とある後戸の摩多羅神   作:一般通過龍

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摩多羅隠岐奈のあらゆるものの背中に扉を作る程度の能力は応用性が高い能力で、その気になれば一歩も動かずに相手を絶対必中の攻撃で仕留めることが出来る。そして、摩多羅神は『謎』が多い『秘神』である。

これをとある風に解釈して能力を再現したら、オッレルスの魔術の『北欧玉座フリズスキャルヴ』や削板軍覇の能力みたいな表現不明、理解不能、説明不能な応用の幅が広い、謎魔術が出来ました。



秘神の帰郷

ほう、鎌倉の大仏や寺社に一目惚れに匹敵するくらいの衝撃を受けて、日本で再起を図るか・・・。目標が目標だけど好感が持てるな。加護を授けたいが、それをやったら『人間』は怒るだろうな。

 

摩多羅隠岐奈は新天地を求める心が発生しないほど、『隠世』生活をエンジョイしていた。『魔神』摩多羅神を構成する材料になった人間達に引きこもり生活万歳!な人間が紛れ込んでいたのか、それとも後戸という世界に隠される『秘神』故に『隠世』を気に入ったのか。

 

とにかく摩多羅隠岐奈という一柱の『魔神』は理想送りが生まれる余地がないほどに今の現状に満足していたのである。そもそも『後戸の世界』という、どれだけ暴れても迷惑や問題をかけない、自分だけの世界を最初から持っている故に。

 

ただ単に『秘神』らしく自身の存在を隠せる場所があったら、それで彼女は満足するのだ。

 

「摩多羅隠岐奈よ。最近、あの『人間』をよく観察しているのではないか。どこが気に入ったのか教えてくれないかのう?」

 

『隠世』の位相から色々な人間達の生活を見て楽しんでいる。そんな摩多羅隠岐奈に木乃伊ミイラの外見をした魔神が話しかけてきた。同じ仏教系仲間の僧正だ。真のグレムリンに所属する魔神達の中では摩多羅隠岐奈と交流が多い方である。

 

ただ、僧正と違って摩多羅神は神仏習合や本知垂迹ほんじすいじゃく等で色々な神話、宗教の神々が混ざっているから、純粋な日本仏教系魔神とは言えないが。

 

「僧正か。事実もあるが、誹謗中傷や差別を受けながら健気に頑張っているところが被差別民の神として好感覚というところだな」

 

位相によって発生する火花を嫌っているのを分かっている上で、頑張っているアレイスター=クロウリーに神の加護を投下だぁ!とやりたいくらいにね。

 

「ところで、門外漢故に『人間』が熱心になっている科学の良さが儂には分からないが、摩多羅隠岐奈はどう思っている?」

 

「『私』個人としては科学が発達するのは構わないし、好ましく感じるよ。出来れば科学という光で差別をなくしてほしいと思う。まあ、『秘神』としての私は秘匿されしモノを暴いて解析する科学は好きじゃあないけど」

 

「お主は人間達に求められた神としての『自分』に忠実じゃのう。たまには素直にをさらけ出してもいいんじゃぞ。摩多羅隠岐奈よ」

 

「存在するだけで世界に影響を与える『魔神』でもあるのを分かっているくせに、我欲をさらけ出せと?冗談はよしてくれ。そんなことをしたら世界が壊れてしまうし、私は今のままで充分に満足しているよ。そして、欲に塗れて悟れなかった破戒僧と人間達に勝手に定義された『事実』を本能レベルの領域まで押し上げて、望まれた通りに迷い仏ロールプレイをしている僧正には言われたくないな」

 

「カカッ、これは一本取られたのう」

 

 

 

精巧な仏像が造られるところを見たことで、職人気質で手先が器用な日本人を評価し、日本という景色に焦がれた『人間』が学問と技術を取り戻すというお題目の下で、第二次世界大戦後の日本の土地で学園都市という科学の街を築き上げるところを『隠世』という場所で仏教に関する二柱の魔神達が仲良く会話しながら見ていた。

 


 

