禁書シリーズとバーチャロンの公式クロスの存在はとある魔術の禁書目録の二次創作で便利な存在だと思います。
本編の設定と矛盾が出ても、この物語はタングラムが観測した無数の平行世界の一つと言い訳できますから。
今は無き隠世にて。
その『秘神』は『後戸』を調整しながら、食い入るように現世にいる人間達を見ていた。
個人個人では不幸な人間がまだまだ多いが世界全体の幸福度数はちゃんと上がっている。記憶の中だけにある、この世界に転生する前の私が暮らしていたと思わしき異世界と比べたら、この世界の治安は全体的に悪いと思われるが問題ない。いずれ並べるくらい良くなるだろう。
世界崩壊の危機や厄ネタも人間達が独自に解決して平和を勝ち取っている。私を筆頭とした魔神達が後処理として動くまでもない。良い流れだ。
そこには現世で暮らしている人間達が織りなす人生という名の彩模様を椅子に腰掛けながら見て、娯楽感覚で消費している『後戸の神』がいた。
しかし上条当麻という存在は本当に不幸な人生を送っているな。唾を付ける理由づけもあるが被差別民の神や道祖神、疫病神として現世に介入してやろうか?
包丁で刺される、疫病神や化け物として扱われる、不幸が移るからという理由で周りから石を投げられて嘲笑られる。そんな上条当麻の幼少期を観察しながら摩多羅隠岐奈はそんなことを考えていた。
彼女は造った人間達の思惑通りに現世に介入するタイプの魔神だった。生贄の儀式に否を唱えて犠牲となる乙女のために涙を流した人間に同調して、『作業』を壊す行動を起こした経験があるネフテュスよりも積極的に神様らしく活動していた。勿論、自分が活動する際に起こる位相の火花や世界への影響はちゃんと考えて対策していた。
ただし、それはアレイスター=クロウリーが開発した魔術を行使する際に発生する火花を人為的に操作する飛沫という術式とは別ベクトルの解決方法だった。
位相同士の衝突によって発生する火花は対象に不幸な運命だけではなく、幸運な運命も運んでくる。摩多羅神には厄神こと疫病神の側面が存在する。それを活かして火花が造る運命の方向性を限定したのだ。つまり摩多羅隠岐奈は、自身が活動する時に周りに散る火花がなるべく幸福な運命に変わるようにしたのだ。
そんな摩多羅隠岐奈の活動は時代が進むごとに鳴りを潜めたが。
だが、上条当麻が生まれたのをきっかけとして、彼女は他の魔神達のように隠世に閉じこもって大人しく過ごすという行動方針を捨てて、現世に介入しようと思い始めてきた。
失敗か・・・・。流石は魔神達の祈りが具現化した結晶の幻想殺し。私が上条当麻にあげようとした神の加護を打ち消すとは・・・・。
中にいるモノを抑えているせいで弱体化しているとはいえ、神の奇跡を一撃で打ち消すという謳い文句に誤りなしだな。
突然、ガラスが割れたような音を立てて、何かを打ち消した右腕に驚いている幼少期の上条当麻を微笑ましい顔で隠世越しに見ている摩多羅隠岐奈がいた。
ただ、幼少期の上条当麻に限らず、小さな子供を観察している時の彼女は必ずと言っていいくらいに妙に粘つくような空気を纏うのは何故だろう。
十二月三日。
上条当麻の下駄箱の中に小さな『後戸』が出現して扉が開いたと思ったら、ある物を残してすぐに消失した。
防犯オリエンテーションで、とある高校の犯人役として、白ブリーフとトレンチコートと肌色の全身タイツという完全な変態スタイルをしていた上条当麻はある事実に驚愕していた。なんと、恋文が自身の下駄箱にあったからだ。
それは上質な和紙を漉いて作ったと思しき、うぐいす色の雅な封筒。ところどころに桜や雪の結晶、紅葉を模した飾りがあしらってあり、見事に日本の四季を再現していた。
表を見て、裏を見て、もっぺんひっくり返して、何度も確認を取り白ブリーフ上条当麻はキリリとした顔でこう鑑定結果を出した。
「ラブレターだ・・・・・・」
「なっ」
同じように防犯オリエンテーションに参加していて、人質役として上条当麻の近くで一緒に行動していた、先輩系女子の雲川芹亜は一瞬頭の中が全て真っ白になった
「なっ」
合同で防犯オリエンテーションをするためにとある高校に治安役として来ていたお嬢様が衝撃を受けていた。
