とある後戸の摩多羅神   作:一般通過龍

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クレイジーバックドアメモリー

さて、肌色タイツを脱いでいつも通りの学ランに着替えた上条当麻であったが、摩多羅隠岐奈もいつも通りの服装に着替えていた。

 

「ところで上条当麻よ。私という神を構成する身体の正体が人間達の死体の集合体ということを信じられるか?ネフテュスと大体似たような『魔神』だと言われているが、あいにく私には実感が沸かないのだよ」

 

とんでもないことをカミングアウトされたが、上条当麻はそれを信じられなかった。どこからどう見ても彼女は生きている人間そのものな身体をしている。どう考えても、その美しい肉体が死体の肉体で構成されているということをイメージできない。そしてとても失礼なことになるが、先程、彼女を押し倒した時に手から伝わってきたアレの感覚はとても柔らかったとしか言いようがなかった。

 

大天使のミーシャ=クロイツェフに不死身のフロイライン=クロイトゥーネ、自己の肉体を創造して増殖する垣根帝督なんてのもいたか。目の前にいる摩多羅隠岐奈という女性の肉体はそれとも何か違うとしか言いようがない。

 

「何か、私に対して不埒なことを考えられたような気がするけど気の所為か?やっぱり『魔神』という存在に関する肉体の説明は私ではなく『僧正』や娘々、ネフテュスの方が適任だったのでは・・・・?」

 

摩多羅隠岐奈が上条当麻に一瞬、怪訝な目を向けたと思うとブツブツと呟いた。

 

 

強いて言うならかつての『魔神』オティヌスの肉体に近いというべきか?それはそれとして先程から他の『魔神』の名前を彼女が言っているような気がする。

 

正直、全盛期のオティヌスと同じような存在が何人もいてほしくないという願望が上条にあるが、サンジェルマンの時にオティヌスに理論上、魔神という存在は何人もいてもおかしくはないと言われたことと、現実の問題として、目の前に別の魔神が現れたことを考えると最悪の事態を想像せざるを得ない。

 

独り言を辞めた摩多羅隠岐奈は、ゆったりとした声と柔らかい口調に切り替えて、改めて切り出す。

 

「ところで今の世界を上条当麻という存在はどう思っています?どういう印象を抱いているのか聞かせてくれないでしょうか?」

 

「世界・・・・・・・」

 

上条当麻という人間にとって、世界なんていうものは『友人知人のいる場所を、点と点を線で結んだもの』くらいでしかない。・・・・・・ただ、彼の場合は、もろもろの事情で友人や知人の数が普通の人よりも多いおかげで、範囲は意外と広いが。

 

だが摩多羅隠岐奈は少年が予想もしていなかった方向へ舵を切った。

 

「ところでおかしいと思いませんか?いくらなんでも事件が上条当麻という人間が手に届く範囲に集中しすぎていると。しかも世界を揺るがす規模に至る事件が。というか、『魔神』オティヌスによって実際に粉々になりましたが。御使堕しエンゼルフォール、神の右席の右方のフィアンマが世界を救済するために引き起こした第三次世界大戦、オティヌスが『魔神』としての力を取り戻すために起こした騒動、そして先日の魔術師サンジェルマンがグラビトン式の人工重力制御装置を地球と月を握り拳大に圧縮できる重力爆弾に変えて使おうとしたこと等。一年という短期間に色々な事件や異変が貴方に襲いかかりすぎです。でも、なんだかんだ解決して、多くの人間の生命を救い上げる上条当麻というヒーローを分かる存在が見ると世界の中心に立っているように感じます。何故でしょう?」

 

親しみやすい賢者のような雰囲気を発しながら、摩多羅隠岐奈は口を妖しく動かしながら上条当麻に言いつけるように発言を続ける。

 

「世界は思ったよりも脆いです。人類の人口は80億人に届くまで繁栄しましたが、誰もがヒーローとして活躍して均等に支えているわけではありません。学園都市で起きた事件の一つの人的資源アジテートハレーションプロジェクトで暴走するヒーロー達を見たでしょう?裏で手を引いていた黒幕がおったとはいえ、悪意だけでなく、善意でも悲劇が発生して世界は壊れて人が傷付くという証拠でもありますね。さて、一つ問題を出します。その不可思議極まる『世界の基準点』にして『世界の修復点』、この世界にいてはいけないモノを向こう側に追儺ついなする究極の追儺霊装と呼ばれたこともある幻想殺しイマジンブレイカーは、どうして当たり前、平凡な高校生と自称する一個人の右手に宿っているのですか?確かに幻想殺しはギリシア神話のアトラースみたいに世界を支える柱ですが、私にはそれを所有している少年の方が特異な存在だと見えますよ」

 

「・・・・・・・・」

 

上条は自分の右手に目を落とす。

幻想殺しについて、疑問に思った事がない訳ではない。命を預けてきた事だって一度や二度ではない。この力に答えが出るのか、出ないのか。それは常に彼の頭の片隅にある問題であった。

 

何故自分でなければならなかったのか?今まで、そこまで考えが及んだ事はあったのか?