闇。一寸先も見えない。それどころか、眼球を飛び越してこちらの意識を圧迫しかねないほどの濃厚な闇が一面に広がっていた。だが、そこに存在する者に臆する様子はない。まるでこれが世界の自然の在り方で、どこかの誰かが『光あれ』と囁かなければこのままだと告げているようだった。

 

「アレイスターの奴め。魔神視点から見ると本当に馬鹿な『人間』なのでは?魔神達を殺そうと考えるのは理解出来る。だが、下手したら世界が壊れるような行動を何故、とるのだ?」

 

その者は胡散臭い賢者のようで、少女のような声を出していた。

 

方位も奥行きも分からない漆黒の空間にいたのは、摩多羅隠岐奈であった。

 

あまりにも綱渡りの行動をしすぎている。あの『人間』はちゃんと世界について考えているのか?真のグレムリンメンバーが『鏡合わせの分割』の術式を適用するのが間に合わなかったらどうするのだ?下手したら魔神という存在よりアレイスター=クロウリーという魔術師の方が世界に悲劇の種をばらまいているのでは?等と彼女は考えていた。

 

摩多羅隠岐奈は圧迫してくるような闇の中に方向を生んだ。その方向は奥行きを形作り、やがては空間全体を定義した。

 

「まあ、私には『後戸の世界』があるから『隠世』が壊されても問題ないがな」

 

一面の闇に縦一条、世界に繋がる細く細く白い光が生じた。

 

そして、白い光は開け放れた『後戸』の扉になった。

 

「戻ってきたよ。世界」

 

世界に戻ってきた彼女を迎えたのは日本の原風景だった。

 

アレイスター=クロウリーの手によって『隠世』という世界から出てきた、摩多羅隠岐奈が最初に向かった場所は、『魔神』摩多羅神という存在が誕生した場所だった。

 

他の魔神達と違って学園都市に降り立たなかったわけは、自身が生まれた場所の神社仏閣を直接、久しぶりにこの目で見たかったから。そういう理由であった。

 

生まれ故郷に帰郷する気持ちに近い感情を持ちながら、目当ての場所にきた摩多羅隠岐奈を迎えたのは、みすぼらしい外観になってしまった神社仏閣であった。

 

寂れた神社仏閣の内部に入るための扉をギィ〜、という音を立てながら開ける。案の定、埃や蜘蛛の巣だらけになっている。そして、魔神という存在に関係なしに、年月の流れの関係で一般人が入っただけでもすぐに崩壊しそうな脆い建物になっていた。

 

その中で翁面という能面を見つけると、摩多羅隠岐奈はそれを被って、意味もなく一人で能を舞った。あらゆるところが穴だらけになっていて、何か行動したらすぐに足を取られて、落ちた衝撃によって、連鎖的に神社仏閣が崩壊する危険地帯になっていたが、見事に踊りきった。能楽の神に相応しい、美しい舞であった。

 

続いて、摩多羅隠岐奈は本堂の後ろにある部屋に向かった。後戸の扉を開けたら、中は異界ではない普通の部屋になっていた。部屋の中に元々あった、摩多羅神を祀るために用意された椅子に翁の面をつけたまま座る。椅子も建物と同様にボロボロになっていたが、摩多羅隠岐奈は椅子を壊さずに座り続けていた。

 

「女性の姿をしているせいなのか、このポーズは個人的に似合ってないように感じてしまうな」

 

古びた能面をつけたまま、男性として伝わっている摩多羅神らしいポーズを決めていた摩多羅隠岐奈の独り言に反応して、

 

「似合っているわよ」

 

という声が返ってきた。

 

「いたのか。ネフテュス」

 

「ええ、貴女が舞い始めた時からいたわよ。美しい能の舞いだったわ」

 

声の主はエジプト神話に登場する女神のネフテュスであった。

 

「その言葉は能楽の神としてはありがたいよ。で、何故ここにきたのだ?」

 

「学園都市でなく自身が誕生した場所に降り立った摩多羅隠岐奈が気になってついてきたのよ。久しぶりに帰郷した感想はどう?」

 