白ブリーフ変態野郎な姿になっていた上条当麻を見て驚いたことで、思わず超電磁砲をぶっ放すというやらかしをしてしまったせいで本当に追われかけている身になっている御坂美琴が壁に張り付いたまま固まっていた。
そんな事になど全く気づかない上条当麻。とりあえず手紙を持ったまま、一人になれる場所へふらふら移動しようとするが今は防犯オリエンテーションの真っ最中だと思い出し、あっちこっちうろうろして、最終的には我慢できなくなって封を切ってしまった。
中身を検分する。
やはり中の便箋もまた上質な和紙。それも光にかざせば奥が透き通って見えてしまいそうなくらい奇麗なものだ。細い筆を使って達筆な文字であれこれ書かれているが、これは高校生の上条にはちょっと読めない。それでも足りない頭をフル回転させて何とか読める所だけを拾っていくと・・・・・。
「屋上で・・・・待っています・・・・・おっきー・・・・より・・・・?」
しばしの間、上条当麻は状況を把握できなかった。
だがやがて認識が追いついて理解すると、手紙を掲げて狂喜のあまりにぐるんぐるんと舞い始めた。
「ひゃーほーッッ!!ついに来た!ついに来たァァァあああああああ!!ドラマの中の話じゃない!映画の中にしかないものなんかじゃない!!ラブレターもらったァ!!女の子から好きって言われたァァ!!恋て本当にあったんだーァァァあああああ!!」
人生のトロフィーを一個獲得した今の上条は天にも昇るような気持ちだった。ただし配慮が足りてない。その姿で行ってどうする。待っている女の子にどう返事する等の問題があるが、そういうのを考えないまま、一緒に行動していた雲川芹亜を置いてけぼりにして、恐るべきスピードで屋上へ通じる階段を登っていった。
もしかしたら、ハイテンション状態になっている今の上条当麻は下手したら並の聖人と同じくらいのスピードを出していたかもしれない。『後戸』で生命力を暴走させられているか、中にいるモノがハッスルしている疑惑が発生するほどの機動力を出していた。
とにかく現状の上条当麻は我が世の春が来たァァ!!と絶好調な気分になっていた。当人にとってあまりにも幸運な出来事過ぎて、今ならドラゴンみたいな翼を生やして空を飛ぶことが出来そうだ。
恋文から感じ取ることが出来る奥ゆかしい、古式ゆかしい雰囲気から淑女なお嬢様が待っているかもしれないと勝手に思い込みつつ、オトナの階段を一気に駆け上がった変態野郎上条当麻が屋上の扉を開け放って目的の舞台である屋上に勢いよくエントリーする。
吹き抜ける自由の風。どこまでも開かれた広い屋上。その先で待っていたのは。
「私は『秘神』摩多羅隠岐奈。後戸の神であり、障碍の神であり、能楽の神であり、宿神であり、星神であり、『魔神』でもある。手紙をちゃんと読んでくれたかな。上条当麻?」
金髪のロングヘアの上に冠を被っていて、グレーなセーラー服の上に左の袖に隠岐奈、右の袖に総番長と赤色の太い文字が書かれている特攻服を羽織った、緑のロングスカートを着た女性だった。
その女性の正体は多くの学生達が住む学園都市ということで郷に入れば郷に従えを曲解して、制服に着替えた摩多羅隠岐奈であった。上条当麻が勝手に思い込んでいた淑女とは程遠い存在である、女番長ことスケバンに見える服装を彼女は着用していた。
このコスチュームを着用している彼女に名前を名付けるなら暗中飛躍の総番長、摩多羅隠岐奈と呼ぶべきか。
ふむ、上条当麻のトラウマな存在であるはずの魔神と名乗ったのに驚かないな。サンジェルマンのおかげで耐性がついたのか?オーバーリアクションといわんばかりに恐慌に駆られる姿を見たかったのに。
・・・・・・なんだその目は。まるで中二病にかかった痛い人間を見るような表情をしよって。こちらは人間達の祈りや信仰心の力で構成されたという、それらしい要素も持っている本物の神だぞ。魔神なのに出生に信仰心という祈りの力と関係がある特異な存在なんだぞ。
━━━もしや、目の前の女性が『魔神』ということを認めたくなくて、自称神様と名乗っている痛い学生と認知して現実逃避をしているのか?親しみやすいように『後戸』の規模を世界から国レベルまで縮小することで、ローラ=スチュアートと偽っているコロンゾンのように人間レベルまで位階をあえて落としていたたのが仇になったのか?