少し考え、上条はやがて呟いた。

 

「デタラメだ」

 

やっぱり上条当麻はこのような発言をしてきましたか・・・・・。予想通りです。

 

今の摩多羅隠岐奈は、自分が使っている口調に相応しい思考に切り替えていた。人格が複数あるように感じる、このような芸当を彼女が自然に出来るようになったのは、人々が祈って、望んだ神様としての振る舞いを長年エミュし続けた賜物もあるだろう。

 

「確かに世界なんていうものは見る人が見れば脆いものなのだろう。雲の上にいる『魔神』連中からすれば、それこそ何度だって作り直せるものなんだろう。・・・・・・でも、やっぱり違う。ここはクリアされる事が前提のRPGなんかじゃない、クリアされたらそこで『おしまい』な訳でもない。俺が中心にいる?俺が柱になっている?だとしたら、世界の寿命はたかだか100年しかない事になる。いくら何でもそんな訳あるか。続いていくんだよ、俺が死んだって」

 

「確かに世界はそれでも続いていきますね。どんな形になろうが。あまりにも朽ちないで続いていくモノが溢れるほど多くて、それを不自然だと思う万象の自然分解の化身ともいえる『拡散』の性質を持つ『大悪魔』や『原石』、『ドラゴン』が世界から誕生するのも納得です」

 

あっさりと上条当麻の言い分を認めた摩多羅隠岐奈が世界の秘密の一つといえる重要な情報をさりげなく開示した。この場所に『大悪魔』や『原石』、『ドラゴン』の情報を全て持っている察しがいい人間がいたら、すぐに共通点を見出しただろう。出席日数が足りなくて留年確定が迫っている状況もあるが、頭が悪い人間である上条当麻は彼女が言っていることが理解できなかったが。

 

まあ、彼女の口から出てきた情報は並大抵の人間では理解できない情報だから少年を責めることはできない。

 

 

「だけど、上条当麻という存在が世界の中心に立っているのは間違いない事実ですよ。そうでなければ、色々な『記録員』が貴方を観測し続けるはずがないですから」

 

「『記録員』だって?」

 

「あのような存在を言い表すなら『記録員』としか言いようがないですから便宜上、私達はそう呼称しています」

 

どこからか出現させたつづみを掌の上に浮かべた摩多羅隠岐奈は一拍空けてから、

 

「貴方の視界に入っているかは分かりません。入っていたとして、上条当麻という存在の長期記憶に書き込まれておるか疑問ですね・・・・・。けれど確実に奴らはいつも近くに必ずいます!!」

 

「・・・・・?」

 

彼女は変な電波を受信しやすい霊媒体質なのか?いきなりそういう言動をし始めた摩多羅隠岐奈を放って怪訝な顔で辺りを見回してしまった。この広い屋上には上条と摩多羅隠岐奈以外誰もいない。身を隠せるような場所もない。

 

「『記録員』ってのは何なんだ?お前のことなのか?」

 

「まさか、奴らはこのように上条当麻と面と向きあって尋ねる必要性はありません。『記録員』は常に隣に寄り添い、上条当麻を観察することで全てを知り、編纂して、膨大な情報の連なりを構築する事こそが奴らの本分ですから」

 

「何を、言っているんだ・・・・・・?」

 

「自覚していませんか?貴方はすでに『記録員』達を見ているはずです!!」

 

迫真の表情で喋る摩多羅隠岐奈の言葉を真に受けて。上条当麻は頭の片隅に、小さな違和感が生じつつあるのを覚えていた。

家の外に出た瞬間に、何か不安だなと思って、戻ってきてドアノブに手をかけたら鍵を閉めてなかったことに初めて気がつくような。

 

「思い出しなさい、上条当麻。奴らはいつでもそこにいます。例えば教室の片隅、例えば行事の折にも、大覇星祭やクラスの皆や友達と一緒に電脳戦機バーチャロンをプレイした時や鍋を囲った時はどうでしたか?」

 

「・・・・・・あれ・・・・・・・?」

 

上条当麻の脳内にある人物達が浮かんでくる。それは知っているような・・・・知らないような・・・・姿をしていた。

 

「やっと思い出しましたか。当たり前に同じ制服を纏い、同じ空間に溶け込む者達を。奴らには名前があったり、なかったりする個体が存在しますけど、それは関係ありません。トラウマな記憶だと思いますが、アルファからオメガに至るオティヌスの悪夢を思い出しなさい。『記録員』達は何食わぬ顔で風景に溶け込みながら、時に背を向け、時に横目で、それでも確実に上条当麻という存在の全てを観察してきたはずです」

 

上条の額から大粒の汗が噴き出す。

いいや、顔の表面だけに留まらない。全身がびっしょりと濡れていく。おかしい。言われてみればおかしい。

 

「あの子達・・・・白カチューシャの子と富良科凛鈴ふらしなりりん冥乃河葵めいのかわあおい、メリーと呼ばれているマエリベリー・ハーン・・・・そう言えば何者なんだ!?なんかしれっとした顔でどこにでも紛れ込んでいるような気がするけども!!」