ネフテュスは学園都市ではなく、生まれ故郷の神社仏閣に降り立った摩多羅隠岐奈が気になって着いてきたのだ。

 

「駄目だな。ノスタルジーな感傷を抱こうとしても全然、感じない。感じたのは、ただ単に忘れ去られて寂しいという気持ちだよ。昔は私を崇める人間達がこの場所にたくさん来ていたのにな」

 

彼女が生まれた場所が忘れ去られたことにどういう表情を浮かべているのかは、顔を覆っている翁の能面で見えない。ただ分かるのは、この世界に幻想郷があったら間違いなく幻想入りしているだろうと摩多羅隠岐奈は冷静に自己分析していたことだけだ。

 

(オリジナルの摩多羅隠岐奈のように、この世界に幻想郷を作って、幻想入りからの幻想郷の賢者になるのも悪くはないか・・・・)

 

「魔神として若輩な僧正も含めて、私達は幻想の如く風化した神という冠を頂いているから仕方ないわ。もしも貴女が生誕した神社仏閣が現役で残っていたら何かしらの問題の種になっていたかもね」

 

もしも、この世界に東方Project世界にある幻想郷が存在したら、幻想入りの条件をトップクラスに満たしている、文字通りに『忘れられた神』を筆頭とした魔神達が幻想郷で生活していただろう。

 

摩多羅隠岐奈は僧正がうほほーい☆と元気に幻想郷を走り回るシュールな姿を想像してしまって、クスリと笑ってしまった。

 

 

一瞬の時間で愉快な妄想をし終わった摩多羅隠岐奈は、

 

「それは困るな。だが、忘れ去られた神々が『人間』の手でこの世界にわざわざ顕現する羽目になったから、この『魔神』摩多羅神が生まれた場所は厄介事の震源地になってしまうかもしれない。丸ごと『後戸の世界』にしまうとするか」

 

と言いながら、今いる神社仏閣を地形ごと飲み込むほどの巨大な『後戸』を出現させると、ネフテュスと一緒に後戸の世界に吸い込まれていった。

 

 

 

 

「それにしても摩多羅隠岐奈が所有している『後戸の世界』は本当に広いわね。『鏡合わせの分割』の術式を適用前の魔神達を全員、入れることが出来るんじゃない?」

 

「いいだろ?『隠世』と同じように、神を隠す世界という言葉が相応しい秘められた空間だ」

 

翁の能面を取って、素顔を見せた摩多羅隠岐奈は『後戸の世界』を自慢するような表情をしていた。

 

「ということは、この空間はいくらでも暴れてもいい世界というわけだな?」

 

後戸の世界にいつの間にかいた、何者かの声が響いた。だが、声の正体の魔神が姿を現す前に一瞬で死んだ。と同時に『後戸』の扉が開いて、この世界から追放された。幸いにアレイスター=クロウリーによって細工される前の本来の『鏡合わせの分割』の術式の効果が発揮中の為、無限に等しい残機が1減っただけで済んだ。

 

「勝手に暴れてもらっては困る。この世界は、摩多羅神の世界。いわば私の身体そのもの。万が一壊れる事態が発生したら、大幅に弱体化するからやめてくれるか?」

 

自身の支配領域ホームである『後戸の世界』にいる摩多羅隠岐奈は無敵、全能といえるほどの力を持っていた。比較対象を出すなら黄金錬成が適切だろう。それほどに彼女は強かった。

 

軽い感覚で同じ真のグレムリンに所属する魔神を謎の攻撃で殺して、相手の残機を減らした後に『後戸』がない摩多羅神なんか、ただの隠岐奈だよ。と自虐する摩多羅隠岐奈を見ながら、ネフテュスはマハーカーラ、スサノオ、泰山府君たいざんふくん等の複数の神格の要素を持っているから、後戸の神という属性がなくても摩多羅隠岐奈は普通に強いのでは?と思っていたのであった。

 

 




多分、魔神達は全員が幻想入りの条件を満たしていると思います。
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