仕方ない・・・・。『後戸』の位置を否定の三重光に設置して、ケテルを越えて0を連ねた未開示領域に足を踏み入れた者特有の雰囲気を晒しだすか。
「いいぜ・・・・。上条さんは自称神様と名乗ってきたヤンキー系女の子でも受け入れて付き合う覚悟はあるぜェッッッッッッッ!!!!??」
生暖かい目で摩多羅隠岐奈を見ていた上条当麻を神威が襲った。それは魂に無数の釣り針を引っ掛けて体の外に引っ張り出すような感覚。かつてのオティヌスの狂気が見せたモノと同じだった。
いや、下手したら上回っているかもしれない莫大な存在感を目の前にいる女性から感じ取ってしまった上条であった。
「私がちゃんとした『魔神』だということを理解してくれたかな?」
「・・・・・・ハイ」
上条当麻は軽めに泣いて弱音を吐いた。黒一色の世界で体験して繰り返した、恐るべき記憶の断片が脳裏に蘇ってきたからだ。
「もう幾千億の地獄を渡るのも世界を敵に回すのも無理!!勘弁して!!」
「落ち着け。お前の対応次第では話し合いで平和的に終わるぞ」
「本当に・・・・?」
「ああ、私や他の魔神達はかつてのオティヌスのような人格破綻者ぶりはないから安心するがいい。まあ、『僧正』みたいな怪しい存在はいるが」
涙目で土下座している上条当麻の頭を誰かが撫でる感覚があった。顔を上げた少年の視界に入ってきたのは、纏っていた雰囲気を見た目相応の女の子の姿に相応しいように調整して、しゃがみながら、笑顔で馴れ馴れしく話しかけてきた摩多羅隠岐奈であった。
「私から感じ取った雰囲気ですぐに分かっただろうが、先日事件を起こして『魔神』と偽って名乗っていたサンジェルマンと違うぞ。オティヌスの『理解者』になった上条当麻よ」
上条当麻が立ち上がるのと同時に撫でるのを辞めて立ち上がる摩多羅隠岐奈。
サンジェルマンの事件。
そして上条当麻とオティヌスの間でしか通じないはずの『理解者』という単語。
それだけでも先程放出した神威抜きでも摩多羅隠岐奈の特別製は十分に示されているはずだが、ここで上条は空気よりも重い声をゆるゆると吐き出して待ったをかけた。
「・・・・それよりも、大事な話の前に一つ良いか?」
「勿体振らないで言ってみなさい」
「なんかとてつもない世界の裏側の話をするなら、まずはこれを脱いでからにしてもらえないだろうか・・・・?」
そう。防犯オリエンテーションのやられ役として、今の上条は肌色タイツに白ブリーフ、トレンチコートの三点変態セットのままだったのである。
いくら彼女が魔神といえる超越存在でも性別は女性だ。このままであらぬ疑いが上条当麻にかけられてしまう!
「別にそのままでも問題ありません。摩多羅神は性に関することも司っているし、長生きしているからそういう趣味の人間は幾つも見てきました。そういう面で私を心配しなくても何も問題ありませんよ」
長生きしていたせいか、どうやら彼女はそういう人間をたくさん見てきたようだ。しかし、態度を突然軟化させて言葉遣いを変えた理由が気になる。心なしか優しい目線で見られているようだ。━━━━もしかして上条当麻はそういう類の人間達と同じカテゴリーに入れられている!?
「言葉遣いや態度が変わった理由?上条当麻は差別、虐めを受けていた過去がある人間だろ?だから被差別民の神でもある私らしく行動したんだ。摩多羅神には色々な側面がある。お前はどんな摩多羅隠岐奈が好みだ?言ってみろ」
どうやら彼女は娘々に言われて、ありのままの自分らしく行動しようと決心しても、人々からそう在れと望まれた神様として長年活動していたことが染み付いているから、そのように行動してしまう癖があるらしいようだ。
だが、見方を変えると彼女は『僧正』に匹敵するくらいに、人間にとって危険な魔神かもしれない。本人にはそういう自覚はないだろうが。
さて、上条当麻は自他共に不幸だと認める人間である。摩多羅神は疫神としての側面がある神様である。疫病神と呼ばれたことがある二人が近くにいたら、どうなるか?
肌色タイツや白ブリーフを脱いで、いつも通りの学ラン姿になろうと動いた時に、屋上の地面の小さな凸凹に躓いて、摩多羅隠岐奈を押し倒して覆いかぶさってしまうという大変不幸?な事態を上条当麻は作ってしまったのである。
「今の私が一般的な不良にも劣るくらいに力を落としていることをいいことに、こういう行為に及ぶとは・・・・。もしかして、自分より下な存在になすがままにヤラれる摩多羅隠岐奈が好みなのか?最低なやつだな・・・・」
「不幸な出来事なんです!!ごめんなさい!!」
この作品の摩多羅隠岐奈の言葉遣いや態度は本人の気分次第で割とコロコロ変わります。具体的には自機に撃破された時のEXボスモードや東方茨歌仙、酔蝶華で見せた言動もします。