手と向き合うことになるとツンデレ行動を取ったり、今回みたいな言動をするようになる。性知識が全くない娘々と別方向に問題がある神様だ。
「・・・・・もしかして上条当麻を拉致同然に夢の世界経由で幻想入りさせた理由は、秦河勝関係の過去を晒してアドバイスを貰うため?」
「そうです・・・・・。『魔神』の理解者という肩書きを持つ上条当麻なら、常世神の成れの果ての妖精との付き合いかたをアドバイスして貰えると思って、一時的に幻想入りさせました・・・・・」
茶屋で口調を変えた摩多羅隠岐奈の隣の席に座りながら、一緒にお茶を飲むネフテュスは考える。もしかして最初に『理解者』を手に入れたオティヌスに嫉妬していたのは、『秘神』自身でも知らない内に常世神との関係に重ね合わせていたのもあったのか?と。
(娘々と同じように私も摩多羅隠岐奈が可愛く見えてきたわね)
上条当麻と幻想郷という『枠』ができてから、色々な顔を見せるようになった『秘神』をネフテュスが可愛い生き物を見るような目をしていることを、摩多羅隠岐奈は気づいていなかったのであった。
禁書風に摩多羅隠岐奈の『後戸』を攻略する屁理屈を生み出すことに成功しました・・・・・。
この作品を書いている最中からずっと思っていましたが、似たような攻撃をするFateのAUOのゲート・オブ・バビロンより摩多羅隠岐奈の『後戸』の方が強さはともかく悪質さは上だと考えています。
対策しなければ、力を隠される、回収されるという足切り戦法をされて戦闘の土俵に上がれず即敗北。対策できても絶対必中とも言えるダイレクトアタックをその気になれば出来るから作劇的にも扱いにくい!!