 

「それが私達が『記録員』と呼称している存在です」

 

上条の目の前にいる『秘神』はにたりと笑って、秘匿された世界の理を一つ解き明かす。

 

「この世界は彼女達をアバターとして、『白き女王』や『輪廻女神サリナガリティーナ』、『時空因果律制御機構タングラム』、スキマ妖怪と呼ばれる八雲紫が観測して紡ぎ出した一編の物語に過ぎなかったんですよ!!」

 

摩多羅隠岐奈からもたらされた衝撃的な事実になんと・・・・・ッと!上条当麻が叫び返そうとした瞬間だった。

 

「なんちゃってです!!」

 

「なんちゃってかよ!!これだけ長々やってなんちゃってなのかよォォ━━━━━ッ!!ああびっくりした、なんか深い理由があるのかと思った!ただのクラスメイトに決まっているじゃないか!!」

 

この『魔神』は、マジとジョークの距離感が難しい!!コロコロと纏っている雰囲気を変えるから、ある意味ではかつてのオティヌスよりコミュニケーションを取るのが大変!!とバクバク体に悪い鼓動を続ける胸の辺りを押さえながら、上条は今度こそ叫ぶ。

 

でも言われてみれば確かにクラスメイトなのに違和感を感じる・・・・・本当になんちゃってだよな、ここ掘っても何もないよな・・・・・と少年は自己暗示してレールを修正していく。

 

 

ケラケラと笑いながら、人を小馬鹿にしたような態度で摩多羅隠岐奈は上条当麻にネタばらしする。

 

「後頭部をよく見て、幻想殺しで触ってみなさい」

 

摩多羅隠岐奈が自身の横に小さな『後戸』を展開したと思うと、そこから二つの鏡を出して、上条当麻の後頭部を映す。

 

彼女の『後戸』をまるで22世紀からやってきたネコ型ロボットが持つ四次元ポケットみたいだと思いながら上条当麻が見たものとは・・・・・。

 

後頭部に展開されている『後戸』であった。それを幻想殺しで消すと不自然な記憶や違和感が消失していく。

 

「おい、もしかしていつの間にか記憶に細工していたのか?」

 

「そうですよ?はっきり言って、私が作り出した虚偽の記憶と情報で慌てぶる貴方の姿は草ではなく桜の木が生えて咲き、酒の肴になるほど面白かったです」

 

『後戸』で上条当麻に干渉したら『神浄討魔』を刺激して、大事に至るかと思っていましたが何事もなくて良かったです。天敵と思っていますから。

 

突然、彼女の背後に謎の四色の煙が立つといつの間にか立派な桜の木が屋上に植えられていた。12月という冬の季節なのに綺麗に桜が満開になっている。

 

「おやぁ?隠岐奈は隠岐奈でも花咲か爺さんのおきなではないというツッコミはしないのですか?摩多羅神という神様をあまり知らない、学がない上条ちゃんには無理だったようですね。このままだと留年確定ですよ!」

 

そして、摩多羅隠岐奈はいきなり、上条当麻の担任教師の月詠小萌を真似たような喋り方でこちらを煽ってきた。

 

上条当麻は激怒した。メスガキみたいに人をおちょくりまくる摩多羅隠岐奈という存在に対して。このまま、彼女の悪ふざけを放って置くと更にエスカレートして、自分だけでなく周りにまで被害が拡大していくのが目に見えている。最早我慢出来ぬ。

 

この時の上条は鉄拳制裁をして、この神様をわからせて反省させなければならぬという謎の使命感に燃えていた。

 

「いいぜ・・・・。そんなに人をおちょくるような巫山戯た行動を繰り返すなら、こちらにも考えがあるのぜ・・・・。まずはその幻想ボケぶち殺すツッコミする!!」

 

 

そして、摩多羅隠岐奈の頭に男女平等わからせツッコミという名のゲンコツが落ちてきた。

 

「痛ったぁ!!」

 

この時の上条当麻は相手が『魔神』ということを無視して、勢いに任せて行動していた。

 

後に冷静になった少年は語る。何故あのような行動をしたのかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネフテュス〜。隠岐奈ちゃんがなんか上条ちゃんに説教させられているけど、ある意味、これも私達が期待している採点者としての動きと言えるかな?」

 

「言えるんじゃあない?」

 

 

そこには反省のために正座させられている『魔神』と恐れ知らずに説教をしている、平凡な人間と自称している高校生がいた。

 

 

「他の魔神達と比べて、私、摩多羅隠岐奈は寛大な部類に入る存在とはいえ酷くない?たんこぶが出来てしまったよ。どう責任取ってくれる?」

 

「それを言うなら、勝手に人様の記憶を弄るのが悪いと上条さんは思いますよ!!そして、そのわざとらしいたんこぶはあえて作ったものでしょ!!!」

 

「チィ!!見破られたか・・・・・。見事な正論でぐうの音も出ない・・・・・」

 

 




結末は決まってないけど、真のグレムリンの魔神達大勝利ルートを物語のゴール地点にしようかな・・・・?
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